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ピリジン - Wikipedia

ピリジン (pyridine) は化学かがくしき C5H5N、分子ぶんしりょう 79.10 の複素ふくそたまきしき芳香ほうこうぞく化合かごうぶつのアミンの一種いっしゅである。ベンゼンふくまれる6つの C−H 構造こうぞうのうち1つが窒素ちっそ原子げんしわった構造こうぞうをもつ。融点ゆうてん −41.6℃、沸点ふってん 115.2℃。 くさてたさかなのようなにおいをはっする液体えきたいである。

ピリジン
識別しきべつ情報じょうほう
CAS登録とうろく番号ばんごう 110-86-1 チェック
PubChem 1049
ChemSpider 1020 チェック
UNII NH9L3PP67S チェック
EC番号ばんごう 203-809-9
KEGG C00747 チェック
ChEMBL CHEMBL266158 チェック
特性とくせい
化学かがくしき C5H5N
モル質量しつりょう 79.1 g mol−1
外観がいかん 無色むしょく液体えきたい
密度みつど 0.9819 g/cm3, 液体えきたい
融点ゆうてん

-41.6 °C, 232 K, -43 °F

沸点ふってん

115.2 °C, 388 K, 239 °F

みずへの溶解ようかい 混和こんわせい
蒸気じょうきあつ 18 mmHg
さん解離かいり定数ていすう pKa 5.25,[1][2] (C5H5NH+酸性さんせい)
屈折くっせつりつ (nD) 1.50920 (20 °C)
ねばたび 0.88 mPa s
双極そうきょくモーメント 2.2 D[3]
危険きけんせい
EU分類ぶんるい Flammable (F)
Harmful (Xn)
NFPA 704
3
3
0
Rフレーズ R20 R21 R22 R34 R36 R38
引火いんかてん 21 °C , 294 K
関連かんれんする物質ぶっしつ
関連かんれんするアミン ピコリン
キノリン
関連かんれん物質ぶっしつ アニリン
ピリミジン
ピペリジン
出典しゅってん
ICSC
特記とっきなき場合ばあい、データは常温じょうおん (25 °C)・つねあつ (100 kPa) におけるものである。

石油せきゆふくまれるほか、誘導体ゆうどうたい(ピリジンアルカロイド)が植物しょくぶつ広範こうはんふくまれる。ニコチンピリドキシンなどもピリジンたまきつ。酸化さんかざいとしてられるクロロクロムさんピリジニウム (PCC) の原料げんりょうとして重要じゅうよう。また有機ゆうき合成ごうせいにおいて溶媒ようばいとしてもちいられる。

消防しょうぼうほうによる危険きけんぶつだいよんるい 引火いんかせい液体えきたいだいいち石油せきゆるい水溶すいようせい液体えきたい)(指定してい数量すうりょう:400L))に指定していされており、一定いっていりょう以上いじょう貯蔵ちょぞうには消防署しょうぼうしょへの届出とどけで必要ひつようである。

人間にんげん皮膚ひふ接触せっしょくするとメラニン反応はんのうこしくろ色素しきそ沈着ちんちゃくのこすため保護ほご手袋てぶくろでのあつかいが必要ひつようである。

物性ぶっせい

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びんはいったピリジン

ベンゼンとよく構造こうぞうち、ピリジンの窒素ちっそ原子げんしsp2混成こんせいしている。窒素ちっそ原子げんし芳香ほうこうぞくπぱい共役きょうやくけいに 1電子でんし提供ていきょうしており、炭素たんそから提供ていきょうされた 5電子でんしをあわせると 6電子でんしとなりヒュッケルそくたすため、芳香ほうこうぞくとしての性質せいしつしめす。

ピリジンはベンゼンとおなじように極性きょくせい溶媒ようばい容易よういけるが、極性きょくせい溶媒ようばいであるみずにもける。これはピリジンの窒素ちっそ原子げんしみず水素すいそ結合けつごう形成けいせいして溶媒ようばいするためである。 窒素ちっそ炭素たんそくらべて電気でんき陰性いんせいたかいため、分子ぶんしない窒素ちっそ原子げんしがわずかに電荷でんかを、のこりの部分ぶぶん電荷でんか極性きょくせいしょうじていることも、極性きょくせい溶媒ようばいけるおおきな要因よういんである。

ピリジンはアミンるい同様どうよう塩基えんきせいしめす。しかしその塩基えんきせいアミンくらべてきわめてよわい。これは窒素ちっそ原子げんし混成こんせいによるものである。

反応はんのう

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ピリジンはさん反応はんのうしてしおつくる。これはピリジニウムしお総称そうしょうされる。塩化えんか水素すいそとは以下いかのように反応はんのう塩化えんかピリジニウムとなる。

 

