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ヘンリー・フォード - Wikipedia
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ヘンリー・フォード

アメリカの大だい実業じつぎょう家か
曖昧さ回避 その他たの名称めいしょうについては「ヘンリー・フォード (曖昧あいまいさ回避かいひ)」をご覧らんください。

ヘンリー・フォード（Henry Ford、1863年ねん7月がつ30日にち - 1947年ねん4月がつ7日にち）は、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの企業きぎょう家か。自動車じどうしゃ会社かいしゃフォード・モーターの創設そうせつ者しゃであり、工業こうぎょう製品せいひんの製造せいぞうにおけるライン生産せいさん方式ほうしきによる大量たいりょう生産せいさん技術ぎじゅつ開発かいはつの後援こうえん者しゃである。自動車じどうしゃ王おうと称となえられた。

ヘンリー・フォード
Henry Ford
1919年ねんの肖像しょうぞう画が
生誕せいたん (1863-07-30) 1863年ねん7月がつ30日にち
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく・ミシガン州しゅうディアボーン
死没しぼつ (1947-04-07) 1947年ねん4月がつ7日にち（83歳さい没ぼつ）
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく・ミシガン州しゅうディアボーン
国籍こくせき アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく
職業しょくぎょう 実業じつぎょう家か、技術ぎじゅつ者しゃ
宗教しゅうきょう 米国べいこく聖せい公会こうかい
配偶はいぐう者しゃ クララ・ジェーン・ブライアント
子供こども エドセル・フォード
親おや ウィリアム・フォード、メアリ・フォード
署名しょめい
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人物じんぶつ

編集へんしゅう

フォードは自動車じどうしゃを発明はつめいしたわけではないが、アメリカの多おおくの中流ちゅうりゅうの人々ひとびとが購入こうにゅうできる初はつの自動車じどうしゃを開発かいはつ・生産せいさんした。カール・ベンツが自動車じどうしゃの産うみの親おやであるなら、自動車じどうしゃの育そだての親おやはヘンリー・フォードとなる。

T型がたフォードは、世界せかいで累計るいけい1,500万まん台だい以上いじょうも生産せいさんされ、産業さんぎょうと交通こうつうに革命かくめいをもたらした。フォード・モーターの社主しゃしゅとして、世界せかい有数ゆうすうの富豪ふごうとなり、有名人ゆうめいじんとなった。

安価あんかな製品せいひんを大量たいりょう生産せいさんしつつ労働ろうどう者しゃの高こう賃金ちんぎんを維持いじする「フォーディズム」の創造そうぞう者しゃである。フォードはまた、消費しょうひ者しゃ優先ゆうせん主義しゅぎが平和へいわの鍵かぎだというグローバルなビジョンを持もっていた。体系たいけい的てきなコスト削減さくげんを強力きょうりょくに推進すいしんし、多おおくの技術ぎじゅつ革新かくしんやビジネス上じょうの革新かくしんをもたらした。例たとえば、北米ほくべい全土ぜんどおよび世界せかいの主要しゅよう都市としにフランチャイズシステムによる販売はんばい店てん網もうを確立かくりつした。

遺産いさんのほとんどをフォード財団ざいだんに遺のこしたが、遺族いぞくがその組織そしきを恒久こうきゅう的てきに運営うんえいできるよう手配てはいした。

第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせんのころには平和へいわ主義しゅぎを主張しゅちょうしたことで知しられていると同時どうじに『国際こくさいユダヤ人じん（英語えいご版ばん）』という書籍しょせきを出版しゅっぱんするなど反はんユダヤ主義しゅぎ者ものとしても知しられている[1]。

生おい立たち

編集へんしゅう

1863年ねん7月がつ30日にち、ミシガン州しゅうディアボーンのグリーンフィールドで生うまれる[2]。農場のうじょうを経営けいえいする父ちちウィリアム・フォード (William Ford)  (1826–1905) はアイルランドのコーク県けん生うまれで、元々もともとは西にしイングランドの家系かけいである。母ははメアリ・リトゴット・フォード (1839–1876) はミシガン州しゅう生うまれでベルギーからの移民いみんの末すえっ子こだったが、幼おさないころ両親りょうしんを亡なくしたためオハーンという隣人りんじんの養子ようしとなっていた。6人にん兄弟きょうだいの長男ちょうなんで、弟妹ていまいにはマーガレット・フォード (1867–1938)、ジェーン・フォード (c. 1868–1945)、ウィリアム・フォード (1871–1917)、ロバート・フォード (1873–1934) がいる。

十じゅう代だいになると父ちちから懐中時計かいちゅうどけいを与あたえられた。15歳さいのころには友人ゆうじんや近所きんじょの人ひとたちの時計とけいを何なん度ども分解ぶんかい・組くみ立たてし、時計とけい修理しゅうりがうまいという評判ひょうばんを得えている[3]。

1876年ねんに母ははが亡なくなり、ショックを受うける。父ちちは農場のうじょうを継ついでもらいたかったが、フォードは農作業のうさぎょうを軽蔑けいべつしていた。後のちに「私わたしは農場のうじょうには何なんの愛情あいじょうも持もっていなかった。私わたしが愛あいしていたのは農場のうじょうにいる母ははだった」と記しるしている[4]。

機械きかい工こう時代じだい

編集へんしゅう
 
25歳さいのヘンリー・フォード (1888)

1879年ねんに家いえを離はなれ、近ちかくの都市としデトロイトの James F. Flower & Bros. に見習みならい機械きかい工こうとして就職しゅうしょくし、その後ご Detroit Dry Dock Co. に移うつった。1882年ねん、ディアボーンに戻もどって農場のうじょうの仕事しごとをしていたが、そこでウェスティングハウス製せいの可か搬型蒸気じょうき機関きかんの操作そうさに熟達じゅくたつするようになった。その経験けいけんから後のちにウェスティングハウスで蒸気じょうき機関きかんの修理工しゅうりこうとして雇やとわれた。そのころデトロイトの Goldsmith, Bryant & Stratton Business College で簿記ぼきを学まなんでいる[5]。20歳さいころには日曜日にちようびに4マイル（約やく6.4キロ）離はなれた米国べいこく聖せい公会こうかいの教会きょうかいに通かよっていた[6]。

1888年ねん、クララ・アラ・ブライアント (1866–1950) と結婚けっこん。そのころは農場のうじょうと製材せいざい所しょ経営けいえいで生計せいけいを立たてていた[7]。子こは1人ひとりだけでエドセル (1893–1943) と名付なづけた[8]。

 
フォード初はつの自作じさく4輪りん自動車じどうしゃ "Ford Quadricycle"

1891年ねんにはエジソン照明しょうめい会社かいしゃ（英語えいご版ばん）の技術ぎじゅつ者しゃとなり、1893年ねんにはチーフ・エンジニアに昇進しょうしんした。これによって、フォードは内燃ないねん機関きかんの個人こじん的てきな実験じっけんに、十分じゅうぶんな時間じかんと金銭きんせんを費ついやすことが出来できるようになった。幾多いくたの実験じっけんの末すえ、1896年ねんに Ford Quadricycle と名付なづけた自作じさく4輪りん自動車じどうしゃの製作せいさくに成功せいこう。6月4日にちには試運転しうんてんを行おこなった。様々さまざまな試運転しうんてんの後のち、この四よん輪りん車しゃの改良かいりょうを検討けんとうした[9]。同年どうねん、パーティ会場かいじょうで尊敬そんけいするトーマス・エジソンに初はじめて会あい自分じぶんの自動車じどうしゃへの夢ゆめを熱あつく語かたり、エジソンはフォードを励はげました。1898年ねん、2台だい目めの自動車じどうしゃを完成かんせいさせた[10]。

創業そうぎょう

編集へんしゅう

1899年ねん8月がつ5日にち、エジソン照明しょうめい会社かいしゃを辞やめ、デトロイトの製材せいざい王おうウィリアム・H・マーフィーの資金しきん援助えんじょを得えてデトロイト自動車じどうしゃ会社かいしゃ（英語えいご版ばん）を創業そうぎょう[10]。副ふく社長しゃちょう兼けんチーフ・エンジニアに就任しゅうにん。しかし生産せいさんした自動車じどうしゃは期待きたいしたより低てい品質ひんしつで高こう価格かかくで、同社どうしゃは1901年ねん1月がつに解散かいさんした[10]。

C・ハロルド・ウィルズ（英語えいご版ばん）の助たすけを得えてフォードが設計せっけい・製作せいさくした26馬力ばりきの自動車じどうしゃで1901年ねん10月がつ、レースに出場しゅつじょうしよい結果けっかを残のこした。この成功せいこうを見みたマーフィーらデトロイト自動車じどうしゃ会社かいしゃの出資しゅっし者しゃらが1901年ねん11月30日にち、ヘンリー・フォード・カンパニ（英語えいご版ばん） を創業そうぎょうし、フォードはチーフ・エンジニアに就任しゅうにんした[10]。1902年ねん、マーフィーはコンサルタントとしてヘンリー・リーランドをつれてきた。その結果けっかとしてフォードは自身じしんの名なを冠かんしたこの会社かいしゃを去さった。フォードが去さるとマーフィーは同社どうしゃをキャデラック自動車じどうしゃ会社かいしゃと社名しゃめい変更へんこうしている[10]。

かつて自転車じてんしゃレーサーだったトム・クーパー (Tom Cooper) とチームを組くみ、80馬力ばりき以上いじょうのレースカー "999" を製作せいさくし、1902年ねん10月がつレースでバーニー・オールドフィールド（英語えいご版ばん）が運転うんてんして優勝ゆうしょうした。その結果けっか、古ふるい知人ちじんでデトロイトの石炭せきたん販売はんばい業者ぎょうしゃアレキサンダー・Y・マルコムソン（英語えいご版ばん）が支援しえんを申もうし出でた[10]。彼かれらはフォード＆マルコムソン（Ford & Malcomson, Ltd. ）を創業そうぎょう。フォードは安価あんかな自動車じどうしゃの設計せっけいを行おこない、工場こうじょうを借かりて、ジョン（英語えいご版ばん）とホレス・E・ドッジ（英語えいご版ばん）の機械きかい工場こうじょうに16万まんドル分ぶんの部品ぶひんを発注はっちゅうした[10]。

