武蔵野むさしのグリーンパーク野球やきゅう場じょう

武蔵野むさしのグリーンパーク野球やきゅう場じょう（むさしのグリーンパークやきゅうじょう）は、東京とうきょう都と武蔵野むさしの市し西窪さいくぼ（現在げんざいの住所じゅうしょ表記ひょうきは緑町みどりちょう二に丁目ちょうめ）にあった野球やきゅう場じょう。実働じつどう1シーズン、完成かんせいから解体かいたいまでわずか5年ねんであり、日本にっぽんで最もっとも短命たんめいに終おわった球場きゅうじょうとされる。

東京とうきょうグリーンパーク野球やきゅう場じょう Musashino Green Park
施設しせつデータ
所在地しょざいち	東京とうきょう都と武蔵野むさしの市し西窪さいくぼ
座標ざひょう	北緯ほくい35度ど43分ふん2秒びょう 東経とうけい139度ど33分ふん51秒びょう
開場かいじょう	1951年ねん5月5日にち竣工しゅんこう （グラウンドとしての開場かいじょうは4月がつ14日にち）
閉場へいじょう	1951年ねん
所有しょゆう者しゃ	株式会社かぶしきがいしゃ東京とうきょうグリーンパーク
グラウンド	内野ないや - 黒土こくど　外野がいや - 天然てんねん芝しば 両翼りょうよく 300ft （91.5m） 中堅ちゅうけん 420ft （128m） （日本にっぽんの野球やきゅう場じょうとしては最大さいだい） 本塁ほんるい後方こうほう 66ft （20.1m）
照明しょうめい	照明しょうめい灯とう - 8基き （完成かんせいしたかどうかは不明ふめい）
使用しようチーム • 開催かいさい試合しあい
国鉄こくてつスワローズ他た、東京とうきょう六ろく大学だいがく野球やきゅうリーグ戦せん
収容しゅうよう人員じんいん
51,000人にん 内訳うちわけ：特別とくべつ席せき3,300人にん、内野ないや席せき22,700人にん 外野席がいやせき25,000人にん
グラウンドデータ

歴史れきし

1951年ねん（昭和しょうわ26年ねん）、首都しゅと圏けんでは慢性まんせい的てきな球場きゅうじょう不足ふそくで、プロ野球やきゅう公式こうしき戦せんのほとんどは後楽園こうらくえん球場きゅうじょうで開催かいさいされていた。これには明治めいじ神宮じんぐう野球やきゅう場じょうが1952年ねん（昭和しょうわ27年ねん）まで進駐軍しんちゅうぐんに接収せっしゅうされており、シーズンオフの学生がくせい野球やきゅう以外いがいは日本人にっぽんじんが自由じゆうに使用しようすることができなかったという事情じじょうも背景はいけいにある。

グリーンパーク野球やきゅう場じょうは、こうした球場きゅうじょう不足ふそくを解消かいしょうし、プロ野球やきゅうの運営うんえいをよりスムーズにすることを目的もくてきとして、進駐軍しんちゅうぐんより返還へんかんされた国鉄こくてつ（現げん・JR東日本ひがしにっぽん）中央ちゅうおう本線ほんせん三鷹みたか駅えき北側きたがわの中島なかじま飛行機ひこうき武蔵むさし製作所せいさくしょ東ひがし工場こうじょう（旧きゅう武蔵野むさしの製作所せいさくしょ）跡地あとちに建設けんせつされた。 グリーンパークという名称めいしょうは、終戦しゅうせん直後ちょくごよりこの一帯いったいを接収せっしゅうしていたアメリカ軍ぐんが用もちいていた地名ちめいに由来ゆらいする。

当時とうじの公認こうにん野球やきゅう規則きそくに準拠じゅんきょした広ひろいグラウンドと5万まん人にんを超こえる収容しゅうよう能力のうりょくのスタンドを持もつ本格ほんかく的てきなスタジアムで、最大さいだいで1日にち3試合しあい開催かいさいすることを想定そうていして更衣ころもがえ室しつが広ひろく取とられたほか、売店ばいてん、喫茶店きっさてん、ビアホールなども併設へいせつされ、将来しょうらい的てきには宿舎しゅくしゃと練習れんしゅう場じょうも建設けんせつされる予定よていだったという。

