文字 もじ というのは、言語 げんご を、点 てん や線 せん の組合 くみあわ せで、単位 たんい (ひとまとまり)ごとに記号 きごう 化 か するものである。言葉 ことば ・言語 げんご を伝達 でんたつ し記録 きろく するために線 せん や点 てん を使 つか って形作 かたちづく られた記号 きごう のこと。言葉 ことば ・言語 げんご を、視覚 しかく 的 てき に記録 きろく したり伝達 でんたつ したりするために、目 め に見 み える線 せん (直線 ちょくせん や曲線 きょくせん )や点 てん を使 つか って形作 かたちづく られた記号 きごう のことである。
世界 せかい にはさまざまな文字 もじ があり、またさまざまな分類 ぶんるい 法 ほう がある。基本 きほん 的 てき な分類 ぶんるい として、「音 おと 」だけを示 しめ している「表音 ひょうおん 文字 もじ 」と、基本 きほん 的 てき に「意味 いみ 」を示 しめ している「表意 ひょうい 文字 もじ 」がある。世界 せかい 全体 ぜんたい を見 み ると、主 おも に表音 ひょうおん 文字 もじ ばかりが使 つか われている地域 ちいき と、主 おも に表意 ひょうい 文字 もじ ばかりが使 つか われている地域 ちいき と、基本 きほん 的 てき に両者 りょうしゃ を混合 こんごう して使 つか っている地域 ちいき がある。
たとえばヨーロッパの英語 えいご やドイツ語 ご やフランス語 ふらんすご のアルファベット は表音 ひょうおん 文字 もじ であり(さらに詳 くわ しくいうと音素 おんそ 文字 もじ であり)、一文字 いちもんじ 一文字 ひともじ は音素 おんそ (音 おと の要素 ようそ 。音 おと の一部分 いちぶぶん 。特定 とくてい の、舌 した の動 うご き・唇 くちびる の動 うご き・口 くち の形 かたち などで生 しょう じる音 おと )を表 あらわ しており、アルファベットが2〜3文字 もじ (やや例外 れいがい 的 てき な場合 ばあい も含 ふく むなら 1〜6文字 もじ ほどが)まとまることで音節 おんせつ (発音 はつおん の小 しょう 単位 たんい )を示 しめ している。表音 ひょうおん 文字 もじ の一文字 ひともじ 一 いち 文字 もじ は、あくまで音 おと を表 あらわ すためのものであり、原則 げんそく (※)として、意味 いみ が全 まった く無 な い 。たとえば英語 えいご の「proceed」という言葉 ことば に含 ふく まれる「p」の一文字 ひともじ だけでは全 まった く意味 いみ を持 も たない 。p,r,oと並 なら べることで「pro」という音節 おんせつ になり、「pro」という組 く み合 あわ せになってようやく「前方 ぜんぽう へ」という意味 いみ を持 も つ。c,e,e,dの4文字 もじ の組 く み合 あ わせで「ceed シード」という音節 おんせつ を示 しめ し「進 すす む」という意味 いみ を示 しめ し、「proceed」7文字 もじ 全体 ぜんたい で、「前 まえ に進 すす める。続行 ぞっこう する」という意味 いみ になる。それに対 たい して中国 ちゅうごく で使 つか われるようになった漢字 かんじ は表意 ひょうい 文字 もじ であり、表意 ひょうい 文字 もじ はひとつひとつの文字 もじ だけでも何 なん らかの意味 いみ を表 あらわ していることが多 おお い 。たとえば「明暗 めいあん 」という語 かたり は、2つの漢字 かんじ 「明 あきら 」と「暗 くら 」からなるが、「明 あきら 」一 いち 字 じ だけでも意味 いみ がある。また「暗 くら 」一 いち 字 じ だけでも意味 いみ がある。そして二 に 文字 もじ を組 く み合 あ わせて「明暗 めいあん 」という一語 いちご になっている。中国 ちゅうごく では主 おも に漢字 かんじ ばかりが使 つか われる。一方 いっぽう 、日本語 にほんご で使 つか われる文字 もじ は、漢字 かんじ から形 かたち を独自 どくじ に変形 へんけい させたひらがな やカタカナ があり、漢字 かんじ のほうは中国 ちゅうごく 語 ご 同様 どうよう に原則 げんそく 的 てき に表意 ひょうい 文字 もじ であるが、ひらがなやカタカナのほうは「表音 ひょうおん 文字 もじ 」(詳 くわ しくいうと音節 おんせつ 文字 もじ )であり、つまり現代 げんだい 日本語 にほんご のありふれた文書 ぶんしょ に使 つか われる文字 もじ は、表音 ひょうおん 文字 もじ と表意 ひょうい 文字 もじ の両方 りょうほう を並行 へいこう して使 つか っている。たとえば現代 げんだい 日本語 にほんご の「太陽 たいよう 、まぶしいね。」という一文 いちぶん に含 ふく まれる「太陽 たいよう 」は表意 ひょうい 文字 もじ を2文字 もじ 並 なら べており(「太 ふとし 」および「陽 ひ 」。二 に 文字 もじ で一 いち 語 ご (ひと単語 たんご )になっている)、「まぶしいね」は表音 ひょうおん 文字 もじ (音節 おんせつ 文字 もじ )を5文字 もじ 並 なら べている(「ま」「ぶ」「し」「い」「ね」)。「ひらがな」は、通常 つうじょう の文章 ぶんしょう ではほとんどの場合 ばあい 、大和言葉 やまとことば の音 おと を表記 ひょうき するのに用 もち いられている。(残 のこ りの「、」や「。」は、意味 いみ の区切 くぎ りや、間合 まあ い(ひと呼吸 こきゅう の間 あいだ 、短 みじか い無音 むおん の状態 じょうたい )を示 しめ すための記号 きごう である。)
(※)なお、漢字 かんじ もまれに表音 ひょうおん 文字 もじ (純粋 じゅんすい な表音 ひょうおん 文字 もじ 、あるいは主 おも に音 おと だけを示 しめ す文字 もじ )として使 つか われることもある。たとえば英語 えいご が中国 ちゅうごく 国内 こくない に入 はい ってきて、それを外来 がいらい 語 ご として使 つか う場合 ばあい は、何 なん らかの文字 もじ でその発音 はつおん を表記 ひょうき しなければならない、そして中国 ちゅうごく では漢字 かんじ しかないので、漢字 かんじ を表音 ひょうおん 文字 もじ のように使 つか うことがある。またアルファベットも例外 れいがい 的 てき に一文字 ひともじ で意味 いみ を持 も つことがある。たとえばアルファベットの「a」一文字 ひともじ だけで、英語 えいご の文章 ぶんしょう 中 ちゅう では「ひとつの」「一 いち 個 こ の」という意味 いみ を持 も ったり、あるいは「れっきとした〜」「まぎれもない〜」という意味 いみ になったり、また「A」はアルファベットを列挙 れっきょ する時 とき にはいつも最初 さいしょ (一 いち 番目 ばんめ )に挙 あ げられるので、象徴 しょうちょう 的 てき な意味 いみ を持 も ち、「一番 いちばん (の存在 そんざい )」「トップ」「最上 さいじょう のもの」などという意味 いみ を持 も つこともある。
なお英語 えいご 圏 けん では、アルファベット のような単音 たんおん 文字 もじ をレター(英 えい : letter )、それ以外 いがい をキャラクター(英 えい : character )と区別 くべつ することがある。いっぽう今 いま から二 に 千 せん 年 ねん ほど前 まえ に中国 ちゅうごく の許 もと 慎 まき によって書 か かれた『説 せつ 文 ぶん 解 かい 字 じ 』という書 しょ では、象形 しょうけい や指事 しじ によって作 つく られる具象 ぐしょう 的 てき な記号 きごう を「文 ぶん 」、形声 けいせい や会意 かいい などによって構成 こうせい される記号 きごう を「字 じ 」などと解説 かいせつ し、「両者 りょうしゃ をあわせたものが文字 もじ である」[2] などと解説 かいせつ されていた時代 じだい があった。だがこれは二 に 千 せん 年 ねん 前 まえ の主張 しゅちょう にすぎず、たとえ今 いま でもそれを真 しん に受 う けてしまっている人 ひと が一部 いちぶ にいるとしても、現代 げんだい の学者 がくしゃ はこうは考 かんが えていない。(#「文字 もじ 」という単語 たんご の語源 ごげん の解説 かいせつ を参照 さんしょう )。
読 よ み方 かた が分 わ からなくなった文字 もじ の解読 かいどく
文字 もじ というのは、一旦 いったん その発音 はつおん のしかた、読 よ み方 かた を知 し る人 ひと がこの世 よ にいなくなってしまうと、解読 かいどく が困難 こんなん になってしまう。
古代 こだい エジプトの碑文 ひぶん を近代 きんだい ヨーロッパ人 じん は目 め にしたものの、何 なに 世紀 せいき にも渡 わた って発音 はつおん も意味 いみ も分 わ からず、何 なに 世紀 せいき にも渡 わた り解読 かいどく が全然 ぜんぜん できなかったが、たまたま、同一 どういつ の意味 いみ の文章 ぶんしょう をヒエログリフを含 ふく む3言語 げんご を並 な べて彫 ほ り込 こ んだロゼッタストーン が発見 はっけん されたことをきっかけにして、丸 まる い線 せん でぐるりと囲 かこ んだ部分 ぶぶん は「王 おう の名 な 」が書 か かれているなどということがわかるようになるなどして、少 すこ しづつ解読 かいどく され、やがてフランスのシャンポリオン が完全 かんぜん に解読 かいどく することに成功 せいこう した。
古代 こだい エジプトのヒエログリフ は、実 じつ は、基本 きほん 的 てき にはヨーロッパのアルファベットと同様 どうよう に「表音 ひょうおん 文字 もじ 」である。一見 いっけん すると、絵 え が並 なら んでいて表意 ひょうい 文字 もじ のように見 み えるが、実 じつ は、基本 きほん 的 てき には表音 ひょうおん 文字 もじ である。ただしヒエログリフは、文脈 ぶんみゃく によっては、まれにもとの意味 いみ を表 あらわ す表意 ひょうい 文字 もじ として使 つか われることもある。
マヤ文字 もじ も読 よ み方 かた が分 わ からなくなってしまった時代 じだい がとても長 なが く、1970年代 ねんだい まで世界 せかい の学者 がくしゃ の誰 だれ にもほとんど読 よ めず、1980年代 ねんだい ころからようやく解読 かいどく が進 すす んで、かなり分 わ かってきた。
なお、インダス文字 もじ など、世界 せかい にはまだ読 よ み方 かた が分 わ かっていない文字 もじ がいくつも残 のこ っている。最近 さいきん (2020年代 ねんだい )では、人工 じんこう 知能 ちのう を未 み 解読 かいどく 文字 もじ の解読 かいどく に役立 やくだ てようとする動 うご きが出 で 始 はじ めている。
文字 もじ 体系 たいけい (英 えい : script、書記 しょき 系 けい 、用字 ようじ 系 けい 、スクリプト とも)とは、同種 どうしゅ の表記 ひょうき に使 つか われるひとまとまりの文字 もじ の体系 たいけい のことを言 い う。特定 とくてい の文字 もじ 体系 たいけい を指 さ すときは、単 たん に「〜文字 もじ 」と称 しょう することも多 おお い。また、同 おな じ系統 けいとう や同 おな じ類型 るいけい に属 ぞく すると考 かんが えられる文字 もじ 体系 たいけい のグループを「〜文字 もじ 体系 たいけい 」ないしは「〜文字 もじ 」と呼 よ ぶこともある。
一般 いっぱん に、言語 げんご と文字 もじ 体系 たいけい は一対一 いちたいいち に対応 たいおう しない。アラビア文字 もじ 、漢字 かんじ 、キリル文字 もじ 、デーヴァナーガリー 、ラテン文字 もじ のように、複数 ふくすう の言語 げんご で表記 ひょうき に使 つか われる文字 もじ 体系 たいけい は多 おお い。逆 ぎゃく に一 ひと つの言語 げんご で複数 ふくすう の文字 もじ 体系 たいけい が使 つか われている場合 ばあい もあり、日本語 にほんご ではひらがな 、カタカナ 、漢字 かんじ の 3 つの文字 もじ 体系 たいけい が言語 げんご の表記 ひょうき に不可欠 ふかけつ なものとなっている。セルビア語 ご やボスニア語 ご 等 ひとし にはラテン文字 もじ 、キリル文字 もじ の 2 通 とお りの表記 ひょうき 方法 ほうほう が存在 そんざい し、このように同 どう 一 いち 言語 げんご に複数 ふくすう の文字 もじ 体系 たいけい が存在 そんざい することをダイグラフィア と呼 よ ぶ。
表記 ひょうき 体系 たいけい (英 えい : writing system 、文字 もじ 体系 たいけい 、書記 しょき 系 けい 、書 しょ 字 じ 系 けい 、書 しょ 字 じ システム とも)とは、ある文字 もじ 体系 たいけい に加 くわ えて、正書法 せいしょほう 、句読 くとう 法 ほう や、字体 じたい 、文字 もじ 、語句 ごく の選択 せんたく 基準 きじゅん などの種々 しゅじゅ の言語 げんご 的 てき 慣習 かんしゅう をも含 ふく む文字 もじ 使用 しよう の体系 たいけい のことを指 さ す。同 おな じ文字 もじ 体系 たいけい を用 もち いていても、異 こと なる言語 げんご では表記 ひょうき 体系 たいけい に違 ちが いが見 み られることもある。現実 げんじつ には、文字 もじ 体系 たいけい と表記 ひょうき 体系 たいけい との区別 くべつ は曖昧 あいまい であり、両者 りょうしゃ はしばしば混用 こんよう される。
