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備蓄 - Wikipedia

備蓄びちく(びちく、: acervumふつ: stockréserveえい: storestockpile)とは、将来しょうらい需給じゅきゅう逼迫ひっぱくそなえて物資ぶっし資源しげん食料しょくりょう)をたくわえること。大和言葉やまとことばで「たくわえ」とも。

概要がいよう

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備蓄びちくとは、将来しょうらいてき予測よそくされる需要じゅよう供給きょうきゅうのバランスがくずれる事態じたい、あるいは戦争せんそう災害さいがいパンデミックなどにともな発生はっせいすると予想よそうされる供給きょうきゅう停止ていし激減げきげんなどにそなえて、必要ひつよう物資ぶっしたくわえておくことである。なお平時へいじ流通りゅうつうにおいても、生産せいさんがわから消費しょうひがわ物資ぶっし流通りゅうつうする過程かていで、在庫ざいこかたちにより一定いってい変動へんどう対応たいおう可能かのうなシステムがそなわっているが、備蓄びちく表現ひょうげんする場合ばあいには、より積極せっきょくてきにそれら物資ぶっし貯蔵ちょぞうし、異常いじょう事態じたいそなえることをす。

保存ほぞんせいたかく、長期間ちょうきかん貯蔵ちょぞうをしても問題もんだいしょうじにくい性質せいしつ物資ぶっしや、保存ほぞんしょくなどは、コスト在庫ざいこコスト、倉庫そうこ費用ひようなど)さえ見合みあえばおこなえることになる。保存ほぞんせいひく物資ぶっし場合ばあいは、使用しよう期限きげん食品しょくひん飲料いんりょうでは消費しょうひ期限きげん)に注意ちゅういはらいつつ、備蓄びちくする必要ひつようてくる。大抵たいてい先入さきい先出さきだFIFO)の方法ほうほうで、つまりさき入手にゅうしゅしたものからさき使つかう、という方法ほうほう順次じゅんじえがおこなわれるのが一般いっぱんてきである。ただし、組織そしき性質せいしつや、物資ぶっし性質せいしつによっては、ある物資ぶっしかんしては定期ていきてきに「そうえ」される場合ばあいもある。たとえば防災ぼうさいよう常食じょうしょくは、「そうえ」される傾向けいこう顕著けんちょである。

特定とくてい物資ぶっし欠乏けつぼうすることが、組織そしき個人こじん存続そんぞくかかわるような場合ばあいとく注意深ちゅういぶか備蓄びちくおこなわれる傾向けいこうがある。「生存せいぞん戦略せんりゃく」をかんがえる場合ばあい必須ひっす物資ぶっし備蓄びちくおこなわれるのである。様々さまざまくに組織そしき集団しゅうだん(=社会しゃかい)が、なんらかのかたちで、必要ひつよう物資ぶっし調達ちょうたつ備蓄びちくすすめている。国家こっかてきレベルでおこなうものも、組織そしきレベル、家庭かていレベル、個人こじんレベルでおこなうものも、どれもしうるわけである。

政府せいふレベル

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政府せいふレベルでは、ふるくは飢饉ききん飢餓きが天災てんさいそなえた食糧しょくりょう備蓄びちくおこなわれてきた。近代きんだいでは食料しょくりょうひん戦略せんりゃく物資ぶっし衛生えいせい物資ぶっしなどの備蓄びちくすすめられている。

食糧しょくりょう備蓄びちく

食糧しょくりょうくなれば、国民こくみん市民しみん生命せいめいうしなわれるような危機ききてき状況じょうきょうおちいってゆくことになる。そこで、おおくの国家こっか基本きほんてき食品しょくひんかんしては備蓄びちく確保かくほする傾向けいこうがある。食糧しょくりょう自給じきゅうりつたか場合ばあい比較的ひかくてき安全あんぜんなのだが、食糧しょくりょう自給じきゅうりつひくくにでは食料しょくりょう備蓄びちく注意深ちゅういぶかくならざるをなくなる傾向けいこうがある。

燃料ねんりょう備蓄びちく
 
石油せきゆ備蓄びちく

燃料ねんりょう照明しょうめい調理ちょうり暖房だんぼうなど幅広はばひろ用途ようとにつかわれる。交通こうつう機関きかんについては、ひとうまり、くるまうまかれ(馬車ばしゃ)、ふねすすんでいた時代じだいはさほど問題もんだいにはならなかった。近代きんだい以降いこう石油せきゆものおおく(自動車じどうしゃ船舶せんぱく航空機こうくうきひとし)がうごくようになり、石油せきゆなしではほとんどのものうごかなくなった。19世紀せいき~20世紀せいき以降いこうは、燃料ねんりょう備蓄びちく途絶とだえると、基本きほんてきに、くるま船舶せんぱく航空機こうくうき等々とうとううごかすことができなくなるので、経済けいざいしょ活動かつどう停止ていししてしまう。また軍用ぐんよう艦船かんせん軍用ぐんようしゃ 等々とうとううごかせなくなり、軍隊ぐんたい機能きのう停止ていししてしまい、まともにたたかうこともできなくなる。石油せきゆは、石炭せきたん天然てんねんガスなどとともに、発電はつでんささえている。したがって、近代きんだい現代げんだいでは、石油せきゆ備蓄びちく国家こっか戦略せんりゃくじょう非常ひじょう重要じゅうようされている。

