児童 じどう 文学 ぶんがく ( じどうぶんがく ) は、0歳 さい から10代、概 おおむ ね12歳 さい 頃 ごろ までのプレティーン の読 よ み手 て やき手 きて を対象 たいしょう にした文学 ぶんがく 作品 さくひん およびジャンルであるが、ティーンエイジャー までを範疇 はんちゅう に含 ふく む場合 ばあい もある。イラストレーション が添 そ えられている場合 ばあい が多 おお い。
ドクター・スース の本 ほん を読 よ む4人 にん の子 こ どもたち
『小 ちい さなかわいいポケットブック 』(1744)。男 おとこ の子 こ にはボール、女 おんな の子 こ には針刺 はりさ し付 つ きで販売 はんばい された
この語 かたり は娯楽 ごらく 性 せい に重 おも きを置 お いているエンターテイメント 作品 さくひん 群 ぐん であるヤングアダルト 小説 しょうせつ (ライトノベル や少女 しょうじょ 小説 しょうせつ )や漫画 まんが などの他 ほか のジャンルと区別 くべつ する形 かたち で使 つか われる場合 ばあい もある。明確 めいかく に子 こ ども向 む けに作 つく られた書物 しょもつ は17世紀 せいき までには既 すで に存在 そんざい していた。児童 じどう 文学 ぶんがく の研究 けんきゅう のための職業 しょくぎょう 団体 だんたい 、専 せん 門 もん の出版 しゅっぱん 物 ぶつ 、大学 だいがく の専攻 せんこう 課程 かてい なども存在 そんざい する。国 くに や世代 せだい を超 こ えて読 よ み継 つ がれる名作 めいさく や、幅広 はばひろ い世代 せだい に受 う け入 い れられるベストセラー やロングセラー作品 さくひん が数多 かずおお くある。
日本 にっぽん においては、子 こ どもを対象 たいしょう としたフィクションの文学 ぶんがく ジャンルについては、童話 どうわ という用語 ようご が使 つか われていることが多 おお い。しかし、空想 くうそう 的 てき なお話 はなし というジャンルとしての用語 ようご として使 つか われることもあり、昭和 しょうわ 時代 じだい 以降 いこう は、広義 こうぎ には児童 じどう 文学 ぶんがく が使 つか われるようになっており、童話 どうわ に関 かん しては、年少 ねんしょう 者 しゃ 向 む けという狭義 きょうぎ の意味合 いみあ いで一般 いっぱん には流布 るふ している。出版 しゅっぱん 社 しゃ や出版 しゅっぱん 業界 ぎょうかい では、こうしたものや絵本 えほん を児童 じどう 書 しょ あるいは児童 じどう 図書 としょ と呼 よ んで扱 あつか っている。
児童 じどう 文学 ぶんがく という言葉 ことば が何 なに を指 さ すかについては議論 ぎろん がある。
おそらく、もっとも一般 いっぱん 的 てき な児童 じどう 文学 ぶんがく の定義 ていぎ は、意図 いと 的 てき に児童 じどう (子供 こども )たちに向 む けて書 か かれた本 ほん というものであろう。南 みなみ フロリダ大学 だいがく 教育 きょういく 学部 がくぶ 准 じゅん 教授 きょうじゅ のナンシー・アンダーソン[ 2] は、児童 じどう 文学 ぶんがく を「漫画 まんが 本 ほん 、ジョーク 集 しゅう 、辞書 じしょ や百科 ひゃっか 事典 じてん のような通読 つうどく を意図 いと していないノンフィクション 、参考 さんこう 書 しょ など」を除 のぞ く子 こ どものために書 か かれた全 すべ ての本 ほん であると定義 ていぎ している[ 3] 。こうした作品 さくひん の中 なか には大人 おとな にも非常 ひじょう に人気 にんき のあるものも含 ふく まれる。J・K・ローリング の『ハリー・ポッター 』シリーズは当初 とうしょ は子 こ どものために書 か かれマーケティングされていたが、子 こ どものみならず大人 おとな にも非常 ひじょう に人気 にんき となり『ニューヨーク・タイムズ 』が専用 せんよう のベストセラー 表 ひょう を作成 さくせい するまでになった。ある本 ほん が一般 いっぱん の文学 ぶんがく と児童 じどう 文学 ぶんがく のどちらに含 ふく まれるかは決定 けってい し難 がた いことも多 おお く、多 おお くの本 ほん で大人 おとな と子 こ どもの両方 りょうほう をターゲットにしたマーケティングが行 おこな われている。