フォード・モーター

編集へんしゅう
 
左端ひだりはしからフォードとエジソン、ウォレン・ハーディング大統領だいとうりょう、ファイアストーン（1921年ねん）

しかし、フォード＆マルコムソンの自動車じどうしゃの販売はんばいは鈍にぶく、ドッジ兄弟きょうだいが最初さいしょの出荷しゅっか分ぶんへの支払しはらいを要求ようきゅうした際さいに危機ききが訪おとずれた。その際さいマルコムソンは新あらたな出資しゅっし者しゃを集あつめ、ドッジ兄弟きょうだいには新しん会社かいしゃの株式かぶしきの一部いちぶを渡わたすことで納得なっとくさせた[10]。それにより1903年ねん6月16日にち、Ford & Malcomson は資本しほん金きん2万まん8千せんドルで新しん会社かいしゃフォード・モーター・カンパニーへと再さい結成けっせいされた[10]。最初さいしょの出資しゅっし者しゃはフォードとマルコムソンとドッジ兄弟きょうだいのほかに、マルコムソンの叔父おじ John S. Gray、マルコムソンの秘書ひしょ en:James CouzensJames Couzens、マルコムソンと関かかわりが深ふかい2人ふたりの法律ほうりつ家か John W. Anderson と Horace Rackham がいた。新あたらしく設計せっけいした車くるまの性能せいのうを見みせるため、フォードはセントクレア湖この氷上ひかみ1マイルを走はしらせ、39.4秒びょうの記録きろくを出だし、自動車じどうしゃ速度そくどの世界せかい新しん記録きろく（91.37 mph＝147.05 km/h）を樹立じゅりつした。バーニー・オールドフィールドはこの結果けっかに納得なっとくし、国中くになかでその自動車じどうしゃを運転うんてんして周まわり、アメリカ全土ぜんどにフォードの名なを広ひろめた。フォードはまた、初期しょきのインディ500も後援こうえんしている。

T型がたフォード

編集へんしゅう
 
フォード・モデルT（1910年ねん）
 
フォードの組くみ立たてライン（1913年ねん）

T型がたフォードは1908年ねん10月1日にちに発表はっぴょうされた。ハンドル（ステアリング）が左ひだりにあり、間まもなく他社たしゃもそれに倣ならった。エンジンとトランスミッションは全体ぜんたいがボンネットで覆おおわれている。エンジンは4気筒きとうが一塊ひとかたまりで鋳造ちゅうぞうされている。サスペンションには2つの半はん楕円だえん形がたバネを使つかっている。運転うんてんは非常ひじょうに単純たんじゅんで、修理しゅうりも容易よういかつ安価あんかに済すむ。1908年ねんの発売はつばい当時とうじ、富裕ふゆう層そう相手あいての手作てづくりの自動車じどうしゃが3,000ドルから4,000ドル、同どうクラスの他たメーカーの自動車じどうしゃでも1000ドル近ちかい価格かかくであったのに対たいし、T型がたフォードは825ドルの低てい価格かかくであった。その後ごも年々ねんねん価格かかくが下さがっていき、1920年代ねんだいにはアメリカ人じんドライバーなら誰だれでもT型がたフォードの運転うんてん方法ほうほうを学まなんだことがあるという状況じょうきょうになっていた[11]。

フォードは新しん製品せいひんについての記事きじや広告こうこくをデトロイトのあらゆる新聞しんぶんに掲載けいさいさせる大々的だいだいてき広告こうこく展開てんかいを行おこなった。また販売はんばい店てん網もうを確立かくりつし、北米ほくべいのほとんどの都市としに販売はんばい店てんを設もうけた。各かく販売はんばい店てんは独立どくりつ採算さいさんのフランチャイズ方式ほうしきであり、フォードの宣伝せんでんだけでなく、モータリゼーションの象徴しょうちょうともなった。新米しんまいドライバーを助たすけるモータークラブが各地かくちにできた。フォードは業務ぎょうむ用ように自動車じどうしゃを使つかおうと考かんがえる農夫のうふにも積極せっきょく的てきに売うり込こんだ。売うり上あげは急増きゅうぞうし、数すう年間ねんかんは毎年まいとし100%以上いじょうの伸のびを示しめした。常つねにさらなる効率こうりつ化かとコスト削減さくげんに努つとめ、1913年ねんにはベルトコンベアによるライン生産せいさん方式ほうしきを導入どうにゅうし、生産せいさん能力のうりょくが大幅おおはばに強化きょうかされた。一般いっぱんにフォードがその方式ほうしきのアイデアを考案こうあんしたとされているが、当時とうじの資料しりょうによればその方式ほうしきを考案こうあんし発展はってんさせたのは Clarence Avery、Peter E. Martin、チャールズ・E・ソレンセン（英語えいご版ばん）、C・ハロルド・ウィルズ（英語えいご版ばん）という従業じゅうぎょう員いんだった[12]。ライン生産せいさん方式ほうしきを採用さいようすることで、販売はんばい価格かかくを低ひくく抑おさえながらも販売はんばい数量すうりょうを拡大かくだいすることができ、企業きぎょう利益りえきを確保かくほするという考かんがえ方かたを実現じつげんできた。この大量たいりょう生産せいさん方式ほうしきは他たの工業こうぎょう生産せいさんにも応用おうようされ、20世紀せいきの工業こうぎょう社会しゃかいを可能かのうにした。

1914年ねんには販売はんばい台数だいすうが25万まん台だいを越こえた。1916年ねんには最もっとも安価あんかなモデルが360ドルという価格かかくになり、販売はんばい台数だいすうは47万まん2千せん台だいに達たっした[13]。

1918年ねんまでに、アメリカで保有ほゆうされる自動車じどうしゃの半分はんぶんはT型がたフォードとなっていた。車体しゃたいの色いろは黒くろばかりだったが、フォードは自伝じでんに「黒くろにしておけば、お客様きゃくさまが好すきな色いろに塗ぬり替かえることができる」と記しるしている[14]。ライン生産せいさん方式ほうしきを採用さいようする以前いぜん、黒くろの塗料とりょうが最もっとも乾かわきが早はやいので黒くろにしたという事情じじょうもある。実際じっさい、赤あかなど他たの色いろのT型がたフォードも販売はんばいされていた。T型がたフォードは1927年ねんまで生産せいさんされ続つづけた。最終さいしゅう的てきな総そう販売はんばい台数だいすうは15,007,034台だいで、1908年ねんの登場とうじょうから19年間ねんかんで樹立じゅりつした記録きろくである。この記録きろくは45年間ねんかん破やぶられなかった。

1918年ねん、ウッドロウ・ウィルソン大統領だいとうりょうはアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく上院じょういん選挙せんきょにてミシガン州しゅうで民主党みんしゅとうから立候補りっこうほするようフォードに依頼いらいした。第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせん中なかだったが、フォードは平和へいわ主義しゅぎを唱となえ、提案ていあんされていた国際こくさい連盟れんめいを強つよく支持しじした[15]。結果けっか、元もとアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく海軍かいぐん長官ちょうかんで共和党きょうわとうから立候補りっこうほしたトルーマン・ニューベリに敗やぶれた。

1918年ねん12月、ヘンリー・フォードはフォード・モーターの社長しゃちょう職しょくを息子むすこエドセル・フォードに譲ゆずった。しかし最終さいしゅう決定けってい権けんは保持ほじし続つづけ、しばしば息子むすこの決定けっていを覆くつがえした。そして Henry Ford and Son という新しん会社かいしゃを設立せつりつし、フォード・モーターの重要じゅうような従業じゅうぎょう員いんを引ひき抜ぬいた。これはフォード・モーターの他ほかの株主かぶぬしを恐おそれさせ、株価かぶかが下さがる前まえに株かぶを売うらせ、自身じしんがその株かぶを買かい取とってフォード・モーターを完全かんぜんに制御せいぎょできるようにする企たくらみだった。この策略さくりゃくはうまくいき、ヘンリーとエドセルが株式かぶしきを占有せんゆうして、フォード一族いちぞくが会社かいしゃの所有しょゆう権けんを確保かくほすることになった[16]。

1920年代ねんだい半なかばには、ライバルとなったシボレーやクライスラーが新あたらしいデザインや多彩たさいなカラーを導入どうにゅうしたため、同おなじデザインで黒くろ一色いっしょくしかなかったT型がたフォードの売うり上あげは落おち込こみ始はじめた。息子むすこの助言じょげんにもかかわらず、フォードはT型がたフォードのデザインを変更へんこうすることには強つよく反対はんたいした[17]。この時代じだいには、T型がたフォードはいわば時代遅じだいおくれとなっており、新あたらしいデザインの車くるまが求もとめられたのである。また、他社たしゃがクレジットによる自動車じどうしゃ購入こうにゅうプランを提供ていきょうしたのに対たいし、フォード社しゃはクレジット販売はんばいをしなかった。エドセルは、クレジットの導入どうにゅうを勧すすめたが、ヘンリーはこれにも反対はんたいした。これは、そのような仕組しくみは経済けいざいに悪影響あくえいきょうを与あたえるとの考かんがえからであった。

A型がたフォードとその後ご

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フォード・モデルA
 
フォードとエジソンとファイアストーン（1929年ねん2月がつ11日にち、フロリダ州しゅうフォートマイヤーズ）

エドセルは、新あたらしいモデルの投入とうにゅうが必要ひつようであることを父ちちに説得せっとくしつづけた。ヘンリーは、1926年ねんになってようやくそれを了承りょうしょうする。こうして、1927年ねん12月にA型がたフォードが登場とうじょうし1931年ねんまで販売はんばいされた（T型がた以前いぜんに初期しょきのA型がたからB、C…、R、S、そしてT型かたまで試作しさく車しゃも含ふくめ連続れんぞくしたモデル名めいを使用しようしていた。T型がたの次つぎがU型がたでなくA型がたとなったのは、長期ちょうきに好評こうひょうでフォード社しゃをフォード社しゃたらしめたT型がたの後のちは心機一転しんきいってん、仕切しきりなおしでA型がたから、となったからである。初期しょきのA型がたからT型がたの間あいだには豪華ごうかすぎて販売はんばい不振ふしんだったK型がたや、シンプルさが受うけたN型がた、その発展はってん型がたS型がたなどがある）。エンジンやシャーシなど技術ぎじゅつ的てき設計せっけいはヘンリーが指揮しきし、息子むすこには外観がいかんの設計せっけいを任まかせた。エドセルはまた、父ちちの反対はんたいを押おし切きってスライド型がたシフトのトランスミッションをなんとか採用さいようした[18]。