コンピュータ による文字 もじ 情報処理 じょうほうしょり の分野 ぶんや では、複数 ふくすう の言語 げんご を同時 どうじ に扱 あつか う際 さい に、文字 もじ 体系 たいけい や表記 ひょうき 体系 たいけい に範 はん をとった概念 がいねん が用 もち いられる。用字 ようじ 系 けい (英 えい : script 、スクリプト 、または単 たん に用字 ようじ とも)は、特定 とくてい の言語 げんご (一般 いっぱん に複数 ふくすう )のために用 もち いるためのひとまとまりの文字 もじ や記号 きごう を指 さ す。書記 しょき 系 けい (英 えい : writing system )は、ある用字 ようじ 系 けい (一般 いっぱん に複数 ふくすう )を用 もち いて特定 とくてい の言語 げんご を表記 ひょうき するための規則 きそく の集合 しゅうごう を指 さ す[注釈 ちゅうしゃく 1] 。
文字 もじ 体系 たいけい に含 ふく まれる記号 きごう の最小 さいしょう 単位 たんい を字母 じぼ (文字 もじ 記号 きごう とも)と呼 よ ぶ。字母 じぼ は文字 もじ と一致 いっち する場合 ばあい もあるが、文字 もじ 体系 たいけい 、言語 げんご 、民族 みんぞく によっては、文字 もじ より小 ちい さい単位 たんい を字母 じぼ とみなす場合 ばあい もあるし、補助 ほじょ 的 てき な記号 きごう (ダイアクリティカルマーク やマトラ など)を字母 じぼ に含 ふく めない場合 ばあい もある。一方 いっぽう 、学術 がくじゅつ 的 てき な用語 ようご では、ある文字 もじ 記号 きごう を構成 こうせい する部分 ぶぶん のことを書記 しょき 素 もと (英 えい : grapheme 、文字 もじ 素 もと 、図形 ずけい 素 もと とも)と呼 よ ぶ。表音 ひょうおん 文字 もじ では音声 おんせい の音素 おんそ (英 えい : phoneme )、表 ひょう 語 ご 文字 もじ では意味 いみ の意義 いぎ 素 もと (英 えい : sememe )あるいは形態素 けいたいそ (英 えい : morpheme )に対比 たいひ される概念 がいねん である。何 なに を書記 しょき 素 もと とみなすかは、研究 けんきゅう 者 しゃ によって異 こと なることがある。
視覚 しかく 的 てき なもの、眼 め に見 み える要素 ようそ の少 しょう 単位 たんい というのはさまざまあるが、学術 がくじゅつ 的 てき には、そのなかでもあくまで言語 げんご に直接 ちょくせつ 結 むす び付 つ いたものだけを「文字 もじ 」と分類 ぶんるい している。
やや特殊 とくしゅ な文字 もじ
やや特殊 とくしゅ な文字 もじ としては次 つぎ のようなものがある。
句読点 くとうてん : 文字 もじ の歴史 れきし の比較的 ひかくてき 初期 しょき から、語 かたり の間 あいだ に間隔 かんかく を空 あ けたり線 せん で区切 くぎ ったりすることが行 おこな われていた。文字 もじ 体系 たいけい の発展 はってん とともに、語 かたり や文 ぶん の意味 いみ の区切 くぎ りを表 あらわ すさまざま記号 きごう 、すなわち句読点 くとうてん (約 やく 物 もの とも)が使 つか われるようになった。ただし、句読点 くとうてん をほとんど、あるいはまったく使 つか わないで表記 ひょうき する言語 げんご もある。句読点 くとうてん は表記 ひょうき 体系 たいけい ごとに特有 とくゆう であるため、それぞれの文字 もじ 体系 たいけい の一部 いちぶ であると考 かんが えられることが多 おお い。
指 ゆび 文字 もじ は、字母 じぼ を指 ゆび 、手 て 、腕 うで の形 かたち で表 あらわ すものであり、文字 もじ 体系 たいけい のひとつである。
点字 てんじ は、視覚 しかく 障害 しょうがい 者 しゃ が言語 げんご の読 よ み書 か きに使 つか うものであり、音 おと 、字母 じぼ 、文字 もじ などを紙 かみ の点 てん 状 じょう の盛 も り上 あ がりの配列 はいれつ で表 あらわ すものである。基本 きほん 的 てき に指先 ゆびさき で感 かん じ取 と るものであり、視覚 しかく で感 かん じる目的 もくてき のものではないが、あくまで言語 げんご 表記 ひょうき のためのものであり、晴眼 せいがん 者 しゃ の使 つか う文字 もじ (墨 ぼく 字 じ )と役割 やくわり が同 おな じなので、文字 もじ と分類 ぶんるい されている。
微妙 びみょう な位置 いち づけのもの
絵文字 えもじ (英 えい : pictogram ピクトグラム )は、意味 いみ を表 あらわ すために描 えが かれた図像 ずぞう ではあるが、言語 げんご と直接 ちょくせつ 結 むす びついてはいないので、学者 がくしゃ からは「厳密 げんみつ には文字 もじ ではない」とされる。だが広 ひろ い意味 いみ では文字 もじ に入 い れる場合 ばあい もある。つまり分類 ぶんるい がゆらぐことがある。ピクトグラムは例 たと えば、西部 せいぶ 開拓 かいたく 時代 じだい 以降 いこう のアメリカ先住民 せんじゅうみん で、英語 えいご の文章 ぶんしょう が書 か けない人 ひと が絵文字 えもじ の手紙 てがみ をやりとりした例 れい がある。現代 げんだい では、絵文字 えもじ はUnicode に収録 しゅうろく され、使 つか いやすくなっているので、人 ひと によっては文章 ぶんしょう の中 なか でまるで単語 たんご のように扱 あつか っている。たとえば「今日 きょう は🚙でピクニックに行 い きましょう。」のようにである。そして読 よ む際 さい は「今日 きょう は車 くるま でピクニックに行 い きましょう」などと声 こえ にしている。つまりこの文章 ぶんしょう 中 ちゅう の「🚙」という絵文字 えもじ は言語 げんご の記述 きじゅつ に用 もち いられているので、文字 もじ に分類 ぶんるい したほうがよいだろう、ということにもなり、分類 ぶんるい がゆらぐ。
文字 もじ ではないもの
絵画 かいが は、言語 げんご の構成 こうせい 要素 ようそ ではないので、文字 もじ ではないと分類 ぶんるい されている。絵画 かいが も通常 つうじょう 「意味 いみ 」をあらわし、しばしばその「意味 いみ 」は、説明 せつめい に数 すう 十 じゅう ページもの文章 ぶんしょう が必要 ひつよう になるほどの密度 みつど になっているが、絵画 かいが はいわゆる通常 つうじょう の「言語 げんご 」の構成 こうせい 要素 ようそ ではないので、学術 がくじゅつ 的 てき には「文字 もじ ではない」と分類 ぶんるい するのである。
音符 おんぷ は、楽音 がくおん (音楽 おんがく の音 おと )を視覚 しかく 的 てき に示 しめ しているものであり、普通 ふつう の「言語 げんご 」と結 むす びついているわけではないので、文字 もじ ではないと分類 ぶんるい されている。なお音符 おんぷ と楽曲 がっきょく の関係 かんけい は、文字 もじ と文章 ぶんしょう の関係 かんけい に類似 るいじ している。またアフリカのトーキングドラム はドラムの音 おと を言葉 ことば として使 つか っているので、もしトーキングドラムの音 おと を音符 おんぷ として表現 ひょうげん する場合 ばあい は、その音符 おんぷ の位置 いち づけは曖昧 あいまい になる。また、言語 げんご 音楽 おんがく の教科書 きょうかしょ や音楽 おんがく に関 かん する記述 きじゅつ では、音符 おんぷ が文字 もじ による文章 ぶんしょう の中 なか に現 あらわ れることはある。
国際 こくさい 音声 おんせい 記号 きごう は、あくまで、最初 さいしょ から音声 おんせい を表 あらわ すための記号 きごう としてつくられた記号 きごう であり、通常 つうじょう の「言語 げんご 」と直接 ちょくせつ には結 むす びついてはいないので、文字 もじ ではないと分類 ぶんるい されている。
文字 もじ コード (文字 もじ 符号 ふごう とも)は、字母 じぼ や書記 しょき 素 もと のひとつひとつを符号 ふごう に重複 じゅうふく なく対応 たいおう させたもの、またはその対応 たいおう のさせかたの取 と り決 き めのことであり、文字 もじ そのものではない。文字 もじ 集合 しゅうごう (符号 ふごう 化 か 文字 もじ 集合 しゅうごう )と呼 よ ぶこともある。
文字 もじ コードによって、電気 でんき 通信 つうしん や電子 でんし 媒体 ばいたい で文字 もじ を扱 あつか うことができる。符号 ふごう の順序 じゅんじょ や組 く み合 あ わせかたに取 と り決 き めを設 もう けることによって、文字 もじ 体系 たいけい や表記 ひょうき 体系 たいけい を扱 あつか うこともできる。一般 いっぱん に、文字 もじ コードは取 と り決 き めた文字 もじ だけを利用 りよう できるようにするもので、あらゆる文字 もじ を扱 あつか うことはできない。文字 もじ コードについては#電気 でんき 通信 つうしん 、コンピュータと文字 もじ の節 ふし で見 み る。
字体 じたい (じたい)とは、ある図形 ずけい を文字 もじ 体系 たいけい の特定 とくてい の一文字 ひともじ と認識 にんしき でき、その他 た の字 じ ではないと判断 はんだん しうる範囲 はんい のこと。これに対 たい して、文字 もじ 体系 たいけい に含 ふく まれる特定 とくてい の文字 もじ の、図形 ずけい としての具体 ぐたい 的 てき な形 かたち のことを字形 じけい (じけい)と言 い う。
字体 じたい の基準 きじゅん は、文字 もじ 体系 たいけい や表記 ひょうき 体系 たいけい によって異 こと なる。逆 ぎゃく に言 い うと、異 こと なる文字 もじ 体系 たいけい 同士 どうし でよく似 に た文字 もじ があっても、それらは別 べつ の文字 もじ と見 み なされる。一方 いっぽう の文字 もじ 体系 たいけい から他方 たほう が派生 はせい した場合 ばあい や、双方 そうほう が共通 きょうつう の祖先 そせん を持 も つ場合 ばあい には字形 じけい ・発音 はつおん ともによく似 に た文字 もじ が現 あらわ れやすいが、たとえラテン文字 もじ の「A 」とキリル文字 もじ の「А 」のように字形 じけい ・音 おと 価 か ともほとんど同 おな じ場合 ばあい でも文字 もじ としては別 べつ の文字 もじ である。漢字 かんじ の「二 に 」と片仮名 かたかな の「ニ」のように関係 かんけい があるとも無 な いとも言 い い難 がた いものや、片仮名 かたかな の「ユ 」(弓 ゆみ の部分 ぶぶん )とハングル の「그 」(ㄱ (ꡂの部分 ぶぶん )+ㅡ )のように全 まった くの偶然 ぐうぜん の一致 いっち によるものも、別々 べつべつ の文字 もじ 体系 たいけい に属 ぞく する別 べつ の文字 もじ である。字体 じたい の基準 きじゅん は、言語 げんご や時代 じだい によっても変化 へんか することがある。たとえば漢字 かんじ で、「吉 きち 」の3画 かく めを1画 かく めより長 なが めにするか短 みじか めにするかという違 ちが いは字体 じたい の違 ちが いとなることがあるが、現代 げんだい の日本 にっぽん の常用漢字 じょうようかんじ ではこの違 ちが いを区別 くべつ しない。
文字 もじ コード (後述 こうじゅつ )では、個々 ここ の符号 ふごう が表 あらわ しうると考 かんが えられる字形 じけい を抽象 ちゅうしょう して特 とく にグリフ (英 えい : glyph)と呼 よ ぶことがある。
書体 しょたい (しょたい)とは、ある文字 もじ 体系 たいけい で、字体 じたい を一貫 いっかん した特徴 とくちょう と様式 ようしき を備 そな えた字形 じけい として表現 ひょうげん したものをいう。漢字 かんじ の手書 てが き文字 もじ での篆書 てんしょ 、隷書 れいしょ 、楷書 かいしょ 、行書 ぎょうしょ 、草書 そうしょ や、活字 かつじ やフォント の明朝体 みんちょうたい 、ゴシック体 たい 、ローマン体 たい 、セリフ 、サンセリフ などは書体 しょたい である。
楔形文字 くさびがたもじ (英 えい : cuneiform)は、現在 げんざい 知 し られている文字 もじ 体系 たいけい で最古 さいこ のもののひとつである。紀元前 きげんぜん 3500年 ねん 頃 ころ にメソポタミア で誕生 たんじょう した。粘土 ねんど 板 ばん に葦 あし の尖 とんが 筆 ふで を押 お し当 あ ててできる " くぼみ " を組 く み合 あ わせて文字 もじ とする。尖 とんが 筆 ふで を粘土 ねんど に押 お し当 あ てると、ちょうど楔 くさび (くさび)のような、長 なが い三角形 さんかっけい のくぼみができるので、学術 がくじゅつ 用語 ようご の表記 ひょうき 言語 げんご であるラテン語 らてんご で(scriptura) cuneiformis(クネイフォルミス) と呼 よ ばれるようになり(ラテン語 らてんご のcuneus(クネウス)は「くさび」で、formis, forma (フォルマ)は「形 かたち 、かたち」という意味 いみ 。つまり「楔 くさび 形 がた 」)、日本語 にほんご でもそれに倣 なら って楔形文字 くさびがたもじ と呼 よ んでいる。粘土 ねんど に書 か いた文字 もじ は、粘土 ねんど が湿 しめ って柔 やわ らかいうちは簡単 かんたん に書 か き直 なお すことができるし、いっぽうで乾 かわ かせば書 か いたものをかなりの期間 きかん 保存 ほぞん できる。さらに長期 ちょうき の保存 ほぞん が必要 ひつよう な場合 ばあい や内容 ないよう の書 か き換 か えや改 かい ざんを防止 ぼうし する場合 ばあい には粘土 ねんど 板 ばん を焼 や いて一 いち 種 しゅ の焼 や き物 もの にすればよい。現在 げんざい 残 のこ っている楔形文字 くさびがたもじ 資料 しりょう の多 おお くは、火災 かさい や戦災 せんさい によって焼 や かれたものである。