子 こ どもを主人公 しゅじんこう 、または子 こ ども社会 しゃかい とその文化 ぶんか をテーマとしつつ、子 こ どもを必 かなら ずしも読者 どくしゃ 対象 たいしょう としていない作品 さくひん もあるが、そうしたものはこの観点 かんてん からは児童 じどう 文学 ぶんがく ではなく一般 いっぱん の文学 ぶんがく と見 み なされる。
子 こ どもの頃 ころ のデイジー・アシュフォード
一般 いっぱん には子 こ ども自身 じしん によって書 か かれた作品 さくひん すなわち児童 じどう 文学 ぶんがく とはならないが、隣接 りんせつ 分野 ぶんや のものとして無視 むし できないものである。欧米 おうべい ではデイジー・アシュフォード が9歳 さい の時 とき に書 か いた『小 ちい さなお客 きゃく さんたち』や、ジェーン・オースティン が兄弟 きょうだい 姉妹 しまい を楽 たの しませるために書 か いた子 こ ども時代 じだい の作品 さくひん (en:juvenilia )などがある。日本 にっぽん では、豊田 とよだ 正子 まさこ の『綴方 つづりかた 教室 きょうしつ 』(1937年 ねん )や安本 やすもと 末子 すえこ 『にあんちゃん 』(1958年 ねん )などはベストセラーになり、映画 えいが 化 か もされて大 おお きな話題 わだい を巻 ま き起 お こした。これらは作文 さくぶん や日記 にっき であったが、創作 そうさく では第 だい 8回 かい 福島 ふくしま 正実 まさみ 記念 きねん SF童話 どうわ 賞 しょう を受賞 じゅしょう した竹下 たけした 龍之介 りゅうのすけ 『天才 てんさい えりちゃん 金魚 きんぎょ を食 た べた』(1991年 ねん )が6歳 さい の子 こ が書 か いた作品 さくひん として話題 わだい になり、シリーズ化 か 作品 さくひん も出版 しゅっぱん された。
最 もっと も制限 せいげん 的 てき な児童 じどう 文学 ぶんがく の定義 ていぎ は、各種 かくしゅ の権威 けんい が子 こ どもに「相応 ふさわ しい」と認定 にんてい した本 ほん というものである。ここでの権威 けんい には教師 きょうし 、書評 しょひょう 家 か 、学者 がくしゃ 、親 おや 、出版 しゅっぱん 社 しゃ 、司書 ししょ 、小売 こうり 商 しょう 、出版 しゅっぱん 賞 しょう の選考 せんこう 委員 いいん などがある。一 いち 例 れい として日本 にっぽん では全国 ぜんこく 学校 がっこう 図書館 としょかん 協議 きょうぎ 会 かい が推薦 すいせん 図書 としょ を選定 せんてい している。
子 こ どもを人生 じんせい のあまり幸福 こうふく でない側面 そくめん から守 まも りたいと願 ねが う両親 りょうしん はしばしば伝統 でんとう 的 てき な童話 どうわ 、童謡 どうよう やその他 た の冒険 ぼうけん 譚 たん などを問題 もんだい 視 し する。こうした物語 ものがたり で得 え てして最初 さいしょ に起 お こるのは大人 おとな の影響 えいきょう の除去 じょきょ であり、主人公 しゅじんこう は自分 じぶん 自身 じしん で物事 ものごと に対処 たいしょ せざるを得 え なくなる。有名 ゆうめい な例 れい としては『白雪姫 しらゆきひめ 』『ヘンゼルとグレーテル 』『バンビ 』『世 よ にも不幸 ふこう なできごと 』などがある。しかしながらこうした要素 ようそ は物語 ものがたり に必要 ひつよう なものと考 かんが えられている。結局 けっきょく のところ、ほとんどの場合 ばあい で物語 ものがたり の本質 ほんしつ は人物 じんぶつ たちが「大人 おとな になってゆく」ことなのである。
ハックルベリー・フィン
