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 日本にっぽんでも対話たいわがたAI(人工じんこう知能ちのう)の基盤きばんとなるだい規模きぼ言語げんごモデル(LLM)を独自どくじ研究けんきゅう開発かいはつするうごきがきゅう加速かそくしている。NTTや富士通ふじつうといったIT大手おおてからネット大手おおてのサイバーエージェントやLINE、さらにはABEJAなどAI専業せんぎょうのスタートアップまで。「ChatGPT」で世界せかいおどろかせたべいOpenAI(オープンAI)の「GPT」にたいして、各社かくしゃ日本語にほんご処理しょり水準すいじゅん企業きぎょう利用りよう利便りべんせいたかめて差異さいするかんがえだ。海外かいがい技術ぎじゅつたよらず自前じまえのLLMを整備せいびするうごきは、生成せいせいAIにかんする経済けいざい安全あんぜん保障ほしょう意味合いみあいもびる。「まるLLM」は実現じつげんするか。各社かくしゃ挑戦ちょうせんった。

 「AI活用かつようによるSociety 5.0 for SDGsの実現じつげんけて」。2023ねん6がつ9にち経団連けいだんれんがAI(人工じんこう知能ちのう活用かつよう促進そくしんけた政策せいさく提言ていげん発表はっぴょうした。主眼しゅがんの1つが「だい規模きぼ言語げんごモデル(LLM)をはじめとするAI基盤きばん技術ぎじゅつ日本にっぽん独自どくじでまかなうべき」との主張しゅちょうだ。LLMなどの開発かいはつ日本にっぽん海外かいがいおくれをっている現状げんじょうまえ、最先端さいせんたんのAIを独自どくじ開発かいはつする能力のうりょくそなえるべきだとした。

 日本にっぽんばんLLMの意義いぎれたどう提言ていげんは、よくある政策せいさく提言ていげんにもえる。しかしこの提言ていげんは、経団連けいだんれんとしては異例いれいのものだ。提言ていげん発信はっしん主体しゅたいしめすクレジットは「日本にっぽん経済けいざい団体だんたい連合れんごうかい デジタルエコノミー推進すいしん委員いいんかい AI活用かつよう戦略せんりゃくタスクフォース」。経団連けいだんれん機関きかん決定けっていず、重要じゅうようせい緊急きんきゅうせいたかいテーマをあつか臨時りんじのチームがきょとりまとめた。経団連けいだんれんが2023ねん発表はっぴょうした政策せいさく提言ていげんのうち、クレジットがタスクフォースめいのものはこれだけだ。

 異例いれい提言ていげんうらには、「あせり」にも危機ききかんがある。「生成せいせいAI分野ぶんやはあまりにも変化へんかはやい。政府せいふが(経済けいざい財政ざいせい運営うんえい基本きほん方針ほうしんである)骨太ほねぶと方針ほうしん発表はっぴょうするまえに、なんらかの政策せいさく提言ていげんすべきだとかんがえた」(経団連けいだんれん)。通常つうじょう経団連けいだんれんはタスクフォース、ワーキンググループ(作業さぎょう部会ぶかい)、部会ぶかい段階だんかいてき議論ぎろんて、最後さいご経団連けいだんれんとして機関きかん決定けっていしたうえで政策せいさく提言ていげん発表はっぴょうする。機関きかん決定けってい頻度ひんどはおおむねつき1かい。これではおそいとの判断はんだんが、異例いれい提言ていげん発表はっぴょうにつながった。

過熱かねつする日本にっぽんばんLLMの開発かいはつレース

 現在げんざい日本語にほんご処理しょりひいでただい規模きぼ言語げんごモデル(LLM)を、海外かいがいたよらず日本にっぽん独自どくじ研究けんきゅう開発かいはつするうごきがきゅう加速かそくしている。まさに過熱かねつ乱立らんりつ気味ぎみといっていい状況じょうきょうだ。

