アスリート

アスリート（Athlete）は、スポーツ、他たの身体しんたい運動うんどうに習熟しゅうじゅくしている人ひとである。スポーツ、身体しんたい的てき強つよさ、俊敏しゅんびん性せい、スタミナを要求ようきゅうされるゲームについてトレーニングを積つんだり、技わざに優すぐれている人ひとのことである。スポーツマン（Sportsman）、スポーツ選手せんしゅ（スポーツせんしゅ）、運動うんどう選手せんしゅ（うんどうせんしゅ）とも呼よばれている。

概説がいせつ

オックスフォード辞典じてんでは「スポーツや、他たの形式けいしきの身体しんたい運動うんどうに習熟しゅうじゅくしている人ひと」という定義ていぎを、メリアム＝ウェブスター辞典じてんは「スポーツや、身体しんたい的てき強つよさや俊敏しゅんびん性せいやスタミナを要求ようきゅうされるゲームについてトレーニングを積つんだり技わざに優すぐれている人ひとのこと」という定義ていぎを、それぞれ掲載けいさいしている。

アスリートという言葉ことばは、「競技きょうぎ会かいやコンテストの参加さんか者しゃ」を意味いみするギリシャ語ごの「άθλητὴς（athlētēs アスレーテース）」に由来ゆらいしている。この語かたりは「競技きょうぎ」を意味いみする「ἂθλος （áthlos アスロス）」「ἂθしーたλらむだοおみくろんνにゅー （áthlon アスロン）」からの派生はせい語ごである。

イギリス英語えいごでは、athleteには「競技きょうぎ的てきトラック&フィールド・イベントに参加さんかする人ひと」（A person who takes part in competitive track and field events (athletics)という用法ようほうも（2番目ばんめの用法ようほうとして）ある。大辞泉だいじせんでは、主しゅとして陸上りくじょう競技きょうぎ、水泳すいえい、球技きゅうぎなどの選手せんしゅについて言いう、との説明せつめい文ぶんを掲載けいさいしている。

日本にっぽんでは「スポーツ選手せんしゅ」の語かたりが一般いっぱん的てきであったが、1990年代ねんだい後半こうはんから英語えいごの「アスリート」が使つかわれることが増ふえた。当初とうしょ、アスリートは「陸上りくじょう競技きょうぎ選手せんしゅ」の意味いみで用もちいられたが、後のちに「プロ／アマ」という文脈ぶんみゃくでの使用しよう、そして「障さわがい者しゃ」「プロ選手せんしゅ一般いっぱん」「国際こくさい的てきに活躍かつやくするプロとアマ」「スポーツ愛好あいこう家か」全般ぜんぱんを含ふくめた使用しようへと拡大かくだいしていった。この変遷へんせんには、プロとアマの競技きょうぎの平等びょうどう化か、障さわがい者しゃと健常けんじょう者しゃの競技きょうぎにおける平等びょうどう化か、身体しんたいの自己じこ管理かんり、スポーツ権けんの向上こうじょうや拡大かくだいおよび自己じこ表現ひょうげんとしてのスポーツといった新あたらしいスポーツ観かんが反映はんえいされている。

アマチュアとプロ

アスリートや競技きょうぎについて「アマチュア」と言いう場合ばあい、愛好あいこう家か、愛あいする人ひとという意味いみで、もともと基本きほん的てきには、競技きょうぎ以外いがいにしっかり本職ほんしょくをもっていて、競技きょうぎを生活せいかつの糧かてを得える手段しゅだんに使つかわず純粋じゅんすいにそれを愛好あいこうする人ひとのことを指さした。それに対たいして「professional プロフェッショナル」（略りゃくして「プロ」）とは、競技きょうぎに参加さんかすることを職業しょくぎょうとし、それで生活せいかつの糧かてを得える（お金かねを得える）人にんのことを指さす。

詳細しょうさいは「アマチュアリズム」および「アマチュア」を参照さんしょう

プロアスリートであれば、必かならず金銭きんせん的てき対価たいかを得えられるわけではない。『フォーブス』が発表はっぴょうする世界せかいのスポーツ選手せんしゅ上位じょうい50人にんの年収ねんしゅう順じゅんリスト（スポーツ選手せんしゅ長者ちょうじゃ番付ばんづけ）では、アメリカンフットボール・バスケットボール・サッカーのプロが8割わり近ちかくを占しめており、同おなじプロでも収入しゅうにゅうに多寡たかがあることがうかがえる。

