公判こうはん

公判こうはん（こうはん）とは、刑事けいじ訴訟そしょうにおいて、裁判所さいばんしょ、検察官けんさつかん、被告人ひこくにん（弁護人べんごにん）が訴訟そしょう行為こういを行おこなうために法廷ほうていで行おこなわれる手続てつづきをいう。

公判こうはんにおける訴訟そしょう行為こういを行おこなうために設定せっていされる期日きじつのことを公判こうはん期日きじつ、公判こうはんのために開ひらかれる法廷ほうていのことを公判廷こうはんていという。

以下いか、刑事けいじ訴訟そしょう法ほうについては条じょう数すうのみ記載きさいする。

概要がいよう

日本国にっぽんこく憲法けんぽう第だい82条じょうにより、公判こうはんにおいても公開こうかい主義しゅぎ、対審たいしんの保障ほしょうが強つよく要請ようせいされる（第だい286条じょう、第だい286条じょうの2、第だい314条じょう等とう）。

その他た、民事みんじ訴訟そしょうにおける口頭こうとう弁論べんろんと共通きょうつうする原則げんそくとして、当事とうじ者しゃ主義しゅぎ、口頭こうとう主義しゅぎ、直接ちょくせつ主義しゅぎなども重要じゅうようである。ただし、公判こうはんにおいては、補充ほじゅう的てきに職権しょっけん証拠しょうこ調しらべが採用さいようされるなど、当事とうじ者しゃ主義しゅぎは口頭こうとう弁論べんろんにおける場合ばあいほど徹底てっていしているわけではない。

また、逆ぎゃくに口頭こうとう主義しゅぎ、直接ちょくせつ主義しゅぎは口頭こうとう弁論べんろんにおける場合ばあいよりも強つよく要請ようせいされる（第だい43条じょう第だい1項こう、第だい315条じょう）。

2004年ねん（平成へいせい16年ねん）には、迅速じんそくな裁判さいばんの要請ようせいに応こたえるため、連日れんじつ開廷かいてい・継続けいぞく審理しんりが裁判所さいばんしょ・訴訟そしょう関係かんけい人じんに義務ぎむづけられた（第だい281条じょうの6）。

さらに、公判廷こうはんていにおいては、法廷ほうていの秩序ちつじょが保たもたれることが要請ようせいされており、そのための権限けんげんが裁判所さいばんしょや裁判さいばん長ちょうに付与ふよされている（第だい281条じょうの2、第だい288条じょう第だい2項こう、第だい294条じょう、第だい295条じょう）。

当事とうじ者しゃの出頭しゅっとう

公判こうはんにおいては、訴訟そしょう関係かんけい人じんが法廷ほうていに会かいすることが必要ひつようであり、特とくに被告人ひこくにんを出頭しゅっとうさせる手段しゅだんとして召喚しょうかん、勾引こういん、勾留こうりゅうの制度せいどがある。保釈ほしゃく又または勾留こうりゅうの執行しっこう停止ていしをされた被告人ひこくにんが、召喚しょうかんを受うけ正当せいとうな理由りゆうがなく公判こうはん期日きじつに出頭しゅっとうしないときは、2年ねん以下いかの拘禁こうきん刑けいに処しょされる（出頭しゅっとう命令めいれい、第だい278条じょうの3）。

その他た、裁判所さいばんしょには検察官けんさつかん・弁護人べんごにんに対たいし出頭しゅっとう命令めいれいを発令はつれいする権限けんげんがある（出頭しゅっとう在廷ざいてい命令めいれい、第だい278条じょうの3）。

被告人ひこくにんの出頭しゅっとうは原則げんそくとして開廷かいていのための要件ようけんとなっているが（第だい286条じょう）、一定いっていの場合ばあいは出頭しゅっとうすることを要ようしないとされている（第だい284条じょう、第だい285条じょう、第だい286条じょうの2）。一方いっぽう、控訴こうそ審しん及および上告じょうこく審しんの公判こうはんにおいては被告人ひこくにんの出廷しゅってい（出頭しゅっとう）義務ぎむは無ない（第だい390条じょう、第だい409条じょう）。但ただし、控訴こうそ審しんの場合ばあいは裁判所さいばんしょが被告人ひこくにんの権利けんり保護ほごのために重要じゅうようであると認みとめる場合ばあいは出頭しゅっとうを命めいじることができる。（第だい390条じょう）。