児童 じどう 文学 ぶんがく の最 もっと も広 ひろ い定義 ていぎ は、子 こ どもたちが実際 じっさい に選 えら んで読 よ む本 ほん というものである。子 こ どもたちは、たとえば漫画 まんが のような、伝統 でんとう 的 てき な意味 いみ では文学 ぶんがく とは全 まった く考 かんが えようとしない人達 ひとたち もいる本 ほん も選 えら んで読 よ む。また子 こ どもたちは古典 こてん 文学 ぶんがく や、現代 げんだい 作家 さっか による世 よ に認 みと められた偉大 いだい な作品 さくひん も読 よ むことがあるし、重層 じゅうそう 的 てき な語 かた りを持 も つ複雑 ふくざつ な物語 ものがたり も楽 たの しむ。小説 しょうせつ 家 か オースン・スコット・カード の意見 いけん によれば、「子 こ どもたちはしばしば真 しん に偉大 いだい な世界 せかい の文学 ぶんがく の守 まも り手 しゅ となると考 かんが えることができる。子 こ どもたちは物語 ものがたり を愛 あい す一方 いっぽう で文体 ぶんたい の流行 りゅうこう や文学 ぶんがく 的 てき な仕掛 しか けには無 む 関心 かんしん であり、的確 てきかく に真実 しんじつ と力 ちから の方 ほう へと引 ひ き寄 よ せられるのであるから。」[ 4] 子 こ ども時代 じだい に『不思議 ふしぎ の国 くに のアリス 』を楽 たの しんだ人 ひと が、大人 おとな となって再読 さいどく した時 とき に、子 こ どもの時 とき には気付 きづ かなかったその暗 くら いテーマに気付 きづ くといったこともあるであろう。
加 くわ えて、当初 とうしょ は大人 おとな に向 む けて書 か かれた古典 こてん 的 てき な作品 さくひん が今日 きょう では子 こ ども向 む けと考 かんが えられるようになっている例 れい も多 おお い。マーク・トウェイン の『ハックルベリー・フィンの冒険 ぼうけん 』も本来 ほんらい は大人 おとな 向 む けに書 か かれたものであったが[ 5] 、今日 きょう ではアメリカ合衆国 あめりかがっしゅうこく の小学校 しょうがっこう のカリキュラムの一環 いっかん として広 ひろ く読 よ まれている。
児童 じどう 文学 ぶんがく はさまざまな観点 かんてん から分類 ぶんるい されうる。
文学 ぶんがく ジャンルとは、文芸 ぶんげい 作品 さくひん のカテゴリである。
ジャンルは技法 ぎほう 、口調 くちょう 、内容 ないよう 、長 なが さなどによって決定 けってい される。
ナンシー・アンダーソンは児童 じどう 文学 ぶんがく を6つの大 おお きなカテゴリと、いくつかの重要 じゅうよう なサブジャンルに分類 ぶんるい している[ 6] ――
絵本 えほん 。アルファベット 文字 もじ や数字 すうじ を教 おし える教本 きょうほん 、パターンブック [訳語 やくご 疑問 ぎもん 点 てん ] 、文字 もじ のない本 ほん などを含 ふく む。
伝承 でんしょう 文学 ぶんがく 。これには10の特徴 とくちょう がある[ 7] ――(1) 作者 さくしゃ 不明 ふめい 、(2) 紋 もん 切 ぎ り型 がた の出 で だしと終 お わり(「むかしむかしあるところに……」)、(3) 漠然 ばくぜん とした設定 せってい 、(4) ステレオタイプの人物 じんぶつ 、(5) 擬人 ぎじん 観 かん 、(6) 原因 げんいん と結果 けっか 、(7) 主人公 しゅじんこう のハッピーエンド、(8) 魔法 まほう が普通 ふつう に受 う け入 い れられている、(9) 単純 たんじゅん で直接的 ちょくせつてき なプロットを持 も つ簡潔 かんけつ な話 はなし 、(10) 行動 こうどう と言葉 ことば のパターンの反復 はんぷく 。伝承 でんしょう 文学 ぶんがく の大 だい 部分 ぶぶん は民話 みんわ からなっており、昔 むかし の人々 ひとびと の伝説 でんせつ 、習慣 しゅうかん 、迷信 めいしん 、信仰 しんこう などを伝 つた えている。この大 だい ジャンルはさらにサブジャンルに分 わ けることができる――神話 しんわ 、寓話 ぐうわ 、バラッド 、フォークミュージック 、伝説 でんせつ 、童話 どうわ [ 8] 。
フィクション 。ファンタジー と現実 げんじつ 的 てき なフィクション(現代 げんだい 的 てき ・歴史 れきし 的 てき の双方 そうほう を含 ふく む)からなる。
ノンフィクション
伝記 でんき 。自伝 じでん を含 ふく む。
詩 し と韻文 いんぶん
これらは最 もっと も広 ひろ い意味 いみ での「児童 じどう 文学 ぶんがく 」もしくは「児童 じどう 書 しょ 」であり、児童 じどう 文学 ぶんがく という分野 ぶんや を限定 げんてい 的 てき に考 かんが える場合 ばあい には、実用 じつよう 的 てき な教本 きょうほん や文章 ぶんしょう によらない絵本 えほん 、さらには固有 こゆう の創作 そうさく 者 しゃ を持 も たない昔話 むかしばなし や神話 しんわ 、娯楽 ごらく を主体 しゅたい としたフィクションなどは除外 じょがい されることもある。
