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浅野造船所 - Wikipedia
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浅野あさの造船ぞうせん所しょ

浅野あさの造船ぞうせん所しょ（あさのぞうせんじょ）は、かつて横浜よこはま市しにあった浅野あさの財閥ざいばつの造船ぞうせん所しょ。1916年ねん（大正たいしょう5年ねん）に設立せつりつ、1940年ねん（昭和しょうわ15年ねん）に日本鋼管にほんこうかんと合併がっぺい。1995年ねん（平成へいせい7年ねん）に山内やまうち埠頭ふとうにあった浅野あさのドックは閉鎖へいさされた。

昭和しょうわ橋きょう銘板めいばん 中央ちゅうおうに浅野あさの造船ぞうせん所しょの社やしろ章あきら

概要がいよう

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浅野あさの総一郎そういちろう

セメント会社かいしゃで財ざいをなした浅野あさの総一郎そういちろうは、1896年ねん（明治めいじ29年ねん）7月がつに東洋とうよう汽船きせんを起おこし海運かいうん業ぎょうに進出しんしゅつした。海運かいうん業ぎょうの経営けいえいには造船ぞうせん所しょとの密接みっせつな関係かんけいが不可欠ふかけつと感かんじた浅野あさのは、自前じまえの造船ぞうせん所しょの建設けんせつを計画けいかくした。第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせんでの造船ぞうせん業ぎょうの活況かっきょうによって造船ぞうせん所しょを含ふくむ工業こうぎょう地帯ちたい建設けんせつのための埋うめ立たてが認可にんかされ、現在げんざいの川崎かわさき市しから横浜よこはま市し鶴見つるみ区くの沖合おきあいが埋うめ立たてられた（浅野あさの埋立うめたて）。そして、1916年ねん（大正たいしょう5年ねん）に横浜よこはま造船ぞうせん所しょ（直後ちょくごに浅野あさの造船ぞうせん所しょと改称かいしょう）を鶴見つるみの地ちに設立せつりつした。少すこしでも早はやく開業かいぎょうするために、埋うめ立たて工事こうじと同時どうじ進行しんこうで造船ぞうせん所しょ建設けんせつ工事こうじが行おこなわれた。浅野あさの総一郎そういちろうは当時とうじ69歳さいだったが、毎日まいにち夜明よあけに工事こうじ現場げんばに現あらわれて、出勤しゅっきんしてくる技師ぎしに様々さまざまな指示しじをした[1]。埋立うめたて工事こうじ開始かいしから造船ぞうせん所しょ建設けんせつを経へて最初さいしょの船ふねの進水しんすい式しきまでわずか15ヶ月かげつだったので、世界せかい最短さいたん記録きろくだと主張しゅちょうしている[2]。なお、ベンジャミン・ブロツキー (Benjamin Brodsky) の無声むせい映画えいが“Beautiful Japan”（『美うつくしき日本にっぽん』、1918年ねん）のシーンに浅野あさの造船ぞうせん所しょの進水しんすい式しきが映うつっている[3]。

戦時せんじの好こう況きょうにより船台せんだい6基きを有ゆうする造船ぞうせん所しょへと短期間たんきかんで成長せいちょうした。1917年ねん（大正たいしょう6年ねん）7月がつ、最初さいしょの進水しんすい式しきの後のちに、鶴見つるみの造船ぞうせん所しょから東京とうきょう三田みたの浅野あさの総一郎そういちろうの邸宅ていたくまで、5000人にんの職工しょっこうが提灯ちょうちん行列ぎょうれつして「浅野あさの造船ぞうせん所しょ万まん歳さい」と叫さけんだ[4]。前途ぜんと洋々ようように思おもえたのも束つかの間ま、1917年ねん（大正たいしょう6年ねん）8月がつのアメリカの鋼材こうざい輸出ゆしゅつ禁止きんし令れいにより、鋼材こうざい入手にゅうしゅが困難こんなんになった[5]。造船ぞうせんの注文ちゅうもんはいくらでもあるのに、材料ざいりょう不足ふそくのせいで残業ざんぎょうを廃止はいしし、職工しょっこうの数かずを65%に減へらした[6]。それで、鋼材こうざいを生産せいさんして自給じきゅうする為ために、造船ぞうせん所しょの隣となりに浅野あさの合資ごうし会社かいしゃ製鉄せいてつ部ぶを造つくった（1918年ねんに株式会社かぶしきがいしゃ浅野あさの製鉄せいてつ所しょに改名かいめい）。1918年ねん（大正たいしょう7年ねん）3月がつに、日本にっぽんとアメリカで船ふね鉄てつ交換こうかん契約けいやくが成立せいりつし、ある程度ていどの鋼材こうざい輸入ゆにゅうが可能かのうになった[7]。

