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新冠ダム - Wikipedia

新冠にいかっぷダム

北海道ほっかいどうのダム

新冠にいかっぷダム(にいかっぷダム)は、北海道ほっかいどう新冠にいかっぷぐん新冠にいかっぷまちきゅう河川かせん新冠川にいかっぷがわ本流ほんりゅう上流じょうりゅう建設けんせつされたダムである。

新冠にいかっぷダム
新冠ダム
所在地しょざいち 北海道ほっかいどう新冠にいかっぷぐん新冠にいかっぷまち岩清水いわしみず
位置いち
新冠ダムの位置(日本内)
新冠ダム
北緯ほくい4236ふん24びょう 東経とうけい14233ふん25びょう / 北緯ほくい42.60667 東経とうけい142.55694 / 42.60667; 142.55694
河川かせん 新冠川にいかっぷがわ水系すいけい新冠川にいかっぷがわ
ダムみずうみ 新冠湖にいかっぷこ
ダムしょもと
ダム型式けいしき 中央ちゅうおう土質どしつさえぎみずかべがた
ロックフィルダム
つつみだか 102.8 m
つつみいただきちょう 326.0 m
つつみ体積たいせき 3,071,000
流域りゅういき面積めんせき 192.9 km²
たたえ水面すいめんせき 435.0 ha
そう貯水ちょすい容量ようりょう 145,000,000 m³
有効ゆうこう貯水ちょすい容量ようりょう 117,000,000 m³
利用りよう目的もくてき 発電はつでん
事業じぎょう主体しゅたい 北海道電力ほっかいどうでんりょく
電気でんき事業じぎょうしゃ 北海道電力ほっかいどうでんりょく
発電はつでんしょめい
認可にんか出力しゅつりょく
新冠にいかっぷ発電はつでんしょ(200,000kW)
施工しこう業者ぎょうしゃ 鹿島建設かしまけんせつ
着手ちゃくしゅねん/竣工しゅんこうねん 1970ねん/1974ねん
出典しゅってん北海道ほっかいどうのダム 1986』・『ダム便覧びんらん新冠にいかっぷダム
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北海道電力ほっかいどうでんりょく管理かんりする発電はつでんようダムで、たかさ102.8メートルロックフィルダム日高ひだか上川かみかわ管内かんないにまたがるだい規模きぼ広域こういき電源でんげん開発かいはつ計画けいかく・「日高ひだか電源でんげん一貫いっかん開発かいはつ計画けいかく」にもとづき建設けんせつされたダムで、北海道電力ほっかいどうでんりょく管理かんりするダムとしては最大さいだい地下ちかしき新冠にいかっぷ発電はつでんしょによる出力しゅつりょく20まんキロワット揚水ようすい発電はつでんおこない、静内川しずないがわ建設けんせつされた高見たかみ発電はつでんしょともほん計画けいかく中枢ちゅうすうとして重要じゅうよう位置いちめる。ダムによって形成けいせいされた人造湖じんぞうこ河川かせんって新冠湖にいかっぷこ(にいかっぷこ)と命名めいめいされた。

新冠川にいかっぷがわ日高ひだか山脈さんみゃく最高峰さいこうほうであり、日本にっぽん百名山ひゃくめいざんにもえらばれているほろしり(ぽろしり)たけ水源すいげんとし、上流じょうりゅう岩清水いわしみず渓谷けいこくはじめとする険阻けんそ峡谷きょうこく形成けいせいしながらおおむ南西なんせいながれって太平洋たいへいようそそ河川かせんである。りゅう延長えんちょう77.3[1]キロメートル流域りゅういき面積めんせきは402.1平方へいほうキロメートルひがしとなりながれる静内川しずないがわ規模きぼきゅう河川かせんであり、流域りゅういきには日本にっぽん有数ゆうすうサラブレッド生産せいさんかかえる。ダムは新冠川にいかっぷがわ上流じょうりゅう建設けんせつされたが、新冠川にいかっぷがわには上流じょうりゅうより、おく新冠にいかっぷダム新冠にいかっぷダムした新冠にいかっぷダム岩清水いわしみずダムよんダムが建設けんせつされており、新冠にいかっぷダムは上流じょうりゅうから番目ばんめ位置いちする。