また、被告人ひこくにんが法人ほうじんの場合ばあいは代理人だいりにんを出頭しゅっとうさせることも可能かのうである（第だい283条じょう）。公判廷こうはんていにおいては被告人ひこくにんは身体しんたいの拘束こうそくはされないことになっている（第だい287条じょう）。被告人ひこくにんの在廷ざいていも義務ぎむとされるが、裁判さいばん長ちょうの許可きょかがあれば被告人ひこくにんは退廷たいていすることができる（第だい288条じょう）。

弁護人べんごにんの出頭しゅっとうについては、第だい289条じょう1項こうで「死刑しけい又または無期むき若もしくは長期ちょうき3年ねんを超こえる懲役ちょうえき若もしくは禁錮きんこにあたる事件じけん」を審理しんりする場合ばあいには、弁護人べんごにんがなければ開廷かいていすることはできないことを規定きていしている。ここに規定きていされている事件じけんを必要ひつよう的てき弁護べんご事件じけんと呼よび、これ以外いがいの事件じけんを任意にんい的てき弁護べんご事件じけんと呼よぶ。

必要ひつよう的てき弁護べんご事件じけんについては、弁護人べんごにんが出頭しゅっとうしないとき若もしくは在廷ざいていしなくなったとき、又または弁護人べんごにんが付ふされていないときは、裁判さいばん長ちょうは職権しょっけんで弁護人べんごにんを選任せんにんしなければならない（289条じょう2項こう）。また、弁護人べんごにんが出頭しゅっとうしないおそれがあるときは、裁判所さいばんしょが職権しょっけんで弁護人べんごにんを選任せんにんすることができる（同どう条じょう3項こう）。

公判こうはん準備じゅんび手続てつづき

公判こうはん期日きじつにおける審理しんりを準備じゅんびするために、公判こうはん準備じゅんびという手続てつづきが設もうけられている。

第だい1回かい公判こうはん期日きじつ前まえの準備じゅんび手続てつづきを、事前じぜん準備じゅんびという。

公判こうはん期日きじつの手続てつづき

冒頭ぼうとう手続てつづき

公判こうはん期日きじつにおいては、まず、冒頭ぼうとう手続てつづきが行おこなわれる。

人定じんてい質問しつもん
まず、裁判さいばん長ちょうが被告人ひこくにんに対たいし、人違ひとちがいでないことを確認かくにんするため、氏名しめい、生年月日せいねんがっぴ、職業しょくぎょう、住居じゅうきょ、本籍ほんせき等とうを確認かくにんする（規則きそく196条じょう）。これを人定じんてい質問しつもんという。
起訴きそ状じょう朗読ろうどく
次つぎに、検察官けんさつかんが起訴きそ状じょうを朗読ろうどくする（291条じょう1項こう）。
権利けんり告知こくち
次つぎに、裁判さいばん長ちょうは被告人ひこくにんに対たいし黙秘もくひ権けん（終始しゅうし沈黙ちんもくしていてもよく、個々ここの質問しつもんに対たいし陳述ちんじゅつを拒こばむことができること）等とうの権利けんりを告つげる（291条じょう2項こう前段ぜんだん）。
罪状ざいじょう認否にんぴ
権利けんり告知こくちを踏ふまえ、被告人ひこくにん及および弁護人べんごにんが、被告ひこく事件じけんに対たいする陳述ちんじゅつをする（291条じょう2項こう後段こうだん）。この中なかには、公訴こうそ事実じじつに対たいする認否にんぴ（罪状ざいじょう認否にんぴ）のほか、違法いほう阻却事由じゆう（正当せいとう防衛ぼうえい等ひとし）・責任せきにん阻却事由じゆう（心神喪失しんしんそうしつ等ひとし）などに関かんする主張しゅちょうも含ふくまれる。

