三浦みうら宏規ひろのり、ミュージカルは一いち度ど知しったら抜ぬけ出だせない（後編こうへん）

取材しゅざい・文ぶん / 中川なかがわ朋子ともこ

日本にっぽん版ばん史上しじょう最年少さいねんしょうでつかんだマリウスで、また歌うたを嫌きらいになった

──三浦みうらさんは「ミュージカル『テニスの王子おうじ様さま』」で大おおきく羽はばたき、2019年ねんには20歳さいでミュージカル「レ・ミゼラブル」のマリウス役やくを演えんじられました。オーディションにチャレンジしようと思おもったきっかけは？

レミゼの2017年ねん公演こうえんを観劇かんげきしたことです。作品さくひん自体じたいは知しっていましたし、映画えいが「レ・ミゼラブル」も観みていたのですが、初はじめてミュージカル版ばんを観劇かんげきして「すごい舞台ぶたいだ！」と圧倒あっとうされて。カーテンコールでは動うごけませんでしたね。それで「どうしてももう1回かい行いきたい」と思おもってチケットを取とり、結局けっきょく2回かい観劇かんげきしました。そのときは「自分じぶんが出演しゅつえんする」とかそういう感かんじではなく、オーディションも良よい経験けいけんになるだろうと思おもってダメもとでチャレンジしたんです。

──しかし見事みごとに一発いっぱつで合格ごうかくされ、日本にっぽんのレミゼ史上しじょう最年少さいねんしょうの20歳さいでマリウス役やくを演えんじられました。初はじめからマリウス志望しぼうだったんですか？

もちろん受うかりたい気持きもちはありましたけど、びっくりしましたね。初はじめて観みたレミゼのマリウス役やくは、「恋こいするブロードウェイ♪」でご一緒いっしょした海宝かいほう直人なおとさん。2度目どめの観劇かんげきでは同おなじく恋こいブロで共演きょうえんした内藤ないとう大だい希のぞみくんでした。先輩せんぱいたちの素敵すてきな姿すがたを拝見はいけんして「僕ぼくもマリウスを受うけるしかない！」と。2019年ねんのレミゼでは海宝かいほうさんと大だい希のぞみくんと僕ぼく、全員ぜんいん恋こいブロ出身しゅっしんで、なんだかジンクスみたいなものを感かんじましたね（笑）。

──初はつ出演しゅつえんのときに、印象いんしょう的てきだった出来事できごとがあれば教おしえてください。

必死ひっしだったので、だいぶ記憶きおくが飛とんでるんですが、また歌うたを嫌きらいになったことは覚おぼえています（笑）。嫌きらいになったというか、セリフではなく歌うただけで心情しんじょうを表現ひょうげんすることがとても難むずかしくて。レミゼは歌うたで進行しんこうするミュージカルですが、僕ぼくはそういう舞台ぶたいに立たった経験けいけんがなかったので。本当ほんとうに大変たいへんでしたけど、先輩せんぱい方かたと一緒いっしょにお稽古けいこしながらたくさん勉強べんきょうさせてもらいました。

──2021年ねん公演こうえんで、再ふたたびマリウス役やくに挑いどまれます。前回ぜんかいと比くらべて役やくとの向むき合あい方かたに変化へんかはありましたか？

1つ言いえるのは、余裕よゆうが少すこしできたということ。2019年ねん公演こうえんでは「受うかっちゃった、どうしよう。でもやらなくちゃ」という感かんじでとにかくがむしゃらでした。今回こんかいは大だい希のぞみくん、竹内たけうち將人まさとさんとトリプルキャストでマリウスを演えんじますが、「マリウスはこう見みえるんだ、なるほど。じゃあこうしてみたらどうかな」と自分じぶんの中なかで考かんがえながらお稽古けいこできています。先輩せんぱいたちの演技えんぎを通つうじて、客観きゃっかん的てきに自分じぶんの役やくを見みられるのはありがたいですね。

