食用しょくようキノコ

食用しょくようキノコ（しょくようキノコ）は、食用しょくようとされる菌類きんるいの子こ実体じったい。子こ実体じったいが肉眼にくがん的てきな大おおきさに成長せいちょうするキノコと呼よばれるものである。地上ちじょうや地中ちちゅうで生育せいいくし、手てで収穫しゅうかくできる^[1]。食用しょくようか否ひかは、人間にんげんにとっての毒物どくぶつが含ふくまれているかどうかや、味あじや香かおりが好このましいかどうかで決きまる^[2]^[3]。ある統計とうけいでは、食用しょくようになるものはキノコ全体ぜんたいの10%以下いかであろうと言いわれている^[3]。

食用しょくようキノコは、食用しょくようや医薬いやく用ようとして消費しょうひされる^[4]。健康けんこうのために食たべられるキノコは「メディカルマッシュルーム」として知しられている。一方いっぽう、幻覚げんかくを催もよおすキノコ（マジックマッシュルーム）はレクリエーションや宗教しゅうきょう的てきな目的もくてきで食たべられることがあるが、これらは深刻しんこくな吐はき気けや失しつ見当けんとう識を引ひき起おこす場合ばあいもあり、一般いっぱんには食用しょくようキノコとは考かんがえられていない^[4]。

食用しょくようキノコにはさまざまな種類しゅるいが含ふくまれ、自生じせいするものも栽培さいばいされるものもある。簡単かんたんに栽培さいばいできたり収穫しゅうかくできるキノコは市場いちばで手てに入はいるが、トリュフやマツタケのように入手にゅうしゅするのが難むずかしいキノコは、小規模しょうきぼにしか流通りゅうつうしない。また、調理ちょうり法ほうによっては、ある種しゅの毒どくキノコも食用しょくようになる場合ばあいがある。

野生やせいのキノコが食用しょくようか否ひかを判断はんだんする際さいには、しっかりと同定どうていを行おこなわなければならない。確たしかな種たねの同定どうていは、安全あんぜんを確保かくほする唯一ゆいいつの方法ほうほうである。多おおくの人ひとに安全あんぜんに食たべられているキノコでも、個人こじんによってはアレルギー反応はんのうを起おこすことがあるほか、古ふるくなったり保存ほぞん状態じょうたいの悪わるいキノコが食中毒しょくちゅうどくを起おこすこともある。致死ちし毒どくを持もつキノコがしばしば食用しょくようキノコと混同こんどうされ、死亡しぼう事故じこが起おこることもある。実際じっさい、日本にっぽんにおける食中毒しょくちゅうどくによる死亡しぼう事故じこの原因げんいんのほとんどがキノコとフグの素人しろうと料理りょうりである^[5]。

キノコの利用りようの歴史れきし

菌類きんるいを食たべること（mycophagy；菌類きんるい嗜食）は古ふるくより行おこなわれてきた。1万まん3000年ねん前まえのチリの遺跡いせきからは食用しょくようキノコが発見はっけんされているが、キノコを食用しょくようとした確たしかな証拠しょうこが初はじめて見みられるのは、紀元前きげんぜん数すう100年ねんの中国ちゅうごくである。中国人ちゅうごくじんは、キノコを食品しょくひんとして扱あつかうと同時どうじに医薬品いやくひんとしても価値かちを置おいていた。また、古代こだいローマ人ひとや古代こだいギリシア人ひとの特とくに上流じょうりゅう階級かいきゅうはキノコを食たべていた^[6]。

世界中せかいじゅうの多おおくの文化ぶんかにおいて、民間みんかん療法りょうほうとしての医薬いやく用ようキノコの他ほかに、霊的れいてきな目的もくてきでマジックマッシュルームが使つかわれた。民族みんぞく菌類きんるい学がくの研究けんきゅう対象たいしょうである。

現代げんだいでの料理りょうりへの利用りよう

今日きょう、人間にんげんが食たべる様々さまざまなキノコのごく一部いちぶのみが、商業しょうぎょう的てきに栽培さいばい・販売はんばいされている。商業しょうぎょう的てきな栽培さいばいは生態せいたい学がく的まとにも重要じゅうようである。例たとえばヨーロッパにおいてはアンズタケの仲間なかまの枯渇こかつが懸念けねんされているが、これはアンズタケが人気にんきのあるキノコであるにもかかわらず、栽培さいばいの試こころみが未いまだ途上とじょうだからである。