 オープンAIのGPTはおも英語えいご学習がくしゅうしており日本語にほんごでの学習がくしゅうりょうすくないので、日本語にほんごよりも英語えいご入力にゅうりょくのほうがこう品質ひんしつ出力しゅつりょくられる。これにたいし、日本にっぽんばんLLMは日本語にほんご中心ちゅうしん学習がくしゅうしているので、日本語にほんご入力にゅうりょくたいして的確てきかく出力しゅつりょくかえせるというメリットがある。

日本にっぽん独自どくじLLMの研究けんきゅう開発かいはつめぐおもうご
時期じき内容ないよう
2022ねん7がつABEJAがGPT-3をベースに日本語にほんごとくしたLLMの一部いちぶ公開こうかい
11月べいOpenAIがGPT-3.5をもと開発かいはつした対話たいわがたAI「ChatGPT」を公開こうかい
LINEが820おくパラメーターのLLM「HyperCLOVA」について説明せつめい
2023ねん2がつオルツが1600おくパラメーターのLLM「LHTM-2」を開発かいはつしたと発表はっぴょう
3がつOpenAIが「GPT-4」を公開こうかい
ABEJAがLLMを商用しょうようし、クラウドサービス「ABEJA LLM Series」として提供ていきょう開始かいし
5月ソフトバンクの宮川みやがわ潤一じゅんいち社長しゃちょう決算けっさん発表はっぴょうでLLMの開発かいはつ意向いこう表明ひょうめい
自民党じみんとうが「国内こくないにおけるAI開発かいはつ基盤きばん育成いくせい強化きょうかすべき」との政策せいさく提言ていげん発表はっぴょう
サイバーエージェントが130おくパラメーターのLLMを開発かいはつしたと発表はっぴょう
NTTの島田しまだあきら社長しゃちょう決算けっさん発表はっぴょうでLLMの開発かいはつ意向いこう表明ひょうめい
サイバーエージェントが68おくパラメーターのLLMを公開こうかい
rinnaが36おくパラメーターのLLMを公開こうかい
富士通ふじつう理研りけんがスーパーコンピューター「富岳ふがく」を使つかったLLMの研究けんきゅう開発かいはつ開始かいし
6がつ経団連けいだんれんがLLMなど最先端さいせんたんのAI基盤きばん技術ぎじゅつ独自どくじ開発かいはつすべきとの政策せいさく提言ていげん発表はっぴょう
さくらインターネットが経済けいざい産業さんぎょうしょう認定にんていのもと、3ねんで130おくえんとうじてLLMけデータセンター環境かんきょう整備せいびすると発表はっぴょう

 先陣せんじんったのはAI専業せんぎょうスタートアップだ。AIによる議事ぎじろく作成さくせいのSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)を手掛てがけるオルツは2023ねん2がつ独自どくじ開発かいはつのLLM「LHTM-2」を開発かいはつしたと発表はっぴょう同社どうしゃ議事ぎじろく作成さくせいサービスに応用おうようするなど、5月から相次あいついで事業じぎょうした。技術ぎじゅつ評価ひょうか参加さんかした企業きぎょうは100しゃえたという。

 ABEJAは2023ねん3がつ、LLMを使つかった商用しょうようサービスの提供ていきょうはじめた。同社どうしゃせいのAIシステム構築こうちくソフトぐん「ABEJA Platform」にLLMを搭載とうさい導入どうにゅうコンサルティングから設計せっけい開発かいはつ運用うんようまでのサービスとあわせて提供ていきょうし、顧客こきゃく企業きぎょう自社じしゃ基幹きかん業務ぎょうむ生成せいせいAI技術ぎじゅつれるのを支援しえんする。同社どうしゃは、商用しょうよう先立さきだつ2022ねん7がつにLLMの一部いちぶ公開こうかいしている。これをいちはや実用じつようしたかたちだ。