現在 げんざい までに発見 はっけん されている楔形文字 くさびがたもじ のうち、初期 しょき のものが表記 ひょうき している言語 げんご はシュメール語 ご と呼 よ ばれ、シュメール人 じん の言語 げんご である。しかし、楔形文字 くさびがたもじ そのものをシュメール人 じん が作 つく ったというたしかな証拠 しょうこ はいまのところ発見 はっけん されていない。もっとも古 ふる いものはウルク文字 もじ (古拙 こせつ 文字 もじ とも)で、イラク 中部 ちゅうぶ のウルク (現 げん ワルカ )遺跡 いせき 第 だい 4層 そう から出土 しゅつど し、紀元前 きげんぜん 3100-3000年 ねん 頃 ごろ のものである。また、少 すこ し後 ご の時代 じだい のものとしてジャムダド・ナスル (ジェムデド・ナスル)でも同 どう 系統 けいとう の文字 もじ を記 しる した粘土 ねんど 板 ばん が発見 はっけん されている。ほとんどは商 しょう 取引 とりひき の記録 きろく や目録 もくろく のような経済 けいざい 文書 ぶんしょ であり、事物 じぶつ や職名 しょくめい 、都市 とし 名 めい を表 あらわ す文字 もじ とともに数字 すうじ を記 しる している。また、書記 しょき の養成 ようせい のためと見 み られる文字 もじ リストも発見 はっけん されている。一方 いっぽう 、ジャムダド・ナスルと同 どう 時期 じき の文字 もじ 資料 しりょう がスーサ で出土 しゅつど しているが、これはエラム語 ご の一種 いっしゅ を表記 ひょうき したもので、原 はら エラム文字 もじ と呼 よ ばれる。
当初 とうしょ の書 しょ 字 じ 方向 ほうこう は上 うえ から下 した の縦 たて 書 が きで、文字 もじ はある程度 ていど 単純 たんじゅん 化 か された線画 せんが であり、まだ楔 くさび 形 がた になっていない。紀元前 きげんぜん 2600年 ねん 頃 ころ から、書 しょ 字 じ 方向 ほうこう が縦 たて 書 が きから横書 よこが き(左 ひだり から右 みぎ )に変 か わり、その結果 けっか 、すべての文字 もじ が左 ひだり に90度 ど 回転 かいてん した。その後 ご 、筆画 ひっかく が直線 ちょくせん 化 か し、最終 さいしゅう 的 てき には楔 くさび 形 がた の組 く み合 あ わせで文字 もじ を表 あらわ すようになる(#図 ず 4 を参照 さんしょう )。
図 ず 4 「頭 あたま 」[SAG] を表 あらわ す文字 もじ の変化 へんか
1: 紀元前 きげんぜん 3000年 ねん 頃 ごろ 。2: 紀元前 きげんぜん 2800年 ねん 頃 ごろ 。左 ひだり に90度 ど 回転 かいてん 。3: 紀元前 きげんぜん 2600年 ねん 頃 ごろ の碑文 ひぶん 。筆画 ひっかく の単純 たんじゅん 化 か 。4: 粘土 ねんど 板 ばん 。楔 くさび 形 がた の特徴 とくちょう が現 あらわ れる。5: 紀元前 きげんぜん 第 だい 3千年紀 せんねんき 後半 こうはん 。6: 紀元前 きげんぜん 第 だい 2千年紀 せんねんき 前半 ぜんはん 。7: 紀元前 きげんぜん 第 だい 1千年紀 せんねんき 前半 ぜんはん 。出典 しゅってん は画像 がぞう の説明 せつめい を参照 さんしょう 。
ウルク文字 もじ は、事物 じぶつ そのものを表 あらわ す表 ひょう 語 ご 文字 もじ であるが、紀元前 きげんぜん 2800年 ねん 頃 ころ から、文字 もじ を音節 おんせつ を表 あらわ すものとしても使 つか うようになる。たとえば、「牛 うし 」を表 あらわ す文字 もじ を [gu] の音節 おんせつ を表 あらわ すのに使 つか う。ところが、「糸 いと 」を表 あらわ す文字 もじ でも [gu] を表 あらわ せる。同 おな じ音 おん の語 かたり は複数 ふくすう あるから、ある音節 おんせつ を表 あらわ せる文字 もじ も複数 ふくすう ある。これを同音 どうおん 異字 いじ 性 せい (英 えい : homophony、ホモフォニー とも)と呼 よ ぶ。また、「口 くち 」を表 あらわ す語 かたり は [ka] なので、「口 くち 」を表 あらわ す文字 もじ は [ka] の音節 おんせつ を表 あらわ す。ところが、この文字 もじ は「叫 さけ ぶ」[gù] 、「歯 は 」[zú] 、「話 はな す」[du] などの語 かたり も表 あらわ すから、それらの音節 おんせつ を表 あらわ すのにも使 つか う。これを多 た 音 おと 性 せい (英 えい : polyphony。ポリフォニー とも)と呼 よ ぶ。同音 どうおん 異字 いじ 性 せい や多 た 音 おと 性 せい は、シュメールの楔形文字 くさびがたもじ を借用 しゃくよう した他 ほか の楔形文字 くさびがたもじ にも引 ひ き継 つ がれる。
シュメール語 ご の楔形文字 くさびがたもじ は、アッカド語 ご (バビロニア語 ご やアッシリア語 ご を含 ふく む)の表記 ひょうき に借用 しゃくよう された。しかしシュメール語 ご が膠着 こうちゃく 語 ご であったのに対 たい し、アッカド語 ご は屈折 くっせつ 語 ご のセム系 けい 言語 げんご であった。セム系 けい 言語 げんご では語根 ごこん を3子音 しいん (ときに4子音 しいん )で表 あらわ すから、ひとつの語 かたり を音声 おんせい 表記 ひょうき するのには複数 ふくすう の文字 もじ が必要 ひつよう になる。表記 ひょうき を短縮 たんしゅく するためにシュメール語 ご の表 ひょう 語 ご 文字 もじ を併用 へいよう することもあった。バビロニア人 じん やアッシリア人 じん の楔形文字 くさびがたもじ は、さらにヒッタイト語 ご 、フルリ語 ご (ミタンニ語 ご )、ウラルトゥ語 ご (いずれもインドヨーロッパ語族 ごぞく の言語 げんご )などの言語 げんご の表記 ひょうき に借用 しゃくよう された。
シリア のウガリット(ラス・シャムラ )で発見 はっけん されたウガリト文字 もじ は、紀元前 きげんぜん 14世紀 せいき 頃 ころ の文字 もじ 体系 たいけい である。シュメール起源 きげん の楔形文字 くさびがたもじ では文字 もじ の数 かず が600あまりに達 たっ したのに対 たい し、ウガリト文字 もじ は字母 じぼ がわずか30個 こ のアブジャド (子音 しいん 文字 もじ )になっている。字母 じぼ の一覧 いちらん を記 しる した資料 しりょう では、フェニキア文字 もじ やヘブライ文字 もじ などの伝統 でんとう 的 てき な順序 じゅんじょ との一致 いっち が見 み られることから、文字 もじ 体系 たいけい の組織 そしき は他 た のアブジャドの影響 えいきょう を受 う けたと考 かんが えられている。
また、古代 こだい ペルシア楔形文字 くさびがたもじ は、アケメネス朝 あさ ペルシアのダレイオス1世 せい が作 つく らせた楔形文字 くさびがたもじ で、36個 こ の開 ひらき 音節 おんせつ 文字 もじ (子音 しいん -母音 ぼいん の組 く み合 あ わせを表 あらわ す文字 もじ 。ただしうち3個 こ は母音 ぼいん のみの文字 もじ )を含 ふく む。楔形文字 くさびがたもじ の中 なか では最初 さいしょ に解読 かいどく された文字 もじ 体系 たいけい である。これは紀元前 きげんぜん 4世紀 せいき には使 つか われなくなった。
今日 きょう では、楔形文字 くさびがたもじ を表記 ひょうき に使 つか う言語 げんご はない。現在 げんざい までに知 し られているもっとも新 あたら しい楔形文字 くさびがたもじ の資料 しりょう は、紀元 きげん 後 ご 1世紀 せいき のシュメール語 ご 表 ひょう 語 ご 文字 もじ によるものである。
エジプトヒエログリフ のうち、発見 はっけん されている最古 さいこ の文字 もじ 資料 しりょう は紀元前 きげんぜん 3100年 ねん から3000年 ねん ころの先王 せんおう 朝 あさ 時代 じだい 末期 まっき のものである。エジプトヒエログリフでは、古拙 こせつ 期 き の文字 もじ 資料 しりょう というものがほとんど発見 はっけん されていない。あたかも、整備 せいび された文字 もじ 体系 たいけい が突然 とつぜん 出現 しゅつげん したかのようである。研究 けんきゅう 者 しゃ の多 おお くは、数 かず 世紀 せいき 先行 せんこう するメソボタミアの#楔形文字 くさびがたもじ の影響 えいきょう があると考 かんが えるが、両者 りょうしゃ には字母 じぼ などに明 あき らかな共通 きょうつう 点 てん が見 み られないため、エジプトヒエログリフが借用 しゃくよう したのは「文字 もじ という着想 ちゃくそう 」(#借用 しゃくよう と発展 はってん の節 ふし を参照 さんしょう )だけで、文字 もじ 体系 たいけい の組織 そしき は独自 どくじ に発達 はったつ したものだと考 かんが えている。
初期 しょき にはさまざまな媒体 ばいたい に書 か かれたが、神官 しんかん 書体 しょたい (後述 こうじゅつ )が発達 はったつ すると、もっぱら記念 きねん 碑 ひ や宗教 しゅうきょう 関係 かんけい の碑文 ひぶん にのみ使 つか われるようになった。ヒエログリフ (英 えい : hieroglyph、聖 せい 刻 こく 文字 もじ とも)という呼 よ び名 な は、古代 こだい ギリシア語 ご のタ・ヒエログリュピカ(神聖 しんせい な文字 もじ )に由来 ゆらい する。文字 もじ の多 おお くは表 ひょう 語 ご 文字 もじ だが、一部 いちぶ の文字 もじ を表音 ひょうおん 文字 もじ にも転用 てんよう しており、表 ひょう 語 ご 文字 もじ では表 あらわ しにくい概念 がいねん や形態素 けいたいそ を表記 ひょうき しやすくなっている。
表 ひょう 語 ご 文字 もじ は時代 じだい によって字形 じけい が変 か わったり、新 あら たな事物 じぶつ を表 あらわ す文字 もじ が追加 ついか されたりしたので、現在 げんざい までに同定 どうてい されているものは6000字 じ 以上 いじょう にのぼるが、各 かく 時代 じだい に実用 じつよう された数 かず は700から1000程度 ていど である。表音 ひょうおん 文字 もじ は子音 しいん のみを表記 ひょうき するので、アブジャド であると言 い える。一 いち 子音 しいん の文字 もじ が24程度 ていど 、二 に 子音 しいん の文字 もじ が100ちかく、三 さん 子音 しいん の文字 もじ が40あまりある。一 いち 子音 しいん 文字 もじ はもっぱら表音 ひょうおん にのみ使 つか うが、そのほかの表音 ひょうおん 文字 もじ は表 ひょう 語 ご 文字 もじ として使 つか うこともあるため、複数 ふくすう 子音 しいん の文字 もじ に一 いち 子音 しいん 文字 もじ を付加 ふか して表音 ひょうおん 文字 もじ として使 つか っていることを明確 めいかく にすることがある(末尾 まつび の子音 しいん だけを付加 ふか することが多 おお いが、複数 ふくすう の子音 しいん を付加 ふか することもある)。この手法 しゅほう を音声 おんせい 補充 ほじゅう と呼 よ ぶ。日本語 にほんご の送 おく り仮名 がな や漢字 かんじ の形声 けいせい にいくらか似 に た手法 しゅほう だが、送 おく り仮名 がな の場合 ばあい とはちがい、品詞 ひんし に関係 かんけい なく音声 おんせい 補充 ほじゅう できるし、形声 けいせい とはちがい、表音 ひょうおん 文字 もじ にも音声 おんせい 補充 ほじゅう をする(#図 ず 5 (a) 参照 さんしょう )。
さらに、語 かたり に付加 ふか して意味 いみ 範疇 はんちゅう を表 あらわ す限定 げんてい 符 ふ がある。漢字 かんじ の偏旁 へんぼう に似 に た働 はたら きをするが、独立 どくりつ した文字 もじ である。エジプト語 ご はセム系 けい 言語 げんご と近 きん 縁 えん のハム語族 ごぞく に属 ぞく するため、近 きん 縁 えん の概念 がいねん を表 あらわ す語 かたり は同 おな じ3子音 しいん (ときに4子音 しいん )からなる語根 ごこん を共有 きょうゆう する。表 ひょう 語 ご 文字 もじ や表音 ひょうおん 文字 もじ と限定 げんてい 符 ふ とを組 く み合 あ わせて同 どう 語根 ごこん の語 かたり を区別 くべつ し、意味 いみ を明確 めいかく にすることができる。器物 きぶつ の材質 ざいしつ のような詳細 しょうさい な意味 いみ まで限定 げんてい 符 ふ で区別 くべつ することさえある(#図 ず 5 (b) 参照 さんしょう )。
書 しょ 字 じ 方向 ほうこう は比較的 ひかくてき 自由 じゆう で、初期 しょき には主 おも に縦 たて 書 が き(上 うえ から下 した )、後 のち には主 おも に横書 よこが きとなり、ブストロフェドンが行 おこな われることも多 おお い。ただし、行内 こうない の配列 はいれつ 順 じゅん は審美 しんび 上 じょう の観点 かんてん から方向 ほうこう を変 か えることがある。また、王 おう や神 かみ などを表 あらわ す文字 もじ はしばしば前 まえ のほうに置 お く。このような現象 げんしょう を字母 じぼ 転移 てんい という。
図 ず 5 エジプトヒエログリフの運 うん 用例 ようれい
表記 ひょうき
翻 こぼし 字 じ
意味 いみ
(a)
[nfr]
[nfr]
「良 よ い」
[nfr] [r]
〃
〃
[nfr] [f] [r]
〃
〃
[ḫpr] [r]
[ḫpr]
「生 う まれる」、「〜になる」
[ḫ] [p] [ḫpr] [r]
〃
〃
(b)
書 か く 人 ひと
[sš]
「書記 しょき 」
書 か く 巻物 まきもの
〃
「書物 しょもつ 」