もとめ電子でんし置換ちかん反応はんのう

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ピリジンは芳香ほうこうぞくでありながら、ニトロアシルなどのもとめ電子でんし置換ちかん反応はんのうけにくい。そのためにはつよさん触媒しょくばい高温こうおん条件じょうけん必要ひつようになり、おさむりつひくいことがおおい。この理由りゆうは、窒素ちっそ電気でんき陰性いんせいのためにたまきがわずかに電子でんし不足ふそくであることと、もとめ電子でんし置換ちかん反応はんのう通常つうじょう酸性さんせい条件下じょうけんかおこなわれるので、ピリジン窒素ちっそがプロトンけてたまき電子でんし密度みつどがさらに低下ていかするためである。

置換ちかん反応はんのうおもに C-3こる。これはイオン中間なかまたいであるピリジニウムイオン電荷でんかが C-2,4局在きょくざいしており、それらの位置いちもとめ電子でんしてき攻撃こうげきけにくいためである。

もとめかく置換ちかん反応はんのう

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もとめ電子でんし置換ちかん反応はんのうくらべ、もとめかく置換ちかん反応はんのうこりやすい。たとえば、2-クロロピリジンや2-ブロモピリジンは酸性さんせい条件じょうけんでヨウ化物ばけものイオンを作用さようさせて、2-ヨードピリジンにえることができる[4]さん付加ふかによりたまき電荷でんかび、もとめかくざい攻撃こうげきけやすくなるためである。

ラジカル反応はんのう

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ピリジンは一連いちれんラジカル反応はんのうこす。これはりょうによるビピリジンの形成けいせい使つかわれる。金属きんぞくナトリウムまたはラネーニッケル使つかったピリジンのラジカルりょうにより4,4'-ビピリジン[5]または2,2'-ビピリジン英語えいごばん[6]選択せんたくてきられる。これらは化学かがく産業さんぎょうにおける重要じゅうよう前駆ぜんくたい試薬しやくである。フリーラジカルが関与かんよする人名じんめい反応はんのうの1つがミニスキ反応はんのうである。この反応はんのう硫酸りゅうさん酸性さんせい条件じょうけんでピリジンとピバルさん硝酸銀しょうさんぎんアンモニウムしお反応はんのうさせて、97%のおさむりつで2-tert-ブチルピリジンを生成せいせいすることができる[7]

ピリジンまたはその誘導体ゆうどうたい過酸化水素かさんかすいそカルボンさんなどで酸化さんかすると、たまき窒素ちっそじょう酸素さんそ原子げんしむすびついたピリジン N-オキシド生成せいせいする[8]。ピリジン N-オキシドにたいしてはこんさんによるニトロなどのもとめ電子でんし置換ちかん反応はんのうおこなうことができ、それらは4へと選択せんたくてきこる。ピリジン窒素ちっそじょう酸素さんそさんしゅうリンなどによりのち除去じょきょすることができるため、ピリジンの 4-ニトロ化物ばけもの合成ごうせいしたい場合ばあいN-オキシドをとお経路けいろ有力ゆうりょくである。

ピリジンたまきゆうする化合かごうぶつ

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有機ゆうき反応はんのうためしざい

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天然てんねんぶつ

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農薬のうやく

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殺菌さっきん消毒しょうどくやく

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関連かんれん項目こうもく

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脚注きゃくちゅう

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  1. ^ Linnell, Robert (1960). Journal of Organic Chemistry 25: 290. doi:10.1021/jo01072a623. 
  2. ^ Pearson, Ralph G.; Williams, Forrest V. (1953). Journal of the American Chemical Society 75: 3073. doi:10.1021/ja01109a008. 
  3. ^ RÖMPP Online – Version 3.5. Stuttgart: Georg Thieme. (2009) 
  4. ^ れい: Schlosser, M.; Cottet, F. "Silyl-Mediated Halogen/Halogen Displacement in Pyridines and Other Heterocycles." Eur. J. Org. Chem. 2002, 4181–4184. doi:10.1002/1099-0690(200212)2002:24<4181::AID-EJOC4181>3.0.CO;2-M
  5. ^ Badger, G; Sasse, W (1963). “The Action of Metal Catalysts on Pyridines”. Advances in Heterocyclic Chemistry. Advances in Heterocyclic Chemistry. 2. pp. 179. doi:10.1016/S0065-2725(08)60749-7. ISBN 9780120206025. PMID 14279523 
  6. ^ Sasse, W. H. F. (1966). “2,2′-bipyridine”. Organic Syntheses 46: 5–8. doi:10.1002/0471264180.os046.02. ISBN 0471264229. オリジナルの21 January 2012時点じてんにおけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20120121055946/http://www.orgsyn.org/orgsyn/pdfs/CV5P0102.pdf. 
  7. ^ Joule, J. A.; Mills, K. (2010). Heterocyclic Chemistry (5th ed.). Chichester: Blackwell Publishing. pp. 125–141. ISBN 978-1-4051-3300-5. https://books.google.com/books?id=cwe-Ebc64bkC&printsec=frontcover 
  8. ^ Ochiai, E. "Recent Japanese work on the chemistry of pyridine 1-oxide and related compounds." J. Org. Chem. 1953, 18, 534–551. DOI: 10.1021/jo01133a010
  9. ^ Woman Health: Female Body Fluids” (英語えいご). 2007ねん10がつ18にち閲覧えつらん