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ナルコレプシー

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナルコレプシー
オレキシン欠乏けつぼう病因びょういんとされる
概要がいよう
診療しんりょう 神経しんけいがく
分類ぶんるいおよび外部がいぶ参照さんしょう情報じょうほう
ICD-10 G47.4
ICD-9-CM 347
OMIM 161400
DiseasesDB 8801
eMedicine neuro/522
MeSH D009290

ナルコレプシー (narcolepsy, [ˈnɑːrkəˌlɛpsi])とは、にちちゅうにおいて場所ばしょ状況じょうきょうえらばずこるつよ眠気ねむけ発作ほっさおも症状しょうじょうとする睡眠すいみん障害しょうがいである。日本語にほんご居眠いねむびょう(いねむりびょう)とばれる。自発じはつてき覚醒かくせい維持いじする能力のうりょく、およびレム睡眠すいみん調節ちょうせつする機能きのう両者りょうしゃ阻害そがいされる[1][2]

わらよろこいかなどの感情かんじょう誘因ゆういんとなる情動じょうどう脱力だつりょく発作ほっさともな患者かんじゃ(ナルコレプシー1がた)もおおいが、その症状しょうじょうい(ナルコレプシー2がた患者かんじゃもいる[1][ちゅう 1]

概要がいよう

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現在げんざい、ナルコレプシーの診断しんだん基準きじゅんおおきな問題もんだいがあり、にちちゅうにおいて場所ばしょ状況じょうきょうえらばずこるつよ眠気ねむけ発作ほっさ後述こうじゅつのレム睡眠すいみん調節ちょうせつする機能きのう阻害そがい金縛かなしば幻覚げんかく幻聴げんちょう、の症状しょうじょうはナルコレプシーに特有とくゆうなものではなく重度じゅうど睡眠すいみん不足ふそくやその睡眠すいみん障害しょうがい同一どういつ症状しょうじょうである。

また、後述こうじゅつ睡眠すいみん障害しょうがい国際こくさい分類ぶんるいだい3はん (ICSD-2) の診断しんだん基準きじゅん睡眠すいみん不足ふそく同一どういつ検査けんさ結果けっかであり、反復はんぷく睡眠すいみんせん検査けんさMSLTの検査けんさ基準きじゅん一般いっぱん人口じんこうにも2 - 4 %(おおくはシフトワーカー睡眠すいみん不足ふそく)で診断しんだん基準きじゅんたすもの存在そんざいする。

2018ねん国際こくさいねむりしょう学会がっかい発表はっぴょうされた内容ないようによると、現在げんざい日本にっぽんのナルコレプシー2がた疾患しっかん診断しんだんける患者かんじゃおおくは普段ふだん睡眠すいみん時間じかんが4時間じかん以下いかで、受験じゅけん勉強べんきょう残業ざんぎょうとう睡眠すいみん時間じかんおおけずったのちに、つよ眠気ねむけ発作ほっさ、レム睡眠すいみん調節ちょうせつする機能きのう阻害そがい金縛かなしばり・幻覚げんかく幻聴げんちょう発症はっしょうし、診断しんだんけている。

ナルコレプシー患者かんじゃは、通常つうじょうであればノンレムのち発生はっせいするレム睡眠すいみんにゅうねむ直後ちょくご発生はっせいしてしまい、またにゅうねむときレム睡眠すいみん (SOREMP) が出現しゅつげんするため、いれねむとき金縛かなしばり・幻覚げんかく幻聴げんちょう症状しょうじょう発生はっせいする[1]さら夜間やかんはレム睡眠すいみんとノンレム睡眠すいみんわりで中途ちゅうと覚醒かくせいこすため、めてもからだうごかそうとするのう一部いちぶねむっているために金縛かなしばりを体験たいけんすることになる。にゅうねむりから起床きしょうまでは、そのような状況じょうきょうのためがいして睡眠すいみんあさくなりやすくなり、ゆめ回数かいすうえる。ほとんどが悪夢あくむで、現実げんじつとリアルなゆめ境目さかいめからずにうなされる場合ばあいおおい。