出会であいに導みちびかれてたどり着ついた舞台ぶたいの世界せかいが、やっぱり好すき

──三浦みうらさんはレミゼに出演しゅつえんされつつ、テニミュや「ミュージカル『刀剣とうけん乱舞らんぶ』」にも出演しゅつえんされていますね。レミゼのようなグランドミュージカルと2.5次元じげんミュージカルとで、役やくに取とり組くむときに意識いしきを切きり替かえることはあるのでしょうか。

特別とくべつ何なにも変かわらないですね。テニミュも刀かたなミュもレミゼも、どれも“原作げんさく”をもとに舞台ぶたいを作つくり上あげていると考かんがえれば、大おおきな違ちがいはないと考かんがえています。もちろんこれは演えんじる僕ぼくの意識いしきなので、お客様きゃくさまによっては2.5次元じげんとグランドミュージカルとを分わけて考かんがえている方ほうもいらっしゃると思おもいます。でも両方りょうほうやらせていただいている自分じぶんからすると、役やく作づくりで何なにか変かえることはないですね。

──三浦みうらさんはまずクラシックバレエという伝統でんとう的てきな表現ひょうげんを学まなび、そこから2.5次元じげんという比較的ひかくてき新あたらしいジャンルの舞台ぶたいに飛とび込こまれています。そして今いまはレミゼをはじめとする、ある意味いみでクラシカルなミュージカルへの出演しゅつえんが続つづいています。バレエも2.5次元じげんもレミゼも、表現ひょうげんや取とり組くみ方かたにそれぞれ違ちがった“正解せいかい”があり、かつそのジャンルの間あいだには見みえない壁かべもあるのではないかと思おもいます。三浦みうらさんはその壁かべを越こえて活躍かつやくの幅はばを広ひろげていらっしゃいますが、どういう思おもいで活動かつどうの“路線ろせん”を変更へんこうされてきたのでしょう？

自分じぶんとしては、やってみたいことを見みつけたらチャンスをつかみに行いって、気付きづいたらそれに参加さんかしている、という感かんじなんです。「次つぎはこれをやって、ステップアップしてあちらを目指めざそう」みたいな感覚かんかくは特とくになくて、だからそういう意味いみでの“壁かべ”は感かんじていないのかもしれません。僕ぼくのようにクラシックバレエをしっかりやって、2.5次元じげんミュージカルに出でて、今いまは王道おうどうのミュージカルに出でて……という人ひとは確たしかになかなかいませんが（笑）。自分じぶんとしてはとにかく、そのときそのときの目標もくひょうに向むかって努力どりょくして、それをつかんだらまたやってみたいことを見みつけて、というのを繰くり返かえしているんです。

──三浦みうらさんには今いま、「これからこうなりたい」という目標もくひょうや、憧あこがれのお仕事しごとはありますか？

今いまは「これ！」という目標もくひょうが浮うかばないです。バレエをやっていたときはビジョンがあった気きもするんですが、今いまは13歳さいくらいのときの自分じぶんにとっては思おもいもよらなかったことにチャレンジしていて。10年ねん前まえの自分じぶんが、舞台ぶたいで歌うたっている今いまの僕ぼくを観みたら「え!?」って言いうでしょうね。思おもいがけないことをやりすぎていて、もはやちょっと面白おもしろくなってきています（笑）。実際じっさい、次つぎに自分じぶんがどうなっていくのかわかりませんし、夢ゆめを探さがしている途中とちゅうなのかもしれません。でもまあ決きめないほうが面白おもしろいかなとも思おもうし、視野しやも広ひろがるんじゃないかなと。

──三浦みうらさんは刀かたなミュやミュージカル「ヘアスプレー」のキャストと共ともに、歌うた番組ばんぐみにも出演しゅつえんされています。今後こんご「映像えいぞうのお仕事しごとをやってみたい」といった目標もくひょうはあるのでしょうか。