A型がたフォードは1927年ねん12月に登場とうじょうし、1931年ねんまで総計そうけいで400万まん台だい以上いじょうが生産せいさんされた。その後ごはゼネラルモーターズに倣ならって毎年まいとしモデルチェンジするようになった。クレジット販売はんばいへのフォードの反対はんたいは1930年代ねんだいまで続つづいたが、結局けっきょく Universal Credit Corporation という子会社こがいしゃを創設そうせつし、同社どうしゃは主要しゅような自動車じどうしゃ向むけクレジット会社かいしゃとなった[19]。

フォードは会計士かいけいしを信しんじておらず、世界せかい有数ゆうすうの巨額きょがくの財産ざいさんを監査かんさも受うけずに蓄たくわえていた。

労働ろうどう哲学てつがく

編集へんしゅう

日給にっきゅう5ドル

編集へんしゅう
 
タイム誌し、1935年ねん1月がつ14日にち

T型がたフォード生産せいさんの最盛さいせい期きには、賃金ちんぎんは1日にちあたり6ドルとなった。また、さらに投資とうしにより、社しゃの利益りえきを共有きょうゆうする計画けいかくなども提供ていきょうされた。

フォードは福祉ふくし資本しほん主義しゅぎ（英語えいご版ばん）の先駆せんく者しゃで、転職てんしょく率りつが高たかく毎年まいとし多数たすうの労働ろうどう者しゃを新あらたに雇用こようしなければならない状況じょうきょうを改善かいぜんするためもあり、労働ろうどう者しゃの待遇たいぐう改善かいぜんに努つとめた。最良さいりょうの労働ろうどう者しゃを雇やとい続つづけることも効率こうりつ向上こうじょうの手段しゅだんである[20]。

1914年ねん、日給にっきゅう5ドルを提示ていじし、従来じゅうらいの賃金ちんぎんのほぼ2倍ばいとして世界せかいを驚おどろかせた[21]。オハイオ州しゅうクリーブランドの新聞しんぶんは、この発表はっぴょうについて「この不ふ況きょう下かの暗雲あんうんを突つき抜ぬけて目めをくらませるようなロケットを放はなった」と評ひょうした[22]。新あらたな労働ろうどう者しゃを雇やとう必要ひつようがなくなり、デトロイトで最上さいじょうの機械きかい工こうが集あつまったため、生産せいさん性せいが向上こうじょうし、職業しょくぎょう訓練くんれんコストが低減ていげんした[23][24]。日給にっきゅう5ドルを発表はっぴょうしたのは1914年ねん1月がつ5日にちのことで、熟練じゅくれん労働ろうどう者しゃの最低さいてい日給にっきゅうを2.34ドルから5ドルに引ひき上あげるというものだった。また資料しりょうによって詳細しょうさいは異ことなるが、1週間しゅうかんの労働ろうどう時間じかんも減へらした。1922年ねんの自伝じでんによれば、週しゅうに6日間にちかん、1日にち8時じ間あいだで48時じ間あいだと記しるされており[25]、1926年ねんには週しゅう5日間にちかんの40時じ間あいだ労働ろうどうとなっている[26]。

デトロイトはアメリカの中なかでも高こう賃金ちんぎんの都市としだったが、フォードの賃上ちんあげのせいで競争きょうそう相手あいては賃上ちんあげするか熟練じゅくれん労働ろうどう者しゃを失うしなうかという状況じょうきょうに追おい込こまれた[27]。さらに給料きゅうりょうが増ふえた労働ろうどう者しゃは自分じぶん達たちが作つくっている自動車じどうしゃを購入こうにゅうできるようになり、経済けいざい的てきにもよい波及はきゅう効果こうかをもたらした。フォードはこの方針ほうしんを賃上ちんあげというよりも利益りえき分配ぶんぱいだと説明せつめいした[28]。フォードに日給にっきゅう5ドルを進言しんげんし納得なっとくさせたのは当時とうじのデトロイト市長しちょう Couzens とも言いわれている[29]。

利益りえき分配ぶんぱいの対象たいしょうは6カ月かげつ以上いじょう勤続きんぞくした素行そこうに問題もんだいのない労働ろうどう者しゃに限かぎられた。深酒ふかざけやギャンブルなどの癖くせがある者ものは対象たいしょう外がいとされ、素行そこう調査ちょうさのために50人にんの調査ちょうさ者しゃとサポートスタッフを雇やとった。大だい部分ぶぶんの労働ろうどう者しゃは利益りえき分配ぶんぱいの資格しかくを得えることができた。

フォードが従業じゅうぎょう員いんの私生活しせいかつにまで踏ふみ込こんだことには批判ひはんもあったため、間まもなく調査ちょうさの手てを緩ゆるめることにした。1922年ねんの回想かいそう録ろくでは、このことについて過去かこ形がたで記しるし、「産業さんぎょう界かいに温情おんじょう主義しゅぎの入はいり込こむ余地よちはない。従業じゅうぎょう員いんの私生活しせいかつをのぞき込こむことに依存いぞんした福祉ふくしは時代遅じだいおくれである。人ひとは相談そうだんと助たすけ、しばしば特別とくべつな助たすけを必要ひつようとするが、全すべては良識りょうしきに則のっとって行おこなわれるべきである。しかし従業じゅうぎょう員いんの待遇たいぐう改善かいぜんは外部がいぶでの社会しゃかい事業じぎょうよりも産業さんぎょうを強固きょうこにし組織そしきを強化きょうかする最良さいりょうの手段しゅだんである。我々われわれは原則げんそくを変更へんこうせずに支払しはらい方法ほうほうを変更へんこうした」と記しるしている[30]。

労働ろうどう組合くみあい

編集へんしゅう

一方いっぽうでフォードは労働ろうどう組合くみあいには強硬きょうこうに反対はんたいした。フォードは1922年ねんの回想かいそう録ろくで組合くみあいについても記しるしている[31]。彼かれは、組合くみあいの何人なんにんかのリーダーの影響えいきょうが強つよすぎ、彼かれらが表向おもてむきはよい動機どうきで動うごいていたとしても、最終さいしゅう的てきに害がいを及およぼすことになると考かんがえていた。組合くみあいの多おおくは雇用こよう創出そうしゅつのために生産せいさん性せいを制限せいげんさせようとしたが、フォードから見みれば生産せいさん性せい向上こうじょうはあらゆる経済けいざい的てき繁栄はんえいに必須ひっすの条件じょうけんだったので、彼かれは組合くみあいを自滅じめつ的てきだと考かんがえていた。

彼かれは生産せいさん性せい向上こうじょうによって一定いっていの職しょくが失うしなわれたとしても、生産せいさん性せい向上こうじょうによって景気けいきが刺激しげきされ、新あらたな雇用こようが生うまれると信しんじていた。フォードはまた、組合くみあいのリーダーは社会しゃかいや経済けいざいの危機ききを恒久こうきゅう的てきに扇動せんどうすることで自みずからの影響えいきょう力りょくを維持いじしようとする倒錯とうさく的てきな動機どうきを持もっていると信しんじていた。一方いっぽうで賢かしこい管理かんり者しゃは自みずからの利益りえきを増大ぞうだいさせるという動機どうきで労働ろうどう者しゃを正まさしく遇ぐうすると信しんじていた（しかし、フォードは多おおくの管理かんり職しょくがその事実じじつを理解りかいしていないことも認みとめている）。フォードは、良よい管理かんり職しょくが左右さゆう（社会しゃかい主義しゅぎ者しゃと不良ふりょう管理かんり職しょく）からの攻撃こうげきをかわし続つづければ、最終さいしゅう的てきに不良ふりょう管理かんり職しょくも組合くみあいも活動かつどうできない社会しゃかい経済けいざい体制たいせいが作つくられるだろうと信しんじていた。

組合くみあい結成けっせいを防ふせぐため、フォードは元もと海軍かいぐんでボクサーでもあったハリー・ベネット（英語えいご版ばん）を総務そうむ部門ぶもんのトップに据すえた。組合くみあい結成けっせいの動うごきをつぶすため、ベネットは様々さまざまな威嚇いかく戦略せんりゃくを実施じっしした[32]。特とくに有名ゆうめいな事件じけんとして、1937年ねん5月がつ26日にち、ベネットのボディガードらがウォルター・ルーサー（英語えいご版ばん）を含ふくむ全米ぜんべい自動車じどうしゃ労働ろうどう組合くみあいの主要しゅようメンバーに暴行ぼうこうを加くわえた[33]。そのとき現場げんばには警察けいさつ署長しょちょうカール・ブルックスもいたが、彼かれはベネットの総務そうむ部門ぶもん出身しゅっしんであり、暴行ぼうこうを止とめようとしなかった[34]。この事件じけんは The Battle of the Overpass と呼よばれている。

1930年代ねんだい末まつから1940年代ねんだい初はじめにかけて、エドセル（当時とうじの社長しゃちょう）は、暴力ぼうりょくや仕事しごとの放棄ほうきや行いき詰づまりを永遠えいえんに続つづけるわけにはいかないと考かんがえ、組合くみあいとの団体だんたい交渉こうしょうのようなものが必要ひつようだと考かんがえ始はじめていた。しかし父ちちヘンリーはそのような妥協だきょうを拒こばんだ。その後ごも結成けっせいされようとしている組合くみあいとの交渉こうしょう役やくをベネットに任まかせている。ソレンセンの回想かいそう録ろくによれば[35]、ヘンリー・フォードがベネットを交渉こうしょう役やくにしたのは、合意ごういを形成けいせいしないためだったことが明あきらかである。

