TOI-1853 b

TOI-1853 b
星座せいざ	うしかい座ざ
分類ぶんるい	太陽系たいようけい外がい惑星わくせい
発見はっけん
発見はっけん年ねん	2023年ねん（論文ろんぶん公表こうひょう年ねん）
発見はっけん者しゃ	Luca Naponiello et al.; （TESS）
発見はっけん方法ほうほう	トランジット法ほう
現況げんきょう	確認かくにん
位置いち; 元もと期き:J2000.0
赤あか経けい (RA, αあるふぁ)	14h 05m 50.2926276024s
赤あか緯ぬき (Dec, δでるた)	+16° 59′ 32.721912924″
固有こゆう運動うんどう (μみゅー)	赤あか経けい: -45.706 ミリ秒びょう/年とし; 赤あか緯ぬき: -12.183 ミリ秒びょう/年とし
年とし周しゅう視差しさ (πぱい)	6.0221 ± 0.0159ミリ秒びょう ; （誤差ごさ0.3%）
距離きょり	542 ± 1 光年こうねん ; （166.1 ± 0.4 パーセク）
軌道きどう要素ようそと性質せいしつ
軌道きどう長ちょう半径はんけい (a)	0.0213 ± 0.0005 au; （3,186,435 ± 74,799 km）
離はなれ心しん率りつ (e)	<0.03
公転こうてん周期しゅうき (P)	1.2436258 ± 0.0000015 日ひ
軌道きどう傾斜けいしゃ角かく (i)	84.7 ± 0.4°
通過つうか時刻じこく	TDB 2459690.7420 ± 0.0006
準じゅん振幅しんぷく (K)	48.8+1.1; −1.0 m/s
TOI-1853の惑星わくせい
物理ぶつり的てき性質せいしつ
直径ちょっけい	44,136 km
半径はんけい	3.46 ± 0.08 R⊕
表面積ひょうめんせき	6.106×109 km2
体積たいせき	4.487×1013 km3
質量しつりょう	73.2 ± 2.7 M⊕
平均へいきん密度みつど	9.74+0.82; −0.76 g/cm3
表面ひょうめん重力じゅうりょく	60.1+3.8; −3.6 m/s2; （6.13+0.39; −0.37 G）
平衡へいこう温度おんど (Teq)	1,479 ± 25 K; （1,206 ± 25 ℃）
年齢ねんれい	70+46; −43 億おく年ねん
他たのカタログでの名称めいしょう
TOI-1853.01; TIC 73540072 b; TYC 1468-1031-1 b; 2MASS J14055031+1659326 b
	■Template （■ノート ■解説かいせつ） ■Project

TOI-1853 b は、地球ちきゅうからうしかい座ざの方向ほうこうに約やく540光年こうねん離はなれた位置いちにあるK型かた主ぬし系列けいれつ星ぼし TOI-1853 を公転こうてんしている太陽系たいようけい外がい惑星わくせいである^[1]。大おおきさの割わりに質量しつりょうが大おおきく、密度みつどが異様いように大おおきい惑星わくせいとして知しられている。

発見はっけんと名称めいしょう[編集へんしゅう]

TOI-1853 b は、アメリカ航空こうくう宇宙うちゅう局きょく (NASA) によって2018年ねんに打うち上あげられたTESS（トランジット系けい外がい惑星わくせい探索たんさく衛星えいせい）によるトランジット法ほうでの観測かんそくから存在そんざいする可能かのう性せいが浮上ふじょうし、TESS object of interest (TOI) における TOI-1853.01 という名称めいしょうが2020年ねんに付与ふよされた^[5]。その後ご、ローマ・ラ・サピエンツァ大学だいがくの研究けんきゅう者しゃである Luca Naponiello らの研究けんきゅうチームによる分析ぶんせきとフォローアップ観測かんそくから、TOI-1853.01 が実際じっさいに存在そんざいする惑星わくせいであると確たしかめられ、現在げんざいの TOI-1853 b という名称めいしょうに改あらためられた^[2]。この研究けんきゅう結果けっかは、2023年ねん 8月がつ30日にち付づけで科学かがく雑誌ざっしネイチャーに掲載けいさいされた。

