得とく宗むね

得とく宗むね（とくしゅう/とくそう）は、鎌倉かまくら幕府ばくふの北条ほうじょう氏し惣領そうりょうの家系かけい。徳とく崇たかし、徳とく宗むね（読よみは同おなじ）とも呼よばれる。幕府ばくふの初代しょだい執権しっけんの北条ほうじょう時政ときまさを初代しょだいに数かぞえ、2代だい義よし時ときからその嫡流ちゃくりゅうである泰やすし時とき、時どき氏し、経時きょうじ、時どき頼よりゆき、時宗じしゅう、貞時さだとき、高たか時ときの9代だいを数かぞえる。

名前なまえの由来ゆらい

「得とく宗むね」とは2代だい義ぎ時じの別称べっしょうに由来ゆらいするが、研究けんきゅう者しゃによって法号ほうごう、戒名かいみょう、追号ついごうなど意見いけんが異ことなる。近年きんねんでは「徳とく崇たかし」の当あて字じ・略字りゃくじで、禅宗ぜんしゅうに帰依きえした5代だい時じ頼よりゆきが、浄土宗じょうどしゅう系けいの宗派しゅうはを信仰しんこうしていた義よし時じに贈おくった禅宗ぜんしゅう系けいの追号ついごうの可能かのう性せいが指摘してきされている。義ぎ時流じりゅう、得とく宗家そうけという呼よび方かたもある。また、後述こうじゅつのように義ぎ時じの系統けいとうは最初さいしょから北条ほうじょう氏しの嫡流ちゃくりゅうであったわけではなく、元々もともとは庶流の江間えま氏し（家いえ・流りゅう）であったとみるのが近年きんねんの見方みかたである。

史料しりょうにおいては北条ほうじょう氏し嫡流ちゃくりゅうの当主とうしゅを「得とく宗むね」と指さした例れいは少すくなく、行政ぎょうせい用語ようごであったとも考かんがえられている。

江間えま氏しと得とく宗家そうけ

元々もともと、北条ほうじょう宗家そうけの家督かとくを継つぐ嫡男ちゃくなんは時政ときまさの長男ちょうなんである北条ほうじょう宗時むねときであったと考かんがえられている。宗むね時じの母ははは時政ときまさの最初さいしょの正室せいしつであった伊東いとう祐親すけちかの娘むすめ（もしくは妹いもうと）とされている。その後ご、祐親すけちかの娘むすめを亡なくした時政ときまさは後室こうしつとして京都きょうとの貴族きぞくである牧まき宗はじめ親おやの妹いもうとである牧まきの方ほうを新あたらしい正室せいしつとした。時政ときまさと牧まきの方ほうの婚姻こんいん時期じきは不明ふめいであるが、時政ときまさと宗そう親ちかしの関係かんけいは婚姻こんいん以前いぜんからのものと考かんがえられ、宗時むねときの烏帽子えぼし親おやを宗そう親ちかしとする説せつもある。ところが、治ち承うけたまわ4年ねん（1180年ねん）の石橋いしばし山さんの戦たたかいでの敗走はいそう中ちゅうに宗時むねときは戦死せんしし、しばらく後のちに牧まきの方ほうが生うんだ唯一ゆいいつの男子だんしである北条ほうじょう政範まさのりが母方ははかたの血筋ちすじの良よさから嫡男ちゃくなんに立たてられたとみられている（ただし、宗時むねときの死しから政範まさのりの誕生たんじょうまで9年ねんほどの空白くうはくがあり、その間あいだの事情じじょうは不明ふめい）。

