(Translated by https://www.hiragana.jp/)
An-70 (航空機) - Wikipedia コンテンツにスキップ

An-70 (航空機こうくうき)

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
An-70から転送てんそう

アントノフ An-70

離陸するAn-70

離陸りりくするAn-70

An-70(アントノフ70;ウクライナАн-70アーン・スィムデスャートロシアАн-70アーン・スィェーミヂスャト)は、ウクライナ航空機こうくうきメーカーであるO・K・アントーノウ記念きねん航空こうくう科学かがく技術ぎじゅつふく合体がったい(アントノフ)で開発かいはつされた航空機こうくうきである。ソ連それん時代じだい開発かいはつされ運用うんようされてきたAn-12輸送ゆそうえる次世代じせだいターボプロップよんはつ貨物かもつ輸送ゆそうとしての運用うんよう予定よていされていた。

概略がいりゃく

[編集へんしゅう]

An-12後継こうけい構想こうそう1970年代ねんだいからあったものの、それがAn-70として本格ほんかくてき開発かいはつとなったのは1990年代ねんだいのことである。1994ねん12月16にち試作しさく初号しょごうウクライナキエフ近郊きんこうホストーメリ空港くうこうはつ飛行ひこうした。この開発かいはつ計画けいかくはウクライナとロシア双方そうほう費用ひよう折半せっぱんすることに合意ごういしており、生産せいさんをキエフの航空機こうくうき工場こうじょうアヴィアーントとロシアのサマーラ航空機こうくうき工場こうじょうアヴィアコルおこな計画けいかくであった。また、ロシア政府せいふロシア空軍くうぐんにAn-70を160導入どうにゅうする意向いこうがあると示唆しさし、北大西洋きたたいせいよう条約じょうやく機構きこう(NATO)へもみがはかられた。そのため、An-70は軍用ぐんよう輸送ゆそうとして運用うんようされることを想定そうていしていた。

試作しさく初号しょごう1995ねん2がつ10日とおかキエフしゅうでの試験しけん飛行ひこうちゅう墜落ついらく事故じここした。エスコートをしていたAn-72空中くうちゅう衝突しょうとつしたAn-70は、もり墜落ついらくし、乗員じょういん7めい全員ぜんいん生命せいめい機体きたいうしなわれた。損傷そんしょうしたAn-72はホストーメリ空港くうこう無事ぶじ帰着きちゃくした。アントノフ地上ちじょう試験しけんよう機体きたい飛行ひこうよう変換へんかんし、試作しさく2号機ごうき事故じこからわずか21ヶ月かげつ1996ねん12月8にち飛行ひこうした[1]

しかし、2001ねん1がつには2号機ごうき寒冷かんれいテストちゅう離陸りりくさい、2のエンジンが停止ていしオムスク不時着ふじちゃくし、深刻しんこく被害ひがいけた。アントノフは2号機ごうき回収かいしゅうして、記録きろくてきはやさでそれを修理しゅうりしたが、このプロジェクトはまだ資金しきん不足ふそくしていた[2]。 こうしたなか搭載とうさいするD-27エンジン開発かいはつおくれ、その結果けっかエンジン価格かかく高騰こうとうしょうじた。

2002ねん、ロシアとウクライナは、生産せいさんじょうのリスクシェアリング契約けいやくを50:50にすることで合意ごういした。

初号しょごう事故じこのち、ロシア政府せいふはAn-70の性能せいのううたがいをち、さらなる改良かいりょう要求ようきゅうしてきた。しかし、一向いっこう開発かいはつすすまないことと政治せいじてき事情じじょう2004ねんオレンジ革命かくめい)のために、ロシア政府せいふ自国じこくIl-76MFよりも重量じゅうりょうおも高価こうかになったとして、2006ねん4がつ開発かいはつ計画けいかくからの撤退てったい発表はっぴょうした。この時点じてんでロシアは計画けいかくの60%となる推定すいてい50おくドルをプロジェクトに投資とうししていた[3][4]

