ラッコの保護ほご活動かつどう

この記事は良質な記事に選ばれています
出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
オリンピック海岸かいがん国立こくりつ海洋かいよう保護ほご (Olympic Coast National Marine Sanctuaryのラッコは1969ねん、1970ねんにアラスカからうつされたものである。

ラッコの保護ほご活動かつどうは、20世紀せいき初頭しょとうはじまった。当時とうじラッコだい規模きぼ商業しょうぎょう狩猟しゅりょうにより、絶滅ぜつめつ危機ききにあった。かつてラッコはきた太平洋たいへいよう、すなわち北日本きたにっぽんアラスカメキシコわたってひろ分布ぶんぷしていた。1911ねんまでの毛皮けがわ目的もくてき狩猟しゅりょうにより、ラッコの個体こたいすう人間にんげんとどかない辺境へんきょう中心ちゅうしんとした2000とうにまで激減げきげんした。

その20世紀せいきあいだに、ラッコの個体こたいすうロシアごく東部とうぶ西にしアラスカ、カリフォルニアのこりから増加ぞうかした。1960年代ねんだいからは、かつてラッコが生息せいそくした地域ちいきへの人工じんこうてき移動いどうすすめられ、きたアメリカ西海岸にしかいがんひろ分布ぶんぷさせることに成功せいこうした。そのにも若干じゃっかんだが成功せいこうした地域ちいきもあり、ラッコ保護ほご活動かつどうは、海洋かいよう生物せいぶつ保護ほご活動かつどう (Marine conservationとしてもっと成功せいこうした事業じぎょうの1つとかんがえられている[1]

ところが近年きんねん、ラッコ生息せいそく地域ちいきとして重要じゅうような2箇所かしょで、ラッコの個体こたいすう増加ぞうかまり、あるいは減少げんしょうこっている。アリューシャン列島れっとうではここすうじゅう年間ねんかんで、おおきく減少げんしょうしている。その原因げんいん明確めいかくであるが、ラッコ頭数とうすう変化へんかは、捕食ほしょくしゃであるシャチ頭数とうすう増加ぞうか傾向けいこうている。1990年代ねんだい、カリフォルニアでは、アラスカとはべつ原因げんいん増加ぞうかまった。ラッコの成獣せいじゅう伝染でんせんびょう罹患りかんりつたかまったためである。カリフォルニアのラッコがなぜ病気びょうきにかかりやすいのかはかっていない。その、ラッコは石油せきゆ流出りゅうしゅつによる汚染おせんにも非常ひじょうよわく、その被害ひがい報告ほうこくされている。国際こくさい自然しぜん保護ほご連合れんごう(IUCN)は、ラッコを絶滅ぜつめつ危惧きぐしゅ指定していしている。

背景はいけい[編集へんしゅう]

ラッコの個体こたいすう増加ぞうかは、絶滅ぜつめつ間際まぎわからの回復かいふくとして、海洋かいよう生物せいぶつ保護ほごとして、もっと成功せいこうおさめた事業じぎょうひとつである。

ラッコ (Enhydra lutris) はきた太平洋たいへいよう沿岸えんがん、すなわち北日本きたにっぽん千島ちしま列島れっとう、カムチャッカ半島はんとう東部とうぶ、アリューシャン列島れっとうきたアメリカ、メキシコにわたって生息せいそくする海洋かいよう哺乳類ほにゅうるい (marine mammalである。動物界どうぶつかいなかではもっとあつ毛皮けがわつ。1741ねんから1911ねんあいだ毛皮けがわ採取さいしゅ目的もくてきとしたラッコの捕獲ほかくだい流行りゅうこうし(「おおいなる狩猟しゅりょう、Great Hunt」とばれる)、この期間きかんぜん世界せかい個体こたいすうが1,000 - 2,000に激減げきげんした。それ以後いご先住民せんじゅうみんによる限定げんていてき狩猟しゅりょうのぞいて、商業しょうぎょう狩猟しゅりょうのほとんどが禁止きんしされた。