証拠しょうこ調しらべ

冒頭ぼうとう手続てつづきが終了しゅうりょうした後のちに、証拠しょうこ調しらべが開始かいしされる（第だい292条じょう）。

詳細しょうさいは「証拠しょうこ調しらべ」を参照さんしょう

証拠しょうこ調しらべの始はじめには、検察官けんさつかんは証拠しょうこにより証明しょうめいすべき事実じじつを明あきらかにしなければならない（第だい296条じょう）。これを冒頭ぼうとう陳述ちんじゅつ（ぼうとうちんじゅつ）という。

次ついで、検察官けんさつかんが証拠しょうこ調しらべを請求せいきゅうする。検察官けんさつかんの証拠しょうこは、「甲かぶと号ごう証しょう」と「乙おつ号ごう証しょう」に分別ふんべつして請求せいきゅうされる。たとえば、甲かぶと第だい1号証ごうしょう・甲かぶと第だい2号証ごうしょうや、乙おつ第だい1号証ごうしょう・乙おつ第だい2号証ごうしょうという番号ばんごうが付ふされる。

弁護人べんごにん（被告人ひこくにん）は、検察官けんさつかん請求せいきゅう証拠しょうこの採用さいように関かんして、証拠しょうこごとに、採用さいように賛成さんせいまたは反対はんたいの意見いけんを述のべる（規則きそく190条じょう2項こう）。これを「証拠しょうこ意見いけん」という。証拠しょうこ意見いけんは、証拠しょうこ意見いけん書しょの形式けいしきで提出ていしゅつするか、口頭こうとうで証拠しょうこ意見いけんを言いうこととなる。実務じつむでは、証拠しょうこ採用さいように賛成さんせいする場合ばあいには「同意どうい」「異議いぎなし」と証拠しょうこ意見いけんを述のべ、採用さいように反対はんたいする場合ばあいには「不ふ同意どうい」「異議いぎあり」と証拠しょうこ意見いけんを述のべる。

裁判所さいばんしょは、弁護人べんごにんの証拠しょうこ意見いけんを参照さんしょうして、証拠しょうこの採否さいひの決定けってい（証拠しょうこ決定けってい）を行おこない（同どう条じょう1項こう）、採用さいようされた証拠しょうこについては証拠しょうこ調しらべが行おこなわれる。その後ご、弁護人べんごにん（被告人ひこくにん）の証拠しょうこ調しらべ請求せいきゅうが行おこなわれるのが通常つうじょうである。

証拠しょうこ書類しょるいについては、証拠しょうこ調しらべの方式ほうしきは朗読ろうどくが原則げんそくである（第だい305条じょう1項こう）。ただし裁判さいばん長ちょうが相当そうとうと認みとめるときは要旨ようしの告知こくちをもって代かえることができ（規則きそく203条じょうの2第だい1項こう）、実務じつむ上じょうはほとんどこの要旨ようしの告知こくちによって行おこなわれている。

証拠しょうこ物ぶつについては、証拠しょうこ調しらべの方式ほうしきは展示てんじである（第だい306条じょう1項こう）。

人証じんしょうの取調とりしらべは尋問じんもん（証人しょうにん尋問じんもん、鑑定かんてい人じん尋問じんもん等とう）によって行おこなわれる。法律ほうりつ上じょうその順序じゅんじょはまず裁判所さいばんしょ、ついで当事とうじ者しゃと規定きていされているが（第だい304条じょう1項こう、2項こう）、この順序じゅんじょは裁判所さいばんしょが相当そうとうと認みとめるときは変更へんこうでき（第だい304条じょう3項こう）、実務じつむ上じょうは請求せいきゅう当事とうじ者しゃが先さきに尋問じんもんし、次つぎに相手方あいてがたの当事とうじ者しゃが反対はんたい尋問じんもんを行おこない、最後さいごに裁判所さいばんしょが補充ほじゅう尋問じんもんを行おこなうという順序じゅんじょが定着ていちゃくしている。

