幻覚 げんかく (げんかく、英語 えいご : hallucination )とは、外部 がいぶ からの刺激 しげき がないときに、現実 げんじつ の知覚 ちかく と同 おな じような性質 せいしつ を知覚 ちかく することである。幻覚 げんかく は鮮明 せんめい で実質 じっしつ が伴 ともな っており、外部 がいぶ の客観 きゃっかん 的 てき 空間 くうかん に位置 いち するように知覚 ちかく される。また、幻覚 げんかく は、脳 のう の覚醒 かくせい とレム睡眠 すいみん という2つの意識 いしき 状態 じょうたい の組 く み合 あ わせである[1] 。それらは、覚醒 かくせい を伴 ともな わない夢 ゆめ (レム睡眠 すいみん )、現実 げんじつ の知覚 ちかく を模倣 もほう せず、非 ひ 現実 げんじつ として正確 せいかく に知覚 ちかく する偽 にせ 幻覚 げんかく 、歪 いが んだあるいは誤 あやま った解釈 かいしゃく の現実 げんじつ 知覚 ちかく を伴 ともな う錯覚 さっかく 、現実 げんじつ 知覚 ちかく を模倣 もほう しない自発 じはつ 的 てき 制御 せいぎょ 下 か にある心像 しんぞう などのいくつかの関連 かんれん 現象 げんしょう と区別 くべつ される[2] 。そして、幻覚 げんかく は、正 まさ しく知覚 ちかく ・解釈 かいしゃく された刺激 しげき (現実 げんじつ の知覚 ちかく )に何 なん らかの付加 ふか 的 てき な意味 いみ を与 あた える「妄想 もうそう 的 てき 知覚 ちかく 」とも異 こと なる。多 おお くの幻覚 げんかく は、睡眠 すいみん 麻痺 まひ の間 あいだ にも起 お こる[3] 。
幻覚 げんかく は、視覚 しかく 、聴覚 ちょうかく 、嗅覚 きゅうかく 、味覚 みかく 、触覚 しょっかく 、体 からだ 性 せい 感覚 かんかく 、平衡 へいこう 感覚 かんかく 、侵害 しんがい 受容 じゅよう 、熱 ねつ 受容 じゅよう 、時間 じかん 知覚 ちかく のあらゆる感覚 かんかく 様相 ようそう で起 お こりうる。複数 ふくすう の感覚 かんかく 様相 ようそう で起 お こる幻覚 げんかく は、マルチモーダル (multimodal)と呼 よ ばれる[4] [5] 。
軽度 けいど の幻覚 げんかく は「乱 みだ れ」と呼 よ ばれ、上記 じょうき のほとんどの感覚 かんかく に現 あらわ れることがある。例 たと えば、周辺 しゅうへん 視野 しや に動 うご きが見 み えたり、かすかな物音 ものおと や声 こえ が聞 き こえたりするような場合 ばあい である。また、幻聴 げんちょう は統合 とうごう 失調 しっちょう 症 しょう においては非常 ひじょう によくみられる。その場合 ばあい の幻聴 げんちょう は善意 ぜんい のもの(対象 たいしょう 者 しゃ に自分 じぶん について良 よ いことを言 い う)であったり、悪意 あくい のあるもの(対象 たいしょう 者 しゃ を罵倒 ばとう する)であったりする。55%の幻聴 げんちょう は悪意 あくい のある内容 ないよう で[6] 、例 たと えば、対象 たいしょう 者 しゃ に直接 ちょくせつ 語 かた りかけるのではなく、対象 たいしょう 者 しゃ について語 かた るようなものとなっている。また、幻聴 げんちょう と同様 どうよう に、対象 たいしょう 者 しゃ の背後 はいご に視覚 しかく 的 てき な対応 たいおう 物 ぶつ の発生 はっせい 源 げん があることもある[要 よう 出典 しゅってん ] 。そして幻聴 げんちょう と幻視 げんし はしばしば一緒 いっしょ に体験 たいけん される[7] 。