ラッコは、ウニ軟体動物なんたいどうぶつ甲殻こうかくるい数種類すうしゅるい魚類ぎょるい捕食ほしょくする。ラッコは、そのおおきさにくらべて活動かつどう範囲はんいせまいため、エサとしてかせないたね存在そんざいする。具体ぐたいてきにはウニるいである。ウニは海草かいそうもり (kelp forestらし、沿岸えんがん侵食しんしょく原因げんいんとなっている。ラッコは生態せいたいがくてきにこれをふせ役割やくわりになっており、さらにはそのあいらしさと行動こうどう面白おもしろさのため、人々ひとびとあいだたね保護ほごし、生息せいそく範囲はんい拡大かくだいする努力どりょくがなされてきた。ただし、ラッコは、人間にんげんにとっても重要じゅうようアワビカニハマグリといった魚介ぎょかいるい捕食ほしょくする。そのため、漁業ぎょぎょう団体だんたい、レクレーション団体だんたい海岸かいがん自給じきゅうする人々ひとびとから、ラッコ保護ほご活動かつどうたいする反対はんたい運動うんどうこることもあり、漁師りょうしなかにはほうおかしてラッコをころすこともあった[2]

ラッコの分布ぶんぷ地域ちいきは、現在げんざいところ不連続ふれんぞくである。オレゴンしゅうきたカリフォルニアなどの地域ちいきには生息せいそくしていない。メキシコや北日本きたにっぽんではしばしば目撃もくげきされるようになってきている。ラッコは人工じんこう飼育しいく可能かのうなため、40以上いじょう公共こうきょう水族館すいぞくかん動物どうぶつえん人気にんきあつめている[3]

ラッコは保温ほおんのため毛皮けがわ清潔せいけつたもたなければならない。石油せきゆ流出りゅうしゅつによる汚染おせんがあると、づくろいときあぶらってしまう。

保護ほご問題もんだい[編集へんしゅう]

IUCNは、ラッコにとっておおきく脅威きょういとなるのは、石油せきゆ汚染おせん (Oil spillシャチによる捕食ほしょく密猟みつりょう漁業ぎょぎょう影響えいきょうであると分析ぶんせきしている。漁具ぎょぐまれると、おぼれることもある[4]。たとえ悪意あくいくても、ひとちかくから観察かんさつすることがストレスとなることもある。ラッコにとってもっとおおきな脅威きょうい石油せきゆ流出りゅうしゅつである[5]。ラッコは体温たいおん毛皮けがわたもっている。毛皮けがわあぶられるとあいだ空気くうきけてしまうので、てい体温たいおんしょうになってんでしまう[5]づくろいをしたり海水かいすいんだりしたさい体内たいないあぶら吸収きゅうしゅうされると、肝臓かんぞう腎臓じんぞうはい損傷そんしょうける[5]

ラッコの行動こうどう範囲はんいせまいため、カリフォルニア、ワシントン、ブリティッシュコロンビアしゅうなどでおおきな石油せきゆ流出りゅうしゅつ事故じこ発生はっせいすると、壊滅かいめつてき被害ひがいをもたらす[6][7][8]。これらの地域ちいきでの石油せきゆ流出りゅうしゅつ防止ぼうしとラッコ救済きゅうさい準備じゅんびをすることが、ラッコの個体こたいすう生息せいそく範囲はんいやすのに非常ひじょう重要じゅうようである。

海洋かいよう保護ほご地域ちいき (Marine Protected Areaは、不法ふほう投棄とうき石油せきゆ採掘さいくつ禁止きんしされているため、ラッコの良好りょうこう生息せいそくとなっている[9][10]モントレーわん国立こくりつ動物どうぶつ保護ほご地区ちく (Monterey Bay National Marine Sanctuaryには1,200以上いじょう[11]、オリンピック海岸かいがん国立こくりつ海洋かいよう保護ほご (Olympic Coast National Marine Sanctuaryには500以上いじょう生息せいそくしている[12]

関連かんれん地図ちず 1-カムチャッカ半島はんとう, 2-アムチトカとう, 3-プリンス・ウィリアムわん, 4-バンクーバーとう, 5-ビッグ・サー

カムチャッカ近郊きんこう[編集へんしゅう]