児童 じどう 文学 ぶんがく そのものも大人 おとな の文学 ぶんがく と対 たい になる年齢 ねんれい によるカテゴリであるが、0歳 さい から18歳 さい まででは子 こ どもの理解 りかい 力 りょく や興味 きょうみ もさまざまであるため発達 はったつ 段階 だんかい に応 おう じて形態 けいたい や内容 ないよう も違 ちが ってくる。
絵本 えほん は0-5歳 さい 程度 ていど の、まだ文字 もじ を(充分 じゅうぶん には)読 よ めない「読者 どくしゃ 以前 いぜん 」の子 こ どもたちにも向 む いている。
5-7歳 さい 頃 ごろ の、読 よ み書 か きを覚 おぼ えたばかりの子 こ どもに向 む けた本 ほん は、簡単 かんたん な童話 どうわ や昔話 むかしばなし などを主題 しゅだい とし、子 こ どもに読書 どくしょ 力 りょく をつけるよう工夫 くふう されていることが多 おお い。
7-12歳 さい 頃 ごろ の子 こ どもは発達 はったつ に応 おう じて、もう少 すこ し長 なが い、章 あきら 立 だ てのある本 ほん (チャプターブック)も読 よ めるようになり、児童 じどう 文学 ぶんがく の中核 ちゅうかく となっている。
ヤングアダルト 小説 しょうせつ (ジュブナイル )は概 おおむ ね13歳 さい 以降 いこう のティーンエイジャー(ヤングアダルト)を読者 どくしゃ に想定 そうてい している。
こうした分類 ぶんるい の基準 きじゅん は、児童 じどう 文学 ぶんがく そのものを定義 ていぎ する基準 きじゅん と同様 どうよう に、曖昧 あいまい で問題 もんだい を含 ふく むものである。明確 めいかく な違 ちが いの1つに幼 おさな い子 こ ども向 む けの本 ほん はイラストレーション が添 そ えられることが多 おお いということが挙 あ げられるが、絵 え を作品 さくひん の不可分 ふかぶん な一部 いちぶ として持 も つ絵本 えほん であってもこうしたジャンルや年齢 ねんれい 層 そう に収 おさ まらないものがある。ピーター・シス の『チベット――赤 あか い箱 はこ を通 とお して』は大人 おとな の読者 どくしゃ に向 む けた絵本 えほん の1例 れい である。
ライマン・フランク・ボーム 『オズの魔法使 まほうつか い 』(1900)。W・W・デンズロー (英語 えいご 版 ばん ) 画 が
子 こ どもや若年 じゃくねん 者 しゃ の成長 せいちょう への感化 かんか を念頭 ねんとう に置 お いた、教育 きょういく 的 てき な意図 いと 、配慮 はいりょ がその根底 こんてい にあるものが多 おお く、子 こ どもの興味 きょうみ や発育 はついく に応 おう じた平易 へいい な言葉 ことば で書 か かれる。しかし難 むずか しい内容 ないよう を扱 あつか わないという訳 わけ ではなく、難 むずか しい内容 ないよう でも子 こ どもに必要 ひつよう と考 かんが え、わかりやすい例 れい や言葉 ことば で表現 ひょうげん する作家 さっか もいる。平易 へいい な表現 ひょうげん で根源 こんげん 的 てき なことを語 かた っている場合 ばあい があり、子 こ どもに受 う け入 い れられる児童 じどう 文学 ぶんがく 作品 さくひん には大人 おとな の鑑賞 かんしょう にも堪 こた えられる秀逸 しゅういつ なものも多 おお い。たとえば灰 はい 谷 たに 健次郎 けんじろう 著 ちょ の『兎 うさぎ の眼 め 』やあさのあつこ 著 ちょ の『バッテリー』など一般 いっぱん の文庫本 ぶんこぼん となって大人 おとな 読者 どくしゃ に広 ひろ く流布 るふ する作品 さくひん がある。児童 じどう 文学 ぶんがく は大人 おとな 向 む けに書 か かれた「文学 ぶんがく 」の価値 かち 観 かん が持 も ち込 こ まれているという指摘 してき がある。