ゆうびょうりつ米国べいこくでは4000にん1人ひとりほど[1]現在げんざい確定かくてい診断しんだんけた患者かんじゃすう日本にっぽん国内こくないにおいておよそ2000にん前後ぜんこう(2009ねん12がつ現在げんざい)であるが、けっしてめずらしい病気びょうきではなく、日本にっぽんでは600にん1人ひとり程度ていど(0.16%)[3][4]罹患りかんしていると想定そうていされている。なお、世界せかいゆうびょうりつ平均へいきんは2000にん1人ひとり程度ていど(0.05 %)であり、その4ばいちか日本人にっぽんじんゆうびょうりつ世界せかい最高さいこうであるという[4]。ちなみに日本人にっぽんじん遺伝子いでんしちかアジア諸国しょこくゆうびょうりつには、日本にっぽんのナルコレプシーのような有意ゆういられない。したがって、世界一せかいいち短時間たんじかん睡眠すいみんこく日本にっぽんのナルコレプシーのゆうびょうりつ実際じっさいはナルコレプシーではない患者かんじゃおおくは睡眠すいみん不足ふそく誤診ごしん)が統計とうけいまれていること指摘してきされている。

治療ちりょう対症療法たいしょうりょうほうである[1]。また、治療ちりょうおこなっていない状態じょうたい機械きかい自動車じどうしゃ運転うんてんちゅうなどに発作ほっさこると重大じゅうだい事故じこ原因げんいんとなりうるため、日本にっぽん睡眠すいみん学会がっかいでは、運転うんてんちゅう居眠いねむ事故じこ経験けいけんによっては、治療ちりょうによって改善かいぜんされるまでは車両しゃりょう運転うんてんひかえるべきであることを医師いしつたえる必要ひつようがあるとしている[4]

具体ぐたいてき治療ちりょうほうについては、「ナルコレプシー#治療ちりょう」を参照さんしょう

症状しょうじょう

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にちちゅう過度かど眠気ねむけ
100%の患者かんじゃ発現はつげん[1]にちちゅう突然とつぜんがた眠気ねむけおそわれるという発作ほっさ[1]
情動じょうどう脱力だつりょく発作ほっさカタプレキシー
76%ほど[1]わらい、よろこび、あるいは自尊心じそんしんがくすぐられるなど感情かんじょうのぼるぶったさい突然とつぜんこう重力じゅうりょくすじ脱力だつりょくするという発作ほっさ[1]全身ぜんしんにわたり、たおれてしまう発作ほっさのほか、ひざちからけてしまう、呂律ろれつがまわらなくなる、っているものをとす、眼瞼がんけん下垂かすいくち半開はんびらきなどの部分ぶぶん発作ほっさもある。
ナルコレプシーが独立どくりつ疾患しっかんとして命名めいめいされたころは、睡眠すいみん発作ほっさ情動じょうどう脱力だつりょく発作ほっさ明確めいかく区別くべつすることはなかったが、20世紀せいき初頭しょとうにこれらを区別くべつするようになり、1916ねんにカタプレキシーと名付なづけられた[4]
カタプレキシーはナルコレプシー1がた特有とくゆう症状しょうじょうであり、2がたはカタプレキシーをともなわない。
いれねむとき幻覚げんかく
68%ほど[1]睡眠すいみん発作ほっさにより睡眠すいみんおちいったさいおよ夜間やかんいれねむとき現実げんじつかんつよ幻覚げんかくることがある[1]。これは、いれねむ直後ちょくごレム睡眠すいみん状態じょうたいになるために大脳皮質だいのうひしつ前頭まえがしら前野まえの覚醒かくせい同様どうよう活動かつどうしていることにより非常ひじょう現実げんじつかんともなったゆめをみている状態じょうたいであるとかんがえられている。また、このとき筋肉きんにく脱力だつりょく状態じょうたいにあるため金縛かなしば状態じょうたいとなり非常ひじょう現実げんじつかんともなったゆめいれねむとき幻覚げんかくとして体験たいけんされることになる[5]寝入ねいさい幽霊ゆうれいた、幽体ゆうたい離脱りだつといったるい心霊しんれい現象げんしょううったえることがあるが、これもいれねむとき幻覚げんかくによってることができる。
睡眠すいみん麻痺まひ
64%ほど[1]。いわゆる金縛かなしばばれる症状しょうじょう開眼かいがん意識いしきはあるものの随意筋ずいいきんうごかすことができない状態じょうたい

