徴兵ちょうへい制度せいど

  赤色あかいろ：徴兵ちょうへい制せいを実施じっししている国家こっか・地域ちいき

  橙色だいだいいろ：徴兵ちょうへい制せい廃止はいしを予定よていしている国家こっか・地域ちいき

  青色あおいろ：徴兵ちょうへい制せいを実施じっししていない国家こっか・地域ちいき（志願しがん制度せいど）

  紫色むらさきいろ：法律ほうりつには徴兵ちょうへい制せいが定さだめられているが二に割わり以下いかだけが召集しょうしゅうされる国家こっか

  緑色みどりいろ：軍ぐんを保有ほゆうしていない国家こっか・地域ちいき

  灰色はいいろ：不明ふめい

（注ちゅう）一部いちぶの国家こっか・地域ちいきにおいては「志願しがん・徴兵ちょうへいの並立へいりつ制せいを実施じっししている（中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく）」等とうの例外れいがいがある。

徴兵ちょうへい制度せいど（ちょうへいせいど、英語えいご: conscription）とは、国家こっかが憲法けんぽうや法律ほうりつで国民こくみんに兵役へいえきに服ふくする義務ぎむを課かす制度せいどで、志願しがん制度せいど（募兵ぼへい）の対義語たいぎご。

北きたアフリカ諸国しょこくの他ほか、ベトナム、イスラエル、ウクライナ（2013年ねん一旦いったん廃止はいし、翌よく2014年ねん復活ふっかつ）、キプロス、韓国かんこく、スイス、オーストリア等ひとし、CSTOに加盟かめいしているアルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ロシアなどでは徴兵ちょうへい制せいが続つづいているが、冷戦れいせん終結しゅうけつ後ごは、西側にしがわ諸国しょこくではフランス（2002年ねん。2019年ねんより、普遍ふへん的てき国民こくみん奉仕ほうしとして復活ふっかつ）、ドイツ（2011年ねん）のように徴兵ちょうへい制度せいどを廃止はいしする国くにが増ふえ、また、実施じっししている国くにでも良心りょうしん的てき兵役へいえき拒否きょひした場合ばあいの代替だいたい服務ふくむを選択せんたく可能かのうとする制度せいどを導入どうにゅうしている場合ばあいが大半たいはんである。

NATOに加盟かめいしている28か国こくを例れいにとると、90年代ねんだいから00年代ねんだいにかけて冷戦れいせんの終結しゅうけつに伴ともない次々つぎつぎと徴兵ちょうへい制せいを廃止はいしし、2010年ねん12月時点じてんでNATO加盟かめい国こくにおいて徴兵ちょうへい制せいを採用さいようしている国くにはエストニア、ギリシャ、デンマーク、ノルウェーの4か国こくにまで減少げんしょうした。しかし、2010年ねん以降いこう、フランスはテロの脅威きょういを理由りゆうにより2019年ねん新しん学期がっき開始かいし時じに「普遍ふへん的てき国民こくみん奉仕ほうし」として導入どうにゅうしたり、リトアニアのようにロシアによるクリミア併合へいごうによるロシアの脅威きょういを理由りゆうに徴兵ちょうへい制せいへ戻もどすなど、徴兵ちょうへい制せいを復活ふっかつさせている国くにもある。日本にっぽんにおいては、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん後ご、一貫いっかんして志願しがん制せいが維持いじされ自衛隊じえいたいが構成こうせいされている。

徴兵ちょうへい制せいによる国民こくみん皆兵かいへい武装ぶそうを基盤きばんとして、永世えいせい中立ちゅうりつを掲かかげるスイスとオーストリアでは国民こくみん投票とうひょうで徴兵ちょうへい制せいの廃止はいしが否決ひけつされ、2013年ねんに徴兵ちょうへい制せいを廃止はいししたウクライナでは、翌年よくねん発生はっせいしたクリミアへのロシア侵攻しんこうの後のちに徴兵ちょうへい制せいが復活ふっかつするなど、国是こくぜや国家こっかを取とり巻まく情勢じょうせいによって左右さゆうされている状況じょうきょうにある。また、2010年ねん7月がつに廃止はいししていたスウェーデンでもウクライナと同様どうように、ロシアの脅威きょういを理由りゆうに、2018年ねん1月がつから新あらたに女性じょせいも対象たいしょうにした徴兵ちょうへい制せいが復活ふっかつすることになった。常備じょうび軍ぐんを持もたないコスタリカでは「有事ゆうじの際さいに徴兵ちょうへい制せいを実施じっしできる」旨むねが憲法けんぽうに明記めいきされている。

概要がいよう

徴兵ちょうへいとは国民こくみんを兵士へいしとして召めし上あげ（徴しるし）、兵役へいえきの義務ぎむを課かすことであり、徴兵ちょうへい制度せいどは憲法けんぽうや法律ほうりつにより「一定いっていの年齢ねんれいに達たっした国民こくみん」に対たいし、「一定いっていの期間きかん兵役へいえきを課かす」ための組織そしき化かした制度せいどを指さす。徴兵ちょうへい制せいにおいて兵役へいえきは国民こくみんの義務ぎむ的てきな負担ふたんとして扱あつかわれ、国防こくぼうへの負担ふたんと貢献こうけんが求もとめられる。徴兵ちょうへい制せいは軍隊ぐんたいに対たいする安定あんてい的てきな人材じんざいの確保かくほが長期ちょうきにわたって容易よういであるものの、国民こくみんに対たいする負担ふたんは大おおきい。なお、一般いっぱん的てきには、徴兵ちょうへい制度せいどがあり兵役へいえきの期間きかんを満了まんりょうした後のちもなお、定年ていねんまで徴兵ちょうへいを志願しがんし続つづけることも可能かのう。近年きんねんは、韓国かんこくや北朝鮮きたちょうせんなど一部いちぶの国家こっかを除のぞいて、ほとんどの兵役へいえき制度せいどがある国家こっかで良心りょうしん的てき兵役へいえき拒否きょひ権けんが合法ごうほう的てきに認みとめられ、介護かいごや医療いりょう、救急きゅうきゅうなどの代替だいたい役務えきむが制度せいど化かされている。

徴兵ちょうへい制度せいどはほとんどの場合ばあい、徴兵ちょうへいに適てきした、おおむね18歳さい～20代だいの成人せいじん男性だんせいが対象たいしょうとなり、さらにその徴兵ちょうへいも兵役へいえきの適格てきかく性せいを調査ちょうさするための徴兵ちょうへい検査けんさを経へて、その検査けんさに合格ごうかくした人材じんざいが徴兵ちょうへいされる。また、代替だいたい役務えきむなどの選択肢せんたくしが用意よういされた徴兵ちょうへい制度せいどは選択せんたく徴兵ちょうへい制せいと呼よばれることもある。

古来こらいより兵役へいえき・戦役せんえきに応おうずることは市民しみんの権利けんりと密接みっせつに関係かんけいしており、徴兵ちょうへい制せいは男性だんせいのみに普通ふつう選挙せんきょ権けんなどの特権とっけんを与あたえる根拠こんきょになってきた。現在げんざいでは男女だんじょ平等びょうどうの観点かんてんから特権とっけんが廃止はいしされる傾向けいこうが強つよく、逆ぎゃくに男性だんせいのみに義務ぎむが発生はっせいすることへの不平ふへい感かんがあるという意見いけんがある。

社会しゃかい制度せいどとして確立かくりつされた徴兵ちょうへい制度せいどとは異ことなり、軍隊ぐんたいや部隊ぶたいが住人じゅうにんや難民なんみんを強制きょうせい的てきに徴発ちょうはつし、兵へいや水兵すいへいとして利用りようすることを特とくに強制きょうせい徴募ちょうぼと呼よぶ。前ぜん近代きんだいのあらゆる地域ちいきでこの形態けいたいでの徴発ちょうはつが行おこなわれたが、国家こっかの近代きんだい化か・市民しみん化かにともない衰退すいたいし、戦時せんじ国際こくさい法ほう・ハーグ陸戦りくせん条約じょうやく等ひとしでは禁止きんしされている。現代げんだいでも低てい開発かいはつ諸国しょこくの紛争ふんそう地域ちいきではしばしば難民なんみんや地域ちいき住民じゅうみんへの強制きょうせい徴募ちょうぼが問題もんだいとなる。

徴兵ちょうへい制度せいどは宗教しゅうきょう戦争せんそうの頃ころから、市民しみん兵へいおよび市民しみん社会しゃかいの成立せいりつと同時どうじに生うまれて、18世紀せいきのフランス革命かくめい（ジャコバン独裁どくさい期き）の国家こっか総動員そうどういんにおいて近代きんだい的てきな徴兵ちょうへい制度せいどが成立せいりつした。19世紀せいきにはフランスを模範もはんとしてプロイセンでも採用さいようされ、兵役へいえき制度せいどとして確立かくりつされる。日本にっぽんでは1873年ねんの徴兵ちょうへい令れいにより確立かくりつされ、イギリスやアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでも第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせんにより徴兵ちょうへい制せいへ移行いこうした。先進せんしん諸国しょこくでは、高度こうど化かする近代きんだい的てきな軍事ぐんじ兵器へいきを運用うんようするには高度こうどな教育きょういくを受うけた専せん門もんの将兵しょうへいが求もとめられるようになると、徴兵ちょうへいによる人数にんずうの確保かくほよりも採用さいようする兵士へいしの質しつの向上こうじょうが求もとめられ、冷戦れいせんの終焉しゅうえんに合あわせて徴兵ちょうへい制度せいどを廃止はいしまたは縮小しゅくしょうする先進せんしん国こくが多おおく、新あらたに導入どうにゅうする国くにはあまりない。特とくに冷戦崩壊れいせんほうかい後ごにEUやNATOに加盟かめいした東ひがしヨーロッパの元もと社会しゃかい主義しゅぎ国こくは、チェコやスロバキア、ハンガリーのように徴兵ちょうへい制せいを廃止はいしして志願しがん制せいに切きり替かえる国くにが多おおい。ただしこれらの国々くにぐにでも、戦争せんそうなどの緊急きんきゅう時じには政府せいふが迅速じんそくに徴兵ちょうへい制度せいどを復活ふっかつできるように法的ほうてきには選択肢せんたくしを残のこしている場合ばあいもある。

徴兵ちょうへい制度せいどの兵役へいえき義務ぎむは「一般いっぱん兵役へいえき」義務ぎむと「服役ふくえき待機たいき」に分わけられ、前者ぜんしゃの一般いっぱん兵役へいえき義務ぎむは全ぜん国民こくみんに入営にゅうえい（基地きちでの共同きょうどう生活せいかつ）を義務ぎむづけるもの（例れい：韓国かんこくの兵役へいえき）であり、後者こうしゃの服役ふくえき待機たいきは登録とうろくされるものの命令めいれいがない限かぎり実際じっさいには入営にゅうえいしないもの（例れい：アメリカのセレクティブ・サービス・システム）や、一定いってい期間きかんの一般いっぱん兵役へいえき後ごにいつでも軍ぐんに復帰ふっきできるように待機たいきすることを義務ぎむ化かされているもの（例れい:ドイツ）などがある。

徴兵ちょうへい制度せいどの歴史れきし

古代こだい

国民こくみんに兵役へいえきを義務ぎむとして課かす制度せいどは、古代こだいにまで遡さかのぼる。中国ちゅうごくでは古ふるくから存在そんざいし、日本にっぽんでも奈良なら時代じだいに実施じっしされた（軍団ぐんだん制度せいど）。

古代こだいギリシャの都市とし国家こっか（ポリス）においては兵役へいえきは参政さんせい権けんを有ゆうする自由じゆう民みん男性だんせいの義務ぎむであった。一方いっぽう、女性じょせいや奴隷どれいなどの非ひ自由じゆう民みんには課かされなかった。

ローマにおいては資産しさんの多寡たかにより兵役へいえきの内容ないようが細分さいぶん化かされ、多額たがくの資産しさんを有ゆうする者ものは騎兵きへい、零細れいさい市民しみんは安価あんかで間あいだに合あう兵へい装そう、無む資産しさん市民しみんは国家こっか存亡そんぼうの機きを除のぞき兵役へいえきの対象たいしょうから外はずされていた。その後ご、マリウスの軍制ぐんせい改革かいかくにより一般いっぱん市民しみんの兵役へいえきは廃はいされて志願しがん制せいとなり、職業しょくぎょう軍人ぐんじん化かが進すすんだ。これによりローマは地中海ちちゅうかい世界せかいを制圧せいあつする能力のうりょくを得えた。

中世ちゅうせい

中世ちゅうせいのヨーロッパでは、騎士きしや傭兵ようへいを中心ちゅうしんとした軍制ぐんせいだった。これは国王こくおうなど貴族きぞく社会しゃかいを中心ちゅうしんとした制度せいどで、国王こくおうが地方ちほうの領主りょうしゅ・貴族きぞくの地位ちいを保証ほしょうする見返みかえりとして軍事ぐんじ力りょくを国王こくおうに提供ていきょうする、あるいは財力ざいりょくによって軍事ぐんじ力りょくを購入こうにゅうするという形式けいしきである。これとは別べつに自由じゆう民みんに兵役へいえき義務ぎむが課かされ、戦時せんじに動員どういんされることもあった。傭兵ようへい主力しゅりょくの軍隊ぐんたいは戦闘せんとう意欲いよくに欠かけ、戦争せんそうを長引ながびかせる原因げんいんとなった。

現実げんじつには、騎士きしの主君しゅくんに対たいする戦争せんそう協力きょうりょく（参戦さんせん要請ようせい）＝従軍じゅうぐん義務ぎむは、40 - 60日にち（2ヵ月かげつ）に限かぎられていた。

中世ちゅうせいの日本にっぽんにおいても軍事ぐんじ力りょくの中心ちゅうしんは武士ぶしとその郎党ろうとうであった。また僧兵そうへいも無視むしできない戦力せんりょくを誇ほこった。日本にっぽんにおいては傭兵ようへいは目立めだつ存在そんざいではないが、それに類るいする雇やとわれ戦力せんりょく（例たとえば海賊かいぞくの類るい）は存在そんざいした。戦国せんごく期きに入はいり戦乱せんらんが多発たはつするようになると、農民のうみんなどが足軽あしがるとして参戦さんせんするようになる。織田おだ信長のぶながは周囲しゅういと異ことなり常備じょうび軍ぐんを主力しゅりょくとすることで、農繁期のうはんきに左右さゆうされることのない軍ぐんを作つくり上あげ、勢力せいりょく拡大かくだいに成功せいこうした。

さらに豊臣とよとみ秀吉ひでよしの刀かたな狩かり令れいにより武士ぶしと非ひ戦闘せんとう民みんは明確めいかくに区別くべつされ、これは江戸えど時代じだいの終おわりまで続つづいた。

近世きんせい

オスマン帝国ていこくでは、一種いっしゅの徴兵ちょうへい制度せいどであるデヴシルメ制せい（強制きょうせい徴用ちょうようの意い）によってイェニチェリなどの常備じょうび軍ぐんを整備せいびした。

近世きんせいではスウェーデンが三さん十じゅう年ねん戦争せんそう時ときに徴兵ちょうへい制せいを採用さいようし、人口じんこうの少すくなさを補おぎない大軍たいぐんを編成へんせいした。ただし、この制度せいどには経済けいざい的てき・心理しんり的てき負担ふたんが大おおきく、部隊ぶたいの質しつが低ひくくなりがちになる欠点けってんがあった。そのため結果けっかとして国民こくみんの離散りさん・国家こっかの荒廃こうはいを招まねくこととなる。プロイセン王国おうこく（ドイツ）ではフリードリヒ大王だいおうが軍事ぐんじ的てき拡張かくちょう主義しゅぎを採とり、人口じんこうの4%に当あたる常備じょうび軍ぐんを作つくったが、このとき大だい規模きぼな傭兵ようへいを養やしなえる財政ざいせいがなく、志願しがん制せいでは数かずが満みたせなかったために、1733年ねんに徴兵ちょうへい制せい(カントン制度せいど)を敷しいて農民のうみんを強制きょうせい的てきに軍隊ぐんたいに組くみ込こんだ。この軍ぐんは質しつが悪わるく士気しきが低ひくいため、厳罰げんばつ主義しゅぎによって規律きりつを保たもとうとしたが困難こんなんであった。

イギリスでは海軍かいぐんもしくは陸軍りくぐんに強制きょうせい的てきに徴用ちょうようされる強制きょうせい徴募ちょうぼやクオータ制せいがしばしば行おこなわれた。対象たいしょうは自じ国民こくみんや自国じこく籍せき船せんだけでなく、航海こうかい中ちゅうの船舶せんぱくや時ときには他た国民こくみんに対たいしても行おこなわれ、また植民しょくみん地ちの居酒屋いざかややその他たの溜たまり場ばで根ねこそぎ強制きょうせい徴募ちょうぼされるような事態じたいも発生はっせいした。

近代きんだい

第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせんの時期じき、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくで発行はっこうされた徴兵ちょうへい対象たいしょう者しゃへの身上しんじょう調査ちょうさカード

いわゆる近代きんだい的てきな国民こくみん皆兵かいへいによる徴兵ちょうへい制せいはフランス革命かくめいから始はじまる。フランス革命かくめい以降いこう、国家こっかは王おうではなく国民こくみんのものだという建前たてまえになったため、戦争せんそうに関かんしても王おうや騎士きしなど一いち握にぎりの人間にんげんではなく、主権しゅけん者しゃたる国民こくみん全員ぜんいんが行おこなう義務ぎむがあるということになった。そして革命かくめいに伴ともなう周辺しゅうへん諸国しょこくとの戦争せんそうで兵員へいいんを確保かくほする必要ひつように迫せまられたため、ナポレオンなどによって国民こくみん軍ぐんが作つくられた。貧まずしい人々ひとびとにとっては軍隊ぐんたいの暮くらしは人々ひとびとの暮くらしよりも比較的ひかくてきましであり、給与きゅうよと生活せいかつを保障ほしょうされるという側面そくめんも存在そんざいした。時代じだいが下くだると徴兵ちょうへいは名誉めいよであり、祖国そこくに対たいする忠誠ちゅうせい義務ぎむと受うけ取とられるようになった。一般いっぱんの間あいだでも徴兵ちょうへい不ふ適格てきかく者しゃへの侮蔑ぶべつがみられるようになった。

近代きんだいに徴兵ちょうへい制せいが生うみ出だされたのは、戦争せんそうの近代きんだい化かに伴ともなって兵器へいきの威力いりょくが増まして、志願しがん制せいでは人員じんいんの補充ほじゅうができなくなるほど戦死せんし者しゃが多おおくなったことと、国民こくみん主権しゅけんの原理げんりによって国民こくみんを戦場せんじょうに駆かり出だす大義名分たいぎめいぶんができたのが主おもな理由りゆうである。アメリカは南北戦争なんぼくせんそうの激戦げきせんによって大量たいりょうの兵士へいしが死亡しぼうし、その欠員けついんを補おぎなうために徴兵ちょうへい制せいが敷しかれた。イギリスでも第だい一いち次じ大戦たいせん半なかばのソンムの戦たたかいなどで多おおくの戦死せんし者しゃを出だし、戦争せんそうを継続けいぞくするために徴兵ちょうへい制せいを敷しいた。

徴兵ちょうへい制度せいどは本国ほんごくの議会ぎかい制定せいてい法ほうと市民しみん登録とうろく（日本にっぽんでは戸籍こせき簿ぼ）を基礎きそに実施じっしされるため、占領せんりょう地ちには適用てきようされないのが通例つうれいとなっている。ハーグ陸戦りくせん条約じょうやくでは軍事ぐんじ占領せんりょう地ちでの住民じゅうみんへの忠誠ちゅうせいの宣誓せんせいを強制きょうせいすることを禁きんじており（45条じょう）、占領せんりょう地ちで兵員へいいん確保かくほを行おこなうにしても、一定いっていの教育きょういくを受うけたことや、占領せんりょう地ち支配しはいに協力きょうりょく的てきな民族みんぞくや部族ぶぞくの成員せいいんであることを条件じょうけんに採用さいようする志願しがん兵へい制せいによることが基本きほんであった。いわゆる「植民しょくみん地ち」についても同様どうようで、現地げんちに有力ゆうりょくな民族みんぞくや政体せいたいが存在そんざいする場合ばあい、現地げんち政体せいたいを保護ほご国こく化かすることで間接かんせつ支配しはいする体制たいせいを採用さいようしたため、いわゆる植民しょくみん地ち住民じゅうみんに直接ちょくせつ徴兵ちょうへい制せいを課かすことはなかった。一方いっぽうで直轄ちょっかつ植民しょくみん地ちや外地がいちの場合ばあい、本ほん国籍こくせき住民じゅうみんは本国ほんごく軍ぐんもしくは植民しょくみん地ち軍ぐんからの招集しょうしゅう命令めいれいに対たいして応召おうしょうする義務ぎむがあった。

この点てん、短期間たんきかんであるとはいえ植民しょくみん地ち住民じゅうみんに徴兵ちょうへい制せいを実施じっしした日本にっぽんは異例いれいである。日本にっぽん国民こくみん（帝国ていこく臣民しんみん）でありながら朝鮮ちょうせん人じん、台湾たいわん人じんは長ながらく兵役へいえきの義務ぎむから除外じょがいされており、日本にっぽん軍ぐんへの参加さんかは志願しがん制度せいどに限定げんていされていたが、兵役へいえき法ほう改正かいせいによって1943年ねんに朝鮮ちょうせん人じんに対たいして、1944年ねんに台湾たいわん人じんに対たいして日本にっぽん内地ないち人じんと同様どうようの兵役へいえき義務ぎむが課かせられた。これらの植民しょくみん地籍ちせき徴集ちょうしゅう兵へいは、戦争せんそう終結しゅうけつのため実際じっさいの戦闘せんとうに投入とうにゅうされることはなかった。ただし、日本にっぽん統治とうち下かの朝鮮ちょうせん・台湾たいわんを欧米おうべいのそれと同様どうような「植民しょくみん地ち」と解げすることには異論いろんもある。（→『内地ないち延長えんちょう』）