一方いっぽう、時政ときまさの次男じなんで、宗時むねときの同母どうぼ弟おとうとである義ぎ時じは、所領しょりょうのあった伊豆いず国こく田方たがた郡ぐん江間えま（現在げんざいの静岡しずおか県けん伊豆いずの国くに市し）より、「江間えま殿どの」「江間えま小四郎こしろう」などと呼よばれていた。『吾妻あづま鏡きょう』の元久もとひさ（改元かいげん直後ちょくごに義ぎ時じは相模さがみ守もりに任官にんかんされる）より以前いぜんの記事きじに記しるされた義よし時じの記事きじには「北条ほうじょう」の名乗なのりと「江間えま（江馬えま）」の名乗なのりが混在こんざいして後者こうしゃの方ほうが多おおく、長男ちょうなんの泰たい時じ（初はつ名めいは頼よりゆき時じ）に至いたっては「江間えま（江馬えま）」表記ひょうきの記事きじしか存在そんざいしていない。これは義ぎ時じ・泰たい時じ父子ふしが北条ほうじょう氏しの庶流である江間えま氏しとして認識にんしきされていたからだと考かんがえられている。義ぎ時じは結城ゆうき朝光ともみつらと共ともに源みなもと頼朝よりともから鎌倉かまくら殿どの家子いえこに任にんぜられていた。義ぎ時じ没後ぼつごの出来事できごとであるが、『吾妻あづま鏡きょう』宝たから治おさむ2年ねん閏うるう12月がつ28日にち条じょうには日ひ阿おもね（結城ゆうき朝光ともみつの法名ほうみょう）が持もっていた頼朝よりともの花押かおう入いりの家子いえこの交名の筆頭ひっとうに江間えま小四郎こしろう（北条ほうじょう義よし時じ）の名前なまえがあり、義ぎ時じが「家子いえこ専せん一いち」であった事実じじつが明あきらかになったという逸話いつわが載のせられている。義ぎ時じは北条ほうじょう氏しの嫡男ちゃくなんではなかったものの、頼朝よりともの義弟ぎていという血縁けつえん関係かんけいもあって、側近そっきんの中なかでも特別とくべつな地位ちいにあったことをうかがわせる。

これに対たいして、当時とうじは当主とうしゅと次つぎの当主とうしゅとなる嫡男ちゃくなんの名乗なのりが必かならずしも同おなじとは限かぎらず一時いちじ的てきに別べつの名乗なのりを用もちいていた事例じれいもあるとして、宗むね時じが戦死せんしした後のちの嫡男ちゃくなんは次じ弟おとうとの義ぎ時じであったとする説せつもある。この説せつでは、亀かめの前まえ騒動そうどうにおける頼朝よりともの行動こうどうに抗議こうぎする形かたちで時政ときまさが一時いちじ的てきに伊豆いずへ引退いんたいした際さいに、鎌倉かまくらに残のこった義よし時じが北条ほうじょう宗家そうけの家督かとくを継ついでいたが、時政ときまさが復帰ふっきした際さいに混乱こんらんを避さけるために義ぎ時じが将来しょうらい北条ほうじょう宗家そうけの家督かとくを継つぐことを前提ぜんていに庶流の江間えま氏しを創設そうせつしたとされている。江間えま氏しの創設そうせつはあくまで便宜べんぎ的てきな措置そちに過すぎず、実際じっさいには義ぎ時じが時政ときまさの嫡男ちゃくなんのままであったということである。ただしこの説せつでも、元もと久ひさ元年がんねん（1204年ねん）時点じてんにおいて既すでに42歳さいだった義よし時じとわずか16歳さいの政範まさのりが同おなじ従したがえ五ご位い下かと言いう同おなじ位階いかいで並ならんでいるのは、この時期じきにおける時政ときまさの意図いとする後継こうけい者しゃが政範まさのりであったことを示しめしており、庶流とされた義よし時じが反発はんぱつして父子ふし間あいだの不和ふわを招まねいたことは認みとめられている。時政ときまさ・義ぎ時じの真意しんいがどうあれ、遅おそくても元もと久ひさ元年がんねん時点じてんでは時政ときまさ－政範まさのりの北条ほうじょう宗家そうけと義よし時じ－泰やすし時じの庶流・江間えま氏しが並立へいりつする構造こうぞうは成立せいりつしていたことになる。

ところが、元もと久ひさ元年がんねん（1204年ねん）10月がつに政範まさのりが病死びょうしし、その9か月げつ後ごの元もと久ひさ2年ねん（1205年ねん）閏うるう7月がつに発生はっせいした牧まき氏し事件じけんの結果けっか、義ぎ時じの手てで時政ときまさが失脚しっきゃくさせられて鎌倉かまくらから追放ついほうされた。その結果けっか、庶流の当主とうしゅに過すぎなかった義よし時じが実力じつりょくで北条ほうじょう宗家そうけの家督かとくを継つぐことになった。そして本来ほんらいは北条ほうじょう氏しの庶流だった江間えま氏しは嫡流ちゃくりゅうの地位ちいを得えて、得とく宗家そうけとして発展はってんすることになった。

