寮歌りょうか

寮歌りょうか（りょうか）

1. 寮りょうの歌うた。寮りょうの住人じゅうにんが自みずから歌うたうために作つくった歌うた。
2. 旧制きゅうせい学校がっこうの寮りょうの歌うた。特とくに、旧制きゅうせい高等こうとう学校がっこうなどの学生がくせい寮りょうの歌うたを指さす。以下いか、詳述しょうじゅつする。

歴史れきし

寮歌りょうかを作つくる風習ふうしゅうは、明治めいじ時代じだいの旧制きゅうせい第一高等学校だいちこうとうがっこう （学制がくせい改革かいかく後のち 東京大学とうきょうだいがく教養きょうよう学部がくぶに吸収きゅうしゅう・消滅しょうめつ） で始はじまり、次第しだいに他校たこうに広ひろまった経緯けいいを持もつ。

起源きげん

旧制きゅうせい第一高等学校だいちこうとうがっこうは1877年ねん（明治めいじ10年ねん）に「東京大学とうきょうだいがく予備よび門もん」として発足ほっそくした後のち、1886年ねん（明治めいじ19年ねん）に「第だい一いち高等こうとう中学校ちゅうがっこう」、1894年ねん（明治めいじ27年ねん）に「第一高等学校だいちこうとうがっこう」と改称かいしょうした。その間あいだの1890年ねん（明治めいじ23年ねん）2月がつ、当時とうじの木村きむら校長こうちょうにより寄宿きしゅく寮りょうの自治じち制せいが認みとめられ、以来いらい、生徒せいとらは毎年まいとし、自治じち寮りょうの誕生たんじょうを祝いわう 「紀きの念ねん祭さい」 （他たに第だい三さん高等こうとう学校がっこうのみ、それ以外いがいの学校がっこうでは 「記念きねん祭さい」） を開催かいさいするようになった。

当初とうしょは寮歌りょうかを作つくる風習ふうしゅうはなかったが、第だい5回かい紀き念ねん祭さいの頃ころからほぼ毎年まいとし、紀きの念ねん祭さいのための歌うたが作つくられるようになった。多おおくの寮歌りょうかは紀き念ねん祭さいで発表はっぴょうされ、爾後じご、多年たねんにわたって生徒せいとらに愛唱あいしょうされた。後のちに設置せっちされた他校たこうもこの習慣しゅうかんに倣ならっている。 旧制きゅうせい第一高等学校だいちこうとうがっこうは全寮ぜんりょう制せいを標榜ひょうぼうしており、寄宿きしゅく寮りょうの歌うたに限かぎらず応援おうえん歌か・部ぶ歌かなども寮歌りょうか（広義こうぎの寮歌りょうか）に含ふくめるようになった。後のちに設置せっちされた旧制きゅうせい高等こうとう学校がっこうでも、「寮りょうの歌うた」 以外いがいも包括ほうかつして寮歌りょうかと呼よぶ場合ばあいが多おおい。

• 広義こうぎの寮歌りょうかで最もっとも古ふるい歌うたは、旧制きゅうせい第一高等学校だいちこうとうがっこうで1890年ねん（明治めいじ23年ねん）4月がつに作つくられた応援おうえん歌か 『花はなは桜木さくらぎ　人ひとは武士ぶし　デンコデンコ』（赤沼あかぬま金三郎きんざぶろう 作詞さくし）とされる。この歌うたは後のちに 『端艇たんてい部ぶ部ぶ歌か』 となった。
• 狭義きょうぎの寮歌りょうかで最もっとも古ふるい歌うたは、旧制きゅうせい第一高等学校だいちこうとうがっこうで1892年ねん（明治めいじ25年ねん）に作つくられた寄宿きしゅく寮歌りょうか 『雪ゆきふらばふれふらばふれ』 であるが、作詞さくし者しゃは生徒せいとではなく、落合おちあい直文なおふみ教授きょうじゅであった。

初期しょきの寮歌りょうかは、演歌えんか、軍歌ぐんか等ひとしのメロディーを借かりて生徒せいとが作詞さくししたものが多おおかったが、1900年ねん（明治めいじ33年ねん）以降いこうは、外部がいぶによらない、生徒せいと自みずからが作曲さっきょくした歌うたも増ふえていった。