ダムめい河川かせんめいよりけられたが、このアイヌの「ニ・カプ」(nikap かわ)に由来ゆらいするといわれている。日高ひだか電源でんげん一貫いっかん開発かいはつ計画けいかくにおいて新冠川にいかっぷがわ水系すいけい水力すいりょく発電はつでんしょ・ダムぐん中核ちゅうかくになフラグシップてき存在そんざいであるため、「新冠にいかっぷ」のけられた。さき完成かんせいしているおく新冠にいかっぷ下新したしんかんむりりょうダムは新冠にいかっぷダムからの位置いちてき関係かんけいで「おく」または「した」がかんされている。

沿革えんかく

編集へんしゅう

1951ねん昭和しょうわ26ねん日本にっぽんはつ送電そうでんポツダム政令せいれいもとづく電気でんき事業じぎょうさい編成へんせいれい発布はっぷによって全国ぜんこく9電力でんりょく会社かいしゃ分割ぶんかつ民営みんえいされ、北海道ほっかいどうでは日本にっぽん発送はっそうでん札幌さっぽろ支店してん北海道ほっかいどう配電はいでん合併がっぺいするかたち北海道電力ほっかいどうでんりょく誕生たんじょうした。北海道電力ほっかいどうでんりょく当時とうじ日本にっぽん各地かくちおこなわれていただい規模きぼ電力でんりょく開発かいはつ北海道ほっかいどうでも実施じっしすべく、道東どうとう十勝とかちがわ水系すいけいにおいて「十勝とかち糠平ぬかびらけい電源でんげん一貫いっかん開発かいはつ計画けいかく」を日本にっぽん発送はっそうでんから継承けいしょうするかたち着手ちゃくしゅした。ところが当時とうじ北海道電力ほっかいどうでんりょく経営けいえい基盤きばんよわく、ただちに計画けいかく遂行すいこうできるだけの資金しきんりょく不足ふそくしていた。このためどう計画けいかく1952ねん昭和しょうわ27ねん)に発足ほっそくした特殊とくしゅ法人ほうじん電源でんげん開発かいはつゆだねざるをなくなり、十勝とかち糠平ぬかびらわるあらたなだい規模きぼ開発かいはつ計画けいかく立案りつあんする必要ひつようられていた。

一方いっぽう北海道ほっかいどうないでは北海道開発庁ほっかいどうかいはつちょう設置せっちともな北海道ほっかいどう総合そうごう開発かいはつ計画けいかくがスタートし、北海道ほっかいどう豊富ほうふ資源しげん有効ゆうこう活用かつようして日本にっぽん生産せいさん基地きちとするべく治水ちすい灌漑かんがい工業こうぎょう地帯ちたい整備せいびなど多方面たほうめんにわたる開発かいはつ計画けいかく構想こうそうあるいは着手ちゃくしゅされていた。これらの施策しさく軌道きどうせるためにはインフラストラクチャーである電力でんりょく供給きょうきゅう不可欠ふかけつであったが、当時とうじ北海道ほっかいどうにおける電力でんりょく供給きょうきゅう雨竜川うりゅうがわ雨竜うりゅう発電はつでんしょのほかは小規模しょうきぼ発電はつでん設備せつびしかなく、本州ほんしゅうなどにくらべるとその整備せいびおくれていた。くわえて室蘭むろらん苫小牧とまこまいなど胆振いぶり支庁しちょうにおいては製鉄せいてつパルプ工場こうじょう拡充かくじゅう空知そらち支庁しちょうにおいては夕張ゆうばり三笠みかさ芦別あしべつなど炭鉱たんこう地帯ちたい採掘さいくつ増加ぞうかによって電力でんりょく需要じゅよう増大ぞうだい従来じゅうらい電力でんりょく供給きょうきゅうでは早晩そうばん逼迫ひっぱく(ひっぱく)することはあきらかであった。北海道ほっかいどう総合そうごう開発かいはつ進展しんてん、および自社じしゃ経営けいえい基盤きばん強化きょうか観点かんてんから北海道電力ほっかいどうでんりょく十勝とかち糠平ぬかびらわるあらたな電源でんげん地帯ちたい候補こうほ探索たんさくし、その結果けっかえらばれたのが日高ひだか山脈さんみゃくであった。