商業しょうぎょう栽培さいばい

キノコの栽培さいばいには長ながい歴史れきしがあり、20種類しゅるい以上いじょうのキノコが商業しょうぎょう的てきに栽培さいばいされている。キノコは、少すくなくとも60カ国かこくで栽培さいばいされ^[7]、中国ちゅうごく、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく、オランダ、フランス、ポーランドが2000年ねんの生産せいさん国こく上位じょうい5カ国かこくである。2003年ねん時点じてんでは、中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくは世界せかいで最もっとも食用しょくようキノコの生産せいさん量りょうが大おおきい国くにである^[8]。

商業しょうぎょう的てきに栽培さいばいされる食用しょくようキノコ

商業しょうぎょう的てきに採集さいしゅうされる食用しょくようキノコ

いくつかの種たねは栽培さいばいが難むずかしく、多おおくのキノコ（特とくに菌きん根ね菌きん）が栽培さいばいにはまだ成功せいこうしていない。これらの種たねのいくつかは天然てんねんから収穫しゅうかくされ、市場いちばに並ならぶ。季き節ぶしになると、新鮮しんせんなものを購入こうにゅうでき、また乾燥かんそうしたものも売うられる。以下いかのキノコは通常つうじょう天然てんねんから収穫しゅうかくされるものである。

ヤマドリタケ（Boletus edulis）:ヨーロッパに自生じせいし、イタリアでは Fungo Porcino、ドイツでは Steinpilz、ロシアでは "white mushroom (белый гриб)"、アルバニアでは "Wolf mushroom"、フランスでは cèpe と呼よばれる。近年きんねんの日本にっぽんでは、イタリア語ごのポルチーノの複数ふくすう形がたであるポルチーニという名称めいしょうもよく用もちいられている。本ほん種しゅは特とくに "king bolete" と呼よばれ、香かおりの高たかさを称賛しょうさんされる。世界せかい的てきな需要じゅようがあり、様々さまざまな料理りょうりに用もちいられる。
アンズタケ（Cantharellus cibarius）:黄色きいろいアンズタケは、最もっとも見分みわけやすいキノコの1つであり、アジア、ヨーロッパ、北きたアメリカ、オーストラリアで見みられる。本ほん種しゅに似にている毒どくキノコもあるが、分類ぶんるい形質けいしつを知しっていればしっかり区別くべつすることができる。
- Cantharellus tubaeformis
ムラサキシメジ（Clitocybe nuda, syn:Lepista nuda）
ショウゲンジ（Cortinarius caperatus）
クロラッパタケ（Craterellus cornucopioides）
マイタケ（Grifola frondosa）：日本にっぽんで良よく知しられる、大おおきくてボリュームのあるキノコである。カシの木きの根元ねもとや切きり株かぶの周まわりで見みられる。
シャグマアミガサタケ（Gyromitra esculenta）：フィンランドで珍重ちんちょうされる。生せいは致死ちし性せいの毒どくが含ふくまれるが、湯通ゆどおしすることで食たべられるようになる。
ヤマブシタケ（Hericium erinaceus）：「ライオンのたてがみのキノコ」とも呼よばれる。
シロカノシタ（Hydnum repandum）
アカハツタケ Lactarius deliciosus：世界中せかいじゅうで食たべられており、特とくにロシアで珍重ちんちょうされる。
アミガサタケ属ぞく（Morchella）：子こ嚢菌門もんに分類ぶんるいされる。晩春ばんしゅんに低木ていぼく林りんや森林しんりん、空地くうちで見みられる。このキノコを採集さいしゅうする時ときには、シャグマアミガサタケ等とうの有毒ゆうどくな類似るいじ種しゅと区別くべつする必要ひつようがある。
- Morchella conica var. deliciosa
- Morchella esculenta var. rotunda
マツタケ（Tricholoma matsutake）：日本にっぽん料理りょうりにおいて高級こうきゅう食材しょくざいとして使つかわれる。
セイヨウショウロ属ぞく（Tuber）：いわゆるトリュフ。トリュフは長ながい間あいだ栽培さいばい法ほうが研究けんきゅうされてきており、1808年ねんの研究けんきゅう開始かいし以来いらい非常ひじょうな進展しんてんを遂とげたものの、いくつかの種たねは未いまだに栽培さいばいに成功せいこうしていない。
- Tuber borchii
- Tuber brumale
- Tuber indicum
- Tuber macrosporum
- Tuber mesentericum^[9]
- Tuber uncinatum