伝承でんしょう

寮歌りょうかの歌詞かしは、文書ぶんしょで後輩こうはいへ伝承でんしょうされることもあったが、メロディーは口伝くでんであった。楽譜がくふはほとんどの生徒せいとには読よめなかった上うえ、音楽おんがく的てきに歌うたうことを軽蔑けいべつする風潮ふうちょうすらあったとされる（バンカラの一種いっしゅ。そもそも文化ぶんか系けいの活動かつどう自体じたい軽視けいしされていた）。多おおくの寮歌りょうかは原曲げんきょくと異ことなる、より歌うたいやすい形かたちで伝承でんしょうされた。

特とくに大正たいしょう時代じだい以降いこう、明治めいじ時代じだいに長調ちょうちょうで作曲さっきょくされた多おおくの寮歌りょうかが、短調たんちょうで歌うたわれるようになった。昭和しょうわ時代じだいに入はいってからは、異様いように遅おそく引ひき伸のばして歌うたう風習ふうしゅう（長嘯ちょうしょう）も生うまれた。 卒業生そつぎょうせいがさらに他たの諸しょ学校がっこうへ寮歌りょうかを伝つたえた例れいも多おおく、全国ぜんこく津々浦々つつうらうらの学校がっこうの歌うたに寮歌りょうかの影響えいきょうを見みることができる。その多おおくは原曲げんきょくとは異ことなる伝承でんしょうであるが、中なかにはほぼ原曲げんきょくの姿すがたを残のこしているものもある。

一方いっぽう、学校がっこうの中なかだけではなく、一般いっぱんに広ひろまった寮歌りょうかもある。旧制きゅうせい第一高等学校だいちこうとうがっこうの場合ばあい、紀きの念ねん祭さいで寮歌りょうかの楽譜がくふを一般人いっぱんじんに販売はんばいしていたため、楽譜がくふの読よめる女学校じょがっこうの生徒せいとや演歌えんか師しらの間あいだに寮歌りょうかが知しられるようになった。その中なかでも特とくにヒットしたのは、

• 『春はる爛漫らんまんの花はなの色いろ』 （明治めいじ34年ねん　第だい11回かい紀き念ねん祭さい西にし寮りょう寮歌りょうか。矢野やの勘かん治ち 作詞さくし、豊原とよはら雄太郎ゆうたろう 作曲さっきょく。）
• 『アムール川がわの流血りゅうけつや』 （明治めいじ34年ねん　第だい11回かい紀き念ねん祭さい東ひがし寮りょう寮歌りょうか。塩田しおだ環たまき 作詞さくし、栗林くりばやし宇一ういち 作曲さっきょく＜永井ながい建子けんし作曲さっきょく説せつもある＞）
• 『嗚呼ああ玉杯ぎょくはいに花はなうけて』 （明治めいじ35年ねん　第だい12回かい紀き念ねん祭さい東ひがし寮りょう寮歌りょうか。矢野やの勘かん治ち 作詞さくし、楠くすのき正一しょういち 作曲さっきょく）

等ひとしの寮歌りょうかである。これらの寮歌りょうかは、学校がっこうの中なかでの伝承でんしょうとは別べつの形かたちで一般いっぱんに広ひろまっていき、革命かくめい歌か、労働ろうどう歌か、軍歌ぐんかなどにメロディーが借用しゃくようされたりした （特とくに 『アムール川がわの流血りゅうけつや』 の借用しゃくよう率りつが高たかかった）。こういった外部がいぶの借用しゃくように対たいしては、著作ちょさく権けんが云々うんぬんと問題もんだいにすることは特とくになく、逆ぎゃくに自分じぶんたちの歌うたがそれほどまでに流布るふしていることを得意とくいに思おもっていたと思おもわれる。この辺あたりに、旧制きゅうせい高校生こうこうせいの独自どくじのおおらかさを見みることができるのだろうか。

今日きょう、旧制きゅうせい高等こうとう学校がっこうの同窓会どうそうかいが発行はっこうした寮歌りょうか集しゅうの楽譜がくふと、一般いっぱんに市販しはんされている音楽おんがく書籍しょせきの楽譜がくふとが異ことなるのは、様々さまざまに異ことなる伝承でんしょうの結果けっかである。