日高ひだか山脈さんみゃくアルプス山脈あるぷすさんみゃくアンデス山脈あんですさんみゃくロッキー山脈さんみゃくどう時期じき日高ひだか造山つくりやま運動うんどうによって形成けいせいされた山岳さんがく地帯ちたいで、北海道ほっかいどう随一ずいいち険阻けんそ山脈さんみゃくである。冬季とうきすうメートルにおよ積雪せきせつ夏季かき比較的ひかくてきあめおおとし平均へいきん降水こうすいりょうは2,000ミリたっする多雨たう地帯ちたいであった。ったあめ急流きゅうりゅう形成けいせいして一気いっき太平洋たいへいようまでながれ、水源すいげんから河口かこうまでの高低こうてい落差らくさ)のはばおおきい。こうした条件じょうけん水力すいりょく発電はつでんおこなうには最高さいこう条件じょうけんであるが、個々ここ河川かせん流域りゅういき面積めんせき比較的ひかくてきせまいことから単独たんどく開発かいはつでは十分じゅうぶん電力でんりょく供給きょうきゅうおこなうにはりなかった。そこで日高ひだか山脈さんみゃく水源すいげんとする主要しゅよう水系すいけい鵡川むかわ沙流川さるかわ新冠川にいかっぷがわ静内川しずないがわよん水系すいけい大小だいしょう11箇所かしょのダムと水力すいりょく発電はつでんしょ建設けんせつし、それらをトンネル連結れんけつして不足ふそくするみず融通ゆうずうすることで効率こうりつてき発電はつでんおこない、最大さいだい67まんキロワットの電力でんりょく北海道ほっかいどういちえん供給きょうきゅうする遠大えんだい計画けいかく北海道電力ほっかいどうでんりょくは1951ねんより構想こうそうし、1956ねん昭和しょうわ31ねん)より着手ちゃくしゅした。「日高ひだか電源でんげん一貫いっかん開発かいはつ計画けいかく」である。

この計画けいかくでは新冠川にいかっぷがわ静内川しずないがわにそれぞれ1おく立方りっぽうメートルきゅうだい容量ようりょう貯水池ちょすいちだい規模きぼ出力しゅつりょくゆうする中核ちゅうかく水力すいりょく発電はつでんしょ建設けんせつするが、それを有効ゆうこう機能きのうさせるため鵡川むかわ沙流川さるかわより新冠川にいかっぷがわ、そして静内川しずないがわ導水どうすいさせるトンネルを建設けんせつする方針ほうしんとした。このためだいいち段階だんかいとして沙流川さるかわ鵡川むかわ開発かいはつさき実施じっしつづいて沙流川さるかわから導水どうすいするトンネルとそれを活用かつようした発電はつでんしょ建設けんせつだい段階だんかいとして実施じっしし、だい容量ようりょう貯水池ちょすいちだい規模きぼ発電はつでんしょはそれらの完成かんせいだいさん段階だんかいとして着手ちゃくしゅする方針ほうしんさだめ、まずはだいいちだい段階だんかい事業じぎょうすすめられた。1963ねん昭和しょうわ38ねんおく新冠にいかっぷ発電はつでんしょなん工事こうじすえ完成かんせい静内川しずないがわ支流しりゅう春別川しゅんべつがわはるべつ発電はつでんしょ運転うんてん開始かいしし、同時どうじ建設けんせつすすめられた沙流川さるかわ新冠川にいかっぷがわ静内川しずないがわさん水系すいけい連結れんけつするトンネルが完成かんせいしてみず融通ゆうずうはかられるようになった。これによりだい規模きぼ貯水池ちょすいち発電はつでんしょ建設けんせつしても十分じゅうぶん出力しゅつりょくたもてる目処めどいたことなどにより、新冠川にいかっぷがわ新冠にいかっぷダム静内川しずないがわ高見たかみダムだいダムを建設けんせつ合計ごうけいで40まんキロワットの電力でんりょく発生はっせいさせるだいさん段階だんかい着手ちゃくしゅすることとなった。

日高ひだか電源でんげん一貫いっかん開発かいはつ計画けいかくだいさん段階だんかいである中枢ちゅうすう水力すいりょく発電はつでんしょだいいちだんとして着手ちゃくしゅされたのが新冠にいかっぷダム新冠にいかっぷ発電はつでんしょであり、1970ねん昭和しょうわ45ねん)より工事こうじ着工ちゃっこうされたのである。