半 はん 眠 ねむり 性 せい 幻覚 げんかく と覚醒 かくせい 時 じ 幻覚 げんかく は正常 せいじょう な現象 げんしょう であると考 かんが えられている。半 はん 眠 ねむり 性 せい 幻覚 げんかく は入 いれ 眠 ねむ 時 とき に覚醒 かくせい 時 じ 幻覚 げんかく は覚醒 かくせい 時 じ に発生 はっせい する。幻覚 げんかく は、薬物 やくぶつ 使用 しよう (特 とく にせん妄 もう )、睡眠 すいみん 不足 ふそく 、精神病 せいしんびょう 、神経 しんけい 障害 しょうがい 、振 ふ 戦 せん せん妄 もう などと関連 かんれん している。
幻覚 げんかく (hallucination)という言葉 ことば 自体 じたい は、17世紀 せいき の医師 いし トーマス・ブラウン が1646年 ねん に、心 しん の中 なか をさまようという意味 いみ のラテン語 らてんご 「alucinari」から派生 はせい させ英語 えいご に取 と り入 い れた。ブラウンにとって幻覚 げんかく とは、「堕落 だらく し誤 あやま って対象 たいしょう を受 う け取 と る」一種 いっしゅ の視覚 しかく を意味 いみ していた[8] 。
幻覚 げんかく は様々 さまざま な形 かたち で現 あらわ れる[9] 。色々 いろいろ な形態 けいたい の幻覚 げんかく は、異 こと なる感覚 かんかく に影響 えいきょう を与 あた え時 じ には同時 どうじ に発生 はっせい し、体験 たいけん 者 しゃ に複数 ふくすう の感覚 かんかく に由来 ゆらい する幻覚 げんかく を生 しょう じさせる。
幻聴 げんちょう とは、外部 がいぶ からの刺激 しげき なしに音 おと を知覚 ちかく することで、錯聴とも知 し られている[10] 。幻聴 げんちょう は、初歩 しょほ 的 てき なものと複雑 ふくざつ なもの、そして言語 げんご 的 てき なものと非 ひ 言語 げんご 的 てき なものに分 わ けられる。こうした幻覚 げんかく は最 もっと も一般 いっぱん 的 てき なタイプであり、言語 げんご 性 せい 幻覚 げんかく は非 ひ 言語 げんご 性 せい 幻覚 げんかく よりも一般 いっぱん 的 てき である[11] 。初歩 しょほ 的 てき な幻聴 げんちょう とは、「シュー」という音 おと 、口笛 くちぶえ 、伸 の びた音 おと などの音 おと を知覚 ちかく することである。多 おお くの場合 ばあい 、耳鳴 みみな り は初歩 しょほ 的 てき な幻聴 げんちょう である。しかし、ある種 しゅ の耳鳴 みみな り、特 とく に拍 はく 動 どう 性 せい の耳鳴 みみな りを経験 けいけん する人 ひと の中 なか には、実際 じっさい に耳 みみ の近 ちか くの血管 けっかん を流 なが れる血液 けつえき の音 おと を聞 き いている人 ひと もいる。この場合 ばあい は聴覚 ちょうかく 刺激 しげき があるため、幻覚 げんかく とは認 みと められることはない。
複雑 ふくざつ な幻覚 げんかく とは、声 こえ 、音楽 おんがく 、その他 た の音 おと がはっきり聞 き こえるかどうか、き覚 きおぼ えがあるかないか、友好 ゆうこう 的 てき か攻撃 こうげき 的 てき か、その他 た の可能 かのう 性 せい のあるものである。1人 ひとり または複数 ふくすう の話 はな し声 ごえ の幻覚 げんかく は、特 とく に統合 とうごう 失調 しっちょう 症 しょう などの精神 せいしん 障害 しょうがい に関連 かんれん し、これらの疾患 しっかん を診断 しんだん する上 じょう では特別 とくべつ な意味 いみ を持 も つことになる。