また、主しゅ星ほし TOI-1853 に惑星わくせいが存在そんざいする可能かのう性せいが示しめされる前まえからTESSの観測かんそく対象たいしょうである恒星こうせいがまとめられたカタログである TESS Input Catalog (TIC) における名称めいしょうであるTIC 73540072 に沿そって、TOI-1853 b は TIC 73540072 b とも呼称こしょうされている^[3]。

特徴とくちょう[編集へんしゅう]

大おおきさの比較ひかく
海王星かいおうせい	TOI-1853 b

TESSによるトランジット観測かんそくの分析ぶんせきから、TOI-1853 b の大おおきさは地球ちきゅうの約やく3.46倍ばいであると求もとめられており、これは地球ちきゅうの約やく3.88倍ばいの大おおきさを持もつ海王星かいおうせいよりもやや小ちいさい程度ていどである^[2]^[6]。主しゅ星ほしからの軌道きどう長ちょう半径はんけいはわずか約やく 0.02 au（約やく320万まん km）で、公転こうてん周期しゅうきは30時じ間あいだ弱じゃくしかないため、表面ひょうめんの平衡へいこう温度おんど（英語えいご版ばん）は 1,200 ℃ 以上いじょうに達たっしている^[2]。それまで発見はっけんされている太陽系たいようけい外がい惑星わくせいの中なかで、TOI-1853 b ほど主しゅ星ほしに近ちかい軌道きどうを公転こうてんしている惑星わくせいは大おおきさが地球ちきゅうの2倍ばい以下いかの地球ちきゅう型がた惑星わくせいか木星もくせいのような巨大きょだいガス惑星わくせい（ホット・ジュピター）が多おおく知しられているが、海王星かいおうせいほどの大おおきさの惑星わくせいはほとんど発見はっけんされていないことが知しられており、この海王星かいおうせい程度ていどの大おおきさの惑星わくせいがほとんど存在そんざいしていない領域りょういきはネプチュニアン砂漠さばくと呼よばれている^[7]。TOI-1853 b はこのネプチュニアン砂漠さばくの中間ちゅうかんに位置いちしていると考かんがえられている^[2]。

ラ・パルマ島とうにあるロケ・デ・ロス・ムチャーチョス天文台てんもんだいの国立こくりつガリレオ望遠鏡ぼうえんきょうに設置せっちされているHARPS-Nのフォローアップ観測かんそくにおいて観測かんそくされた、TOI-1853 b による主しゅ星ほし TOI-1853 の視線しせん速度そくど変化へんかに基もとづくと、TOI-1853 b は地球ちきゅうの約やく73倍ばいの質量しつりょうを持もっていると計算けいさんされている^[1]^[2]。TOI-1853 b はこの程度ていどの大おおきさを持もっている惑星わくせいとしては異様いようなほど質量しつりょうが大おおきく、ほぼ同おなじ大おおきさである海王星かいおうせい（地球ちきゅうの17.15倍ばい^[6]）の約やく4.3倍ばいに達たっしており、これはむしろ土星どせいの質量しつりょう（地球ちきゅうの95.16倍ばい^[8]）に近ちかい^[1]。大おおきさの割わりに質量しつりょうが大おおきいことから計算けいさんされる密度みつども非常ひじょうに高たかく、地球ちきゅうの約やく2倍ばいに相当そうとうする 9.74 g/cm³ に達たっしており、表面ひょうめんの重力じゅうりょくの大おおきさも地球ちきゅう表面ひょうめんの6倍ばい以上いじょうとなっている^[2]。このことから、TOI-1853 b には非常ひじょうに多量たりょうの重じゅう元素げんそが含ふくまれていると考かんがえられているが、最大さいだいで質量しつりょうの 1% を占しめる水素すいそやヘリウムから構成こうせいされたエンベロープ（外周がいしゅう物質ぶっしつ）で覆おおわれている可能かのう性せいや岩石がんせきと水みずが半分はんぶんずつの割合わりあいで含ふくまれている可能かのう性せいも示しめされている^[2]。

起源きげん[編集へんしゅう]