以上いじょうの4症状しょうじょうは4だい症状しょうじょうばれる[1]。うち、したの3つはREM睡眠すいみん密接みっせつ関連かんれんしており、REM睡眠すいみん関連かんれん症状しょうじょうばれることがある[1]。REM睡眠すいみん発見はっけんされた1953ねんからすうねん、ナルコレプシーではいれねむときレム睡眠すいみん (SOREMP) が出現しゅつげんすることが1960ねん発見はっけんされ、つづいてSOREMPがいれねむとき幻覚げんかく睡眠すいみん麻痺まひ影響えいきょうあたえていることが発見はっけんされた[4]

睡眠すいみん障害しょうがい
87%ほど[1]中途ちゅうと覚醒かくせい熟睡じゅくすい困難こんなんなど。夜間やかん就寝しゅうしんちゅうしきかいめたり、幻覚げんかく睡眠すいみん麻痺まひがあること、また、睡眠すいみん構築こうちくみだれもあるため熟睡じゅくすい困難こんなんである。てんかんびっくりびょうよう鑑別かんべつ疾患しっかんである。
自動じどうしょう
ねむった感覚かんかくがないにもかかわらず、直前ちょくぜんった行為こうい記憶きおくがない状態じょうたいぎゃくえば無意識むいしきてしまい、ながら行為こういつづけている状態じょうたい

原因げんいん

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原因げんいん解明かいめいされていない[2]。ナルコレプシーの発症はっしょうつよ関与かんよしているとかんがえられているおも遺伝いでんてき要因よういんには、ヒト白血球はっけっきゅう抗原こうげん(HLA)ふく合体がったいとしてられる6ばん染色せんしょくたい領域りょういき関係かんけいしている[6][7]

ナルコレプシーの病因びょういんとして特定とくていされているものには、オレキシン欠乏けつぼうがある[1][4]。オレキシンは視床ししょう下部かぶから分泌ぶんぴつされる神経しんけい伝達でんたつ物質ぶっしつで、1998ねん櫻井さくらいたけしげん筑波大学つくばだいがく医学いがく医療いりょうけい教授きょうじゅ)と柳沢やなぎさわ正史せいし当時とうじテキサス大学だいがくサウスウェスタン医学いがくセンター教授きょうじゅげん筑波大学つくばだいがく国際こくさい統合とうごう睡眠すいみん科学かがく研究けんきゅう機構きこう教授きょうじゅ)らのグループによって発見はっけんされた[8]

オレキシン遺伝子いでんし破壊はかいしたノックアウトマウスには、ナルコレプシー症状しょうじょうあらわれることがあきらかになっている[9]。また、任意にんいのヒトのナルコレプシー患者かんじゃにおいても、視床ししょう下部かぶのオレキシンをつく神経しんけい細胞さいぼう消滅しょうめつしていることがあきらかになっている[10]。さらに、オレキシン神経しんけい細胞さいぼう破壊はかい人為じんいてきにナルコレプシーをこしたノックアウトマウス[11]に、オレキシン遺伝子いでんし導入どうにゅうしたり、のうないにオレキシンを投与とうよすることで、ナルコレプシー症状しょうじょう改善かいぜんされることもあきらかにされた[12]

