Cliché (大貫おおぬき妙子たえこのアルバム)

『Cliché』
大貫おおぬき妙子たえこ の スタジオ・アルバム
リリース	1982年ねん9月21日にち
ジャンル	ポップス ニューミュージック シティ・ポップ
レーベル	RCA / RVC
プロデュース	宮田みやた茂樹しげき、大貫おおぬき妙子たえこ
チャート最高さいこう順位じゅんい
15位い (オリコン)
大貫おおぬき妙子たえこ アルバム 年表ねんぴょう
EARLY TIMES 1976-77 （1981年ねん） Cliché （1982年ねん） SIGNIFIE （1983年ねん）
『Cliché』収録しゅうろくのシングル
「黒くろのクレール」 リリース: 1981年ねん10月21日にち 「ピーターラビットとわたし」 リリース: 1982年ねん9月がつ21日にち

『Cliché』（クリシェ）は、1982年ねん9月21日にちに発売はつばいされた大貫おおぬき妙子たえこの6枚まい目めのスタジオ・アルバム。大貫おおぬきのブレイク・ポイントとなった作品さくひんで、次つぎ作さくの『SIGNIFIE』（1983年ねん）と並ならんで、大貫おおぬきの80年代ねんだいを代表だいひょうする傑作けっさくアルバムと評価ひょうかされている。大貫おおぬきとしては初はつとなる海外かいがいレコーディングをフランス・パリで行おこなった。

概要がいよう

前々まえまえ作さくの『ROMANTIQUE』（1980年ねん）、前作ぜんさくの『AVENTURE』（1981年ねん）と共ともに「ヨーロピアン三さん部ぶ作さく」と呼よばれ、本ほん作さくで一ひとつの完成かんせいがなされた集大成しゅうたいせい的てきなアルバムと評ひょうされている。前半ぜんはんのA面めん（CDでは1～4曲きょく目め）は、坂本さかもと龍一りゅういちが編曲へんきょくを担当たんとう。後半こうはんのB面めん（CDでは5〜10曲きょく目め）が映画えいが音楽おんがくの作曲さっきょくなどを手てがけるジャン・ミュジー (Jean Musy) の編曲へんきょくによるフランス録音ろくおんで、ヨーロッパ志向しこうが深化しんかしている。

アルバム・タイトルの「クリシェ」は、フランス語ふらんすごで ”常套句じょうとうく” ”決きまり文句もんく” という意味いみ。また音楽おんがく用語ようごとしては、ある和音わおんを連続れんぞくして使用しようするとき、その和音わおんの中なかの一いち音おとを少すこしずつ変化へんかさせる技法ぎほうのこと。大貫おおぬきはタイトルに込こめた意味いみについて、「普段ふだんよく使つかわれている音おとやメロディーをもう一度いちど取とり上あげることで、そこから新あたらしい価値かち観かんを生うみ出だす」といった解釈かいしゃくであるといい、「私わたしの中なかの音楽おんがくをフランスで録音ろくおんすることこそが私わたしにとっての ″クリシェ″ でした」とも語かたっている。

制作せいさく

アルバム制作せいさくを始はじめる前まえに、大貫おおぬきはまずヨーロッパへ行いこうと思おもい、都市としへの憧あこがれからパリを選えらんだ。ジャン・ミュジーにアレンジを依頼いらいしたのは、大貫おおぬき自身じしんが好すきだったフランシス・レイの楽曲がっきょくのアレンジを手掛てがけていたという理由りゆうからである。レコーディングの前まえにアルバム『ROMANTIQUE』と『AVENTURE』に手紙てがみを添そえて送おくったところ、「非常ひじょうに気きに入いったから是非ぜひ一緒いっしょに仕事しごとをしたい、今度こんどレコーディングする曲きょくが出来でき次第しだい送おくって欲ほしい。ただし、その曲きょくを気きに入いらなかったらアレンジは出来できない」と、かなりの好こう感触かんしょくであると同時どうじに厳きびしい条件じょうけん付つきの返事へんじを貰もらい、大貫おおぬきは全力ぜんりょくを挙あげて曲きょくを仕上しあげた。出来上できあがった曲きょくを送おくったところ「全部ぜんぶOK」との返答へんとうが来きたため、レコーディングのスケジュールを決きめてパリへ向むかい、初はじめに詞しの内容ないようや、こういう楽器がっきを使つかって欲ほしい、この映画えいがの様ようなイメージで、といった要望ようぼうを伝つたえた。ジャン・ミュジーの楽曲がっきょく制作せいさくは、まずピアノと歌うたのみで全曲ぜんきょくを録音ろくおんし、その上うえにシンセサイザー、ドラム、ベース、ギター、最後さいごにストリングスを被かぶせていくという、日本にっぽんでの作つくり方かたとの違ちがいを若干じゃっかん感かんじるものではあったが、アレンジに関かんして意見いけんが衝突しょうとつするようなことはなく、むしろ想像そうぞう以上いじょうのものを作つくってくれることの方ほうが多おおかったという。ジャン・ミュジーの仕事しごとのやり方かたから大貫おおぬきは、歌心うたごころ、メロディーが持もつリズムや流ながれといった基本きほん的てきなものを学まなぶことが出来できたといい、コンピューターを用もちいた現代げんだいの日本にっぽんのポップスとはかなり異ことなったフランスの音楽家おんがくかの手法しゅほうを見みて、改あらためて「いいもんだな」と思おもったと語かたっている。なお、ジャン・ミュジーのアレンジだけではやりたい事ことを全すべて補おぎなうのは難むずかしいとして、収録しゅうろく曲きょく中ちゅう数すう曲きょくのアレンジは坂本さかもと龍一りゅういちに依頼いらいされた。