終焉しゅうえん

寮歌りょうかは大正たいしょう時代じだい、高等こうとう教育きょういく機関きかん増設ぞうせつと相俟あいまって全盛ぜんせいを極きわめたが、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんに前後ぜんごして寮りょうの自治じちが制限せいげんされ、歌うたうことを禁止きんしされた寮歌りょうか（旧制きゅうせい浦和うらわ高等こうとう学校がっこうの『武蔵むさしが原はら』など）や、歌詞かしの改変かいへんを余儀よぎなくされた寮歌りょうか（旧制きゅうせい高知こうち高等こうとう学校がっこうの『豪気ごうき節ぶし』など）も出でるなどして、学生がくせいの自由じゆうなエネルギーの発露はつろという面めんからは、衰退すいたいしていった。戦災せんさいで多おおくの学校がっこうが校舎こうしゃ・寮りょうを失うしない、さらに学制がくせい改革かいかくが追おい討うちをかけた。戦後せんご復興ふっこうのさなかの1950年ねん（昭和しょうわ25年ねん）3月がつ、旧制きゅうせい高等こうとう学校がっこうは最後さいごの卒業生そつぎょうせいを送おくり出だして廃止はいしされた。

寮歌りょうかの継承けいしょう

学制がくせい改革かいかく後ご、寮歌りょうかは制度せいど上じょう旧制きゅうせい高等こうとう学校がっこうを継承けいしょうした学校がっこう（主おもに新制しんせい大学だいがく）に引ひき継つがれたものも多おおい。特とくに同どう時期じきに新制しんせいと旧制きゅうせいの学生がくせいが同居どうきょした寮りょうでは事実じじつ上じょうの継承けいしょうも行おこなわれた。
しかし、これらの学校がっこうでも、集団しゅうだん寄宿きしゅくの寮りょうの縮小しゅくしょうや廃止はいしが進すすんで、個別こべつ居住きょじゅうの学生がくせい宿舎しゅくしゃへ多おおくが転換てんかんされたこともあり、寮歌りょうかは学生がくせい生活せいかつのエネルギーという面めんはほぼなくなり、体育たいいく会かい系けいの学生がくせいを中心ちゅうしんに細々こまごまと伝承でんしょうされているに過すぎない。

しかし、国立こくりつ大学だいがくでは校歌こうかが存在そんざいしない例れいが珍めずらしくなく、名古屋大学なごやだいがくの『伊吹いぶきおろし』や熊本大学くまもとだいがくの『武夫たけお原頭げんとう』のように、寮歌りょうかを応援おうえんや式典しきてんにも歌うたわれるという大学だいがくもある。

また、例外れいがい的てきに、北海道大学ほっかいどうだいがく恵めぐみ迪すすむ寮りょうでは2018年ねん（平成へいせい30年ねん）現在げんざいでも寮歌りょうかの新作しんさくを続つづけている。中なかでも昭和しょうわ35年度ねんど寮歌りょうか『茫洋ぼうようの海うみ』（三浦みうら清一郎せいいちろう作歌さっか・前野まえの紀一きいち作曲さっきょく）は、今いままでの寮歌りょうかの殻からを破やぶった新鮮しんせんさで評価ひょうかが高たかい。恵めぐみ迪すすむ寮りょうは札幌さっぽろ農のう学校がっこう寄宿舎きしゅくしゃとして1876年ねんに設立せつりつされて以来いらい、一貫いっかんして北海道大学ほっかいどうだいがく附属ふぞくの寄宿舎きしゅくしゃとして位置いちづけられてきたことから現在げんざいでも「都とぞ弥生やよい」が北海道大学ほっかいどうだいがくを代表だいひょうする歌うたとして式典しきてん等とうで歌うたわれている。

寮歌りょうかの継承けいしょうの方式ほうしきとしては、2006年ねん10月、第だい四よん高等こうとう学校がっこうが「四よん高だか開ひらき学がく120年ねん祭さい」にあたって、その寮歌りょうかを全すべて四よん高だか同窓どうそう会長かいちょうから金沢大学かなざわだいがく学長がくちょうに継承けいしょうするセレモニーを行おこなった例れいもある。

寮歌りょうかの分類ぶんるい

学校がっこうの範囲はんい

寮歌りょうかという分野ぶんやがどこまでを指さすものか、明確めいかくではない。一般いっぱんには「旧制きゅうせい高等こうとう学校がっこうで生徒せいとによって歌うたわれたもの」、という認識にんしきがされているが、寮りょう外がいで作つくられた歌うたも歌うたわれていた事実じじつを考かんがえると、これは少々しょうしょう曖昧あいまいなものである。

