2020年ねん東京とうきょうオリンピックのレガシー

東京とうきょう2020オリンピック・パラリンピック競技きょうぎ大会たいかい > レガシー

国立こくりつ競技きょうぎ場じょう（右みぎ）はオリンピックが開催かいさい国こく日本にっぽんに残のこした有形ゆうけいのスポーツレガシーの一ひとつ

2020年ねん東京とうきょうオリンピックのレガシー（2020ねんとうきょうオリンピックのレガシー）とは、東京とうきょう2020大会たいかい開催かいさいにより開催かいさい都市としである東京とうきょう都とや開催かいさい国こくである日本にっぽんに対たいして長期ちょうきにわたり影響えいきょうがある社会しゃかい資本しほんへの影響えいきょう・経済けいざい的てき影響えいきょう・文化ぶんか的てき財ざいのことである。

オリンピック閉幕へいまく後ごに残のこる遺産いさん（オリンピック・レガシー）をどのように活用かつようするかも問とわれる。この場合ばあいの遺産いさんとは単たんに国立こくりつ競技きょうぎ場じょうの建たて替かえなど建造けんぞう物ぶつのみならず、都市とし再さい開発かいはつに伴ともなう都市とし景観けいかんや環境かんきょう・持続じぞく可能かのう性せい、さらにオリンピックで醸成じょうせいされたスポーツ文化ぶんかやホスピタリティ精神せいしんといった「無形むけいの遺産いさん」を根付ねつかせ発展はってん・継承けいしょうさせることも含ふくまれ、文化ぶんかプログラムや観光かんこう立国りっこくの推進すいしんなど様々さまざまな分野ぶんやで取とり組くみが実施じっしされた。

しかしコロナショックと無む観客かんきゃく開催かいさいを受うけて、観光かんこう業ぎょうを中心ちゅうしんに計画けいかくは大幅おおはばな変更へんこうを余儀よぎなくされた。

経緯けいい

詳細しょうさいは「2020年ねん東京とうきょうオリンピック・パラリンピックの経緯けいい」を参照さんしょう

大会たいかい前まえにおける策定さくてい

東京とうきょうオリンピック・パラリンピック競技きょうぎ大会たいかい組織そしき委員いいん会かい（TOCOG）は、レガシーを残のこす取とり組くみを進すすめるため、「スポーツ・健康けんこう」、「街まちづくり・持続じぞく可能かのう性せい」、「文化ぶんか・教育きょういく」、「経済けいざい・テクノロジー」、そして東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいからの「復興ふっこう・オールジャパン・世界せかいへの発信はっしん」の五ご本ほんの柱はしらを掲かかげている。東京とうきょう都とのオリンピック・パラリンピック準備じゅんび局きょくが策定さくていした「大会たいかい後ごのレガシーを見据みすえて」では、

1. 競技きょうぎ施設しせつや選手せんしゅ村むらのレガシーを東京とうきょう都民とみんの貴重きちょうな財産ざいさんとして未来みらいに引ひき継つぐ
2. 大会たいかいを機きにスポーツが日常にちじょう生活せいかつにとけ込こみ、誰だれもが生いき生いきと豊ゆたかに暮くらせる東京とうきょうを実現じつげん
3. 東京とうきょう都民とみんとともに大会たいかいを創つくりあげ、かけがえのない感動かんどうと記憶きおくを残のこす
4. 大会たいかいを文化ぶんかの祭典さいてんとしても成功せいこうさせ、「世界一せかいいちの文化ぶんか都市とし東京とうきょう」を実現じつげんする
5. オリンピック・パラリンピック教育きょういくを通つうじた人材じんざい育成いくせいと、多様たよう性せいを尊重そんちょうする共生きょうせい社会しゃかいづくりを進すすめる
6. 環境かんきょうに配慮はいりょした持続じぞく可能かのうな大会たいかいを通つうじて豊ゆたかな都市とし環境かんきょうを次世代じせだいに引ひき継つぐ
7. 大会たいかいによる経済けいざい効果こうかを最大限さいだいげんに生いかし、東京とうきょう都とそして日本にっぽんの経済けいざいを活性かっせい化かさせる
8. 東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいの被災ひさい地ちとの絆きずなを次代じだいに引ひき継つぎ、大会たいかいを通つうじて世界せかいの人々ひとびとに感謝かんしゃを伝つたえる

とする。こうしたレガシー構想こうそうが実現じつげんすることにより、約やく27兆ちょう円えんの経済けいざい効果こうかが得えられると東京とうきょう都とは試算しさんした。