開発かいはつつづけられたが、ロシアの借金しゃっきん6,000まんドルの未払みはらいによって遅延ちえんした。だが、その機体きたい開発かいはつはウクライナ単独たんどく継続けいぞくされ、2006ねんにはAn-70の完成かんせい発表はっぴょうされた。同年どうねん6がつにホストーメリ空港くうこうおこなわれたアヴィアスヴィートXXIでは、機体きたい番号ばんごうUR-NTKがアントノフのほか機体きたいAn-225 ムリーヤや2An-148)とともに編隊へんたい飛行ひこう披露ひろうした。アヴィアーントのオレーフ・シェウチェーンコは、ウクライナ空軍くうぐん保有ほゆう機材きざい近代きんだい一環いっかんとして2008ねんに2のAn-70を導入どうにゅうすると説明せつめいした。

2009ねん後半こうはん、ロシアは協力きょうりょく再開さいかいし、計画けいかく資金しきんもどした。しかし、アントノフによるとロシアは、その没収ぼっしゅうペナルティをはらっていないとされる。 2010ねん8がつ実用じつよう試験しけんおこなわれていること、そしてウクライナ空軍くうぐん2011ねん最初さいしょのAn-70を受領じゅりょうする予定よていであることが報告ほうこくされた。また、ヴォルガ・ドニエプル航空こうくう最大さいだい5のAn-70Tの購入こうにゅうのための覚書おぼえがき締結ていけつした[5]

2010ねん12月、ロシアが60のAn-70の調達ちょうたつが2011ねん-2020ねんまでの国家こっか軍備ぐんび計画けいかくふくまれていることがほうじられた。

そのアビオニクス改善かいぜんによる乗員じょういん減少げんしょう(5→4にん)、信頼しんらいせい向上こうじょうし、プロペラ騒音そうおん減少げんしょうさせたものに変更へんこうするなどの改良かいりょうくわえられた2号機ごうきが、2012ねん9月27にちふたたび、キエフで開催かいさいされたAviasit XIの航空こうくうショーに参加さんかした[6]

2012ねん6がつ、ロシアのカザンにあるカポ工場こうじょうでAn-70のてをおこなうことが決定けっていされた。航空機こうくうきつばさ尾翼びよくめん、エンジンナセルはキエフのアントノフで製造せいぞうされる[6]

2012ねん12月、16ねんぶりにしん機体きたい生産せいさんはじまった[7]状態じょうたいのテストは、2014ねん4がつまでに完了かんりょうした[8]

2015ねん1がつ19にち、ウクライナ国防こくぼうしょうステパン・ポルトラクは、ウクライナの空軍くうぐんへのAn-70輸送ゆそう導入どうにゅう承認しょうにんする法令ほうれい署名しょめいした[9]

2015ねん2がつ、ロシアは性能せいのうめん2014ねんウクライナ騒乱そうらんともな関係かんけい悪化あっかから調達ちょうたつをキャンセルし、開発かいはつとして支払しはらった29.5おくルーブルの返還へんかん要求ようきゅうすると発表はっぴょうした[10]

機体きたい

[編集へんしゅう]

こうつばさ配置はいち主翼しゅよくち、尾翼びよく通常つうじょう形式けいしきである。じゅう隙間すきまフラップをゆうし、STOLせい考慮こうりょけい状態じょうたいでは900mの舗装ほそう滑走かっそうでも離着陸りちゃくりくできる[11]りょう尾翼びよくともじゅうヒンジしきであり、機動きどうせい重視じゅうししている。

しゅあし胴体どうたいわきひかえめなバルジない収納しゅうのうしており、ろくりんダブルタイヤである。エンジンプロップファンを4装備そうびじゅう反転はんてんしきであり、8まい翅と6まい翅のわせとなっている。これにより、てい燃費ねんぴ確保かくほしている。

機体きたいにはふくあい材料ざいりょう使つかわれており、操縦そうじゅう系統けいとうグラスコックピットフライ・バイ・ワイヤ使つかわれるなど先進せんしんてき技術ぎじゅつ導入どうにゅうされている。