統合 とうごう 失調 しっちょう 症 しょう では通常 つうじょう 、声 こえ は人 ひと の外 そと から聞 き こえてくるものだと認識 にんしき されるが、解離 かいり 性 せい 障害 しょうがい では人 ひと の中 なか から聞 き こえてくるものだと認識 にんしき され、背後 はいご ではなく頭 あたま の中 なか で人 ひと の声 こえ が聞 き こえる。また、統合 とうごう 失調 しっちょう 症 しょう と解離 かいり 性 せい 障害 しょうがい の鑑別 かんべつ 診断 しんだん は、特 とく に幻覚 げんかく などのシュナイダーの一 いち 級 きゅう 症状 しょうじょう など重複 じゅうふく する症状 しょうじょう が多 おお いため、困難 こんなん とされている[12] 。しかし、診断 しんだん 可能 かのう な精神 せいしん 疾患 しっかん を持 も たない多 おお くの人 ひと が、時 とき に同 おな じように声 こえ を聞 き くことが見 み られる[13] 。錯聴の患者 かんじゃ を鑑別 かんべつ 診断 しんだん する際 さい に外側 そとがわ 側 がわ 頭 あたま 葉 は てんかんであるのかどうかを考慮 こうりょ することが重要 じゅうよう である。他 ほか にもウィルソン病 びょう 、さまざまな内分泌 ないぶんぴつ 疾患 しっかん 、多数 たすう の代謝 たいしゃ 異常 いじょう 、多発 たはつ 性 せい 硬化 こうか 症 しょう 、全身 ぜんしん 性 せい エリテマトーデス 、ポルフィリン症 しょう 、サルコイドーシス など、多 おお くの疾患 しっかん が精神病 せいしんびょう を呈 てい する可能 かのう 性 せい があるため、精神病 せいしんびょう の特徴 とくちょう を示 しめ したとしても、必 かなら ずしもそれ自体 じたい が精神 せいしん 疾患 しっかん であるとは限 かぎ らないと考 かんが えることが必要 ひつよう である。
音楽 おんがく 的 てき な幻聴 げんちょう も複雑 ふくざつ な幻聴 げんちょう の中 なか では比較的 ひかくてき 多 おお く、難聴 なんちょう (シャルル・ボネ症候群 しょうこうぐん の聴覚 ちょうかく 版 ばん である音楽 おんがく 耳 みみ 症候群 しょうこうぐん など)、外側 そとがわ 側 がわ 頭 あたま 葉 は てんかん[14] 、動静 どうせい 脈 みゃく 奇形 きけい [15] 、脳卒中 のうそっちゅう 、病巣 びょうそう 、膿瘍 のうよう 、腫瘍 しゅよう に至 いた るまで幅広 はばひろ い原因 げんいん によって発生 はっせい することがある[16] 。
カフェイン の大量 たいりょう 摂取 せっしゅ は、幻聴 げんちょう を経験 けいけん する可能 かのう 性 せい を高 たか めると言 い われている。ラトローブ大学 だいがく 心理 しんり 科学 かがく 部 ぶ の研究 けんきゅう によると、1日 にち 5杯 はい のコーヒー(約 やく 500mgのカフェイン)が幻聴 げんちょう を誘発 ゆうはつ する可能 かのう 性 せい があることが明 あき らかになった[17] 。
幻視 げんし とは、「何 なに も存在 そんざい しないのに、外部 がいぶ の視覚 しかく 刺激 しげき を知覚 ちかく すること」である[18] 。これとは別 べつ に関連 かんれん する現象 げんしょう に錯視 さくし があり、これは実際 じっさい の外部 がいぶ 刺激 しげき が歪曲 わいきょく されたものである。幻視 げんし は、単純 たんじゅん なものと複雑 ふくざつ なものに分類 ぶんるい される。