[mn] [n] 巻物 まきもの
[mn]
「残 のこ る」
[mn] [n] 小鳥 ことり
〃
「弱 よわ い」
[pr] [r] [t] 太陽 たいよう
[prt]
「冬 ふゆ 」
[md] [d] [w] 食 た べる
[mdw]
「話 はな す」
[b] [h] [ʒ] [w] 脚 あし 人 じん 複数 ふくすう
[bhʒw]
「逃亡 とうぼう 者 しゃ たち」
書 しょ 字 じ 方向 ほうこう はいずれも横書 よこが き(左 ひだり から右 みぎ )。
(a) 音声 おんせい 補充 ほじゅう の例 れい 。最初 さいしょ の例 れい は音声 おんせい 補充 ほじゅう がないものだが、3番 ばん めまでは同 おな じ意味 いみ を表 あらわ す。論理 ろんり 的 てき には、同 おな じ発音 はつおん を表 あらわ すものには多 おお くのバリエーションがあり得 え るが、実際 じっさい に使 つか われる表記 ひょうき は限 かぎ られたものだけである。3番 ばん め以降 いこう の例 れい には字母 じぼ 転移 てんい が見 み られる。
(b) 限定 げんてい 符 ふ の例 れい 。は書物 しょもつ や文字 もじ に関 かか わるものごとや抽象 ちゅうしょう 的 てき な観念 かんねん 、は「弱 よわ い」「小 ちい さい」「悪 わる い」などの意味 いみ 範疇 はんちゅう 、は太陽 たいよう や太陽 たいよう の運行 うんこう に関 かか わるものごと、は「食 た べる」「飲 の む」「話 はな す」などに関 かか わる意味 いみ 範疇 はんちゅう を表 あらわ す。
図 ず 6 写実 しゃじつ 的 てき な文字 もじ の例 れい [nswt-bỉty] 「上下 じょうげ エジプトの王 おう 」という句 く の一部 いちぶ 。図 ず の書 しょ 字 じ 方向 ほうこう は右 みぎ から左 ひだり の横書 よこが き。出典 しゅってん は画像 がぞう の説明 せつめい を参照 さんしょう 。
文字 もじ はときに、極 きわ めて写実 しゃじつ 的 てき に描 えが かれる(#図 ず 6 )。ただし、現代 げんだい の透視 とうし 図法 ずほう によるような写実 しゃじつ 性 せい ではない。たとえば「人 ひと 」を表 あらわ す文字 もじ では、頭部 とうぶ 全体 ぜんたい や脚 あし 部 ぶ は横 よこ から、眼 め は正面 しょうめん から描 えが くというように、様々 さまざま な角度 かくど から見 み た対象 たいしょう の特徴 とくちょう を平面 へいめん 上 じょう になるべく忠実 ちゅうじつ に描写 びょうしゃ しようとする。文字 もじ は彩色 さいしき されることもあるが、色 いろ は意味 いみ に関係 かんけい しない。
ヨーロッパでは16世紀 せいき から、エジプトヒエログリフの解読 かいどく の試 こころ み が活発 かっぱつ になったが、文中 ぶんちゅう の人名 じんめい などに基 もと づいていくつかの表音 ひょうおん 文字 もじ の音 おと 価 か を決定 けってい できたにとどまった。このため、エジプトヒエログリフの大半 たいはん は象徴 しょうちょう 的 てき な概念 がいねん を表現 ひょうげん した紋様 もんよう であり、完全 かんぜん な文字 もじ 体系 たいけい ではないとの誤解 ごかい が生 う まれた。ヒエログリフが表 ひょう 語 ご 文字 もじ とともに表音 ひょうおん 文字 もじ としての機能 きのう をもち、独自 どくじ の合理 ごうり 性 せい をもつ文字 もじ 体系 たいけい であるということを最初 さいしょ に証明 しょうめい したのは、19世紀 せいき のシャンポリオン である[3] 。
神官 しんかん 書体 しょたい (ヒエラティック とも)は、ヒエログリフを簡略 かんりゃく 化 か して筆記 ひっき 用 よう にしたものだが、その原型 げんけい となる文字 もじ 資料 しりょう はヒエログリフと同 おな じくらい古 ふる い。まとまった文章 ぶんしょう が表 あらわ れるのは第 だい 4王朝 おうちょう 時代 じだい 頃 ころ からである。神官 しんかん 書体 しょたい はおもに行政 ぎょうせい 文書 ぶんしょ や商業 しょうぎょう 文書 ぶんしょ に用 もち いられた。パピルス や、石 いし 片 へん や陶 すえ 片 へん (オストラカ )に、筆 ふで とインクを使 つか って書 か かれた。石 いし に彫 ほ られることはまれだった。
文字 もじ 体系 たいけい の組織 そしき はヒエログリフと一致 いっち し、神官 しんかん 書体 しょたい で書 か いたものをヒエログリフに翻 こぼし 字 じ することもできる。ヒエログリフの筆記 ひっき 体 たい であると言 い える。はじめは縦 たて 書 が き(上 うえ から下 した )だったが、後 のち に横書 よこが き(おもに右 みぎ から左 ひだり )に変化 へんか する。しかし、文字 もじ の向 む きが変 か わることはなかった。
その後 ご 簡略 かんりゃく 化 か がいっそう進 すす み、紀元前 きげんぜん 第 だい 1千年紀 せんねんき 前半 ぜんはん に、神官 しんかん 書体 しょたい から民衆 みんしゅう 書体 しょたい (デモティック とも)が分化 ぶんか した。民衆 みんしゅう 書体 しょたい では続 つづ け書 が きや略体 りゃくたい が多用 たよう され、ヒエログリフとの間 あいだ で文字 もじ ごとの対応 たいおう づけをすることはもはや不可能 ふかのう である。紀元前 きげんぜん 600年 ねん ころから、宗教 しゅうきょう 文書 ぶんしょ 以外 いがい では完全 かんぜん に神官 しんかん 書体 しょたい にとって代 か わった。民衆 みんしゅう 書体 しょたい は日常 にちじょう 的 てき な文書 ぶんしょ にも用 もち いられた。神官 しんかん 書体 しょたい と民衆 みんしゅう 書体 しょたい の名 な は、古代 こだい ギリシア語 ご のヒエラティカ(神官 しんかん の)とデモティカ(民衆 みんしゅう の)に由来 ゆらい する。
民衆 みんしゅう 書体 しょたい の書 しょ 字 じ 方向 ほうこう は横書 よこが き(右 みぎ から左 ひだり )である。やはりパピルスやオストラカにインクで書 か かれたが、プトレマイオス朝 あさ 時代 じだい には、ギリシア から入 はい った葦 あし のペンで書 か くことが多 おお くなった。このころから、記念 きねん 碑 ひ などの碑文 ひぶん にも使 つか われるようになる。1799年 ねん に発見 はっけん されたロゼッタ・ストーン は、ヒエログリフ、民衆 みんしゅう 書体 しょたい 、ギリシア文字 もじ のギリシア語 ご の 3 種 しゅ の文字 もじ 体系 たいけい で記 しる されている。
今日 きょう では、エジプトヒエログリフやその神官 しんかん 書体 しょたい 、民衆 みんしゅう 書体 しょたい を表記 ひょうき に使 つか う言語 げんご はない。現在 げんざい までに知 し られているもっとも新 あたら しい資料 しりょう は、紀元 きげん 後 ご 5世紀 せいき の民衆 みんしゅう 書体 しょたい によるものである。この後 のち 、エジプト語 ご やそれから派生 はせい した言語 げんご を表記 ひょうき する文字 もじ 体系 たいけい はコプト文字 もじ だけとなった。
原 はら シナイ文字 もじ は、シナイ 地方 ちほう の神殿 しんでん 遺跡 いせき から発見 はっけん されたのでこの名 な がある。少 すく なくとも23の字母 じぼ を持 も つ。解読 かいどく はまだ十分 じゅうぶん に進 すす んでいないが、字母 じぼ の半数 はんすう は、その字形 じけい から見 み て、エジプトヒエログリフからの借用 しゃくよう である。つまり、エジプトヒエログリフから借用 しゃくよう して生 う まれた表音 ひょうおん 文字 もじ 体系 たいけい である。類型 るいけい としてはアブジャド である。
字母 じぼ の多 おお くが表 あらわ している事物 じぶつ が原 はら カナン文字 もじ やフェニキア文字 もじ の字母 じぼ の呼称 こしょう と一致 いっち することから、フェニキア文字 もじ は原 はら シナイ文字 もじ から派生 はせい したという説 せつ がある。この説 せつ が正 ただ しいとすれば、エジプトヒエログリフは、今日 きょう のほとんどの音素 おんそ 文字 もじ 体系 たいけい 、つまり今日 きょう 使 つか われている多 おお くの文字 もじ 体系 たいけい の祖 そ にあたることになる(次節 じせつ も参照 さんしょう )。
メロエ文字 もじ は、紀元前 きげんぜん 2世紀 せいき に生 う まれた。古代 こだい ヌビア のクシュ王国 おうこく で、メロエ語 ご を表記 ひょうき するのに用 もち いられた。23個 こ の字母 じぼ からなり、大 だい 部分 ぶぶん がエジプトヒエログリフからの借用 しゃくよう であると考 かんが えられている。ヒエログリフと筆記 ひっき 体 たい があり、ヒエログリフは縦 たて 書 が き(上 うえ から下 した )、筆記 ひっき 体 たい は横書 よこが き(左 ひだり から右 みぎ )であった。アブギダ に似 に て子音 しいん 字母 じぼ に特定 とくてい の母音 ぼいん が伴 ともな っているが、それ以外 いがい の母音 ぼいん は独立 どくりつ した字母 じぼ を書 か くことで表 あらわ す。また、一部 いちぶ の子音 しいん -母音 ぼいん 結合 けつごう は独自 どくじ の文字 もじ で表記 ひょうき する。
このほか、クレタ やヒッタイト で発見 はっけん されている「ヒエログリフ」と呼 よ ばれる文字 もじ 体系 たいけい も、エジプトヒエログリフの影響 えいきょう を受 う けていると考 かんが える研究 けんきゅう 者 しゃ もいる。
「文字 もじ 」の呼 よ び方 かた の変遷 へんせん や初出 しょしゅつ
中国 ちゅうごく では戦国 せんごく 時代 じだい までに、文字 もじ を意味 いみ する語 かたり として「書 しょ 」「文 ぶん 」「名 な 」などが用 もち いられるようになっていたが、これらは文字 もじ 以外 いがい の意味 いみ も持 も っていた。秦 はた の中国 ちゅうごく 統一 とういつ にともない、秦 はた の語彙 ごい 「字 じ 」が公式 こうしき に用 もち いられるようになり、漢 かん 代 だい に入 はい って文字 もじ を表 あらわ す語 かたり として定着 ていちゃく した[4] 。
いっぽう「文字 もじ 」という語 かたり のたしかな初出 しょしゅつ は、前漢 ぜんかん の司馬 しば 遷 による『史記 しき 』である[5] 。これは、紀元前 きげんぜん 3世紀 せいき に始皇帝 しこうてい を顕彰 けんしょう するために建 た てられた琅邪台 だい 刻 こく 石 せき 碑文 ひぶん の「車 くるま 同 どう 軌、書 しょ 同 どう 文字 もじ 」(車 くるま の軌幅を統一 とういつ し、書 しょ の文字 もじ を統一 とういつ した)を引用 いんよう したものだが、碑文 ひぶん では韻律 いんりつ を整 ととの えるために「文 ぶん 」に「字 じ 」字 じ を付加 ふか しただけで、当時 とうじ は「文字 もじ 」という熟語 じゅくご は使 つか われていなかった。『史記 しき 』以降 いこう になってはじめて、「文字 もじ 」という語 かたり が「言語 げんご を書 か き記 しる すための記号 きごう 」の意味 いみ で用 もち いられるようになった[6] 。
各種 かくしゅ の文字 もじ 体系 たいけい を分類 ぶんるい するために、様々 さまざま な基準 きじゅん が存在 そんざい する。つぎのような分類 ぶんるい がありうる。
類型 るいけい 的 てき な分類 ぶんるい 。
文字 もじ 体系 たいけい の系統 けいとう による分類 ぶんるい 。
表記 ひょうき する言語 げんご による分類 ぶんるい 。
使 つか われた時代 じだい や、使 つか われる地域 ちいき による分類 ぶんるい 。
本節 ほんぶし では、類型 るいけい 的 てき な分類 ぶんるい について解説 かいせつ する。系統 けいとう による分類 ぶんるい については、#系統 けいとう の節 ふし で見 み る。言語 げんご との関係 かんけい は文字 もじ 体系 たいけい 別 べつ の言語 げんご の一覧 いちらん を、また時代 じだい や地域 ちいき については各 かく 文字 もじ 体系 たいけい の解説 かいせつ を参照 さんしょう されたい。文字 もじ 体系 たいけい の一覧 いちらん も参照 さんしょう されたい。
#図 ず 1 に、ウィキペディア日本語 にほんご 版 ばん のカテゴリで用 もち いられる文字 もじ 体系 たいけい の類型 るいけい 的 てき 分類 ぶんるい を示 しめ す。また#図 ず 2 に、世界 せかい の文字 もじ 体系 たいけい の類型 るいけい 別 べつ の分布 ぶんぷ を示 しめ す。
図 ず 2 現代 げんだい の世界 せかい における文字 もじ 体系 たいけい の分布 ぶんぷ アブジャド : アラビア文字 もじ , その他 た のアブジャド アブギダ : デーヴァナーガリー , その他 た のアブギダ アルファベット : ラテン文字 もじ , キリル文字 もじ , その他 た のアルファベット 素性 すじょう 文字 もじ : ハングル 音節 おんせつ 文字 もじ : 音節 おんせつ 文字 もじ 表 ひょう 語 ご 文字 もじ : 漢字 かんじ