フォード・モーターはデトロイトの自動車じどうしゃメーカーの中なかで最後さいごまで全米ぜんべい自動車じどうしゃ労働ろうどう組合くみあい (UAW) を認みとめなかった。1941年ねん4月がつ、UAWがフォードの工場こうじょうで座すわり込こみストライキを行おこなった。ソレンセンの回想かいそう録ろくによれば、取とり乱みだしたヘンリー・フォードは組合くみあいと妥協だきょうするぐらいなら会社かいしゃをつぶすとまで言いったが、妻つまクララは家業かぎょうをつぶすなら離婚りこんすると言いった。彼女かのじょは息子むすこや孫まごに会社かいしゃを引ひき継つがせたいと考かんがえていた[36]。ヘンリーは妻つまの最後さいご通牒つうちょうに従したがった。一夜いちやでフォード・モーターはUAWの契約けいやく条件じょうけんに最もっとも抵抗ていこうする会社かいしゃから最もっとも好意こうい的てきな会社かいしゃへと変貌へんぼうした。1941年ねん6月がつ、契約けいやく書しょに署名しょめいが行おこなわれた。ただし、フォード・モーターにおける組合くみあいの完全かんぜんな結成けっせいは、フォードが引退いんたいした1945年ねんまで行おこなわれなかった。

フォード航空機こうくうき会社かいしゃ

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スペインの郵便ゆうびん航空こうくう会社かいしゃが使用しようした Ford 4-AT-F (EC-RRA)

他たの自動車じどうしゃ会社かいしゃと同様どうよう、フォードも第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせん中なかに航空機こうくうき製造せいぞうに乗のり出だし、エンジンを生産せいさんした。戦後せんごは自動車じどうしゃ製造せいぞうに戻もどったが、1925年ねんフォードは Stout Metal Airplane Company を買収ばいしゅうした。

フォードの最もっとも成功せいこうした航空機こうくうきは Ford 4AT トライモータで、波なみ型がたの金属きんぞく板ばんを使つかったことから「ブリキのガチョウ (tin goose)」と呼よばれた。アルミニウムの耐たい腐食ふしょく性せいとジュラルミンの強度きょうどを兼かね備そなえたアルクラッドという新しん合金ごうきんを採用さいようしている。フォッカーの VIIb-3M とよく似にており、フォードの技術ぎじゅつ者しゃがフォッカーの機体きたいをこっそり計測けいそくして真似まねをしたとも言いわれた。トライモータは1926年ねん6月がつ11日にちに初はつ飛行ひこうし、旅客りょかく定員ていいん12名めいの旅客機りょかくきとして使つかわれたが、乗のり心地ごこちはよくなかった。アメリカ陸軍りくぐん向むけにいくつかの派生はせい型がたも生産せいさんしている。スミソニアン博物館はくぶつかんはフォードが航空機こうくうき産業さんぎょうを変革へんかくしたとしている。世界せかい恐慌きょうこうで売うり上あげが低迷ていめいしたため1933年ねんに航空機こうくうき製造せいぞうから撤退てったいするまでに199機きのトライモータを生産せいさんした。

なお、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん中ちゅうはB-24爆ばく撃げき機きを大量たいりょう生産せいさんしたことがある。

戦争せんそうと平和へいわ

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第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせん

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フォードは戦争せんそうを大おおいなる浪費ろうひと捉とらえ、戦争せんそう反対はんたいの立場たちばだった[37][38]。戦争せんそうに資金しきん提供ていきょうしていると思おもった人ひとには非常ひじょうに批判ひはん的てきになり、そのような行為こういを止とめさせようとした。1915年ねん、平和へいわ主義しゅぎ者しゃシュヴィンメル・ロージカ（英語えいご版ばん）と親交しんこうを深ふかめ、第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせんが勃発ぼっぱつしたヨーロッパに Peace Ship を送おくり出だす資金しきんを提供ていきょうすることになった。フォードは170人にんの平和へいわ主義しゅぎ者しゃと共ともにその船ふねに乗船じょうせんした。Samuel S. Marquis 牧師ぼくしもこれに加くわわっている。Marquis は1913年ねんから1921年ねんまでフォード・モーターの社会しゃかい貢献こうけん部門ぶもんを任まかされている。フォードはウィルソン大統領だいとうりょうにもこの計画けいかくについて話はなしているが、政府せいふからの援助えんじょはなかった。彼かれらは中立ちゅうりつ国こくのスウェーデンとオランダに寄港きこうし、平和へいわ活動かつどう家からと会談かいだんしている。フォードは多おおくの嘲笑ちょうしょうの対象たいしょうとなったため、スウェーデンに到着とうちゃくするや否いなや船ふねを下おりた[39]。

フォードのイギリスの工場こうじょうはトラックや航空機こうくうきエンジンのほかに、食糧しょくりょう増産ぞうさんのためにトラクターを生産せいさんした。1917年ねん、アメリカが参戦さんせんすると、フォード・モーターは航空機こうくうきや対戦たいせん艇てい用ようのエンジンを生産せいさんするなど軍需ぐんじゅも請うけ負おっている[40]。

1918年ねん、ウッドロウ・ウィルソン大統領だいとうりょうに請こわれ、ミシガン州しゅうの上院じょういん議員ぎいん選挙せんきょに出馬しゅつば。ウィルソンの提唱ていしょうする国際こくさい連盟れんめいを支持しじする立場たちばで選挙せんきょを戦たたかったが、大差たいさで敗やぶれた[41]。

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん

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フォードはアメリカの第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん参戦さんせんに反対はんたいしており[33][1]、国際こくさい的てき事業じぎょうが戦争せんそうの進展しんてんを阻はばみ繁栄はんえいを生うみ出だせると信しんじていた。フォードは、「戦争せんそうとは、欲張よくばった資本しほん家かが人類じんるいを殺戮さつりくすることで利益りえきを得えようとする行為こうい」だと主張しゅちょう。1939年ねんには、ドイツ海軍かいぐんの潜水せんすい艦かんがアメリカの商船しょうせんを雷撃らいげきしたのも、アメリカ参戦さんせんによって利益りえきを得えようとする資本しほん家かの陰謀いんぼうだとさえ主張しゅちょうした[42]。フォードが資本しほん家かと呼よんでいるのはユダヤ人じんのことであり、第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせんもユダヤ人じんが戦争せんそうを助長じょちょうしたと告発こくはつしている[1][33]。

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんの準備じゅんび段階だんかいから1939年ねんの参戦さんせんにおいて、フォードは交戦こうせん国こくと取引とりひきしたくないと述のべている。大だい恐慌きょうこう時代じだいを経験けいけんした他ほかの実業じつぎょう家かと同様どうよう、フォードはルーズベルト政権せいけんを完全かんぜんには信頼しんらいせず、ルーズベルトがアメリカを戦争せんそうに向むかわせたと思おもっていた。しかしフォードは、軍需ぐんじゅ品ひんも含ふくめてドイツと取引とりひきし続つづけた[33]。1940年ねん、フランス人じん捕虜ほりょを100から200人にん徴発ちょうはつして、フォード・ヴェルケ（英語えいご版ばん）で働はたらかせ、1929年ねんジュネーヴ条約じょうやく第だい31条じょうに違反いはん[33]。そのころアメリカは参戦さんせん前まえでドイツとの外交がいこう関係かんけいを絶たつ前まえであり、フォード・ヴェルケはフォード・モーター本社ほんしゃの監督かんとく下かにあった。戦争せんそうの進展しんてんと共ともに労働ろうどう力りょくとしてさらに捕虜ほりょを使つかうようになっていたが、ドイツ当局とうきょくが捕虜ほりょの徴発ちょうはつを要求ようきゅうしたわけではない。

ロールス・ロイスは同社どうしゃの航空機こうくうきエンジンマーリン（スピットファイアやハリケーンで使用しよう）をアメリカで生産せいさんしてくれるメーカーを捜さがし、最初さいしょに合意ごういに達たっしたのがフォードだったが契約けいやくは取とり消けされた。アメリカが1941年ねん後半こうはんに参戦さんせんを決きめると、フォードもそれに従したがった[43]。しかし、フォードの参戦さんせん支援しえんは問題もんだいが多おおかった。

アメリカ参戦さんせんが決きまると、フォードはミシガン州しゅうデトロイト近郊きんこうのウィローランにて新しん工場こうじょう建設けんせつを命めいじた。1941年ねん春はるに着工ちゃっこうし、1942年ねん10月がつにB-24爆ばく撃げき機きの1機き目めが完成かんせいしている。その工場こうじょうは世界せかい最大さいだいの組くみ立たてライン（33万まん平方へいほうメートル）を有ゆうしていた。1944のピーク時じには月産げっさん650機きのB-24を生産せいさんしていた。ウィローラン工場こうじょうでは総計そうけい9千せん機き（総数そうすうの半分はんぶん）のB-24を生産せいさんした[44]。

1930年代ねんだい末まつから度々たびたび心臓しんぞう発作ほっさに襲おそわれるようになり、フォードは名目めいもくだけの経営けいえい者しゃになっていた。実際じっさいの決定けっていは彼かれの名なで他者たしゃが行おこなっていた[45]。1943年ねん、エドセル・フォードの早はやすぎる死しの後のちはヘンリー・フォードが社長しゃちょうに復帰ふっきしたが、彼かれの精神せいしん力りょくは衰おとろえていた。実際じっさいの会社かいしゃ経営けいえいはチャールズ・E・ソレンセン（英語えいご版ばん）を中心ちゅうしんとした上級じょうきゅう管理かんり職しょくや主要しゅような技師ぎしらが行おこなった。フォードは除のけ者ものにされていると感かんじ、ソレンセンが評価ひょうかされていることに嫉妬しっとを覚おぼえ、1944年ねんにソレンセンを解雇かいこした[46]。フォードの不調ふちょうによる同社どうしゃの衰退すいたいに対たいし、アメリカ政府せいふは若手わかて管理かんり職しょくの造反ぞうはんなども含ふくめた対策たいさくを検討けんとうしたことがある[47]。幸さいわい、終戦しゅうせんを迎むかえた時点じてんでフォード・モーターは倒産とうさんすることなく存続そんぞくした。エドセルの未亡人みぼうじんはヘンリー・フォードの追放ついほうを画策かくさくし、息子むすこヘンリー・フォード2世せいが社長しゃちょうに就任しゅうにんし、全権ぜんけんを掌握しょうあくした[48][49]。

反はんユダヤ主義しゅぎ

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「反はんユダヤ主義しゅぎ#フォードとその時代じだい」を参照さんしょう