アートワーク

ジャケットには大貫おおぬきが絵描えかきに扮ふんしたカラフルなデザインが施ほどこされているが、これは前作ぜんさく、前々まえまえ作さくとモノトーンが続つづき、”意地悪いじわるそう” や ”冷つめたい女おんな” であるといったイメージが付つくことに抵抗ていこうを感かんじた大貫おおぬき自身じしんの希望きぼうによるものである。撮影さつえいは写真しゃしん家かの大西おおにし公平こうへいが担当たんとうしている。

なお、LPレコードのジャケットと同時どうじ発売はつばいのミュージック・テープとでは使用しようされている写真しゃしんが異ことなっている。

収録しゅうろく曲きょく

編曲へんきょく：坂本さかもと龍一りゅういち (Side A : 1 - 4)、ジャン・ミュジー (Side A : 5、Side B : 1 - 5)

LP・CT

Side A

1. 黒くろのクレール（4:59）
2. 色彩しきさい都市とし（3:35）
3. ピーターラビットとわたし（3:11）
4. LABYRINTH（4:36）
5. 風ふうの道みち（3:32）

Side B

1. 光ひかりのカーニバル（3:17）
2. つむじかぜ〈tourbillion〉（3:10）
3. 憶ひ出で〈mémoire〉（3:43）
4. 夏なつ色しょくの服ふく（3:10）
5. 黒くろのクレール (reprise)（3:09）

CD・SACD

1. 黒くろのクレール
2. 色彩しきさい都市とし
3. ピーターラビットとわたし
4. LABYRINTH
5. 風ふうの道みち
6. 光ひかりのカーニバル
7. つむじかぜ〈tourbillion〉
8. 憶ひ出で〈mémoire〉
9. 夏なつ色しょくの服ふく
10. 黒くろのクレール (reprise)

曲きょく解説かいせつ

1. 黒くろのクレール

   大貫おおぬき自身じしんとても気きに入いっており、よく聴きく曲きょくだという。本ほん作さくより1年ねん近ちかく前まえに発売はつばいされたシングルであるが、アルバムにはまだ収おさめられていないため是非ぜひ収録しゅうろくしたいと希望きぼうし、1曲きょく目めに配はいされた。

2. 色彩しきさい都市とし

   当時とうじの心境しんきょうや生活せいかつ態度たいどといったものが現あらわれており、大貫おおぬきはこのアルバムで一番いちばん好すきな曲きょくであるとのこと。自分じぶんのことをこの曲きょくの主人公しゅじんこうのような女性じょせいだと思おもってもらって結構けっこうだと、冗談じょうだん混まじりに話はなしている。

3. ピーターラビットとわたし

   「CARNAVAL」や「恋人こいびと達たちの明日あした」の延長線えんちょうせん上じょうにあるシンセポップとなっており、初はじめからこういったサウンドにしようと希望きぼうして制作せいさくされた曲きょくである。途中とちゅうに聴きこえるウサギの笑わらい声ごえは、大貫おおぬき自身じしんの笑わらい声ごえを録音ろくおんして回転かいてん速度そくどを上あげたもの。ピーターラビットが笑わらうと多分たぶんこんな感かんじだろうと想像そうぞうして作つくったという。

4. LABYRINTH

   アフリカン・ビートとシンセサイザーを使つかって新あたらしい世界せかいを創つくりたいと制作せいさくされた。「世よの中なかに生うまれて、いつの間まにか迷宮めいきゅうの罠わなの中なかに巻まき込こまれている」ということをどうしてもテーマにしたかったとのこと。

5. 風ふうの道みち

   女性じょせい歌手かしゅRAJIEのために書かかれた曲きょくで、フランソワーズ・アルディの歌うたの世界せかいをイメージして作つくられた。他人たにんに提供ていきょうした曲きょくを自身じしんのアルバムに収録しゅうろくするのは、大貫おおぬきにとって初はじめてのことであった。

