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パナソニックのIT・電子機器関連事業を担うパナソニックコネクトは、国内の全社員約1万3000人が米OpenAIの生成AI(人工知能)ツール「ChatGPT」をベースにしたAIシステム「ConnectAI」を活用している。米マイクロソフトが提供するChatGPTのクラウドサービス「Microsoft Azure OpenAI Service」を採用し、ユーザーインターフェースをカスタマイズして2023年2月に導入した。
開始から3カ月間で、約26万回の利用があり、1日当たりの利用者は5800人に上ったという。短期間のうちに業務用のツールとして定着させた。2023年4月以降は、パナソニックグループの他社にも展開している。
プロンプトエンジニアリングを意識
パナソニックコネクトの向野孔己IT・デジタル推進本部デザイン&マーケティング本部戦略企画部シニアマネージャーマーケティングIT総括担当
(撮影:日経クロステック)
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ConnectAIの導入を主導した向野孔己IT・デジタル推進本部デザイン&マーケティング本部戦略企画部シニアマネージャーマーケティングIT総括担当は「ChatGPTはこれまでになかった便利なAIツールだ。ただし実際に生産性向上につなげて業務活用を定着させるには、有効な使い方を全社に根づかせる必要があった」と振り返る。
向野氏がConnectAIの活用を定着させる手段として着目したのが「プロンプトエンジニアリング」だ。
プロンプトエンジニアリングは、生成AIから望ましい出力を得るために、AIに入力する質問・指示・命令、すなわち「プロンプト」を最適化する手法を指す。ChatGPTの登場前から、生成AIの研究・活用で重視されてきた概念だ。
ConnectAIの基本機能はChatGPTと同じだ。ただし社員がConnectAIに的確なプロンプトを入力できるよう、プロンプトエンジニアリングの観点に基づきユーザーインターフェースをカスタマイズした。
ConnectAI導入時のプロンプトエンジニアリングに関する基本的な考え方
(出所:パナソニック コネクト)
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向野氏は「社員はこれまで検索エンジンに慣れ親しんできた。『パナソニック 創業者 功績』のように検索エンジンに入力するような単語の羅列をプロンプトとしてConnectAIに入力しがちだ。だが、ConnectAIではもっと自然な文章のほうが望ましい結果を得やすい。社員による使い方を変える必要があった」と説明する。
ChatGPTなどの生成AIに「パナソニック 創業者 功績」をプロンプトとして入力すると、松下幸之助氏に関するやや総花的な事績の羅列が返ってくる。「パナソニック創業者の功績のうち、特筆すべきものを1つ教えて」のように、より具体的なプロンプトを記述したほうが的確な回答を得やすい。