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「最新技術を素早く取り込み、銀行全体のカルチャー改革にもつなげたい」。三菱UFJ銀行 システム企画部調査役の村上祐一氏は、対話型AI(人工知能)「ChatGPT」の導入について意欲をみせる。
同行は2023年3月に、ChatGPTの対応チームを立ち上げた。行内の文書検索や企画書の作成補助、支店業務での顧客対応支援などへの活用を目指し、環境構築を開始。同年6月に検証を始める予定だ。2023年度内を目標に、三菱UFJフィナンシャル・グループ全体で利用環境の一部を共通化する仕組みを整備していく。
三菱UFJ銀行をはじめ、銀行や保険会社など大手金融機関におけるChatGPTの導入が相次いでいる。三井住友フィナンシャルグループは2023年4月、ChatGPTを基にした社内業務のAIアシスタントツール「SMBC-GPT」の導入に向けた実証実験を始めた。同年秋ごろをめどに、三井住友銀行の全行員が使えるようにする。
みずほフィナンシャルグループも2023年4月、社内業務にChatGPTを活用する検討を始めた。文書の作成支援や社員からの照会対応に加えて、自然言語による金融関連のデータ収集やコード生成などへの活用を想定する。
損害保険会社では損害保険ジャパンが2023年1月から、DX推進部開発推進グループでプログラミングの支援にChatGPTを活用している。同グループでグループリーダーを務める石川隼輔氏は、「社内でAIに詳しい人材を抱えており、いち早く動き出せた」と振り返る。「アンケート結果を見ると2~3割は生産性が向上している」(石川氏)。今後数カ月以内に、約款の要約など営業分野の社員にも利用を広げる方針だ。
東京海上日動火災保険はChatGPTを基に、契約者からの問い合わせへの回答案を自動生成するAIを開発している。「インパクトの大きい自動車保険に関する保険代理店からの照会対応を皮切りに、2023年6月から1~2店舗で試用を始める」(ビジネスデザイン室企画グループ課長代理の木村鋼希氏)構想だ。三井住友海上火災保険やあいおいニッセイ同和損害保険も、ChatGPTの導入に向けて実証実験を進めている。
生命保険会社は損保に比べて慎重だが、明治安田生命保険が2023年4月にChatGPTを活用した実証実験を開始。情報収集や資料作成、プログラミングの支援やアイデア創出などでの活用を見込む。
大手銀行や損害保険会社における対話型AIの導入例
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