しょう組織そしき家庭かてい

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個人こじんてき備蓄びちく。(米国べいこく、バージニアしゅう、1942ねん
 
店舗てんぽないでの備蓄びちく商業しょうぎょう会計かいけいじょう、あるいは経理けいりうえ簿記ぼきうえ)は、「在庫ざいこ」というあつかいになっている。
 
食糧しょくりょう備蓄びちくのためにおこなわれてきた施設しせつ遺跡いせき
 
おなじく、歴史れきしてき食糧しょくりょう備蓄びちく施設しせつ野菜やさい種類しゅるいにもよるが、なま野菜やさい保存ほぞん場所ばしょとしては、地中ちちゅう場所ばしょ半地はんじ場所ばしょ野菜やさい元々もともとあった環境かんきょうちかく、呼吸こきゅうをできる場所ばしょ)でくら場所ばしょいている、とされている。
 
南極なんきょく基地きちにおける備蓄びちく
 
店舗てんぽたな余裕よゆうりょうたせてならべられた商品しょうひん

流通りゅうつう専門せんもん防災ぼうさい専門せんもんなどからは、店舗てんぽ商品しょうひんだなならんでいる商品しょうひん一種いっしゅ備蓄びちくとしての機能きのうっている、ということが指摘してきされることがある。いざ災害さいがいとなった場合ばあいは、商品しょうひんだなならんでいる商品しょうひんも、地域ちいき住民じゅうみん生命せいめいをつなぐうえ重要じゅうよう役割やくわりたすことになる。[注釈ちゅうしゃく 1]

ただし、備蓄びちくというのは基本きほんてきに、普段ふだんから、将来しょうらい見越みこして先手せんてってっておくことである。災害さいがいなどがきてしまってから、「後手ごてまわって」あわてて購入こうにゅうするようなことは基本きほんてきには「備蓄びちく」とはわない。災害さいがいなどがきてしまってから大量たいりょういするような行為こういは「備蓄びちく」とはばず「パニックい」とう。たとえば、1973ねん日本にっぽんでは、石油せきゆショックがきてしまってから、うわさ翻弄ほんろうされてトイレットペーパー騒動そうどう洗剤せんざい騒動そうどうこした。あくまで、備蓄びちくは、平時へいじからそれぞれの判断はんだん先手せんてっておこなうのが肝要かんようである。

  • 16世紀せいきヨーロッパで、鉛筆えんぴつ材料ざいりょうとなる黒鉛こくえんは、現在げんざいでいう戦略せんりゃく物資ぶっしなみ重要じゅうようなものだった。同様どうように、近代きんだいてきパルプによる製紙せいしほう確立かくりつする以前いぜんかみ材料ざいりょう不足ふそくした時代じだいには、かみ原料げんりょう重要じゅうよう物資ぶっしだった。

中国ちゅうごく

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中国ちゅうごく食糧しょくりょう備蓄びちくかんする資料しりょうがある[1]

日本にっぽん

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日本にっぽんではふるくからかく共同きょうどうたいかく家庭かてい食糧しょくりょうなどの備蓄びちくおこなってきた。そのために様々さまざま保存ほぞんしょく発明はつめいされた。

縄文じょうもん時代じだいには縄文じょうもん土器どき様々さまざま食品しょくひんたくわえられた。弥生やよい時代じだいには弥生やよい土器どきってわり、高床たかゆか建築けんちく木造もくぞう建物たてものない備蓄びちくされた。食品しょくひん備蓄びちくする場合ばあいネズミなどによる食害しょくがいふせ工夫くふう必要ひつようだった。

最近さいきんでは、2000ねん問題もんだいインフルエンザ流行りゅうこう東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさい新型しんがたコロナウイルスの蔓延まんえんなどの反省はんせいまえて、かく家庭かていがそれぞれしっかり備蓄びちくおこなうことを、日本にっぽん行政ぎょうせい機関きかん奨励しょうれいするようになった。

東京とうきょうは2005ねん、11月19にちを「備蓄びちく」にさだめ、保存ほぞんしょくなどをかく家庭かていそなえるようけている。日取ひどりは、「1」ねんに「1」は、びち(1)く(9)の確認かくにんをという趣旨しゅしからえらばれた[2]