その他たの野生やせいの食用しょくようキノコ

多おおくの野生やせい種しゅが世界中せかいじゅうで消費しょうひされているが、化学かがく的てきな分析ぶんせきや顕微鏡けんびきょうを用もちいずに、肉眼にくがんによる観察かんさつで種たねが同定どうてい可能かのうで、安全あんぜんに食くえせるキノコは国くにや地域ちいきによって多種たしゅ多様たように存在そんざいする。食用しょくよう可能かのうだと報告ほうこくされているが、流通りゅうつう量りょうが少すくないキノコの一覧いちらんを以下いかに示しめす。

セイヨウタマゴタケ（Amanita caesarea）：「カエサルのキノコ」と称しょうされる。
ナラタケ（Armillaria mellea）
ニセイロガワリ（Boletus badius）
Boletus elegans ：ポルチーニの一種いっしゅ
クギタケ（Chroogomphus rutilus）
パフボール（Calvatia gigantea）：オニフスベ科かの一種いっしゅ
シロソウメンタケ科か（Clavariaceae）
シロソウメンタケ科か Clavulinaceae
ササクレヒトヨタケ（Coprinus comatus）
フジイロタケモドキ（Cortinarius variecolor）
カンゾウタケ（Fistulina hepatica ）
ウコンガサ（Hygrophorus chrysodon）
Lactarius salmonicolor：チチタケ属ぞくの一種いっしゅ
ヒメチチタケ（Lactarius subdulcis）
チチタケ（Lactarius volemus）
マスタケ（Laetiporous sulphureus）
アカエノキンチャヤマイグチ（Leccinum aurantiacum）
ヤマイグチ（Leccinum scabrum）
Lepiota procera ：キツネノカラカサ属ぞくの一種いっしゅ
カラカサタケ（Macrolepiota procera）：温帯おんたい地域ちいきで幅広はばひろく自生じせいしている
アミヒラタケ（Polyporus squamosus ）
Polyporus sulphureus : タマチョレイタケ属ぞくの一種いっしゅ
Polyporus mylittae : タマチョレイタケ属ぞくの一種いっしゅ
ホウキタケ科か（Ramariaceae）
ホンショウロ（Rhizopogon luteolus）
ベニタケ属ぞく（Russula）：一部いちぶの種たねが食用しょくよう
ハナビラタケ Sparassis crispa
アミタケ（Suillus bovinus）
ヌメリイグチ（Suillus luteus）
ワタゲヌメリイグチ（Suillus tomentosus）
クマシメジ（Tricholoma terreum）

調理ちょうりによっては食たべられるキノコ

ある人ひとにとっては無毒むどくでも、他たの人ひとにとっては有毒ゆうどくなキノコがある。場合ばあいによっては、適切てきせつな調理ちょうりを施ほどこすことで、ある程度ていどの、もしくは全すべての毒どくを除去じょきょすることができる。

ベニテングタケ（Amanita muscaria）：湯通ゆどおしして毒どくを浸出しんしゅつさせれば食たべられる^[10]。生せいのキノコはイボテン酸さんの作用さようにより嘔吐おうと、痙攣けいれん、眠気ねむけ、幻覚げんかく等とうの症状しょうじょうを引ひき起おこす。
ヒトヨタケ（Coprinopsis atramentaria）：特殊とくしゅな処理しょりなしで食たべることができるが、抗こう酒癖さけぐせ剤ざいの一種いっしゅであるジスルフィラムの存在そんざいにより、アルコールとともに摂取せっしゅすると毒性どくせいを示しめす。この特徴とくちょうは他たの一部いちぶのヒメヒトヨタケ属ぞくのキノコに共通きょうつうである。
シャグマアミガサタケ（Gyromitra esculenta）：湯通ゆどおしすることで食たべられるが、専門せんもん家かによれば推奨すいしょうされない。生せいのシャグマアミガサタケはギロミトリンを含ふくむため有毒ゆうどくであり、湯通ゆどおしで完全かんぜんに毒どくを抜ぬくことができるかどうかは分わかっていない。
チチタケ属ぞく（Lactarius spp.）：食用しょくようの L. deliciosus 以外いがいのチチタケ属ぞくのキノコは毒性どくせいがあると考かんがえられているが、ロシアでは酢漬すづけか湯通ゆどおしをした後のちに食たべられる^[11]。
Verpa bohemica：好このんで食たべる人ひともおり、また「モリーユ」（本来ほんらいはアミガサタケを指さす）の名なで販売はんばいされることもあるが、毒どくを持もつ例れいも報告ほうこくされている。本ほん種しゅの毒どくはギロミトリンに似にており^[12]、同様どうように注意ちゅういが必要ひつようである。