経営けいえい母体ぼたいは武蔵野むさしの文化ぶんか都市とし建設けんせつ株式会社かぶしきがいしゃ（1950年ねん〈昭和しょうわ25年ねん〉に株式会社かぶしきがいしゃ東京とうきょうグリーンパークに改称かいしょう）という、旧きゅう中島なかじま飛行機ひこうきの残留ざんりゅう従業じゅうぎょう員いん労働ろうどう組合くみあいが1947年ねん（昭和しょうわ22年ねん）に土地とちの払はらい下さげを受うけて設立せつりつした会社かいしゃで、社長しゃちょうは公職こうしょく追放ついほうを受うけた直後ちょくごの松前まさき重義しげよし、役員やくいんには武者小路むしゃのこうじ実篤さねあつ、徳川とくがわ夢ゆめ声ごえ、近衛このえ秀麿ひでまろなど、錚々たる顔かおぶれが名なを連つらねた。また、武蔵むさし製作所せいさくしょへの引込線ひきこみせん跡あとを利用りようした、三鷹みたか駅えきから野球やきゅう場じょう前まえの武蔵野むさしの競技きょうぎ場じょう前まえ駅えきに至いたる中央ちゅうおう本線ほんせんの支線しせん（通称つうしょう「武蔵野むさしの競技きょうぎ場じょう線せん」）も1951年ねん（昭和しょうわ26年ねん）4月がつ14日にちに新設しんせつされ、競技きょうぎ開催かいさい日びには東京とうきょう駅えきからの直通ちょくつう列車れっしゃも運行うんこうされた。また、西武鉄道せいぶてつどうが東伏見ひがしふしみまで多摩川線たまがわせんを、京王帝都電鉄けいおうていとでんてつ（当時とうじ）が田無たなしまで井いの頭線かしらせんをそれぞれ延伸えんしんし、グリーンパークへのアクセスとする構想こうそうもあったが未成みせいとなっている。

当初とうしょより国鉄こくてつスワローズ（現げん・東京とうきょうヤクルトスワローズ）が本拠地ほんきょち球場きゅうじょうとして使用しようすることを想定そうていしていたという説せつもあるが、グリーンパークと国鉄こくてつ本社ほんしゃや球団きゅうだんとの間あいだに資本しほん関係かんけいや、そうした約束やくそくのようなものがあったとは確認かくにんされていない。なお、国鉄こくてつ球団きゅうだんの母体ぼたいとなった交通こうつう協力きょうりょく会かいが発行はっこうする「国鉄こくてつスポーツ」1951年ねん3月がつ25日にち号ごうには「このほど開ひらかれたセ・リーグ代表だいひょう者しゃ会議かいぎで国鉄こくてつスワローズのフランチャイズに承認しょうにん」と記しるされている。ただ、線路せんろを再さい整備せいびし特別とくべつ列車れっしゃを運行うんこうするなど、国鉄こくてつ側がわがグリーンパークに協力きょうりょく的てきだったことは事実じじつである。

三鷹みたか駅えき北口きたぐちからグリーンパーク野球やきゅう場じょうにかけての航空こうくう写真しゃしん。1956年ねん撮影さつえい。国鉄こくてつ武蔵野むさしの競技きょうぎ場じょう線せんの軌道きどうも確認かくにんできる。

グリーンパーク野球やきゅう場じょうで行おこなわれた東ひがし立りつ決勝けっしょう戦せん（1951年ねん4月がつ23日にち）

グリーンパーク野球やきゅう場じょうは、1951年ねん（昭和しょうわ26年ねん）4月がつ14日にちより2週間しゅうかんに亘わたり行おこなわれた東京とうきょう六ろく大学だいがくの春はるのリーグ戦せんで初はじめて使用しようされた。プロ野球やきゅうのこけら落おとしは同年どうねん5月5日にちに開催かいさいされた国鉄こくてつスワローズ対たい名古屋なごやドラゴンズ（現げん・中日ちゅうにちドラゴンズ）戦せんである。