ヨーロッパ 世界 せかい では、伝統 でんとう 的 てき に、文字 もじ は音声 おんせい の補助 ほじょ にすぎないという考 かんが え方 かた が根強 ねづよ くあった。ソクラテス は、文字 もじ に頼 たよ ると記憶 きおく 力 りょく が減退 げんたい し、文字 もじ で書 か かれたものは弁舌 べんぜつ よりも説得 せっとく 力 りょく が劣 おと ると考 かんが えた[7] 。後 のち に地中海 ちちゅうかい 沿岸 えんがん 世界 せかい ではエジプトヒエログリフ が忘 わす れられ、ヨーロッパとその周辺 しゅうへん ではアルファベット などの音素 おんそ 文字 もじ だけが使 つか われるようになったため、音声 おんせい を忠実 ちゅうじつ に再現 さいげん することこそ文字 もじ の本質 ほんしつ だという考 かんが えはいっそう強 つよ まった。さらにルソー は、「事物 じぶつ の描写 びょうしゃ は未開 みかい の民族 みんぞく に、語 かたり や文章 ぶんしょう の記号 きごう は野蛮 やばん な民族 みんぞく に、アルファベットは政府 せいふ に統治 とうち された民族 みんぞく に一致 いっち している」[8] と述 の べ、使用 しよう される文字 もじ 体系 たいけい の種類 しゅるい が社会 しゃかい の進歩 しんぽ の度合 どあ いを反映 はんえい しているという考 かんが えを示 しめ した。この3つはピクトグラムや象形 しょうけい 文字 もじ 、表 ひょう 語 ご 文字 もじ 、表音 ひょうおん 文字 もじ に対応 たいおう している。
18世紀 せいき には、さまざまな言語 げんご を客観 きゃっかん 的 てき に比較 ひかく する姿勢 しせい が強 つよ まったが、文字 もじ の研究 けんきゅう は音声 おんせい 学 がく の一 いち 分野 ぶんや として行 おこな われるにとどまった。このような思潮 しちょう から、文字 もじ は象形 しょうけい 文字 もじ から音節 おんせつ 文字 もじ へ、さらには音素 おんそ を完全 かんぜん に表記 ひょうき できるアルファベットへと発達 はったつ していくものだと広 ひろ く信 しん じられるようになり、一時 いちじ は主流 しゅりゅう 的 てき な考 かんが え方 かた にもなった(#図 ず 3 参照 さんしょう )。
しかし、今日 きょう の言語 げんご 学 がく では、以上 いじょう のような説 せつ は、完全 かんぜん にとはいえないまでも、ほぼ正 ただ しくないことがわかっており、当然 とうぜん のこととして、使用 しよう する文字 もじ 体系 たいけい の種類 しゅるい が社会 しゃかい の進歩 しんぽ の度合 どあ いを表 あらわ すというような見方 みかた は完全 かんぜん に否定 ひてい されている。
また、中華 ちゅうか 世界 せかい では事情 じじょう が異 こと なっていた。上古 じょうこ にすでに甲 かぶと 骨 こつ 文 ぶん が見 み られるが、これは卜 ぼく 占 うらない による神意 しんい を伝 つた えるものであった。封建 ほうけん 制 せい が成立 せいりつ した後 のち も、文字 もじ 使用 しよう の独占 どくせん は権力 けんりょく の源泉 げんせん となった[9] 。周 しゅう 王朝 おうちょう の滅亡 めつぼう によって文字 もじ の技術 ぎじゅつ は独占 どくせん を脱 だっ し、文字 もじ の使用 しよう は広 ひろ まったが、表 ひょう 語 ご 文字 もじ (後述 こうじゅつ )としての漢字 かんじ の能力 のうりょく は、多 おお くの方言 ほうげん や言語 げんご を横断 おうだん する共通 きょうつう の意志 いし 疎通 そつう 手段 しゅだん として、中華 ちゅうか 世界 せかい の一体 いったい 性 せい を維持 いじ することにつながった。さらに、華 はな 夷 えびす 秩序 ちつじょ の拡大 かくだい に伴 ともな い、周縁 しゅうえん 社会 しゃかい にとっては、漢字 かんじ は文明 ぶんめい の中心 ちゅうしん 地 ち から先進 せんしん 文化 ぶんか を受 う け入 い れ、その権威 けんい に与 あずか るための手段 しゅだん となった。その間 あいだ 、中原 なかはら にはさまざまな民族 みんぞく が侵入 しんにゅう し、多 おお くの王朝 おうちょう が交代 こうたい したが、漢字 かんじ は使 つか われ続 つづ けた。
中国 ちゅうごく 語 ご は1音節 おんせつ が1形態素 けいたいそ に対応 たいおう する孤立 こりつ 語 ご であり、漢字 かんじ はその形態素 けいたいそ を書 か き表 あらわ したので、文字 もじ がすなわち言語 げんご であった。そのため言語 げんご 学 がく は発達 はったつ を見 み ず、代 か わりに文字 もじ を手 て がかりに古 ふる えの文献 ぶんけん を読 よ み解 と く訓詁 くんこ の学 がく が発展 はってん した。個々 ここ の文字 もじ は「形 かたち 音義 おんぎ (字形 じけい 、発音 はつおん 、意味 いみ )」の3要素 ようそ によって分類 ぶんるい 考証 こうしょう されるようになった。
20世紀 せいき に入 はい ると文化 ぶんか 人類 じんるい 学 がく や構造 こうぞう 主義 しゅぎ 言語 げんご 学 がく が起 お こり、人間 にんげん の諸 しょ 活動 かつどう のうち文字 もじ の使用 しよう についても通 つう 時 じ 的 てき 側面 そくめん とともに共 とも 時 じ 的 てき 側面 そくめん からも検討 けんとう する方法 ほうほう 論 ろん が主流 しゅりゅう となった。また考古学 こうこがく の発展 はってん もあって、文字 もじ の発達 はったつ や分化 ぶんか の理論 りろん も修正 しゅうせい された。
伝統 でんとう 的 てき によく用 もち いられる文字 もじ 体系 たいけい の分類 ぶんるい 法 ほう に、「表音 ひょうおん 文字 もじ と 表意 ひょうい 文字 もじ 」に大別 たいべつ するものがある。たとえば、フェルディナン・ド・ソシュールの『一般 いっぱん 言語 げんご 学 がく 講義 こうぎ 』でも表音 ひょうおん 文字 もじ と表意 ひょうい 文字 もじ に大別 たいべつ している[10] 。
表音 ひょうおん 文字 もじ (ひょうおんもじ、英 えい : phonogram)は、意味 いみ を示 しめ さず、あくまで音 おと (発音 はつおん )を示 しめ している。原則 げんそく 的 てき に、意味 いみ を示 しめ してはいない。ただし「表音 ひょうおん 文字 もじ は必 かなら ず発音 はつおん をすべて表記 ひょうき しているか?」と問 と うと、そういうわけではない。また完全 かんぜん に正確 せいかく に表記 ひょうき しているか?というと、必 かなら ずしもそうではない。形態素 けいたいそ が連接 れんせつ する際 さい の渡 わた り音 おん は表記 ひょうき に反映 はんえい しないのが普通 ふつう だし、音韻 おんいん の交替 こうたい を反映 はんえい しないこともしばしばある。たとえば、現代 げんだい 朝鮮 ちょうせん 語 ご の正書法 せいしょほう ではハングル の表記 ひょうき で形態 けいたい 主義 しゅぎ をとり、発音 はつおん の上 うえ では子音 しいん の交替 こうたい が起 お こっていても語幹 ごかん の表記 ひょうき を変化 へんか させない。このことによって、文中 ぶんちゅう の形態素 けいたいそ を識別 しきべつ しやすくしている。それぞれの語 かたり の綴 つづ りも、発音 はつおん を忠実 ちゅうじつ に表 あらわ しているとはかぎらない。現代 げんだい 英語 えいご の enough、night、thought の gh のように、異 こと なる発音 はつおん を表 あらわ す(あるいは発音 はつおん しない)場合 ばあい がある。言語 げんご において、その発音 はつおん は時代 じだい を経 へ ると音韻 おんいん 変化 へんか によって変 か わっていくが、文字 もじ の表記 ひょうき は変化 へんか しにくいためである[11] 。タイ語 ご のタンマサート ธรรมศาสตร์ はサンスクリット語 ご のダルマシャーストラ dharmaśāstra に由来 ゆらい するが、原語 げんご の発音 はつおん を綴 つづ りの中 なか に保存 ほぞん している。日本語 にほんご の現代 げんだい 仮名遣 かなづか い で、助詞 じょし の は、へ、を のみにはかつての表記 ひょうき を残 のこ しているのも似 に た現象 げんしょう である。このように発音 はつおん と一致 いっち しない綴 つづ りが保持 ほじ されるのは、形態素 けいたいそ 同士 どうし が発音 はつおん だけでは区別 くべつ できなくなる不便 ふべん を補 おぎな うためだと考 かんが えられている。
表意 ひょうい 文字 もじ (ひょういもじ、英 えい : ideogram)は、意味 いみ (概念 がいねん )を示 しめ している文字 もじ である。表意 ひょうい 文字 もじ の代表 だいひょう 例 れい にシュメール文字 もじ がある。アラビア数字 すうじ の1,2,3...なども「1」「2」「3」...という数 かず 概念 がいねん を示 しめ しており、表意 ひょうい 文字 もじ である。なお(各 かく 言語 げんご の中 なか の)表意 ひょうい 文字 もじ は、一般 いっぱん 的 てき に概念 がいねん と同時 どうじ に音 おと (各 かく 言語 げんご ごと異 こと なった音 おと 、ではあるが)も表 あらわ していることが一般 いっぱん 的 てき である。ただし、具体 ぐたい 的 てき な言語 げんご の種類 しゅるい で対応 たいおう する「音 おと 」が異 こと なってしまっている。たとえば「1」は英語 えいご では「one ワン」だが、日本語 にほんご では「いち」や「ひと」である。その意味 いみ で、やはり表意 ひょうい 文字 もじ の、基本 きほん 的 てき で一番 いちばん 重要 じゅうよう な機能 きのう は意味 いみ (概念 がいねん )を示 しめ すことであり、その意味 いみ でやはり「表意 ひょうい 文字 もじ 」と呼 よ ばれるのが適切 てきせつ だということになる(つまり表意 ひょうい 文字 もじ は、あくまで意味 いみ を示 しめ すために使 つか われており、特定 とくてい の固定 こてい された音 おと を示 しめ すための文字 もじ ではない。人 ひと は表意 ひょうい 文字 もじ を見 み て「音 おと 」を思 おも い出 だ すとしても、実際 じっさい には母語 ぼご が異 こと なれば想起 そうき する音 おと は異 こと なっているわけであり、各 かく 言語 げんご の話者 わしゃ が対応 たいおう するその言語 げんご の語彙 ごい を想起 そうき しているわけである。なお、日本人 にっぽんじん は表意 ひょうい 文字 もじ の例 れい としてすぐに漢字 かんじ を(本当 ほんとう は代表 だいひょう 例 れい ではないのに、あたかも代表 だいひょう 例 れい のように)挙 あ げてしまうが、中国 ちゅうごく 語 ご の文章 ぶんしょう の表記 ひょうき に使 つか われる漢字 かんじ は語 かたり や形態素 けいたいそ などにも対応 たいおう しており、その結果 けっか ひとつひとつの形態素 けいたいそ の発音 はつおん をも表 あらわ しているのだから、表意 ひょうい 文字 もじ に分類 ぶんるい するのは適切 てきせつ ではないと指摘 してき されている[12] 。したがって近年 きんねん では学術 がくじゅつ 的 てき には、中国 ちゅうごく 語 ご の文章 ぶんしょう の表記 ひょうき に使 つか われている状態 じょうたい では「漢字 かんじ は表 ひょう 語 ご 文字 もじ 」と分類 ぶんるい される。漢字 かんじ はつきつめれば結局 けっきょく 、個々 ここ の使用 しよう 例 れい ごとに、細 こま かく分類 ぶんるい せざるを得 え ない。また日本語 にほんご の文章 ぶんしょう 中 ちゅう の漢字 かんじ は、また別 べつ の話 はなし となる。)
表 ひょう 語 ご 文字 もじ (ひょうごもじ、英 えい : logogram)は、文章 ぶんしょう 中 ちゅう の語 かたり や形態素 けいたいそ を表 あらわ すと同時 どうじ にその発音 はつおん も表 あらわ す文字 もじ 、という分類 ぶんるい である。アンドレ・マルティネ は、人間 にんげん の言語 げんご が二 に 重 じゅう 分節 ぶんせつ されている、と説明 せつめい した。つまり、言語 げんご の文 ぶん はまず一連 いちれん の単位 たんい (形態素 けいたいそ )に分節 ぶんせつ され(第 だい 1次 じ 分節 ぶんせつ )、次 つぎ にそれぞれの単位 たんい が一連 いちれん の音 おと (音節 おんせつ や音素 おんそ )に分節 ぶんせつ される(第 だい 2次 じ 分節 ぶんせつ )、と説明 せつめい した。言語 げんご が持 も つこの性質 せいしつ によって、限 かぎ られた数 かず の音素 おんそ や音節 おんせつ から無数 むすう の語 かたり をつくり出 だ すことができ、それらを規則 きそく 的 てき に組 く み合 あ わせて無数 むすう の事実 じじつ を表現 ひょうげん することが可能 かのう になる、と説明 せつめい したのである[13] 。もしこの説明 せつめい 法 ほう を採用 さいよう するなら、表 ひょう 語 ご 文字 もじ と表音 ひょうおん 文字 もじ は、それぞれ、第 だい 1次 じ 分節 ぶんせつ と第 だい 2次 じ 分節 ぶんせつ のレベルを文字 もじ として、言語 げんご を表記 ひょうき するものと言 い える。
なお「表音 ひょうおん 性 せい 」や「表 ひょう 語 ご 性 せい 」という性質 せいしつ は、程度 ていど の差 さ はあるがどの文字 もじ 体系 たいけい にも備 そな わっており、相対 そうたい 的 てき な基準 きじゅん であると論 ろん ずる研究 けんきゅう 者 しゃ もいる[14] 。
本 ほん 項目 こうもく では文字 もじ 体系 たいけい を、伝統 でんとう 的 てき な分類 ぶんるい 法 ほう である「表音 ひょうおん 文字 もじ と表意 ひょうい 文字 もじ 」という分類 ぶんるい 法 ほう も尊重 そんちょう しつつ、現代 げんだい の学術 がくじゅつ 的 てき な表 ひょう 語 ご 文字 もじ という分類 ぶんるい 法 ほう も説明 せつめい してゆく。表音 ひょうおん 文字 もじ や表意 ひょうい 文字 もじ については、それぞれのサブカテゴリ(細分 さいぶん 化 か された分類 ぶんるい )も紹介 しょうかい してゆく。