現代げんだい

MQ-9 リーパー。遠隔えんかく操作そうさにより偵察ていさつや攻撃こうげきが可能かのう

戦争せんそうの近代きんだい化かと兵器へいきの機械きかい化か・精密せいみつ化か・自動じどう化か（ハイテク化か）の進展しんてんは、少しょう人数にんずうで高性能こうせいのうの兵器へいきの運用うんようが可能かのうとなったことから軍隊ぐんたいの省力しょうりょく化かと定員ていいんの減少げんしょうをもたらし、同時どうじに兵器へいきの運用うんよう技術ぎじゅつの高度こうど化か・専門せんもん化かを招まねいた。定員ていいんの減少げんしょうによって大量たいりょうの新兵しんぺい募集ぼしゅうは不ふ必要ひつようとなり、訓練くんれんにも費用ひようがかかりすぎるなどの理由りゆうによって徴兵ちょうへい制度せいどの存在そんざい意義いぎは低下ていかした。これを予言よげんした軍人ぐんじんとしてはド・ゴールが挙あげられる。現代げんだいにおいては再ふたたび軍人ぐんじんの専門せんもん職しょく化か、つまり職業しょくぎょう軍人ぐんじんが軍ぐんの大だい多数たすうを占しめる職業しょくぎょう軍人ぐんじんの時代じだいが到来とうらいしたと言いえる。西にしヨーロッパ諸国しょこくでは冷戦れいせん終了しゅうりょう後ごから2000年代ねんだい初頭しょとうにかけて次々つぎつぎと徴兵ちょうへい制せいを廃止はいしし、イギリス・フランス・イタリア・スペイン・ポルトガル・オランダ・ベルギーなどは志願しがん制せいに移行いこうしている。旧きゅう社会しゃかい主義しゅぎ国こくだったチェコやスロバキア、ハンガリー、ルーマニアもEUやNATOに加盟かめいすると、ほぼ同時どうじに徴兵ちょうへい制せいを廃止はいしした。また、人海じんかい戦術せんじゅつの印象いんしょうが強つよい中国ちゅうごくでは志願しがん兵へいを主要しゅようとして少数しょうすうの徴集ちょうしゅう兵へいを組くみ合あわせた志願しがん・徴兵ちょうへい並立へいりつ制せいに移行いこうしている。ロシアでは、志願しがん制せいの採用さいようが本格ほんかく的てきに検討けんとうされている。

現在げんざい、兵器へいきやコンピュータなどの技術ぎじゅつの高度こうど化か・専門せんもん化かが進すすんでいることにより、これらを扱あつかう軍人ぐんじんの専門せんもん職しょく化かが進すすみ、単たんに兵士へいしの数かずや士気しきで戦況せんきょうが決きまることがなくなってきたため、徴兵ちょうへい制度せいどは一部いちぶの国くにを除のぞき廃止はいしする動うごきが強つよくなってきている（徴兵ちょうへい制度せいどが維持いじされている国家こっかでも、良心りょうしん的てき兵役へいえき拒否きょひ権けんを認みとめるようになってきている）。また冷戦れいせん時代じだいに想定そうていされていた多数たすうの兵員へいいんを動員どういんした総そう力戦りきせんが起おこりにくくなったことや、民間みんかん軍事ぐんじ会社かいしゃの発展はってんにより不完全ふかんぜんではあるが、必要ひつような時ときだけ必要ひつような数かずの人員じんいんを確保かくほすることが可能かのうになったこと、軍用ぐんようロボットの高度こうど化かにより必要ひつような人員じんいんが減へっていくと予想よそうされていることも後押あとおししている。

単純たんじゅんな兵員へいいん数すうで戦況せんきょうが決きまるわけではないことは防衛ぼうえい戦せんにおいては古ふるくから証明しょうめいされているが、侵攻しんこう作戦さくせんなどにおいても湾岸わんがん戦争せんそうやイラク戦争せんそうなどで実証じっしょうされつつある。

徴兵ちょうへい制度せいどの賛否さんぴ

公平こうへい負担ふたんの観点かんてん

アフガニスタン駐留ちゅうりゅう米べい軍ぐんおよびISAFの司令しれい官かんだったスタンリー・マクリスタルは、志願しがん制度せいどによる専門せんもん職しょく的てきな軍隊ぐんたいは全ぜん国民こくみんを代表だいひょうしておらず、アメリカがふたたび長期ちょうきの戦争せんそうをする場合ばあいには徴兵ちょうへい制度せいどを復活ふっかつさせるべきであると述のべた。またマクリスタルは、全ぜん国民こくみんの1パーセントに満みたず、何なん度ども召集しょうしゅうされる予備よび役やく兵へいが、キャリアや一家いっかの維持いじに問題もんだいをかかえ、その自殺じさつ率りつも高たかいと指摘してきした。また、米べい陸軍りくぐん大佐たいさポール・イングリングは、徴兵ちょうへい制度せいどによって国内こくないのあらゆる社会しゃかいが戦争せんそうの重荷おもにをひとしく感かんじられるようになると論ろんじた。

反戦はんせん平和へいわの観点かんてん

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくは第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせんに伴ともない、1917年ねんに新あらたに徴兵ちょうへい法ほう（The Selective Service Act）を可決かけつし、このことはアメリカ軍国ぐんこく主義しゅぎ反対はんたい連盟れんめい（AUAM）のメンバーがアメリカ自由じゆう人権じんけん協会きょうかい（ICLU）を結成けっせいするきっかけとなった。なお、同どう団体だんたいの創始そうし者しゃであるロジャー・ボールドウィン（Roger Nash Baldwin）は第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん終了しゅうりょう後ごには、ダグラス・マッカーサーに招待しょうたいされ日本にっぽんにおける自由じゆう人権じんけん協会きょうかい（JCLU）の結成けっせいを促うながした。

アメリカの民主党みんしゅとうのチャールズ・ランゲルやアーネスト・ホリングスなどは、反戦はんせん平和へいわの観点かんてんから一般いっぱん国防こくぼう法ほうという、18歳さいから25歳さいを対象たいしょうにした徴兵ちょうへい制度せいど法案ほうあんをたびたび提出ていしゅつしている。これは、自分じぶんたちの子供こどもが徴兵ちょうへいの対象たいしょうとなれば、戦争せんそうに対たいする拒否きょひ感かんが生うまれるというものであるものであるが、徴兵ちょうへい制せい採用さいようの必要ひつようはないという政府せいふ側がわの見解けんかいや、世論せろんも徴兵ちょうへい制せいに反対はんたいしているためにすべて廃案はいあんとなっている。

軍事ぐんじ力りょくの質しつの確保かくほ

2016年ねん9月がつ、スウェーデンは、2010年ねんに廃止はいしした徴兵ちょうへい制せいを復活ふっかつさせると発表はっぴょうしている。この理由りゆうとして、スウェーデンの専門せんもん家かは、志願しがん制せいでは兵へいの質しちや量りょうを確保かくほすることが出来できないという理由りゆうを挙あげている。

徴兵ちょうへい制度せいどの問題もんだい

大日本帝国だいにっぽんていこく陸軍りくぐん軍人ぐんじん給与きゅうよ、1943年ねん（昭和しょうわ18年ねん）

位くらい	給与きゅうよ（円えん/月つき）
大将たいしょう	550
中将ちゅうじょう	483
少将しょうしょう	416
大佐たいさ	370
中佐ちゅうさ	310
少佐しょうさ	220
大尉たいい	155
中尉ちゅうい	94
少尉しょうい	70
准尉じゅんい	110
曹長そうちょう	75
軍曹ぐんそう	30
伍長ごちょう	20
兵長へいちょう	13
上等じょうとう兵へい	10
一等いっとう兵へい	9
二等兵にとうへい	6

徴兵ちょうへい制度せいどは納税のうぜいなどと同おなじく「国民こくみんの義務ぎむ」として導入どうにゅうされる性質せいしつのものであり、職業しょくぎょう軍人ぐんじんとは異ことなり、徴集ちょうしゅう兵へいに対たいして生計せいけいを営いとなみ人生じんせいを設計せっけいするに足たる額がくの賃金ちんぎんは支払しはらわれないのが通常つうじょうである。このため、かつては給与きゅうよを抑おさえられることから人件じんけん費ひ抑制よくせいを期待きたいできる側面そくめんがあった。旧きゅう日本にっぽん軍ぐんの場合ばあい、兵長へいちょうまでが徴兵ちょうへいによる兵へいであり、伍長ごちょう以上いじょうは官吏かんりすなわち職業しょくぎょう軍人ぐんじんの扱あつかいであった。ただし表ひょうに挙あげた給与きゅうよの格差かくさについては、兵へいと下士官かしかんには衣食住いしょくじゅうや各種かくしゅの個人こじん装備そうびが現物げんぶつ支給しきゅうないし貸与たいよされるのに対たいし、尉官いかん以上いじょうの士官しかんはすべて俸給ほうきゅうから自弁じべん調達ちょうたつする必要ひつようがあった点てんも影響えいきょうする。

現在げんざい、徴兵ちょうへい制度せいどを採用さいようしている一部いちぶの国くにでは訓練くんれんに莫大ばくだいな費用ひようがかかるため、軍事ぐんじ政策せいさくに関かんして批判ひはんもある。また、若わかい時期じきに2年ねん～3年ねん以上いじょうの期間きかん兵役へいえきを課かすことによって、その間あいだの学力がくりょくや技術ぎじゅつの向上こうじょうが妨さまたげられ、若年じゃくねん労働ろうどう力りょくが奪うばわれ産業さんぎょうに悪影響あくえいきょうを及およぼし、国力こくりょくとして損失そんしつが出でているとの指摘してきもある。ドイツでは兵役へいえきは若者わかものの学問がくもん的てき向上こうじょう期間きかんを制約せいやくするとの認識にんしきもあり、批判ひはんが根強ねづよい。実際じっさいにドイツでは学力がくりょく低下ていかが著いちじるしく、他たのヨーロッパ諸国しょこくに差さを付つけられつつある。イランにおいても、18歳さい以上いじょうの男子だんしのみ兵役へいえきが課かされるため、除隊じょたいしてから受験じゅけん勉強べんきょうするのが面倒めんどう、という理由りゆうで、男性だんせいのほとんどが高卒こうそつとなっている。また、一般いっぱんに徴用ちょうよう兵へいは自発じはつ的てきではなく強制きょうせいされている点てんで志願しがん兵へいより士気しき・意欲いよく（モチベーション）が低ひくく、訓練くんれん期間きかんも短みじかいため兵へいの質しつが低下ていかする。

また、一般いっぱんに民主みんしゅ制せい国家こっかでは、志願しがん制せいと徴兵ちょうへい制せいで待遇たいぐうに大差たいさはない。まず軍ぐんの就職しゅうしょく先さきとしての魅力みりょくは決けっして低ひくくなく、給与きゅうよの上昇じょうしょうは抑おさえられている。国くにが待遇たいぐうを保証ほしょうし、衣食住いしょくじゅうに不自由ふじゆうがないために軍ぐんに入隊にゅうたいを希望きぼうする若者わかものは少すくなくない。特とくに教育きょういく費用ひようを捻出ねんしゅつできず、キャリアに展望てんぼうを持もてない低てい所得しょとく層そうにとっては魅力みりょく的てきな存在そんざいである。軍ぐんや政府せいふでも従軍じゅうぐん中ちゅうに各種かくしゅ技能ぎのうや資格しかくを取得しゅとくしたり、勤務きんむ成績せいせきが優秀ゆうしゅうな者ものについては士官しかん学校がっこうへの推薦すいせん枠わくを与あたえて将校しょうこうへの道みちを開ひらくなどの機会きかいを与あたえ、除隊じょたい後ごも退役たいえき軍人ぐんじん向むけの奨学しょうがく金きん制度せいどや職業しょくぎょう訓練くんれんなどを用意よういする例れいが多おおく、退役たいえき軍人ぐんじん会かいや在郷ざいきょう軍人ぐんじん会かいなどのネットワークを通つうじ、退役たいえき後ごの生活せいかつについて援助えんじょを得えられるように配慮はいりょしている。逆ぎゃくに徴兵ちょうへい制せいだからといって給与きゅうよや待遇たいぐうを削けずりすぎると不満ふまんにつながり、汚職おしょくや政情せいじょう不安ふあんの原因げんいんになる。特とくに不満ふまんが支持しじ率りつに影響えいきょうする民主みんしゅ制せい国家こっかにおいて顕著けんちょである。

国富こくふ・国家こっか財政ざいせいの面めんからいっても問題もんだいは多おおい。若わか青年せいねん層そうを網羅もうら的てきに徴用ちょうようすることで就労しゅうろう上じょうや学究がっきゅう上じょうのキャリアの断絶だんぜつにつながる。直接的ちょくせつてきには数すう万まん単位たんいの若年じゃくねん労働ろうどう力りょくが労働ろうどう市場いちばから隔離かくりされることで、労働ろうどうコストの上昇じょうしょうや生産せいさん力りょくの低下ていかを招まねく可能かのう性せいがある。また徴用ちょうよう兵へいに対たいする国庫こっこ負担ふたんが生しょうじる一方いっぽうで、徴用ちょうようされた人ひとが納おさめるはずだった所得しょとく税ぜい等とうが国庫こっこに入はいらなくなる（参照さんしょう:軍事ぐんじケインズ主義しゅぎ）。

経済けいざい学者がくしゃのスティーヴン・ランズバーグは「軍隊ぐんたいを維持いじするコストは、兵士へいしになった若者わかものが失うしなう機会きかいの価値かちに等ひとしい」と指摘してきしている。

女性じょせい兵士へいしの徴兵ちょうへい

イスラエル軍ぐんの招集しょうしゅうされた女性じょせい兵士へいし

徴兵ちょうへい対象たいしょうは男性だんせいだけである国家こっかが多おおく、女性じょせいも対象たいしょうとなる国くにはイスラエル、マレーシア、ノルウェー、北朝鮮きたちょうせん、スウェーデン などである。

女性じょせい兵士へいしの徴兵ちょうへいにおける課題かだい点てんとしては、性せい暴力ぼうりょくの多おおさとその検挙けんきょ率りつの低ひくさが挙あげられる。例たとえば北朝鮮きたちょうせんでは強姦ごうかんが日常にちじょう的てきであり、志願しがん制せいの米兵べいへいでは1日にちに50件けん程度ていどの性せい暴力ぼうりょくが確認かくにんされており、3割わり以上いじょうが強姦ごうかん被害ひがい、6割わり以上いじょうが性的せいてき嫌いやがらせを受うけている。

かつては、徴兵ちょうへいの義務ぎむが課かせられたことが、男性だんせいのみに参政さんせい権けん等とうの権利けんりが与あたえられる根拠こんきょとなっていた が、アメリカの社会しゃかい学者がくしゃ・マスキュリストのワレン・ファレルは、男性だんせいのみに徴兵ちょうへい制度せいどが強制きょうせいされている状態じょうたいを男性だんせい差別さべつであると指摘してきし、批判ひはんしている。

志願しがん制せいの国家こっかでは、男性だんせいしか志願しがんできないことが女性じょせい差別さべつになりうる。特とくに貧困ひんこん層そうにおいては、経済けいざい的てき理由りゆうから入隊にゅうたいを希望きぼうする場合ばあいもあるため（経済けいざい的てき徴兵ちょうへい制せい）、2013年ねんに、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく議会ぎかいは男女だんじょ平等びょうどうの原則げんそくに基もとづき、女性じょせい兵士へいしの前線ぜんせんでの戦闘せんとう行為こういを容認ようにんする法律ほうりつの施行しこうを2016年ねんまでにすすめることを決きめた。大統領だいとうりょうであるバラク・オバマは、この決定けっていを男女だんじょ平等びょうどうへの歴史れきし的てき一いち歩ほと述のべた。

イギリス帝国ていこくは、1917年ねんに志願しがん陸軍りくぐん婦人ふじん部隊ぶたい（Women’s Army Auxiliary Corps,WAAC）を結成けっせいしていた。第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんで女性じょせいを徴兵ちょうへいした唯一ゆいいつの国家こっかであったが、補助ほじょ地方ちほう義勇軍ぎゆうぐん（後のちに王立おうりつ婦人ふじん陸軍りくぐん）や婦人ふじん補助ほじょ空軍くうぐんに配置はいちされ、輸送ゆそう、電信でんしん、看護かんごなど後方こうほう支援しえんが任務にんむであり、不足ふそくしていた国内こくないでの運転うんてん手しゅとして配置はいちもあった。また階級かいきゅうも准じゅん大尉たいいのような特別とくべつなものが使用しようされた。

詳細しょうさいは「:en:Women in World War II#Great Britain」を参照さんしょう

エリザベス2世せいも徴兵ちょうへいされ従軍じゅうぐんしている。

日本にっぽんの国民こくみん義勇ぎゆう戦闘せんとう隊たいについては、義勇ぎゆう兵役へいえき法ほうにより女性じょせいにも義勇ぎゆう召集しょうしゅうに応おうずる義務ぎむが課かせられ、竹槍たけやりやなぎなたを使つかった白兵戦はくへいせんの訓練くんれんが実施じっしされていたが、実際じっさいの軍事ぐんじ行動こうどうを行おこなう事態じたいには至いたらなかった。

ノルウェーでも、かつては徴兵ちょうへいは男性だんせいのみとなっていたが、2014年ねんに女性じょせいも対象たいしょうとする法案ほうあんが可決かけつし、2015年ねんから女性じょせいの徴兵ちょうへいを開始かいしした。訓練くんれん内容ないようだけでなく、部屋へやも男女だんじょ混合こんごうである。2018年ねんから開始かいしされるスウェーデンの徴兵ちょうへい制せいも同様どうように、女性じょせいをも徴兵ちょうへいの対象たいしょうにしている。デンマークにおいても、2026年ねんから女性じょせいの徴兵ちょうへいが開始かいしされる予定よていである。

徴兵ちょうへい忌避きひ

1863年ねんにニューヨークで発生はっせいした徴兵ちょうへい制度せいどへの反対はんたい抗議こうぎは、暴動ぼうどうに発展はってんした。暴動ぼうどうの発生はっせい理由りゆうは、徴兵ちょうへい回避かいひに大金たいきんがかかり、それが富裕ふゆう層そう優遇ゆうぐうとされたためだった。

「兵役へいえき逃のがれ」も参照さんしょう

徴兵ちょうへい制せいが行おこなわれてからもすべての人ひとがそれに従したがったわけではなく、国家こっかや政治せいじ体制たいせいへの忠誠ちゅうせい心しんの不在ふざいや反感はんかん、死しや負傷ふしょうへの恐怖きょうふ、経済けいざい的てき理由りゆう、平和へいわ主義しゅぎや宗教しゅうきょう上じょうの信条しんじょうなど様々さまざまな理由りゆうにより、兵役へいえきから逃のがれようとする人々ひとびとも多おおく現あらわれた。単たんに徴兵ちょうへいから逃のがせるのではなく、不満ふまんから暴動ぼうどうや反乱はんらんに発展はってんする例れいもある。例たとえば264年ねん、中国ちゅうごく三さん国こく時代じだいの呉ごでは、徴兵ちょうへいを含ふくむ労役ろうえきに招集しょうしゅうされるのを不満ふまんに思おもった交州の住民じゅうみんが、役人やくにんの呂りょ興きょうに率ひきいられて、朝廷ちょうていに対たいして反乱はんらんを起おこしている。日本にっぽんでは1873年ねん（明治めいじ6年ねん）にいわゆる血税けつぜい一揆いっきが発生はっせいした。

徴兵ちょうへいを逃のがれるには徴兵ちょうへい制度せいどのない国籍こくせきへの帰化きか、亡命ぼうめい、免除めんじょ規定きていの活用かつよう（高額こうがくの税金ぜいきんの支払しはらいや、その他た特例とくれいの利用りよう）、身体しんたい毀損きそんや逃亡とうぼうなどがあるが、意思いし的てきな不ふ服従ふくじゅうの立場たちばから徴兵ちょうへいに従したがわないことを徴兵ちょうへい拒否きょひといい、そのなかでもさらに倫理りんり的てき・政治せいじ的てき・宗教しゅうきょう的てきな信条しんじょうに発はっする徴兵ちょうへいの拒否きょひを良心りょうしん的てき兵役へいえき忌避きひという。思想しそう・良心りょうしんの自由じゆうを標榜ひょうぼうする自由じゆう主義しゅぎ国家こっかにおいては国家こっかへの忠誠ちゅうせいとともに重要じゅうような課題かだいである。また、軍務ぐんむに服ふくする意欲いよくのない者ものを徴兵ちょうへいすることはかえって兵へいの質しつの維持いじに支障ししょうをきたすため、その意味いみでも適切てきせつな兵役へいえき忌避きひ制度せいどの整備せいびは重要じゅうようとなることがある。

一般いっぱん的てきに徴兵ちょうへい忌避きひは、法律ほうりつの規定きていによって罰ばっせられ懲役ちょうえきや財産ざいさん刑けいの対象たいしょうになることが多おおい。しかし現在げんざいでは良心りょうしん的てき兵役へいえき忌避きひを基本きほん的てき人権じんけんの1つとして認みとめ、その代替だいたいに清掃せいそうや介護かいご、消防しょうぼうのような社会しゃかい奉仕ほうし活動かつどうへの従事じゅうじを制度せいどとして整備せいびしている国くにが多おおい。

徴兵ちょうへい拒否きょひの実例じつれい

日本にっぽんでは近代きんだいに集権しゅうけん的てきな政府せいふによって徴兵ちょうへい制せい（徴兵ちょうへい令れい）が実施じっしされると、徴兵ちょうへいが免責めんせきされていた養子ようしの身分みぶんを得えるために養子ようし縁組えんぐみを行おこなう者ものや、徴兵ちょうへい制せい施行しこうが先さき延のばしにされていた北海道ほっかいどうに本籍ほんせきを移うつす者もの（近代きんだいの徴兵ちょうへい制せいは本籍ほんせき地ちで区分くぶんされた）が後こうを絶たたなかった（兵役へいえき逃のがれ）。同様どうように朝鮮ちょうせん・台湾たいわんなど植民しょくみん地ちや、沖縄おきなわや小笠原諸島おがさわらしょとうなど徴兵ちょうへい制せいのない土地とちに移住いじゅうする者ものもいた。著名ちょめいな人物じんぶつでは夏目なつめ漱石そうせき、鈴木すずき梅太郎うめたろうらが本籍ほんせき地ちを移うつして徴兵ちょうへい忌避きひ者しゃとなっている。血税けつぜい一揆いっきなど徴兵ちょうへい制せいそのものに反対はんたいする暴動ぼうどうも発生はっせいし、遂ついには「徴兵ちょうへい忌避きひの指南しなん書しょ」が販売はんばいされるまでになり、国民こくみん皆兵かいへいを目指めざす明治めいじ政府せいふを悩なやませた。政府せいふの苦悩くのうを他所よそに国民こくみんの間あいだでは「徴兵ちょうへい、懲役ちょうえき、一いち字じの違ちがい」と、「徴兵ちょうへいは監獄かんごくに入いれられるのと同おなじであり、徴兵ちょうへい忌避きひは当然とうぜんのことだ」と揶揄やゆする言葉ことばが流行りゅうこうした。徴兵ちょうへい忌避きひ者しゃにはのちの立憲りっけん政友せいゆう会かい総裁そうさい、社会しゃかい民衆みんしゅう党とう党首とうしゅ、元勲げんくんの女婿じょせい、帝国ていこく美術びじゅつ院いん会員かいいんなどもいる。