1918年ねん、フォードの側近そっきんで秘書ひしょのアーネスト・G・リーボルドがフォードのために週刊しゅうかん紙しディアボーン・インディペンデント（英語えいご版ばん）を購入こうにゅうした。同紙どうしは8年ねん前まえの創刊そうかんで、1920年ねんから1927年ねんまでリーボルドが編集へんしゅう長ちょうを務つとめた。フォードはこの新聞しんぶんの定期ていき購読こうどくをアメリカ全土ぜんどのフォード車しゃ販売はんばい店てんに義務ぎむづけ、ユダヤに関かんする記事きじを多数たすう掲載けいさいした[50]。

フォードの反はんユダヤ主義しゅぎには反発はんぱつも強つよまり、ユダヤ系けい市民しみんの間あいだでフォード車しゃの不買ふばい運動うんどうが発生はっせいした。米国べいこくユダヤ教きょう歴史れきし協会きょうかい（英語えいご版ばん）は、この一連いちれんの記事きじを「移民いみん排斥はいせき的てき、反はん労働ろうどう者しゃ的てき、反はんアルコール飲料いんりょう的てき、反はんユダヤ主義しゅぎ的まと」と論評ろんぴょうした。

フォードはディアボーン・インディペンデント紙しに掲載けいさいされた記事きじを集あつめて、1920年ねんから1922年ねんにかけて全ぜん四よん巻かんの『The International Jew（国際こくさいユダヤ人じん）』(Dearborn Publishing Co.)を刊行かんこうし、ドイツをはじめ16か国こく語ごで翻訳ほんやくされた。

  • Volume 1: The International Jew: The World's Foremost Problem (1920)
  • Volume 2: Jewish Activities in the United States (1921)
  • Volume 3: Jewish Influence in American Life (1921)
  • Volume 4: Aspects of Jewish Power in the United States (1922)

フォードがユダヤ人じんを敵視てきしするようになったのは、1915年ねん末すえにフォードが各国かっこくに戦争せんそうを中止ちゅうしするために「平和へいわ巡航じゅんこう船せん」を巡航じゅんこうさせた時ときであった[50]。この企画きかくの中心ちゅうしん人物じんぶつはハンガリー出身しゅっしんのユダヤ人じんフェミニスト・平和へいわ主義しゅぎ者しゃのロージカ・シュヴィンメル[51] で、ジャーナリストのハーマン・バーンスタインも同乗どうじょうした[50]。しかし、6年ねん後ごの1921年ねんにフォードは、船ふねには「非常ひじょうに尊大そんだいなユダヤ人じん」が2名めい(シュヴィンメルとバーンスタインのこと)乗のっており、そのユダヤ人じんたちは、ユダヤ人じんが握にぎっている金かねと権力けんりょく、そして報道ほうどうを支配しはいしている実態じったいについて語かたり、ユダヤ人じんだけが世界せかい大戦たいせんを止とめさせることができると述のべたことに嫌気いやけがさしたが、こうして戦争せんそうと革命かくめいの原因げんいんを見抜みぬいたと述のべた[50][52]。

1920年代ねんだいのアメリカではロシア革命かくめいはユダヤ人じんが起おこし、またアメリカが第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせんに参戦さんせんさせられたのもユダヤ人じんだとするアメリカの反はんユダヤ主義しゅぎが隆盛りゅうせいしていた。

ディアボーン・インディペンデント編集へんしゅう者しゃには、アングロ・イスラエリズムの影響えいきょうを受うけた宗派しゅうはブリティッシュ・イズリアライツ[53]に属ぞくするカナダの記者きしゃウィリアム・キャメロンがいた[50]。キャメロンはユダヤ人じんは古代こだいイスラエル12部族ぶぞくの一ひとつにすぎず、イスラエルの民みんを代表だいひょうするものではないし、ユダ族ぞくは聖書せいしょ時代じだいから常つねに不和ふわの種たねを撒まいてきたと論ろんじた[54]。1921年ねんのフォード名義めいぎの記事きじで「ユダヤ人じんは2000年間ねんかん平和へいわな生活せいかつを送おくることができなかったし、今日きょうでも衝突しょうとつで引ひっ掻かき回まわす運命うんめいにあるが、イスラエルの失うしなわれた10支族しぞく（アングロサクソン人じんのこと）に「反はんセム主義しゅぎ」と告発こくはつできるとは誰だれも考かんがえない」と述のべるなど、アングロ・イスラエリズムの影響えいきょうが見出みいだされる[55][56]。

フォードは1920年ねん5月がつ22日にち付づけの同どう新聞しんぶんで「ファンがアメリカ野球やきゅうについての問題もんだいを知しりたいなら、それは3語ごで表あらわせる。"too much Jews"（ユダヤ人じんが多おおすぎる）だ」と発言はつげんした[57][58][59][60][61][62]。同紙どうしの反はんユダヤ主義しゅぎは反共はんきょう主義しゅぎとも通つうじており、『共産きょうさん主義しゅぎ者しゃの75%がユダヤ人じんである』等とうという記事きじも掲載けいさいされた。

アメリカでの反はんユダヤ主義しゅぎの隆盛りゅうせいに対たいして1920年ねん12月、アメリカユダヤ人じん委員いいん会かいは冊子さっし「議定ぎてい書しょ、ボルシェヴィズム、ユダヤ人じん」を発行はっこうし、反論はんろんした[* 1]。12月24日にち、ユダヤ教きょう、カトリック、プロテスタント三さん宗派しゅうは連合れんごうで少数しょうすう民族みんぞくとユダヤ人じんへの迫害はくがいを断罪だんざいする共同きょうどう声明せいめいを発表はっぴょうした[50][* 2]。この三さん宗派しゅうは共同きょうどう声明せいめいでは、ユダヤ人じんのなかには革命かくめい運動うんどうで際立きわだった役割やくわりを果はたしていることは認みとめるし、ユダヤ人じんは他たの民みんについて言いえるように、善人ぜんにんも悪人あくにんもいるが、スラム、炭鉱たんこう、家畜かちく処理しょり場じょうでユダヤ人じんが憎にくしみを減げんずるものでなかったことについてはアメリカ人じんは恥はじをもつことになるだろうと述のべられた[50]。

1921年ねん1月がつ16日にちのウッドロウ・ウィルソンら歴代れきだい大統領だいとうりょうほか著名ちょめい人じんの共同きょうどう声明せいめいは、フォードらの反はんユダヤ主義しゅぎは反はんアメリカ的てきで反はんキリスト教きりすときょう的てきであると非難ひなんした[50][63]。『アメリカ』誌しはフォードに抗議こうぎするユダヤ人じんについて、ユダヤ人じんの素早すばやさは称賛しょうさんすべきであると報道ほうどうした[50][64]。

1921年ねん2月がつ、New York World 紙かみでフォードは「私わたしが唯一ゆいいつ言いえることは、その内容ないようが実際じっさいに起おきてきた出来事できごとと一致いっちしているということだけである」と述のべている。その間あいだ、フォードは彼かれの70万まん部ぶを発行はっこうする新聞しんぶんを通とおして「極右きょくう的てき傾向けいこうと宗教しゅうきょう的てき先入観せんにゅうかんを持もった著名ちょめいなスポークスマン」として活動かつどうしはじめた[65]。

1921年ねんに「ディアボーン・インディペンデント」紙しは、ロンドンとニューヨークに代理だいり政府せいふを置おいている「オール・ジュダーン(All Judaan)」はドイツへの復讐ふくしゅうに成功せいこうしたあと、イギリスを手中しゅちゅうに収おさめ、ロシアもユダヤ人じんに敗北はいぼくしてしまうだろうと述のべて、寛容かんようなアメリカはユダヤ人じんにとって約束やくそくの地ちなのだと述のべた[50]。また、フォードはニューヨークのユダヤ人じんはロシア最後さいごの皇帝こうていに代かわる人物じんぶつを任命にんめいしたとも述のべた[66]。この記事きじに対たいしてルイス・マーシャル弁護士べんごしは抗議こうぎしたが、フォードはマーシャル弁護士べんごしの精神せいしん的てき均衡きんこうこそ疑うたがわしいと反論はんろんした[50]。フォードのユダヤ人じん批判ひはんに対たいして、ジェイコブ・シフはここでフォードと揉もめると大だい火事かじになってしまうと考かんがえ、抗議こうぎを断念だんねんした[50]。

さらに同紙どうしは『シオン賢者けんじゃの議定ぎてい書しょ』の紹介しょうかいを始はじめ、1921年ねん8月がつには『シオン賢者けんじゃの議定ぎてい書しょ』のアメリカ版ばんが出版しゅっぱんされ、経済けいざい界かい有力ゆうりょく者しゃや国会こっかい議員ぎいんの手てに入はいった[50]。同おなじころロンドンでタイムズ誌しでそれが偽書ぎしょであるとの報道ほうどうがなされた。

1921年ねん末まつ、フォードは、南北戦争なんぼくせんそうを誘発ゆうはつしたのはユダヤ人じんであり、リンカーンを暗殺あんさつしたのもユダヤ人じんであると述のべた[50]。

作家さっかチェスタトンはフォードを訪たずねた後のち、フォードは慈善じぜん家かであり発明はつめい者しゃであり芸術げいじゅつ家かであるが、「このような人間にんげんがユダヤ人じん問題もんだいの存在そんざいに気きづいたというのなら、それは現実げんじつにユダヤ人じん問題もんだいが存在そんざいするということの証拠しょうこである。それは断だんじて反はんユダヤ的てきな偏見へんけんのなせる業ぎょうではない」と評ひょうした[50]。

「ディアボーン・インディペンデント」裁判さいばん

編集へんしゅう

しかし、1922年ねんには「ディアボーン・インディペンデント」に掲載けいさいされる反はんユダヤ記事きじの間隔かんかくが開ひらき始はじめ、またサンフランシスコの弁護士べんごしでユダヤ系けい農場のうじょうの協同きょうどう組合くみあいを組織そしきしたアーロン・サピロ（Aaron Sapiro）から名誉めいよ毀損きそんで訴うったえられた[50]。

