西武せいぶ｢大久保おおくぼ駅えき｣構想こうそうは､なぜ幻まぼろしとなったのか 新宿しんじゅく乗のり入いれの裏うらに隠かくされたルートと新駅しんえき

新宿しんじゅく駅えき東口ひがしぐちの駅えきビル「ルミネエスト新宿しんじゅく」。このビルの北側きたがわ2階かいに西武せいぶ新宿しんじゅく線せんのホームが接続せつぞくするはずだった

「幻まぼろしの酒さけ」「幻まぼろしの米べい」「幻まぼろしの湖みずうみ」等々とうとう、「幻まぼろし」という言葉ことばにはどことなく妖艶ようえんな響ひびきがあり、人ひとを引ひきつける何なにかがある。それ故ゆえか、幻まぼろしに終おわった鉄道てつどう路線ろせん（未成みせい線せん）の歴史れきしを調しらべたり、工事こうじの途中とちゅうで放棄ほうきされたトンネルや高架こうか橋きょうなどの遺構いこうを訪たずね歩あるく鉄道てつどうマニアも多おおい。

私わたしは月刊げっかん鉄道てつどう誌し『鉄道てつどうジャーナル』で、各地かくちに残のこる未成みせい線せんの遺構いこうを訪たずね歩あるく連載れんさい記事きじ「幻まぼろしの鉄路てつろをたどる」を執筆しっぴつしている。

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これまでに連載れんさいで取とり上あげた未成みせい線せんのうち、半分はんぶん以上いじょうは都市とし部ぶから離はなれた郊外こうがいや山間さんかんを通とおる計画けいかくだった。都市とし部ぶは再さい開発かいはつなどによって遺構いこうが消失しょうしつしていることも多おおく、まとまった記事きじを書かきにくいからだ。

とはいえ、遺構いこうや名残なごりがまったくない場合ばあいでも、予定よていされていたルートを訪たずねて「もし鉄道てつどうができていたら、ここを○○線せんから直通ちょくつうする××行いきの列車れっしゃが走はしっていたかもしれない」などと想像そうぞうを働はたらかせるのは、意外いがいと楽たのしい作業さぎょうである。

これから数すう回かいに分わけ、そうした都市とし部ぶの未成みせい線せんをいくつか紹介しょうかいしたい。まずは西武鉄道せいぶてつどう新宿しんじゅく線せんの、国鉄こくてつ（現げん・JR）新宿しんじゅく駅えき東口ひがしぐちへの乗のり入いれ計画けいかくだ。

輸送ゆそう量りょうの増加ぞうかがあだになった新宿しんじゅく乗のり入いれ

西武せいぶ新宿しんじゅく線せんは、東京とうきょう都と新宿しんじゅく区くの西武せいぶ新宿しんじゅく駅えきから埼玉さいたま県けん川越かわごえ市しの本ほん川越かわごえ駅えきに至いたる、47.5kmの鉄道てつどう路線ろせんだ。都心としん側がわのターミナルである西武せいぶ新宿しんじゅく駅えきはJR新宿しんじゅく駅えきから離はなれていて、乗のり換かえの利便りべん性せいが悪わるい。実じつは西武鉄道せいぶてつどうもJR駅えきの東口ひがしぐちに新宿しんじゅく駅えきを設もうける予定よていだったが、諸般しょはんの事情じじょうから乗のり入いれできなかったのだ。

西武せいぶ新宿しんじゅく線せんは、国分寺こくぶんじ～東村山ひがしむらやま～川越かわごし（現げん・本川越ほんかわごえ）間あいだに建設けんせつされた川越かわごえ鉄道てつどうを起源きげんとする。国分寺こくぶんじ駅えきで甲きのえ武たけし鉄道てつどう（現げん・JR中央ちゅうおう線せん）に接続せつぞくすることで東京とうきょう都心としんへのルートを確保かくほしたが、後のちに川越かわごえ鉄道てつどうを引ひき継ついだ西武鉄道せいぶてつどう（初代しょだい）が、都心としんに直接ちょくせつ向むかう独自どくじのルートを建設けんせつ。1927年ねんに高田馬場たかだのばば～東村山ひがしむらやま間あいだが開業かいぎょうした。

ただ、高田馬場たかだのばば駅えきで山手やまて線せんへの接続せつぞくは果はたしたものの、当時とうじの同どう駅えきは山手やまて線せんの主要しゅよう駅えきとは言いいがたく、ターミナルとしては難なんがあった。そのため戦後せんご、西武鉄道せいぶてつどう（初代しょだい）を吸収きゅうしゅう合併がっぺいした西武せいぶ農業のうぎょう鉄道てつどう（現在げんざいの西武鉄道せいぶてつどう）が、都心としん西部せいぶの一大いちだいターミナルとして発展はってんしつつあった国鉄こくてつ新宿しんじゅく駅えき東口ひがしぐちへの乗のり入いれを計画けいかく。1948年ねん3月がつ29日にち、高田馬場たかだのばば～新宿しんじゅく間あいだの地方ちほう鉄道てつどう敷設ふせつ免許めんきょを取得しゅとくする。