こうした徴兵ちょうへい忌避きひ者しゃを減へらすべく、徴兵ちょうへい令れいに代かわり制定せいていされた兵役へいえき法ほうでは「徴兵ちょうへいを不当ふとうに忌避きひしようとした者もの」には罰則ばっそくが設もうけられた。他たに第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん中ちゅうに学徒がくと出陣しゅつじんが行おこなわれた際さい、学徒がくと動員どういんの対象たいしょう外がいとされた理工りこう系けい学部がくぶに生徒せいとが殺到さっとうし、文系ぶんけい学部がくぶから転うたて科かする者ものも大勢おおぜい現あらわれた。

1861年ねんに成立せいりつしたイタリア王国おうこくでは徴兵ちょうへい忌避きひが全国ぜんこく的てきに発生はっせいし、1860年ねんから1871年ねんの間あいだに13万まん8千せん人にんの徴兵ちょうへい忌避きひ者しゃを出だしている。1865年ねん以後いごは徐々じょじょに減少げんしょうしたものの、1884年ねんの2.87%を下限かげんとして再ふたたび上昇じょうしょうし、1895年ねん以降いこうは徴兵ちょうへい対象たいしょう者しゃの9%以上いじょうが徴兵ちょうへい忌避きひを行おこなっている。

ベトナム戦争せんそう期きのアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでは平和へいわ運動うんどうの高たかまりもあって大だい規模きぼな徴兵ちょうへい忌避きひが増加ぞうかした。政治せいじ的てきな理由りゆう、宗教しゅうきょう的てきな理由りゆうから徴兵ちょうへい拒否きょひは行おこなわれ、ベトナム戦争せんそう当時とうじ、モハメド・アリはイスラム教いすらむきょうの教おしえに従したがうとして、徴兵ちょうへいを拒否きょひした。SF作家さっかのウィリアム・ギブスンは、徴兵ちょうへいを拒否きょひしてカナダに移住いじゅうし、しばらくホームレスとして路上ろじょう生活せいかつを経験けいけんした。後ごの大統領だいとうりょうビル・クリントンは上院じょういん議員ぎいんJ・ウィリアム・フルブライトのスタッフであったために徴兵ちょうへいを受うけず、批判ひはん者しゃからは意図いと的てきな徴兵ちょうへい逃のがれではないかという指摘してきを受うけた。
やはり後のちに大統領だいとうりょうとなるジョージ・W・ブッシュも、連邦れんぽう軍ぐんを忌避きひするため州兵しゅうへいに志願しがんした。ジョージ・W・ブッシュ政権せいけん下かで副ふく大統領だいとうりょうを務つとめることになるディック・チェイニーは兵役へいえき逃のがれをしただけでなく州兵しゅうへいにすらならなかった。後のちにブッシュはイラク戦争せんそうを開戦かいせんし、チェイニー、国防こくぼう長官ちょうかんだったドナルド・ラムズフェルド両りょう名なは中心ちゅうしん人物じんぶつとして戦争せんそうに関かかわったが、先述せんじゅつの経緯けいいから「米べい軍ぐんの最高さいこう指揮しき官かんと大統領だいとうりょうの継承けいしょう順位じゅんい第だい1位い、更さらに米べい各かく軍ぐんの統括とうかつ省庁しょうちょうのトップがチキンホークである」と追及ついきゅうされることになる。
『ベトナム症候群しょうこうぐん』（著者ちょしゃ：松岡まつおか完かん、出版しゅっぱん社しゃ：中公新書ちゅうこうしんしょ）によると、ベトナム戦争せんそうへの徴兵ちょうへいに従したがわなかった者ものは57万まん人にん、うち起訴きそされた者ものは2万まん5000人にん、有罪ゆうざい判決はんけつを受うけた者ものは9000人にん、実際じっさいに処罰しょばつされたのは3000人にんとなっている。

また、黒人こくじん解放かいほう運動うんどう家かのマルコムXは精神せいしん異常いじょうを装よそおうことで、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんの際さいに徴兵ちょうへいされるのを逃のがれた。物理ぶつり学者がくしゃのファインマンは兵役へいえきにつく際さいに行おこなわれた精神せいしん鑑定かんていの結果けっか、不ふ採用さいようになった。アインシュタインは「偏平足へんぺいそく」の診断しんだんを受うけて、スイスの兵役へいえきを免除めんじょされている。

児童じどう文学ぶんがく作家さっかのミヒャエル・エンデは16歳さいの時とき、召集令状しょうしゅうれいじょうを破やぶり捨すて、ミュンヘンまでシュヴァルツヴァルトの森もりの中なかを夜間やかんのみ80km歩あるいて、疎開そかいしていた母ははの所ところへ逃亡とうぼう。その後ご、近所きんじょに住すむイエズス会かいの神父しんぷの依頼いらいでレジスタンス組織そしき「バイエルン自由じゆう行動こうどう」の反はんナチス運動うんどうを手伝てつだい、伝令でんれいとしてミュンヘンを自転車じてんしゃで駆かけ回まわった。

画家がかの山下やました清きよしは、徴兵ちょうへい検査けんさを逃のがれるために放浪ほうろうした。その後ご21歳さいの時ときに知的ちてき障害しょうがい者しゃ施設しせつの職員しょくいんによって滞在たいざい先さきの食堂しょくどうで発見はっけんされ、強制きょうせい的てきに徴兵ちょうへい検査けんさを受うけさせられたが兵役へいえきを免除めんじょされた。

アドルフ・ヒトラーはオーストリア＝ハンガリー帝国ていこくの徴兵ちょうへい義務ぎむを拒否きょひし、ミュンヘンで逃亡とうぼう生活せいかつを送おくった末すえに逮捕たいほされ、徴兵ちょうへい検査けんさを受うけたが不ふ適格てきかくと診断しんだんされた。第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせんの勃発ぼっぱつとともにドイツ帝国ていこく陸軍りくぐん（厳密げんみつにはバイエルン軍ぐん）へは積極せっきょく的てきに志願しがんした。『我わが闘争とうそう』 によると、ドイツに対たいする帰属きぞく心しんが強つよく、オーストリアのために戦たたかう気きはなかったからという。

ウクライナ侵攻しんこうにおけるウクライナでも、富裕ふゆう層そう向むけに徴兵ちょうへい逃のがれが横行おうこうしていることが報ほうじられた。兵役へいえき免除めんじょの証明しょうめい書しょ入手にゅうしゅをあっせんする「脱だつ徴兵ちょうへいビジネス」の一いち例れいでは、医大いだい生せいが知しり合あいかその知人ちじんのみを対象たいしょうに、仲介ちゅうかいの依頼いらいがあれば、仲間なかまの医師いしがいる徴兵ちょうへい事務所じむしょなどで検査けんさを受うけてもらい、心臓しんぞう病びょうなどを装よそおった診断しんだん書しょを軍ぐんに提出ていしゅつ。その後ご、1週間しゅうかんほどで兵役へいえき免除めんじょの証明しょうめい書しょ、通称つうしょう「ホワイトチケット」を入手にゅうしゅできる。費用ひようは5千せん～1万まんドル(68万まん～136万まん円えん)程度ていどで、1人ひとり当あたりの国民こくみん総そう所得しょとくが3540ドルのウクライナでは中ちゅう間あいだ層そうには手てが届とどきにくい金額きんがくとなっていた。また、成人せいじん男性だんせいの欧州おうしゅうへの違法いほう出国しゅっこくに関かかわったとして、隣国りんごくモルドバの親しんロシア派は支配しはい地域ちいき「沿ドニエストル共和きょうわ国こく」の仲介ちゅうかいグループの摘発てきはつも発表はっぴょうされた。費用ひようは1人ひとり5500ドルから。ウクライナの国境警備隊こっきょうけいびたいの当局とうきょく者しゃも関与かんよしていた。

徴兵ちょうへい制せいをめぐる世界せかい情勢じょうせい

概観がいかん

徴兵ちょうへい制せいを施行しこうしている国家こっかと地域ちいき

2019年ねん時点じてんの徴兵ちょうへい制せい施行しこう国こくと非ひ施行しこう国こくの割合わりあい
赤あか:徴兵ちょうへい制せい施行しこう国こく(66か国こく、34.2%)
緑みどり:徴兵ちょうへい制せい非ひ施行しこう国こく(127か国こく、65.8%)

2015年ねん時点じてんで、国際こくさい連合れんごう加盟かめい193か国こくのうち、軍隊ぐんたいを保有ほゆうする169か国こく中ちゅう、徴兵ちょうへい制せいを採用さいようしている国家こっかは、CIA World Factbookによると下記かきの64か国こくであり、国連こくれんから国家こっかとして承認しょうにんされていない地域ちいきで、徴兵ちょうへい制せいを採用さいようする地域ちいきは下記かきの1地域ちいき。

  赤あか：徴兵ちょうへい制せいを実施じっししている国家こっか・地域ちいき。

記事きじ冒頭ぼうとうの地図ちずと同おなじ。

アルメニア、オーストリア、 アゼルバイジャン、ベラルーシ、 スイス、 キプロス、デンマーク、フィンランド、 ジョージア、 ギリシャ、 モルドバ、ノルウェー、 ロシア、スウェーデン
 大韓民国だいかんみんこく、 朝鮮民主主義人民共和国ちょうせんみんしゅしゅぎじんみんきょうわこく、 中華民国ちゅうかみんこく、 モンゴル
イスラエル、 トルコ、 イエメン、 イラン、 クウェート、 シリア、 カタール、
カンボジア、ベトナム、 タイ、 マレーシア、 ラオス、 シンガポール
タジキスタン、 ウズベキスタン、 トルクメニスタン、 カザフスタン
アンゴラ、エジプト、 アルジェリア、 ベナン、 中央ちゅうおうアフリカ、 カーボベルデ、 コートジボワール、 ギニアビサウ、 ギニア、 マリ、 エスワティニ、 セネガル、 スーダン、 南みなみスーダン、 ソマリア、 チャド、 トーゴ、 チュニジア、 モザンビーク、 ニジェール、 赤道せきどうギニア
キューバ、 ブラジル、コロンビア、 ベネズエラ、 ボリビア、 パラグアイ、 エクアドル、 エルサルバドル、 グアテマラ、 メキシコ、 モロッコ

上記じょうきの内うち、

• 男女だんじょとも徴兵ちょうへいの対象たいしょうである国家こっか

  イスラエル、 マレーシア、 エリトリア、 北朝鮮きたちょうせん（2015年ねんより）、ノルウェー（2015年ねんから実施じっし）、スウェーデン

  ただし、マレーシアの徴兵ちょうへい制せいは軍ぐんへの兵士へいしとしての入隊にゅうたいではなく、「国防省こくぼうしょうの管理かんり下かで6か月げつ間あいだの共同きょうどう生活せいかつ」であるため、通常つうじょうの徴兵ちょうへい制せいとは異ことなる。

• 良心りょうしん的てき兵役へいえき拒否きょひが非合法ひごうほうであり、代替だいたい役務えきむが制度せいど化かされていない国家こっか

   朝鮮民主主義人民共和国ちょうせんみんしゅしゅぎじんみんきょうわこく、 トルコ

• 志願しがん兵へいを主おもとし少数しょうすうの徴集ちょうしゅう兵へいが組くみ合あわされた志願しがん・徴兵ちょうへい並立へいりつ制せいの国家こっか

  中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく

  毎年まいとし採用さいようされる中国ちゅうごく人民じんみん解放かいほう軍ぐん新兵しんぺいの枠わくは、志願しがん兵へいも徴集ちょうしゅう兵へいも計画けいかく的てきに決きめられている。入隊にゅうたい志願しがん者しゃ・被ひ奨励しょうれい者しゃの中なかから選抜せんばつされて現役げんえき志願しがん兵へいに採用さいようされる。これに漏もれた者ものは、徴兵ちょうへい制度せいどに委ゆだねられる。徴兵ちょうへいされた者ものが現役げんえき兵へいとなるか予備よび役やく兵へいとなるかは、年齢ねんれい・能力のうりょく・適性てきせいによって判断はんだんされる。民兵みんぺい組織そしきへの一定いってい期間きかんの参加さんかも兵役へいえきと見みなされる。

• 徴兵ちょうへいによる入隊にゅうたいを終了しゅうりょうした国家こっかと地域ちいき

  中華民国ちゅうかみんこく

  ただし、中華民国ちゅうかみんこくの徴兵ちょうへいによる入隊にゅうたいはなくなったが、1994年ねん～2004年ねんの間あいだに生うまれた者ものは、4カ月かげつの軍事ぐんじ訓練くんれんを受うける義務ぎむは残のこっている。しかし、中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくの軍事ぐんじ的てき脅威きょういを理由りゆうに2024年ねんに復活ふっかつする予定よていであり、2005年ねん以降いこうに生うまれた者ものは、1年ねんの兵役へいえきが課かせられる。

• 法律ほうりつ上じょうは形式けいしき的てきに兵役へいえき義務ぎむが規定きていされているものの、実質じっしつ的てきには徴兵ちょうへい制度せいどが存在そんざいしない国家こっか

  ミャンマー

徴兵ちょうへい制せいを施行しこうしていない国家こっか

2015年ねん時点じてんで、国際こくさい連合れんごう加盟かめい193か国こくのうち軍隊ぐんたいを保有ほゆうする169か国こく中ちゅう、徴兵ちょうへい制せいを採用さいようしていない国家こっかはCIA World Factbookによると上記じょうき以外いがいの105か国こく。国際こくさい連合れんごうから国家こっかとして承認しょうにんされていない地域ちいきで徴兵ちょうへい制せいを採用さいようしない地域ちいきは、上記じょうきの1地域ちいき以外いがいの地域ちいき。

en:Military serviceも参照さんしょう。

ドイツ、 ニュージーランド、 アイスランド、 インド、 日本にっぽん、 アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく（選抜せんばつ徴兵ちょうへい制せいあり）、 イギリス、 カナダ、 フランス、 イタリア、 スペイン、 ポルトガル、 オランダ、 ベルギー、 サウジアラビア、 ヨルダン、 パキスタン、 バングラデシュ、 アイルランド、 オーストラリア、 赤道せきどうギニア、 アルゼンチン、 コスタリカ、チェコ、 スロバキア、ハンガリー、 ニカラグア、ルーマニア、 ポーランド、 セルビア、 スロベニア、ブルガリア、 ブルネイ、 アラブ首長しゅちょう国こく連邦れんぽう、 クロアチア、 モンテネグロ、ラトビア、 セーシェル、 セントクリストファー・ネイビス、 ブルキナファソ

上記じょうきの内うち、

• 歴史れきし上じょう、過去かこに一いち度ども徴兵ちょうへい制せいを施行しこうしたことがない国家こっか

  ニュージーランド、 アイスランド、 インド

• 軍ぐんがない国家こっか

  

    一切いっさいの軍事ぐんじ力りょくを保有ほゆうしていない国家こっか

    常備じょうび軍ぐんは保有ほゆうしていないが、制限せいげんされた軍事ぐんじ力りょくは保有ほゆうしている国家こっか

  詳細しょうさいは「軍隊ぐんたいを保有ほゆうしていない国家こっかの一覧いちらん」を参照さんしょう

日本にっぽん

近代きんだいまでの徴兵ちょうへい制せい

明治めいじ以降いこうの徴兵ちょうへい制度せいどの経緯けいいは徴兵ちょうへい令れい・兵役へいえき法ほうを、徴兵ちょうへいの教育きょういくなどは兵へい (日本にっぽん軍ぐん)も参照さんしょう

明治維新めいじいしん以前いぜん

7世紀せいき末まつから8世紀せいき初はじめ、日本にっぽんは大陸たいりくの唐とうや新しん羅らと敵対てきたいしており、また日本にっぽん列島れっとう内ないでも蝦夷えぞなど異い民族みんぞくと小競こぜり合あいを繰くり返かえしていた。これらから防衛ぼうえいするため、日本にっぽんは養老ようろう律令りつりょうの軍ぐん防ぼう令れいによって、成人せいじん男性だんせい3人にんにつき1人ひとりを兵士へいしとして徴発ちょうはつし、軍団ぐんだんを構成こうせいするとした。しかし、実際じっさいに徴兵ちょうへいされた数かずはこの規則きそくより低ひくめであり、1戸こから1人ひとりが実数じっすうではなかったかと考かんがえられている。兵士へいしの食糧しょくりょうと武器ぶきは自弁じべんであり、負担ふたんがかなり重おもかったため、逃亡とうぼう兵へいが相次あいついでいた。

これらは、唐とうや新しん羅らと関係かんけい改善かいぜんが進すすみ、また蝦夷えぞたちの大和やまと民族みんぞくへの同化どうかが進すすんで脅威きょういが減少げんしょうすると不要ふようと考かんがえられるようになり、軍団ぐんだんは縮小しゅくしょう、廃止はいしの方向ほうこうになった。また日本にっぽんは律令りつりょう国家こっかから王朝おうちょう国家こっかに変化へんかしていく過程かていで、軍事ぐんじ政策せいさくもかつての民衆みんしゅうを徴用ちょうようする軍団ぐんだんから国衙こくが軍制ぐんせいに変化へんかした。身分みぶんが固定こてい化かするに従したがい、豪族ごうぞくや百姓ひゃくしょう、俘囚ふしゅうのうち、弓馬きゅうばに優すぐれるものを優先ゆうせん的てきに徴用ちょうようするようになり、軍ぐんは少数しょうすう精鋭せいえいの職業しょくぎょう軍人ぐんじんの集団しゅうだんへと変化へんかした。また、一般いっぱん民衆みんしゅうの兵役へいえきはほぼ無なくなった。

10世紀せいき以降いこう、国衙こくが軍制ぐんせいの発展はってんなど、様々さまざまな要因よういんから日本にっぽんには軍事ぐんじ貴族きぞく、すなわち武士ぶしという身分みぶんが形成けいせいされるようになった。武士ぶしは元来がんらい、自みずからが切きり開ひらいた土地とちを防衛ぼうえいしていたが、やがて軍事ぐんじを通つうじて貴族きぞくにも影響えいきょう力りょくを与あたえる存在そんざいとなり、やがて軍事ぐんじそのものを司つかさどる役目やくめが、朝廷ちょうていや貴族きぞくから武士ぶしに移うつっていく。源みなもと頼朝よりともによって鎌倉かまくら幕府ばくふが築きずかれると、幕府ばくふは朝廷ちょうていから半なかば独立どくりつして、全国ぜんこくの武士ぶしを直接ちょくせつに統括とうかつするようになる。一般いっぱん民衆みんしゅうは志願しがんや強制きょうせいなど、様々さまざまな方法ほうほうで戦争せんそうを含ふくむ軍事ぐんじ行動こうどうに参加さんかしたものの、これらは職業しょくぎょう軍人ぐんじんたりえず、武士ぶし階級かいきゅうによる軍事ぐんじ力りょくの独占どくせんが進すすんだ。

時代じだいが進すすみ、日本にっぽん全国ぜんこくで恒常こうじょう的てきに戦乱せんらんが続発ぞくはつする戦国せんごく時代じだいになると、職しょくの体系たいけい、身分みぶん制度せいどが崩壊ほうかいし、武士ぶしだけでなく農民のうみんや商人しょうにんも自みずからの実力じつりょくに相応ふさわしい発言はつげん力りょくを求もとめて軍事ぐんじ力りょくの整備せいびに努つとめ、時ときに戦乱せんらんに参入さんにゅうした。民衆みんしゅうと武士ぶしの境目さかいめは薄うすれ、農民のうみんは足軽あしがるや小荷駄こにだとして参戦さんせんした。武田たけだ家かなどには、半はん農のう半はん士しの者ものの中なかに、兵へいとして従軍じゅうぐんすることで年貢ねんぐの一部いちぶ負担ふたんを免除めんじょされた「軍役ぐんえき衆しゅ」と呼よばれる集団しゅうだんがいた。城しろや砦とりでの建設けんせつや修復しゅうふく、戦せんに巻まき込こまれた市街しがいの再建さいけんなどの土木どぼく工事こうじには、多おおくの人夫にんぷが動員どういんされた。戦国せんごく時代じだいは、太閤たいこう検地けんちの実施じっしから江戸えど幕府ばくふの確立かくりつによる兵へい農のう分離ぶんりが進すすめられるまで、農民のうみんと武士ぶしの境目さかいめは曖昧あいまいであり、多おおくの者ものが軍事ぐんじに携たずさわっていた時代じだいであった。農閑期のうかんきでなければ戦せんそのものが難むずかしいなど、一般いっぱん民衆みんしゅうの軍事ぐんじへの協力きょうりょくは非常ひじょうに重要じゅうようであった。

徳川とくがわ家康いえやすによって江戸えど幕府ばくふが開ひらかれた後のち、再ふたたび身分みぶんが固定こてい化かするようになったため、軍ぐん権けんは武士ぶし階級かいきゅうが独占どくせんするようになり、百姓ひゃくしょうや町人ちょうにんたちは原則げんそくとして軍事ぐんじから切きり離はなされた。江戸えど時代じだいにおける武士ぶし階級かいきゅうの軍ぐん権けんの独占どくせんは、幕府ばくふと大名だいみょうの武威ぶいに基もとづくものであり、武威ぶいは参勤交代さんきんこうたいにおける大名だいみょう行列ぎょうれつによって百姓ひゃくしょうや町人ちょうにんに示しめされた。ただし、大名だいみょう行列ぎょうれつは武士ぶしだけでは成なりたなかったため、大名だいみょうは、百姓ひゃくしょうや町人ちょうにんをエキストラとして行列ぎょうれつに参加さんかさせることで頭数とうすうを揃そろえることが多おおかった。