おおむね10代中 ちゅう ・後半 こうはん から20代 だい 初 はじ め頃 ごろ の時期 じき をヤングアダルト と呼 よ ぶが、児童 じどう の年代 ねんだい を超 こ えた年齢 ねんれい 層 そう にも児童 じどう 文学 ぶんがく 的 てき な内容 ないよう が求 もと められる事 こと がある。J・D・サリンジャー の『ライ麦 らいむぎ 畑 はたけ でつかまえて 』(1951年 ねん )に見 み られるように、この世代 せだい 特有 とくゆう の問題 もんだい 、例 たと えば、恋愛 れんあい 、いじめ 、薬物 やくぶつ 依存 いぞん 、自殺 じさつ などを扱 あつか ったジャンルも登場 とうじょう し、「ヤングアダルト」という名称 めいしょう で呼 よ ばれる事 こと もある。日本 にっぽん では重松 しげまつ 清 きよし (作品 さくひん はナイフ ・エイジ など)らがヤングアダルト世代 せだい 向 む けの作品 さくひん を手 て がけている。
創作 そうさく 童話 どうわ と呼 よ ばれる作品 さくひん は文学 ぶんがく 性 せい を有 ゆう する場合 ばあい が多 おお い。創作 そうさく 童話 どうわ は狭義 きょうぎ の童話 どうわ 概念 がいねん であるためヤングアダルト層 そう は対象 たいしょう としないが、小学校 しょうがっこう 高学年 こうがくねん 程度 ていど 向 む けの作品 さくひん も含 ふく まれる事 こと がある。
ある児童 じどう 書 しょ が成功 せいこう を収 おさ めると、作者 さくしゃ はその話 はなし に続編 ぞくへん を書 か いたりシリーズを立 た ち上 あ げたりしようとすることが多 おお く、ライマン・フランク・ボーム の『オズの魔法使 まほうつか い 』や那須 なす 正幹 まさみき の『ズッコケ三 さん 人組 にんぐみ 』などがその例 れい である。『ハリー・ポッター 』シリーズや原 はら ゆたか の『かいけつゾロリ 』のように、最初 さいしょ からシリーズとして企画 きかく された作品 さくひん もある。イーニッド・ブライトン やR・L・スタイン は終 お わりのないシリーズを専 せん 門 もん にしている。シリーズはその作者 さくしゃ よりも長続 ながつづ きすることもある。ライマン・フランク・ボームが亡 な くなると、出版 しゅっぱん 社 しゃ はルース・プラムリー・トンプソン (英語 えいご 版 ばん ) を雇 やと って続編 ぞくへん を書 か き継 つ がせた。『少女 しょうじょ 探偵 たんてい ナンシー 』などのように、1つのペンネームを共有 きょうゆう して複数 ふくすう の作者 さくしゃ により書 か かれたシリーズもある。
エリザベス・シッペン・グリーン (英語 えいご 版 ばん ) 『旅 たび 』(1903)
児童 じどう 書 しょ にはしばしばイラストレーション がふんだんに添 そ えられている。一般 いっぱん 的 てき に、幼 おさな い読者 どくしゃ に向 む けた本 ほん であるほど絵 え が果 は たす役割 やくわり は大 おお きくなり、特 とく にまだ文字 もじ を読 よ めない幼児 ようじ 向 む けの本 ほん がそうである。子 こ ども向 む けの絵本 えほん は幼 おさな い子 こ どもにとって、高水準 こうすいじゅん な芸術 げいじゅつ に認識 にんしき 可能 かのう な形 かたち で触 ふ れることのできる機会 きかい となりうる。
多 おお くの児童 じどう 文学 ぶんがく 作家 さっか は気 き に入 い ったイラストレーター(挿絵 さしえ 画家 がか 、イラストレーター 、漫画 まんが 家 か )に自分 じぶん の言葉 ことば を絵 え にしてもらうが、最初 さいしょ からイラストレーターと共 とも に本 ほん 作 づく りをする場合 ばあい もあれば、イラストレーターが自分 じぶん 自身 じしん で本 ほん を書 か く場合 ばあい もある。イラストなしでも話 はなし を楽 たの しめるだけの読書 どくしょ 力 りょく に達 たっ した後 のち も、子 こ どもたちは本 ほん に時々 ときどき 出 で て来 く る絵 え を楽 たの しんで眺 なが めるものである。
児童 じどう 文学 ぶんがく の定義 ていぎ 自体 じたい が明確 めいかく なものではないので、その歴史 れきし がいつ始 はじ まったのかを特定 とくてい するのも難 むずか しい。ここでは子 こ どもに向 む けた、もしくは子 こ どもに広 ひろ く受容 じゅよう された書物 しょもつ あるいは文学 ぶんがく の発達 はったつ を概観 がいかん する。