19世紀せいきより以前いぜん千島ちしま列島れっとうには20,000 - 25,000とうのラッコがみ、カムチャッカ半島はんとうコマンドルスキー諸島しょとうにもおおんでいた。「おおいなる狩猟しゅりょう(Great Hunt)」以後いごは、この地域ちいきむラッコはわずか750とうとなっていた[13]2004ねん現在げんざい、かつての生息せいそく全域ぜんいきでラッコがられるようになり、27,000とうにまでなった。このうち、やく19,000とう千島ちしま列島れっとうみ、2000から3500とうがカムチャッカ半島はんとうに、5,000から5,500とうがコマンドルスキー諸島しょとうんでいる[13]。ここに増加ぞうかはわずかにおそくなり、ほぼ環境かんきょう収容しゅうようりょくたっしたものとられる[13]。ロシアでのラッコ生息せいそくすう復活ふっかつ成功せいこうは、広範囲こうはんいかつ長期間ちょうきかん保護ほごによるものであり、しまからの人間にんげん移住いじゅうおおきく影響えいきょうしている[13]

アラスカ[編集へんしゅう]

1930年代ねんだい、アラスカのアリューシャン列島れっとうプリンス・ウィリアムわんあたりにラッコの生息せいそくてきした土地とち発見はっけんされた。アムチトカとうのラッコ生息せいそく禁猟きんりょう指定していされ、個体こたいすう増加ぞうかした[14]1960年代ねんだいなかば、アムチトカとうかく実験じっけん使用しようされ、ラッコを数多かずおおころすことになった。1968ねんアメリカ原子力げんしりょく委員いいんかいだい規模きぼかく実験じっけんまえにして、すうひゃくとう動物どうぶつ場所ばしょうつすことをめた。それをけて1960年代ねんだい、ラッコは700とううつされ、その経験けいけんから科学かがくしゃたち動物どうぶつ安全あんぜんによそにうつ方法ほうほうまなんだ[15]1973ねん、アラスカのラッコ頭数とうすうは、100,000から125,000とうのぼると推定すいていされている[16]

ラッコのゆたかな毛皮けがわのせいで、かつてはだい規模きぼ狩猟しゅりょうまととなり、いまあぶら流出りゅうしゅつ被害ひがいけやすくなっている。

アリューシャン列島れっとう衰弱すいじゃく[編集へんしゅう]

ここすうじゅうねんで、西にしアラスカアリューシャン諸島しょとうのラッコ頭数とうすう急落きゅうらくしている。1980年代ねんだい、この地域ちいきむラッコは55,000 - 100,000とういたが、2000ねんには6,000とうにまでった[17]。この理由りゆうとして、反論はんろんおおいが、シャチによる捕食ほしょくによるものとするせつがある。このせつ裏付うらづける証拠しょうことしては周囲しゅうい状況じょうきょうがある。まず、頭数とうすう減少げんしょうするような病気びょうきえが発生はっせいしていた形跡けいせきがない[17]。そして、減少げんしょうおおきかったのはシャチがたびたび観察かんさつされる地域ちいきであり、かたのようにシャチがいないところでは減少げんしょうすくなかった[18]

アラスカに生息せいそくするシャチのたねなかには海洋かいよう哺乳類ほにゅうるいこのんでべる種類しゅるいがある。そのようなシャチは、アザラシアシカ小型こがたクジラコククジラ子供こどもなどをべる。ラッコは小型こがたおおいので、シャチにとってあまり魅力みりょくいエサだが、クジラにくらべてシャチの頭数とうすうおおいことが、なんせんものラッコがシャチに捕食ほしょくされたことの証拠しょうこひとつにげられる。

"sequential megafauna collapse"(大型おおがた生物せいぶつ連鎖れんさ崩壊ほうかい)とばれる理論りろんによると、シャチがラッコの捕食ほしょくはじめたのは、かつてエサとしていた動物どうぶつってしまったことによる。つまりこの理論りろんでは、大型おおがたクジラが1960年代ねんだい商業しょうぎょう捕鯨ほげい減少げんしょうしてしまい、そのためシャチはゼニガタアザラシトド捕食ほしょくはじめたために1970年代ねんだいから1980年代ねんだいにはそれらも減少げんしょうし、ついにはより小型こがた動物どうぶつがシャチのエサとなってしまった、と説明せつめいする[19]。ただし、ラッコの減少げんしょうがシャチの捕食ほしょくによるものかどうかの結論けつろんておらず、直接ちょくせつそれを証明しょうめいする証拠しょうこていない[18]