戦前せんぜんの徴兵ちょうへい制せい

1941年ねん頃ごろの日本にっぽんで行おこなわれていた徴兵ちょうへい検査けんさの光景こうけい

根拠こんきょ法令ほうれい

明治維新めいじいしんにより、江戸えど幕府ばくふが崩壊ほうかいして身分みぶん制度せいどが廃止はいしされると、1873年ねん（明治めいじ6年ねん）には国民こくみんの義務ぎむとして国民こくみん皆兵かいへいを目指めざす徴兵ちょうへい令れいが陸軍りくぐん省しょうにより発布はっぷされた。徴兵ちょうへい令れいは、それまで軍事ぐんじに関かんする権益けんえきを独占どくせんしていた武士ぶし（士族しぞく）の特権とっけんを奪うばうものと認識にんしきされ、士族しぞく反乱はんらんの原因げんいんの一ひとつとなった。一方いっぽう、徴兵ちょうへい令れいの対象たいしょうとなった平民へいみんからも不満ふまんが出でて、一部いちぶでは血税けつぜい一揆いっきなどの騒動そうどうに発展はってんした。

1889年ねん（明治めいじ22年ねん）公布こうふの大日本帝国だいにっぽんていこく憲法けんぽう（明治めいじ憲法けんぽう）第だい20条じょうにも「日本にっぽん臣民しんみんハ法律ほうりつノ定ていムル所しょニ従したがえヒ兵役へいえきノ義務ぎむヲ有ゆうス」として兵役へいえきの義務ぎむが規定きていされた。徴兵ちょうへい令れいはそれまでも何なん度どか改正かいせいを繰くり返かえしていたが、明治めいじ憲法けんぽう公布こうふの際さいに法律ほうりつとして全面ぜんめん改正かいせいがあった。その後ご1927年ねん（昭和しょうわ2年ねん）にも全面ぜんめん改正かいせいがあり、その際さいに兵役へいえき法ほうと改名かいめいされている。

徴兵ちょうへい制せいの概要がいよう

日本にっぽんの徴兵ちょうへい制度せいどは戸籍こせき制度せいどを前提ぜんていにしており、明治めいじ6年ねん1月がつ10日にち法ほうでは「一家いっかノ主人しゅじんタル者しゃ」や家産かさん・家業かぎょう維持いじの任にんに当あたる者ものは兵役へいえきの義務ぎむから免除めんじょされていた。戸籍こせき法ほうの適用てきようを受うける日本にっぽん国民こくみんの男性だんせいは、満まん20歳さい（1943年ねんからは19歳さい）の時ときに受うける徴兵ちょうへい検査けんさによって身体しんたい能力のうりょく別べつに甲かぶと-乙おつ-丙へい-丁ちょう-戊つちのえの5種類しゅるいに分わけられた。甲かぶとが最もっとも健康けんこうに優すぐれ体格たいかくが標準ひょうじゅんである甲種こうしゅ合格ごうかくとされ、ついで乙種おつしゅ合格ごうかく、丙へい種しゅ合格ごうかくの順じゅんである。丁ひのとは徴兵ちょうへいに不ふ適格てきかくな身体しんたいである場合ばあい、戊つちのえは病気びょうき療養りょうよう中ちゅうに付つき翌年よくねんに再さい検査けんさという意味いみである。

当初とうしょは一番いちばん体格たいかくが標準ひょうじゅん的てきである甲種こうしゅの国民こくみんが抽選ちゅうせんで選えらばれた場合ばあいに、「現役げんえき兵へい」として徴兵ちょうへいされるにとどまっていた。具体ぐたい的てきにはおおよそ10人にんに1人ひとりから4人にんに1人ひとり程度ていどであり、これらの兵士へいしが戦時せんじ体制たいせいとなる前まえの平時へいじの訓練くんれんを受うけた兵へいであった。戦争せんそうが始はじまると甲かぶとから順次じゅんじ徴兵ちょうへいされていった。しかし不公平ふこうへい感かんから全国ぜんこくで徴兵ちょうへい反対はんたい運動うんどう、あるいは徴兵ちょうへい逃のがれのための不正ふせいが横行おうこうするようになった。

そのため徴兵ちょうへい制度せいどは大だい改正かいせいされ1889年ねん（明治めいじ22年ねん）には法ほう制度せいど上じょう、男性だんせいに対たいして国民こくみん皆兵かいへいが義務付ぎむづけられ、甲種こうしゅ合格ごうかくの者ものはほとんどが入隊にゅうたいした。やがて徴兵ちょうへい逃のがれ行為こういも下火したびとなり、逆ぎゃくに乙種おつしゅ以下いかとされ徴兵ちょうへいされない事ことが不名誉ふめいよとみなされるようになった。

日にち中ちゅう戦争せんそうが激化げきかした1941年ねん（昭和しょうわ16年ねん）11月15日にち、兵役へいえき法ほう施行しこう令れいが改正かいせいされ、身体しんたいが虚弱きょじゃくなため徴集ちょうしゅうされなかった者もの（いわゆる第だい二に国民こくみん兵へい）を予備よび兵へいまたは補充ほじゅう兵へいと同様どうように招集しょうしゅうすることが可能かのうとなった。また中国ちゅうごく大陸たいりくに在留ざいりゅうする邦人ほうじんに対たいしても徴兵ちょうへい、召集しょうしゅうが可能かのうとなった。

太平洋戦争たいへいようせんそうにおいて戦局せんきょくが激化げきかするにつれ、現役げんえき兵へいとしての期間きかんを終おえた後のちの予備よび役やくや後備こうび役やくにあった元もと兵士へいしの国民こくみんも召集令状しょうしゅうれいじょうによって召集しょうしゅうされ、大戦たいせん末期まっきの昭和しょうわ20年ねんには徴集ちょうしゅう率りつは九きゅう割わりを超こえた。通常つうじょう、現役げんえきでの徴兵ちょうへいを「徴集ちょうしゅう」、予備よび役やく・後備こうび役やくでの徴兵ちょうへいを「召集しょうしゅう」と呼よんで区別くべつされていたが、混乱こんらん期きには区別くべつせずに「徴集ちょうしゅう」を用もちいることもあった。この召集しょうしゅう制度せいどが悪用あくようされた例れいとして竹槍たけやり事件じけんがある。さらに第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん末期まっきになると兵力へいりょく不足ふそくが顕著けんちょになり、文科ぶんか系けい学生がくせいへの徴兵ちょうへい（学徒がくと出陣しゅつじん）や熟練工じゅくれんこう・植民しょくみん地ち人じんの徴兵ちょうへいが行おこなわれた。

徴兵ちょうへいされた家庭かていに対たいしては、地域ちいき単位たんいで様々さまざまな慰安いあん会かいが行おこなわれたほか、労働ろうどう力りょく減少げんしょうを補おぎなうために児童じどう、生徒せいとなどによる勤労きんろう奉仕ほうし（農作業のうさぎょうなど）が行おこなわれた。また、企業きぎょう・職場しょくば単位たんいの労働ろうどう力りょく減少げんしょうに対たいしては国民こくみん勤労きんろう報国ほうこく協力きょうりょく令れいによる勤労きんろう報国ほうこく隊たいが動員どういんされた。

日本にっぽんの降伏ごうぶく後こうは、日本にっぽん軍ぐんが解体かいたいされたため、徴兵ちょうへい制度せいどの根拠こんきょとなる兵役へいえき法ほうは、1945年ねん（昭和しょうわ20年ねん）11月17日にちに廃止はいしされた。

日本国にっぽんこく憲法けんぽうと徴兵ちょうへい制せい

概説がいせつ

日本国にっぽんこく憲法けんぽうにおける、徴兵ちょうへい制度せいどについての理解りかいには諸説しょせつある。

• 徴兵ちょうへい制せいは日本国にっぽんこく憲法けんぽう第だい9条じょうに反はんするとする説せつ
  • 戦力せんりょく不ふ保持ほじを定さだめた日本国にっぽんこく憲法けんぽう第だい9条じょうのもとで、徴兵ちょうへい制せいを採用さいようする余地よちはないとする学説がくせつ。
• 徴兵ちょうへい制せいは日本国にっぽんこく憲法けんぽう第だい18条じょうに反はんするとする説せつ
  • 徴兵ちょうへい制せいは日本国にっぽんこく憲法けんぽう第だい18条じょうに定さだめる、意いに反はんする「苦役くえき」に当あたり認みとめられないとする学説がくせつ。通説つうせつであり日本国にっぽんこく政府せいふ見解けんかい（昭和しょうわ55年ねん8月がつ15日にち・昭和しょうわ56年ねん3月がつ10日とおか政府せいふ答弁とうべん）の立場たちばでもある。具体ぐたい的てきには1980年ねん（昭和しょうわ55年ねん）鈴木すずき善幸ぜんこう内閣ないかくで「徴兵ちょうへい制せいは違憲いけんとの統一とういつ見解けんかい」を閣議かくぎ決定けってい。内閣ないかく法制ほうせい局きょくが過去かこに「徴兵ちょうへい・兵役へいえきは日本国にっぽんこく憲法けんぽう（第だい18条じょう）で禁きんじる“意いに反はんする苦役くえき”であり」、違憲いけんだという見解けんかいを示しめした。
  • 徴兵ちょうへい制せいは、日本国にっぽんこく憲法けんぽう第だい18条じょうに定さだめる意いに反はんする「苦役くえき」に当あたり、認みとめられないとする説せつに対たいしては、比較ひかく憲法けんぽう的てきに不自然ふしぜんだという批判ひはんがある。しかし、この批判ひはんに対たいしては、日本国にっぽんこく憲法けんぽうは大日本帝国だいにっぽんていこく憲法けんぽうとは異ことなり、兵役へいえきの義務ぎむを課かしていないという反論はんろんがある。

徴兵ちょうへい制せいについては、2014年ねん（平成へいせい26年ねん）7月がつの集団しゅうだん的てき自衛じえい権けんをめぐる政府せいふ見解けんかいによる日本国にっぽんこく憲法けんぽう解釈かいしゃく変更へんこうの際さい、自衛隊じえいたい志願しがん者しゃが激減げきげんして徴兵ちょうへい制せいを敷しかざるを得えなくなるのではないか、という議論ぎろんも出だされた。また集団しゅうだん的てき自衛じえい権けんに関かんして、従来じゅうらいとられていた政府せいふ見解けんかいが変更へんこうされたことから、徴兵ちょうへい制せいについてとられている政府せいふ見解けんかいも、将来しょうらい的てきに変更へんこうされるのではという問といに対たいし、内閣ないかく官房かんぼうのウェブページの一いち問もん一いち答とうでは「徴兵ちょうへい制せいは憲法けんぽう上じょう認みとめられない」と答こたえている。2014年ねん（平成へいせい26年ねん）7月がつ15日にちの参議院さんぎいん予算よさん委員いいん会かい閉会へいかい中ちゅう審査しんさ で、内閣ないかく総理そうり大臣だいじん安倍晋三あべしんぞうは徴兵ちょうへい制せいは採用さいようしないと答弁とうべんした。

徴兵ちょうへい制せいを巡めぐる議論ぎろん

戦後せんご、警察けいさつ予備よび隊たい、海上かいじょう警備けいび隊たい（後ごの自衛隊じえいたい）が発足ほっそくしたものの、徴兵ちょうへい制せいが憲法けんぽう18条じょうに反はんするという一般いっぱん的てき解釈かいしゃく、終戦しゅうせん直後ちょくごにおける国民こくみんの軍隊ぐんたいへの悪感情あくかんじょうなどから徴兵ちょうへい制度せいどは導入どうにゅうされず、志願しがん制度せいどが採とられた。その後ご、徴兵ちょうへい制度せいどに関かんする議論ぎろんはしばしば繰くり返かえされてきたものの、制度せいどとして採用さいようしようとする表立おもてだった動うごきはなかった。もっとも、自衛隊じえいたいを増強ぞうきょうしようとする動うごきの一環いっかんとして、核かく武装ぶそう論ろんと共ともに一部いちぶで主張しゅちょうされることがある。

徴兵ちょうへい制せいについては、「青少年せいしょうねんを鍛きたえる」などという大義名分たいぎめいぶんで徴兵ちょうへい制度せいどに見合みあう社会しゃかい的てきな教育きょういく運動うんどうの必要ひつよう性せい・精神せいしん論ろんを説とく議論ぎろんが終戦しゅうせん直後ちょくごからなされており、また警察けいさつ予備よび隊たい発足ほっそく当初とうしょでは7万まん5千せんの警察けいさつ予備よび隊たいを持もつ金かねがあれば、徴兵ちょうへい制せいにすれば30万まん以上いじょうの軍隊ぐんたいを持もつことができるとの計測けいそくがあった。だが第だい二に次じ大戦たいせんの戦没せんぼつ者しゃの多おおくが志願しがん兵へいではなく徴集ちょうしゅう兵へいであったという事実じじつから、徴兵ちょうへい制度せいどに嫌悪けんお感かんを示しめす論調ろんちょうが大勢おおぜいを占しめていた。

一部いちぶの論者ろんしゃによって展開てんかいされる徴兵ちょうへい制せい論ろんが、しばしば教育きょういく的てき意図いとをもって語かたられ、純じゅん軍事ぐんじ的てき見地けんちから、「軍隊ぐんたいと教育きょういくを混同こんどうしている」として本来ほんらいの徴兵ちょうへい制せいの意味いみを逸脱いつだつしているとの反論はんろんもある。詳細しょうさいは#徴兵ちょうへい制せいをめぐる世界せかい情勢じょうせいを参照さんしょう。

2017年ねん（平成へいせい29年ねん）8月がつ現在げんざい、国会こっかいに議席ぎせきを持もつ政党せいとうで、徴兵ちょうへい制度せいどの復活ふっかつを党是とうぜや公約こうやくに掲かかげている政党せいとうは存在そんざいしない。自由民主党じゆうみんしゅとうが着手ちゃくしゅしている日本国にっぽんこく憲法けんぽう改正かいせいに対たいして「徴兵ちょうへい制せいを復活ふっかつさせようとするものである」という批判ひはんがしばしば行おこなわれるが、自民党じみんとう側がわはこれを認みとめていない。2010年ねん（平成へいせい22年ねん）3月4日にちには、共同通信社きょうどうつうしんしゃは自由民主党じゆうみんしゅとうの「憲法けんぽう改正かいせい推進すいしん本部ほんぶが徴兵ちょうへい制度せいどを検討けんとうすることを示唆しさした」と報ほうじられたが、幹事かんじ長ちょう大島おおしま理森ただもりは直後ちょくごにこれを否定ひていしている。2012年ねん（平成へいせい24年ねん）にはネット上じょうなどで自民党じみんとうの改憲かいけん案あんが徴兵ちょうへい制度せいどを復活ふっかつさせようとするものであるという主張しゅちょうがしばしば行おこなわれ、林はやし芳正よしまさ党とう幹事かんじ長ちょう特別とくべつ補佐ほさは「それ（徴兵ちょうへい制せい）は政権せいけん公約こうやくには書かいてありませんので、また我々われわれの憲法けんぽうの草案そうあんにも一切いっさい書かいてございませんので、ご心配しんぱいご無用むようだと思おもいます。」と回答かいとうしている。

中華民国ちゅうかみんこく

2022年ねん現在げんざいの中華民国ちゅうかみんこく（台湾たいわん）には4カ月かげつの軍事ぐんじ訓練くんれんを受うける義務ぎむが存在そんざいしているが、兵役へいえき義務ぎむは存在そんざいしていない。

かつては男性だんせいに1年間ねんかんの兵役へいえきの義務ぎむが存在そんざいしていたが、2000年ねんから制度せいど改正かいせいが行おこなわれ、良心りょうしん的てき兵役へいえき拒否きょひ権けんが認みとめられるようになった。2009年ねん3月がつには、徴兵ちょうへい制度せいどを2015年ねんに廃止はいしする方針ほうしんが示しめされ、2012年ねん1月がつ1日にちに1年間ねんかんの兵役へいえき義務ぎむが「停止ていし」された。ただし、代かわりに4カ月かげつの軍事ぐんじ訓練くんれんを行おこなうため、完全かんぜんな意味いみでの停止ていしではなく、「兵役へいえき期間きかんの短縮たんしゅく」であると言いえる。削減さくげん分ぶんの予算よさんの一部いちぶは兵器へいきの充実じゅうじつに回まわす予定よていだが、野党やとうなどから国防こくぼう費ひを急増きゅうぞうさせる中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくとの軍事ぐんじ格差かくさがますます広ひろがるとの懸念けねんも出でている。

しかし、少子しょうし化かなどで十分じゅうぶんな兵員へいいん数すうを確保かくほできずに廃止はいしは延期えんきされ、最終さいしゅう的てきに2017年ねんまで徴兵ちょうへいは続つづいた。2018年ねん12月26日にちに最後さいごの1年間ねんかんの兵役へいえき義務ぎむ者しゃが除隊じょたいし、台湾たいわんは完全かんぜん志願しがん制せいに移行いこうした（ただし、前述ぜんじゅつのとおり、4カ月かげつの軍事ぐんじ訓練くんれんを受うける義務ぎむは残のこる）。しかし、中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくの軍事ぐんじ的てき脅威きょういを理由りゆうに2024年ねんに復活ふっかつする予定よていであり、2005年ねん以降いこうに生うまれた者ものは、1年ねんの兵役へいえきが課かせられる。

兵役へいえきにつく男性だんせいは、まず身体しんたい検査けんさによって「常備じょうび役やく」「替がえ代役だいやく」または「免役めんえき」（兵役へいえき義務ぎむが課かされない）に分類ぶんるいされる。常備じょうび役やくに分類ぶんるいされた者ものは中華民国ちゅうかみんこく国軍こくぐんに編入へんにゅうし兵士へいしになる。ただし学歴がくれきによって軍ぐん官かん（士官しかんに相当そうとう）や士官しかん（下士官かしかんに相当そうとう）になることも可能かのう。替がえ代役だいやくは軍ぐんに編入へんにゅうされず、主おもに政府せいふや警察けいさつ、消防しょうぼう機関きかんで公務こうむの補佐ほさを行おこなう（代替だいたい役やくを参照さんしょう）。なお常備じょうび役やく判定はんていでも条件じょうけんを満みたせば替がえ代役だいやくに就つけるが、兵役へいえき義務ぎむ期間きかんは替がえ代役だいやく判定はんてい者しゃより長ながい。中華民国ちゅうかみんこく国軍こくぐんや中華民国ちゅうかみんこく徴兵ちょうへい規則きそくも参照さんしょうのこと。

中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく

義務ぎむ兵へいと志願しがん兵へいを並立へいりつさせた制度せいどを採用さいようしている。中国ちゅうごく人民じんみん解放かいほう軍ぐんは、選抜せんばつ徴兵ちょうへい制せいの下したで徴集ちょうしゅう兵へい・志願しがん兵へいともに定員ていいんが大おおきく削減さくげんされたが、貧困ひんこん層そうにとって有力ゆうりょくな就職しゅうしょく先さきであり志願しがん兵へい希望きぼう者しゃが多おおい。毎年まいとし、志願しがん兵へいの定員ていいん以上いじょうの志願しがん者しゃが応募おうぼしている。一方いっぽうで徴兵ちょうへい制度せいど自体じたいは廃止はいしすると国防こくぼう上じょう弊害へいがいがあるので徴兵ちょうへい制度せいども並立へいりつして存在そんざいしている。人民じんみん解放かいほう軍ぐんは、志願しがん兵へいを主要しゅようとしそれに少数しょうすうの徴集ちょうしゅう兵へいが組くみ合あわされている。毎年まいとし採用さいようされる新兵しんぺいの枠わくは志願しがん兵へい（下士官かしかん）も徴集ちょうしゅう兵へい（義務ぎむ兵へい）も両者りょうしゃともに定員ていいんが決きめられている。志願しがん兵へい応募おうぼ者しゃや軍ぐんから奨励しょうれいされた者ものの中なかから選抜せんばつされて現役げんえき志願しがん兵へいに採用さいようされる。これに漏もれた者ものは徴兵ちょうへい制度せいどに委ゆだねられる。本人ほんにんの意思いしに係かかわらず、徴集ちょうしゅう年齢ねんれいにある者ものは基本きほん的てきに兵役へいえき機関きかんに出向でむき、徴兵ちょうへい制度せいどにより徴集ちょうしゅうされる際さいに、現役げんえき徴集ちょうしゅう兵へいとなるか予備よび役やく兵へいとなるかは、年齢ねんれい・能力のうりょく・適性てきせいにより判断はんだんされる。軍ぐんからの徴集ちょうしゅうを受うけず上限じょうげん年齢ねんれいの22歳さい又または24歳さいを過すぎた者ものも最終さいしゅう的てきに35歳さいまでに民兵みんぺい組織そしきへの参加さんかすることを義務付ぎむづけられている。なお現役げんえき徴収ちょうしゅう兵へいとして満期まんきに達たっしたものでも個人こじんの意思いしにより新あらたに志願しがん兵へいとして軍務ぐんむに就つく道みちがひらけている。

中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくでは、徴集ちょうしゅう兵へいと志願しがん兵へいとでは身分みぶんが異ことなる。賃金ちんぎん体系たいけい、待遇たいぐう、兵役へいえき期間きかん、階級かいきゅう制度せいどが大おおきく異ことなり、志願しがん兵へいの方ほうがより良よい条件じょうけんとなっている。

中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくでは、毎年まいとしの現役げんえき徴集ちょうしゅうの人数にんずう、基準きじゅんと時期じきは、国務こくむ院いんと中央ちゅうおう軍事ぐんじ委いの命令めいれいで定さだめられる。各省かくしょう、自治じち区く、直轄ちょっかつ市しは、国務こくむ院いんと中央ちゅうおう軍事ぐんじ委いの徴兵ちょうへい命令めいれいに基もとづき、当該とうがい地域ちいきの徴兵ちょうへい業務ぎょうむを手配てはいする。平時へいじの徴集ちょうしゅうは年とし1回かい行おこなわれる。兵役へいえき法ほうによると、毎年まいとし12月がつ31日にちまでに満まん18歳さいに達たっした男子だんしは徴集ちょうしゅうされて現役げんえきに服ふくさなければならない。徴集ちょうしゅうされなかった者ものは、22歳さいまでは徴集ちょうしゅう可能かのうとされる。必要ひつように応おうじ、女子じょしも徴集ちょうしゅうできる。毎年まいとし12月がつ31日にちまでに満まん18歳さいに達たっする男子だんしは、9月30日にちまでに兵役へいえき登録とうろくをしなければならない。条件じょうけんに適合てきごうする徴集ちょうしゅう対象たいしょう公民こうみんは、県けん、自治じち県けん、市し、市し管轄かんかつの区くの兵役へいえき機関きかんの許可きょかを経へて、徴集ちょうしゅうされて現役げんえきに服ふくする。徴集ちょうしゅうすべき公民こうみんが一家いっかの生計せいけいを維持いじする唯一ゆいいつの労働ろうどう力りょくか全日ぜんじつ制せい学校がっこうに就学しゅうがく中ちゅうの学生がくせいであるときは、徴集ちょうしゅう猶予ゆうよできる。勾留こうりゅうされて捜査そうさ、起訴きそ、裁判さいばん中ちゅうか懲役ちょうえき、拘留こうりゅう、監視かんしの判決はんけつを受うけて服役ふくえき中ちゅうの公民こうみんは、徴集ちょうしゅうしない。