単純 たんじゅん 幻視 げんし (SVH)は、非 ひ 形成 けいせい 視覚 しかく 幻覚 げんかく 、初等 しょとう 視覚 しかく 幻覚 げんかく とも呼 よ ばれる。これらは、光 ひかり 、色 いろ 、幾何 きか 学 がく 的 てき 形状 けいじょう 、そして不 ふ 定形 ていけい の物体 ぶったい の幻視 げんし のことを指 さ す。さらに、構造 こうぞう を持 も たない幻視 げんし (眼 め 閃 )と幾何 きか 学 がく 的 てき 構造 こうぞう を持 も つ幻視 げんし (光 ひかり 視 し 症 しょう )に分 わ けられる。
複雑 ふくざつ 幻視 げんし (CVH)は、形成 けいせい された幻視 げんし とも呼 よ ばれる。複雑 ふくざつ な幻視 げんし は、人 ひと 、動物 どうぶつ 、物 もの 、場所 ばしょ など、鮮明 せんめい でリアルなイメージや情景 じょうけい が知覚 ちかく される。
例 たと えば、キリンの幻覚 げんかく が見 み えると報告 ほうこく されることがある。単純 たんじゅん 幻視 げんし は、キリンに形 かたち や色 いろ が似 に ている(キリンに見 み える)不定 ふてい 形 がた の図形 ずけい であるが、複雑 ふくざつ 幻視 げんし は、紛 まぎ れもなくキリンそのものの個別 こべつ の実物 じつぶつ 大 だい 画像 がぞう が知覚 ちかく されている。
多 おお くの場合 ばあい 、幻視 げんし は意識 いしき 混濁 こんだく という意識 いしき 障害 しょうがい 時 とき に起 お こることが多 おお く、特 とく に薬物 やくぶつ 離脱 りだつ 症状 しょうじょう (アルコールなどの中毒 ちゅうどく 性 せい 疾患 しっかん [19] )や神経 しんけい 変性 へんせい 疾患 しっかん 、認知 にんち 症 しょう でよく認 みと められる[19] 。
命令 めいれい 幻覚 げんかく とは、外部 がいぶ からの指令 しれい のように聞 き こえる幻覚 げんかく 、または、被験者 ひけんしゃ の頭 あたま の中 なか から出 で てくるように感 かん じられる幻覚 げんかく のことである[20] 。幻覚 げんかく の内容 ないよう は、無害 むがい なものから、自分 じぶん や他人 たにん に危害 きがい を加 くわ えるように命令 めいれい するものまでさまざまなものがある[20] 。そしてこの幻覚 げんかく はしばしば統合 とうごう 失調 しっちょう 症 しょう と関連 かんれん している。この幻覚 げんかく を経験 けいけん した人 ひと は、状況 じょうきょう に応 おう じて、幻 まぼろし 視 し された命令 めいれい に従 したが うこともあれば、従 したが わないこともある。非 ひ 暴力 ぼうりょく 的 てき な命令 めいれい であれば、従 したが うことがより一般 いっぱん 的 てき である[21] 。
命令 めいれい 幻覚 げんかく は、しばしば殺人 さつじん など、犯 おか した犯罪 はんざい を弁護 べんご するために使 つか われることがある[22] 。これは、人 ひと の耳 みみ に聞 き こえる声 こえ で、それがき手 きて に何 なに をすべきかを伝 つた えるのである。「立 だ て」や「ドアを閉 し めろ」といった、極 きわ めて穏当 おんとう な命令 めいれい であることもある[23] 。それが単純 たんじゅん なものであろうと、脅威 きょうい となるものであろうと、やはり「命令 めいれい 幻聴 げんちょう 」とみなされる。このような症状 しょうじょう があるかどうかを判断 はんだん するのに役立 やくだ つ質問 しつもん には、次 つぎ のようなものがある。「声 こえ は何 なに をするように言 い っていますか?」「声 こえ はいつからあなたに何 なに かをするように言 い っていますか?」「自分 じぶん (または他人 たにん )を傷 きず つけるように言 い っている人 ひと がわかりますか?」 「声 こえ が言 い っていることをするのに抵抗 ていこう できると思 おも いますか?」などである[23] 。