歴史れきし

鎌倉かまくら時代ときよには、得とく宗家そうけは専属せんぞくの被官ひかんである御内おんうち人じん、家政かせい機関きかん（公文こうぶん所しょ）と所領しょりょうを持もち、執権しっけん、諸国しょこくの守護しゅご職しょくや、六ろく波は羅ら探題たんだいをはじめ幕府ばくふの要職ようしょくの過半かはんを占しめる北条ほうじょう一門いちもんの最さい上位じょういに位置いちづけられた。ただ北条ほうじょう時じ頼よりゆき以前いぜんは得とく宗しゅうと執権しっけんは同一どういつ者しゃであるのが通例つうれいであった。

鎌倉かまくら時代じだい後半こうはんになると、得とく宗家そうけは北条ほうじょう一門いちもんを含ふくむ他ほかの有力ゆうりょく御家人ごけにんを圧倒あっとうするようになった。時とき頼たよ以後いごには執権しっけん職しょくに就ついた後のちにそれを一族いちぞくの者ものに譲ゆずって出家しゅっけし、実権じっけんを握にぎり続つづけるケースが見みられる。このような執権しっけん職しょくと得とく宗むねの関係かんけいは、同どう時代じだいの朝廷ちょうていにおける天皇てんのうと治ち天てんの君きみとの関係かんけいに類似るいじしているとも指摘してきされている。

元もと寇以後いごには御内おんうち人じんが幕政ばくせいに影響えいきょう力りょくを発揮はっきし、得とく宗むね邸ていで行おこなわれる北条ほうじょう一門いちもんや御内おんうち人じんの私的してき会合かいごうである寄合よりあいが評定ひょうじょう衆しゅによる幕府ばくふの公式こうしきの合議ごうぎ体たい（評定ひょうじょう）に代かわって実質じっしつ上じょうの幕政ばくせい最高さいこう機関きかんとなり、得とく宗むね専制せんせい体制たいせいを築きずく。

執権しっけん政治せいじの確立かくりつ

平安へいあん時代じだい末期まっきに摂津せっつ源氏げんじの源頼政みなもとのよりまさの知行ちぎょう国こくだった伊豆いず国こくの小しょう豪族ごうぞくに過すぎなかった北条ほうじょう氏しは、伊豆いずへ流罪るざいとなっていた河内かわうち源はじめ氏しの源みなもと頼朝よりともの挙兵きょへいに従したがい、頼朝よりともを将軍しょうぐんとする幕府ばくふを成立せいりつさせる。頼朝よりともの死後しごは頼朝よりとも室しつの北条ほうじょう政子まさこや北条ほうじょう義よし時じが幕政ばくせいを主導しゅどうし、和田わだ氏しなどの有力ゆうりょく御家人ごけにんを排斥はいせきし、また承久じょうきゅうの乱らんにおいても御家人ごけにんを統率とうそつして朝廷ちょうていや反はん北条ほうじょう勢力せいりょくを抑おさえた。

3代だい将軍しょうぐん源実朝みなもとのさねともの死しによる源みなもと家かの断絶だんぜつ後ご、鎌倉かまくら幕府ばくふは朝廷ちょうていから迎むかえる摂家せっけ将軍しょうぐんを推戴すいたいし、将軍しょうぐんの地位ちいを形式けいしき的てきなものにする一方いっぽう、政務せいむ決裁けっさいには事実じじつ上じょうのトップである執権しっけん、その補佐ほさである連署れんしょ、合議ごうぎ機関きかんである評定ひょうじょう衆しゅを置おく集団しゅうだん指導しどう体制たいせいを成立せいりつさせる。これは形式けいしき的てきであっても御家人ごけにんの主君しゅくんは将軍しょうぐんであり、北条ほうじょう氏しは御家人ごけにんの第一人者だいいちにんしゃに過すぎないという事情じじょうがあった。