日本にっぽんのスポーツイベント市場いちば規模きぼは、競馬けいば（40％）・競艇きょうてい（16.4％）・競輪けいりん（12.9％）・野球やきゅう（9.6％）・サッカー（5.9％）・ゴルフ（3.1％）となっており、一部いちぶのスポーツを除のぞいた市場いちば規模きぼは小ちいさい。プロゴルファーの上田うえだ桃子ももこが、プロアスリートとして収入しゅうにゅうを得えられないスポーツを「先さきがないスポーツ」と発言はつげんしたり、武井たけい壮たけしが「業界ぎょうかいのシステムとして給与きゅうよ体系たいけいがしっかりしている競技きょうぎ以外いがいの、日本一にっぽんいちになってもサラリーマン程度ていどのお給料きゅうりょうしかもらえない競技きょうぎだったら、僕ぼくはその競技きょうぎの協会きょうかいとか業界ぎょうかいが成熟せいじゅくするのを待まっていても、自分じぶんの選手せんしゅ人生じんせいには間まに合あわないだろうな、と思おもっています」 と発言はつげんしたりもしている。

職業しょくぎょう人生じんせいの短みじかさと対策たいさく

一般いっぱんに、プロのスポーツ競技きょうぎ者しゃの職業しょくぎょう人生じんせいは、他たの一般いっぱん的てきな職業しょくぎょうと比較ひかくして非常ひじょうに短期間たんきかんとされる。例たとえば、日本にっぽんのプロ野球やきゅう選手せんしゅの場合ばあい、平均へいきん選手せんしゅ寿命じゅみょうは（わずか）約やく9年ねんであり「平均へいきん引退いんたい年齢ねんれい」は約やく29歳さいである。また、Jリーガー(J1、J2、J3の選手せんしゅ）では、2013年ねん2月がつの時点じてんで1142人にんいるが、毎年まいとし100人にん以上いじょうが新規しんき契約けいやくされ、ほぼ同数どうすうが契約けいやく解除かいじょされており、統計とうけい的てきにはJリーガーの50〜60%程度ていどが入団にゅうだん3年ねん以内いないに引退いんたいしている。Jリーガーに対たいしてアンケート調査ちょうさを行おこなったところ、90%が「引退いんたい後ごの人生じんせいに不安ふあんを感かんじている」と回答かいとうした。

武井たけい壮たけしはプロスポーツを志こころざした時点じてんで、それぞれのスポーツの収入しゅうにゅうや待遇たいぐう、その後ごの生活せいかつの選択肢せんたくしなどを考慮こうりょすべきであり、「そんな事ことも知しらずにスポーツに中高なかだか大だいの10年ねんを費ついやす無計画むけいかくはダメ」と警鐘けいしょうを鳴ならしている。

スポーツ社会しゃかい学がくでは、アスリートはリスクの高たかい職業しょくぎょうであるとされている。井上いのうえ雅雄まさおは「プロスポーツ選手せんしゅの専門せんもんスキルは職業しょくぎょう特殊とくしゅ的てきなものであり、セカンドキャリアを準備じゅんびするための職業しょくぎょう訓練くんれんの緊要きんよう性せいは一層いっそう高たかい」と指摘してきし、一部いちぶのチームで行おこなわれているセカンドキャリアの準備じゅんびの試こころみを高たかく評価ひょうかした。また井上いのうえは「身体しんたいと精神せいしんと感情かんじょうとを自己じこ制御せいぎょし、刻々こくこくと変化へんかする状況じょうきょうをとらえて瞬時しゅんじに反応はんのうし行動こうどうするという能力のうりょくは、スポーツ選手せんしゅのいわばもう一ひとつのスキルとも言いえる」「これは実じつはいかなる仕事しごとにも適用てきようしうるものとしてすぐれて汎用はんよう的てきである」と述のべた。一方いっぽうで、アスリートの社会しゃかい人じん基礎きそ力りょくの欠如けつじょや知的ちてき基礎きそ能力のうりょくの低ひくさが指摘してきされることも多おおい。

引退いんたい後ごの人生じんせい

引退いんたいした選手せんしゅのごく一部いちぶは当該とうがいスポーツのコーチや監督かんとくを務つとめるが、ポストに就つける人数にんずうは非常ひじょうに少すくなく、大だい多数たすうの選手せんしゅは、それまでの競技きょうぎとは関係かんけいの無ない、異ことなった職業しょくぎょう人生じんせいを歩あゆまざるを得えない。

笹川ささかわスポーツ財団ざいだんによる調査ちょうさでは、引退いんたい後ごのオリンピアンの正規せいき雇用こよう率りつは55.7％、年収ねんしゅうは300万まん円えん以下いかが最多さいたであった。