食材しょくざいとしての特徴とくちょう

食用しょくようキノコの最大さいだいの特徴とくちょうは、一般いっぱんにエネルギー（熱量ねつりょう）が低ひくいことにある^[13]。例たとえば、多少たしょう数値すうちは前後ぜんごするが、生せいシイタケは100グラムあたり18キロカロリー (kcal) 、エリンギは24 kcal、マツタケ23 kcal、エノキタケ22 kcal、マイタケ16 kcal、ナメコ15 kcalという具合ぐあいに、エネルギーの低ひくい野菜やさいであるキュウリとほぼ同どうレベルである^[13]。生活せいかつ習慣しゅうかん病びょう予防よぼうや肥満ひまん防止ぼうし、ダイエットを望のぞむ人ひとにとって、積極せっきょく的てきに取とり入いれたい食材しょくざいともいえる^[13]。カロリーが低ひくい野菜やさいのほとんどは水分すいぶんが95%と多おおいが、キノコの場合ばあいはエネルギーは低ひくい割わりには水分すいぶんが90%で野菜やさいよりも少すくなく、炭水化物たんすいかぶつが多おおい^[13]。食用しょくようキノコは炭水化物たんすいかぶつが多おおいにもかかわらずエネルギーが低ひくいのは、炭水化物たんすいかぶつの多おおくは食物しょくもつ繊維せんいからなることにある。食物しょくもつ繊維せんいは水溶すいよう性せいと不溶性ふようせいがあり、食用しょくようキノコには不溶性ふようせい食物しょくもつ繊維せんいが極きわめて多おおく含ふくまれている^[13]。不溶性ふようせい食物しょくもつ繊維せんいは、大腸だいちょうの活動かつどうを活発かっぱつにして便通べんつうをよくするとともに腸ちょう内ない環境かんきょうを改善かいぜんする働はたらきがあり、消化しょうかに時間じかんがかかるので満腹まんぷく感かんを得えやすいなどのメリットがある^[13]。

食用しょくようキノコは、栄養素えいようそ以外いがいにも特筆とくひつに値あたいするさまざまな機能きのう成分せいぶんが含ふくまれていることもわかってきている^[13]。例たとえば、シイタケにはレンチナンやβべーた-グルカンという多た糖とう成分せいぶんが含ふくまれていて、がんを予防よぼうする効果こうかがあるといわれ、エリタデニンは高こう血ち脂あぶら症しょうを予防よぼうする効果こうかがあるといわれている^[13]。マイタケやシメジ類るいには、高血圧こうけつあつの原因げんいんとなる酵素こうそACEの働はたらきを抑制よくせいする成分せいぶんが豊富ほうふに含ふくまれている^[13]。キクラゲは、ビタミン・ミネラル・食物しょくもつ繊維せんいが、他たの食材しょくざいと比較ひかくにならないほど多量たりょうに含ふくんでいる^[13]。ただし、キクラゲは一いち度どに食たべる量りょうは数すうグラムと少すくないため、栄養えいよう効果こうかは期待きたいするほどではないともいわれている^[13]。