民兵みんぺいは生産せいさんから離脱りだつしない大衆たいしゅう武装ぶそう組織そしきで、中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくの武力ぶりょくの重要じゅうような一部いちぶで、中国ちゅうごく人民じんみん解放かいほう軍ぐんの助手じょしゅと予備よび力りょくである。民兵みんぺい組織そしきは普通ふつう民兵みんぺい組織そしきと基幹きかん民兵みんぺい組織そしきに分わかれる。基幹きかん民兵みんぺい組織そしきには民兵みんぺい応急おうきゅう分隊ぶんたい、歩兵ほへい分隊ぶんたい、専門せんもん技術ぎじゅつ分隊ぶんたい及および専門せんもん分野ぶんや分隊ぶんたいが設もうけられている。現在げんざい、全国ぜんこくの基幹きかん民兵みんぺいは1000万まんに上のぼる。基幹きかん民兵みんぺいは18〜22歳さいの間あいだに30〜40日にちの軍事ぐんじ訓練くんれんに参加さんかし、うち専門せんもん技術ぎじゅつ兵へいの期間きかんは必要ひつように応おうじて延長えんちょうされる。民兵みんぺいの軍事ぐんじ訓練くんれん任務にんむは中央ちゅうおう軍事ぐんじ委いの承認しょうにんを受うけ、総そう参謀さんぼう部ぶが下部かぶに伝つたえる。民兵みんぺいの軍事ぐんじ訓練くんれんは主おもに県けんクラス行政ぎょうせい区内くないの民兵みんぺい軍事ぐんじ訓練くんれん基地きちで集中しゅうちゅう的てきに行おこなわれ、一部いちぶの省しょう、市しには専門せんもん技術ぎじゅつ兵へい訓練くんれんセンターや人民じんみん武装ぶそう学校がっこうが設もうけられている。民兵みんぺい業務ぎょうむは、国務こくむ院いん、中央ちゅうおう軍事ぐんじ委いが指導しどうする。省しょう軍ぐん区く（衛戍えいじゅ区く、警備けいび区く）、軍ぐん分ぶん区く（警備けいび区く）及および県けん、自治じち県けん、市し、市し管轄かんかつの区くの人民じんみん武装ぶそう部ぶは当該とうがい地域ちいきの民兵みんぺい業務ぎょうむを担当たんとうする。郷さと、民族みんぞく郷きょう、鎮、居住きょじゅう区くの人民じんみん武装ぶそう部ぶは当該とうがい地域ちいきの民兵みんぺい業務ぎょうむを担当たんとうする。企業きぎょうが国くにの関係かんけい規定きていに基もとづいて設置せっちした人民じんみん武装ぶそう部ぶは、職場しょくばの民兵みんぺい業務ぎょうむを担当たんとうする。人民じんみん武装ぶそう部ぶを設置せっちしていない企業きぎょうは、専任せんにん者しゃを決きめて民兵みんぺい業務ぎょうむ処理しょりにあたる。

大学だいがく、高校こうこうの国防こくぼう教育きょういくは、教室きょうしつでの授業じゅぎょうと軍事ぐんじ訓練くんれんを合あわせることになっている。大学生だいがくせいは男女だんじょを問とわず、在学ざいがく中ちゅうに学内がくないで行おこなわれる基礎きそ的てき軍事ぐんじ訓練くんれんを受うけなければならない。全ぜん軍学ぐんがく生せい軍事ぐんじ訓練くんれん工作こうさく弁べん公おおやけ室しつは教育きょういく省しょうと共同きょうどうで全国ぜんこく生徒せいと学生がくせい軍事ぐんじ訓練くんれん計画けいかくを策定さくていした。2003年ねんは、大学だいがく1100校こうと高校こうこう1万まん1500校こうが生徒せいと・学生がくせいの軍事ぐんじ訓練くんれんを実施じっしし、800万まん人にんが訓練くんれんを受うけた（出典しゅってん：2004年ねん中国ちゅうごくの国防こくぼう）。

大韓民国だいかんみんこく

韓国かんこく軍ぐんは、1950年ねん3月～1951年ねん5月の一時期いちじき を除のぞいて徴兵ちょうへい制せいと志願しがん兵制へいせいを併用へいようしており、徴兵ちょうへいは兵役へいえき法ほうに基もとづいて実施じっしされている。

「大韓民国だいかんみんこくの徴兵ちょうへい制度せいど」も参照さんしょう

制度せいど

徴兵ちょうへいに応おうじることは、韓国かんこくの若わかい男性だんせい達たちの義務ぎむとされている。18歳さいの男子だんしへの徴兵ちょうへい検査けんさによって判定はんていされ、1-3級きゅうまでが現役げんえき、4級きゅうは現役げんえきに適てきするが兵力へいりょく需給じゅきゅうの事情じじょうによって待機たいきとなった補充ほじゅう役やく・公益こうえき勤務きんむで、以上いじょうの各かく級きゅうが第だい一いち国民こくみん役やくと分類ぶんるいされる。続つづく5級きゅうは免除めんじょ・有事ゆうじ時じ出動しゅつどう（第だい二に国民こくみん役やく）、6級きゅうが身体しんたい異常いじょうによる完全かんぜん免除めんじょ、7級きゅうが一いち年ねん以内いないの再さい検査けんさとされている。しかし有力ゆうりょく家か出身しゅっしん者しゃの兵役へいえき回避かいひが社会しゃかい問題もんだいとなっており、徐々じょじょに身体しんたい検査けんさや等級とうきゅう判断はんだんが広ひろげられ、時ときに本来ほんらいは不ふ適格てきかくな者ものまでが入隊にゅうたいする問題もんだいが指摘してきされている。また軍隊ぐんたいの施設しせつや訓練くんれん生活せいかつにおいて、体罰たいばつやいじめなど1960年代ねんだいそのままの風習ふうしゅうが残のこり、若わかい男性だんせいにとって適応てきおうが一層いっそう困難こんなんとなっている。さらに、検査けんさの際さいの問診もんしんで半数はんすう近ちかくが「人格じんかく障害しょうがい」と診断しんだんされたことがあり、受験じゅけん者しゃが徴兵ちょうへいを嫌いやがってわざとそのような回答かいとうをすることが多おおいとわかる。文ぶん在ざい寅とら政府せいふの軍縮ぐんしゅくから、最低さいていの兵役へいえきの義務ぎむ期間きかんは陸軍りくぐんと海兵かいへい隊たいでは18か月げつ以上いじょう、海軍かいぐんでは20か月げつ以上いじょう、空軍くうぐんでは22か月げつ以上いじょうと定さだめられている。海兵かいへい隊たいや海軍かいぐん、空軍くうぐんなどは志願しがんしない限かぎり配属はいぞくされない。他た、医学部いがくぶを卒業そつぎょうして医師いし国家こっか試験しけんに合格ごうかくした場合ばあい、医療いりょうが整ととのっていない地方ちほうなどで医師いしとして3年間ねんかん診療しんりょうすれば、兵役へいえきを務つとめたと見みなされる制度せいどがある。

待遇たいぐうは実質じっしつ無給むきゅうといえるほど薄給はっきゅうであり、二等兵にとうへいで日本円にほんえんで月つき1万まん円えん程度ていどしかない。2018年ねん1月がつ、徴兵ちょうへいされた一般いっぱん兵士へいしの月給げっきゅうが倍ばい近ちかくに増額ぞうがくされ、二等兵にとうへいで30万まん6100ウォン（約やく3万まん2000円えん）に引ひき上あげられたが、それでも韓国かんこくの最低さいてい賃金ちんぎんや、フリーターの月収げっしゅうにも満みたない低てい賃金ちんぎんでしかない。外出がいしゅつや外泊がいはくは月つきに1日にち、服務ふくむ期間きかん全体ぜんたいで10日間にちかんと制限せいげんされ、多おおくの場合ばあい、40人にん部屋へやでの共同きょうどう生活せいかつを余儀よぎなくされる。

以前いぜんは男性だんせいが就職しゅうしょく適齢てきれい期きに兵役へいえきにつく場合ばあいが多おおいことから、兵役へいえきを終おえた男性だんせいに限かぎり公務員こうむいんに就職しゅうしょくする際さいの優遇ゆうぐう措置そちがあった。同様どうように民間みんかん企業きぎょうでも、兵役へいえき経験けいけん者しゃを優遇ゆうぐうする風習ふうしゅうが根強ねづよい。しかし一方いっぽうではこれを女性じょせい差別さべつだという意見いけんがあったため、兵役へいえき満了まんりょう者しゃへの優遇ゆうぐう措置そちは撤廃てっぱいされた。この措置そちに対たいしては撤廃てっぱいは不当ふとうだという男性だんせい側がわからの不満ふまんも表明ひょうめいされている。朝鮮日報ちょうせんにっぽうによるアンケート調査ちょうさでは、回答かいとうした韓国かんこくの男子だんし学生がくせいの46.3%が「大学だいがくや韓国かんこく社会しゃかいにおいて男性だんせい差別さべつがある」という認識にんしきを示しめしている。これは男性だんせいのみへの兵役へいえき強制きょうせい（女子じょしは免除めんじょ）、更さらには兵役へいえき満了まんりょう者しゃへの優遇ゆうぐう措置そち撤廃てっぱいが背景はいけいにある。

一方いっぽうで、多大ただいな功績こうせきを残のこした者ものに兵役へいえきの期間きかんを短縮たんしゅくするか、完全かんぜんに免除めんじょする特典とくてんを与あたえられるケースもある。理工りこう系けいでの博士はかせ学位がくいを取得しゅとくした者もの、関連かんれん企業きぎょうに研究けんきゅう員いんとして就職しゅうしょくした者もの、スポーツでめざましい成績せいせきを収おさめた者もの（例れい：オリンピックでメダリスト、アジア競技きょうぎ大会たいかいで優勝ゆうしょう、サッカーワールドカップでベスト16以上いじょう～優勝ゆうしょうするなど）、国内外こくないがいの芸術げいじゅつ祭さいで入賞にゅうしょうした者ものなどは、「芸術げいじゅつ・体育たいいく要員よういん特例とくれい制度せいど」という枠わくに属ぞくし、約やく1か月げつ間あいだの基礎きそ訓練くんれんのみを受うけ、他たに500時間じかん以上いじょうの社会しゃかい奉仕ほうし活動かつどうを行おこなう形かたちとなり、事実じじつ上じょうは免除めんじょされる。

また、海外かいがいでの長期ちょうき駐在ちゅうざい者しゃも免除めんじょの対象たいしょうとなる。これには、在日ざいにち韓国かんこく人じんなどの国外こくがいでの永住えいじゅう権けん取得しゅとく者しゃも含ふくまれる。ただし、韓国かんこくへ永住えいじゅう帰国きこくした者ものは、免除めんじょの対象たいしょうから除外じょがいされる。改正かいせい兵役へいえき法ほう施行しこう令れいでは、在日ざいにち韓国かんこく人じんら韓国かんこく国籍こくせきを持もつ在外ざいがい国民こくみん2世せいらが3年ねんを超こえ韓国かんこくに滞在たいざいした場合ばあいに兵役へいえきの義務ぎむが発生はっせいすることになった。

また、芸能人げいのうじんは「芸能げいのう兵士へいし」制度せいどがあり、軍ぐんの広報こうほう活動かつどうや部隊ぶたいへの慰問いもん公演こうえんなどを行おこなっていたが、芸能げいのう兵士へいしの不祥事ふしょうじが相次あいついで発覚はっかくし、制度せいどは廃止はいしされた。一方いっぽうで、2020年ねんには、いわゆる韓かん流りゅうスターなどの国くにのステータスや品格ひんかくを高たかめることに大おおきく寄与きよしたと認みとめられる大衆たいしゅう文化ぶんか芸術げいじゅつ分野ぶんやの優秀ゆうしゅう者しゃに対たいし、軍ぐんの入隊にゅうたい延期えんきを可能かのうにする内容ないようの兵役へいえき法ほう改正かいせい案あんを可決かけつした。他ほかにも「尚武しょうぶ」と呼よばれる国軍こくぐん体育たいいく部隊ぶたいに所属しょぞくしスポーツ活動かつどうを行おこなう者ものもいる。また韓国かんこくで人気にんきのオンラインゲームで活躍かつやくするプロゲーマーをコンピュータ技師ぎし（電算でんさん特技とくぎ兵へい）として採用さいようし、ゲームを利用りようした広報こうほうを担当たんとうさせている。いずれも特別とくべつな選考せんこうがあり、その分野ぶんやで活躍かつやくしている者ものが選えらばれる。

2016年ねん9月がつ30日にち、韓国かんこくギャラップが公開こうかいした徴兵ちょうへい制せいに関かんする調査ちょうさ結果けっかによると、韓国かんこく人じんの48%と約やく半数はんすうが徴兵ちょうへい制せいの維持いじに賛成さんせいし、35%は徴兵ちょうへい制せいの廃止はいしと志願しがん制せいの導入どうにゅうに賛成さんせいした。

文ぶん在ざい寅とら大統領だいとうりょうは、大統領だいとうりょう選挙せんきょで兵役へいえき義務ぎむ期間きかんの短縮たんしゅくを公約こうやくにしており、国務こくむ会議かいぎと大統領だいとうりょうの裁可さいかを経へて、陸軍りくぐんは18か月げつ、海軍かいぐんは20か月げつ、空軍くうぐんは21か月げつに、それぞれ3か月げつ短縮たんしゅくされる。

兵役へいえき忌避きひ・良心りょうしん的てき兵役へいえき拒否きょひ

現在げんざいの韓国かんこくでは良心りょうしん的てき兵役へいえき拒否きょひは一切いっさい認みとめておらず、公益こうえき勤務きんむ要員よういん、産業さんぎょう技能ぎのう要員よういん、専門せんもん研究けんきゅう要員よういん、義務ぎむ警察官けいさつかん、戦闘せんとう警察官けいさつかん、海洋かいよう警察けいさつ、警備けいび矯導隊たい、義務ぎむ消防しょうぼう隊たいなどの軍隊ぐんたい以外いがいでの勤務きんむを行おこなうことで2年ねんの兵役へいえきを4週間しゅうかんに短縮たんしゅくする制度せいどがある。しかし、この代替だいたい服務ふくむ制度せいども段階だんかい的てきに縮小しゅくしょうして廃止はいしし、重症じゅうしょうの身体しんたい障害しょうがい者ものを除のぞいてはボランティアの形かたちで服務ふくむする社会しゃかい服務ふくむ制せいを導入どうにゅうする予定よていだと報道ほうどうされた。しかし、これについて国防こくぼう部ぶは、記事きじは誤報ごほうであり、代替だいたい服務ふくむ制せいの廃止はいしはただの論議ろんぎであったと説明せつめいした。

韓国かんこくでは、良心りょうしん的てき兵役へいえき拒否きょひ者しゃで処罰しょばつを受うけた人ひとは、1954年ねんから2018年ねんまで約やく2万まん人にんに上のぼる。また、その99.2%がエホバの証人しょうにんの信徒しんととされる。

大学だいがく在学ざいがく中ちゅうに休学きゅうがくして兵役へいえきに就つく者ものが多おおく、大学だいがく受験じゅけんの浪人ろうにんが制限せいげんされるなどの影響えいきょうがあり、韓国かんこくの受験じゅけん戦争せんそうが過熱かねつする要因よういんの一ひとつともなっている。2002年ねんには、アメリカで活動かつどうしていた歌手かしゅのユ・スンジュンが、代替だいたい勤務きんむを容認ようにんされながら入営にゅうえい直前ちょくぜんにアメリカ市民しみん権けんを取得しゅとくしたため、兵役へいえき忌避きひとみなされ13年間ねんかんの入国にゅうこく拒否きょひ処分しょぶんを受うけた。

就職しゅうしょくに影響えいきょうが少すくない大学だいがく在学ざいがく中ちゅうに兵役へいえきを済すませようとする若者わかものも多おおい一方いっぽうで、予算よさんや兵舎へいしゃの問題もんだいから韓国かんこく軍ぐんが受うけ入いれられる人数にんずうにも限かぎりがあるため、毎年まいとし、入隊にゅうたいを希望きぼうしながらも入隊にゅうたいできない者ものもいる。彼かれらは入隊にゅうたいが適かなうまで大学だいがくを休学きゅうがくする事こともある。このような「入隊にゅうたい浪人ろうにん」が、毎年まいとし5万まん人にんほど出でている。

2000年代ねんだい頃ごろより宗教しゅうきょう上じょうの理由りゆうで兵役へいえきを拒否きょひする良心りょうしん的てき兵役へいえき拒否きょひ者ものが出でてきて、裁判さいばんで有罪ゆうざい判決はんけつを受うける者ものが増ふえてきている。年としに750人にん程度ていどが兵役へいえき拒否きょひを行おこない、懲役ちょうえき刑けいを受うけて刑務所けいむしょへ収監しゅうかんされている。現在げんざい、全ぜん世界せかいの兵役へいえき拒否きょひを理由りゆうとした良心りょうしんの囚人しゅうじんの内うち、韓国かんこく人じんが占しめる割合わりあいは90%を超こえている。兵役へいえき拒否きょひ者しゃは、大韓民国だいかんみんこく兵役へいえき法ほう 違反いはんで1年ねん6カ月かげつから3年ねんの懲役ちょうえきに処しょされている。2016年ねん10月がつ18日にち、光州こうしゅう地方裁判所ちほうさいばんしょは、入営にゅうえいを拒否きょひして兵役へいえき法ほう違反いはんの罪つみで起訴きそされたエホバの証人しょうにんの信者しんじゃ3人にんに対たいし、無罪むざいをい渡いわたした。この3人にんは、一いち審しんでは禁錮きんこ18月がつの有罪ゆうざいとされており、それが覆おおっての無罪むざいだった。これまで韓国かんこくでは、一いち審しんで宗教しゅうきょう的てき兵役へいえき拒否きょひに無罪むざいをい渡いわたす事例じれいはあったが、二に審しんでは逆転ぎゃくてん有罪ゆうざいとなっていた。この判決はんけつのように、二に審しんで無罪むざいとなった事例じれいは初はじめてのため、この判決はんけつは韓国かんこく内ないで注目ちゅうもくされているが、最高裁さいこうさいが今後こんごこの判決はんけつを支持しじする可能かのう性せいはないという見方みかたが大勢おおぜいだった。

また、プロ野球やきゅうなどのスポーツ選手せんしゅや芸能げいのう関係かんけい者しゃらがあらゆる手段しゅだんを用もちいて兵役へいえき逃のがれをしていたことが相次あいついで発覚はっかくし、社会しゃかい問題もんだい化かした。彼かれらに対たいする批判ひはん的てき意見いけんはもちろん強つよいが、スポーツや芸能げいのう活動かつどうにとって、若わかい時代じだいに長期間ちょうきかん軍隊ぐんたいに拘束こうそくされることによるマイナス面めんは非常ひじょうに大おおきいため、同情どうじょう的てきな意見いけんもある。

徴兵ちょうへいを忌避きひして、韓国かんこくから出でて行いく若者わかものもおり、2013年ねんにはフランスに亡命ぼうめいした兵役へいえき拒否きょひの韓国かんこく人じん男性だんせいの難民なんみん申請しんせいが認みとめられたケースもある。

代替だいたい役務えきむ

2004年ねん8月がつ、韓国かんこくの憲法けんぽう裁判所さいばんしょは、良心りょうしん的てき兵役へいえき拒否きょひを処罰しょばつする兵役へいえき法ほうについて、裁判官さいばんかん7対たい2の意見いけんで合憲ごうけんとした。一方いっぽう、合憲ごうけん意見いけんを出だした裁判官さいばんかんのうち5人にんは「代替だいたい服務ふくむ制せい」の導入どうにゅうを勧告かんこくした。国連こくれんの自由じゆう権けん規約きやく人権じんけん委員いいん会かいや人権じんけん理事りじ会かいは、2005年ねんから繰くり返かえし、韓国かんこくに対たいして良心りょうしん的てき兵役へいえき拒否きょひを認みとめるよう勧告かんこくしている。国連こくれんからの要請ようせいを受うけて、盧武鉉のむひょん政権せいけんでは代替だいたい服務ふくむ制せいを推進すいしんしたが、その次つぎの李明博イミョンバク政権せいけんは「代替だいたい服務ふくむ制せい導入どうにゅうは時期じき尚早しょうそう」として、この議論ぎろんは衰退すいたいした。

韓国かんこくの国家こっか人権じんけん委員いいん会かいは、「良心りょうしん的てき兵役へいえき拒否きょひ者しゃを処罰しょばつすることは、普遍ふへん的てき人権じんけんである良心りょうしんの自由じゆうを侵害しんがいする」という見解けんかいを出だしている他ほか、国防こくぼう部ぶに良心りょうしん的てき兵役へいえき拒否きょひ者しゃの代替だいたい服務ふくむ履行りこう計画けいかくの策定さくていを要求ようきゅうしている。

2018年ねん6月がつ28日にち、韓国かんこくの憲法けんぽう裁判所さいばんしょは、現在げんざいの良心りょうしん的てき兵役へいえき拒否きょひ者しゃに対たいする処罰しょばつは合憲ごうけんとしたものの、代替だいたい服務ふくむ制せいを兵役へいえきの種類しゅるいとして規定きていしていない条項じょうこうは憲法けんぽうに合致がっちしないとして、2019年ねん12月31日にちまでに兵役へいえき法ほうを改正かいせいし、代替だいたい服務ふくむ制せいの導入どうにゅうを求もとめた。

2018年ねん11月1日にち、韓国かんこくの大法たいほう院いん（最高裁さいこうさいに相当そうとう）は、「刑事けいじ処罰しょばつなどを通つうじて兵役へいえき義務ぎむの履行りこうを強制きょうせいすることは良心りょうしんの自由じゆうに対たいする過度かどな制限せいげんになる」と述のべ、6月28日にちの憲法けんぽう裁判所さいばんしょによる「代替だいたい役務えきむの規定きていが無ない兵役へいえき法ほうは憲法けんぽう違反いはんであるものの、兵役へいえき拒否きょひ者しゃに対たいする処罰しょばつは合憲ごうけん」とする判決はんけつから一いち歩ほ進すすみ、「処罰しょばつも憲法けんぽう違反いはんである」との考かんがえを示しめし、兵役へいえき法ほう違反いはんに問とわれていた兵役へいえき拒否きょひ者しゃに対たいしての有罪ゆうざい判決はんけつを破棄はきし、下級かきゅう審しんへ差さし戻もどした。