また、この基準きじゅんでは「旧制きゅうせい高等こうとう学校がっこう以外いがいの高等こうとう教育きょういく機関きかんで歌うたわれた寮歌りょうかはどうなるのか？」という問題もんだいも生しょうじる。例たとえば「日本にっぽん寮歌りょうか祭さい」を主催しゅさいしている「日本にっぽん寮歌りょうか振興しんこう会かい」においては、旧制きゅうせい高等こうとう学校がっこう（学習がくしゅう院いん高等こうとう科かを含ふくむ）及および旧きゅう帝国ていこく大学だいがく予よ科かの他ほか、三商さんしょう大だい・旅順りょじゅん工科こうか大学だいがくの予よ科かを含ふくめた42校こうの同窓会どうそうかい組織そしきを会員かいいんとし、陸軍りくぐん士官しかん学校がっこう、海軍兵学校かいぐんへいがっこう、東亜とうあ同どう文書ぶんしょ院いん、日本にっぽん体育たいいく専門せんもん学校がっこう、明治めいじ専門せんもん学校がっこう、長崎ながさき高等こうとう商業しょうぎょう学校がっこう、東京とうきょう高等こうとう師範しはん学校がっこう、早稲田わせだ高等こうとう学院がくいん、日本医科大学にほんいかだいがく予よ科か、愛知大学あいちだいがく予よ科かなどを同志どうし校こうとして扱あつかっていた （『日本にっぽん寮歌りょうか集しゅう』～日本にっぽん寮歌りょうか振興しんこう会かい発行はっこう～の平成へいせい3年度ねんど版ばんの『序ついで』を参照さんしょうのこと）。同志どうし校こうは日本にっぽん寮歌りょうか祭さいに参加さんかを表明ひょうめいした同窓会どうそうかいであるが、同おなじ公立大こうりつだい学がくの大阪おおさか商科しょうか大学だいがく予よ科かを正会員せいかいいんとし、京都府立医科大学きょうとふりついかだいがく予よ科かを同志どうし校こうとする根拠こんきょはかなり薄うすいと言いわざるを得えない。

この点てんではむしろ、対象たいしょう校こうを「旧制きゅうせい高等こうとう学校がっこう及および官かん公立こうりつ大学だいがく予よ科か」と定義ていぎしている「全国ぜんこく寮歌りょうか祭さい」（大阪おおさか）の方ほうが、基準きじゅんとしては一応いちおうの筋すじが通かよっていると言いえる（なお、全国ぜんこく寮歌りょうか祭さいは文部省もんぶしょう所管しょかん以外いがいの学校がっこう、即すなわち旧制きゅうせい高等こうとう学校がっこうには学習がくしゅう院いん高等こうとう科かを、官立かんりつ大学だいがく予よ科かには神宮じんぐう皇學館大學こうがくかんだいがく予よ科かを含ふくんでいる）。

したがって、大前提だいぜんていとなる 「旧制きゅうせい高等こうとう学校がっこうで」 の部分ぶぶんについて、改あらためて再さい検討けんとうを加くわえる必要ひつようがある。即すなわち、純粋じゅんすいに旧制きゅうせい高等こうとう学校がっこうのみにするのか、あるいは旧きゅう帝国ていこく大学だいがく予よ科かを含ふくめる38校こうとするのか。それとも、旧制きゅうせい専門せんもん学校がっこうを含ふくめた旧制きゅうせい高等こうとう教育きょういく機関きかん全般ぜんぱんとするか、であろう（なおこの場合ばあいでも、当初とうしょは中等ちゅうとう教育きょういく機関きかんであり、後のちに高等こうとう教育きょういく機関きかんとなった師範しはん学校がっこうの扱あつかいが問題もんだいとなる）。

歌うたの範囲はんい

寮歌りょうかの分類ぶんるいだが、上記じょうきの対象たいしょう範囲はんいによらず、「生徒せいとに歌うたわれていた歌うた」、というのはおおむね変かわりはないと思おもわれる。この 「生徒せいとによって歌うたわれていた」、というのは 「生徒せいとにより作つくられ」、とは意味合いみあいが異ことなる。なぜなら教授きょうじゅや、外部がいぶの手てによる歌うたも散見さんけんされており、単純たんじゅんに 「歌うたわれていた」、とした方ほうが明解めいかいになるためである。