ないです！ 実じつはちょっと、テレビに出でるのは苦手にがてかなあ（笑）。それにさっき「どうなっていくかわからない」とは言いいましたが、やっぱり僕ぼくは舞台ぶたいが好すき。もちろん「絶対ぜったいない！」と決きめているわけではないので、チャンスをいただけるならドラマや映画えいがにも挑戦ちょうせんするかもしれません。でも少すくなくとも今いまは、舞台ぶたいを中心ちゅうしんにやっていけたらと思おもっています。

ポッカリ穴あなが空あいたような自粛じしゅく期間きかん、花はなを生いけて心しんはシーモアと共ともに

──5歳さいから舞台ぶたいに立たち続つづけている三浦みうらさんは、同年代どうねんだいの俳優はいゆう仲間なかまの方々かたがたと比くらべても、人生じんせいでステージに立たった回数かいすうはかなり多おおいのではないかと思おもいます。昨年さくねんは新型しんがたコロナウイルスの影響えいきょうでミュージカル「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」が途中とちゅうで中止ちゅうしになったり、「ヘアスプレー」が全ぜん公演こうえん中止ちゅうしになったりしました。あの自粛じしゅく期間きかんを経へて、舞台ぶたいに立たつことへの思おもいに変化へんかはありましたか？

舞台ぶたいは僕ぼくにとって生活せいかつの一部いちぶだったので、あの頃ころは変へんな感かんじでした。稽古けいこして、本番ほんばんに出でて、家いえに帰かえってお風呂ふろに入はいって……というのが自分じぶんの生いき方かたでしたから、ポッカリ穴あなが空あいたようで。公演こうえん期間きかんの途中とちゅうでいきなり「明日あしたで千秋楽せんしゅうらくです」と言いわれるなんて、それまではありえなかった。“ショー・マスト・ゴー・オン”の精神せいしんで、何なにがあっても舞台ぶたいは続つづけるものだと思おもっていたのに、昨年さくねんは突然とつぜんの公演こうえん中止ちゅうしがたくさんありましたよね。だからありきたりですけど、やっぱり今いまは1公演こうえん1公演こうえんをよりかみしめ、幸しあわせを感かんじながら舞台ぶたいに立たつようになりました。

──「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」は、今年ことし8月がつにもう1度ど上演じょうえんされますね。

また上演じょうえんできて本当ほんとうにうれしいです！ リトショは舞台ぶたいの公演こうえん中止ちゅうしが本格ほんかく化かする前まえ、僕ぼくが最後さいごに立たったステージでした。だから自粛じしゅく中ちゅうのふとした瞬間しゅんかんに思おもい出だすのはリトショのことでしたね。花屋はなやのシーモアを演えんじていたからか、気付きづいたら僕ぼくも花はなが大好だいすきになっていたんですよ。ステイホームしながら花はなを買かって自宅じたくで生いけたりして、「自分じぶん、何なにやってるんだろう？」と思おもいましたけど（笑）。今回こんかいは前回ぜんかいとほぼ同おなじキャストでチャレンジできることがすごくうれしいですし、僕ぼくは花屋はなやの店員てんいんとしてレベルアップした演技えんぎをお見みせできるかもしれないです。

「バルジャン笑わらってる、良よかった！」カーテンコールの感動かんどうを知しったら抜ぬけ出だせない

──さまざまなジャンルの舞台ぶたいに立たたれてきた三浦みうらさんが、これまでのキャリアの中なかで特とくに忘わすれられない舞台ぶたいの光景こうけいは何なにですか？

パッと浮うかんだのは、2019年ねんのレミゼですね。プレビュー公演こうえんのカーテンコールで、お客様きゃくさまがスタンディングオベーションしてくださったんです。2017年ねんに自分じぶんが帝国ていこく劇場げきじょうの客席きゃくせきでレミゼを観劇かんげきしたときは、自分じぶんがレミゼを演えんじる側がわになるとは想像そうぞうもしていませんでしたが、心しんのどこかに「いつかあちら側がわに行いきたい」という気持きもちもあった。出演しゅつえんが決きまってからはとにかく必死ひっしで、なかなか実感じっかんが湧わきませんでしたけど、総立そうだちのお客様きゃくさまを見みてやっと「本当ほんとうにこの作品さくひんの一員いちいんになったんだな」と、ジーンと来きました。ただ実じつは2019年ねん公演こうえんでは気持きもちがフワフワしていたので、あまり“帝国ていこく劇場げきじょうのすごさ”をわかっていなかった。だから2回かい目めの今年ことしのほうが、“帝劇ていげき”を実感じっかんして足あしがすくんでしまうかもしれないです（笑）。