名誉めいよ毀損きそん防止ぼうし同盟どうめい (ADL) はフォードは新聞しんぶん記事きじでユダヤ人じんに対たいするポグロムや暴力ぼうりょくを明確めいかくに非難ひなんしている一方いっぽうで[67]、集団しゅうだん暴力ぼうりょく事件じけんを起おこしているとしてユダヤ人じんを非難ひなんしている[68]。ADLは著名ちょめい人じんを集あつめ、フォードのメッセージに公然こうぜんと反対はんたいし、デトロイトの新聞しんぶんで反対はんたい意見いけんを掲載けいさいし続つづけた[63]。

実じつはフォードは新聞しんぶん記事きじを書かいたことはなく、単たんにフォードの名前なまえを記事きじの署名しょめいとして使つかうことを許ゆるしていただけだったという。実際じっさい、彼かれがほとんど何なにも書かいていないという証拠しょうこも法廷ほうていに提出ていしゅつされた。友人ゆうじんや仕事しごとの関係かんけい者しゃはディアボーン・インディペンデント紙しの内容ないようについてフォードに忠告ちゅうこくしたが、フォードは見出みだしを読よんだだけで中身なかみを読よんでいなかったという証言しょうげんもある[69]。フォードの名なで記事きじを書かいた編集へんしゅう者しゃウィリアム・キャメロンは裁判さいばんで、フォードは論説ろんせつと無関係むかんけいであり、フォードと内容ないようについて議論ぎろんしたこともないし、内容ないようを承認しょうにんしてもらうためにフォードのところに出向でむいたこともないと証言しょうげんした[70]。しかし、裁判さいばんではフォードがインディペンデント紙しの内容ないようを出版しゅっぱん前まえに知しっていたとする証拠しょうこも提出ていしゅつされた[33]。ディアボーン・インディペンデント紙しの元もと従業じゅうぎょう員いん James M. Miller がフォードからサピロのことを暴あばき立たててやるつもりだと聞きかされたと宣誓せんせい証言しょうげんしたことで、この不合理ふごうりな証言しょうげんの信憑しんぴょう性せいは徐々じょじょに蝕むしばまれていった[71]。また、キャメロンがフォードの指示しじなしで出版しゅっぱんし続つづけたというのは関係かんけい者しゃには想像そうぞうできないことだった[72]。

ユダヤ人じんとキリスト教きょう自由じゆう主義しゅぎ者しゃらによるフォード車しゃ不買ふばい運動うんどうもインパクトがあり、フォード車しゃの販売はんばいが急落きゅうらくした[33][63]。客きゃくにインディペンデント紙しを渡わたしていた販売はんばい店てんは、廃刊はいかんになる前まえには配くばられた同紙どうしを買かい占しめて廃棄はいきせざるを得えなくなっていた[33]。

フォードは1927年ねん夏なつに同紙どうしを廃刊はいかんし、ADLの Sigmund Livingston にそれまでの見解けんかいを取とり消けし謝罪しゃざいする旨むねの公開こうかい書簡しょかんを送おくり[63]、これまでの反はんユダヤ主義しゅぎ出版しゅっぱん物ぶつを廃棄はいきした[50]。フォードの謝罪しゃざいは歓迎かんげいされた。1927年ねん7月がつにフォードが受うけ取とった数すう百ひゃく通つうの手紙てがみのうち、5分ぶんの4はユダヤ人じんからで、彼かれらはほぼ例外れいがいなくフォードを賞賛しょうさんしていた[73]。『国際こくさいユダヤ人じん』については著作ちょさく権けんが複雑ふくざつ化かしていたが、フォードが訴訟そしょうを起おこし、1942年ねんに出版しゅっぱん停止ていしとなった[73]。

他方たほう、フォード・モーターは黒人こくじんを積極せっきょく的てきに雇用こようし、また女性じょせいや身体しんたい障害しょうがい者しゃもいち早はやく雇用こようしている[74]。ユダヤ人じん労働ろうどう者しゃや供給きょうきゅう業者ぎょうしゃから告発こくはつされたことはなかった[74]。また、フォードと親したしかった有名ゆうめいなユダヤ人じんとしてデトロイトの裁判官さいばんかんハリー・ケイダンがいる。ビジネス上じょうはユダヤ人じんの優秀ゆうしゅうさも買かっており、フォードの工場こうじょうはユダヤ系けいのアルバート・カーンに設計せっけいさせている。

なお、フォード以後いごも、飛行ひこう家かチャールズ・リンドバーグやカトリック司祭しさいチャールズ・コグリンは1930年代ねんだいに反はんユダヤ主義しゅぎ発言はつげんを主張しゅちょうした[50]。

フォードはワーグナー、チェンバレン[要よう曖昧あいまいさ回避かいひ]、ヒトラーと同おなじく菜食さいしょく主義しゅぎ者しゃであり、強つよい酒さけ、コーヒー、紅茶こうちゃ、タバコを御法度ごはっととしたが、こうした「異物いぶつ拒否きょひ」の強迫きょうはくがユダヤ人じんに差さし向むけられたとポリアコフは見みている[50]。

ナチス・ドイツおよびフォルクスワーゲンとの関かかわり

編集へんしゅう
 
「国際こくさいユダヤ人じん」のドイツ語どいつご版ばん
 
『国際こくさいユダヤ人じん』ドイツ語ご版ばん、1922年ねん
 
テオドル・フリッチュ（Theodor Fritsch）

フォードの『国際こくさいユダヤ人じん』はドイツおよび国家こっか社会しゃかい主義しゅぎドイツ労働ろうどう者しゃ党とう（通称つうしょうナチス）に大おおきな影響えいきょうを与あたえた。1922年ねん、フォードの『国際こくさいユダヤ人じん』ドイツ語ご版ばんが反はんユダヤ主義しゅぎの活動かつどう家かで出版しゅっぱん者しゃのテオドル・フリッチュ（Theodor Fritsch）によって刊行かんこうされた。ドイツ語ご版ばんでは注釈ちゅうしゃくがおびただしくあり、フォードが「ユダヤ人じんには悪玉あくだまも善玉ぜんだまもいる」と書かいた箇所かしょについては「これは恐おそれるべき幻想げんそうであり、全ぜんユダヤ人じんが一体いったいとなって人類じんるいを蔑さげすんでいるのである」とフォードを批判ひはんした注釈ちゅうしゃくもあった[50]。

ベルリナー・ターゲブラット紙しやニューヨーク・タイムズ紙かみは1922年ねん12月に、フォードはナチスを財政ざいせい支援しえんしていると報道ほうどうした[50][75]。

1923年ねん頃ごろ、フォードが大統領だいとうりょう選挙せんきょに立候補りっこうほするという噂うわさが流ながれ、「シカゴ・トリビューン」紙しはヒトラーの取材しゅざいを行おこない、彼かれのコメントを掲載けいさいした。「私わたしはすぐにでも突撃とつげき隊たい員いんを率ひきいて彼かれの選挙せんきょ運動うんどうを支援しえんしたいと思おもう。（中略ちゅうりゃく）彼かれ、ハインリヒ（ヘンリーのドイツ式しき）・フォードこそは米国べいこくにおけるファシズム運動うんどう育成いくせいの指導しどう者しゃである」[76] 。この報道ほうどうは、再ふたたびユダヤ系けいグループの反発はんぱつを招まねき、大おおきな非難ひなんを受うけた。

1923年ねんには、アドルフ・ヒトラーは自宅じたくの居間いまにフォードの写真しゃしんを掲かかげ、来訪らいほう者しゃに『国際こくさいユダヤ人じん』をプレゼントしたという。ヒトラーの著書ちょしょ『我わが闘争とうそう』で唯一ゆいいつ言及げんきゅうされているアメリカ人じんがフォードだった[77][78]。ヒトラーは「フォードは（ユダヤ人じんたちの）憤激ふんげきに対抗たいこうし、1億おく2000万まん人にんの国家こっかの支配しはい者しゃたちから完全かんぜんな独立どくりつを維持いじしている偉大いだいな男おとこ」と記しるしている。また、『国際こくさいユダヤ人じん』からの引用いんようと思おもわれる部分ぶぶんも存在そんざいする[76]。1931年ねん、Detroit News 紙かみの記者きしゃへの談話だんわとして、ヒトラーはフォードの「インスピレーション」を評価ひょうかすると述のべ、机つくえの横よこにフォードの等身とうしん大だいの肖像しょうぞうを置おいていると述のべた[79]。ヒトラーはフォードを尊敬そんけいしており、「彼かれの理論りろんをドイツで実践じっせんするためベストを尽つくしたい」と述のべ、T型がたフォードをモデルとしてフォルクスワーゲンを作つくらせた[80]。

1924年ねん、ハインリヒ・ヒムラーは書簡しょかんでフォードを「我々われわれの最もっとも貴重きちょうで重要じゅうようで機知きちに富とんだ闘争とうそう者しゃ」と評ひょうしている[81]。

1924年ねん2月がつ1日にち、作曲さっきょく家かリヒャルト・ワーグナーの息子むすこジークフリート・ワーグナーとその妻つまヴィニフレートの紹介しょうかいでヒトラーの代理人だいりにんクルト・リューデッケ（英語えいご版ばん）がフォードの家いえを訪問ほうもんし、ナチ党とうへの援助えんじょを依頼いらいしたが、フォードは断ことわったとされる[82]。

1927年ねんにそれまでの反はんユダヤ発言はつげんを撤回てっかいし、謝罪しゃざいしたフォードはドイツ語どいつご版ばん『国際こくさいユダヤ人じん』の回収かいしゅうを出版しゅっぱん者しゃフリッチュに依頼いらいしたが、フリッチュは損害そんがい賠償ばいしょうを要求ようきゅうしたため、回収かいしゅうを断念だんねんした[50]。後のちにナチスの機関きかん誌し『フェルキッシャー・ベオバハター』はフォードが謝罪しゃざいしたことについて、ユダヤ人じん銀行ぎんこう家かが英雄えいゆう的てきな老兵ろうへいをねじ伏ふせたと評ひょうした[50]。

1937年ねん1月がつ、Detroit Jewish Chronicle 紙かみに「『国際こくさいユダヤ人じん』として知しられる本ほんのドイツでの出版しゅっぱんとは全まったく無関係むかんけい」とのフォードの言げんが掲載けいさいされた[73]。