しかし、工期こうきの限かぎられた突貫とっかん工事こうじだったことに加くわえて、フィールドと外野がいやスタンドの盛土もりつちは保水ほすい力りょくの乏とぼしいローム層そうのため、芝しばの生育せいいくが不完全ふかんぜんな状態じょうたいでの開場かいじょうとなり、新しん球場きゅうじょうのお披露目ひろめとなる5月がつの試合しあいでは突風とっぷうで砂塵さじんが飛とび交かうなどコンディション面めんでの決定的けっていてきな悪あく印象いんしょうを残のこしてしまう。さらに（開場かいじょう当時とうじの感覚かんかくでは）都心としんから遠とおい郊外こうがい地ちという地理ちり条件じょうけんもあって、選手せんしゅや観客かんきゃくからはあまり好意こうい的てきな評価ひょうかは得えられなかった。

また球場きゅうじょうの名称めいしょうも正式せいしきには「東京とうきょうスタディアム」、通称つうしょう（愛称あいしょう）を「武蔵野むさしのグリーンパーク」にすることが提案ていあんされたが、新聞しんぶん記事きじの文字数もじすうの制約せいやく上じょう難むずかしいと却下きゃっかされた。場所ばしょ柄がらの問題もんだいから、表記ひょうきもパ・リーグは「武蔵むさし野球やきゅう場じょう」、セ・リーグは「三鷹みたか球場きゅうじょう」と異ことなっているなど、呼称こしょうについても不ふ確定かくてい要素ようそが多おおく、ファンの認知にんち度ども上あがらなかった。

さらに不運ふうんなことに、翌よく1952年ねん（昭和しょうわ27年ねん）には神宮球場じんぐうきゅうじょうの接収せっしゅうが解除かいじょされ、川崎球場かわさききゅうじょうが開場かいじょう、1954年ねん（昭和しょうわ29年ねん）には駒沢こまざわ球場きゅうじょうが誕生たんじょうするなど、首都しゅと圏けんの野球やきゅう場じょう不足ふそくも緩和かんわされてしまった。地域ちいきフランチャイズ制度せいどが正式せいしきに導入どうにゅうされ、運賃うんちん収入しゅうにゅうが期待きたいできることから国鉄こくてつスワローズが最さい有力ゆうりょく候補こうほとみられていたが、専用せんよう球場きゅうじょうを持もてば集客しゅうきゃく力りょくの高たかい後楽園こうらくえんでの興行こうぎょう権けんを失うしなうため、都心としんのファンを捨すててまで地理ちり的てきに分ぶんの悪わるい武蔵野むさしのに本拠地ほんきょちを移うつすメリットはなかった。球場きゅうじょうの周囲しゅういでも、隣接りんせつする中島なかじま飛行機ひこうき武蔵むさし製作所せいさくしょ西にし工場こうじょう跡地あとちに米べい軍ぐん将校しょうこう住宅じゅうたくの建設けんせつが開始かいしされるなど、情勢じょうせいが刻々こくこくと変化へんかする戦後せんご占領せんりょう下かの混乱こんらん期きでもあり、運営うんえい会社かいしゃそのものが既すでに野球やきゅう場じょう経営けいえいに対たいする熱意ねついを失うしなっていたとも考かんがえられる。

かつて武蔵野むさしの競技きょうぎ場じょう線せんのレールがあった道みちは現在げんざいグリーンパーク遊歩道ゆうほどうとなっている。

こうした様々さまざまな不利ふりな条件じょうけんが重かさなったため、完成かんせいはしたもののほとんど使用しようされることなく打うち捨すてられ、結局けっきょくプロ野球やきゅうでは1951年ねん（昭和しょうわ26年ねん）の1シーズン16試合しあい、東京とうきょう六ろく大学だいがくも同年どうねんに19試合しあいが行おこなわれたのみで閉鎖へいさされることとなる。「武蔵野むさしの競技きょうぎ場じょう線せん」も翌よく1952年ねん（昭和しょうわ27年ねん）から休止きゅうし状態じょうたいとなり、1959年ねん（昭和しょうわ34年ねん）11月1日にちに正式せいしきに廃止はいしされた。廃はい線せん跡地あとちは緑みどり道みちとなっているが、玉川上水たまがわじょうすいにかかる人道じんどう橋きょうには廃はい線せん跡あとを示しめすため、線路せんろのモニュメントがある。