エクソンバルディーズごう原油げんゆ流出りゅうしゅつ事故じこにより、あぶらあつまくプリンス・ウィリアムわんおおった。

エクソンバルディーズごう原油げんゆ流出りゅうしゅつ事故じこ[編集へんしゅう]

1989ねんエクソンバルディーズごう原油げんゆ流出りゅうしゅつ事故じこにより、プリンス・ウィリアムわんのラッコは壊滅かいめつてき打撃だげきけた。あぶらにまみれた1000とうものラッコの死骸しがいつかっており[20]実際じっさい被害ひがいはこのなんばいにものぼるとられている[6]。2,000とうから6,000とう死亡しぼうしたとられている。それでも、350とうほどは救出きゅうしゅつされ、5ヶ月かげつほどのあいだリハビリをけている[21]精神せいしん安定あんてい治療ちりょうけ、毛皮けがわあらい、手入ていれをけた。あぶらんだラッコにたいしては、活性炭かっせいたん投与とうよされた。もっとも手当てあてをけた350とうのうちたすかったのは200とうほどであり、おおくははなされたのちんでしまっている[21]。この事故じこすくわれたラッコのかずすくなかったが、あぶら被害ひがいにあったラッコの治療ちりょうほう進歩しんぽしたのがせめてものすくいである。エクソン・バルディーズごう原油げんゆ流出りゅうしゅつ信託しんたく評議ひょうぎかいによる2006ねん報告ほうこくしょによると、ラッコはこの事故じこ影響えいきょういまだにけているたねのひとつとされている[22]

現在げんざい状況じょうきょう[編集へんしゅう]

2006ねん現在げんざい、アラスカには73,000とうのラッコがいるとられている。2005ねんなつ、アメリカの絶滅ぜつめつ危機ききひんするたね保存ほぞんかんする法律ほうりつ(絶滅ぜつめつ危惧きぐしゅほう)により、ラッコは「西南せいなんアラスカ地域ちいき個体こたいぐん」のうちの「絶滅ぜつめつ危惧きぐしゅ」に認定にんていされている[23]。1ねん以上いじょうアリゾナ本拠ほんきょ生物せいぶつ多様たようせいセンターは、米国べいこく魚類ぎょるい野生やせい生物せいぶつきょく (United States Fish and Wildlife Serviceたいし、同局どうきょく絶滅ぜつめつ危惧きぐしゅほうさだめられた「生息せいそく保護ほご」をおこなわなかったとして、訴訟そしょうこしている[24]

ブリティッシュコロンビア、ワシントン、オレゴン[編集へんしゅう]

1969ねんから1972ねんにかけて、89とうのラッコがながされて、あるいははこばれて、カナダブリティッシュコロンビアしゅうバンクーバーとう西海岸にしかいがんていた。それが順調じゅんちょうえて、あるいは人間にんげん保護ほごけて、2004ねんには3,000とう以上いじょうとなり、生息せいそく同島どうとうトフィーノ (enからケープ・ スコット州立しゅうりつ公園こうえん (enにまでひろがっている[25]。しかしながら、ラッコを人工じんこうてき保護ほごすることについて、カナダの先住民せんじゅうみんぞくであるファースト・ネーション意見いけん調しらべていなかった。人工じんこうてきうつされたラッコは、生態せいたいけいをかつての姿すがた改善かいぜんした。しかし、ラッコが甲殻こうかくるいやウニを捕食ほしょくしたため、地元じもと先住民せんじゅうみんぞくはラッコの復活ふっかつをよくおもわなかった[26]

1989ねん、ブリティッシュコロンビア海岸かいがん中央ちゅうおうに、ラッコの生息せいそく地域ちいき発見はっけんされた。2004ねんに300とう確認かくにんされている。この生息せいそく地域ちいきは、生息せいそく地域ちいきとは孤立こりつしており、ここにむラッコが人工じんこう移植いしょくしたラッコがながんだものなのか、あるいはかつての狩猟しゅりょうのこりであるのかはよくかっていない[25]。ラッコはカナダでは絶滅ぜつめつ危惧きぐしゅほう(SARA)で保護ほごされている[27]。ただし2007ねん4がつカナダ野生やせい動物どうぶつ絶滅ぜつめつ危惧きぐしゅ現況げんきょう委員いいんかい (enは、この地域ちいきでのラッコの繁殖はんしょくりょくつよいことを考慮こうりょして、SARAほうなかでの位置いちづけを「絶滅ぜつめつ危惧きぐしゅ」(threatened)から「特別とくべつ懸念けねんしゅ」(special concern)に格下かくさげした[28]

