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OpenAIが提供する生成AI技術はいわば「魔法」のように見える。それを使いこなすためにマイクロソフトが提供しているサービス「Azure OpenAI」を解説する。
生成AIに非常に大きな可能性があり、Copilotのようなサービスが今後私たちの身近でサポートしてくれる世界になっていくことは理解いただけたかと思います。その上で、具体的に生成AIがどのように使われていくかを概観してみます。
企業や個人に向けた四つのユースケース
ここでは、まず代表的なユースケースを説明した上で、生成AIに取り組んでいくためのポイントにも触れていきます。生成AIのユースケースを考えるにあたっての肝は、ユーザーインターフェースとして、生成AIにより自然言語を理解/生成できるようになったことで、チャットや音声会話を通して、人と対話するようにコミュニケーションが取れるようになったことが一つです。もう一つは、裏側の仕組みとして、回答する根拠となる推論エンジンの精度が上がってきていることがあります。それは生成AIとしての精度もありますが、適切に外部連携することで必要な情報を処理できることもあります。これらを踏まえて、新しく何ができるかを考えていくと新たな可能性に気付くかもしれません。
代表的なユースケースには、「セキュリティを担保した、ChatGPTと同様の社内サービス」「自然言語を使った社内情報の検索サービス」「コールセンター向けなど業務特化の支援サービス」「ユーザーの代わりに多様なタスクを代行してくれるコンシェルジュサービス」などがあります。
実際にユースケースとして最も多いのは一つめで、従業員をサポートする生成AI搭載のチャットボットとして導入することです。今までのチャットボットと異なり、自然言語の理解/生成ができるので、自由度が高く、情報要約やアイデア出し、さらには情報のカテゴライズなどをしたり、ある内容に関して定量的に判断させたり、出力内容を指定して他システムと連携させたり、翻訳として利用したりできます(ChatGPTは翻訳のために作られたTransformerモデルからできています)。プロンプトの工夫次第で様々な面でビジネスをサポートできます。
もちろん、セキュリティを担保した上で、安心して取り組める形にしておくことが重要です。ビジネスとして利用する場合、どうしても社内の機密情報についてもチャットボットとやり取りしていくケースが多いので、チャットボットに再学習されて、外部にデータが漏れない仕組みにする必要があります。そのため、セキュリティ面はすべての土台として、必須になります。
二つめが、社内システムと連携して、社内情報を検索できるチャットボットサービスです。一般の生成AIでは、企業の肝である自社独自のデータは学習されていません。そのため、社内情報も含めてチャットボットと会話できる仕組みにしつつ、第三者も利用可能な生成AIに学習されないようにする必要があります。今までの社内情報検索では、欲しい内容を探すこと自体に時間がかかりましたが、今後はチャットボットから欲しかった回答を直ちに聞くことができ、根拠となる参照した社内情報が添付されることで、正確性も担保できます。さらにそこから内容を深堀りすることもできれば、作業指示を与えて、その内容を整理してもらうこともできます。例えば、レポートなどのテンプレートをあらかじめ作っておくことで、成果物の作成まで依頼できます。最終チェックは人がする必要がありますが、その修正までチャットボットに依頼できます。
このユースケースを社内から個人に置き換えると、パーソナライズ化されたサービスができてきます。また、従業員などの内部に向けてではなく、外部向けとして顧客へのサービスにすることもできます。従業員向けと同様ですが、顧客とのやり取りをデータとして保持することで、それぞれの顧客向けにパーソナライズ化したチャットボットにもできます。
三つめは、チャットボットに専門性を持たせるケースです。例えば、教育であれば、専門用語の説明から出題や回答、キャリアパスのサポートなどまでありますし、営業やマーケティング支援であれば、資料の作成、外部データ(SNSなど)からの感情分析などもあります。また監査などであれば、不正文章の検知にも使えたりします。需要が高いと感じるのは、コールセンターなどの顧客サービスにおけるサポートで、リアルタイムでのアシスタントの実施や、顧客対応内容の要約やフィードバックを与えることです。場合によっては、チャットボットが支援ではなく、代替としてメインで顧客に対応することも十分に考えられます。
最後に生成AIによって、すべての煩わしい作業を一括して実施してくれるようなユースケースがあります。生成AIが、コンシェルジュのような対応を一気通貫で行うことです。例えば、予約や購入をするときのケースに使えます。今までは、人が何か購入する際には、検索サイトでトレンドや商品の概要を把握しました。次に、欲しいものの目星が付いた後は、購入サイトでさらに探して、比較検討した上で、決めた商品の購入手続きを実施していました。それらを生成AIがコンシェルジュとして代替して対応してくれるようになります。最終的な購入決定や予約内容の確認は人が実施する必要はありますが、誰に対してもコンシェルジュが付くような、とても快適な将来が待っているかもしれません。