オレキシンは、覚醒かくせいレベルの維持いじ睡眠すいみん覚醒かくせい状態じょうたい適切てきせつ維持いじ制御せいぎょ重要じゅうよう役割やくわりっている。ナルコレプシーは、オレキシンの欠損けっそんもとづく症状しょうじょうである[13]に、ナルコレプシーの病因びょういんとして関連かんれんせい注目ちゅうもくされているものには、HLAとの関連かんれんせいがある[4]ひとのナルコレプシーにおいては、HLA-DR2がほぼぜんれい陽性ようせいであるという調査ちょうさ結果けっかが1983ねん発表はっぴょうされた[4]。また、日本人にっぽんじんのナルコレプシー患者かんじゃあいだでは、ほぼぜんれいにおいてHLA-DQ1も陽性ようせいであるという調査ちょうさ結果けっかがある[3]。ただし日本にっぽん国外こくがいとく黒人こくじんにおいてはDR2陰性いんせい患者かんじゃおお存在そんざいする[3]。これらのことから、ナルコレプシーが自己じこ免疫めんえき疾患しっかんである可能かのうせい示唆しさされているが、2012ねん現在げんざい証明しょうめいはされていない[4]

2012ねんヒトのナルコレプシーは、オレキシン神経しんけい自己じこ免疫めんえき疾患しっかん理由りゆうとして後天的こうてんてき損傷そんしょうけたことにともな神経しんけい伝達でんたつ障害しょうがいであるとする仮説かせつ発表はっぴょうされた[4]

診断しんだん

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診断しんだん基準きじゅんについては議論ぎろんつづいている[1]睡眠すいみん障害しょうがい国際こくさい分類ぶんるいだい2はん (ICSD-2) では、睡眠すいみん障害しょうがい診断しんだんめいだい1はんくらべて細分さいぶんされており、ナルコレプシーにおいても「情動じょうどう脱力だつりょく発作ほっさともなうナルコレプシー」「情動じょうどう脱力だつりょく発作ほっさともなわないナルコレプシー」「身体しんたい疾患しっかんによるナルコレプシー」「特定とくてい不能ふのうのナルコレプシー」の4つに細分さいぶんされている。このうち、「情動じょうどう脱力だつりょく発作ほっさともなうナルコレプシー」と「身体しんたい疾患しっかんによるナルコレプシー」では、のう脊髄せきずいえきちゅうのオレキシン1(ヒポクレチン-1)濃度のうどが110pg/mL以下いか正常せいじょうコントロールぐん平均へいきんの3ぶんの1以下いか)であることがナルコレプシーの補助ほじょ診断しんだん基準きじゅんふくめられている(前者ぜんしゃだい3こう後者こうしゃだい2こう選択せんたくてき条件じょうけんの1つ)[4]。これには、90%以上いじょう患者かんじゃずいえきちゅうのオレキシンがていとなること、正常せいじょうぐん要因よういんによる患者かんじゃではていとはならないことにもとづく[4]ぎゃくに、「情動じょうどう脱力だつりょく発作ほっさともなわないナルコレプシー」の疫学えきがく判明はんめいしていないとされている[4]

鑑別かんべつ疾患しっかんとして、昼間ひるまねむくなるその病気びょうきげる。

治療ちりょう

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ねむりしょう同様どうように、まずはよるあいだ睡眠すいみん十分じゅうぶんにとること大切たいせつとされている(「睡眠すいみん衛生えいせい」も参照さんしょう[1]可能かのうであれば計画けいかくてき昼寝ひるねることも予防よぼうとなる[1]

ナルコレプシーも睡眠すいみん病気びょうきで、治療ちりょうとおしてくなっていくものであり、なまけによるものではないという周囲しゅうい理解りかい、サポートも重要じゅうようである[14]。また、日本にっぽんナルコレプシー協会きょうかい普及ふきゅう啓発けいはつ交流こうりゅう事業じぎょうおこなっており、相談そうだんけている[14]