1969ねん1970ねんに59とうのラッコがアムチトカとうからワシントンしゅううつされ、2000ねんには504とう2004ねんには743とう確認かくにんされている[8]どうしゅう1981ねん、ラッコを絶滅ぜつめつ危惧きぐしゅ (endangered species) に指定していしている[8]1970年代ねんだい、93とうのラッコがオレゴンしゅう海岸かいがんうつされたが、1980年代ねんだい初頭しょとうにはいなくなっている。げたのかんだのかはかっていない[15]

カリフォルニア[編集へんしゅう]

としとともにひろがるカリフォルニアラッコの生息せいそく地域ちいき

カリフォルニアはカリフォルニアラッコ(Enhydra lutris nereis)がある程度ていどまとまって生息せいそくする唯一ゆいいつ地域ちいきである。1938ねん望遠鏡ぼうえんきょうのテストをしていたひとが、カリフォルニアビッグ・サー (Big Surに50とうほどのラッコのれがいることに気付きづいた[29]。このラッコは環境かんきょう保護ほごけたため、周辺しゅうへん繁殖はんしょくした[20]。もっとも、地区ちくくらべると繁殖はんしょく速度そくどおそく、どう海域かいいきカリフォルニアアシカゼニガタアザラシくらべてもおそ[30]1914ねんから1984ねんにかけての平均へいきん増加ぞうかりつはわずか5%ほどであり、1990年代ねんだいになると増加ぞうかまり、減少げんしょう傾向けいこうられる[31]。カリフォルニアラッコは1977ねん絶滅ぜつめつ危機ききひんするたね保存ほぞんかんする法律ほうりつ(ESA)の絶滅ぜつめつ危惧きぐしゅ(threatened subspecies)に指定していされた。2007ねんはる調査ちょうさによると、カリフォルニアにむラッコは3,000をわずかにえており、いまでも増加ぞうか傾向けいこうにあるが、だい規模きぼ狩猟しゅりょうまえの16,000とうにはたっしていない[32]。それでも3ねん以上いじょうあいだ3,090とう連続れんぞくして確認かくにんされているため、いまではこの亜種あしゅ絶滅ぜつめつ危惧きぐしゅからはずされている[32]

ラッコの繁殖はんしょく魚介ぎょかいるい減少げんしょう原因げんいんとなる。1980年代ねんだいはじめ、米国べいこく魚類ぎょるい野生やせい生物せいぶつきょく (enはメキシコとの国境こっきょう付近ふきんのコンセプションみさき (Point Conceptionに「ラッコ不在ふざい海域かいいき(otter-free zone)」をもうけて、この矛盾むじゅん解消かいしょうしようとこころみた。すなわちラッコ繁殖はんしょくをサンニコラスとう (San Nicolas Island限定げんていし、ここからはなれたところにラッコがいた場合ばあいはここにもどす、というものである。しかし「ラッコ不在ふざい海域かいいき」にあらわれるラッコがなんひゃくといたため、この政策せいさくいまでは断念だんねんされている[33]

モントレーわん水族館すいぞくかんMonterey_Bay_Aquarium)によると、保護ほごした子供こどものラッコを自然しぜんかえした1ねん生存せいぞんりつは、ひとそだてられた場合ばあいやく10%、2001ねんからはじめためすラッコにたく場合ばあいやく3ぶんの2。

生息せいそくすう安定あんていせい[編集へんしゅう]

カリフォルニアラッコの減少げんしょう問題もんだいは、まだわったわけではない。カリフォルニアにおけるラッコの出生しゅっしょうりつ地域ちいきよりもおそいわけではないのに、ラッコのかずえないのは、その死亡しぼうりつたかいためである。[30]異常いじょうなまでにたか死亡しぼうりつには、成獣せいじゅうふくまれており、とりわけメスがおおいことが報告ほうこくされている[32]死因しいんのトップは病気びょうきであり、ついで水質すいしつ汚染おせんさかなもうらえられての溺死できしであるとされる[34]