──最後さいごに、三浦みうらさんが考かんがえるミュージカルの良よさ、魅力みりょくを教おしえてください。

難むずかしいなあ……。演えんじる側がわというより観みる側がわの視点してんになりますが、観客かんきゃくとしての僕ぼくは一生いっしょう、ミュージカルを観み続つづけたいと思おもっています。やっぱりミュージカルの良よさって、非ひ日常にちじょうを味あじわえることかなと。劇場げきじょうに入はいってオーバーチュアが流ながれてきて「ああ、幕まくが上あがる！」という瞬間しゅんかんは、いつもすごくワクワクします。それに僕ぼくは素敵すてきな作品さくひんを観みると、カーテンコールで一番いちばん感動かんどうしてしまう。例たとえばレミゼなら、カーテンコールでキャストがみんな出でてきて、ジャン・バルジャン役やくの方ほうが笑顔えがおでほかのメンバーを迎むかえていると、僕ぼくは「うわあ、バルジャン笑わらってるよ。良よかった！」って泣ないちゃうんです。「誰だれ目線めせんで泣ないてるの？」という感かんじですし（笑）、あの感覚かんかくを言葉ことばにするのはすごく難むずかしいんですけど。カーテンコールのそういう瞬間しゅんかんがすごく好すきです。

──確たしかにカーテンコールでのキャストの笑顔えがおは、舞台ぶたいだからこそ観みられるものですよね。

演えんじ手しゅとしても、カーテンコールでいただく拍手はくしゅを1度ど知しってしまうと抜ぬけ出だせないなと思おもいます。気持きもちを拍手はくしゅで伝つたえられるのは、生なまものならではの良よさですよね。舞台ぶたいから見みていると、お客様きゃくさまがどれだけ作品さくひんにのめり込こんで観みてくださったのか、拍手はくしゅする手ての位置いちの高たかさで僕ぼくたちにも伝つたわってくるので、ちょっと怖こわさもあるんですけど（笑）。カーテンコールでの感動かんどうをまだ知しらない方ほうには味あじわってほしいですし、知しってしまった人ひとはもう戻もどれません。たとえお給料きゅうりょうがチケット代だいで飛とんでいってしまうとしても、一生いっしょう劇場げきじょうに通かよってしまうはずです！（笑）

プロフィール

1999年ねん、三重みえ県けん出身しゅっしん。5歳さいでクラシックバレエを始はじめ、数々かずかずのバレエコンクールで入賞にゅうしょうを果はたす。東京とうきょうワンピースタワー「ONE PIECE LIVE ATTRACTION～Welcome to TONGARI Mystery Tour～」では、モンキー・D・ルフィ役やくを担当たんとう。近年きんねんでは「ミュージカル『テニスの王子おうじ様さま』」3rdシーズンで跡部あとべ景けい吾われ役やく、「ミュージカル『刀剣とうけん乱舞らんぶ』」シリーズで髭ひげ切きり役やくを務つとめ、「恋こいするブロードウェイ♪」シリーズ、「Nostalgic Wonderland ～song & dance show～」シリーズ、ミュージカル「モンティ・パイソンのSPAMALOT」などにも出演しゅつえんしている。またディズニー楽曲がっきょくのカバーアルバム「Disney 声ごえの王子おうじ様さま Voice Stars Dream Selection III」にも参加さんか。8・9月がつにはミュージカル「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」再演さいえん、11・12月がつにはミュージカル「GREASE」が控ひかえる。