また、北条ほうじょう泰やすし時じは分家ぶんけを重かさねた北条ほうじょう一門いちもんを統率とうそつするため、惣領そうりょう家かの家政かせい機関きかんを置おき、家政かせい運営うんえいのための条文じょうぶんを定さだめた。

しかし、北条ほうじょう泰やすし時じの2人ふたりの息子むすこは相次あいついで亡なくなり、嫡男ちゃくなん北条ほうじょう時じ氏しの遺児いじたちは泰たい時じに引ひき取とられて惣領そうりょう家かの後継こうけい者しゃとして育そだてられることになる。

得とく宗家そうけによる権力けんりょく独占どくせん

1246年ねん、経時きょうじがまだ幼おさないわが子こを遺のこして没ぼっした際さい、弟おとうと・時どき頼よりゆきの得とく宗家そうけ家督かとく、執権しっけん職しょく就任しゅうにんは就任しゅうにん寄合よりあいで決定けっていしている。時とき頼よりゆきは前ぜん将軍しょうぐん藤原ふじわら頼よりゆき経けいを鎌倉かまくらから追放ついほう、与あずか同どうする有力ゆうりょく御家人ごけにんを排除はいじょし、執権しっけんとして確固かっことした権威けんいを築きずく（宮みや騒動そうどう）。また宝たから治おさむ合戦かっせんで有力ゆうりょく御家人ごけにんの三浦みうら氏しを滅ほろぼし、摂家せっけ将軍しょうぐんで反はん得とく宗むね勢力せいりょくの支持しじを集あつめていた5代だい将軍しょうぐん藤原ふじわら頼よりゆき嗣を廃立はいりつし、1252年ねん、新あらたに宗尊親王むねかたしんのうを6代だい将軍しょうぐんに迎むかえた（宮みや将軍しょうぐんまたは皇族こうぞく将軍しょうぐん）。自みずからは病やまいのため執権しっけん職しょくを退しりぞくが、嫡子ちゃくし時宗じしゅうが幼少ようしょうだったため、極楽寺ごくらくじ流りゅうの北条ほうじょう長ちょう時じに執権しっけんを譲ゆずる。だが、実権じっけんは変かわらず時とき頼よりゆきにあり、長なが時ときは時宗じしゅうへ繋つなぐための傀儡かいらいに過すぎなかった。ここから得とく宗しゅうと執権しっけんの乖離かいりが始はじまる。

時どき頼よりゆきの死後しご、時宗じしゅうは外戚がいせきの安達あだち泰盛やすもりや御内おんうち人じんらに補佐ほさされ、2度どにわたる元もと寇に対処たいしょする。1度目どめの文ぶん永ながの役やくの際さい、日本にっぽん軍ぐんは元もと軍ぐんの集団しゅうだん戦法せんぽうに苦戦くせんした経験けいけんから、2度目どめの弘安ひろやすの役やくでは作戦さくせん指令しれいが時宗じしゅうの名なで出だされ、得とく宗むね被官ひかんが戦場せんじょうに派遣はけんされて御家人ごけにんの指揮しきにあたった。これにより、得とく宗むねの発言はつげん力りょくが強つよまるという結果けっかをもたらした。特とくに二に月がつ騒動そうどう以降いこう、将軍しょうぐんの専権せんけん事項じこうである「御ご恩おん沙汰さた（将軍しょうぐんが御家人ごけにんに恩賞おんしょうとして所領しょりょうを与あたえる行為こうい）」と「官途かんと沙汰さた（将軍しょうぐんが御家人ごけにんの官位かんい官職かんしょくを王朝おうちょうに推挙すいきょする行為こうい）」を得え宗むねが掌握しょうあくした事ことは、その権力けんりょくを決定的けっていてきなものにした。これは御家人ごけにんの第一人者だいいちにんしゃに過すぎない北条ほうじょう氏しが、御家人ごけにんの主君しゅくんたる将軍しょうぐんの権力けんりょく代行だいこう者しゃになった事ことを意味いみする。