実際 じっさい にはないにおいを嗅 か ぐ異 い 嗅症 (嗅覚 きゅうかく 性 せい 幻覚 げんかく )[24] 、実際 じっさい のにおいを吸 す い込 こ んだのに記憶 きおく と違 ちが うにおいと感 かん じる異 い 嗅症(嗅覚 きゅうかく 性 せい 錯覚 さっかく )は[25] 、嗅覚 きゅうかく (嗅覚 きゅうかく 系 けい )のゆがみであり、ほとんどの場合 ばあい 、深刻 しんこく な原因 げんいん はなく時間 じかん がたてば自然 しぜん に治 なお ることが多 おお いが、この嗅覚 きゅうかく 性 せい 幻覚 げんかく と嗅覚 きゅうかく 性 せい 錯覚 さっかく を併発 へいはつ した場合 ばあい は注意 ちゅうい が必要 ひつよう になる[24] 。この併発 へいはつ は、鼻 はな の感染 かんせん 症 しょう 、鼻 はな ポリープ 、歯 は の問題 もんだい 、偏頭痛 へんずつう 、頭部 とうぶ 外傷 がいしょう 、発作 ほっさ 、脳卒中 のうそっちゅう 、脳腫瘍 のうしゅよう など、さまざまな条件 じょうけん によって生 しょう じる可能 かのう 性 せい があるためである[24] [26] 。喫煙 きつえん 、ある種 しゅ の化学 かがく 物質 ぶっしつ (殺虫 さっちゅう 剤 ざい や溶剤 ようざい など)への暴露 ばくろ 、頭 あたま 頸部癌 がん の放射線 ほうしゃせん 治療 ちりょう など、環境 かんきょう 暴露 ばくろ も原因 げんいん となることがある[24] 。また、うつ病 びょう 、双極 そうきょく 性 せい 障害 しょうがい 、中毒 ちゅうどく 、物質 ぶっしつ 禁断症状 きんだんしょうじょう 、精神 せいしん 疾患 しっかん (統合 とうごう 失調 しっちょう 症 しょう など)などの精神 せいしん 障害 しょうがい の症状 しょうじょう として現 あらわ れることもある[26] 。知覚 ちかく される臭 にお いは通常 つうじょう 不快 ふかい で、一般 いっぱん に焦 こ げた臭 くさ い、不潔 ふけつ な臭 くさ い、甘 あま ったるい臭 くさ い、腐 くさ った臭 くさ いなどと表現 ひょうげん される[24] 。
幻 まぼろし 触覚 しょっかく は、触覚 しょっかく の入力 にゅうりょく において錯覚 さっかく が発生 はっせい し、皮膚 ひふ や他 た の器官 きかん への様々 さまざま な種類 しゅるい の圧力 あつりょく がシミュレーションされるものである。幻 まぼろし 触覚 しょっかく の1つの亜 あ 型 がた である蟻 あり 走 はし 感 かん は、皮膚 ひふ の下 した を虫 むし が這 は っているような感覚 かんかく であり、コカイン の長期 ちょうき 使用 しよう と関連 かんれん していることが多 おお い[27] 。しかし、蟻 あり 走 はし 感 かん は、更年期 こうねんき などの正常 せいじょう なホルモン の変化 へんか や、末梢 まっしょう 神経 しんけい 障害 しょうがい 、高熱 こうねつ 、ライム病 びょう 、皮膚 ひふ 癌 がん などの疾患 しっかん の結果 けっか であることもある[27] 。