6. 光ひかりのカーニバル

   フランスをイメージさせるこのメロディー・ラインは、元々もともと自身じしんの中なかに温あたためていたものだという。日本人にっぽんじんのアレンジャーが手掛てがけると ”フランス風ふう” になってしまうので、絶対ぜったい、現地げんちのミュージシャンに任まかせたいと思おもっていたが、本ほん作さくでそれを実現じつげん出来できてとても嬉うれしいと話はなしている。

7. つむじかぜ〈tourbillion〉

   編曲へんきょくを担当たんとうしたジャン・ミュジーが「オー・シャンゼリゼ」等とうのポップスのアレンジに携たずさわっていることもあり、アルバムの中なかでポップな面めんが出だせればと思おもい作つくられた曲きょく。

8. 憶ひ出で〈mémoire〉

   映画えいがのワン・シーンを想像そうぞうさせるような曲きょくを作つくりたいとの思おもいから生うまれた作品さくひん。大貫おおぬきはこの曲きょくを「非常ひじょうにドラマティックな曲きょくにしたい」と考かんがえ、その意図いとをアレンジャーに伝つたえたところ予想よそう以上いじょうの完成かんせい度どとなって、ちょっとびっくりしたと語かたっている。

9. 夏なつ色しょくの服ふく

   詞しのテーマは「置おき去ざりにされる女おんな」だったが、大貫おおぬき自身じしんはこのテーマに男尊女卑だんそんじょひを感かんじるため好すきになれず、「想おもっている女おんな」と解釈かいしゃくを変かえて曲きょくを作つくったという。ジャン・ミュジーの弾ひくピアノにはエリック・サティに通つうじるものがありとても気きに入いっているとのこと。

10. 黒くろのクレール (reprise)

    大貫おおぬきは本ほん作さくを一ひとつのトータル・アルバムと考かんがえ、「映画えいがが終おわり、字幕じまくスーパーが静しずかに流ながれるといった状況じょうきょうを想像そうぞうしながら聴きいてもらえたら、私わたしの『Cliché』は完成かんせいしたという感かんじなんですが」と述のべている。

参加さんかミュージシャン

黒くろのクレール Keyboards, Drums: 坂本さかもと龍一りゅういち Guitar: 大村おおむら憲司けんじ Bass: 細野ほその晴臣はるおみ 色彩しきさい都市とし Keyboards, Drums: 坂本さかもと龍一りゅういち Guitar: 大村おおむら憲司けんじ Percussion: 浜口はまぐち茂しげる外がい也 Background Vocals: EPO ピーターラビットとわたし Keyboards, Drums: 坂本さかもと龍一りゅういち Guitar: 大村おおむら憲司けんじ Background Vocals: 大貫おおぬき妙子たえこ LABYRINTH Keyboards, Drums: 坂本さかもと龍一りゅういち Guitar: 大村おおむら憲司けんじ 風ふうの道みち Keyboards: Jean Musy Guitar: Claude Samara、大村おおむら憲司けんじ Bass: Sauver Mallia Drums: Pierre Alain Dahan

光ひかりのカーニバル Keyboards: Jean Musy つむじかぜ〈tourbillion〉 Keyboards: Jean Musy Bass: Sauver Mallia Drums: 村上むらかみ秀一ひでかず 憶ひ出で〈mémoire〉 Keyboards: Jean Musy Guitar: Claude Samara Bass: Sauver Mallia Drums: Pierre Alain Dahan 夏なつ色しょくの服ふく Keyboards: Jean Musy 黒くろのクレール（reprise） Keyboards: Jean Musy

カバー

黒くろのクレール

• テレサ・カルピオ(杜もり麗うらら莎) - 広東かんとん語ごによるカバーで、タイトルは「夜汽車よぎしゃ」。アルバム『The Magic Of Teresa Carpio』収録しゅうろく。
• 原はら真祐美まゆみ - アルバム『ベールクレール』収録しゅうろく。
• 風見かざみりつ子こ - アルバム『アヴァンチュリエ』収録しゅうろく。
• 夢ゆめ劇げき院いん - 広東かんとん語ごによるカバーで、タイトルは「生なま日び的てき願望がんぼう」。アルバム『夢ゆめ劇げき院いん』収録しゅうろく。
• 井上いのうえ芳雄よしお - アルバム『空そらに星ほしがあるように』収録しゅうろく。
• Negrita(ネグリータ) - アルバム『音おとのブーケ 大貫おおぬき妙子たえこ カヴァー集しゅう』収録しゅうろく。
• 岩崎いわさき宏美ひろみ - アルバム『Dear Friends V』収録しゅうろく。
• KIRINJI - アルバム『大貫おおぬき妙子たえこトリビュート・アルバム -Tribute to Taeko Onuki-』収録しゅうろく。
• 普天間ふてんまかおり - アルバム『Mellow』収録しゅうろく。