子 こ どもに人気 にんき のある物語 ものがたり の中 なか には非常 ひじょう に古 ふる い時代 じだい に書 か かれたものもある。『イソップ寓話 ぐうわ 』は紀元前 きげんぜん 3世紀 せいき に成立 せいりつ し今 いま も世界中 せかいじゅう の子 こ どもたちに愛 あい されているし、トマス・マロリー の『アーサー王 おう の死 し 』(1486年 ねん )や『ロビン・フッド 』(1450年 ねん 頃 ごろ )は子 こ どものことを念頭 ねんとう に置 お いて書 か かれたものではないが、何 なに 世紀 せいき にも亘 わた って子 こ どもたちを魅了 みりょう してきた。
1658年 ねん 、チェコ のコメニウス がイラスト入 い りの知識 ちしき の書 しょ 『世界 せかい 図絵 ずえ 』を著 あらわ した。これが明確 めいかく に子 こ どもに向 む けて書 か かれた最初 さいしょ の絵入 えい り本 ほん であると考 かんが えられている。また、この時代 じだい にはフランスのシャルル・ペロー (1628-1703)が童話 どうわ の基礎 きそ を築 きず いた。ペローの物語 ものがたり には『赤 あか ずきん 』『眠 ねむ れる森 もり の美女 びじょ 』『長靴 ながぐつ をはいた猫 ねこ 』『シンデレラ 』などが含 ふく まれている。
1744年 ねん 、イギリスでジョン・ニューベリー (英語 えいご 版 ばん ) が『小 ちい さなかわいいポケットブック 』を出版 しゅっぱん した。ニューベリーはこの本 ほん を男 おとこ の子 こ にはボール、女 おんな の子 こ には針刺 はりさ し付 つ きで販売 はんばい した。明確 めいかく に子 こ どもに向 む けて販売 はんばい された娯楽 ごらく 書 しょ の始 はじ まりとして時代 じだい を画 かく するものであったと考 かんが えられている。ニューベリー以前 いぜん は、子 こ どもと大人 おとな のための物語 ものがたり の豊 ゆた かな口承 こうしょう は存在 そんざい したが、子 こ どもに向 む けて販売 はんばい される文学 ぶんがく は子 こ どもを教育 きょういく することを意図 いと したものであった。
ウィルヘルム(左 ひだり )とヤコブ(右 みぎ )のグリム兄弟 きょうだい 。Elisabeth Jerichau-Baumann [訳語 やくご 疑問 ぎもん 点 てん ] 画 が (1855)
19世紀 せいき 初頭 しょとう に、ヤコブとウィルヘルムのグリム兄弟 きょうだい が『白雪姫 しらゆきひめ 』『ラプンツェル 』『ヘンゼルとグレーテル 』などのドイツの口承 こうしょう を記録 きろく し保存 ほぞん に努 つと めた。E. T. A.ホフマン の物語 ものがたり 『くるみ割 わ り人形 にんぎょう とねずみの王様 おうさま 』1816年 ねん にドイツの子供 こども 向 む け物語 ものがたり 集 しゅう に掲載 けいさい されました。これは、児童 じどう 文学 ぶんがく に奇妙 きみょう でグロテスクな要素 ようそ を導入 どうにゅう した最初 さいしょ の現代 げんだい 短編 たんぺん 小説 しょうせつ でした。
1835-1848年 ねん にかけて、デンマークのハンス・クリスチャン・アンデルセン が『人魚 にんぎょ 姫 ひめ 』(1836年 ねん )、『裸 はだか の王様 おうさま 』(1837年 ねん )、『みにくいアヒルの子 こ 』(1844年 ねん )、『雪 ゆき の女王 じょおう 』(1845年 ねん )などの、伝承 でんしょう に基 もと づかない創作 そうさく 性 せい の高 たか い童話 どうわ を刊行 かんこう した。アンデルセンはヨーロッパ中 ちゅう の子 こ どもたちに喜 よろこ びを与 あた えたとして、存命 ぞんめい 中 ちゅう から王族 おうぞく によって祝宴 しゅくえん が行 おこな われ称揚 しょうよう された。アンデルセンの童話 どうわ は150以上 いじょう もの言語 げんご に翻訳 ほんやく され、今日 きょう でも世界中 せかいじゅう で百 ひゃく 万 まん 部 ぶ 単位 たんい で刊行 かんこう され、他 た の数 すう 多 おお くの作品 さくひん にも影響 えいきょう を与 あた え続 つづ けている[ 10] 。「裸 はだか の王様 おうさま 」や「みにくいアヒル」は現代 げんだい 英語 えいご や日本語 にほんご などでも良 よ く知 し られた慣用 かんよう 句 く として通 かよ っている。