カリフォルニアでは最近さいきん繁殖はんしょく年齢ねんれいのラッコの死亡しぼうりつたか

んだラッコの死骸しがいのほとんどは海中かいちゅうしずんでしまうが、海岸かいがんげられた死体したい解剖かいぼうして死因しいん調しらべられている。その死因しいんは、原生げんせい生物せいぶつによる脳炎のうえんかぎあたま動物どうぶつ寄生きせい、サメによる捕食ほしょく心臓しんぞうびょうである[30]病死びょうしは63.8%にのぼり、そのほとんどは寄生虫きせいちゅうによる。とくトキソプラズマ脳炎のうえん感染かんせんしている個体こたいおおく、心臓しんぞうびょうんだもののなかにもその原因げんいんがトキソプラズマによるものである可能かのうせいがある[30]。また、サメにおそわれやすくなったのも、トキソプラズマ脳炎のうえんによる異常いじょう行動こうどう原因げんいんである可能かのうせいもある[30]

ある研究けんきゅうによると、きているラッコも42%がトキソプラズマが感染かんせんしているとされる[35]。トキソプラズマ感染かんせんはラッコにとって致命ちめいてきとなることがおおく、野良猫のらねこねこから感染かんせんすることがおおい。すなわちねこ排泄はいせつぶつちゅうのトキソプラズマが廃水はいすいつうじてうみながみ、ラッコに感染かんせんする[36]

カリフォルニアのラッコの死因しいんおおくが病死びょうしであるのはあきらかだが、なぜかれらが地域ちいきよりも病気びょうきにかかりやすいのかはかっていない。いわゆるボトルネック効果こうかにより、遺伝いでんてき多様たようせいうしなわれたからとするせつもある。