薬物やくぶつ療法りょうほう

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中枢ちゅうすう神経しんけい刺激しげきやく使用しようすることでにちちゅう眠気ねむけ抑制よくせいすることができるため、この目的もくてきメチルフェニデート(リタリン)・モダフィニル(モディオダール)・ペモリン(ベタナミン)がおも使用しようされている[1][4]。かつてはメタンフェタミン(ヒロポンじょう)が使用しようされることもあったが、現在げんざいではきわめてまれである。おなじくナルコレプシー適応てきおうピプラドロール(カロパン)は現在げんざい日本にっぽんでは発売はつばいされていない。また、こううつやく情動じょうどう脱力だつりょく発作ほっさ睡眠すいみん麻痺まひといった、レム睡眠すいみん関連かんれん症状しょうじょう抑制よくせいすることから、さんたまきけいこううつやくやSSRI、SNRIがおももちいられる[4]4-ヒドロキシ酪酸 (4-Hydroxybutyrate、GHB) も治療ちりょう使つかわれることがあった。

にちちゅう眠気ねむけ抑制よくせい目的もくてきとした投薬とうやくの、2012ねん時点じてん主流しゅりゅうはモダフィニル(モディオダール)である。これには、メチルフェニデートやペモリンにくらべて依存いぞんせい問題もんだいがないことや肝臓かんぞうへの負担ふたんすくないことなど、副作用ふくさようすくないことがげられる[4]ほんざいは、ナルコレプシー専用せんよう治療ちりょうやくとして日本にっぽん国内こくない承認しょうにんされ、最大さいだい30にちぶんまで[15]処方箋しょほうせん可能かのうとなっている。ちゅう濃度のうど半減はんげんが12あいだ比較的ひかくてきなが[4]朝食ちょうしょくいちかいむだけでやく8あいだ効果こうか持続じぞくする。

メチルフェニデートは、ちゅう濃度のうど半減はんげんが7あいだほど、実効じっこう時間じかんは4あいだほどであるため、症状しょうじょうによっては1にちふくすうかい服用ふくようとなる[4]日本にっぽんにおいては、不正ふせい使用しよう乱用らんよう問題もんだいから登録とうろくのみが処方しょほう可能かのうとなっており(詳細しょうさいほんざい記事きじ参照さんしょう)、ざい充分じゅうぶん効果こうかられない場合ばあい副作用ふくさようによってざい使用しようすることが困難こんなん場合ばあいなどにかぎって使用しようし、主剤しゅざいとしてもちいるのは極力きょくりょくけるべきであると、日本にっぽん睡眠すいみん学会がっかい発表はっぴょうしている[4]

ペモリンは、モダフィニル同様どうようちゅう濃度のうど半減はんげんが12あいだながく、1にち1かい投与とうよいとされている。ただし、ほんざい肝臓かんぞうへの負担ふたんたかいとされている[4]

これらはいずれも対症たいしょうてき治療ちりょうであって根本こんぽんてき治療ちりょうではない。そのため、投薬とうやく中止ちゅうしするともと眠気ねむけ水準すいじゅんもどってしまうことになる[4]。また、いずれも夜間やかん睡眠すいみん悪影響あくえいきょうあたえてはいけないことから、夕方ゆうがたまでに効果こうかれるように処方しょほうされることとなり、薬効やっこう翌日よくじつすことはできない。そのため、毎日まいにち服用ふくようする必要ひつようがある。