1865年 ねん 、イギリスでルイス・キャロル (1832年 ねん - 1898年 ねん )が『不思議 ふしぎ の国 くに のアリス 』を刊行 かんこう した。この物語 ものがたり は論理 ろんり 学 がく とも戯 じゃ れており、子 こ どもだけでなく大人 おとな にも長 なが く人気 にんき となっている。『アリス』は文学 ぶんがく 的 てき ナンセンス の最 もっと も特徴 とくちょう 的 てき な例 れい の1つと考 かんが えられており、その物語 ものがたり の進行 しんこう と構造 こうぞう は主 おも にファンタジー の分野 ぶんや で極 きわ めて大 おお きな影響 えいきょう 力 りょく を持 も った。
1880年 ねん に、スイス でヨハンナ・シュピリ (1827年 ねん - 1901年 ねん )が『ハイジ 』(1880年 ねん )を出版 しゅっぱん した。副題 ふくだい には、この本 ほん が「子 こ どもと、子 こ どもを愛 あい する人 ひと のため」の本 ほん であると謳 うた われている。ジョーエル・チャンドラー・ハリス (1845年 ねん - 1908年 ねん )はアフリカ系 けい アメリカ人 じん の方言 ほうげん を話 はな す動物 どうぶつ キャラクターが登場 とうじょう する民話 みんわ を書 か いた。
1900年 ねん 、アメリカ合衆国 あめりかがっしゅうこく でライマン・フランク・ボーム が『オズの魔法使 まほうつか い 』を発表 はっぴょう した。以後 いご 、さまざまな版 はん が絶 た えず刊行 かんこう されている。1902年 ねん には舞台 ぶたい 化 か され、1939年 ねん には映画 えいが 化 か された。アメリカ文化 ぶんか の中 なか でも最 もっと も知 し られた物語 ものがたり の1つであり、40ヵ国 かこく 語 ご に翻訳 ほんやく された。『オズ』の大 だい 成功 せいこう を受 う けてボームは13篇 へん の続編 ぞくへん を書 か き、ボームの死後 しご も複数 ふくすう の作者 さくしゃ が数 すう 十 じゅう 年間 ねんかん に亘 わた り続編 ぞくへん を書 か き続 つづ けた。
『ピーターラビットのおはなし』
1902年 ねん 、ビアトリクス・ポター は『ピーターラビットのおはなし 』を発表 はっぴょう した。いたずら好 す きで反抗 はんこう 的 てき な若 わか い兎 うさぎ のピーターラビット が、マクレガーさんの農場 のうじょう に忍 しの び込 こ む話 はなし である。発表 はっぴょう 以降 いこう 100年 ねん 以上 いじょう に亘 わた り、この本 ほん を基 もと にした玩具 おもちゃ 、皿 さら 、食品 しょくひん 、衣類 いるい 、ビデオなどの夥 おびただ しいグッズが生 う み出 だ された。1903年 ねん にピーターラビット人形 にんぎょう の特許 とっきょ 権 けん を取得 しゅとく したポターは、こうしたグッズ化 か の先駆 さきが けの一人 ひとり となった。
1911年 ねん 、ジェームス・マシュー・バリー は『ピーター・パンとウェンディ (英語 えいご 版 ばん ) 』を著 あらわ した。ピーター・パン は児童 じどう 文学 ぶんがく で最 もっと も有名 ゆうめい なキャラクターの1人 ひとり であり、魔法 まほう によって歳 とし を取 と らなくなってネバーランド と呼 よ ばれる小 ちい さな島 しま で終 お わることのない子 こ ども時代 じだい を過 す ごしている。
第 だい 二 に 次 じ 世界 せかい 大戦 たいせん 中 なか の1943年 ねん に、飛行 ひこう 士 し アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ (1900年 ねん - 1944年 ねん )は『星 ほし の王子 おうじ さま 』を出版 しゅっぱん した。砂漠 さばく に不時着 ふじちゃく した主人公 しゅじんこう が、星 ほし からやって来 き た子 こ どもの心 しん を持 も った王子 おうじ と語 かた らうこの物語 ものがたり は人間 にんげん 性 せい の洞察 どうさつ に富 と み、現在 げんざい までに180ヶ国 かこく 語 ご に翻訳 ほんやく され8000万 まん 部 ぶ を売 う り上 あ げている。