競技きょうぎ施設しせつ

詳細しょうさいは「2020年ねん東京とうきょうオリンピック・パラリンピックの会場かいじょう」を参照さんしょう

東京とうきょうベイゾーンに新設しんせつされた東京とうきょうアクアティクスセンター（2020年ねん1月がつ、竣工しゅんこう前まえ）

大会たいかいの競技きょうぎ施設しせつは有形ゆうけいのレガシーである。

国立こくりつ競技きょうぎ場じょうの建たて替かえが行おこなわれ、以下いかのことが目指めざされた。

1. 可動かどう式しき観客かんきゃく席せき
2. 8万まん人にん収容しゅうようの観客かんきゃく席せき
3. 開閉かいへい式しき屋根やね
4. フィットネス・コンベンション施設しせつ
5. スポーツに関かんする博物館はくぶつかん・図書館としょかん

しかしザハ・ハディド案あんが撤回てっかいされ、予定よていしていた上記じょうきのレガシー機能きのうは実現じつげんしなかった。

都市としインフラ

2020年ねん3月がつ、田町たまち品川しながわ間あいだに開業かいぎょうした高輪たかなわゲートウェイ駅えき

オリンピックでの交通こうつう渋滞じゅうたいを緩和かんわすべく鉄道てつどう網もうの整備せいびが進すすめられた。

開催かいさいまでに実現じつげんしたもの

• 高輪たかなわゲートウェイ駅えきを開業かいぎょう。
• 虎ノ門とらのもんヒルズ脇わきに会場かいじょうや選手せんしゅ村むらを結むすぶバスターミナルが設置せっちされる予定よていから、虎ノ門とらのもんヒルズ駅えきを開業かいぎょう。

開催かいさいまでに実現じつげんしなかったもの

• 複数ふくすうの羽田空港はねだくうこうアクセス線せん構想こうそうや中央ちゅうおう新幹線しんかんせん部分ぶぶん開業かいぎょう案あんも浮上ふじょうしていたが、オリンピックまでの開業かいぎょうは不可能ふかのうとされた。
• 東京とうきょう都とは水上すいじょう交通こうつうの見直みなおしも進すすめており、羽田空港はねだくうこうと東京とうきょう都心としんを結むすぶ航路こうろを計画けいかくした。
• 都市とし景観けいかん向上こうじょうの観点かんてんから電線でんせん類るい地中ちちゅう化かを地元じもと知事ちじの小池こいけ百合子ゆりこが推進すいしんしており、無む電柱でんちゅう化か推進すいしん法ほうの可決かけつも後押あとおしとなった。ただし、最もっとも無む電柱でんちゅう化かされている東京とうきょう23区くにしても、2017年度ねんど（平成へいせい28年度ねんど）末まつに無む電柱でんちゅう化か率りつ7%台たい後半こうはん、2020年度ねんど（令れい和わ2年度ねんど）末まつに8%への微増びぞうに留とどまった。
• 東京とうきょう都とは国土こくど交通省こうつうしょうなどとともに2019年度ねんどまでに東京とうきょうの都市としとしての歴史れきしと自動じどう運転うんてん車しゃや水素すいそタウンといった近きん未来みらい社会しゃかいを先さき取とる先端せんたん技術ぎじゅつを東京とうきょうの魅力みりょくとして発信はっしんするPR展示てんじ施設しせつを開設かいせつするとしていた。なお環境省かんきょうしょうの水素すいそステーション事業じぎょうは2020年ねんに補助ほじょ金きんが中止ちゅうしされた。
• 自動車じどうしゃメーカーであるトヨタの出資しゅっしで空そら飛とぶクルマを開発かいはつし、オリンピック開会かいかい式しきに登場とうじょうさせる構想こうそうがあった。
• 東京とうきょうオリンピックの観光かんこう客きゃく需要じゅようの一部いちぶを見込みこんで名古屋なごや城じょう木造もくぞう復元ふくげんが推進すいしんされたが、間まに合あわないため愛知あいち県けんと名古屋なごや市しが共同きょうどう開催かいさいを目指めざすアジア競技きょうぎ大会たいかいの2026年ねん、または中央ちゅうおう新幹線しんかんせん開業かいぎょう当初とうしょ予定よていの2027年ねんに変更へんこうされた。

芸術げいじゅつ文化ぶんか

詳細しょうさいは「2020年ねん東京とうきょうオリンピック・パラリンピックの文化ぶんかプログラム」を参照さんしょう

オリンピック憲章けんしょうと「オリンピック・アジェンダ2020」 では、スポーツのみならず文化ぶんかプログラムとしての文化ぶんかオリンピアードの実施じっしも呼よび掛かけている。東京とうきょう2020パラリンピック開催かいさいに伴ともない障害しょうがい者しゃ文化ぶんかの社会しゃかい浸透しんとうを目指めざし、障害しょうがい者しゃ芸術げいじゅつ普及ふきゅう目的もくてきでアールブリュット（エイブル・アート）を支援しえんすべく超党派ちょうとうはによる議員ぎいん連盟れんめいが障害しょうがい者しゃ文化ぶんか芸術げいじゅつ活動かつどう推進すいしん法ほうの成立せいりつを目指めざしている。