弁論べんろん・結審けっしん

証拠しょうこ調しらべが終おわった後のちには、検察官けんさつかんは事実じじつ及および法律ほうりつの適用てきようについて意見いけんを述のべなければならない（293条じょう1項こう）。これを論告ろんこく（ろんこく）といい、検察官けんさつかんはこれに併あわせて求もとめる刑けいの重おもさを明あきらかにする求刑きゅうけい（きゅうけい）を行おこなう。

その後ご、被告人ひこくにん及および弁護人べんごにんは意見いけんを陳述ちんじゅつすることができる（第だい293条じょう2項こう）。まず弁護人べんごにんが弁論べんろんを行おこない、最後さいごに被告人ひこくにんが最終さいしゅう陳述ちんじゅつを行おこなうのが通常つうじょうである。

判決はんけつ

詳細しょうさいは「判決はんけつ」を参照さんしょう

冒頭ぼうとう手続てつづき
- 人定じんてい質問しつもん（刑事けいじ訴訟そしょう規則きそく196条じょう）
- 検察官けんさつかんの起訴きそ状じょう朗読ろうどく（刑事けいじ訴訟そしょう法ほう291条じょう1項こう）
- 被告人ひこくにんへの権利けんりの告知こくち（同どう法ほう291条じょう2項こう、同どう規則きそく197条じょう）
- 被告人ひこくにん・弁護人べんごにんへの陳述ちんじゅつの機会きかい付与ふよ（同どう法ほう291条じょう2項こう、291条じょうの2、319条じょう3項こう）
証拠しょうこ調しらべ（同どう法ほう292条じょう）
- 検察官けんさつかんの冒頭ぼうとう陳述ちんじゅつ（同どう法ほう296条じょう）
- 被告人ひこくにんおよび弁護人べんごにんの冒頭ぼうとう陳述ちんじゅつ（同どう規則きそく198条じょう）
- 証拠しょうこ調しらべの請求せいきゅう（同どう法ほう298条じょう1項こう）
- 証拠しょうこ調しらべの範囲はんい、順序じゅんじょ、方法ほうほうの決定けってい（同どう法ほう297条じょう1項こう）
- 職権しょっけんによる証拠しょうこ調しらべ（同どう法ほう298条じょう2項こう）
- 証拠しょうこ調しらべの方式ほうしき
  - 証人しょうにん等とうの取調とりしらべ（同どう法ほう304条じょう、同どう規則きそく199条じょうの2〜199条じょうの13）
  - 証拠しょうこ書類しょるいの取調とりしらべ（同どう法ほう305条じょう）
  - 証拠しょうこ物ぶつの取調とりしらべ（同どう法ほう306条じょう）
  - 証拠しょうこ物ぶつ中ちゅう書面しょめんの意義いぎが証拠しょうことなるものの取調とりしらべ（同どう法ほう307条じょう）
- 被告人ひこくにんの任意にんいの供述きょうじゅつ（同どう法ほう311条じょう）
- 証拠しょうこ調しらべに関かんする異議いぎの申立もうしたて（同どう法ほう309条じょう）
- 証拠しょうこの排除はいじょ決定けってい（同どう規則きそく205条じょうの6第だい2項こう・207条じょう）
- 証拠しょうこの証明しょうめい力りょくを争あらそう機会きかいの付与ふよ（同どう法ほう308条じょう）
弁論べんろん　検察官けんさつかんの論告ろんこく・求刑きゅうけいおよび被告人ひこくにんの意見いけんの陳述ちんじゅつ、弁護人べんごにんの弁論べんろん（同どう法ほう293条じょう、なお同どう規則きそく211条じょう）
判決はんけつ（同どう法ほう342条じょう、同どう規則きそく220条じょう、220条じょうの2、221条じょう）