プロ野球やきゅう選手せんしゅの場合ばあい、「業界ぎょうかいで見みると、不動産ふどうさん、不動産ふどうさん投資とうし販売はんばい、保険ほけん営業えいぎょう、サービス系けいの営業えいぎょうが多おおい」と言いう。実業じつぎょう団だんの選手せんしゅであっても、競技きょうぎ中心ちゅうしんの生活せいかつを送おくったために社業しゃぎょうについて行いけない場合ばあいがある。

また、体力たいりょくを極端きょくたんに増強ぞうきょうさせるため、一般人いっぱんじんと比くらべて寿命じゅみょうが短みじかい問題もんだいも挙あげられる。ジャイアント馬場ばばのような2m以上いじょうの選手せんしゅ、力士りきしのようなBMIが非常ひじょうに高たかい選手せんしゅは50代だい、60代だいで死去しきょすることも珍めずらしくなく、一部いちぶの団体だんたいや協会きょうかいでは食生活しょくせいかつや指導しどうの体制たいせいなどを見直みなおすケースも挙あげられる。

対策たいさく

米国べいこくのメジャーリーグベースボールなどでは、現役げんえきの選手せんしゅに対たいして（オフシーズンなどに）、選手せんしゅ引退いんたい後ごの人生じんせいに役立やくだつような職業しょくぎょう訓練くんれんを実施じっししている。選手せんしゅらは引退いんたい後ご、建築けんちくに従事じゅうじする大工だいく、自動車じどうしゃ販売はんばい業ぎょうでのカーディーラーの営業えいぎょうマンなどへと転職てんしょくするなど、（スポーツ選手せんしゅやコーチ以外いがいの）様々さまざまな職業しょくぎょう人生じんせいを歩あゆむ方ほうが一般いっぱん的てきであり、現役げんえき時代じだいの職業しょくぎょう訓練くんれんが効果こうかを発揮はっきする。ただし、2009年ねんのスポーツ・イラストレイテッド誌しによれば、NBAプレイヤーは現役げんえき時代じだいに大変たいへんな高こう収入しゅうにゅうであったにもかかわらず60％が引退いんたいから5年ねん以内いないに自己じこ破産はさん、NFL選手せんしゅの78%は引退いんたい後ご2年ねん以内いないに破産はさん、または経済けいざい的てきに困窮こんきゅうするとされる。

横浜よこはまDeNAベイスターズ初代しょだい代表だいひょう取締役とりしまりやく社長しゃちょうの池田いけだ純じゅんは「スポーツで結果けっかを出だせず突然とつぜんクビになって、社会しゃかいとのつながりがなくなったかのような孤立こりつ感かん、孤独こどく感かんを覚おぼえながらセカンドキャリアをスタートさせることになってしまうことが多おおいのも現実げんじつです」「机つくえに向むかって勉強べんきょうする、困こまったときに本ほんを読よむ、文章ぶんしょうを書かく、しっかりと言葉ことばで表現ひょうげんするなど、人生じんせいにおける学まなびの基礎きそが、なかなか身みについていないプロアスリートも多おおい」と指摘してきし、学生がくせいアスリートの段階だんかいから教育きょういく環境かんきょうを整備せいびすることを提唱ていしょうしている。

日本にっぽんサッカー界かいでは、2002年ねんにJリーグキャリアサポートセンター（JCSC）が設立せつりつされ、キャリアカウンセリングやキャリアデザイン支援しえんを行おこなっているが、職業しょくぎょう斡旋あっせん機能きのうの脆弱ぜいじゃくさや現役げんえき選手せんしゅのキャリアデザイン教育きょういくの不備ふびが指摘してきされている。

日本にっぽん野球やきゅう界かいでは、選手せんしゅの将来しょうらいのための職業しょくぎょう訓練くんれんはほぼ実施じっしされていない。日本にっぽん野球やきゅう機構きこうのアンケート結果けっか によれば、「プロ野球やきゅう引退いんたい後ごに就つきたい職業しょくぎょう」の1位いは「一般いっぱん企業きぎょうの会社かいしゃ員いん」となっているが、そのための具体ぐたい的てきな支援しえんは行おこなわれていない。2014年ねん12月、プロ野球やきゅう選手せんしゅ会かいが中心ちゅうしんになって、野球やきゅう選手せんしゅの再さい就職しゅうしょくを支援しえんするためのインターネット上うえのウェブサイトが立たち上あげられた。

脚注きゃくちゅう

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