このタイプの幻覚 げんかく は、刺激 しげき なしに味 あじ を知覚 ちかく するというものである。このような幻覚 げんかく は、典型 てんけい 的 てき には奇妙 きみょう な、あるいは不快 ふかい なもので、ある種 しゅ の局所 きょくしょ てんかん 、特 とく に外側 そとがわ 側 がわ 頭 あたま 葉 は てんかんを有 ゆう する人 ひと に比較的 ひかくてき よくみられる。この場合 ばあい 、味覚 みかく の幻覚 げんかく に関与 かんよ する脳 のう の領域 りょういき は、島 しま 皮質 ひしつ とシルビウス裂 きれ 上 うえ である[28] [29] 。
一般 いっぱん 体感 たいかん 幻覚 げんかく [ 編集 へんしゅう ]
自分 じぶん の体 からだ がねじられたり、裂 さ かれたり、内臓 ないぞう を抜 ぬ かれたりしているような幻覚 げんかく 的 てき な体感 たいかん のことを一般 いっぱん 体感 たいかん 幻覚 げんかく という。また、胃 い の中 なか のヘビや直腸 ちょくちょう の中 なか のカエルなど、内臓 ないぞう に動物 どうぶつ が侵入 しんにゅう していると報告 ほうこく するケースもある。そして自分 じぶん の体 からだ の肉 にく が腐敗 ふはい しているという一般 いっぱん 的 てき な感覚 かんかく も、この幻覚 げんかく のタイプに分類 ぶんるい される[29] [要 よう 出典 しゅってん ] 。
感覚 かんかく 様相 ようそう を含 ふく む幻覚 げんかく はマルチモーダルと呼 よ ばれ、1つの感覚 かんかく 様相 ようそう しか持 も たないユニモーダルな幻覚 げんかく と類似 るいじ している。複数 ふくすう の感覚 かんかく 様相 ようそう は、同時 どうじ にまたは遅 おく れて発生 はっせい し、互 たが いに関連 かんれん することもあれば無関係 むかんけい である場合 ばあい もあり、現実 げんじつ と一致 いっち する、またはしないことがありうる[4] [5] 。例 たと えば、幻覚 げんかく の中 なか で人 ひと が話 はな しているのは現実 げんじつ と一致 いっち するが、猫 ねこ が話 はな しているのは現実 げんじつ と一致 いっち しない。
マルチモーダルな幻覚 げんかく は、精神 せいしん 的 てき な健康 けんこう 状態 じょうたい の悪化 あっか と相関 そうかん しており、よりリアルに感 かん じられることが多 おお い[4] 。
さまざまな説 せつ が提案 ていあん されているが、現在 げんざい のところはっきりとは分 わ かっていない。
中 ちゅう 脳 のう 辺 べ 縁 えん 系 けい のドーパミン 神経 しんけい の過 か 活動 かつどう
ドーパミン作動 さどう 薬 やく である覚醒剤 かくせいざい や大麻 たいま の成分 せいぶん が幻覚 げんかく を起 お こすこと、幻覚 げんかく に対 たい してドーパミン拮抗 きっこう 薬 やく である抗 こう 精神病 せいしんびょう 薬 やく が有効 ゆうこう なことなどから推測 すいそく される。
自己 じこ モニタリング機能 きのう の障害 しょうがい
自己 じこ と他者 たしゃ の区別 くべつ を行 おこな う機能 きのう である自己 じこ モニタリング機能 きのう が正常 せいじょう に作動 さどう している人 ひと であれば、空想 くうそう 時 じ などに自己 じこ の脳 のう の中 なか で生 しょう じる内的 ないてき な発声 はっせい を外部 がいぶ からの音声 おんせい だと知覚 ちかく することはないが、この機能 きのう が障害 しょうがい されている場合 ばあい 、外部 がいぶ からの音声 おんせい だと知覚 ちかく して幻聴 げんちょう が生 しょう じることになる。