2018年ねん12月28日にち、韓国かんこく国会こっかいは、代替だいたい服務ふくむ(代替だいたい役務えきむ)について「刑務所けいむしょなど大統領だいとうりょう令れいで定さだめる機関きかんにおいて、徴兵ちょうへい期間きかんよりも長ながい36か月げつの期間きかんに渡わたって合宿がっしゅく形式けいしきで勤務きんむする」という内容ないようの兵役へいえき法ほう改正かいせい案あんを本ほん会議かいぎで可決かけつした。

2020年ねん7月がつ15日にち、韓国かんこくの兵務へいむ庁ちょうは、最高裁さいこうさい(大法たいほう院いん)で無罪むざい判決はんけつを受うけた兵役へいえき拒否きょひ者しゃについて、代替だいたい役務えきむに就つくことを認みとめる決定けっていを下くだした。兵役へいえき拒否きょひ者しゃは2020年ねん10月がつから「代替だいたい服務ふくむ要員よういん」として召集しょうしゅうされ、法務ほうむ部ぶの矯正きょうせい施設しせつ(刑務所けいむしょ)において合宿がっしゅく形式けいしきで、現役げんえき服務ふくむ期間きかんの2倍ばいにあたる36か月げつ間あいだ、給食きゅうしょく・物品ぶっぴん・保健ほけん衛生えいせい・施設しせつ管理かんりなどの補助ほじょ業務ぎょうむに就つくものとされた。

2020年ねん10月がつ26日にち、良心りょうしん的てき兵役へいえき拒否きょひ者しゃに対たいする代替だいたい役務えきむ制度せいどが正式せいしきに発効はっこうし、第だい一いち陣じんとなる対象たいしょう者しゃ63名めいが大田おおたにある刑務所けいむしょに召集しょうしゅうされ、代替だいたい役務えきむを開始かいしした。対象たいしょう者しゃは刑務所けいむしょ内ないの「代替だいたい服務ふくむ教育きょういくセンター」で3週間しゅうかんの講習こうしゅうを受うけた後のち、保健ほけん・衛生えいせい・物品ぶっぴん供給きょうきゅう・施設しせつ管理かんりなどの業務ぎょうむに従事じゅうじする。

朝鮮民主主義人民共和国ちょうせんみんしゅしゅぎじんみんきょうわこく

北朝鮮きたちょうせんでは、表向おもてむきは志願しがん制せいとなっており、徴兵ちょうへい制度せいどではないとされているが、法令ほうれい上じょうや北朝鮮きたちょうせん社会しゃかいの一般いっぱん的てき観点かんてんから、事実じじつ上じょう男性だんせいに10年ねん以上いじょうの兵役へいえき義務ぎむが課かせられている。以前いぜんの兵役へいえき期間きかんは13年ねん以上いじょうであったが、2006年ねんに兵役へいえき期間きかんが短縮たんしゅくされた。他国たこくと比較ひかくして兵役へいえきの期間きかんが長ながいのは、同国どうこくの政治せいじ方針ほうしんである「先さき軍ぐん政治せいじ」に基もとづくものであり、これにより約やく110万まん人にんの兵士へいし数すうを確保かくほしている。全ぜん人口じんこうに対たいする兵員へいいんの比率ひりつは世界せかいトップクラスである（出典しゅってん:エンカルタ総合そうごう大だい百科ひゃっか2007）。

2014年ねん9月がつ20日はつかには、兵力へいりょく不足ふそくを補おぎなうために2015年ねんより女性じょせいにも7年間ねんかんの兵役へいえきを課かし、男性だんせいの兵役へいえき期間きかんも11年ねんに延長えんちょうすると東亜日報とうあにっぽうが報ほうじた。これまで女性じょせいは志願しがん制せいであったが、苦難くなんの行軍こうぐんと呼よばれた1990年代ねんだいの食料しょくりょう不足ふそくの時期じき、出生しゅっしょう率りつが3割わり低下ていかしており、その世代せだいが徴兵ちょうへいされる時期じきとなったため、120万まんともされる軍ぐんの兵力へいりょくを、現行げんこうの制度せいどでは維持いじできない事ことが背景はいけいとされる。

シンガポール

シンガポール軍ぐんは1971年ねん12月にイギリス軍ぐんが撤退てったいした後のちに結成けっせいされた。2万まん人にんの職業しょくぎょう軍人ぐんじんのほか、2年間ねんかんの徴兵ちょうへい制せいを男性だんせいに対たいして課かしている。徴集ちょうしゅう兵へいの数かずは5万まん5千せん人にんに達たっする。徴兵ちょうへい検査けんさは17歳さいの時ときに行おこなわれ、進学しんがくの場合ばあいを除のぞいて延期えんき・猶予ゆうよは認みとめられていない。ただしシンガポールの「徴兵ちょうへい」は正式せいしきには国民こくみん役務えきむ（National Service）と呼よばれており、軍隊ぐんたい以外いがいの公的こうてき機関きかん（警察けいさつや「民間みんかん防衛ぼうえい隊たい」と呼よばれる消防しょうぼうや救急きゅうきゅうなど）を選択せんたくすることも可能かのうとなっている。 2004年ねん6月15日にち、テオ・チーヒン国防こくぼう相しょうは、Aレベル（大学だいがく入学にゅうがく資格しかく）保持ほじ者しゃやディプロマ保持ほじ者しゃの徴兵ちょうへい期間きかんを2年ねん半はんから2年ねんに短縮たんしゅくすることを議会ぎかいで報告ほうこくした。軍ぐんの場合ばあい、中等ちゅうとう教育きょういく終了しゅうりょう後ごに1回かい目めの召集令状しょうしゅうれいじょうが国防省こくぼうしょうから届とどくが、本人ほんにんの意志いしにより高等こうとう教育きょういく終了しゅうりょう後ごまで入隊にゅうたい延期えんきを申請しんせいすることができる。高等こうとう教育きょういくは概がいして、ジュニア・カレッジ（2年ねん。卒業そつぎょう後ご、Aレベル保持ほじ）、ポリテクニック（Polytechnics。高度こうどな専門せんもん技術ぎじゅつを身みにつけ、卒業そつぎょう後ご、ディプロマを保持ほじ）、技術ぎじゅつ教育きょういく研究所けんきゅうじょ及および職業しょくぎょう実習じっしゅうに分わかれ、各かく課程かてい終了しゅうりょう後ごに最終さいしゅう的てきな召集令状しょうしゅうれいじょうが国防省こくぼうしょうから送付そうふされる。召集しょうしゅう期間きかんはジュニア・カレッジ及およびポリテクニック修了しゅうりょう者しゃが2年ねん半はん、並ならびにその他たの高等こうとう教育きょういく修了しゅうりょう者しゃ及および高等こうとう教育きょういく未満みまんの学歴がくれきの者ものは2年ねんだったが、2004年ねんの改革かいかくによって前者ぜんしゃの徴兵ちょうへい期間きかんが最大さいだいで2年ねんとなった。前者ぜんしゃの階級かいきゅうは伍長ごちょうから始はじまり、成績せいせき優秀ゆうしゅう者しゃは2年ねん半はんで中尉ちゅういに昇進しょうしんするが、更さらに半年はんとし軍ぐんと契約けいやくすることで大尉たいいに昇進しょうしんする。新兵しんぺいは3か月げつの基礎きそ訓練くんれんを受うけ、そこにおいて、射撃しゃげき、野外やがい工作こうさく、サバイバル、カモフラージュの教育きょういくが行おこなわれる。一部いちぶの兵へいはその後ご、士官しかん候補こうほ生せい教育きょういくまたはスペシャリスト教育きょういくを受うける。士官しかん候補こうほ生せいコースは9か月げつ、スペシャリスト教育きょういくコースは21週しゅうある。残のこりの大だい部分ぶぶんは様々さまざまな部隊ぶたいに配属はいぞくされる。

徴兵ちょうへい期間きかん終了しゅうりょう後ごも、軍ぐん勤務きんむ希望きぼう者しゃは更さらに10年ねんの契約けいやくを行おこなえる。その後ご、再さい契約けいやくすることができ、将校しょうこうは45歳さい、下士官かしかんは55歳さいで定年ていねんを迎むかえる。一方いっぽう、軍ぐんに残のこらず一般いっぱん社会しゃかいに戻もどる者ものも、将校しょうこうは50歳さい、下士官かしかんと兵へいは40歳さいまで予備よび役やく（Operationally Ready National Service）に編入へんにゅうされ、年とし一いち度どの召集しょうしゅうに応おうじなければならず、13年間ねんかんはIn-Camp Trainingを受うけなければならない。さらに毎年まいとし不定期ふていきに、主おもに電話でんわを使用しようする「Silent」、またはテレビ、ラジオ等ひとしマスメディアを使用しようする「Open」のいずれかの方法ほうほうによる非常ひじょう呼集こしゅうがかけられ、対象たいしょう者しゃは数時間すうじかん以内いないに定さだめられた装備そうびを着用ちゃくようして非常ひじょう呼集こしゅう司令しれい部ぶに集合しゅうごうしなければならず、正当せいとうな理由りゆうなく応おうじなかった者ものは処罰しょばつされる（罰金ばっきん、懲役ちょうえき）。（出典しゅってん：国防省こくぼうしょう資料しりょう）

タイ王国おうこく

タイ王国おうこくの男性だんせいは、21歳さいになると徴兵ちょうへい検査けんさを受うける義務ぎむがある。あくまで志願しがん制せいであるが、定員ていいんに不足ふそくする場合ばあいは身体しんたい検査けんさ合格ごうかく者しゃからくじ引びき（黒くろ票ひょう：免除めんじょ、赤あか票ひょう：兵役へいえき）によって徴兵ちょうへいされる者ものが選えらばれる。ただし、士官しかん学校がっこう生なまや一般いっぱんの学校がっこう（マッタヨム 4〜6年ねん）などで「軍事ぐんじ科か（ウィチャー・タハーン）」を受うけた者ものや、身体しんたいや精神せいしんに障害しょうがいのある者もの、体力たいりょくのない者ものは徴兵ちょうへい対象たいしょう外がいとされている。

タイのMTF トランスセクシュアルの中なかには男性だんせい器きを切除せつじょした者ものも多おおいが、タイの法律ほうりつでは戸籍こせきの性別せいべつは変かえることができないため、たとえ“手術しゅじゅつ済ずみ”のトランスセクシュアルであっても戸籍こせき上じょうの性別せいべつが「男性だんせい」である限かぎり、徴兵ちょうへい検査けんさと兵役へいえきのくじ引びきに参加さんかしなければならない。しかし、今いままでは「強つよく勇敢ゆうかんな兵士へいしになれそうになく、軍ぐんの風紀ふうきも乱みだれる恐おそれがある」との理由りゆうから「精神せいしん障害しょうがい者もの」ということにして不ふ合格ごうかくとしていた。

ところが、『NATION』紙し2008年ねん3月がつ20日にち号ごうによると、ゲイ権利けんり団体だんたいが軍ぐんに「徴兵ちょうへい検査けんさ失格しっかく証明しょうめい書しょに精神せいしん障害しょうがい者しゃであると記載きさいされているために就職しゅうしょくやローンの審査しんさで不利ふりになる」と抗議こうぎした。それを受うけて防衛ぼうえい省しょう徴兵ちょうへい局長きょくちょうのソムキアット将軍しょうぐんが「精神せいしん障害しょうがい者しゃと記載きさいするのはすぐに止とめ、男おとこでもなく女おんなでもなくトランスセクシュアルを差別さべつするのでもない新あたらしい第だい3の性別せいべつ名めいを探さがしてみる」と述のべた。

「第だい3の性別せいべつ名めい」が決きまるまでの間あいだは、徴兵ちょうへい検査けんさを受うけるカトゥーイは「30日にち以内いないに完治かんじしない病気びょうきに罹かかっている」として不ふ合格ごうかくにすることとなった。さらに「第だい3の性別せいべつ名めいを適用てきようされるためには、3年間ねんかん連続れんぞくで彼かれらが真剣しんけんに女性じょせいとして生いきようとしていることを証明しょうめいするレポートを軍ぐんに提出ていしゅつしなければならない」とソムキアット将軍しょうぐんは述のべた。ちなみに徴兵ちょうへい検査けんさ参加さんか者しゃのうち、トランスセクシュアルが占しめる割合わりあいは毎年まいとし1%未満みまんである。

マレーシア

マレーシアでは、2003年ねんよりマハティール・ビン・モハマド前ぜん首相しゅしょうの提唱ていしょうで制定せいていされた「国民こくみん奉仕ほうし制度せいど」が施行しこうされた。これは国民こくみんの団結だんけつを図はかる目的もくてきで「抽選ちゅうせんで選えらばれた18歳さいの男女だんじょが国防省こくぼうしょうの管理かんり下かで3か月げつ間あいだの共同きょうどう生活せいかつを行おこなう」という内容ないようであり、強制きょうせい的てきに国民こくみんへ課かせられる義務ぎむである。

ベトナム

ベトナム人民じんみん軍ぐんは1944年ねん12月22日にちに設立せつりつされた。徴兵ちょうへい制せいを採用さいようしており、18-27歳さいの男子だんしに原則げんそくとして2年ねんの兵役へいえき義務ぎむが課かされている。主力しゅりょく部隊ぶたい、地方ちほう部隊ぶたい、民兵みんぺいの三さん結合けつごう方式ほうしきを採用さいようしている。国家こっか国防こくぼう安全あんぜん委員いいん会かい主席しゅせきは国家こっか主席しゅせきが兼任けんにんし、首相しゅしょうが副ふく主席しゅせきである。中越なかごえ戦争せんそう時ときには正規せいき軍ぐんだけで170万まん人にんの兵力へいりょくを有ゆうしていたが、現在げんざいは48万まん4000人にんまで兵員へいいんが削減さくげんされた。陸軍りくぐん41万まん2000人にん、海軍かいぐん4万まん2000人にん、空軍くうぐん3万まん人にんとなっている。このほか予備よび役やくと民兵みんぺいが300-400万まん人にん。予備よび役やく将校しょうこうの職業しょくぎょうはさまざまで、高級こうきゅう官僚かんりょうや大学だいがく教員きょういんも少すくなくない。

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく

第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせん期き、選抜せんばつ徴兵ちょうへい登録とうろく制度せいどに臨のぞむニューヨーク市しの男性だんせい（1917年ねん6月がつ6日にち撮影さつえい）

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくは、ベトナム戦争せんそうでのパリ協定きょうてい締結ていけつ後ごの1973年ねん以降いこう、徴兵ちょうへいを停止ていしした。選抜せんばつ徴兵ちょうへい登録とうろく制度せいどであるセレクティブ・サービス・システム（Selective Service System）に基もとづく名簿めいぼの作成さくせいも、1975年ねんに廃止はいしされた。しかし、1980年ねんに選抜せんばつ徴兵ちょうへい法ほうが制定せいていされ、再ふたたび選抜せんばつ徴兵ちょうへい登録とうろく制度せいどが復活ふっかつした。この男性だんせい限定げんていの選抜せんばつ徴兵ちょうへい登録とうろくに対たいして、男性だんせい差別さべつであるとして裁判さいばんが起おこされた。ところが、1981年ねん6月がつに連邦れんぽう最高裁さいこうさいで「選抜せんばつ徴兵ちょうへい法ほうが男性だんせいだけに選抜せんばつ徴兵ちょうへい登録とうろくを義務ぎむとすることはアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく憲法けんぽう修正しゅうせい第だい5条じょうに違反いはんしない」と合憲ごうけん判決はんけつが下くだされ、現在げんざいに至いたるまで名簿めいぼの作成さくせいが国防総省こくぼうそうしょうにおいて継続けいぞくされている。従したがって、米国べいこくに在住ざいじゅうしている市民しみん権けん及および永住えいじゅう権けんを持もつ男性だんせいは18歳さいになった時点じてんで郵便ゆうびん局きょくにおいて登録とうろくの義務ぎむが課かせられている。男性だんせい市民しみんは登録とうろくしないと罰金ばっきん刑けいの対象たいしょうになる他ほか、政府せいふからの奨学しょうがく金きんが受給じゅきゅうできない等ひとしの各種かくしゅの不利益ふりえきが科かされる。永住えいじゅう者しゃには徴兵ちょうへい拒否きょひ権けんがあるが、この場合ばあい、米国べいこくの国籍こくせきは取得しゅとくできなくなる（本来ほんらいは連続れんぞく5年ねん在住ざいじゅうで帰化きか申請しんせい資格しかくができる。軍ぐん歴れきができることで米国べいこくへの忠誠ちゅうせいを誓ちかったと見み做され、必要ひつよう滞在たいざい歴れきが2年ねんに短縮たんしゅくされる）。ベトナム戦争せんそう当時とうじの米国べいこくでは、ホームレスになる若年じゃくねん男性だんせいが大量たいりょうに現あらわれた。住所じゅうしょ不定ふていになれば、召集令状しょうしゅうれいじょうの送付そうふ先さきがなくなるためである。

ベトナム戦争せんそう終結しゅうけつ以後いご、徴兵ちょうへい制せいを復活ふっかつすべきという主張しゅちょうは連邦れんぽう議会ぎかいの非常ひじょうに少数しょうすうの議員ぎいんが提唱ていしょうしているが、連邦れんぽう議会ぎかいの議員ぎいんと議員ぎいんへの立候補者りっこうほしゃの大だい部分ぶぶんも、大統領だいとうりょうと大統領だいとうりょうへの立候補者りっこうほしゃも、国防総省こくぼうそうしょうも、徴兵ちょうへい制せいの復活ふっかつは必要ひつようないと繰くり返かえし表明ひょうめいしている。徴兵ちょうへい制せいを復活ふっかつすべきという主張しゅちょうの理由りゆうは、志願しがん兵制へいせいでは就職しゅうしょく先さきまたは除隊じょたい後ごの大学だいがく奨学しょうがく金きんを求もとめて、経済けいざい的てきに貧まずしい階層かいそうの志願しがん率りつが高たかくなるので、経済けいざい的てき階層かいそうにかかわらず軍務ぐんむを国民こくみん全員ぜんいんに機会きかい平等びょうどうに配分はいぶんするという考かんがえに基もとづく。徴兵ちょうへい制せい復活ふっかつを主張しゅちょうする連邦れんぽう議会ぎかい議員ぎいんは2004年ねんに一般いっぱん的てき徴兵ちょうへい法案ほうあんを連邦れんぽう議会ぎかいに提出ていしゅつし、下院かいん本ほん会議かいぎで採決さいけつした結果けっか、賛成さんせい2票ひょう - 反対はんたい402票ひょうで否決ひけつされ、上院じょういんでは委員いいん会かい審議しんぎを通過つうかできず本ほん会議かいぎでの審議しんぎ・票決ひょうけつには至いたらなかった。

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの将兵しょうへいの数かずは、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん中ちゅうの1945年度ねんどは1,205万まん人にん、就業しゅうぎょう人口じんこうに対たいする比率ひりつは18.6%、総そう人口じんこうに対たいする比率ひりつは8.6%。朝鮮ちょうせん戦争せんそう中ちゅうの1952年ねんは363万まん人にん、就業しゅうぎょう人口じんこうに対たいする比率ひりつは6.0%、総そう人口じんこうに対たいする比率ひりつは2.3%。ベトナム戦争せんそう中ちゅうの1968年ねんは354万まん人にん、就業しゅうぎょう人口じんこうに対たいする比率ひりつは4.6%、総そう人口じんこうに対たいする比率ひりつは1.8%。冷戦れいせん末期まっきの1988年ねんは220万まん人にん、就業しゅうぎょう人口じんこうに対たいする比率ひりつは1.9%、総そう人口じんこうに対たいする比率ひりつは0.9%。冷戦れいせん終結しゅうけつ後ごの1998年ねんは147万まん人にん、就業しゅうぎょう人口じんこうに対たいする比率ひりつは1.1%、総そう人口じんこうに対たいする比率ひりつは0.5%。アフガニスタンとイラクで戦争せんそう中ちゅうの2006年ねんは144万まん人にん、就業しゅうぎょう人口じんこうに対たいする比率ひりつは1.0%、総そう人口じんこうに対たいする比率ひりつは0.5%である。長期ちょうき的てきな視点してんでは、就業しゅうぎょう人口じんこうと総そう人口じんこうに対たいする軍人ぐんじんと軍属ぐんぞくの人数にんずうの比率ひりつが著いちじるしく減少げんしょうしている。また、兵器へいきの機械きかいの高度こうど化かや民間みんかん軍事ぐんじ会社かいしゃへのアウトソーシング化かにより、州兵しゅうへいを含ふくむ志願しがん兵へいでまかなえることから、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく連邦れんぽう政府せいふも兵員へいいん数すうを増ふやすために徴兵ちょうへいする必要ひつようがなく、2000年代ねんだい最初さいしょの10年間ねんかんである現在げんざいで、予測よそく可能かのうな将来しょうらいの範囲はんい内ないでは米国べいこくが徴兵ちょうへい制せいを採用さいようする可能かのう性せいはない。

イギリス

「強制きょうせい徴募ちょうぼ」も参照さんしょう

イギリスでは従来じゅうらい、志願しがん制度せいどで必要ひつような兵員へいいんを確保かくほできており、第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせん参戦さんせんより1年ねん半はん後ご、1916年ねん1月がつに兵士へいし不足ふそくを補おぎなうためにイギリス史上しじょう初はじめての徴兵ちょうへい制せいに踏切ふみきったが、第だい一いち次じ大戦たいせん終了しゅうりょうと同時どうじに志願しがん制せいに復旧ふっきゅうした。その後ご第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんが勃発ぼっぱつした1939年ねん9月がつ、開戦かいせん当日とうじつに再ふたたび徴兵ちょうへい制せいに踏切ふみきった。