簡易かんい公判こうはん手続てつづき

詳細しょうさいは「簡易かんい公判こうはん手続てつづき」を参照さんしょう

第だい307条じょうの2等とうを参照さんしょう。

公判こうはん調書ちょうしょ

刑事けいじ訴訟そしょう法ほう上じょうは、第だい48条じょうから第だい52条じょう、刑事けいじ訴訟そしょう規則きそくにおいては第だい44条じょう等とうに規定きていがある。公判こうはん調書ちょうしょとは、公判こうはん期日きじつにおける訴訟そしょう手続てつづきを記載きさいした文書ぶんしょのことである。

上告じょうこく審しんにおける公判こうはん

最高裁判所さいこうさいばんしょは法律ほうりつ審しんで、職権しょっけんで事実じじつ関係かんけいについて調査ちょうさする場合ばあい（刑事けいじ訴訟そしょう法ほう第だい411条じょう）を除のぞき、事実じじつ関係かんけいに関かんする審理しんりは行おこなわれない。上告じょうこく裁判所さいばんしょは、刑事けいじ訴訟そしょう法ほう第だい408条じょうの規定きていにより、上告じょうこくを棄却ききゃくする際さいには、弁論べんろんを経へないで棄却ききゃくすることができる（民事みんじ訴訟そしょうの場合ばあいも同様どうように、民事みんじ訴訟そしょう法ほう第だい319条じょうにより、口頭こうとう弁論べんろんを経へずに上告じょうこくを棄却ききゃくすることができる）。一方いっぽうで、原審げんしん破棄はきをする場合ばあいは公判こうはんを開ひらかなければならない。公判こうはんを経へた上うえで上告じょうこくを棄却ききゃくすることも可能かのうだが、現在げんざいの最高裁さいこうさいは大量たいりょうの上告じょうこく案件あんけんを抱かかえており、小しょう法廷ほうていでは上告じょうこく棄却ききゃくをする際さい、ほとんどは公判こうはんを開ひらかず、三さん行ぎょう決定けっていや三さん行ぎょう判決はんけつで上告じょうこくを棄却ききゃくすることが多おおい。

そのため、判決はんけつによって上告じょうこく審しんの結論けつろんが出だされる場合ばあい、最高裁さいこうさいの小しょう法廷ほうていが公判こうはん（民事みんじ訴訟そしょうの場合ばあいは口頭こうとう弁論べんろん）を開ひらくか開ひらかないかで、判決はんけつの結果けっかが事前じぜんに判明はんめいすることになる^[1]。ただし例外れいがいとして、死刑しけい判決はんけつに対たいする上告じょうこく事件じけんの場合ばあいは、原はら判決はんけつを見直みなおすか否ひかに関係かんけいなく^[2]、いかなる場合ばあいでも最高裁さいこうさいで公判こうはんを開ひらき、弁護人べんごにん・検察官けんさつかん双方そうほうの意見いけんを聴きく（弁論べんろんを行おこなう）ことが慣例かんれいとなっている^[3]。これは慎重しんちょうに審理しんりして極刑きょっけいをい渡いわたしたとするためである^[4]。最高裁さいこうさいが公判こうはんを開ひらかずして控訴こうそ審しんの死刑しけい判決はんけつを維持いじした事例じれいは、1949年ねん（昭和しょうわ24年ねん）に発生はっせいした三鷹みたか事件じけんの裁判さいばんで、竹内たけうち景けい助すけの上告じょうこくを1960年ねん（昭和しょうわ35年ねん）に棄却ききゃくした事例じれいが最後さいごである。同どう事件じけんの控訴こうそ審しんにおいて書面しょめん審理しんりだけで一いち審しんの無期むき懲役ちょうえき判決はんけつを破棄はきし死刑しけい判決はんけつをい渡いわたしたことが問題もんだい視しされたことがきっかけで、死刑しけい判決はんけつ事件じけんに対たいする上告じょうこく審しんでは毎度まいど、弁論べんろんを行おこなうために公判こうはんを開ひらくこととなった^[5]。