表音 ひょうおん 文字 もじ と字形 じけい の間 あいだ の関係 かんけい 性 せい の有無 うむ
編集 へんしゅう
表音 ひょうおん 文字 もじ は、さまざまなタイプがある。一方 いっぽう は、表 あらわ す音素 おんそ や音節 おんせつ ごとに別 べつ の字形 じけい になっているタイプである。たとえばヒエログリフ は、碑文 ひぶん の普通 ふつう の文章 ぶんしょう 中 ちゅう で使 つか われている場合 ばあい 、ほとんどが表音 ひょうおん 文字 もじ として使 つか われているが、こうしたヒエログリフは、もともと具象 ぐしょう 物 ぶつ (たとえば口 くち (くち)、フクロウ、ヘビなど)を示 しめ すために使 つか われた象形 しょうけい 文字 もじ を転用 てんよう して音素 おんそ (たとえば「m」「t」など)だけを表 あらわ すことに用 もち いたものである。ヒエログリフの場合 ばあい 、字形 じけい とそれらが表 あらわ す発音 はつおん との間 あいだ には関連 かんれん がない。しかし他方 たほう 、文字 もじ や字母 じぼ の字形 じけい と、発音 はつおん との関係 かんけい に規則 きそく 的 てき な関連 かんれん がある表音 ひょうおん 文字 もじ 体系 たいけい もある。このタイプの表音 ひょうおん 文字 もじ は素性 すじょう 文字 もじ (英 えい : featural alphabet[注釈 ちゅうしゃく 2] )とも呼 よ ばれる。こういった文字 もじ 体系 たいけい の多 おお くは計画 けいかく 的 てき につくり出 だ されたものである。
ハングル は一見 いっけん 漢字 かんじ を連想 れんそう させる字形 じけい だが、ひとつひとつの文字 もじ は子音 しいん と母音 ぼいん の字母 じぼ (자모 、チャモ)を規則 きそく 的 てき に組 く み合 あ わせて音節 おんせつ を表 あらわ す純粋 じゅんすい な表音 ひょうおん 文字 もじ である。同 おな じ調音 ちょうおん 位置 いち の子音 しいん 字母 じぼ は似 に た形 かたち をしており、朝鮮 ちょうせん 語 ご に特有 とくゆう の平 ひら 音 おと 、濃 こ 音 おん 、激 げき 音 おん の対立 たいりつ を字母 じぼ を変形 へんけい することによって表 あらわ している。母音 ぼいん の字母 じぼ の形 かたち も朝鮮 ちょうせん 語 ご 特有 とくゆう の陽 ひ 母音 ぼいん と陰 かげ 母音 ぼいん の対立 たいりつ や母音 ぼいん 調和 ちょうわ 法則 ほうそく に即 そく した規則 きそく 性 せい を持 も つ(詳細 しょうさい はハングル の項 こう を参照 さんしょう )。
テングワール は、トールキン が架空 かくう の中 なか つ国 くに で使 つか われている文字 もじ 体系 たいけい として作 つく り出 だ したもの[注釈 ちゅうしゃく 3] だが、やはり子音 しいん の字形 じけい は調音 ちょうおん 位置 いち や調音 ちょうおん 形式 けいしき に対応 たいおう した規則 きそく 性 せい を持 も つ(詳細 しょうさい はテングワール の項 こう を参照 さんしょう )。
ただし、これらの文字 もじ 体系 たいけい のうち、それぞれの文字 もじ が音節 おんせつ ごとに表記 ひょうき されるものは、文字 もじ の構成 こうせい 要素 ようそ である字母 じぼ を単独 たんどく で書 か き表 あらわ すことは原則 げんそく としてない(たとえばハングルでは、学習 がくしゅう などの目的 もくてき 以外 いがい に、単独 たんどく の字母 じぼ で音素 おんそ を表記 ひょうき することはない)。したがって、本 ほん 項目 こうもく ではこの分類 ぶんるい は採 と らず、ひとつひとつの字母 じぼ や書記 しょき 素 もと ではなく文字 もじ が音素 おんそ と音節 おんせつ のどちらを表記 ひょうき するかによって、表音 ひょうおん 文字 もじ を音素 おんそ 文字 もじ (英 えい : segmental script)と音節 おんせつ 文字 もじ (英 えい : syllabary)に区分 くぶん するにとどめる[注釈 ちゅうしゃく 4] 。
いっぽう、アラビア文字 もじ やモンゴル文字 もじ のように、語 かたり 内 うち の字母 じぼ の位置 いち (独立 どくりつ 、語頭 ごとう 、語 かたり 中 ちゅう 、語尾 ごび )によって字母 じぼ の姿 すがた 形 がた が変化 へんか する文字 もじ 体系 たいけい もある。字母 じぼ が連結 れんけつ して書 か かれる文字 もじ 体系 たいけい に見 み られる特徴 とくちょう であるが、同 おな じ文字 もじ 体系 たいけい でも言語 げんご や表記 ひょうき 体系 たいけい が異 こと なる場合 ばあい に連結 れんけつ 規則 きそく が異 こと なる場合 ばあい が見 み られる。このような文字 もじ 体系 たいけい の場合 ばあい 、字母 じぼ が位置 いち によって姿 すがた 形 がた を変 か えるとみなされるが、字母 じぼ の字形 じけい の類似 るいじ と発音 はつおん の類似 るいじ に関連 かんれん 性 せい が見 み られるとはかぎらない。
音素 おんそ 文字 もじ (英 えい : segmental script、単音 たんおん 文字 もじ とも)とは、表音 ひょうおん 文字 もじ のうち、ひとつひとつの字母 じぼ でひとつひとつの音素 おんそ を表 あらわ す文字 もじ 体系 たいけい (例外 れいがい 的 てき に複数 ふくすう の音素 おんそ を表 あらわ す文字 もじ を持 も つ場合 ばあい もある)。アルファベット (英 えい : alphabet)と総称 そうしょう されることもある。
en:Peter T. Daniels は音素 おんそ 文字 もじ をさらに細分 さいぶん し、アブジャド 、アブギダ 、アルファベット に分類 ぶんるい した[15] 。
かつてアブギダ は、音節 おんせつ 文字 もじ とアルファベット の中間 ちゅうかん に位置付 いちづ けられ、しばしば音節 おんせつ 文字 もじ に分類 ぶんるい されたが、今日 きょう では、アブギダ とアルファベット は、多 おお くの場合 ばあい アブジャド からそれぞれ別個 べっこ に発達 はったつ したものだと考 かんが えられている。
音素 おんそ 文字 もじ に含 ふく まれる字母 じぼ の数 かず は、表記 ひょうき する言語 げんご の音素 おんそ 数 すう に照応 しょうおう しているため、少 すく なくて20程度 ていど 、多 おお くても50程度 ていど までである。
アブジャド (英 えい : abjad)とは、語 かたり の子音 しいん のみを字母 じぼ として綴 つづ る文字 もじ 体系 たいけい である(母音 ぼいん は原則 げんそく として表記 ひょうき しないが、初 はつ 学者 がくしゃ 向 む けにはダイアクリティカルマーク で母音 ぼいん を表記 ひょうき する場合 ばあい もある)。子音 しいん 文字 もじ または単 たん 子音 しいん 文字 もじ (英 えい : consonantary)とも呼 よ ばれる。
アブジャドに属 ぞく する文字 もじ 体系 たいけい には、アラビア文字 もじ 、アラム文字 もじ (消滅 しょうめつ )、ヘブライ文字 もじ 、ペルシア文字 もじ などがある。現在 げんざい までに知 し られているアブジャドはすべて、セム系 けい 言語 げんご を表記 ひょうき するために発達 はったつ したと考 かんが えられている。
学術 がくじゅつ 用語 ようご としてのアブジャドは、Daniels の創案 そうあん になるものである。この語 かたり はアラビア文字 もじ の伝統 でんとう 的 てき な順序 じゅんじょ の最初 さいしょ の4文字 もじ に由来 ゆらい し、平仮名 ひらがな の「いろは」がそうであるように、アラビア文字 もじ を意味 いみ する語 かたり として古 ふる くから用 もち いられていた。アラビア文字 もじ 記数 きすう 法 ほう も参照 さんしょう 。
アブギダ (英 えい : abugida)とは、子音 しいん の字母 じぼ に特定 とくてい の母音 ぼいん (随伴 ずいはん 母音 ぼいん と呼 よ ばれる。しばしば a 音 おと だがそうでない場合 ばあい もある)が結 むす びついているため、単独 たんどく の子音 しいん 字母 じぼ が随伴 ずいはん 母音 ぼいん つきの子音 しいん をあらわす文字 もじ 体系 たいけい のことである。随伴 ずいはん 母音 ぼいん 以外 いがい の母音 ぼいん は、ダイアクリティカルマーク を付加 ふか するなどのきまった表記 ひょうき 規則 きそく によって表 あらわ す。
アブギダは、ブラーフミー系 けい 文字 もじ に属 ぞく する数 すう 百 ひゃく の文字 もじ 体系 たいけい を含 ふく むため、現在 げんざい 世界 せかい で使用 しよう されている文字 もじ 体系 たいけい のおよそ半数 はんすう は、アブギダであることになる。ほかにアブギダに属 ぞく する文字 もじ 体系 たいけい としては、カローシュティー文字 もじ (消滅 しょうめつ )、現代 げんだい のエチオピア文字 もじ (かつてはアブジャドだったがアブギダに変化 へんか した)、カナダ先住民 せんじゅうみん 文字 もじ の一種 いっしゅ のクリー文字 もじ (ただし正書法 せいしょほう の違 ちが いから真正 しんせい のアブギダとは言 い えない場合 ばあい もある)などがある。
アブギダという用語 ようご もアブジャドと同様 どうよう で、Daniels の創作 そうさく である。エチオピア文字 もじ のセム系 けい 文字 もじ で一般 いっぱん 的 てき な順序 じゅんじょ での、最初 さいしょ の 4 文字 もじ の読 よ みからきている。
アルファベット (英 えい : alphabet)とは、すべての母音 ぼいん と子音 しいん を、各々 おのおの 独立 どくりつ した字母 じぼ で表記 ひょうき する文字 もじ 体系 たいけい のことである。
アルファベットは、ラテン文字 もじ やキリル文字 もじ のように多 おお くの言語 げんご の表記 ひょうき に用 もち いられる文字 もじ 体系 たいけい を含 ふく むため、現在 げんざい 世界 せかい で使用 しよう されている言語 げんご のうち文字 もじ を持 も つものの大半 たいはん は、アルファベットで表記 ひょうき されていることになる。
ほかにアルファベットに属 ぞく する文字 もじ 体系 たいけい としては、アヴェスター文字 もじ (消滅 しょうめつ )、アルメニア文字 もじ 、エトルリア文字 もじ (消滅 しょうめつ )、グラゴル文字 もじ (古代 こだい 教会 きょうかい スラブ語 ご の表記 ひょうき に用 もち いられる)、グルジア文字 もじ 、イラク のクルド語 ご で使 つか われるアラビア文字 もじ (もともとアブジャドだが母音 ぼいん 符号 ふごう を必 かなら ず表記 ひょうき するためアルファベットと言 い える)、ゴート文字 もじ (消滅 しょうめつ )、コプト文字 もじ (現代 げんだい の使用 しよう はまれ)、フレイザー文字 もじ 、満 まん 洲 しゅう 文字 もじ 、蒙 こうむ 古 こ 文字 もじ 、オル・チキ文字 もじ (20世紀 せいき に誕生 たんじょう )などがある。
音節 おんせつ 文字 もじ とは、表音 ひょうおん 文字 もじ のうち、ひとつの文字 もじ でひとつの音節 おんせつ を表 あらわ し、音素 おんそ に分解 ぶんかい して表記 ひょうき しない文字 もじ 体系 たいけい のことである。
音節 おんせつ 文字 もじ に属 ぞく する文字 もじ 体系 たいけい には、彝 つね 文字 もじ (ロロ文字 もじ )の音節 おんせつ 文字 もじ 、ヴァイ文字 もじ 、キプロス音節 おんせつ 文字 もじ (消滅 しょうめつ )、線 せん 文字 もじ B (消滅 しょうめつ )、チェロキー文字 もじ 、女 おんな 書 しょ 、ハングル 、平仮名 ひらがな と片仮名 かたかな 、などがある。
表音 ひょうおん 文字 もじ では多 おお くの場合 ばあい 、文字 もじ の字形 じけい とそれが表 あらわ す音 おと との対応 たいおう に規則 きそく 性 せい はない。したがって音節 おんせつ 文字 もじ では、表記 ひょうき する言語 げんご で弁別 べんべつ される音節 おんせつ の数 かず だけ異 こと なる文字 もじ がある。そのため、文字 もじ の数 かず は百 ひゃく から数 すう 百 ひゃく 程度 ていど である。平仮名 ひらがな と片仮名 かたかな はその下限 かげん に近 ちか く、基本 きほん 的 てき な文字 もじ の数 かず は48(現代 げんだい 語 ご で使用 しよう しないゐ/ヰとゑ/ヱを含 ふく む)である。ほぼ上限 じょうげん と考 かんが えられるのは涼 りょう 山 やま 規範 きはん 彝 つね 文 ぶん で、音節 おんせつ の声調 せいちょう の違 ちが いも異 こと なる文字 もじ で表 あらわ すため、文字 もじ の数 かず は800以上 いじょう に上 のぼ る。なおハングル は、#字形 じけい の規則 きそく 性 せい の節 ふし で述 の べたとおり字形 じけい と発音 はつおん の関係 かんけい に規則 きそく 性 せい があるため、論理 ろんり 的 てき に可能 かのう な文字 もじ の数 かず は1万 まん を超 こ える。
表 ひょう 1 主 おも な漢字 かんじ 辞典 じてん の収録 しゅうろく 文字数 もじすう [要 よう 検証 けんしょう – ノート ]
年 とし (西暦 せいれき )
辞典 じてん 名 めい
見出 みだ し字数 じすう
前 ぜん 14世紀 せいき -
甲 かぶと 骨 こつ 文 ぶん (参考 さんこう )[a]
約 やく 3,400