色彩しきさい都市とし

• 薬師丸やくしまるひろ子こ - アルバム『Sincerely Yours』収録しゅうろく。
• 矢野やの顕子あきこ - 「OH DAD」のタイトルでアルバム『ELEPHANT HOTEL』に収録しゅうろく。矢野やのが新あらたに作詞さくししている。
• 松任谷まつとうや由実ゆみ with キャラメル・ママ - アルバム『大貫おおぬき妙子たえこトリビュート・アルバム -Tribute to Taeko Onuki-』収録しゅうろく。
• 原田はらだ知世ともよ - アルバム『music & me』収録しゅうろく。

ピーターラビットとわたし

• やくしまるえつこ - アルバム『大貫おおぬき妙子たえこトリビュート・アルバム -Tribute to Taeko Onuki-』収録しゅうろく。

LABYRINTH

• THE BEATNIKS(高橋たかはし幸宏ゆきひろ+鈴木すずき慶一けいいち) - アルバム『大貫おおぬき妙子たえこトリビュート・アルバム -Tribute to Taeko Onuki-』収録しゅうろく。

風ふうの道みち

• RAJIE - 大貫おおぬきによる提供ていきょう楽曲がっきょく。アルバム『キャトル』収録しゅうろく。
• 岩崎いわさき宏美ひろみ - シングル『夢ゆめ』カップリング曲きょく。

夏なつ色しょくの服ふく

• 宮沢みやざわ和史かずし - アルバム『大貫おおぬき妙子たえこトリビュート・アルバム -Tribute to Taeko Onuki-』収録しゅうろく。

発売はつばい履歴りれき

発売はつばい日び	レーベル	規格きかく	規格きかく品番ひんばん	備考びこう
1982年ねん9月がつ21日にち	Dear heart / RVC	LPレコード	RHL-8807
		カセット	RHT-8807	LPとはジャケットが異ことなる
1984年ねん8月がつ21日にち		CD	RHCD-7	初はつCD化か
1986年ねん9月がつ15日にち			R32H-1028	再発さいはつ盤ばん
1991年ねん8月がつ21日にち	Dear heart / BMGビクター		BVCR-2528
1995年ねん3月がつ24日にち	Dear heart / BMG JAPAN		BVCR-8016	Q盤ばん 音おとパレード
1999年ねん6月がつ23日にち			BVCK-38012	RCA・CD名めい盤ばん選書せんしょ
2006年ねん12月がつ20日はつか	BMG JAPAN/RCA		BVCK-37120	リマスター盤ばん・紙しジャケット仕様しよう
2008年ねん1月がつ23日にち			BVCK-18022	リマスター盤ばん
2018年ねん11月28日にち	Sony Music/Great Tracks	LPレコード	MHJL-39	再さい発売はつばい・リマスター盤ばん
2021年ねん12月8日にち	Sony Music/ALDELIGHT	SACD	MHCL-10151	高音こうおん質しつCD

参考さんこう資料しりょう

• オリコン『ALBUM CHART-BOOK COMPLETE EDITION 1970-2005』オリコン・マーケティング・プロモーション、2006年ねん4月がつ。ISBN 978-4-87131-077-2。 
• 大貫おおぬき妙子たえこ・解説かいせつ『ミュージック・ステディ』ステディ出版しゅっぱん〈MUSICIAN FILE 大貫おおぬき妙子たえこ徹底てってい研究けんきゅう(パートⅡ)〉、1983年ねん2月がつ20日はつか。 
• 『Cliché』（ライナーノーツ）大貫おおぬき妙子たえこ、RCA、2008年ねん1月がつ23日にち。BVCK-18022。  – 初はつ盤ばんは1982年ねん9月がつ
• 長井ながい英治えいじ:監修かんしゅう『日本にっぽんの女性じょせいシンガー・ソングライター』シンコーミュージック・エンタテイメント〈ディスク・コレクション〉、2013年ねん4月がつ。ISBN 978-4401638048。 
• 木村きむらユタカ:監修かんしゅう『ジャパニーズ・シティ・ポップ』（増補ぞうほ改訂かいてい版ばん）シンコーミュージック・エンタテイメント〈ディスク・コレクション〉、2020年ねん2月がつ。ISBN 978-4401648771。 

外部がいぶリンク

• Discography – 大貫おおぬき妙子たえこ Taeko Onuki
• 大貫おおぬき妙子たえこ ディスコグラフィ – 日本にほんクラウン
• 大貫おおぬき妙子たえこ – Cliché – Discogs
• 大貫おおぬき妙子たえこRCA期きのアルバム3作品さくひんアナログ再発さいはつ、「カイエ」映像えいぞうもDVD化か – 音楽おんがくナタリー