ところがこの場合ばあい、少々しょうしょうやっかいな問題もんだいも生しょうじる。つまり元々もともと世間せけんで歌うたわれていた歌うたを学校がっこう内ないに持もち込こんだものはどうなるのかという問題もんだいである。これはストーム、コンパの際さいに歌うたわれていた歌うたに見みられる。

分類ぶんるい上じょうは（二に高だか歌集かしゅうにおけるように）「懇こん巴ともえの歌うた」として一括いっかつできるのだが、それを寮歌りょうかの範疇はんちゅうに含ふくめるのか、それとも別べつに分類ぶんるいするのか、ということである。

同様どうようの問題もんだいは『ストームの歌うた』と呼よばれるものによく見みられ、歌詞かしのみオリジナルの北海道ほっかいどう帝国ていこく大学だいがく予よ科かの『ストームの歌うた』、歌詞かしも曲きょくも一般いっぱんの流行りゅうこう歌かから取とった、旧制きゅうせい静岡高等学校しずおかこうとうがっこうの『ノーエ節ぶし』などは、分類ぶんるいの境界きょうかい線せんに困こまるところである。

また厳密げんみつには上記じょうきの範囲はんいからは寮歌りょうかには含ふくまれないものの、旧制きゅうせい高等こうとう学校がっこうの廃校はいこう後ごに作つくられた何なん周年しゅうねん記念きねん祭さい歌かについては、寮歌りょうかに準じゅんずる扱あつかいとしても良よいと思おもわれるが、寮歌りょうか以上いじょうに未み整理せいりの状態じょうたいである。

歌うたの分類ぶんるい

寮歌りょうか（広義こうぎの寮歌りょうか）そのものはおおむね以下いかのように分類ぶんるいできよう。なお序列じょれつは便宜べんぎ、第一高等学校だいちこうとうがっこう寮歌りょうか集しゅうの例れいに範はんをとり、一いち高だかに存在そんざいしなかった校歌こうか、校友こうゆう会かい歌うたについては第だい二に高等こうとう学校がっこう歌集かしゅうに従したがった。

1. 校歌こうか
2. 校友こうゆう会かい（自治じち会かい）歌うた
3. 寮歌りょうか
4. 記念祭きねんさい歌か
5. 部ぶ歌か
6. 応援おうえん歌か
7. 頌歌
8. その他た

なお旧制きゅうせい高等こうとう学校がっこう廃校はいこう後ごに作つくられた周しゅう年ねん記念きねん祭さい歌かについては今後こんごの検討けんとうを要ようする。

歌詞かしの特徴とくちょう

寮歌りょうかの歌詞かしは、当時とうじの教育きょういく事情じじょうを反映はんえいして、そのほとんどが文語ぶんご体たいである（ただし、部ぶ歌かや応援おうえん歌かの中なかには、くだけた口語体こうごたいの歌うたも多おおく見みられる）。七五調しちごちょうの詩しが最もっとも多おおいが、そのほかの詩形しけいも存在そんざいする。

「漢詩かんしの影響えいきょうが強つよい」 とされるが、実際じっさいには土井どい晩翠ばんすいの詩しを経由けいゆした引用いんようが多おおい。土井どい晩翠ばんすいの詩集ししゅうを見みると、そこかしこに寮歌りょうかの"部品ぶひん"が散在さんざいしている。明治めいじ期きの寮歌りょうかは、当時とうじ最新さいしんの文学ぶんがくであった晩翠ばんすいの詩しと、若人わこうどの情熱じょうねつとが合体がったいして生うみ出だされた産物さんぶつ、と言いえるだろう。

この他ほか、長ながい修飾しゅうしょく関係かんけいを持もつことも指摘してきできる。すなわち 『嗚呼ああ玉杯ぎょくはい』 であれば、「嗚呼ああ玉杯ぎょくはい」 以降いこう 「夢ゆめに耽ふけりたる」 までが 「栄華えいがの巷ちまた」 にかかり、それを 「低ひくく見み」る五ご寮りょうの健児けんじの意気いきは高たかい、という内容ないようである。これは欧文おうぶん体たいの影響えいきょうは考かんがえられないだろうか？