株式会社かぶしきがいしゃ東京とうきょうグリーンパークは、1953年ねん（昭和しょうわ28年ねん）に解散かいさんし、野球やきゅう場じょうは1956年ねん（昭和しょうわ31年ねん）に解体かいたいされた。跡地あとちは日本にっぽん住宅じゅうたく公団こうだんに売却ばいきゃくされて武蔵野むさしの緑町みどりちょう団地だんち（現げん・武蔵野むさしの緑町みどりちょうパークタウン）となり、現在げんざいでは円弧えんこ状じょうの外周がいしゅう道路どうろに囲かこまれた敷地しきち形状けいじょうにわずかな痕跡こんせきを留とめるのみである。

プロ野球やきゅう公式こうしき戦せん開催かいさい実績じっせき

いずれも変則へんそくダブルヘッダーで開催かいさい。

• 1951年ねん5月がつ5日にち 国鉄こくてつスワローズ 6-3 名古屋なごやドラゴンズ、読売よみうりジャイアンツ 0-1 名古屋なごやドラゴンズ
• 1951年ねん5月がつ6日にち 読売よみうりジャイアンツ 5-7 国鉄こくてつスワローズ、読売よみうりジャイアンツ 0-2 名古屋なごやドラゴンズ
• 1951年ねん6月がつ2日にち 国鉄こくてつスワローズ 6-2 大洋たいようホエールズ、読売よみうりジャイアンツ 1-6 松竹しょうちくロビンス
• 1951年ねん7月がつ16日にち 読売よみうりジャイアンツ 6-5 国鉄こくてつスワローズ、読売よみうりジャイアンツ 2-0 松竹しょうちくロビンス
• 1951年ねん8月がつ4日にち 国鉄こくてつスワローズ 4-0 松竹しょうちくロビンス、国鉄こくてつスワローズ 1-7 大阪おおさかタイガース
• 1951年ねん8月がつ5日にち 国鉄こくてつスワローズ 2-1 大阪おおさかタイガース、松竹しょうちくロビンス 0-3 大阪おおさかタイガース
• 1951年ねん8月がつ18日にち 大映だいえいスターズ 1-2 東急とうきゅうフライヤーズ、大映だいえいスターズ 2-7 毎日まいにちオリオンズ
• 1951年ねん8月がつ19日にち 大映だいえいスターズ 0-5 東急とうきゅうフライヤーズ、毎日まいにちオリオンズ 3-0 西鉄にしてつライオンズ

参考さんこう文献ぶんけん

• 榎本えのもと昌太郎しょうたろう「東京とうきょう新しん名所めいしょ グリーンパーク球場きゅうじょう」『旅たび』第だい25巻かん第だい7号ごう、日本交通公社にほんこうつうこうしゃ、1951年ねん7月がつ、56-58頁ぺーじ、ISSN 04921054、全国ぜんこく書誌しょし番号ばんごう:00014559。 

• 澤柳さわやなぎ政義まさよし『野球やきゅう場じょう建設けんせつの研究けんきゅう』新しん数学すうがく研究けんきゅう社しゃ、1951年ねん。 

脚注きゃくちゅう

関連かんれん項目こうもく

• 小沼おぬま丹まこと　近所きんじょに住すんでいた作家さっか。「幻まぼろしの球場きゅうじょう」という随筆ずいひつ作品さくひんで、本ほん球場きゅうじょうについての回想かいそうを記しるしている。本ほん球場きゅうじょうで開催かいさいされた1951年ねん5月がつ6日にちの巨人きょじん・国鉄こくてつ戦せんや、大学だいがく野球やきゅう、高校こうこう野球やきゅうを観戦かんせんしている（講談社こうだんしゃ文芸ぶんげい文庫ぶんこ『珈琲こーひー挽ひき』収録しゅうろく）。

外部がいぶリンク

• 武蔵野むさしのグリーンパーク｜球場きゅうじょう詳細しょうさい｜球場きゅうじょう情報じょうほう｜NPB.jp 日本にっぽん野球やきゅう機構きこう
• 現在げんざいの地図ちず（団地だんちとなっている跡地あとちが円形えんけいの道路どうろに囲かこまれており、当時とうじの位置いち関係かんけいがわかる）
• “楽らくコレ!アナクロですが<その7> 幻まぼろしの球場きゅうじょうをゆく”. 毎日新聞まいにちしんぶん. (2009年ねん11月12日にち). オリジナルの2009年ねん8月がつ16日にち時点じてんにおけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20091116064657/http://mainichi.jp/tanokore/column/002565.html 2018年ねん8月がつ26日にち閲覧えつらん。