時宗じしゅうの死後しご、幼少ようしょうの執権しっけんかつ得とく宗むねである貞時さだときに代かわって実権じっけんを握にぎったのは、北条ほうじょう氏しの外戚がいせきで、御家人ごけにん層そうの支持しじを持もつ安達あだち泰盛やすもりで、幕政ばくせいを主導しゅどうして弘安ひろやす徳政とくせいを開始かいしする。しかし北条ほうじょう氏しの私的してき家臣かしんである御内おんうち人じんの代表だいひょうである内うち管領かんりょうの平頼綱たいらのよりつなと対立たいりつし、霜月しもづき騒動そうどうで滅ほろぼされる。これ以降いこう、得とく宗むねが実際じっさいの権力けんりょくを行使こうしできない場合ばあいは、代かわって内うち管領かんりょうが主導しゅどうする体制たいせいとなった。

得とく宗むね専制せんせいと御内おんうち人じんの台頭たいとう

頼綱よりつなは北条ほうじょう貞時さだときを擁ようして専制せんせいを行おこなうが、平ひら禅門ぜんもんの乱らんで貞時さだときに滅ほろぼされる。貞時さだときは自みずから政務せいむに勤いそしむことで得とく宗むね専制せんせい体制たいせいは強化きょうかされるが、元もと寇以後ごには元もと寇の戦功せんこうに応おうじた恩賞おんしょうを受うけられず没落ぼつらくする御家人ごけにんが増加ぞうかし、執権しっけんの地位ちいは有名ゆうめい無実むじつ化かして、諸国しょこくでは悪党あくとうの活動かつどうが活発かっぱつ化かする。

また幕府ばくふ内部ないぶでは権力けんりょくを強つよめようとする得とく宗むねと北条ほうじょう氏し庶家の対立たいりつが激はげしくなり、嘉よしみ元もとの乱らんで北条ほうじょう氏し庶家の勢力せいりょくを除のぞくことに失敗しっぱいした貞時さだときは乱らん後ご酒宴しゅえんに明あけ暮くれて政務せいむを放棄ほうきしたため、幕府ばくふの主導しゅどう権けんは北条ほうじょう氏し庶家や長崎ながさき氏しなどの御内おんうち人じん等ひとしからなる寄合よりあい衆しゅうに移うつり、得とく宗むねは将軍しょうぐん同様どうように装飾そうしょく的てき存在そんざいに祭まつり上あげられ、得とく宗むね専制せんせい体制たいせいは崩壊ほうかいに向むかう。

さらに北条ほうじょう高だか時じの時代じだいになると、幕府ばくふは内うち管領かんりょう長崎ながさき円えん喜き・外戚がいせきの安達あだち時じ顕あらわなどの寄合よりあいによって「形かたちの如ごとく子細しさいなく」（先例せんれいに従したがい形式けいしき通どおりに）運営うんえいされるようになっており、高こう時じが主導しゅどう権けんを発揮はっきすることを求もとめられなかった。北条ほうじょう氏し一門いちもんを始はじめとする寄合よりあい衆しゅうなどの一部いちぶの御家人ごけにんが政治せいじ・経済けいざい的てき地位ちいを独占どくせんしていたことに御家人ごけにんの不満ふまんが高たかまり、畿内きないでは悪党あくとうの活動かつどうが高たかまっていたが、先例せんれい主義しゅぎ・形式けいしき主義しゅぎに陥おちいっていた幕府ばくふはこれに対処たいしょできなかった。高こう時じは1331年ねんに長崎ながさき親子おやこの排除はいじょを画策かくさくする（元弘もとひろの騒動そうどう）が失敗しっぱいし、結局けっきょく高だか時じが得とく宗むねとして政治せいじ的てきな主導しゅどう権けんを発揮はっきすることもないまま、1333年ねんに御家人ごけにんの足利あしかが高たかし氏しや新田にった義貞よしさだらによって幕府ばくふが倒たおされ、高たか時ときは自害じがいし、得とく宗家そうけも滅亡めつぼうした。

その後ご、高こう時じの次男じなんの北条ほうじょう時じ行ぎょうが南北なんぼく朝あさの戦乱せんらんの中なかで捕とらえられて処刑しょけいされたために、嫡流ちゃくりゅうは断絶だんぜつした。