グローバリゼーション に伴 ともな い翻訳 ほんやく による創作 そうさく 児童 じどう 文学 ぶんがく 作品 さくひん の世界 せかい 的 てき ・爆発 ばくはつ 的 てき な普及 ふきゅう が見 み られるようになり、イギリスのC・S・ルイス (1898年 ねん - 1963年 ねん )の『ナルニア国 こく ものがたり 』(1950年 ねん - 1956年 ねん )シリーズは41言語 げんご で通算 つうさん 1億 おく 2千 せん 万 まん 部 ぶ 以上 いじょう 、同 おな じくイギリスのJ・K・ローリング (1965年 ねん - )の『ハリー・ポッター 』(1997年 ねん - 2007年 ねん )シリーズは63ヵ国 かこく 語 ご 以上 いじょう に翻訳 ほんやく され4億 おく 部 ぶ 以上 いじょう を売 う り上 あ げた。
雑誌 ざっし 『赤 あか い鳥 とり 』創刊 そうかん 号 ごう (1918)
日本 にっぽん の児童 じどう 文学 ぶんがく は、近代 きんだい 文学 ぶんがく 成立 せいりつ とほぼ同 どう 時期 じき に確立 かくりつ されたと考 かんが えられる。巖谷 いわや 小波 さざなみ による『こがね丸 まる 』や小川 おがわ 未明 みめい の第 だい 一 いち 童話 どうわ 集 しゅう 『赤 あか い船 ふね 』(1910年 ねん 12月 がつ )が始 はじ まりとされる。1918年 ねん には鈴木 すずき 三重吉 みえきち 主宰 しゅさい の雑誌 ざっし 『赤 あか い鳥 とり 』が刊行 かんこう された。芥川 あくたがわ 龍之介 りゅうのすけ ・有島 ありしま 武郎 たけお ・北原 きたはら 白秋 はくしゅう などが参加 さんか したこの雑誌 ざっし は、後 のち に新美 にいみ 南吉 なんきち らを輩出 はいしゅつ するなど児童 じどう 文学 ぶんがく の普及 ふきゅう ・発展 はってん に貢献 こうけん した。宮沢 みやざわ 賢治 けんじ は同 どう 時代 じだい の作家 さっか だが、擬声語 ぎせいご やリズム感 かん が当時 とうじ の童話 どうわ としては異質 いしつ だったため、生前 せいぜん は評価 ひょうか されることがなかった。その後 ご 日本 にっぽん では、大人 おとな から児童 じどう に向 む けた教育 きょういく を主眼 しゅがん とした内容 ないよう のものが主流 しゅりゅう となっていたが、1960年代 ねんだい 頃 ごろ から遊 あそ びの要素 ようそ を持 も ちエンターテイメントとしても優 すぐ れたものや、大人 おとな の文学 ぶんがく 表現 ひょうげん にも匹敵 ひってき する作品 さくひん が登場 とうじょう するようになった。詩 し においてはまど・みちお が著名 ちょめい である。当時 とうじ の絵本 えほん は文字 もじ を主 おも 、絵 え を従 したがえ としたものだったが、いわさきちひろ は絵 え で展開 てんかい する絵本 えほん を制作 せいさく し、国際 こくさい 的 てき にも高 たか い評価 ひょうか を得 え た。やなせたかし の『アンパンマン 』は当初 とうしょ 大人 おとな 向 む けに書 か かれたが後 のち に幼児 ようじ 向 む けの絵本 えほん として再 さい 発表 はっぴょう され、テレビアニメ で絶大 ぜつだい な人気 にんき を博 はく した。
日本 にっぽん において、児童 じどう 文学 ぶんがく 作品 さくひん を主 おも に扱 あつか っている出版 しゅっぱん 社 しゃ には次 つぎ のようなものがある。
日本 にっぽん において、児童 じどう 文学 ぶんがく 作品 さくひん を扱 あつか っているレーベルには次 つぎ のようなものがある。
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大橋 おおはし 崇 たかし 行 ぎょう 、2014、『ライトノベルから見 み た少女 しょうじょ /少年 しょうねん 小説 しょうせつ 史 し : 現代 げんだい 日本 にっぽん の物語 ものがたり 文化 ぶんか を見直 みなお すために 』、笠間 かさま 書院 しょいん ISBN 978-4305707437
The Oxford encyclopedia of children's literature , ed. by Jack Zipes, Oxford [etc]: Oxford Univ. Press, 2006, 4 vls.
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