歴史れきしてきおこなわれてきた食糧しょくりょう備蓄びちく

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現在げんざい国家こっか備蓄びちく物資ぶっし

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4ねんいち備蓄びちく計画けいかく見直みなおしがおこなわれている[3]

  • 義務ぎむ貯蔵ちょぞうPflichtlager) - スイスが供給きょうきゅう危機ききによる影響えいきょうけている場合ばあいまたはスイスが国際こくさいてき放出ほうしゅつ義務ぎむづけられている場合ばあいにのみ、連邦れんぽう国民こくみん経済けいざい大臣だいじん決定けっていにより放出ほうしゅつすることができる備蓄びちく
    • 義務ぎむてき責任せきにん在庫ざいこ(obligatorische Pflichtlagerhaltung) - 連邦れんぽう政府せいふ民間みんかん企業きぎょう契約けいやくしている4かげつぶん目標もくひょう6かげつ)を食料しょくりょう、エネルギー、医薬品いやくひん備蓄びちく
    • 任意にんいてき責任せきにん在庫ざいこ(freiwillige Pflichtlagerhaltung) - 連邦れんぽう政府せいふ民間みんかん企業きぎょう契約けいやくしている政府せいふ指定してい備蓄びちく物資ぶっし以外いがい備蓄びちくひん
  • 家庭かていない備蓄びちく(Haushaltvorrat) - かく家庭かていにパンフレットをくば推奨すいしょうしている備蓄びちく
    • 基礎きそてき備蓄びちく(Grundvorrat) - 食料しょくりょう14にちぶん
    • 追加ついかてき備蓄びちく(Ergänzungsvorrat)- 食料しょくりょう以外いがい生理せいり用品ようひん燃料ねんりょう、ペットフードほか)
    • 飲料いんりょう備蓄びちく(Getränkevorrat)- もの2にちぶん

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 災害さいがいなどが発生はっせいしたのちも、住民じゅうみんのことをかんがえてあえてみせ営業えいぎょうし、かく店舗てんぽ住民じゅうみん品物しなもの提供ていきょうすることがおこなわれることがある。基本きほんてきには普段ふだんどおりの価格かかく販売はんばいされるが、現金げんきんうしなってしまった住民じゅうみん財布さいふたずに避難ひなんした住民じゅうみんなどにけて、良心りょうしんてき商店しょうてんぬしなどによって利益りえき度外視どがいしだい赤字あかじ承知しょうち商品しょうひん無料むりょう提供ていきょうするなどということがおこなわれることがある。このような良心りょうしんてきなことがおこなわれた場合ばあい災害さいがいからの復旧ふっきゅう地域ちいき住民じゅうみんが「おんかえし」でそのみせ優先ゆうせんてき購入こうにゅうしてくれ、とても繁盛はんじょうするということもきている。反対はんたいに、店主てんしゅなどが強欲ごうよくしんられてさき利益りえき重視じゅうしで、災害さいがい商品しょうひん値段ねだん意図いとてき悪質あくしつ価格かかくまでりあげたり、あるいは商品しょうひんることをこばんだりした場合ばあいは、平時へいじもどったときに、その強欲ごうよくぶりが後々あとあとまで人々ひとびとあいだかたがれ、人々ひとびといかり、きらい、みせりつかなくなり、やがて店舗てんぽが「つぶれる」(倒産とうさんする)といったこともしばしばきている。

出典しゅってん

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  1. ^ おう楽平よしひら中国ちゅうごく食糧しょくりょう備蓄びちくシステムについて」『明治大学めいじだいがく教養きょうよう論集ろんしゅうだい344かん明治大学めいじだいがく教養きょうよう論集ろんしゅう刊行かんこうかい、2001ねん3がつ、75-109ぺーじISSN 03896005NAID 40003633821 
  2. ^ 11月19にちは「備蓄びちく自宅じたく避難ひなん生活せいかつそなえを産経新聞さんけいしんぶん朝刊ちょうかん2018ねん11月14にち東京とうきょうめん)2018ねん12月16にち閲覧えつらん
  3. ^ 樋口ひぐちおさむスイスの「経済けいざいかんするくに供給きょうきゅう政策せいさく」と農政のうせい改革かいかく:備蓄びちく政策せいさく中心ちゅうしんとして」『レファレンス』だい58かんだい2ごう国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかん調査ちょうさおよ立法りっぽう考査こうさきょく、2008ねん2がつ、53-74ぺーじdoi:10.11501/999685ISSN 00342912NAID 40015864800NDLJP:999685 

関連かんれん項目こうもく

編集へんしゅう
医薬品いやくひん備蓄びちく - オーストラリアの National Medical Stockpile、日本にっぽん災害さいがい対策たいさくよう医薬品いやくひんなどがある。