医薬品いやくひんとしての利用りよう

数すう千せん年ねんの間あいだ、民間みんかん療法りょうほうとして多おおくの種類しゅるいのキノコが医薬品いやくひんとして食たべられてきた。特とくに東洋とうようでは多数たすうの文献ぶんけんが残のこっている。医薬品いやくひんとしてのキノコは現在げんざい、民族みんぞく植物しょくぶつ学がくや医学いがくでの研究けんきゅう対象たいしょうとなっている。腫瘍しゅようの成長せいちょうを阻害そがいし、免疫めんえき系けいを活性かっせい化かさせる作用さようは、約やく50年間ねんかんも研究けんきゅうされている^[14]。また、血糖けっとう値ちの低下ていかや抗こうがん、抗こう病原びょうげん体たい等ひとしについても国際こくさい的てきな研究けんきゅうがすすめられている。近年きんねんの研究けんきゅうによって、ヒラタケにはもともと脂質ししつ降下こうか薬やくのロバスタチンが含ふくまれており^[15]、また紫外線しがいせんに晒さらされると大量たいりょうのビタミンDを生成せいせいすることが分わかった^[16]。ヒラタケの他ほかにもビタミンDを生成せいせいするキノコがある^[17]^[18]。以下いかは、特とくに医薬いやく的てきな効果こうかが知しられている食用しょくようキノコのリストである。

霊れい芝しば（Ganoderma lucidum）
カワラタケ（Trametes versicolor）
マイタケ（Grifola frondosa）
ヒラタケ（Pleurotus ostreatus）
マッシュルーム（Agaricus bisporus）
アガリクス（Agaricus subrufescens）
シイタケ（Lentinula edodes）
チャーガ　（カバノアナタケ/Chaga mushroom/Inonotus obliquus）

キノコ狩かり

秋あきは多おおくの食用しょくようキノコが発生はっせいするシーズンで、特とくに落葉樹らくようじゅがある山林さんりんに人々ひとびとはキノコ狩かりへ出でかける^[19]。キノコ狩かりの楽たのしみは、林はやしの中なかに隠かくれている食用しょくようキノコを探さがし当あて、それを味あじわう感動かんどうにある^[20]。食用しょくようキノコといっても、天然てんねんものと栽培さいばいキノコでは、同おなじ種類しゅるいかと疑うたがうくらい姿すがたや味あじが違ちがうものがある。天然てんねんキノコは、魅惑みわく的てきな香かおりや味あじわいを強烈きょうれつに感かんじることができる存在そんざい感かんで、人々ひとびとを虜とりこにする魅力みりょくがあるが、流通りゅうつう量りょうが少すくなく入手にゅうしゅ自体じたいが困難こんなんである^[20]。そのためキノコ狩かりに出でかける人ひとたちは、その魅惑みわく的てきな味あじとの再会さいかいを求もとめて深山みやまをさまよい、収穫しゅうかく物ぶつの中なかから毒どくキノコが混入こんにゅうしていないか選別せんべつし、苦労くろうしておいしい食用しょくようキノコを手てに入いれる^[20]。

食用しょくようキノコの発生はっせい場所ばしょは、山やまの標高ひょうこうの高たかいところから低ひくい方ほうへ降おりてくるが、その年としの気候きこうや湿気しっけによって、発生はっせい場所ばしょや時期じきがずれる。経験けいけん豊ゆたかな人ひとは、自みずからの経験けいけんを元もとに発生はっせい時期じきと場所ばしょを考かんがえてキノコ狩かりに出でかけるという^[20]。それぞれの家庭かていで秘密ひみつの収穫しゅうかく場所ばしょがあり、身内みうちだけで採とりに出でかけるのだという^[20]。夏なつから秋あきはチチタケやタマゴタケ、晩夏ばんかから秋あきはハナイグチ、初秋しょしゅうはナラタケ、中秋ちゅうしゅうから初冬しょとうはナメコ、晩秋ばんしゅうから早春そうしゅんはエノキタケというように、それぞれ食用しょくようキノコの発生はっせいする時期じきは異ことなる。経験けいけん者しゃが苦労くろうして探さがして歩あるき回まわっても天然てんねんキノコにまったく出会であえない日ひもあれば、道端みちばたで偶然ぐうぜん見みつかることもある^[20]。未み経験けいけん者しゃでも運うんや才能さいのうに恵めぐまれれば、大物おおものに出会であえることもあり、キノコ狩かりは一期一会いちごいちえで奥深おくふかいといわれている^[20]。