1939年ねんの兵役へいえき法ほうでは18〜40歳さいの男子だんし、1941年ねんの第だい二に兵役へいえき法ほうでは17歳さい8か月げつ〜51歳さいの在外ざいがい英国えいこく人じん・在ざい英えい外国がいこく人じん、および20〜30歳さいの独身どくしん女子じょし に兵役へいえきが課かされた。1942年ねんには男女だんじょとも16歳さいまで引下ひきさげられた。イギリスは第だい二に次じ大戦たいせんで独身どくしん女性じょせいを徴兵ちょうへいした唯一ゆいいつの国くにである（#女性じょせい兵士へいしの徴兵ちょうへい参照さんしょう）。

第だい二に次じ大戦たいせん後ごも制度せいど的てきには継続けいぞくされていたが、植民しょくみん地ちからの撤退てったいにより大幅おおはばな人員じんいん過剰かじょうとなり、1960年ねんに廃止はいしされた。

なお、イギリスは徴兵ちょうへい制せいを実施じっししていた期間きかんを通つうじて、宗教しゅうきょう的てき理由りゆう以外いがいでの良心りょうしん的てき兵役へいえき拒否きょひが合法ごうほう的てき・制度せいど的てきに認みとめられていた稀有けうな国家こっかである。

ただし制度せいど化かできたのは、軍人ぐんじんが尊敬そんけいを受うける一方いっぽうで、兵役へいえき拒否きょひ者しゃが「臆病者おくびょうもの」「ノブレス・オブリージュを果はたしていない」として、社会しゃかい的てき指弾しだんの対象たいしょうとなる風土ふうどにあって、拒否きょひ申請しんせい者しゃが相対そうたい的てきに少すくないためである。例たとえば1939年ねんから1948年ねんの間あいだ、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんにおける300万まん人にん以上いじょうの動員どういん数すうに比ひして、兵役へいえき拒否きょひの申請しんせいはわずか50分ぶんの1程度ていどの62,301名めいであり、18,495件けんは却下きゃっかされ、17,231件けんは後方こうほう勤務きんむ（農業のうぎょう労働ろうどう・医学いがく実験じっけん対象たいしょう・看護かんごなど）を命めいぜられたため、兵役へいえきから解放かいほうされたのは26,575名めいに過すぎなかった。

フランス

フランスはフランス革命かくめいを経へて真まっ先さきに市民しみんによる徴兵ちょうへい制度せいどを作つくり上あげた国くにである。第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん後こうも18歳さいの男性だんせいに対たいする1年間ねんかんの兵役へいえきの義務ぎむが定さだめられていた。しかし冷戦れいせん終結しゅうけつ後ご、軍事ぐんじの役割やくわりが減少げんしょうしたと判断はんだんされ、軍事ぐんじ技術ぎじゅつが複雑ふくざつ化かと専門せんもん化かしたこともあり、1990年代ねんだい半なかばに段階だんかい的てきに徴兵ちょうへい制せいを廃止はいしすることになった。1996年ねんから新規しんき対象たいしょうの徴兵ちょうへいを停止ていししている。

徴兵ちょうへい制せい廃止はいし後ごには代かわりに16歳さいから18歳さいの男女だんじょすべてに対たいして1日にちのビデオ講習こうしゅうによる防衛ぼうえい準備じゅんび召集しょうしゅうが義務ぎむ化かされた（出典しゅってん：在日ざいにちフランス大使館たいしかんホームページ「フランスの対外たいがいおよび防衛ぼうえい政策せいさくについての最近さいきんの関係かんけい資料しりょう」）。

2017年ねん5月がつに大統領だいとうりょうに当選とうせんしたエマニュエル・マクロンは当初とうしょ、「徴兵ちょうへい制せい復活ふっかつ」を公約こうやくに掲かかげていた。しかし、「１カ月かげつという短期間たんきかんのみ兵役へいえき義務ぎむを課かす意義いぎが乏とぼしい」、「予算よさんがかかりすぎる」などと批判ひはんされ、また、大学だいがくや青年せいねん団体だんたいなど10以上いじょうの組織そしきから反対はんたい声明せいめいを出だされたため、「徴兵ちょうへい制せい」ではなく、「普遍ふへん的てき国民こくみん奉仕ほうし」（Le service national universel）に変更へんこうされた。2018年ねん6月がつ27日にちに閣議かくぎ決定けっていされた「普遍ふへん的てき国民こくみん奉仕ほうし」計画けいかくによると、16歳さいの国民こくみん全員ぜんいんに対たいし、最初さいしょの1か月げつ間あいだは義務ぎむ的てきな共同きょうどう生活せいかつを送おくらせる内容ないようとなっている。その後ごは、任意にんいで3か月げつから1年ねんの期間きかん、警察けいさつや消防しょうぼうや軍ぐんでの奉仕ほうし活動かつどうに従事じゅうじする計画けいかくとされている。

ドイツ

西にしドイツ

西にしドイツ（ドイツ連邦れんぽう共和きょうわ国こく）では第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん後ごに徴兵ちょうへい制せいが廃止はいしされ、再さい軍備ぐんびにあたっては志願しがん兵制へいせいが採用さいようされていたが、戦後せんご間あいだもないこともあって募集ぼしゅうに応おうじる者ものは少すくなかった。冷戦れいせん構造こうぞうが深刻しんこく化かする中なかでは、志願しがん兵制へいせいに固執こしつしていては要員よういんの確保かくほができないため、やむを得えず1956年ねんに徴兵ちょうへい制度せいどを復活ふっかつさせた。ドイツ連邦れんぽう共和きょうわ国こく基本きほん法ほうで満まん18歳さい以上いじょうの男性だんせいに兵役へいえきの義務ぎむが定さだめられた。ただし、当時とうじのアデナウアー首相しゅしょうは、侵略しんりゃく戦争せんそうを行おこなった歴史れきしを持もつ国くにとしての立場たちばを考慮こうりょし、基本きほん法ほう（憲法けんぽう）の中なかに「良心りょうしん的てき兵役へいえき拒否きょひ権けん」の明文めいぶん規定きていを設もうけた。

東ひがしドイツ

詳くわしくは「建設けんせつ部隊ぶたい」を参照さんしょう

東ひがしドイツ（ドイツ民主みんしゅ共和きょうわ国こく）では、ベルリンの壁かべが構築こうちくされた5か月げつ後ごの1962年ねん1月がつに徴兵ちょうへい制せいが施行しこうされた。その際さいに兵役へいえき拒否きょひ者しゃが続出ぞくしゅつした。兵役へいえき拒否きょひ者しゃは逮捕たいほされ拘禁こうきん刑けいを受うけるにもかかわらず2年ねんで1,550名めいに及および、政府せいふは対応たいおうを迫せまられた。教会きょうかいは若者わかものを支援しえんし、良心りょうしん的てき兵役へいえき拒否きょひ権けんを認みとめるよう政府せいふに働はたらきかけた。西にしドイツではすでに良心りょうしん的てき兵役へいえき拒否きょひが、基本きほん法ほうに権利けんりとして保障ほしょうされていた事情じじょうもあり、この点てんで東ひがしドイツも政権せいけんの民主みんしゅ性せいを国際こくさい社会しゃかいにアピールする必要ひつようがあったため、1964年ねん6月がつに「建設けんせつ部隊ぶたい」が人民じんみん軍ぐん内ないに設置せっちされた。この制度せいどは、国家こっかが兵役へいえき拒否きょひする「反はん社会しゃかい主義しゅぎ的てき」「反はん国家こっか的てき」な若者わかものも人民じんみん軍ぐんの中なかに取とり込こんでしまおうとしたものである。東ひがしドイツは国家こっかによる諸しょ組織そしきに国民こくみんを組くみ込こもうという包括ほうかつ的てきな社会しゃかい統合とうごう政策せいさくが採用さいようされており、建設けんせつ部隊ぶたいもその一環いっかんであった。武器ぶきを持もたない新しん部隊ぶたいは、当初とうしょ「労働ろうどう大隊だいたい（Arbeits-Bataillone）」と名付なづけられたが、公文書こうぶんしょに手書てがきで「労働ろうどう大隊だいたい」を消けして「建設けんせつ部隊ぶたい（Baueinheiten）」と書かき直なおされた。「労働ろうどう大隊だいたい」はナチス政権せいけんの懲罰ちょうばつ組織そしきを想起そうきさせるが、「建設けんせつ」には前向まえむきな響ひびきがある。またこれまで存在そんざいしない新あたらしい名前なまえであったため、市民しみんから偏見へんけんなく受うけ入いれられた。しかし建設けんせつ部隊ぶたいの生活せいかつは厳きびしく、日常にちじょう的てきになされる上官じょうかんからの誹謗ひぼう、嫌いやがらせ、軍事ぐんじ施設しせつでの任務にんむ、良心りょうしんの自由じゆうが権利けんりとして認みとめられない状況じょうきょう、除隊じょたい後ごの教育きょういく・就職しゅうしょく差別さべつがあり、さらには建設けんせつ兵士へいしをも拒否きょひすると法ほうを犯おかすことになる。そこで建設けんせつ兵士へいしらは除隊じょたい後ご、建設けんせつ部隊ぶたいに入はいることさえ拒こばんだ人ひとと平和へいわ活動かつどうを始はじめた。

統合とうごう後ごのドイツ

東西とうざいドイツの統合とうごう後ご、兵役へいえき期間きかんは次第しだいに短縮たんしゅくされ、2002年ねん1月がつからは9か月げつ間あいだと短みじかくなった。基本きほん法ほうにおいて明文化めいぶんかされている良心りょうしん的てき兵役へいえき拒否きょひを根拠こんきょに、兵役へいえきに代かわって老人ろうじん介護かいご施設しせつでの介護かいご作業さぎょうに従事じゅうじする兵役へいえき拒否きょひ者しゃの場合ばあいは、社会しゃかい福祉ふくし事業じぎょうや環境かんきょう保護ほご活動かつどう、消防しょうぼう活動かつどうなどに通常つうじょうの兵役へいえき期間きかんより長ながい期間きかん奉仕ほうしすることが求もとめられていたが、2004年ねん10月がつからは兵役へいえき期間きかんと同おなじ9か月げつ間あいだとされた。これらの義務ぎむは25歳さいまでに果はたす必要ひつようがあるとされていた。

しかし、2010年ねん10月がつにフォルカー・ヴィーカー連邦れんぽう軍ぐん総監そうかんは、連邦れんぽう軍ぐん改革かいかくのため将来しょうらいの連邦れんぽう軍ぐんに関かんする報告ほうこく書しょを議会ぎかいに提出ていしゅつし、将来しょうらい像ぞうとしては新あらたな志願しがん制せいによる軍ぐんが望のぞましいとした。この報告ほうこく書しょでは「コンパクトで効率こうりつ的てきで、同時どうじに高性能こうせいのうの軍隊ぐんたい」を造つくるためには志願しがん制せいが有利ゆうりであるとされている。こうして、2011年ねん6月がつ末まつを以もって長ながらく続つづいてきたドイツに於おける徴兵ちょうへい制せいの幕まくが降おろされた。同時どうじに、社会しゃかい的てきに大おおきな役割やくわりを担になっていた良心りょうしん的てき兵役へいえき拒否きょひ者しゃによる社会しゃかい福祉ふくし事業じぎょうへの貢献こうけんは終了しゅうりょうしたが、新あたらしい連邦れんぽうボランティア役務えきむ制度せいど（Bundesfreiwilligendienst）が導入どうにゅうされている。

徴兵ちょうへい制度せいどの支持しじ者しゃに配慮はいりょするために「廃止はいし」ではなく「中止ちゅうし」としたため、今後こんごのドイツの国防こくぼう情勢じょうせいの変化へんかによって復活ふっかつする余地よちは残のこされている。2023年ねん1月がつ27日にち、ボリス・ピストリウス国防こくぼう相しょうは2011年ねんの徴兵ちょうへい中止ちゅうしが「誤あやまりだった」として、「市民しみんと国家こっかの関係かんけいを強化きょうかする新あらたなモデル」を再さい検討けんとうするために議論ぎろんを進すすめる意向いこうを示しめした。

イタリア

イタリアでは1990年ねん頃ごろから現代げんだい戦せんに適応てきおうした軍ぐんの再さい編成へんせいが計画けいかくされ、徴兵ちょうへい制せいについても議題ぎだいとなった。職業しょくぎょう軍人ぐんじん主体しゅたいの高度こうど化かが妥当だとうとの結論けつろんに達たっし、2000年ねんに徴兵ちょうへい制せいを廃止はいしした。

ロシア

ソビエト連邦れんぽうの徴集ちょうしゅう兵へい（1941年ねん）

詳細しょうさいは「ロシア連邦れんぽう軍ぐん」を参照さんしょう

ロシア連邦れんぽうでは、徴兵ちょうへい制度せいどを存続そんぞくさせている。ロシア連邦れんぽう軍ぐんは、広大こうだいな領土りょうどや長大ちょうだいな国境こっきょう線せんを持もつ陸軍りくぐん大国たいこくである。このため平時へいじでの定員ていいん数すうに加くわえて、戦時せんじにはさらに大量たいりょう動員どういんが可能かのうなように予備よび役やく将兵しょうへいの層そうの厚あつさが特徴とくちょうとなっている。

2002年ねん6月がつ28日にち、ロシア下院かいんは代替だいたい奉仕ほうしに関かんする法案ほうあん（代替だいたい文民ぶんみん勤務きんむ法ほう）を採択さいたくし、良心りょうしん的てき兵役へいえき拒否きょひが制度せいど的てきに明文化めいぶんかされた。ロシア政府せいふは男性だんせいに1年間ねんかんの兵役へいえきを義務付ぎむづけているが、ソ連それん崩壊ほうかい後ごの1993年ねんに制定せいていされた新しん憲法けんぽうは、宗教しゅうきょうや他たの信条しんじょうを理由りゆうに兵役へいえきを拒否きょひする人ひとに対たいし、代替だいたい奉仕ほうしの可能かのう性せいを保障ほしょうしている。しかし代替だいたい奉仕ほうしに関かんする具体ぐたい的てき取とり決きめを定さだめた法律ほうりつはそれまで存在そんざいしておらず、軍隊ぐんたいからの脱走だっそうの多発たはつや兵役へいえき拒否きょひするための賄賂わいろ等とう、汚職おしょくの原因げんいんとなっていた。2002年ねん6月がつ28日にち、下院かいんで可決かけつされた法案ほうあんによると、兵役へいえきの代かわりに民間みんかん施設しせつで3年ねん半はん、または軍事ぐんじ施設しせつで3年間ねんかんの代替だいたい奉仕ほうしを選択せんたくすることができるようになる。また、大学だいがく卒業そつぎょう者しゃの場合ばあいは、奉仕ほうし期間きかんは半分はんぶんですむ。ただし徴兵ちょうへい委員いいん会かいが代替だいたい奉仕ほうし者しゃの任地にんちを決きめるため、自宅じたくや家族かぞくの近ちかくで働はたらける可能かのう性せいはない。この法律ほうりつは2004年ねん1月がつ1日にちから発効はっこうした。ロシアでは18歳さいからの兵役へいえきが義務付ぎむづけられているが、大学生だいがくせいは兵役へいえきを遅おくらせることが許可きょかされている。

政府せいふは2010年ねんまでに徴兵ちょうへい制せいを廃止はいしして完全かんぜんな職業しょくぎょう軍人ぐんじんによる志願しがん制せいへの移行いこうを目指めざしていたが、1年間ねんかんという短みじかい兵役へいえきや急激きゅうげきな少子しょうし化かによって兵員へいいんの確保かくほが難むずかしい状況じょうきょうに陥おちいっており、今後こんごは、兵役へいえき期間きかんの延長えんちょうや、志願しがん兵へい枠わくを削減さくげんして徴兵ちょうへいを増ふやす方針ほうしんが検討けんとうされていた。

2010年代ねんだいにはロシアの徴兵ちょうへい制せいは形骸けいがい化かが進すすみ、もはや破綻はたん寸前すんぜんだという評価ひょうかもあった。ロシアの徴兵ちょうへい制せいは非常ひじょうに評判ひょうばんが悪わるく、若者わかものの間あいだでは徴兵ちょうへい逃のがれが蔓延まんえんしている上うえ、ロシアは少子化しょうしかが進すすんでいることもあって、もはや軍ぐんの定数ていすうすら維持いじできない状態じょうたいにある。ロシア軍ぐんは志願しがん制せいに進すすみつつあり、進すすませるために下士官かしかん・兵卒へいそつを対象たいしょうに徴集ちょうしゅうされた軍人ぐんじんの中なかから契約けいやくで勤務きんむする者ものを選抜せんばつする契約けいやく勤務きんむ制度せいどがある。そして、2020年ねんには兵士へいしの3分ぶんの2が、給与きゅうよを受うけ取とりながら2～3年ねんほど軍ぐんで働はたらく契約けいやく軍人ぐんじんになるとの予測よそくもあり、実際じっさいに契約けいやく軍人ぐんじんの数かずは、2015年ねんに初はじめて徴集ちょうしゅうされた兵士へいしを上回うわまわり、2019年ねん3月がつのショイグ国防こくぼう相しょうの発言はつげんによると、契約けいやく兵へいの数かずが約やく39.4万まん人にんと全ぜん兵力へいりょく数すうの約やく4割わりを占しめている。ロシアの大学だいがくには軍事ぐんじ教練きょうれんが存在そんざいし、これが徴兵ちょうへい制度せいどを補おぎなっている。また裕福ゆうふくな層そうを中心ちゅうしんに合法ごうほう・違法いほうな兵役へいえき逃のがれが横行おうこうしている。先進せんしん諸国しょこくの軍隊ぐんたいやロシア国内こくないの一般いっぱん市民しみんのそれと比くらべても極端きょくたんに安やすい将兵しょうへいの給与きゅうよレベルや、新兵しんぺいに対たいするイジメや食料しょくりょう事情じじょうの悪わるさ、居住きょじゅう環境かんきょうの劣悪れつあくさなど多おおくの問題もんだいが徴兵ちょうへい制度せいどの行方ゆくえに影響えいきょうを与あたえている。これらの理由りゆうにより実際じっさいに兵役へいえきに就つく者ものは全ぜん対象たいしょう者しゃの10%以下いかであり、それらの多おおくが文字もじの読よめない者ものや犯罪はんざい歴れきのある者もの、健康けんこうに問題もんだいがある者ものといった民間みんかん会社かいしゃではあまり採用さいようされない者もの達たちである。

2022年ねんより開始かいしされたウクライナ侵攻しんこうで、ロシアは大おおきく兵力へいりょくを失うしなった。ウラジーミル・プーチン大統領だいとうりょうは兵力へいりょくを115万まん人にんから150万まん人にんに増強ぞうきょうする計画けいかくを立たて、徴兵ちょうへい対象たいしょう年齢ねんれいを21歳さいから30歳さいに引ひき上あげることとしている。一方いっぽうで、新しん制度せいどの移行いこう期きについては30歳さいの上限じょうげんのみが適用てきようされるため、18歳さいから30歳さいまでが対象たいしょうとなっている。

スイス

SIG SG550アサルトライフルを携帯けいたいしたまま買かい物ものするスイス人じん男性だんせい

グラールス近郊きんこうにおけるスイス陸軍りくぐんの訓練くんれん

スイスの男性だんせい市民しみんは、18歳さい時じに兵役へいえきを務つとめられる能力のうりょくがあるかどうかを調しらべる身体しんたい検査けんさが義務付ぎむづけられている。そこで不ふ合格ごうかくと診断しんだんされると兵役へいえき免除めんじょとなるが、合格ごうかく者しゃは20歳さいまでに18又または21週間しゅうかんの初任しょにん訓練くんれんを受うけて個人こじん装備そうび一式いっしきが支給しきゅうされる。34歳さいまでに3週間しゅうかんほどの補充ほじゅう講習こうしゅうを約やく7回かい受うけ、20歳さいから数かぞえて通算つうさんで合計ごうけい260日間にちかんの兵役へいえきに就つかなければならない。兵役へいえきを一いち度どで済すませる制度せいども存在そんざいする。その場合ばあいの兵役へいえきは300日間にちかんである。

過去かこ、国防こくぼう関係かんけい者しゃが「冷戦れいせんの終結しゅうけつにより外敵がいてきからの侵略しんりゃくの危険きけん性せいが減少げんしょうしたことで、現役げんえき総そう定員ていいん36万まん人にんは過大かだいだから、装備そうびの近代きんだい化かと職業しょくぎょう軍人ぐんじんの増加ぞうかで軍隊ぐんたいのプロ化かを進すすめ、兵士へいし数すうも12万まん人にん程度ていどに削減さくげんする」との考かんがえを「21世紀せいきの国防こくぼう軍ぐん指針ししん」で発表はっぴょうし、徴兵ちょうへい制せいを廃止はいしするために国民こくみん投票とうひょうを2度ど発議はつぎしたが、否決ひけつされた。しかし、国防こくぼう相しょうが最近さいきんになって、再ふたたび、職業しょくぎょう軍人ぐんじん制度せいどへの移行いこうを訴うったえている。また、2012年ねんには「平和へいわ主義しゅぎグループ」が中道ちゅうどう左派さは政党せいとうの支持しじの下したに、徴兵ちょうへい制せい廃止はいしを目指めざすイニシアチブ成立せいりつに必要ひつような数かずの署名しょめいを集あつめ、提出ていしゅつした。この案あんは、志願しがん制せいの軍隊ぐんたいの創設そうせつと、任意にんいでの民間みんかん役務えきむの維持いじを目標もくひょうとしている。その後ご、2012年ねん12月から国民こくみん発議はつぎについての議論ぎろんが開始かいしされた。今後こんご、全ぜん州しゅう議会ぎかい（上院じょういん）での議論ぎろんを経へて、内閣ないかくが国民こくみん投票とうひょうの日程にっていを決きめる予定よていである。なお、徴兵ちょうへい制せい廃止はいし案あんが国民こくみん投票とうひょうにかけられるのは、この25年間ねんかんで3度目どめになる。2013年ねん9月がつ22日にちに徴兵ちょうへい制せい廃止はいしは反対はんたい多数たすうで否決ひけつされた。

1991年ねんの国民こくみん投票とうひょうの結果けっか、良心りょうしん的てき兵役へいえき拒否きょひが合法ごうほう的てきに認みとめられるようになり、介護かいごや医療いりょうなどの代替だいたい役務えきむ（Zivildienst）が1996年ねんに制度せいど化かされた。。

その他たのヨーロッパ諸国しょこく

その他たのヨーロッパ諸国しょこくでは、多おおくの国家こっかで徴兵ちょうへい制せいが敷しかれていたが、フランスやイタリアとほぼ同どう時期じきにオランダ、ベルギー、スペイン、ポルトガルなどの西にしヨーロッパ諸国しょこくでも一斉いっせいに廃止はいしされた。オーストリア、ギリシャ、キプロスは徴兵ちょうへい制度せいどがある。