多様たよう性せいと調和ちょうわへの影響えいきょう

東京とうきょうオリンピック開催かいさい決定けっていに前後ぜんごして同どう時期じきにヘイトスピーチが激化げきかし、ヘイトスピーチ規制きせい法ほうが成立せいりつした。

大会たいかい組織そしき委員いいん会かいや日本にっぽん政府せいふは、東京とうきょう2020大会たいかいビジョンのコンセプトの一ひとつである「多様たよう性せいと調和ちょうわ」をテーマに、偏見へんけん・差別さべつ解消かいしょう、パラリンピックによってバリアフリーの浸透しんとうやノーマライゼーションが広ひろまることを期待きたいした。

その一方いっぽう、この大会たいかいに伴ともない路上ろじょう生活せいかつ者しゃが多数たすう居場所いばしょを失うしなった。日本にっぽんでは従来じゅうらいから排除はいじょアートの設置せっちなどで、公共こうきょう空間くうかんに人ひとが長時間ちょうじかん留とまれないようにする仕組しくみづくりが進すすめられてきていたが、施設しせつ整備せいびに伴ともなう公園こうえん閉鎖へいさなどが更さらに追おい打うちを掛かけ、路上ろじょう生活せいかつ者しゃを社会しゃかいから排除はいじょすることになった。

おもてなし

大会たいかい組織そしき委員いいん会かいは、誘致ゆうちの際さいに話題わだいとなった「おもてなし」の精神せいしんを具現ぐげん化かする構想こうそうをたてた。オリンピックボランティアは、「オリンピックは競技きょうぎ者しゃだけのものではない」との国際こくさいオリンピック委員いいん会かい（IOC）の考かんがえ方かたを反映はんえいしたものである。東京とうきょう都とではオリンピック運営うんえいを直接ちょくせつ支援しえんするボランティアとは別べつに、増加ぞうかが見込みこまれる外国がいこく人じん観光かんこう客きゃくに対応たいおうする観光かんこうボランティアの体制たいせい整備せいびも進すすめている。

観光かんこう立国りっこく

• 大会たいかいまでに訪日ほうにち外国がいこく人じん旅行りょこうを2000万まん人にんにし、それを維持いじすることで景気けいき・経済けいざいの維持いじを図はかる。その一環いっかんとして宿泊しゅくはく施設しせつ不足ふそくを解消かいしょうすべく民泊みんぱくが裁可さいかされ、ホテルの容積ようせき率りつを1.5倍ばいもしくは300％まで上乗うわのせすることを認みとめ、統合とうごう型がたリゾートも推進すいしんされる。また、オリンピックまでに国立こくりつ公園こうえんへの外国がいこく人じん旅行りょこう者しゃを1000万まん人にん誘致ゆうちすることを目標もくひょうとする。
  　↳国立こくりつ公園こうえんの活用かつようについては遺産いさんの商品しょうひん化か#自然しぜんの商品しょうひん化かも参照さんしょう
• 利用りよう客きゃくの増加ぞうかを見込みこみ羽田空港はねだくうこうの第だい2ターミナルを改修かいしゅうし、国内線こくないせんのみならず国際線こくさいせんの発着はっちゃくも可能かのうにする。
• 東京とうきょうオリンピックでは情報じょうほう通信つうしん技術ぎじゅつ (ICT) による運営うんえいサポートの社会しゃかい整備せいびを目指めざしている。現状げんじょうでも訪日ほうにち旅行りょこう者しゃから要望ようぼうが高たかい無料むりょうの公衆こうしゅう無線むせんLAN（Wi-Fi）網もうの整備せいびや、ハイテクのイメージが強つよい日本にっぽんをアピールすべくウェアラブルコンピュータによる観戦かんせんの実現じつげんなどが注目ちゅうもくされる。
• 日本にっぽんらしさを讃たたえる東京とうきょう都と以外いがいの地域ちいきの景観けいかんを五輪ごりんレガシーと位置いちづけ、景観けいかん整備せいび（修おさむ景けい）や広報こうほうを政府せいふとして支援しえんし、1.5流りゅうの観光かんこう地ちを一流いちりゅうの国際こくさい的てき名所めいしょに育そだてる「観光かんこう景観けいかんモデル地区ちく」を国土こくど交通省こうつうしょうが推進すいしんする。
• 和式わしきトイレに不慣ふなれな外国がいこく人じん旅行りょこう者しゃのため公衆こうしゅう便所べんじょの洋式ようしき化かを観光かんこう庁ちょうが推進すいしん・補助ほじょする。
• IOCが定さだめるオリンピック病びょうを中心ちゅうしんに外国がいこく人じん受うけ入いれのためタブレット端末たんまつを用もちいる医療いりょう問診もんしんや多た言語げんご通訳つうやく機材きざいの導入どうにゅうが始はじまり、東京とうきょう都とに住すむ外国がいこく人じんの医療いりょう分野ぶんやにおける利便りべん性せいが向上こうじょうし、医療いりょう観光かんこうの促進そくしんにも結むすび付つけられる。