ダムを建設けんせつするさいには地形ちけい地質ちしつ降水こうすいりょう河川かせん流量りゅうりょうなどの基礎きそてきなデータの調査ちょうさ必須ひっすである。これを専門せんもんてきには予備よび調査ちょうさぶが、日高ひだか電源でんげん一貫いっかん開発かいはつ計画けいかくでは計画けいかく構想こうそうされた1952ねんより静内しずないまち[ちゅう 1]北海道電力ほっかいどうでんりょく前線ぜんせん基地きちとして静内しずない調査ちょうさしょ設置せっち新冠川にいかっぷがわ静内川しずないがわ上流じょうりゅう調査ちょうさはいった。だが、当時とうじ日高山脈ひだかさんみゃく奥地おくち険阻けんそ山岳さんがく地帯ちたい峡谷きょうこくふゆ氷点下ひょうてんか30以下いかたっするきびしい気候きこうひとけず、人跡じんせき未踏みとうであった。新冠川にいかっぷがわ流域りゅういきでも河口かこうちか新冠にいかっぷまちではあま積雪せきせつくても、岩清水いわしみず下新したしんかんむり新冠にいかっぷおく新冠にいかっぷ上流じょうりゅうくに積雪せきせつ寒冷かんれい度合どあいはす。計画けいかく従事じゅうじした社員しゃいん従業じゅうぎょういん娯楽ごらく麻雀まーじゃんがあったが、これになぞらえて「新冠川にいかっぷがわ上流じょうりゅうくにれていち(イーファン)ずつふゆきびしくなる」とひょうされた。

静内しずない調査ちょうさ所員しょいん地元じもと長老ちょうろうなどを案内あんないやくて、新冠にいかっぷ静内しずない地方ちほうポーターす「ダンコ」のちからりてボーリング機材きざいなどの測量そくりょう資材しざい食糧しょくりょう寝具しんぐドラム缶どらむかん風呂ふろなどを背負せおい、調査ちょうさしょから新冠川にいかっぷがわ上流じょうりゅうやく40キロメートル区間くかん10日とおかから20日間にちかんけ、けわしい山岳さんがく地帯ちたい縦走じゅうそうした。こうした調査ちょうさにより1955ねん昭和しょうわ30ねんなつだい規模きぼ貯水池ちょすいち建設けんせつするのに適当てきとう地点ちてん現在げんざい新冠にいかっぷダムサイトが発見はっけんされる。当時とうじ利用りようされていた1920ねん大正たいしょう9ねんはか地理ちり調査ちょうさしょ地図ちずにはっていない地形ちけいであった。そのどう地点ちてんをベースキャンプとするため板張いたばり・トタン屋根やねの「小屋こや」を建設けんせつ、これを「きたでん新冠にいかっぷマンション」とづけて調査ちょうさ拠点きょてんとした。「マンション」を拠点きょてんにダム周辺しゅうへん地形ちけい地質ちしつ調査ちょうさおこなわれ、発電はつでん成否せいひ左右さゆうする水量すいりょう計測けいそく実施じっしされたが、水量すいりょう調査ちょうさ継続けいぞくてきおこなわなければ正確せいかく数値すうち測定そくていできないため、氷点下ひょうてんか30にもなる冬季とうきおこな必要ひつようがあった。しかしダムサイトは周囲しゅうい完全かんぜん国有こくゆうりんであり人家じんかなどは当然とうぜんく、むを所員しょいんが「マンション」に一人ひとりのこって厳寒げんかんなか水量すいりょう計測けいそくすることになった。