注釈ちゅうしゃく出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ VanBlaricom, p. 53
  2. ^ Nickerson, pp. 47-48
  3. ^ VanBlaricom p. 69
  4. ^ Estes (2000). "Enhydra lutris". IUCN Red List of Threatened Species. Version 2006. International Union for Conservation of Nature. 2006ねん5がつ11にち閲覧えつらん
  5. ^ a b c Sea otter AquaFact file”. en:Vancouver Aquarium Marine Science Centre. 2007ねん12月5にち閲覧えつらん
  6. ^ a b Reitherman, Bruce (Producer and photographer). Waddlers and Paddlers: A Sea Otter Story - Warm Hearts & Cold Water (Documentary). U.S.A.: PBS. {{cite AV media}}: 不明ふめい引数ひきすう|year2=無視むしされます。 (説明せつめい)
  7. ^ Sea Otter”. British Columbia Ministry of Environment, Lands and Parks (1993ねん10がつ). 2008ねん2がつ16にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2007ねん12月13にち閲覧えつらん
  8. ^ a b c Final Washington State Sea Otter Recovery Plan”. Washington Department of Fish and Wildlife. 2007ねん11月29にち閲覧えつらん
  9. ^ National Marine Sanctuary Frequently Asked Questions
  10. ^ Ecoscenario: Monterey Bay National Marine Sanctuary Archived 2011ねん4がつ10日とおか, at the Wayback Machine.
  11. ^ City of Monterey | Harbor | Monterey Bay National Marine Sanctuary
  12. ^ Olympic Coast National Marine Sanctuary History
  13. ^ a b c d Kornev S.I., Korneva S.M. (2004) Population dynamics and present status of sea otters (Enhydra lutris) of the Kuril Islands and southern Kamchatka. Marine Mammals of the Holarctic, Proceedings of 2004 conference. p. 273-278.
  14. ^ Silverstein, p. 43
  15. ^ a b Silverstein, p. 44
  16. ^ Nickerson, p. 46
  17. ^ a b Aleutian Sea Otter population falls 70% in eight years”. CNN (2000ねん7がつ6にち). 2006ねん5がつ23にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2007ねん12月4にち閲覧えつらん
  18. ^ a b Schrope, Mark (15 February 2007). “Food chains: Killer in the kelp”. Nature 445: 703–705. doi:10.1038/445703a. http://naturereprints.com/nature/journal/v445/n7129/full/445703a.html. 
  19. ^ Chanut, Françoise (2005ねん5がつ9にち). “Lacking a decent meal, killer whales reach for the popcorn”. Currents online. カリフォルニア大学だいがくサンタクルーズこう. 2007ねん12月4にち閲覧えつらん
  20. ^ a b Sea Otters at Risk”. Monterey Bay Aquarium. 2008ねん5がつ18にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2007ねん12月5にち閲覧えつらん
  21. ^ a b Silverstein, p. 55
  22. ^ “Damage of Exxon Valdez endures”. Associated Press. (2007ねん1がつ31にち). http://www.usatoday.com/news/nation/2007-01-31-exxon-alaska_x.htm 2001ねん12月25にち閲覧えつらん 
  23. ^ Sea Otters – Southwest Alaska Sea Otter Recovery Team (SWAKSORT)”. U.S. Fish and Wildlife Service – Alaska. 2008ねん2がつ6にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2008ねん1がつ15にち閲覧えつらん
  24. ^ Pemberton, Mary (Tuesday, December 19, 2006; 10:27 PM). “Lawsuit Seeks to Sheild (sic) Alaska Sea Otter”. The Washington Post. http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/12/19/AR2006121901355.html 2008ねん1がつ5にち閲覧えつらん 
  25. ^ a b Barrett-Lennard, Lance (2004ねん10がつ20日はつか). “British Columbia: Sea Otter Research Expedition”. Vancouver Aquarium. 2007ねん12月11にち閲覧えつらん
  26. ^ Okerlund, Lana (2007ねん10がつ4にち). “Too Many Sea Otters?”. 2007ねん1がつ15にち閲覧えつらん
  27. ^ Aquatic Species at Risk - Species Profile - Sea Otter”. 水産すいさん海洋かいようしょう (カナダ). 2007ねん11月29にち閲覧えつらん
  28. ^ Okerlund, Lana (2007ねん10がつ5にち). “Taking Aim at Otters”. 2007ねん1がつ15にち閲覧えつらん
  29. ^ Silverstein, p. 41
  30. ^ a b c d e Kreuder, C. et al (2003). “Patterns of Mortality in Southern Sea Otters (Enhydra Lutris Nereis) from 1998 - 2001”. Journal of Wildlife Diseases 39 (3): 495–509. 
  31. ^ Sea Otters: Species Description”. Alaska SeaLife Center. 2007ねん1がつ15にち閲覧えつらん
  32. ^ a b c Leff, Lisa (2007ねん6がつ15にち). “California otters rebound, but remain at risk”. Associated Press. http://www.mailtribune.com/apps/pbcs.dll/article?AID=/20070615/LIFE/706150317 2007ねん12月25にち閲覧えつらん 
  33. ^ “Balance sought in sea otter conflict”. CNN. (1999ねん3がつ24にち). オリジナルの2001ねん4がつ24にち時点じてんにおけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20010424094953/http://www.cnn.com/NATURE/9903/24/otters.enn/ 2008ねん1がつ25にち閲覧えつらん 
  34. ^ VanBlaricom, p. 62
  35. ^ “Parasite in cats killing sea otters”. NOAA magazine (NOAA). (2003ねん1がつ21にち). http://www.magazine.noaa.gov/stories/mag72.htm 2007ねん11月24にち閲覧えつらん 
  36. ^ “Monterey Bay’s sea otter sleuth”. Via Magazine. http://www.viamagazine.com/top_stories/articles/seaotter_savior07.asp 2007ねん12月5にち閲覧えつらん 

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • (英語えいごばん) Kenyon, Karl W. (1969). The Sea Otter in the Eastern Pacific Ocean. Washington, D.C.: U.S. Bureau of Sport Fisheries and Wildlife 
  • (英語えいごばん) Love, John A. (1992). Sea Otters. Golden, Colorado: Fulcrum Publishing. ISBN 1-55591-123-4 
  • (英語えいごばん) Nickerson, Roy (1989). Sea Otters, a Natural History and Guide. San Francisco, CA: Chronicle Books. ISBN 0-87701-567-8 
  • (英語えいごばん) Silverstein, Alvin; Silverstein, Virginia and Robert (1995). The Sea Otter. Brookfield, Connecticut: The Millbrook Press, Inc.. ISBN 1-56294-418-5 
  • (英語えいごばん) VanBlaricom, Glenn R. (2001). Sea Otters. Stillwater, MN: Voyageur Press Inc.. ISBN 0-89658-562-X 

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]