 
ナチス・ドイツからフォードに贈おくられた大だい十字じゅうじドイツ鷲わし勲章くんしょう

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん勃発ぼっぱつ前まえの1938年ねん7月がつ、クリーブランドにてドイツ領事りょうじがフォードの75歳さいの誕生たんじょう日びに大だい十字じゅうじドイツ鷲わし勲章くんしょうを贈おくった。ナチス・ドイツが外国がいこく人じんに与あたえる最高さいこう位いの勲章くんしょうである[79]。当時とうじ、すでにドイツによるユダヤ人じん迫害はくがいの情報じょうほうはアメリカにも伝つたわっていたが、フォードは「勲章くんしょうを捨すてるつもりも返かえすつもりもない」と言明げんめいした[76] 。ゼネラルモーターズの海外かいがい担当たんとう副ふく社長しゃちょう James D. Mooney にも同様どうようの勲章くんしょうが贈おくられた[79][83]。

ニュルンベルク裁判さいばんで、ウィーンの軍政ぐんせい長官ちょうかんとして65,000人にんのユダヤ人じんをポーランドに追放ついほうしたヒトラーユーゲントのリーダーバルドゥール・フォン・シーラッハは次つぎのように証言しょうげんした。

私わたしや同僚どうりょうが読よんで影響えいきょうを受うけた反はんユダヤ主義しゅぎの本ほんは…ヘンリー・フォードの『国際こくさいユダヤ人じん』だった。私わたしはそれを読よみ、反はんユダヤ主義しゅぎ者しゃになった。私わたしや友人ゆうじんたちにとってヘンリー・フォードは成功せいこうの象徴しょうちょうであり進歩しんぽ的てき社会しゃかい政策せいさくの代表だいひょうだったので、その本ほんに大おおきな影響えいきょうを受うけた。[84]

他方たほう、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん中なかのフォードの側近そっきんは、フォードが80歳さいのころナチスの強制きょうせい収容しゅうよう所しょの映画えいがを鑑賞かんしょうし、その中なかの残虐ざんぎゃく行為こういに恐おそれおののいていたと述のべている[85]。

フォードのナチス財政ざいせい支援しえんについてポリアコフは考かんがえられない事態じたいであり、ヒトラー、ヒムラー、シーラッハなどのナチス党員とういんがフォードの著作ちょさくを好このんだとしても、それは一方いっぽう通行つうこうの好感こうかんであったとしている[50][75]。

しかし、1977年ねん、ヒトラーの代理人だいりにんリューデッケをフォードに紹介しょうかいしたヴィニフレートは、1924年ねんの面会めんかいの数すう年ねん後ごにフォードはヒトラーへの資金しきん提供ていきょうを手伝てつだったと証言しょうげんした[86]。ただし、フォード・モーターはナチスへの寄与きよを否定ひていしており、証拠しょうこ書類しょるいも見みつかっていない[86]。

国際こくさい的てき事業じぎょう展開てんかい

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フォードの経営けいえい哲学てつがくは、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの経済けいざい的てき自立じりつを目指めざしたものだった。フォード・モーターのリバールージュ工場こうじょうは、鉄鋼てっこうから生産せいさんする垂直すいちょく統合とうごうを実現じつげんした世界せかい最大さいだいの工場こうじょうとなった。フォードが目論もくろんだのは、海外かいがいとの貿易ぼうえきに依存いぞんすることなく一いちから自動車じどうしゃを生産せいさんすることだった。彼かれは国際こくさい貿易ぼうえきと国際こくさい協力きょうりょくが世界せかい平和へいわをもたらすと信しんじ、そのモデルとしてT型がたフォードの生産せいさんラインを作つくり上あげた[87]。

1911年ねん、イギリスとカナダに組くみ立たてて工場こうじょうを建設けんせつし、間まもなく両国りょうこくでも最大さいだいの自動車じどうしゃメーカーとなった。1912年ねん、ジョヴァンニ・アニェッリのフィアットと共同きょうどうでイタリアに組立くみたて工場こうじょうを建設けんせつ。1920年代ねんだいにはハーバート・フーヴァーの勧すすめもあってドイツにも進出しんしゅつした[88]。1920年代ねんだいにはオーストラリア、インド、フランスにも工場こうじょうを建設けんせつし、1929年ねんには世界中せかいじゅうに販売はんばい店てん網もうができている。

また、1920年代ねんだいにフォードは、ブラジルのパラ州しゅうにて、フォードランディア(Fordlandia)と呼よばれるゴム・プランテーションを展開てんかいすべく、広大こうだいな土地とちを買かい付つけた。これは、フォード社しゃの車くるまにゴムタイヤを安定あんてい供給きょうきゅうするために、ゴム園えんのほか、その工場こうじょうや、労働ろうどう者しゃ・家族かぞくのためのアメリカ風ふうの街まちを、アマゾンの奥地おくちに設もうけたものであった。しかし、現地げんち従業じゅうぎょう員いんにアメリカ風ふうの食事しょくじが受うけ入いれられず暴動ぼうどうが発生はっせいしたり、素人しろうとによる植生しょくせいを全まったく無視むししたゴムの植付うえつけなどにより南米なんべい葉は枯病[89]というゴムごむの木きを枯からす重大じゅうだいな病気びょうきが蔓延まんえんして失敗しっぱいし、パラ州しゅう内ないでプランテーションを移転いてんさせるも、移転いてん先さきでも同おなじ病気びょうきのために失敗しっぱいした。結局けっきょく1945年ねんに、フォード社しゃはブラジルでの土地とちをブラジル政府せいふに売却ばいきゃくし、ゴム栽培さいばいから撤退てったいした。ブラジルでは、この病気びょうきのために現在げんざいもゴムの供給きょうきゅうを天然てんねんのパラゴムノキに依存いぞんしている。

さらに1929年ねんには、ヨシフ・スターリンから、ゴーリキー（現在げんざいのニジニ・ノヴゴロド）に工場こうじょうを建設けんせつしないかと持もちかけられた。アメリカから技術ぎじゅつ者しゃらを派遣はけんして立たち上あげを支援しえんし[90]、その中なかには後ごの組合くみあいのリーダーウォルター・ルーサー（英語えいご版ばん）もいた[91]。

フォード・モーターはアメリカが外交がいこう関係かんけいを持もつどんな国くにでも事業じぎょうを行おこなう方針ほうしんだった。自動車じどうしゃ販売はんばい（と時ときには現地げんちでの組くみ立たて）を行おこなう支社ししゃを各国かっこくに創設そうせつしている。

  • オーストラリア・フォード
  • イギリス・フォード
  • アルゼンチン・フォード
  • ブラジル・フォード
  • カナダ・フォード
  • ヨーロッパ・フォード
  • インド・フォード
  • 南みなみアフリカ・フォード
  • メキシコ・フォード
  • フィリピン・フォード
 
ドイツでのヘンリー・フォード（1930年ねん9月がつ）

1932年ねん、フォード・モーターは全ぜん世界せかいの自動車じどうしゃ生産せいさんの3分ぶんの1を占しめていた。ヨーロッパ、特とくにドイツでは「ある者ものは恐おそれ、ある者ものは心酔しんすいし、全すべての人々ひとびとを魅惑みわくする」と評ひょうされた[92]。ドイツではフォーディズムがアメリカの基本きほん的てき理念りねんを代表だいひょうしているように受うけ取とられた。フォードが示しめした生産せいさん規模きぼ・生産せいさん速度そくど・標準ひょうじゅん・哲学てつがくはドイツ人じんにとってアメリカ文化ぶんかの代表だいひょう例れいだった。フォーディズムは信奉しんぽう者しゃからも批判ひはん者しゃからもアメリカ資本しほん主義しゅぎ発展はってんの典型てんけいとされ、自動車じどうしゃ産業さんぎょうがアメリカの経済けいざいや社会しゃかいを理解りかいする鍵かぎとされた。あるドイツ人じんは「自動車じどうしゃはアメリカ人じんの生活せいかつを根底こんていから変かえており、今いまでは自動車じどうしゃのない生活せいかつは想像そうぞうできない。フォード氏しが救世きゅうせい主義しゅぎを説ときはじめる以前いぜん、どんな生活せいかつだったのかを思おもい出だすことさえ難むずかしい」と記しるしている[92]。多おおくのドイツ人じんにとってフォードは成功せいこうしたアメリカ主義しゅぎの本質ほんしつを具現ぐげんした者ものだった。

My Life and Work でフォードは、貪欲どんよくさや人種じんしゅ差別さべつや近視眼きんしがん的てき行為こういが排除はいじょされれば、経済けいざいと技術ぎじゅつの発展はってんによって植民しょくみん地ち主義しゅぎや新しん植民しょくみん地ち主義しゅぎに基もとづく貿易ぼうえきがなくなる日ひが訪おとずれ、全ぜん人類じんるいが真しんの恩恵おんけいを受うけるようになると予測よそくしている[93]。この考かんがえ方かたは漠然ばくぜんとしているが、理想りそう主義しゅぎ的てきである。

レース

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Ford 999 とフォード（右みぎ）とバーニー・オールドフィールド（1902年ねん）

1901年ねんから1913年ねんまでフォードは自動車じどうしゃレースへの関心かんしんを持もち続つづけ、レースカーを製作せいさくしドライバーとして参戦さんせんしていたが、後のちには専せん門もんのドライバーに運転うんてんさせた。1909年ねん、アメリカ横断おうだんレースにT型がたフォードを改造かいぞうした車くるまで参戦さんせんし1位いでゴールした（後のちに失格しっかくとされた）。1911年ねんには Frank Kulick の運転うんてんで1マイル (1.6km) のスピード記録きろくを更新こうしん。1913年ねん、改造かいぞうしたT型がたフォードでインディ500に参戦さんせんしようとしたが、車体しゃたい重量じゅうりょうが1,000ポンド (450kg) 足たりず断念だんねんした。スポーツとしてのルールの不備ふびを指摘してきし、その後ごレースに参加さんかすることはなかった。