苦心くしんすえ予備よび調査ちょうさ終了しゅうりょうしたが、このあいだ流域りゅういき自治体じちたいである新冠にいかっぷまち新冠川にいかっぷがわみず静内川しずないがわ流域りゅういき変更へんこうすることに難色なんしょくしめした。新冠川にいかっぷがわ流水りゅうすい静内川しずないがわへと結果けっかてきに「うばわれる」からである。灌漑かんがい用水ようすいとして取水しゅすいする水量すいりょう減少げんしょう河口かこう閉塞へいそくによる治水ちすいうえ問題もんだい漁業ぎょぎょう環境かんきょうへの影響えいきょうなどまちせい根幹こんかんかかわることから新冠にいかっぷまちでは「新冠にいかっぷ町議会ちょうぎかい電源でんげん開発かいはつ特別とくべつ委員いいんかい」が設置せっちされ、事業じぎょうしゃ北海道電力ほっかいどうでんりょくとのあいだ交渉こうしょうたれた。しかし、北海道電力ほっかいどうでんりょく新冠にいかっぷ町議会ちょうぎかい電源でんげん開発かいはつ特別とくべつ委員いいんかいとのあいだ交渉こうしょう難航なんこうまちがわ従来じゅうらいどおりの流水りゅうすいりょう補償ほしょうもとめたが北海道電力ほっかいどうでんりょく計画けいかく大幅おおはば変更へんこうかかわる取水しゅすいりょう減少げんしょう要求ようきゅう難色なんしょくしめした。最終さいしゅうてきにはまちがわ譲歩じょうほし「減水げんすいによる影響えいきょう北海道電力ほっかいどうでんりょく最小限さいしょうげん抑制よくせいする」ということで合意ごうい成立せいりつした。こうして下流かりゅう建設けんせつされた岩清水いわしみずダムから河川かせん維持いじ放流ほうりゅうおこなうことが決定けっていするまで着工ちゃっこうびた。

ダムと発電はつでんしょは1970ねんより建設けんせつ開始かいしされたが、おく新冠にいかっぷダムやはるべつダムのように自然しぜん災害さいがいによる被災ひさいすくなく、またすで下流かりゅう下新したしんかんむり岩清水いわしみずダムが完成かんせいしていることもあって工事こうじよう道路どうろ整備せいびされており、のダム・発電はつでんしょ工事こうじして難易なんいすくなかった。 ただし1973ねん8がつ6にちには、集中しゅうちゅう豪雨ごううにより発電はつでんしょ工事こうじ宿舎しゅくしゃ裏山うらやまくずれて宿舎しゅくしゃ直撃ちょくげき。4にん死亡しぼう、5にん重軽傷じゅうけいしょう事故じこ発生はっせいしている[2]

近隣きんりんヒグマ頻繁ひんぱん出没しゅつぼつする地域ちいきであり、従業じゅうぎょういんへの被害ひがいかったがニアミスも多々たたあった。このためなんにんかの北海道電力ほっかいどうでんりょく社員しゃいん狩猟しゅりょう免許めんきょ取得しゅとくして地元じもとハンターとも警戒けいかいたるということもあった。

だい規模きぼなダムではあったがやく4ねんという短期間たんきかんでダムと発電はつでんしょ完成かんせいし、1974ねん昭和しょうわ49ねん8がつ発電はつでんしょの1号機ごうき運転うんてん開始かいし同年どうねん11月に2号機ごうき運転うんてん開始かいしして北海道電力ほっかいどうでんりょく水力すいりょく発電はつでんしょとしては高見こうけん発電はつでんしょなら最大さいだいきゅう発電はつでんしょ運転うんてん開始かいしした。しかしこのかげで7めい労働ろうどう災害さいがいで、4めい自然しぜん災害さいがいによるがけくずまれて殉職じゅんしょくしている。

新冠にいかっぷ発電はつでんしょ

編集へんしゅう
 
した新冠にいかっぷダム
新冠にいかっぷダムとのあいだ揚水ようすい発電はつでんおこなう。1969ねん完成かんせい
 
岩清水いわしみずダム
新冠にいかっぷダムのぎゃく調整ちょうせいでもあり、河川かせん維持いじ放流ほうりゅうによる新冠川にいかっぷがわ河川かせん環境かんきょう維持いじにも重要じゅうよう役割やくわりになう。1959ねん完成かんせい

新冠にいかっぷ発電はつでんしょ地下ちかしき自流じりゅう混合こんごうしき揚水ようすい発電はつでんしょとして建設けんせつされた。北海道ほっかいどうはつ揚水ようすいしき発電はつでんしょであり、現在げんざい完成かんせいしている北海道ほっかいどうないすべての水力すいりょく発電はつでんしょでは1983ねん昭和しょうわ58ねん)に完成かんせいした日高ひだか電源でんげん一貫いっかん開発かいはつ計画けいかくのもうひとつの中核ちゅうかく施設しせつである高見たかみ発電はつでんしょなら最大さいだいきゅう発電はつでんしょである[ちゅう 2]当時とうじオイルショック国産こくさん再生さいせい可能かのうエネルギーである水力すいりょく発電はつでんさい認識にんしきされていたこと、およ奈井江ないえ発電はつでんしょ伊達だて発電はつでんしょなど新鋭しんえい火力かりょく発電はつでんところ続々ぞくぞく建設けんせつされており、火力かりょく発電はつでんとの連携れんけい可能かのう揚水ようすい発電はつでん注目ちゅうもくされていたこともあり、おおきな期待きたい背負せおっての運転うんてん開始かいしであった。