上記じょうき以外いがいくすりとしては、オレキシンがナルコレプシーなどの睡眠すいみん障害しょうがいたいする新規しんき治療ちりょうやく開発かいはつにつながることが期待きたいされている[16]。2017ねん5がつ筑波大学つくばだいがく柳沢やなぎさわ正史せいしらはべいアカデミー紀要きよう電子でんしばんでオレキシンさま化合かごうぶつ研究けんきゅう結果けっか発表はっぴょうした。かれらが作成さくせい成功せいこうしたオレキシンさま化合かごうぶつは、正常せいじょうなマウスに投与とうよすると覚醒かくせい時間じかん延長えんちょうされ、継続けいぞくして投与とうよするとナルコレプシー患者かんじゃおお体重たいじゅう増加ぞうか抑制よくせいされるなど、効果こうかがあることが確認かくにんされたという[17]

疫学えきがく

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発症はっしょうおもに15さい前後ぜんこうおおく、40さい以上いじょう発症はっしょうはまれである[4]ほん病気びょうき症状しょうじょう特性とくせいじょう病気びょうきであること自体じたい患者かんじゃ本人ほんにん気付きづ場合ばあいすくないため、発症はっしょうから確定かくてい診断しんだんまでの平均へいきん期間きかんやく15ねんきわめて長期ちょうきになっている。 NPO法人ほうじん日本にっぽんナルコレプシー協会きょうかいは、社会しゃかいてき認知にんち向上こうじょうけて2009ねんより全国ぜんこくかく中学校ちゅうがっこうかく高等こうとう学校がっこうにむけて『ナルコレプシーとは』とのパンフレットを配布はいふ啓発けいはつをはじめた。

歴史れきし

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ナルコレプシーは、睡眠すいみん障害しょうがい研究けんきゅう治療ちりょうおこなわれていく過程かていで、イギリスじん医師いしトーマス・ウィリスによって最初さいしょ報告ほうこくがされ[18]1880ねんにフランスの医師いしジャン=バティスト=エドゥアール・ジェリノー英語えいごばんによって名付なづけられた[4]直訳ちょくやくとしては「Narco=ねむり」「Lepsie=発作ほっさ」を意味いみするため、「ねむ発作ほっさ」となる[18][4]日本にっぽんでは周囲しゅういから患者かんじゃ様子ようすから「居眠いねむびょう」「ねむりしょう」ともばれることがあるが、かたぶけねむり傾向けいこう睡眠すいみん障害しょうがい睡眠すいみん呼吸こきゅう症候群しょうこうぐんなど)をいちくくりにあつかうそのような病名びょうめい適切てきせつではない。このように一般いっぱんへの知名度ちめいどきわめてひくいうえ、専門医せんもんいすくないため、罹患りかんしゃたいするただしい診断しんだん治療ちりょうけにくいことや、まわりの人間にんげんからの理解りかいられないなど、罹患りかんしゃには精神せいしんてきにもおおきな負担ふたんがかかっているのが現状げんじょうである。

社会しゃかいてき状況じょうきょう

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ナルコレプシーをわずらっている(いた)著名ちょめいじん

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ナルコレプシーに罹患りかんしており[19]、その体験たいけんもとにした作品さくひんなども発表はっぴょうしている。また、友人ゆうじんである作家さっか山口やまぐちひとみ随筆ずいひつでも色川いろかわのナルコレプシーにかんする記述きじゅつ散見さんけんされる。なお、色川いろかわたけしだいがナルコレプシーになやまされるようになるのは、アウトローの世界せかいからあしあらったのちである。

関連かんれん項目こうもく

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脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 睡眠すいみん障害しょうがい国際こくさい分類ぶんるい (ICSD) の診断しんだん基準きじゅんじょうは、情動じょうどう脱力だつりょく発作ほっさられない場合ばあいでも、にちちゅう過度かど眠気ねむけくわえて、反復はんぷく睡眠すいみんせん検査けんさでSOREMP(いれねむときレム睡眠すいみん)が2かい以上いじょうかオレキシン(後述こうじゅつてい場合ばあいにはナルコレプシーと診断しんだんされる。

出典しゅってん

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外部がいぶリンク

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