大正たいしょう期き以降いこうにおいては、今日きょう見みても違和感いわかんのないような口語体こうごたいのものも見受みうけられる。また本歌ほんか取とり --- と書かけば上品じょうひんだが、口くち悪わるく書かけば元もとネタ有あり --- も数多かずおおく見みられる。著名ちょめいなところでは旧制きゅうせい大阪おおさか高等こうとう学校がっこうの 『嗚呼ああ黎明れいめい』 は革命かくめい歌か 『嗚呼ああ革命かくめい』 からアイデアを借用しゃくようしたものといわれる。

曲きょく (メロディー) の特徴とくちょう

曲きょくとしては、いわゆるピョンコ節ぶしといわれる節回ふしまわしが多おおい。また少すくなからず短調たんちょう化かして歌うたわれた。純粋じゅんすいに曲きょくとして捉とらえた場合ばあい明あきらかに稚拙ちせつなものもある。とりわけ團だん伊玖磨いくまは「隠かくれ々滅めつ々、或あるいは態度たいど粗暴そぼう、音楽おんがくとして聞きく可かきものは皆無かいむに近ちかい」と厳きびしく批判ひはんしている。しかしながら、特とくに音楽おんがく教育きょういくを受うけたわけではない生徒せいとが作曲さっきょくしたものであることは考慮こうりょすべきであろう。昭和しょうわ期きになると、曲きょくとしても完成かんせい度どの高たかい曲きょくが出現しゅつげんしている。

寮歌りょうかの数かず

旧制きゅうせい高等こうとう学校がっこうの寮歌りょうかだけでも、約やく2500曲きょくあるとされる。寮歌りょうかの影響えいきょうを受うけた他ほかの諸しょ学校がっこうの歌うたも含ふくめると、3000曲きょく以上いじょうはあると考かんがえられるが、この調査ちょうさを完遂かんすいした人ひとはまだおらず、今後こんごもおそらく不可能ふかのうに近ちかい（一説いっせつには2938曲きょくまでカウント済ずみ）。

なぜなら旧制きゅうせい高等こうとう学校がっこう・帝国ていこく大学だいがく予よ科か全ぜん38校こうのうち、現在げんざいも自じ校こうの寮歌りょうか数すうが確定かくていしていない高等こうとう学校がっこうが数すう校こうあること --- これらの学校がっこうはそもそも同窓会どうそうかいで寮歌りょうか集しゅうすら出だしていない ---、また多おおくの高等こうとう学校がっこうで、戦後せんご作つくられた寮歌りょうかが未み調査ちょうさのままになっていることが原因げんいんである。特とくに戦後せんご寮りょうを新設しんせつした学校がっこうに、未み発見はっけんの寮歌りょうかが存在そんざいする可能かのう性せいは高たかい。よってこのまま未み発見はっけんのまま消きえていくであろう寮歌りょうかはおそらく存在そんざいするものと思おもわれる。事実じじつ、数すう年ねん前まえ、戦後せんご特設とくせつ高等こうとう学校がっこうの秋田あきた県立けんりつ高等こうとう学校がっこうの寮歌りょうかが発見はっけんされたことを考かんがえれば、早急そうきゅうに調査ちょうさされるべきであるが、現状げんじょうの寮歌りょうか祭さいの多おおくが、旧制きゅうせい高等こうとう学校がっこう並ならび帝国ていこく大学だいがく予よ科かのみを中心ちゅうしんとして、 運営うんえいされており、他たの高等こうとう教育きょういく機関きかんは参加さんかでき得えないために寮歌りょうか祭さいの趣旨しゅしの一ひとつであった保存ほぞん継承けいしょうという側面そくめんが失うしなわれているという現状げんじょうを鑑かんがみた場合ばあい、新あらたに、他たの諸しょ学校がっこうの歌うたまで発掘はっくつ、掌握しょうあくすることはおそらく困難こんなんであろう。