幻覚 げんかく は、麻薬 まやく などの服用 ふくよう 、あるいは精神病 せいしんびょう や心 しん 的 てき 外傷 がいしょう 後 ご ストレス障害 しょうがい (PTSD) などといった、特殊 とくしゅ な状況 じょうきょう でのみ起 お きるわけではない。正常 せいじょう 人 じん であっても、夜間 やかん の高速 こうそく 道路 どうろ をずっと走 はし っている時 とき など、刺激 しげき の少 すく ない、いわば感覚 かんかく 遮断 しゃだん に近 ちか い状態 じょうたい が継続 けいぞく した場合 ばあい に発生 はっせい することがある。アイソレーション・タンク のように徹底 てってい して感覚 かんかく を遮断 しゃだん することでも幻覚 げんかく が見 み られる。
脳 のう の器質 きしつ 疾患 しっかん により幻覚 げんかく が起 お こりうる。ナルコレプシー 、脳 のう 血管 けっかん 障害 しょうがい 、脳炎 のうえん 、脳 のう 外傷 がいしょう 、脳腫瘍 のうしゅよう 、あるタイプのてんかん 、痴呆 ちほう など。
レビー小 しょう 体型 たいけい 認知 にんち 症 しょう (DLB) において特徴 とくちょう 的 てき な症状 しょうじょう である[30] [19] 。
全身 ぜんしん 性 せい の疾患 しっかん に続発 ぞくはつ して幻覚 げんかく が起 お こることがある。代謝 たいしゃ 性 せい 疾患 しっかん 、内分泌 ないぶんぴつ 性 せい 疾患 しっかん 、神経 しんけい 疾患 しっかん など。
精神病 せいしんびょう 性 せい [ 編集 へんしゅう ]
主 おも に統合 とうごう 失調 しっちょう 症 しょう 圏 けん の疾患 しっかん で幻覚 げんかく がみられる[19] 。統合 とうごう 失調 しっちょう 症 しょう をはじめ、統合 とうごう 失調 しっちょう 症 しょう 様 さま 障害 しょうがい 、非 ひ 定型 ていけい 精神病 せいしんびょう など。感情 かんじょう 障害 しょうがい でも幻聴 げんちょう が起 お こることがある[31] 。
重度 じゅうど の心 しん 因 いん 反応 はんのう 、PTSD など。他 た に、遭難 そうなん 中 ちゅう に救助 きゅうじょ 者 しゃ や飲 の み物 もの の幻覚 げんかく を見 み ることは多 おお い。いずれも脳 のう の防衛 ぼうえい 本能 ほんのう によるものとされる。
LSD などの幻覚 げんかく 剤 ざい 、覚醒剤 かくせいざい 、大麻 たいま などの薬物 やくぶつ 使用 しよう によって生 しょう じることがある。ステロイド などの治療 ちりょう 薬 やく でも幻覚 げんかく が起 お こることがある。フラッシュバック (薬物 やくぶつ ) も起 お こることもある。
特殊 とくしゅ 状況 じょうきょう 下 か の正常 せいじょう な反応 はんのう [ 編集 へんしゅう ]
断 だん 眠 ねむり 、感覚 かんかく 遮断 しゃだん 、高 こう 電磁場 でんじば など
幻覚 げんかく の原因 げんいん と内容 ないよう の関連 かんれん [ 編集 へんしゅう ]
疾患 しっかん により幻覚 げんかく の内容 ないよう が異 こと なる傾向 けいこう があると言 い われている。例 たと えば統合 とうごう 失調 しっちょう 症 しょう では幻聴 げんちょう が、レビー小体 こてい 病 びょう では幻視 げんし が、アルコール依存 いぞん 症 しょう の離脱 りだつ 症状 しょうじょう では小 しょう 動物 どうぶつ 幻視 げんし (小 ちい さい虫 むし などが見 み える)が多 おお いとされているが、必 かなら ずしも全 ぜん 例 れい に当 あ てはまる訳 わけ ではない。
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