最高裁さいこうさいで弁論べんろんが開ひらかれても、原審げんしん破棄はきの判決はんけつがい渡いわたされるとは限かぎらない。1992年ねん（平成へいせい4年ねん）に発生はっせいした国立こくりつ市し主婦しゅふ殺害さつがい事件じけん（控訴こうそ審しんで第だい一いち審しんの死刑しけい判決はんけつが破棄はき自じ判はんされ、無期むき懲役ちょうえきがい渡いわたされた事件じけん）の審理しんりでは、検察官けんさつかんの上告じょうこくを受うけ、1999年ねん（平成へいせい11年ねん）10月がつ29日にちに最高裁さいこうさい第だい二に小しょう法廷ほうてい（福田ふくだ博ひろし裁判さいばん長ちょう）が弁論べんろんを開ひらいた^[6]が、同小どうしょう法廷ほうていは同年どうねん11月がつ29日にちの上告じょうこく審しん判決はんけつで、上告じょうこく棄却ききゃくの判決はんけつをい渡いわたしたため、無期むき懲役ちょうえきが確定かくていした^[7]。

脚注きゃくちゅう

^ 長嶺ながみね超ちょう輝てる 2007, p. 116.
^ 『北日本きたにっぽん新聞しんぶん』1998年ねん2月がつ24日にち朝刊ちょうかん第だい一いち社会しゃかい面めん29頁ぺーじ「連続れんぞく女性じょせい誘拐ゆうかい殺人さつじん M被告ひこくの最高裁さいこうさい口頭こうとう弁論べんろん 6月がつ26日にちに変更へんこう」（北日本新聞社きたにっぽんしんぶんしゃ） - 富山とやま・長野ながの連続れんぞく女性じょせい誘拐ゆうかい殺人さつじん事件じけんの関連かんれん記事きじ。
^ 『北日本きたにっぽん新聞しんぶん』1997年ねん10月がつ31日にち朝刊ちょうかん一いち面めん1頁ぺーじ「富山とやま・長野ながの連続れんぞく誘拐ゆうかい殺人さつじん上告じょうこく審しん弁論べんろんは来年らいねん3月がつ夏なつにも判決はんけつの見込みこみ」（北日本新聞社きたにっぽんしんぶんしゃ） - 富山とやま・長野ながの連続れんぞく女性じょせい誘拐ゆうかい殺人さつじん事件じけんの関連かんれん記事きじ。
^ 長嶺ながみね超ちょう輝てる 2007, p. 117.
^ 野村のむら二郎じろう 2004, p. 28.
^ 『産経新聞さんけいしんぶん』1999年ねん10月がつ30日にち東京とうきょう朝刊ちょうかん第だい二に社会しゃかい面めん「死刑しけい適用てきよう新あらたな基準きじゅん示しめすか国立こくりつの主婦しゅふ強盗ごうとう殺人さつじん上告じょうこく審しん、結審けっしん」（産経新聞さんけいしんぶん東京とうきょう本社ほんしゃ記者きしゃ：井口いぐち文彦ふみひこ）
^ 『産経新聞さんけいしんぶん』1999年ねん11月29日にち東京とうきょう夕刊ゆうかん総合そうごう一いち面めん「国立こくりつ主婦しゅふ殺人さつじん検察けんさつの「死刑しけい要求ようきゅう」棄却ききゃく O被告ひこくの無期むき確定かくてい最高裁さいこうさい判決はんけつ」（産経新聞さんけいしんぶん東京とうきょう本社ほんしゃ）

参考さんこう文献ぶんけん

野村のむら二郎じろう『日本にっぽんの裁判さいばん史しを読よむ事典じてん』自由じゆう国民こくみん社しゃ、2004年ねん11月。ISBN 978-4426221126。
長嶺ながみね超ちょう輝てる『サイコーですか?最高裁さいこうさい!』光文社こうぶんしゃ、2007年ねん12月。ISBN 978-4334975319。