沙流川さるかわ河水こうすい利用りようするおく新冠にいかっぷ発電はつでんしょから放流ほうりゅうされたみず新冠湖にいかっぷこたくわえられる。そして下流かりゅう1969ねん昭和しょうわ44ねん)に完成かんせいしたした新冠にいかっぷダム貯水池ちょすいち下新したしんかんむり調整ちょうせいとのあいだ揚水ようすい発電はつでんおこなう。ピーク発電はつでんであり、エアコン頻繁ひんぱん使用しようされ、工場こうじょう操業そうぎょうおおくなる夏季かき暖房だんぼう器具きぐ頻繁ひんぱん使用しようされる冬季とうきにおいて電力でんりょく需要じゅようがピークとなるさいした新冠にいかっぷダムと相互そうごみず運用うんようすることで最大さいだい20まんキロワットの発電はつでんおこなう。また、発電はつでん放流ほうりゅうされるみず下流かりゅう新冠にいかっぷまち影響えいきょうおよぼさないようにするため、貯水池ちょすいち放流ほうりゅうりょう平均へいきん下流かりゅうへの水量すいりょう一定いっていにさせる「ぎゃく調整ちょうせい」として岩清水いわしみずダム利用りようされる。岩清水いわしみずダムでは新冠にいかっぷまち北海道電力ほっかいどうでんりょくとのあいだにおけるめにより、灌漑かんがい漁業ぎょぎょうへの影響えいきょう抑制よくせいするため新冠川にいかっぷがわ正常せいじょう流量りゅうりょう維持いじする目的もくてき河川かせん維持いじ放流ほうりゅう常時じょうじ実施じっしされている。

下流かりゅう河川かせん環境かんきょう配慮はいりょをしながら、新冠にいかっぷ発電はつでんしょ使用しようされたみず一部いちぶ岩清水いわしみず調整ちょうせいからトンネルをつうじてはるべつダムおくられる。はるべつダムからは静内川しずないがわ建設けんせつされた静内しずないダム高見こうけんダムへ送水そうすいされ、発電はつでん能力のうりょく増強ぞうきょう維持いじ利用りようされている。静内しずないダムの場合ばあいには、新冠にいかっぷダムの完成かんせいによって一定いっていりょう水量すいりょう確保かくほできるようになったことからダムに付設ふせつする静内しずない発電はつでんしょ増設ぞうせつ実施じっしされ、1979ねん昭和しょうわ54ねん)に全面ぜんめん運転うんてん可能かのうとなった。

このように、新冠にいかっぷ発電はつでんしょ日高ひだか電源でんげん一貫いっかん開発かいはつ計画けいかく中心ちゅうしん事業じぎょうとして、北海道ほっかいどうのインフラ整備せいび貢献こうけんした。しかし2007ねん平成へいせい19ねん中国電力ちゅうごくでんりょく土用どようダムはじまった発電はつでんようダムデータかいざん問題もんだいは、全国ぜんこく電力でんりょく会社かいしゃ拡大かくだい社会しゃかい問題もんだいとなったが、北海道電力ほっかいどうでんりょくにおいても新冠にいかっぷ発電はつでんしょ発電はつでん設備せつびデータが1974ねん運転うんてん開始かいしからかいざんされていたことが社内しゃない内部ないぶ調査ちょうさ判明はんめいした。ダム本体ほんたいへの安全あんぜんせい直接ちょくせつかかわる問題もんだいではないものの、電力でんりょく会社かいしゃ信頼しんらい失墜しっついさせる結果けっかとなった。