その他たの取とり組くみ

• 文部もんぶ科学かがく省しょうの外局がいきょくとしてスポーツ庁ちょうを設立せつりつ。
• IOCが「タバコのない五輪ごりん」を掲かかげ、世界せかい保健ほけん機関きかん（WHO）によるたばこ規制きせい枠組わくぐみ条約じょうやくをうけ、厚生こうせい労働省ろうどうしょうが受動じゅどう喫煙きつえんの被害ひがい防止ぼうしを目指めざし、禁煙きんえん・分煙ぶんえんの強化きょうかを推進すいしん。
• 食しょくの安全あんぜんを世界せかいにアピールすべく食品しょくひん衛生えいせいの管理かんりを厳格げんかく化かしHACCP導入どうにゅうを義務ぎむ化かすることで、福島ふくしま第だい一いち原子力げんしりょく発電はつでん所しょ事故じこの風評ふうひょう被害ひがいを払拭ふっしょくし復興ふっこうに貢献こうけんしたとされている。

多大ただいな赤字あかじ

新あたらしく整備せいびされた施設しせつの収支しゅうしは、6つのうち有明ありあけアリーナを除のぞく5つの施設しせつで赤字あかじとなる見通みとおしである。年間ねんかん赤字あかじ額がくは東京とうきょうアクアティクスセンターが6億おく3800万まん円えん，海うみの森もり水上すいじょう競技きょうぎ場じょうが1億おく5800万まん円えん、カヌー・スラロームセンターが1億おく8600万まん円えん、大井おおいホッケー競技きょうぎ場じょうが9200万まん円えん、夢ゆめの島しま公園こうえんアーチェリー場じょうが1170万まん円えんと見積みつもられている。また、大会たいかい全体ぜんたいとしても2.3兆ちょう円えんの赤字あかじとなり、その補填ほてんも閉幕へいまく後ごの課題かだいである。

都市とし環境かんきょう破壊はかい

オリンピック需要じゅようを見越みこしてホテルの新築しんちく・建たて替かえが東京とうきょう都内とない随所ずいしょで進行しんこうし、それに伴ともない日本にっぽんの伝統でんとう美びをちりばめたホテルオークラのロビーが解体かいたいされることを都市とし環境かんきょう破壊はかいの典型てんけい例れいとして、オリンピックがもたらす負まけの効果こうかとの声こえがあったが、建物たてものは解体かいたい、ロビーのみ再建さいけんという形かたちに落おち着ついた。

監視かんし社会しゃかい化か

オリンピックにおけるテロを警戒けいかいする日本国にっぽんこく政府せいふは犯罪はんざいを未然みぜんに防ふせぐ名目めいもくで国際こくさい的てきな組織そしき犯罪はんざいの防止ぼうしに関かんする国際こくさい連合れんごう条約じょうやく批准ひじゅんのため共謀きょうぼう罪ざい（テロ等とう準備じゅんび罪ざい）が成立せいりつしたが、監視かんし社会しゃかいに繋つながることが危惧きぐされた。

関連かんれん書籍しょせき

• 間野まの義之よしゆき『オリンピック・レガシー: 2020年ねん東京とうきょうをこう変かえる!』ポプラ社ぽぷらしゃ、2013年ねん、285頁ぺーじ。ISBN 978-4591137758。 

関連かんれん項目こうもく

• 2020年ねん東京とうきょうオリンピック・パラリンピック
• 2020年ねん東京とうきょうオリンピック構想こうそう
• 明治めいじ神宮じんぐう外苑がいえん#再さい開発かいはつ計画けいかく
• 1964年ねん東京とうきょうオリンピックのレガシー
• オリンピック・レガシー

外部がいぶリンク

• アクション&レガシー - 東京とうきょう2020オリンピック競技きょうぎ大会たいかい
• 2020年ねんに向むけた東京とうきょう都との取組とりくみ-大会たいかい後ごのレガシーを見据みすえて- - 東京とうきょう都とオリンピック・パラリンピック準備じゅんび局きょく
• オリンピックとレガシー 石坂いしざか友司ともじ（奈良女子大学ならじょしだいがく）