TOI-1853 b のような特性とくせいを持もった惑星わくせいがネプチュニアン砂漠さばくに存在そんざいしているのは従来じゅうらいの惑星わくせい形成けいせい理論りろんでは説明せつめいができないと2023年ねんに研究けんきゅう結果けっかを公表こうひょうした研究けんきゅうチームを率ひきいた Luca Naponiello は述のべており、彼かれらの研究けんきゅうでは2通とおりの TOI-1853 b の形成けいせいシナリオを提唱ていしょうされている^[1]^[2]。まず1つは、水みずを多おおく含ふくんだスーパーアース同士どうしが 75 km/s を超こえる速度そくどで衝突しょうとつしたことで現在げんざいの TOI-1853 b が形成けいせいされたとする仮説かせつで、もう1つは原始げんし惑星わくせい系けい円盤えんばんとの相互そうご作用さようで軌道きどうが歪いがんだガス惑星わくせいが周期しゅうき的てきに主しゅ星ほしに大おおきく接近せっきんすることで潮汐ちょうせき加熱かねつが発生はっせいし、その後ご、主しゅ星ほしに近ちかい現在げんざいの軌道きどうにまで移動いどうしてきたことで大気たいきが散逸さんいつし、中心ちゅうしん部ぶの高密度こうみつどな核かくが露出ろしゅつしたものが現在げんざいの TOI-1853 b であるとする仮説かせつである^[1]^[2]^[9]。前者ぜんしゃの仮説かせつが正ただしい場合ばあい、スーパーアース同士どうしの衝突しょうとつで元々もともと表面ひょうめんにあった大気たいきや水みずが散逸さんいつし、主おもに高密度こうみつどな岩石がんせきが残のこったということになり、TOI-1853 系けいにはそのとき衝突しょうとつしたもう一ひとつの惑星わくせいが現在げんざいも存在そんざいしている可能かのう性せいがある。一方いっぽうで後者こうしゃの仮説かせつが正ただしい場合ばあい、元々もともと偏心へんしんしていた軌道きどうは、主しゅ星ほしとの潮汐ちょうせき力りょくの影響えいきょうで時間じかんの経過けいかにより徐々じょじょに軌道きどうが真ま円えんに近ちかづくとされており、離はなれ心しん率りつが0.03未満みまんと極きわめて真ま円えんに近ちかい現在げんざいの TOI-1853 b の軌道きどうを上手うまく説明せつめいすることが出来できる^[1]^[2]。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

^ ^a ^b パーセクは1 ÷ 年とし周しゅう視差しさ（秒びょう）より計算けいさん、光年こうねんは1÷年とし周しゅう視差しさ（秒びょう）×3.2615638より計算けいさん

出典しゅってん[編集へんしゅう]

^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f ^g Charles Q. Choi (2023年ねん8月がつ31日にち). “Scorching Neptune-size world is way too massive for astronomers to explain”. Space.com. 2023年ねん9月がつ1日にち閲覧えつらん。
^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f ^g ^h ⁱ ^j ^k ^l ^m ⁿ ^o ^p ^q ^r ^s ^t ^u ^v ^w ^x Naponiello, L.; Mancini, L.; Sozzetti, A. et al. (2023). “A super-massive Neptune-sized planet”. Nature. doi:10.1038/s41586-023-06499-2.
^ ^a ^b ^c Jean Schneider (2023年ねん2月がつ4日にち). “Planet TOI-1853 b”. The Extrasolar Planet Encyclopaedia. 2023年ねん9月がつ1日にち閲覧えつらん。
^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f ^g “Result for TOI-1853.01”. SIMBAD Astronomicl Database. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年ねん9月がつ1日にち閲覧えつらん。
^ “TESS Project Candidates”. NASA Exoplanet Archive. NASA. 2023年ねん9月がつ1日にち閲覧えつらん。
^ ^a ^b David R. Williams (2023年ねん5月がつ22日にち). “Neptune Fact Sheet”. NSSDC/NASA. 2023年ねん9月がつ1日にち閲覧えつらん。
^ Watson, Christopher A.; Walker, Simon R.; Udry, Stéphane et al. (2019). “NGTS-4b: A sub-Neptune transiting in the desert”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 486 (4): 5094–5103. arXiv:1809.00678. Bibcode: 2019MNRAS.486.5094W. doi:10.1093/mnras/stz1084. ISSN 0035-8711.
^ David R. Williams (2023年ねん5月がつ22日にち). “Saturn Fact Sheet”. NSSDC/NASA. 2023年ねん9月がつ1日にち閲覧えつらん。
^ University of Bristol (2023年ねん8月がつ30日にち). “New giant planet shows evidence of possible planetary collisions”. Phys.org. 2023年ねん9月がつ1日にち閲覧えつらん。