治水ちすいへの利用りよう

編集へんしゅう

利水りすいダムにおける治水ちすいへの責務せきむ詳細しょうさい日本にっぽんのダム#利水りすいダムの分類ぶんるい参照さんしょう

新冠にいかっぷダムは発電はつでん専用せんようダムであり、多目的たもくてきダム治水ちすいダムのように治水ちすい、すなわち洪水こうずい調節ちょうせつ目的もくてきたない。だが新冠にいかっぷダムでは洪水こうずいときにも治水ちすい効果こうかげることが可能かのうになるような運用うんよう実施じっしされている。

水力すいりょく発電はつでんてきする河川かせん反面はんめんあばがわ」として流域りゅういき水害すいがいおよぼしやすい。実際じっさい新冠川にいかっぷがわは1955ねんと1956ねんねん連続れんぞくだい水害すいがいをひきこし、新冠にいかっぷまちいちめん水没すいぼつという被害ひがいけている。これは沙流川さるかわ鵡川むかわ静内川しずないがわでも同様どうようであり、流域りゅういき町村ちょうそん電源でんげん開発かいはつ促進そくしんもさることながら治水ちすい対策たいさく充実じゅうじつ、すなわち目的もくてきダムの建設けんせつ要望ようぼうしていた。当時とうじしん河川かせんほう改訂かいていまえ一級いっきゅう河川かせんきゅう河川かせん分類ぶんるいく、北海道開発ほっかいどうかいはつきょく治水ちすいおも担当たんとうしていた。被災ひさい自治体じちたい要望ようぼうもあって、開発かいはつきょく胆振いぶりにちだか主要しゅよう河川かせんにも多目的たもくてきダムを建設けんせつする計画けいかく構想こうそうした。

このおり鵡川むかわには勇払ゆうふつぐん占冠しむかっぷむらたかさ103メートル・そう貯水ちょすい容量ようりょうが3おく5,000まん立方りっぽうメートルと朱鞠内湖しゅまりないこ大幅おおはば凌駕りょうがする「赤岩あかいわダム計画けいかく」を発表はっぴょう[ちゅう 3]新冠川にいかっぷがわでも新冠にいかっぷダムを多目的たもくてきダムとして建設けんせつする構想こうそう存在そんざいしていた。だが赤岩あかいわダム計画けいかく占冠しむかっぷむらぜんむら官民かんみん一体いったいとなる反対はんたい運動うんどう1961ねん昭和しょうわ36ねん白紙はくし撤回てっかい新冠にいかっぷダムの多目的たもくてき資金しきんめん1964ねん昭和しょうわ39ねん)の河川かせんほう改正かいせい新冠川にいかっぷがわきゅう河川かせんとなったことで開発かいはつきょく管轄かんかつからはなれたことなどもあり、多目的たもくてきダム構想こうそうえとなった。しかし河川かせんほう改正かいせい、1965ねん河川かせんほう施行しこうれい、さらに1966ねん昭和しょうわ41ねん)の建設省けんせつしょう河川かせん局長きょくちょう通達つうたつ[ちゅう 4]によって新冠にいかっぷダムのような治水ちすい目的もくてきたないダムでも、治水ちすいたいする責任せきにん明確めいかくされたこともあって、ダム建設けんせつにおいて貯水ちょすい容量ようりょう一部いちぶ治水ちすい活用かつようする方針ほうしんった。

具体ぐたいてきには新冠湖にいかっぷこそう貯水ちょすい容量ようりょうから水力すいりょく発電はつでん使つか有効ゆうこう貯水ちょすい容量ようりょういたのこりの容量ようりょうを、治水ちすい容量ようりょうとして活用かつようする[ちゅう 5]。その容量ようりょうは2,500まん立方りっぽうメートルであるが、これは1998ねん平成へいせい10ねん)に完成かんせいした多目的たもくてきダム・二風谷にぶたにダム沙流川さるかわ)に匹敵ひってきするだい容量ようりょうである。これを利用りよう豪雨ごううさいには出来できかぎ洪水こうずい貯水ちょすいし、下流かりゅうへの影響えいきょう抑制よくせいする。こうして新冠にいかっぷダムは水力すいりょく発電はつでんのみならず、目的もくてきがいではあるが治水ちすいにも利用りようされ新冠にいかっぷまち安全あんぜん貢献こうけんしている。なお新冠にいかっぷダムとならほん計画けいかくのもうひとつのはしら高見たかみダムは河川かせん管理かんりしゃである北海道ほっかいどう事業じぎょう相乗あいのりし、国庫こっこ補助ほじょけた補助ほじょ多目的たもくてきダムとして計画けいかく変更へんこうされている。