派生はせいがた

[編集へんしゅう]
An-70
基本きほんがた戦略せんりゃくぐんよう輸送ゆそう
An-70T
D-27 エンジンよんはつ装備そうびした民間みんかん輸送ゆそうがた
35tの積載せきさいぶつ搭載とうさいし、3,800kmの航続こうぞく距離きょりつ。もしくは、20tの積載せきさいりょうで7,400kmを飛行ひこうできる。滑走かっそう舗装ほそう舗装ほそうかかわらず1,300mの距離きょりがあれば離着陸りちゃくりくができるとされた。これは、独立どくりつ国家こっか共同きょうどうたいのあらゆる飛行場ひこうじょう運用うんよう可能かのうとなる能力のうりょくであった。
An-70TK
An-70Tの派生はせいがたで、旅客機りょかくきとして設計せっけいされている。
An-70-100
D-27 エンジンはつ装備そうびする双発そうはつ派生はせいがた
D-27 エンジンは高価こうかであるため、それほど輸送ゆそうちから必要ひつようとされない場合ばあいには双発そうはつした機体きたい運用うんようすることが有効ゆうこうであるとかんがえられた。An-70-100は、すくない積載せきさいりょう簡略かんりゃくされた降着こうちゃく装置そうちゆうした。離着陸りちゃくりくようする距離きょりは2,500mとなり、30tの積載せきさいりょうで1,000kmの飛行ひこう、あるいは燃料ねんりょう搭載とうさいりょう増加ぞうかし20tの積載せきさいりょうで4,300kmの飛行ひこう可能かのうとされた。
An-77
CFM56-5A1 エンジンよんはつ搭載とうさいした戦略せんりゃく軍用ぐんよう輸送ゆそうがたで、西側にしがわ諸国しょこくたい提示ていじされた派生はせいがた
An-7X
NATOたい提示ていじされていた派生はせいがたで、NATOぐん基本きほん輸送ゆそうとして採用さいようされる見込みこみもあった。
An-112KC
アメリカ空軍くうぐんKC-X計画けいかくけにUSエアロスペースとアントノフのチームが提案ていあんした空中くうちゅう給油きゅうゆ仕様しよう[12][13]
エンジンをGE GEnx-1B74/75エンジン・アライアンス GP7277プラット・アンド・ホイットニー PW4074/74Dのいずれか2変更へんこうする予定よていであった[14]。アメリカ空軍くうぐん提案ていあん拒否きょひしたので[15]提案ていあん廃止はいしされた[16][17]
An-188
An-70をベースに、つばさ拡大かくだいし、エンジンをD-436-FMまたは新型しんがたAI-28ウクライナばんターボファン変更へんこうする。また、西側にしがわのエンジンやアビオニクスや機器きき搭載とうさいすることも計画けいかくされていた[18]
しかし、サードパーティーくに協力きょうりょくするにはAn-70の開発かいはつおおきな貢献こうけんをしたロシアの許可きょか必要ひつようであり許可きょかることができないかぎ現実げんじつてきとの見方みかたもある[19]

運用うんようこく

[編集へんしゅう]
 ウクライナ
ウクライナ空軍くうぐん
2010ねん時点じてんで、2011ねんと2012ねんに2導入どうにゅうする予定よていであった[20]最終さいしゅうてきに、2015ねん1がつにウクライナ国防こくぼうしょうステパン・ポルトラクがウクライナ空軍くうぐんにAn-70を就役しゅうえきさせる命令めいれいしょ署名しょめいして運用うんよう開始かいしされた[21]
ロシアの旗 ロシア
ロシア空軍くうぐん
2010ねん6がつ24にちに60発注はっちゅうした。2011ねん3がつ初頭しょとう時点じてんにおいてロシアは2015ねん - 2016ねんさい設計せっけいされたAn-70を60導入どうにゅうすることを検討けんとうしていた[22]。しかし、IL-76MD-90A/Il-476の配備はいび理由りゆうに2015ねん2がつ調達ちょうたつをキャンセルした[23]
ヴォルガ・ドニエプル航空こうくう
最大さいだい5導入どうにゅう期待きたいする[24]