代表だいひょう的てきな寮歌りょうか

俗ぞくに三さん大だい寮歌りょうかと云いわれるものが有名ゆうめいである。

• 第一高等学校だいちこうとうがっこう （学制がくせい改革かいかく後ご 東京大学とうきょうだいがく教養きょうよう学部がくぶに包括ほうかつ・廃止はいし）
  • 『嗚呼ああ玉杯ぎょくはいに花はなうけて』 （明治めいじ35年ねん　第だい12回かい紀き念ねん祭さい東ひがし寮りょう寮歌りょうか。矢野やの勘かん治ち 作詞さくし、楠くすのき正一しょういち 作曲さっきょく）
• 第だい三さん高等こうとう学校がっこう （学制がくせい改革かいかく後ご 京都大学きょうとだいがく教養きょうよう部ぶに包括ほうかつ・廃止はいし）
  • 『紅べにもゆる丘おかの花はな』 （明治めいじ37年ねん　逍遥しょうようの歌うた。澤村さわむら胡夷こい 作詞さくし、K.Y. 作曲さっきょく。）
• 北海道ほっかいどう帝国ていこく大学だいがく予よ科か （学制がくせい改革かいかく後ご 北海道大学ほっかいどうだいがく教養きょうよう部ぶ（＝現げん総合そうごう教育きょういく部ぶ）に包括ほうかつ・廃止はいし。しかし恵めぐみ迪すすむ寮りょうは予よ科か→教養きょうよう部ぶ→学部がくぶ生せいと入寮にゅうりょう対象たいしょうを変かえながら存続そんぞく）
  • 『都とぞ弥生やよい』 （明治めいじ45年ねん恵めぐみ迪すすむ寮歌りょうか。横山よこやま芳かおる介かい 作詞さくし、赤木あかぎ顕あらわ次じ 作曲さっきょく）

上記じょうき以外いがいの各校かくこうの代表だいひょう的てきな寮歌りょうかは、後述こうじゅつの書籍しょせきや 「寮歌りょうかの一覧いちらん」 を参照さんしょうのこと。

書籍しょせき

• 『日本にっぽん寮歌りょうか集しゅう』 （日本にっぽん寮歌りょうか振興しんこう会かい発行はっこう、1992年ねん10月がつ 新装しんそう版ばん、国書刊行会こくしょかんこうかい 刊かん。ISBN 433603320X）
• 『日本にっぽん寮歌りょうか大全たいぜん』 （旧制きゅうせい高等こうとう学校がっこう資料しりょう保存ほぞん会かい編へん、1996年ねん2月がつ、国書刊行会こくしょかんこうかい 刊かん。ISBN 4336037892）
• 『平成へいせいの愛唱あいしょう寮歌りょうか八はち十じゅう曲きょく選せん』 （尾崎おざき良江よしえ著ちょ、1997年ねん11月、国書刊行会こくしょかんこうかい 刊かん。ISBN 4336040443）
• 『北大ほくだい寮歌りょうか集しゅう』 （北大ほくだい恵めぐみ迪すすむ寮りょう自治じち会かい寮歌りょうか普及ふきゅう委員いいん会かい編へん、非売品ひばいひんだが北大ほくだい生協せいきょうで購入こうにゅう可か）
• 『旧制きゅうせい高校こうこう物語ものがたり』 （秦はた郁いく彦著、2003年ねん12月、文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう、ISBN 4166603558）
  • 文中ぶんちゅう寮歌りょうかに関かんする記述きじゅつあり。新書しんしょなので簡単かんたんに入手にゅうしゅできる。
• 『寮歌りょうかは生いきている』
  • 古書こしょ籍せき店てんその他たで入手にゅうしゅ可能かのう。資料しりょうとしての評価ひょうかは厳きびしくなるが、取とりあえず収録しゅうろくされた曲きょく数すうだけは最多さいたである。

関連かんれん項目こうもく

• Wikipedia:ウィキプロジェクト 大学だいがく/大学だいがく歌か記事きじ独立どくりつ基準きじゅん
• 寮歌りょうかの一覧いちらん
• 日本にっぽん寮歌りょうか祭さい

外部がいぶリンク

• 第一高等学校だいちこうとうがっこうホームページ - ウェイバックマシン（2004年ねん5月がつ10日とおかアーカイブ分ぶん） - 東京とうきょう大学だいがくに包摂ほうせつ
• 『四よん高だか寮歌りょうかのページ』 - 金沢かなざわ大学だいがくに包摂ほうせつ
• 信州大学しんしゅうだいがく思おもえ誠まこと寮りょう - （旧制きゅうせい松本まつもと高等こうとう学校がっこう思おもえ誠まこと寮りょう）
• 北海道大学ほっかいどうだいがく寮歌りょうか祭さい
• 『寮生りょうせいOBが歌うたう三高さんこう寮歌りょうかをお楽たのしみ下ください』 - ウェイバックマシン（2007年ねん12月3日にちアーカイブ分ぶん） - 京都きょうと大学だいがく 吉田よしだ寮りょう 同窓会どうそうかい