新冠湖にいかっぷこ

編集へんしゅう

ダムによって形成けいせいされた人造湖じんぞうこ新冠湖にいかっぷこ奥多摩湖おくたまこ小河内おかうちダム多摩川たまがわ)に匹敵ひってきする面積めんせきだい人造湖じんぞうこであり、北海道ほっかいどうないでも屈指くっし規模きぼつ。みずうみ周辺しゅうへん原生げんせいりんおおわれ、静寂せいじゃく雰囲気ふんいきただよわせる。湖畔こはん東岸とうがんには新冠湖にいかっぷこキャンプじょうがある。また新冠湖にいかっぷこりのスポットでもあり、ヤマメアメマスのほか体長たいちょう1メートルにもおよ巨大きょだいブラウントラウトりあがるという。このため大物おおものねらきゃくおとずれるが、ダム・みずうみ周辺しゅうへんはヒグマがおお出没しゅつぼつする地域ちいきであるため十分じゅうぶん注意ちゅうい必要ひつようである。ちなみに北海道ほっかいどうでは1990年代ねんだい以降いこうヒグマによる人的じんてき被害ひがい増加ぞうかしている。ダム本体ほんたいにはることが出来できるが発電はつでんしょ立入禁止たちいりきんしである。

新冠にいかっぷダム・新冠にいかっぷへの公共こうきょう交通こうつう機関きかん存在そんざいしない。国道こくどう235ごう新冠にいかっぷ泥火山でいかざん付近ふきん左折させつ直進ちょくしん北海道ほっかいどうどう71ごう平取ひらとりしず内線ないせんはいって平取びらとりまち方面ほうめんすすみ、途中とちゅう新冠川にいかっぷがわわたはし手前てまえ道道みちみちはな林道りんどうはい直進ちょくしん、あとはひたすら北上ほくじょうする。途中とちゅう岩清水いわしみずダムとした新冠にいかっぷダムを通過つうかし、新冠にいかっぷダムへといたる。新冠にいかっぷえきからはくるまやく1あいだ40ふん程度ていどである。ただし林道りんどう途中とちゅうからつぶておおきいダートみちとなり、幅員ふくいん離合りごう比較的ひかくてき困難こんなん道路どうろとなる。

なお新冠にいかっぷダムよりおく新冠にいかっぷダム方面ほうめん途中とちゅうでゲートがもうけられ施錠せじょうされており、通行つうこうには北海道電力ほっかいどうでんりょく事前じぜん許可きょか必要ひつようとなる。

脚注きゃくちゅう

編集へんしゅう

注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 平成へいせいだい合併がっぺいにより三石みついしぐん三石みついしまち合併がっぺいし、現在げんざいしんひだかまちである。
  2. ^ 2015ねん平成へいせい27ねん)に尻別川しりべつかわ水系すいけい運転うんてん開始かいし予定よてい京極きょうごく発電はつでんしょ出力しゅつりょく60まんキロワット)が完成かんせいするとだいになる。
  3. ^ 北海道電力ほっかいどうでんりょく出力しゅつりょく9まんキロワットの発電はつでんしょ建設けんせつする電気でんき事業じぎょうしゃとして参加さんかしていた。
  4. ^ 新冠にいかっぷダムの具体ぐたいてき分類ぶんるい不明ふめいであるが、どう規模きぼである井川いかわダムはたけなぎだいいちダム大井川おおいがわ)などはいずれもだい一類いちるい分類ぶんるいされている。
  5. ^ 多目的たもくてきダムや治水ちすいダムの場合ばあいは、有効ゆうこう貯水ちょすい容量ようりょうなか治水ちすい容量ようりょうまれている。

出典しゅってん

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  1. ^ 角川かどかわ日本にっぽん地名ちめいだい辞典じてん北海道ほっかいどう 上巻じょうかん角川書店かどかわしょてん、1987ねん
  2. ^ 「ゲリラ局地きょくち豪雨ごうう うらやまくずれよんにんぬ」『朝日新聞あさひしんぶん昭和しょうわ48ねん(1973ねん)8がつ7にち夕刊ゆうかん、3はん、9めん

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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