北欧ほくおう諸国しょこく

デンマークで1849年ねんに発布はっぷされた徴兵ちょうへい制度せいどの告知こくち文ぶん

予備よび訓練くんれんに対たいする参加さんか証書しょうしょ（フィンランド、1897年ねん）

ノルウェーやフィンランド、デンマークでは男性だんせいに徴兵ちょうへい制せいが課かされている。ただし代替だいたい役務えきむを課かすることにより、良心りょうしん的てき兵役へいえき拒否きょひも許ゆるされている。

デンマークでは、段階だんかい的てきに徴兵ちょうへい期間きかんが短縮たんしゅくされ、それまで9か月げつだったのが4か月げつ間あいだの基礎きそ訓練くんれんだけで徴兵ちょうへい期間きかんは終了しゅうりょうし、それ以降いこうの継続けいぞくは選択せんたくできるようになった。しかし、2022年ねんロシアのウクライナ侵攻しんこうを受うけて、防衛ぼうえい力りょく強化きょうかのために2026年ねんから兵役へいえき期間きかんを11か月げつに延長えんちょうし、男女だんじょ平等びょうどうの観点かんてんから女性じょせいも徴兵ちょうへい対象たいしょうに加くわえる方針ほうしんが示しめされている。

アイスランドに関かんしては徴兵ちょうへい制度せいどを課かしたことが歴史れきし上じょう一いち度どもない。(アイスランドは軍隊ぐんたいを保有ほゆうしていないが、軍隊ぐんたいにあたる警備けいび隊たいを保有ほゆうしている)

スウェーデンでは、2010年ねん7月がつ1日にちに徴兵ちょうへい制度せいどが廃止はいしされたが、2017年ねんに2018年ねん1月がつから復活ふっかつすることを発表はっぴょう。2010年ねん以前いぜんは女性じょせいは対象たいしょう外がいであったが、今回こんかいからは男女だんじょ全員ぜんいんが徴兵ちょうへい対象たいしょうとなる。2018年ねんには1999年ねん生うまれの若者わかものから13000人にんが選えらばれき取きとり調査ちょうさをされた上うえで4000人にんが徴集ちょうしゅうされ、兵役へいえきに就つく期間きかんは9か月げつ~11か月げつ となる予定よていである。

ノルウェーでは、1年間ねんかんの徴兵ちょうへい義務ぎむが、2015年ねんから女性じょせいにも拡大かくだいされ、ヨーロッパで唯一ゆいいつ平時へいじに女性じょせいを徴兵ちょうへいする国くにであったが、2018年ねん1月がつ以降いこうはスウェーデンでも同様どうように女性じょせいが徴兵ちょうへいされるようになった。

東欧とうおう諸国しょこく

ウクライナやベラルーシやエストニアなど旧きゅうソ連それん諸国しょこくでは男性だんせいに対たいする徴兵ちょうへい制度せいどがある。一方いっぽう、NATOやEUに加盟かめいしたチェコやスロバキア、ハンガリー、ルーマニアといった旧きゅう社会しゃかい主義しゅぎ国こくの東欧とうおう諸国しょこくは2000年代ねんだい前半ぜんはんから半なかばにかけて相次あいついで徴兵ちょうへい制せいを廃止はいしした。リトアニアは一度いちど廃止はいしした徴兵ちょうへい制せいをロシアの脅威きょういを理由りゆうに復活ふっかつした。

イスラエル

イスラエルでは、ユダヤ教徒きょうとのイスラエル国民こくみんと永住えいじゅう者しゃに対たいして兵役へいえきの義務ぎむが課かせられている。条件じょうけんや期間きかんに差さがあるものの女性じょせいにも徴兵ちょうへい制せいがあることが特徴とくちょうとなっている。徴兵ちょうへい制せいを取とる国家こっかにおいても、そのほとんどは男性だんせいのみを対象たいしょうとしていることから考かんがえると非常ひじょうに珍めずらしい事例じれいだが、周囲しゅういすべてが程度ていどの差さはあれ敵性てきせい国家こっかであり、祖国そこくの存亡そんぼうを賭とした戦争せんそうが明日あしたにでも起おこりうるという同国どうこくの事情じじょうが根底こんていに存在そんざいする。超ちょう正統せいとう派はユダヤ教徒きょうととドゥルーズ教徒きょうとを除のぞくアラブ系けい国民こくみんに対たいしては兵役へいえきが免めんじられている（志願しがん入隊にゅうたいすることは可能かのう）。

男性だんせいは3年ねん、女性じょせいは1年ねん9か月げつ間あいだの兵役へいえき期間きかんとなる。拒否きょひ者しゃには3年間ねんかんの禁固刑きんこけいが科かされる。ユダヤ教きょうの律りつ法ほうによると女性じょせいの男装だんそうは禁きんじられているため、女子じょしは宗教しゅうきょう上じょうの理由りゆうによる良心りょうしん的てき兵役へいえき拒否きょひが可能かのうだが、条件じょうけんは少すこし厳きびしい。妊娠にんしん等とうの理由りゆうによる例れいも含ふくめ、女性じょせいの約やく1/3が兵役へいえきを免除めんじょされている。男性だんせいはユダヤ教きょうの神学校しんがっこうを卒業そつぎょうし、超ちょう正統せいとう派はのラビになれば、宗教しゅうきょう上うえの理由りゆうで兵役へいえきを拒否きょひできる。ただし、イスラエル最高裁さいこうさいが2012年ねん2月がつに、超ちょう正統せいとう派はに対たいする兵役へいえき免除めんじょを「法ほうの下したの平等びょうどう」に反はんするとして改善かいぜん措置そちを命めいじており、その後ご、2012年ねん7月がつ31日にちにユダヤ教きょう超ちょう正統せいとう派はの宗教しゅうきょう学校がっこう生せいの兵役へいえきを免除めんじょする「兵役へいえき猶予ゆうよ法ほう」が失効しっこうし、イスラエル政府せいふが超ちょう正統せいとう派はの徴兵ちょうへいに向むけた準備じゅんび（手続てつづきには数カ月すうかげつかかる見通みとおし）を開始かいししたと報ほうじられている。しかし、超ちょう正統せいとう派はの反発はんぱつもあり、徴兵ちょうへいに向むけた動うごきは進すすんでいない。

かつてイスラエルでは将校しょうこうになることがエリートコースの典型てんけいであったが、産業さんぎょうの発展はってんにより魅力みりょくが薄うすれている。

レバノン

レバノンでは、1975年ねんのレバノン内戦ないせん以前いぜんには徴兵ちょうへい制せいは存在そんざいしなかったものの、1980年代ねんだい初頭しょとうに徴兵ちょうへい制せいが施行しこうされた。しかしこの当時とうじはレバノン国軍こくぐんは極きわめて貧弱ひんじゃくであり、この法令ほうれいが遵守じゅんしゅされたのはベイルート周辺しゅうへんのみであったと言いわれている。この制度せいども1985年ねん頃ごろにレバノン国軍こくぐんが衰弱すいじゃくした頃ころには死文しぶん化かしたといわれる。1990年ねん以降いこう、内戦ないせんが沈静ちんせい化かすると、政府せいふ軍ぐんの早期そうき再建さいけんとレバノン政府せいふの威信いしん回復かいふく、宗派しゅうは間あいだの対立たいりつ解消かいしょうを目的もくてきとして「フラッグ・サービス」と呼よばれる事実じじつ上じょうの徴兵ちょうへい制せいが再さい施行しこうされた。全ぜん宗派しゅうはのレバノン国民こくみん男性だんせいが対象たいしょうであり兵役へいえき期間きかんは1年ねんであったが、現在げんざいは6か月げつまでに短縮たんしゅくされている。しかしシーア派はなど一部いちぶの宗派しゅうはでは「ヒズボラ」や「アマル」といった民兵みんぺい組織そしきに入隊にゅうたいするなど、黙殺もくさつする住民じゅうみんも少すくなくない。

トルコ

トルコ軍ぐんは良心りょうしん的てき兵役へいえき拒否きょひを認みとめない完全かんぜんな男性だんせい皆みな兵制へいせいを採とっており、身体しんたい障害しょうがいがない限かぎり男性だんせいには15か月げつ間あいだ、ただし、大学だいがく卒業そつぎょう者しゃは12か月げつ間あいだの兵役へいえきが課かされ、それぞれ陸軍りくぐん、海軍かいぐん、空軍くうぐん、沿岸えんがん警備けいび隊たいに配属はいぞくされる。定期ていきバスのような公共こうきょう輸送ゆそう機関きかんでは軍隊ぐんたいによるID検査けんさがあり、兵役へいえきを逃のがれている者ものはそのまま任地にんちに強制きょうせい連行れんこうされ、一度いちど帰宅きたくすることも許ゆるされない。18歳さい〜40歳さいまでの男性だんせいで国籍こくせきを有ゆうするIDカード保持ほじ者しゃを対象たいしょうに行おこなわれるが、学生がくせいは徴兵ちょうへい猶予ゆうよされる。学士がくし課程かていは29歳さいまで、修士しゅうし課程かていは33歳さいまで、博士はかせ課程かていは37歳さいまでである。

一般いっぱんには20歳さいまでに兵役へいえきに応おうじ、最下さいか級きゅうの兵士へいし（er）としての訓練くんれんと任務にんむに就つくことになる。また大学だいがく卒業そつぎょう者しゃは、兵卒へいそつではなく予備よび将校しょうこうとして訓練くんれんを受うける。兵役へいえき期間きかん中ちゅうの給与きゅうよは安やすく、軍ぐん種しゅ・兵科へいか・任地にんちにより異ことなるが、2006年ねん現在げんざい、20新しんトルコリラ程度ていど（約やく1600円えん）となっている。これはタバコ8箱はこ程度ていどの価値かちであり、一般いっぱんには兵役へいえきは無償むしょう（bedava）とみなされている。これに対たいして職業しょくぎょう軍人ぐんじんは「有給ゆうきゅう軍人ぐんじん（para askeri）」と呼よばれる。以前いぜんは「代人だいにん料りょう」を払はらって兵役へいえき期間きかんを短みじかくする制度せいどがあったが、貧富ひんぷで格差かくさが出でて問題もんだいになったため、廃止はいしされている。

近年きんねん、トルコでは良心りょうしん的てき兵役へいえき拒否きょひに関かんする議論ぎろんが活発かっぱつ化かしている。ヨーロッパ評議ひょうぎ会かいの構成こうせい国こくの中なかで兵役へいえき拒否きょひを認みとめていないのはトルコとアゼルバイジャンのみである。1987年ねん4月がつ9日にちに発表はっぴょうされた兵役へいえき義務ぎむへの良心りょうしん的てき拒否きょひに関かんするヨーロッパ評議ひょうぎ会かい閣僚かくりょう委員いいん会かいの勧告かんこくNo.R（87）8では、「徴兵ちょうへい制度せいどに服ふくすべき者もので、納得なっとくできる良心りょうしん的てきな理由りゆうから武力ぶりょく使用しようへの関かかわりを拒否きょひする者ものは、そのような役務えきむに服ふくする義務ぎむから解放かいほうされる権利けんりを有ゆうする。そのような者ものは、代替だいたい的てきな役務えきむに服ふくすることがある」としている。

2006年ねん、欧州おうしゅう人権じんけん裁判所さいばんしょ (ECHR) は Osman Murat Ulke の良心りょうしん的てき兵役へいえき拒否きょひに関かんして、トルコ政府せいふが2年ねん6か月げつの懲役ちょうえき刑けいを科かしたことに対たいして、人権じんけん侵害しんがいだと認みとめた。2005年ねんにクルド人じんであるMehmet Tarhanは兵役へいえき拒否きょひの罪つみで4年間ねんかん、軍ぐんの刑務所けいむしょに収監しゅうかんされることとなった（しかし、彼かれは2006年ねんに突然とつぜん、釈放しゃくほうされた）。ジャーナリストのPerihan Magdenはトルコの裁判所さいばんしょに、Tarhanの良心りょうしん的てき兵役へいえき拒否きょひを認みとめるように訴うったえたが、逮捕たいほされた。後のちに彼女かのじょは無罪むざいとなった。

その他たの中東ちゅうとう諸国しょこく

イランの徴集ちょうしゅう兵へい

イラン、エジプトでは徴兵ちょうへい制せいが施行しこうされている。なお、中東ちゅうとう地域ちいきの君主くんしゅ制せい国家こっかでは志願しがん制せいを採用さいようしているケースが大だい多数たすうである（カタール、バーレーン、サウジアラビア、オマーン、ヨルダン）。ただし、アラブ首長しゅちょう国こく連邦れんぽうとクウェートは君主くんしゅ制せい国家こっかであるが徴兵ちょうへい制せいを施行しこうしている。

アフリカ諸国しょこく

エリトリアは軍事ぐんじ国家こっかであり、完全かんぜんな国民こくみん皆兵かいへい制度せいどを持もっている。エリトリア人じんは男女だんじょを問とわず全員ぜんいん、無む期限きげんの兵役へいえきまたは政府せいふ事業じぎょうでの労役ろうえきが義務付ぎむづけられている。事実じじつ上じょうの強制きょうせい労働ろうどうであり、難民なんみんや脱走だっそう兵へいは見みつかれば刑務所けいむしょ送おくりであり、処刑しょけいされることもある。

モロッコは2006年ねんに徴兵ちょうへい制せいを廃止はいししていたが、2019年ねん2月がつ、徴兵ちょうへい制せいを復活ふっかつさせると発表はっぴょうした。

南みなみアフリカ

「南みなみアフリカの徴兵ちょうへい制度せいど」も参照さんしょう

南みなみアフリカ共和きょうわ国こくは、アパルトヘイトが撤廃てっぱいされた1994年ねんに徴兵ちょうへい制度せいどが終了しゅうりょうした。

徴兵ちょうへい制度せいどと諸しょ概念がいねん

• 徴集ちょうしゅう兵へい：呼よび出だされ集あつめられた兵へい。（英えい: conscript）
  • 召集しょうしゅう兵へい：一いち度どは現役げんえき軍人ぐんじんとして徴兵ちょうへいされた後のちに予備よび役やく等とうの役やく種しゅとなり、改あらためて召集しょうしゅうされた兵へい
  • 応召おうしょう兵へい：召集令状しょうしゅうれいじょうに応おうじて指定してい地ちに行いく兵へい。あるいは召集しょうしゅうに応おうじた兵へい。
  • 徴用ちょうよう兵へい：呼よび出だされ用もちいられる兵へい
• 志願しがん兵へい：（事実じじつ上じょうの有無うむは問とわず）本人ほんにんの志願しがんにより兵役へいえきについた兵士へいし
  • 義勇ぎゆう兵へい：志願しがん兵へいにほぼ同おなじだが、正規せいき軍ぐんではない義勇軍ぎゆうぐんの兵士へいしを明示めいじ的てきに指さす場合ばあいもある。（英えい: volunteer）英語えいごのvolunteerは日本語にほんごの志願しがん兵へいと義勇ぎゆう兵へい両方りょうほうの意味いみを包含ほうがんする。
• 徴募ちょうぼ兵へい：(1)つのり集あつめた兵へいであり、志願しがん兵へいのこと(2)呼よび集あつめられた兵へいのこと、徴集ちょうしゅう兵へい。「諸しょ藩はんの兵へいを―して/近きん世紀せいき聞（延房のぶふさ）」。強制きょうせい徴募ちょうぼも参照さんしょう
• 動員どういん：服務ふくむ待機たいきの兵へいを召集しょうしゅうすること。あるいは動員どういん済ずみの兵へいを根拠地こんきょちに集結しゅうけつさせること。
• 復員ふくいん：動員どういんを解除かいじょし服務ふくむ待機たいきに戻もどすこと。
• 入隊にゅうたい：軍隊ぐんたいに入はいること。徴集ちょうしゅう兵へいの場合ばあい、兵役へいえき登録とうろくが事実じじつ上じょうの入隊にゅうたいであるが、実際じっさいに召集しょうしゅうを受うけた場合ばあいは入営にゅうえいとも。
• 除隊じょたい：兵役へいえきの期間きかんを満了まんりょうし、軍隊ぐんたいを辞やめること。退役たいえき、退職たいしょくとも。
  • 不名誉ふめいよ除隊じょたい：犯罪はんざいその他た重大じゅうだいな不祥事ふしょうじにより、強制きょうせい的てきに軍隊ぐんたいを辞やめさせる処分しょぶんのこと。

参考さんこう文献ぶんけん

• 木戸きど衛まもる一いち「徴兵ちょうへい制せい「停止ていし」に向むかうドイツの政治せいじ社会しゃかい : 軍事ぐんじ化かの中なかの民主みんしゅ主義しゅぎと人権じんけん」『立たて命いのち館かん法學ほうがく』第だい333/334巻かん、立命館大学りつめいかんだいがく法ほう学会がっかい、2010年ねん、1963-1988頁ぺーじ、ISSN 0483-1330、NAID 110008462932。 
• 藤澤ふじさわ房ぼう俊しゅん「イタリア軍ぐんの成立せいりつと徴兵ちょうへい忌避きひ現象げんしょう」『イタリア学会がっかい誌し』第だい35巻かん、イタリア学会がっかい、1986年ねん、139-162頁ぺーじ、doi:10.20583/studiitalici.35.0_139、NAID 110002959253。 

• 市川いちかわひろみ「ドイツにおける徴兵ちょうへい制せいの変容へんよう : 国家こっかと個人こじんの相克そうこく」『広島ひろしま平和へいわ科学かがく』第だい24巻かん、広島大学ひろしまだいがく平和へいわ科学かがく研究けんきゅうセンター、2002年ねん、223-239頁ぺーじ、CRID 1390853649788708224、doi:10.15027/15281、ISSN 03863565。 
• 市川いちかわひろみ「軍人ぐんじんによる市民しみん的てき不ふ服従ふくじゅう : 選択せんたく的てき兵役へいえき拒否きょひと脱走だっそう」『広島ひろしま平和へいわ科学かがく』第だい29巻かん、広島大学ひろしまだいがく平和へいわ科学かがく研究けんきゅうセンター、2007年ねん、47-70頁ぺーじ、CRID 1390853649788718208、doi:10.15027/30945、ISSN 03863565。 

• 佐々木ささき陽子ようこ、「兵役へいえき拒否きょひに揺ゆらぐ徴兵ちょうへい制せい」 『地ち歴れき・公民こうみん科か資料しりょう』2005年ねん2月がつ20日はつか 60号ごう, 実教出版じつきょうしゅっぱん
• 「EU各国かっこく(27か国こく)における兵役へいえき義務ぎむ･非ひ軍事ぐんじ的てき代替だいたい役務えきむ義務ぎむ」 (PDF) 中山なかやま太郎たろう事務所じむしょ（「夜明よあけの日本にっぽん」勉強べんきょうコーナー）
• 後藤ごとう光男みつお「平和へいわ的てき生存せいぞん権けんと抵抗ていこう権けん(一いち)」『早稲田わせだ法ほう学会がっかい誌し』第だい30巻かん、早稲田大学わせだだいがく法ほう学会がっかい、1980年ねん3月がつ、399-428頁ぺーじ、CRID 1050282677457236992、hdl:2065/6382、ISSN 0511-1951。 

• 「ホッブスの抵抗ていこう権けん批判ひはん-事実じじつde factoに基もとづく義務ぎむの理論りろん-」 (PDF) 矢島やじま信しん（2005年度ねんど政策せいさく科学かがく研究けんきゅう科か修士しゅうし論文ろんぶん 立命館大学りつめいかんだいがく政策せいさく科学かがく研究けんきゅう科か）
• 石井いしい正司せいじ「ドイツ社会しゃかい主義しゅぎ教育きょういく崩壊ほうかいの内在ないざい的てき原因げんいん(III) : 防衛ぼうえい教育きょういくにおける問題もんだい(教育きょういく史し,後藤ごとう純郎すみお先生せんせい古希こき記念きねん号ごう)」『教育きょういく學がく雑誌ざっし』第だい29巻かん、日本にっぽん大学だいがく教育きょういく学会がっかい、1995年ねん、31-48頁ぺーじ、CRID 1390282680756871808、doi:10.20554/nihondaigakukyouikugakkai.29.0_31、ISSN 02884038。 
• 河島かわしま幸夫ゆきお「戦後せんごドイツの教会きょうかいと平和へいわ問題もんだい ―プロテスタント教会きょうかいの姿勢しせいと活動かつどう（1945―1990）―」『西南学院大学せいなんがくいんだいがく法学ほうがく論集ろんしゅう』第だい41巻かん3・4、西南学院大学せいなんがくいんだいがく学術がくじゅつ研究所けんきゅうじょ、2009年ねん3月がつ、1-32頁ぺーじ、CRID 1050282812594485760、ISSN 02863286。 
• 榊原さかきばら浩ひろし晃あきら「イギリス初等しょとう教育きょういく草創そうそう期きにおけるMathias Rothの体育たいいく授業じゅぎょう導入どうにゅう提案ていあん」『福岡教育大学ふくおかきょういくだいがく紀要きよう. 第だい五ご分冊ぶんさつ芸術げいじゅつ・保健ほけん体育たいいく・家政かせい科か編へん』第だい55号ごう、福岡教育大学ふくおかきょういくだいがく、2006年ねん2月がつ、35-48頁ぺーじ、CRID 1050564287378191360、hdl:10780/66、ISSN 02863243。 
• 「イタリアの社会しゃかい的てき協同きょうどう組合くみあい2001」 (PDF) 『協同きょうどうの發見はっけん』 2004年ねん NO.138 p. 33-48, 協同きょうどう総合そうごう研究所けんきゅうじょ。※イタリアの2001年ねん末まつにおける良心りょうしん的てき兵役へいえき拒否きょひ者しゃ数すうの州しゅう別べつ人数にんずうの資料しりょうあり
• 神吉かんき直人なおと, 長内おさない厚あつし, 本間ほんま利通としみち, 伊吹いぶき勇いさむ亮あきら, 陳ちん韻いん如「台湾たいわんの国防こくぼう役やく制度せいどと産業さんぎょう競争きょうそう力りょく」『赤門あかもんマネジメント・レビュー』第だい7巻かん第だい12号ごう、グローバルビジネスリサーチセンター、2008年ねん、859-880頁ぺーじ、CRID 1390001205758539904、doi:10.14955/amr.071201、hdl:2065/40768、ISSN 1347-4448。 

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• 世界せかい各国かっこくの国防こくぼう大臣だいじん一覧いちらん