前 ぜん 11世紀 せいき -
金文 きんぶん (参考 さんこう )[b]
約 やく 3,600
100
『説 せつ 文 ぶん 解 かい 字 じ 』
9,353
227-239
『声 こえ 類 るい 』
11,520
543
『玉 たま 篇 へん 』
22,726
751
『唐 から 韻 いん 』
26,194
1066
『類 るい 篇 へん 』
31,319
1615
『字彙 じい 』
33,179
1716
『康 かん 熙字典 じてん 』
47,035
1915
『中華 ちゅうか 大 だい 字典 じてん 』
約 やく 48,000
1960
『大 だい 漢和 かんわ 辞典 じてん 』[c]
48,899
1962
『中 ちゅう 文 ぶん 大 だい 辞典 じてん 』
49,888
1986
『漢語 かんご 大 だい 字典 じてん 』
56,000余 あまり
1986
『漢語 かんご 大 だい 詞 し 典 てん 』
60,000余 あまり
ひとつの文字 もじ がひとつの語 かたり あるいは形態素 けいたいそ を表 あらわ す文字 もじ 体系 たいけい のことを表 ひょう 語 ご 文字 もじ (英 えい : logogram)と呼 よ ぶ。中国 ちゅうごく 語 ご では、ひとつの音節 おんせつ がひとつの形態素 けいたいそ を表 あらわ し、漢字 かんじ はひとつひとつの文字 もじ が形態素 けいたいそ を表 あらわ している(わずかな例外 れいがい はある)。したがって、漢字 かんじ は完全 かんぜん な表 ひょう 語 ご 文字 もじ としては代表 だいひょう 的 てき なものである。表意 ひょうい 文字 もじ とのちがいについては#表音 ひょうおん と表意 ひょうい ・表 ひょう 語 ご の節 ふし を参照 さんしょう 。
表 ひょう 語 ご 文字 もじ に属 ぞく する文字 もじ 体系 たいけい には、アナトリア文字 もじ (消滅 しょうめつ )、エジプトヒエログリフ (消滅 しょうめつ )、漢字 かんじ 、契 ちぎり 丹 に 文字 もじ の一部 いちぶ (消滅 しょうめつ )、楔形文字 くさびがたもじ の一部 いちぶ (消滅 しょうめつ )、古 いにしえ 彝 つね 文字 もじ (現代 げんだい では使 つか われない)、古 こ 壮 たけし 字 じ (現代 げんだい では使 つか われない)、女 おんな 真 ま 文字 もじ (消滅 しょうめつ )、西 にし 夏 なつ 文字 もじ (消滅 しょうめつ )、チュノム (現代 げんだい 語 ご の表記 ひょうき には使 つか われない)、トンパ文字 もじ 、マヤ文字 もじ (滅亡 めつぼう )、などがある。
表 ひょう 語 ご 文字 もじ 体系 たいけい のなかには、表音 ひょうおん 用 よう の文字 もじ も持 も っていて、表 ひょう 語 ご 用 よう の文字 もじ と表音 ひょうおん 用 よう の文字 もじ とを組 く み合 あ わせて語 かたり の意味 いみ と発音 はつおん の両方 りょうほう を表 あらわ そうとするものもある。また、複数 ふくすう の文字 もじ を並 なら べてより複雑 ふくざつ な意味 いみ を表 あらわ そうとするものもある。エジプトヒエログリフ やトンパ文字 もじ などがこれにあたる。いっぽう、漢字 かんじ やそれに影響 えいきょう を受 う けた表 ひょう 語 ご 文字 もじ 体系 たいけい では、この方法 ほうほう を会意 かいい や形声 けいせい といった手法 しゅほう に発展 はってん させたため、言語 げんご の語 かたり や形態素 けいたいそ のひとつひとつを文字 もじ で表 あらわ すことができるようになった(詳細 しょうさい は六書 りくしょ およびその関連 かんれん 項目 こうもく を参照 さんしょう )。後者 こうしゃ のように、すべての文字 もじ が形態素 けいたいそ とその発音 はつおん の音節 おんせつ を表 あらわ す文字 もじ 体系 たいけい を、特 とく にロゴシラバリー (英 えい : logosyllabary)と呼 よ ぶ研究 けんきゅう 者 しゃ もいる[16] 。
表 ひょう 語 ご 文字 もじ の特徴 とくちょう として、文字 もじ 体系 たいけい に含 ふく まれる文字 もじ の総数 そうすう を確定 かくてい しがたいということがある。たとえば、漢字 かんじ はその誕生 たんじょう 以来 いらい 文字数 もじすう を増 ふ やしつづけてきたし、今日 きょう でも新 あたら しい文字 もじ が生 う まれ続 つづ けている(#表 ひょう 1 参照 さんしょう )。また近年 きんねん は、漢字 かんじ をコンピュータで利用 りよう するための文字 もじ コード(符号 ふごう 化 か 文字 もじ 集合 しゅうごう )の編纂 へんさん がたびたび行 おこな われ、そのための典拠 てんきょ 調査 ちょうさ を行 おこな うたびに収録 しゅうろく 漢字 かんじ 数 すう は増加 ぞうか している。
「文字 もじ は、当初 とうしょ ピクトグラム(絵文字 えもじ )から発達 はったつ した象形 しょうけい 文字 もじ であった[要 よう 出典 しゅってん ] 」という仮説 かせつ が有力 ゆうりょく である[要 よう 出典 しゅってん ] 。しかし、ピクトグラムから象形 しょうけい 文字 もじ への移行 いこう を裏付 うらづ ける証拠 しょうこ はほとんど発見 はっけん されていない。
一方 いっぽう 、デニス・シュマント=ベッセラ (英語 えいご 版 ばん ) は、中東 ちゅうとう 一帯 いったい の遺跡 いせき から発見 はっけん される粘土 ねんど 製 せい 証票 しょうひょう (トークン)が文字 もじ の起源 きげん となったと主張 しゅちょう する[17] 。商 しょう 取引 とりひき の際 さい 、商品 しょうひん ごとに形 かたち の異 こと なるトークンを用 もち い、トークンの数 かず で取 と り引 ひ き数 すう を表 あらわ す。取 と り引 ひ きごとのトークンをまとめて中空 ちゅうくう の粘土 ねんど の玉 たま (封 ふう 球 だま )に納 おさ めたり、紐 ひも で綴 つづ って両 りょう 端 はし を粘土 ねんど の塊 かたまり (ブッラ)で封印 ふういん することで、取 と り引 ひ きの証明 しょうめい とした。後 のち に封 ふう 球 だま やブッラの表面 ひょうめん に、トークンの形 かたち と数 かず を印 しる すようになった。つまり、商品 しょうひん をトークンで表 あらわ し、さらにトークンとその数 かず を記号 きごう で象徴 しょうちょう するようになった。これが文字 もじ の(少 すく なくとも、この地域 ちいき でその後 ご 使 つか われるようになった楔形文字 くさびがたもじ 体系 たいけい の)起源 きげん であるとする説 せつ である。
しかし、この説 せつ への批判 ひはん も多 おお く、現在 げんざい の主流 しゅりゅう の見解 けんかい では、トークンは文字 もじ の誕生 たんじょう の一 いち 要因 よういん であったが、トークンのみですべてを説明 せつめい することはできないとされている[要 よう 出典 しゅってん ] 。
また、文字 もじ が単一 たんいつ の起源 きげん から発生 はっせい したのか、それとも地球 ちきゅう 上 じょう の複数 ふくすう の地域 ちいき で独立 どくりつ に文字 もじ が誕生 たんじょう したのかについては、学者 がくしゃ らの見解 けんかい は一致 いっち していない[要 よう 出典 しゅってん ] 。
現在 げんざい までに発見 はっけん されている文字 もじ 体系 たいけい は、あまり多 おお くないいくつかの系統 けいとう に分類 ぶんるい できる。つまり、現在 げんざい 知 し られる文字 もじ 体系 たいけい のほとんどは、ほかの文字 もじ 体系 たいけい を借用 しゃくよう し、発展 はってん させて成立 せいりつ したことがわかっている。借用 しゃくよう はさまざまなレベルで行 おこな われるが、それぞれの系統 けいとう には#分類 ぶんるい の節 ふし で述 の べたさまざまな類型 るいけい に属 ぞく する文字 もじ 体系 たいけい が現 あらわ れる。また、個々 ここ の文字 もじ 体系 たいけい の中 なか でも、さまざまな造 みやつこ 字 じ 手法 しゅほう を発展 はってん させてきた。
文字 もじ という着想 ちゃくそう
事実 じじつ や意志 いし の伝達 でんたつ を目的 もくてき とし、耐久 たいきゅう 性 せい のある媒体 ばいたい に記 しる され、言語 げんご と関係 かんけい した記号 きごう の体系 たいけい 、という着想 ちゃくそう 。これには、一定 いってい の種類 しゅるい の記号 きごう だけを使 つか うことも含 ふく まれる。この着想 ちゃくそう は単一 たんいつ の起源 きげん を持 も つと考 かんが える研究 けんきゅう 者 しゃ もいるが、作業 さぎょう 仮説 かせつ の域 いき を出 で ない。現在 げんざい でも、この着想 ちゃくそう に基 もと づいて計画 けいかく 的 てき に文字 もじ 体系 たいけい をつくり出 だ そうとする試 こころ みは多 おお い。
書記 しょき 媒体 ばいたい
書記 しょき 媒体 ばいたい (粘土 ねんど に楔 くさび 形 がた の記号 きごう を記 しる す、布 ぬの や紙 かみ に墨 すみ と筆 ふで で書 か く、など)を借用 しゃくよう して、異 こと なる文字 もじ 体系 たいけい を表記 ひょうき するのに用 もち いた例 れい は歴史 れきし 上 じょう 多 おお い。
線条 せんじょう 性 せい
線条 せんじょう 的 てき に書 か くという方式 ほうしき の発展 はってん 。初期 しょき の表 ひょう 語 ご 文字 もじ には記号 きごう の順序 じゅんじょ からは読 よ む順序 じゅんじょ が判然 はんぜん としないものがあるが、後 ご の文字 もじ 体系 たいけい では、区切 くぎ り記号 きごう を導入 どうにゅう して文 ぶん を語 かたり に分析 ぶんせき して順番 じゅんばん に表記 ひょうき したり、文字 もじ や字母 じぼ を単位 たんい として線条 せんじょう 的 てき に表記 ひょうき することが一般 いっぱん 化 か した。
書 しょ 字 じ 方向 ほうこう
かつては、ある行 くだり から次 つぎ の行 くだり へ移 うつ ると書 しょ 字 じ 方向 ほうこう を反転 はんてん させて書 か き進 すす めることがしばしば行 おこな われた。これをブストロフェドン (希 のぞみ : βουστροφηδόν 、牛 ぎゅう 耕 こう 式 しき とも)と呼 よ ぶ。文字 もじ の需要 じゅよう が増大 ぞうだい してより速 はや く大量 たいりょう に書 か くことが求 もと められるようになるにつれ、各行 かくこう を一定 いってい 方向 ほうこう に書 か くことが増 ふ えるが、右 みぎ から左 ひだり へ、左 ひだり から右 みぎ へ、上 うえ から下 した へなどのどの書 しょ 字 じ 方向 ほうこう を選 えら ぶかは、文字 もじ 体系 たいけい によって異 こと なる。借用 しゃくよう の際 さい に書 しょ 字 じ 方向 ほうこう を変更 へんこう したため、文字 もじ の図形 ずけい を反転 はんてん (左右 さゆう の変更 へんこう の場合 ばあい )したり、90度 ど 回転 かいてん (左右 さゆう と上下 じょうげ の変更 へんこう の場合 ばあい )した例 れい もある。
会意 かいい と形声 けいせい
表 ひょう 語 ご 文字 もじ では、複数 ふくすう の記号 きごう を組 く み合 あ わせてより複雑 ふくざつ な意味 いみ を表 あらわ す手法 しゅほう が発展 はってん した。たとえばエジプトヒエログリフ で、「書 か く」を意味 いみ する文字 もじ と「人 ひと 」を意味 いみ する文字 もじ を組 く み合 あ わせて
(書記 しょき )を表 あらわ す。「人 ひと 」の文字 もじ はこの語 かたり の発音 はつおん とは何 なん の関係 かんけい もない。このように、意味 いみ 範疇 はんちゅう を限定 げんてい するための記号 きごう を限定 げんてい 符 ふ (英 えい : determinitive、決定 けってい 詞 し 、漢字 かんじ では義 ぎ 符 ふ とも)と呼 よ ぶ。また、限定 げんてい 符 ふ に発音 はつおん を表 あらわ す文字 もじ (音符 おんぷ 、漢字 かんじ では声 こえ 符 ふ とも)を付加 ふか して表 あらわ したい語 かたり を特定 とくてい することもある。エジプトヒエログリフの場合 ばあい 、明確 めいかく さを向上 こうじょう させるために複数 ふくすう の限定 げんてい 符 ふ や音符 おんぷ を付加 ふか することもある。漢字 かんじ ではこの手法 しゅほう はより体系 たいけい 化 か されており、それぞれ会意 かいい および形声 けいせい と呼 よ ばれている。
音 おと の借用 しゃくよう
表 ひょう 語 ご 文字 もじ から特定 とくてい の文字 もじ をいくつか借用 しゃくよう して、その文字 もじ の表 あらわ す意味 いみ から類推 るいすい される発音 はつおん を表 あらわ すものとして使 つか う。つまり、表 ひょう 語 ご 文字 もじ を借用 しゃくよう して表音 ひょうおん 文字 もじ として使 つか うのである。たいてい、元 もと の語 かたり は1音節 おんせつ ないしは複数 ふくすう の音節 おんせつ で発音 はつおん されるので、借用 しゃくよう の際 さい には語頭 ごとう の子音 しいん や音節 おんせつ だけを表 あらわ すものとみなす。これを頭 あたま 音 おん 法 ほう (英 えい : acrophony。頭字 かしらじ 法 ほう とも)と呼 よ ぶ。たとえば、エジプトヒエログリフ では、「脚 あし 」を表 あらわ す文字 もじ
(発音 はつおん は b)を[b]の音 おと を表 あらわ すのにも使 つか うし、万葉仮名 まんようがな や平仮名 ひらがな では、漢字 かんじ の「安 やす 」を「あ」の音 おと を表 あらわ す文字 もじ に転用 てんよう している。