北条ほうじょう得とく宗家そうけ邸てい

後醍醐天皇ごだいごてんのうが北条ほうじょう一族いちぞくの慰霊いれいの為ため、1335年ねん足利尊氏あしかがたかうじに命めいじ、北条ほうじょう得とく宗家そうけ邸てい跡あとに宝たから戒寺を建立こんりゅう。 ここは「小町こまち亭てい」と呼よばれ、代々だいだいの執権しっけんが暮くらしていた。

備考びこう

• 時どき氏し以降いこうの得とく宗むね当主とうしゅやその兄弟きょうだいには、おしなべて短命たんめいが多おおかった。時どき氏し以降いこうの当主とうしゅでは最もっとも長ながく生いきた貞時さだときですら41歳さいで没ぼっしたほか、31歳さいで自害じがいした最後さいごの当主とうしゅ・高だか時じも病弱びょうじゃくであった。得とく宗家そうけの当主とうしゅは、同おなじ北条ほうじょう氏しや外戚がいせきである安達あだち氏しから室しつを迎むかえることが多おおく、そういった近親きんしん婚こんの積つみ重かさねが歴代れきだい当主とうしゅの短命たんめいに影響えいきょうしたという指摘してきがある。
• 歴代れきだいの得とく宗むね当主とうしゅは、本来ほんらいならば将軍しょうぐんの下したで一いち御家人ごけにんという立場たちばにありながら、烏帽子えぼし親おや関係かんけいによる一いち字じ付与ふよを利用りようして、他たの有力ゆうりょく御家人ごけにんを統制とうせいしていたことが近年きんねんの研究けんきゅうで指摘してきされている（→北条ほうじょう氏し#北条ほうじょう氏しによる一いち字じ付与ふよについて）。

系図けいず

凡例はんれい：数字すうじは得とく宗家そうけ代数だいすう、太字ふとじは執権しっけん経験けいけん者しゃ、斜はす字じは連署れんしょ経験けいけん者しゃ

時政ときまさ1

宗時むねとき

義よし時とき2

〔時とき房ぼう流りゅう〕 時どき房ぼう

政範まさのり

泰やすし時とき3

〔名越なごし流りゅう〕 朝あさ時とき

〔極楽寺ごくらくじ流りゅう〕 重おも時とき

〔政せい村むら流りゅう〕 政せい村むら

〔金沢かなざわ流りゅう〕 実じつ泰やすし

〔伊具いぐ流りゅう〕 有ゆう時じ

時どき氏し4

時どき実み

公義きみよし

経時きょうじ5

時どき頼よりゆき6

〔阿蘇あそ流りゅう〕 時どき定じょう

時どき輔

時宗じしゅう7

〔宗そう政まさし流りゅう〕 宗そう政まさし

宗そう頼よりゆき

〔桜田さくらだ流りゅう〕 時どき厳げん

宗時むねとき

政せい頼よりゆき

貞時さだとき8

高たか時とき9

泰たい家か

邦くに時とき

時どき行ぎょう

脚注きゃくちゅう

参考さんこう文献ぶんけん

• 細川ほそかわ重男しげお 『鎌倉かまくら政権せいけん得とく宗むね専制せんせい論ろん』（吉川弘文館よしかわこうぶんかん、1999年ねん） ISBN 4-642-02786-6
• 細川ほそかわ重男しげお 『鎌倉かまくら幕府ばくふの滅亡めつぼう』（吉川弘文館よしかわこうぶんかん、2011年ねん） ISBN 978-4642057165
• 奥富おくとみ敬之たかゆき 『時じ頼よりゆきと時宗じしゅう』（日本にっぽん放送ほうそう出版しゅっぱん協会きょうかい、2000年ねん） ISBN 4-14-080549-8
• 中西なかにし豪つよし 「北条ほうじょう得とく宗家そうけの野望やぼう 争乱そうらんに終始しゅうしした仮託かたくの政権せいけん」
  • 学習研究社がくしゅうけんきゅうしゃ『歴史れきし群ぐん像ぞう』2004年ねん6月がつ号ごう No.65　p178~p187
• 細川ほそかわ重男しげお『北条ほうじょう氏しと鎌倉かまくら幕府ばくふ』（講談社こうだんしゃ〈講談社こうだんしゃ選書せんしょメチエ〉、2011年ねん） ISBN 978-4-06-258494-4