My Life and Work でフォードは、レースについて否定ひてい的てきな論調ろんちょうで書かいている。彼かれが1890年代ねんだいから1910年代ねんだいにかけてレースに参戦さんせんしたのは、単たんに自動車じどうしゃの価値かちを証明しょうめいするためだったとしている。しかしフォードはその考かんがえ方かたを改あらためた。そしてその後ごもレースに参戦さんせんしていたら、フォード・モーターの自動車じどうしゃが勝かっていただろうとしている[94]。同どう著ちょでフォードは、交通こうつう、生産せいさん効率こうりつ、値ねごろ感かん、信頼しんらい性せい、燃費ねんぴ、経済けいざい発展はってん、オートメーションなどの理想りそうを語かたっているが、単たんにある地点ちてんからある地点ちてんへ素早すばやく移動いどうするという考かんがえ方かたにはほとんど言及げんきゅうしていない。

それにもかかわらず、フォードはレースに参戦さんせんしていた時代じだいに自動車じどうしゃレースに大おおきな影響えいきょうを与あたえ、1996年ねんにアメリカのモータースポーツ殿堂でんどう (Motorsports Hall of Fame of America) 入いりを果はたしている。

発明はつめい家か

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フォードは発明はつめい家かでもあり、アメリカで161の特許とっきょを取得しゅとくしている。

フォードは物質ぶっしつ科学かがくおよび材料ざいりょう工学こうがくに関心かんしんを持もっていた。バナジウム鋼こうの採用さいように熱心ねっしんで、金属きんぞく材料ざいりょうの研究けんきゅう開発かいはつにも熱心ねっしんだった[95]。

また、農産物のうさんぶつからプラスチックを製造せいぞうすることにも関心かんしんがあり、特とくにダイズからプラスチックを製造せいぞうすることに熱心ねっしんだった。そのためにジョージ・ワシントン・カーヴァーとも親交しんこうを結むすんだ。ダイズから生産せいさんしたプラスチックは1930年代ねんだいのフォード車しゃで使つかわれた。最終さいしゅう的てきに1942年ねん、Soybean Car というほぼ全体ぜんたいをプラスチックで作つくった自動車じどうしゃの特許とっきょを取得しゅとく。鋼はがね製せいの自動車じどうしゃより30%も軽量けいりょう化かされ、鋼はがね製せいよりも10倍ばいの強度きょうどがあった。さらに、ガソリンではなくアルコール（エタノール）を燃料ねんりょうとしていた。しかし、その設計せっけいが広ひろく受うけ入いれられることはなかった[96]。当時とうじまだ実験じっけん段階だんかいだった集成しゅうせい材ざい[97]やバイオ燃料ねんりょう[98]にも関心かんしんを持もち、木綿もめんの潜在せんざい的てき用途ようとにも関心かんしんを持もっていた[97]。"Kingsford" の商標しょうひょう名めいで販売はんばいされた成形せいけい木炭もくたんの開発かいはつにも貢献こうけんしている。義理ぎりの兄弟きょうだいE・G・キングスフォードがフォードの工場こうじょうから出でた木材もくざいの廃棄はいき物ぶつから成形せいけい木炭もくたんを作つくったのである。

トーマス・アルヴァ・エジソンとは友人ゆうじんであり、またヘンリーが技術ぎじゅつ者しゃとしてスタートしたのがエジソンの経営けいえいする研究所けんきゅうじょだったため、エジソンは上司じょうし的てき存在そんざいでもあった。年齢ねんれい差さが16歳さいあったが、ヘンリーが独立どくりつし、フォード・モータースを立たち上あげた後のちもエジソンとは生涯しょうがいに渡わたり親交しんこうを続つづけ、エジソンが実用じつよう的てきなアルカリ乾電池かんでんちを作つくるとすぐさまT型がたに採用さいよう、エジソンの研究所けんきゅうじょが火事かじで焼やけた際さいには無む利子りしで資金しきん援助えんじょを行おこなった。1929年ねんには白熱はくねつ電灯でんとう発明はつめい50周年しゅうねんの記念きねん祭さいをヘンリーが主催しゅさいし、電球でんきゅう発明はつめい時じのメンローパークの研究所けんきゅうじょを建物たてものからすべて再現さいげんした。82歳さいのエジソンはそれに驚おどろき、感動かんどうしながら電球でんきゅう発明はつめいを再演さいえんしたという。ヘンリー自身じしんは後のちにエジソンを「発明はつめい家かとしては優秀ゆうしゅうだったが、経営けいえい者しゃとしては最悪さいあくだった」と評価ひょうかしている。

晩年ばんねん

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1943年ねん5月がつ、フォード・モーター社長しゃちょうを務つとめていた息子むすこエドセルが癌がんで亡なくなった。年老としおいて病気びょうきがちだったヘンリー・フォードは社長しゃちょうに復帰ふっき。そのころフォードは心臓しんぞうの血管けっかんに問題もんだいを抱かかえており、精神せいしん的てきにも一貫いっかん性せいがなく、疑うたがい深ぶかくなっており、そのような職務しょくむには不ふ適当てきとうな状態じょうたいだった[99]。

管理かんり職しょくの多おおくは彼かれを社長しゃちょうに迎むかえることを歓迎かんげいしなかった。しかしそれまでの20年間ねんかん、公的こうてきには何なんの役職やくしょくにも就ついていなかったにもかかわらず、彼かれは同社どうしゃを事実じじつ上じょう経営けいえいしていた。取締役とりしまりやく会かいや経営けいえい陣じんがフォードに反抗はんこうしたことはなく、社長しゃちょうに復帰ふっきした時点じてんでもそれは変かわらなかった。取締役とりしまりやく会かいはフォードを社長しゃちょうに選えらび[100]、終戦しゅうせんまで社長しゃちょうを務つとめた。その間あいだに同社どうしゃは衰退すいたいしはじめ、1カ月かげつで1000万まんドル以上いじょうの損失そんしつを出だした。フランクリン・ルーズベルト大統領だいとうりょうの政権せいけんは軍需ぐんじゅ生産せいさんを維持いじするために同社どうしゃを国有こくゆう化かすることも検討けんとうしたが[47]、実際じっさいには行おこなわれなかった。

 
フォードの墓はか

1945年ねん9月がつ、健康けんこう状態じょうたいの悪化あっかを理由りゆうにフォードは孫まごのヘンリー・フォード2世せいに社長しゃちょうの座ざを譲ゆずり引退いんたいした。ヘンリー・フォード2世せいは、1947年ねんに保守ほしゅ派はを一掃いっそうするためベネットを解雇かいこしている。1947年ねん、83歳さいでディアボーンにて脳のう内ない出血しゅっけつで死去しきょ。グリーンフィールド・ビレッジで行おこなわれた通夜つやには1時じ間あいだに5,000人にんの弔問ちょうもん客きゃくが訪おとずれた。葬儀そうぎはデトロイトの教会きょうかい (Cathedral Church of St. Paul) で執とり行おこなわれ、デトロイトの墓地ぼちに埋葬まいそうされた[101][102]。

栄誉えいよ

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逸話いつわ

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  • 名言めいげん
    • 「奉仕ほうしを主おもとする事業じぎょうは栄さかえ、利得りとくを主おもとする事業じぎょうは衰おとろえる」
    • 「ほかの要因よういんはさておき、我々われわれの売上うりあげは、ある程度ていど賃金ちんぎんに依存いぞんしているのだ。より高たかい賃金ちんぎんを出だせば、その金かねはどこかで使つかわれ、ほかの分野ぶんやの商店しょうてん主ぬしや卸売おろしうり業者ぎょうしゃや製造せいぞう業者ぎょうしゃ、それに労働ろうどう者しゃの繁栄はんえいにつながり、 それがまた我々われわれの売上うりあげに反映はんえいされる。全国ぜんこく規模きぼの高こう賃金ちんぎんは全国ぜんこく規模きぼの繁栄はんえいをもたらす」
  • フリーメイソン会員かいいんだった[103][104]。
  • フォードの牧師ぼくしサミュエル S. マルキスによれば、フォードは転生てんせいを信しんじていた[105]。
  • 1914年ねん、タバコの危険きけん性せいが多おおくの研究けんきゅう者しゃや著名ちょめい人じんによって証明しょうめいされたとする本ほん "The Case Against the Little White Slaver" を若者わかもの向むけに出版しゅっぱんした[106]。
  • ジョージア州しゅうリッチモンド・ヒルに別荘べっそうを持もっていた。その地元じもとへの貢献こうけんとして礼拝れいはい堂どうや学校がっこうを建設けんせつし、多おおくの地元民じもとみんを雇用こようした。
  • フォードはアメリカ文化ぶんかに関心かんしんを持もっていた。1920年代ねんだい、マサチューセッツ州しゅうサドベリーを歴史れきしテーマパークにする事業じぎょうを開始かいし。マサチューセッツ州しゅうスターリングにあった童謡どうよう「メリーさんのひつじ」に縁えんのある学校がっこうの校舎こうしゃを移築いちくし、歴史れきしある Wayside Inn を買かい取とった。この計画けいかくは完成かんせいしなかった。同様どうようの試こころみとしてフォードは、ミシガン州しゅうディアボーンにヘンリーフォード博物館はくぶつかんを含ふくむグリーンフィールド・ビレッジを作つくり、歴史れきし的てき建築けんちく物ぶつの収集しゅうしゅうを行おこなった。博物館はくぶつかんには主おもに実用じつよう的てきなテクノロジーに関かんするものを収集しゅうしゅうしている。1929年ねん、Edison Institute として開館かいかんし、展示てんじは変更へんこうされているが今いまも運営うんえいされている。

関連かんれん作品さくひん

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最初さいしょに製作せいさくした自動車じどうしゃに乗のったヘンリー・フォード夫妻ふさい

脚注きゃくちゅう

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[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ ブナイ・ブリス、アメリカ・ユダヤ会議かいぎ（American Jewish Congress）、アメリカ・シオニスト会議かいぎ、アメリカ・ラビ中央ちゅうおう協議きょうぎ会かい（Central Conference of American Rabbis）と連名れんめい、American Jewish Committee,The "Protocols," Bolshevism and the Jews：An Address to Their Fellow-Citizens by American Jewish Organizations, December 1, 1920.[50]
  2. ^ 12月4日にちにはプロテスタント長老ちょうろう派は教会きょうかいは兄弟きょうだいであるユダヤ人じんへの攻撃こうげきを遺憾いかんに思おもい、ユダヤ人じんの市民しみん精神せいしんを信頼しんらいすると表明ひょうめいした[50]。

出典しゅってん

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