すでにある言語 げんご で使 つか われている表音 ひょうおん 文字 もじ を借用 しゃくよう して、別 べつ の言語 げんご を表記 ひょうき するものとする例 れい は非常 ひじょう に多 おお い。この場合 ばあい 、元 もと の文字 もじ 体系 たいけい では表 あらわ せない発音 はつおん があったり、借用 しゃくよう 先 さき の言語 げんご にはない発音 はつおん を表 あらわ す文字 もじ があったりする。そこで、似 に た発音 はつおん の字母 じぼ を変形 へんけい したり、識別 しきべつ 記号 きごう (ダイアクリティカルマーク など)を付加 ふか したりして文字 もじ 体系 たいけい を拡張 かくちょう する。たとえば、ラテン文字 もじ のCは当初 とうしょ [k]と[g]の音 おと 両方 りょうほう を表 あらわ したが、後 のち に2つの音 おと が区別 くべつ されるようになったため、Cに鈎 かぎ を付 つ けてGとした。場合 ばあい によっては、必要 ひつよう ない字母 じぼ をまったく別 べつ の音 おと の表記 ひょうき に転用 てんよう することもある。フェニキア文字 もじ は子音 しいん のみを表記 ひょうき するアブジャド だったが、ギリシア語 ご 表記 ひょうき に借用 しゃくよう された際 さい にギリシア語 ご 表記 ひょうき に必要 ひつよう のない字母 じぼ が母音 ぼいん の表記 ひょうき に転用 てんよう され、アルファベット となった。このような事情 じじょう から、文字 もじ 体系 たいけい の字形 じけい が似通 にかよ っていても個々 ここ の文字 もじ の表 あらわ す発音 はつおん は大 おお きく異 こと なることがある。
意味 いみ の借用 しゃくよう
表 ひょう 語 ご 文字 もじ の文字 もじ はひとつひとつが言語 げんご の語 かたり に対応 たいおう しているので、文字 もじ を借用 しゃくよう して自分 じぶん たちの言語 げんご の語 かたり を表 あらわ すものとする。つまり、文字 もじ を書 か いてその意味 いみ を固有 こゆう 語 ご の発音 はつおん で読 よ むことにする。日本語 にほんご の訓読 くんよ み はこの代表 だいひょう 的 てき な例 れい である。かつて朝鮮 ちょうせん 語 ご でもこの方法 ほうほう が行 おこな われたことがある。ごくまれに、表音 ひょうおん 文字 もじ でもこのような借用 しゃくよう が見 み られる。
契 ちぎり 丹 に 文字 もじ 、古 こ 壮 たけし 字 じ 、女 おんな 真 ま 文字 もじ 、西 にし 夏 なつ 文字 もじ 、チュノム は漢字 かんじ の影響 えいきょう を受 う けて生 う まれたと考 かんが えられているが、現在 げんざい は中国 ちゅうごく のジン族 ぞく の人 ひと が使用 しよう している。
複数 ふくすう の文字 もじ 体系 たいけい から影響 えいきょう を受 う けた文字 もじ 体系 たいけい
編集 へんしゅう
新 あら たな文字 もじ 体系 たいけい が成立 せいりつ するときに、複数 ふくすう の文字 もじ 体系 たいけい を取 と り入 い れることはしばしばある。また、別 べつ の系統 けいとう に分 わ かれた同 どう 時代 じだい の文字 もじ 体系 たいけい 同士 どうし が、影響 えいきょう を与 あた えあって発展 はってん していくこともある。本節 ほんぶし では、複数 ふくすう の文字 もじ 体系 たいけい から影響 えいきょう を受 う けたことが特 とく にはっきりしているものを取 と り上 あ げて解説 かいせつ する。
近代 きんだい 以降 いこう に創出 そうしゅつ された文字 もじ 体系 たいけい
編集 へんしゅう
未 み 解読 かいどく または系統 けいとう 未 み 詳 しょう の文字 もじ 体系 たいけい
編集 へんしゅう
彝 つね 文字 もじ
インダス文字 もじ
トンパ文字 もじ
中国 ちゅうごく の少数 しょうすう 民族 みんぞく であるナシ族 ぞく の間 あいだ に伝 つた わる文字 もじ 体系 たいけい で、経典 きょうてん などの表記 ひょうき に用 もち いられる。抽象 ちゅうしょう 化 か の進 すす んだ表 ひょう 語 ご 文字 もじ に属 ぞく する文字 もじ と、絵画 かいが 的 てき でピクトグラムから象形 しょうけい 文字 もじ の段階 だんかい に入 はい ったばかりと思 おも われる文字 もじ の両方 りょうほう を持 も つが、その起源 きげん についてはまだ十分 じゅうぶん な研究 けんきゅう がない[18] 。
ファイストスの円盤 えんばん の文字 もじ
ラパヌイ文字 もじ (ロンゴロンゴ文字 もじ )
イースター島 とう (ラパヌイ島 とう )に伝 つた わる石板 せきばん に見 み られる、文字 もじ 体系 たいけい の可能 かのう 性 せい がある記号 きごう の体系 たいけい である。[19] 一部 いちぶ の研究 けんきゅう 者 しゃ は、決 き まり文句 もんく を記 しる すためだけに使用 しよう されたピクトグラムの一種 いっしゅ で、文字 もじ 体系 たいけい ではないと主張 しゅちょう している。基本 きほん 的 てき な字母 じぼ の数 かず が120個 こ ほどであることから、音素 おんそ 文字 もじ である可能 かのう 性 せい は低 ひく い。現在 げんざい 残 のこ る文字 もじ 資料 しりょう から知 し られている書 しょ 字 じ 方向 ほうこう は、下 した から上 うえ へ行 くだり が進 すす む横書 よこが きのブストロフェドンという特異 とくい なものである[20] 。
^ たとえばUnicode での定義 ていぎ はThe Unicode Consortium (November 3, 2006). The Unicode Standard, Version 5.0 (5th edition ed.). Addison-Wesley Professional. pp. pp.1144, 1151. ISBN 0-321-48091-0 を参照 さんしょう 。
^ 朝 あさ : 자질 문자
^ 作中 さくちゅう では、中 ちゅう つ国 くに 第 だい 一紀 かずのり のエルフ 、フェアノール が、サラティ を改良 かいりょう して作 つく ったとされる。
^ 表音 ひょうおん 文字 もじ を、音素 おんそ 文字 もじ 、音節 おんせつ 文字 もじ 、素性 すじょう 文字 もじ の3類型 るいけい に分類 ぶんるい する研究 けんきゅう 者 しゃ もいる。Sampson, Geoffrey (1985). Writing systems: a linguistic introduction . Stanford University Press. pp. pp.38-42. ISBN 0-8047-1756-7 などを参照 さんしょう 。
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執筆 しっぴつ にあたって以下 いか のものを参考 さんこう にした。なお、特定 とくてい の文字 もじ 体系 たいけい に関 かん する記述 きじゅつ で参考 さんこう にしたものについては#注 ちゅう も参照 さんしょう 。
用語 ようご の選択 せんたく は以下 いか のものに倣 なら った。これらに見 み えないものは原則 げんそく として原語 げんご の片仮名 かたかな 書 が きとした。
亀井 かめい 孝 たかし ・河野 こうの 六郎 ろくろう ・千野 ちの 栄一 えいいち 編著 へんちょ 『言語 げんご 学 がく 大 だい 辞典 じてん 第 だい 6巻 かん 術語 じゅつご 編 へん 』三省堂 さんせいどう 、1996年 ねん 1月 がつ 。ISBN 4-385-15218-7 。
河野 こうの 六郎 ろくろう ・千野 ちの 栄一 えいいち ・西田 にしだ 龍雄 たつお 編著 へんちょ 『言語 げんご 学 がく 大 だい 辞典 じてん 別巻 べっかん 世界 せかい 文字 もじ 辞典 じてん 』三省堂 さんせいどう 、2001年 ねん 7月 がつ 。ISBN 4-385-15177-6 。
全般 ぜんぱん 、#基本 きほん 的 てき な概念 がいねん 、#分類 ぶんるい
カルヴェ, ルイ=ジャン 著 ちょ 、矢島 やじま 文夫 ふみお (監 かん 訳 やく )・会津 あいづ 洋 ひろし ・前島 まえじま 和也 かずや 訳 やく 『文字 もじ の世界 せかい 史 し 』河出書房新社 かわでしょぼうしんしゃ 、1998年 ねん 6月 がつ 。ISBN 4-309-22327-3 。 (原著 げんちょ Calvet, Louis-Jean (1996). HISTOIRE DE L'ECRITURE . Plon )
Daniels, Peter T. and Bright, William (eds.) (February 1996). The World's Writing Systems . Oxford University Press. ISBN 978-0-19-507993-7
フィッシャー, スティーヴン・ロジャー 著 ちょ 、鈴木 すずき 晶 あきら 訳 やく 『文字 もじ の歴史 れきし 』研究 けんきゅう 社 しゃ 、2005年 ねん 10月 がつ 。ISBN 4-327-40141-2 。 (原著 げんちょ Fischer, Steven Roger (2001). A History of Writing . Reaktion Books Ltd. )
河野 こうの 六郎 ろくろう 『文字 もじ 論 ろん 』三省堂 さんせいどう 、1994年 ねん 9月 がつ 。ISBN 4-385-35587-8 。
河野 こうの 六郎 ろくろう ・千野 ちの 栄一 えいいち ・西田 にしだ 龍雄 たつお 編著 へんちょ 『言語 げんご 学 がく 大 だい 辞典 じてん 別巻 べっかん 世界 せかい 文字 もじ 辞典 じてん 』三省堂 さんせいどう 、2001年 ねん 7月 がつ 。ISBN 4-385-15177-6 。
#系統 けいとう
シュマント=ベッセラ, デニス『文字 もじ はこうして生 う まれた』小口 おぐち 好昭 よしあき ・中田 なかた 一郎 いちろう 訳 やく 、岩波書店 いわなみしょてん 、2008年 ねん 5月 がつ (原著 げんちょ 1996年 ねん )。ISBN 978-4-00-025303-1 。 (原著 げんちょ Schmandt-Besserat, Denise (1996). How Writing Came About . Austin: University of Texas Press )
デイヴィズ, ヴィヴィアン 著 ちょ 、塚本 つかもと 明廣 あきひろ 訳 やく 『エジプト聖 せい 刻 こく 文字 もじ 』矢島 やじま 文夫 ふみお 監修 かんしゅう (初版 しょはん )、學藝 がくげい 書林 しょりん 〈大 だい 英 えい 博物館 はくぶつかん 双書 そうしょ 失 うしな われた文字 もじ を読 よ む 2〉、1996年 ねん 10月 がつ 。ISBN 4-87517-012-2 。 (原著 げんちょ Davies, W.V. (1987). Reading The Past: EGYPTIAN HIEROGLYPHS . British Museum Press )
村田 むらた 雄二郎 ゆうじろう ・C. ラマール編 へん 『漢字 かんじ 圏 けん の近代 きんだい - ことばと国家 こっか 』東京大学 とうきょうだいがく 出版 しゅっぱん 会 かい 、2005年 ねん 9月 がつ 。ISBN 4-13-083042-2 。
ナヴェー, ヨセフ 著 ちょ 、津村 つむら 俊男 としお ・竹内 たけうち 茂夫 しげお ・稲垣 いながき 緋紗子 ひさこ 訳 やく 『初期 しょき アルファベットの歴史 れきし 』法政大学 ほうせいだいがく 出版 しゅっぱん 局 きょく 〈りぶらりあ選書 せんしょ 〉、2000年 ねん 7月 がつ 。ISBN 4-588-02203-2 。 (原著 げんちょ Naveh, Joseph (1987). Early History of the Alphabet: An Introduction to West Semitic Epigraphy and Palaeography (Second revised edition ed.). Jerusarem/Leiden: Magnes Press/E.J.Brill )
ウォーカー, クリストファー 著 ちょ 、大城 おおしろ 光正 みつまさ 訳 やく 『楔形文字 くさびがたもじ 』矢島 やじま 文夫 ふみお 監修 かんしゅう (初版 しょはん )、學藝 がくげい 書林 しょりん 〈大 だい 英 えい 博物館 はくぶつかん 双書 そうしょ 失 うしな われた文字 もじ を読 よ む 1〉、1995年 ねん 11月。ISBN 4-87517-011-4 。 (原著 げんちょ Walker, C.B.F. (1987). Reading The Past: CUNEIFORM . British Museum Press )
#電気 でんき 通信 つうしん 、コンピュータと文字 もじ
三上 みかみ 喜 き 貴 とうと 『文字 もじ 符号 ふごう の歴史 れきし - アジア編 へん -』共立 きょうりつ 出版 しゅっぱん 、2002年 ねん 3月 がつ 。ISBN 4-320-12040-X 。 (A History of Character Codes in Asia )
安岡 やすおか 孝一 こういち ・安岡 やすおか 素子 もとこ 『文字 もじ 符号 ふごう の歴史 れきし - 欧米 おうべい と日本 にっぽん 編 へん -』2006年 ねん 2月 がつ 。ISBN 4-320-12102-3 。 (A History of Character Codes in Japan, America and Europe )