スペック

[編集へんしゅう]
ウクライナの40コピーイカ切手きってえがかれたAn-70(1998ねん発行はっこう
  • 全長ぜんちょう:40.70m
  • 全幅ぜんぷく:44.06m
  • たかさ:16.38m
  • 機体きたい重量じゅうりょう:66.23t
  • 積載せきさい重量じゅうりょう:47t
  • 最大さいだい離陸りりく重量じゅうりょう:130t
  • 最大さいだい速度そくど:780km/h
  • 操縦そうじゅう乗員じょういん:3-5めい
  • 乗客じょうきゃく:300めい軍人ぐんじんもしくは206めい負傷ふしょうしゃ、または47,000kgまでの積載せきさいぶつ
  • エンジン:イーウチェンコ=プロフレース設計せっけいきょくせいD-27×4
  • 航続こうぞく距離きょり:8,000km(フェリー)、6,600km(20tの貨物かもつ搭載とうさい
  • 最大さいだい上昇じょうしょう限界げんかい高度こうど:12,000m

脚注きゃくちゅう

[編集へんしゅう]
  1. ^ Russia, Ukraine to revive An-70 joint project
  2. ^ AMC rebuffs An-70 as basis of Future Large Aircraft project
  3. ^ Russia to pull out of An-70 plane production
  4. ^ Ан-70 не нужен России, по видимому, не подойдет он и НАТО
  5. ^ Antonov: Ukraine to receive first An-70 next year
  6. ^ a b Modified An-70 resumes flight testing
  7. ^ Ukraine completes fuselage jig assembly aircraft An-70
  8. ^ ANTONOV COMPLETED STATE JOINT TESTS OF THE AN−70
  9. ^ НА ОЗБРОЄННЯ ПРИЙНЯТО АН-70
  10. ^ нобороны исключило из госпрограммы вооружения Ан-70
  11. ^ 世界せかい航空機こうくうき年鑑ねんかん2007-2008 たけなわとうしゃ 2007ねん ISBN 978-4873572703
  12. ^ Trimble, Stephen. "US Aerospace appeals against KC-X exclusion, blames USAF ‘conspiracy’". Flight International, 5 August 2010.
  13. ^ "An-112KC KC-X proposal revealed?". AirForces Monthly, 6 August 2010.
  14. ^ An112kc 100710063555-phpapp02
  15. ^ "USAF excludes “late” KC-X bid". Australian Aviation, 9 August 2010.
  16. ^ Butler, Amy. “U.S. Aerospace Files Second KC-X Protest”. The McGraw-Hill Companies, Inc. 12 September 2010閲覧えつらん
  17. ^ Bennett, John T. "GAO Denies U.S. Aerospace-Antonov KC-X Protest". Defense News, 6 October 2010.
  18. ^ Paris Air Show 2015: Antonov reveals An-188 strategic transport aircraft
  19. ^ Ukraine cannot offer third-party countries to participate in An-70 project without Russia’s permission
  20. ^ Antonov: Ukraine to receive first An-70 next year”. Flightglobal (3 August 2010). 17 August 2010閲覧えつらん
  21. ^ “An-70 military transport aircraft enters Ukrainian Armed Forces service”. Kyiv Post. Interfax-Ukraine. (20 January 2015). https://www.kyivpost.com/article/content/war-against-ukraine/an-70-military-transport-aircraft-enters-ukrainian-armed-forces-service-377854.html 2 July 2017閲覧えつらん 
  22. ^ “Russia will acquire 60 Ukrainian An-70s”. RUSSIAN AVIATION. http://www.ruaviation.com/news/2011/4/20/266/ 
  23. ^ “Россия исключила Ан-70 из государственной программы вооружения”. СМИ. (2015ねん3がつ2にち). http://ria.ru/defense_safety/20150302/1050336921.html 
  24. ^ Antonov: Ukraine to receive first An-70 next year”. 2010ねん8がつ17にち閲覧えつらん

外部がいぶリンク

[編集へんしゅう]