1919年ねん（大正たいしょう8年ねん）11月に第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせんが終おわると、船舶せんぱく過剰かじょうとなって、造船ぞうせん不ふ況きょうにさらされ、その後ごの建造けんぞうは小型こがた船舶せんぱくが中心ちゅうしんとなった。1926年ねん（大正たいしょう15年ねん）には、造船ぞうせん所しょ創設そうせつの目的もくてきだった東洋とうよう汽船きせんが、旅客船りょかくせん部門ぶもんを日本郵船にっぽんゆうせんに譲渡じょうとするなど海運かいうん事業じぎょうを縮小しゅくしょうしている。他方たほうで、製鉄せいてつ所しょは、鋼材こうざい価格かかくの急落きゅうらくと造船ぞうせん鋼板こうはんの注文ちゅうもん減少げんしょうに苦くるしんだ。1920年ねん（大正たいしょう9年ねん）に浅野あさの造船ぞうせん所しょと浅野あさの製鉄せいてつ所しょが合併がっぺいした[8]。1921年ねん（大正たいしょう10年ねん）以降いこう、鉄道てつどうの客きゃく貨車かしゃ、オイルタンク、橋梁きょうりょう、水道すいどう管かんなどを制作せいさくした[9]。

政府せいふ主導しゅどうで殆ほとんどの製鉄せいてつ会社かいしゃ（官営かんえい八幡やはた製鉄せいてつ所しょ、三井みつい財閥ざいばつの輪西わにし製鉄せいてつ・釜石かまいし鉱山こうざん、三菱みつびし製鉄せいてつ、東洋とうよう製鉄せいてつ、九州製鋼きゅうしゅうせいこう、富士ふじ製鋼せいこう）が参加さんかした1934年ねん（昭和しょうわ9年ねん）の日本にっぽん製鉄せいてつ結成けっせいには、浅野あさの財閥ざいばつの日本鋼管にほんこうかん・浅野あさの小倉おぐら製鋼せいこう所しょ・浅野あさの造船ぞうせん所しょは参加さんかを拒否きょひした。その後ご1936年ねん（昭和しょうわ11年ねん）まで、政府せいふは溶鉱炉ようこうろ新設しんせつを浅野あさの財閥ざいばつに許可きょかしなかった[10][11]。昭和しょうわ10年代ねんだいに入はいって造船ぞうせんが好こう況きょうを取とり戻もどす中なか、1935年ねん（昭和しょうわ10年ねん）に同おなじ浅野あさの財閥ざいばつ系けいの日之出汽船ひのできせん（現げん：NYKバルク・プロジェクト貨物かもつ輸送ゆそう）のため長ちょう尺じゃく物ぶつ運搬うんぱん用よう日之出ひので型がた貨物かもつ船せん「八幡やはた丸まる」を建造けんぞうし、他社たしゃ建造けんぞうの派生はせい型がたも含ふくめ60隻せき以上いじょう量産りょうさんの成功せいこう作さくとなった[12]。しかし、会社かいしゃの中心ちゅうしん業務ぎょうむは造船ぞうせんから製鉄せいてつに移うつっており、1936年ねん（昭和しょうわ11年ねん）に社名しゃめいを鶴見つるみ製鉄せいてつ造船ぞうせんと改あらためた。1940年ねん（昭和しょうわ15年ねん）には立地りっちも生おい立たちも近ちかい浅野あさの財閥ざいばつの日本鋼管にほんこうかんと合併がっぺいし、造船ぞうせん所しょ名めいは日本鋼管にほんこうかん鶴見つるみ造船ぞうせん所しょとなった。

合併がっぺい後ごについては「JFEエンジニアリング#日本鋼管にほんこうかん」を参照さんしょう

正式せいしき名称めいしょうが「日本鋼管にほんこうかん鶴見つるみ造船ぞうせん所しょ」となった後のちも、山内やまうち埠頭ふとう（現在げんざいの横浜よこはま市し神奈川かながわ区く）に1923年ねん（大正たいしょう12年ねん）に開設かいせつされたドックは通称つうしょう「日本鋼管にほんこうかん浅野あさの船渠せんきょ」または「浅野あさのドック」[13][14]と呼よばれていた。建造けんぞうではないが、1956年ねん（昭和しょうわ31年ねん）3月がつから10月がつに海上保安庁かいじょうほあんちょうの灯台とうだい補給ほきゅう船せんであった「宗谷そうや」をこのドックで改造かいぞうし、これが初代しょだいの南極なんきょく観測かんそく船せんとなった[14]。ドックは1995年ねん（平成へいせい7年ねん）に閉鎖へいさされ、コットンハーバー地区ちくとして再さい開発かいはつされている[注ちゅう 1]。

沿革えんかく

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工事こうじ現場げんばを視察しさつする浅野あさの総一郎そういちろうの銅像どうぞう
  • 1916年ねん（大正たいしょう5年ねん）
    • 4月がつ - 鶴見つるみに (株かぶ) 横浜よこはま造船ぞうせん所しょ創立そうりつ。
    • 7月がつ - 造船ぞうせん所しょ建設けんせつ着手ちゃくしゅ。
    • 12月 - (株かぶ) 浅野あさの造船ぞうせん所しょに改称かいしょう。
  • 1917年ねん（大正たいしょう6年ねん）
    • 2月がつ - 第だい1船せん起工きこう。
    • 6月がつ - 浅野あさの合資ごうし会社かいしゃに製鉄せいてつ部ぶを新設しんせつ。
  • 1918年ねん（大正たいしょう7年ねん）4月がつ - 浅野あさの合資ごうし会社かいしゃ製鉄せいてつ部ぶを (株かぶ) 浅野あさの製鉄せいてつ所しょとして独立どくりつ。
  • 1920年ねん（大正たいしょう9年ねん）3月がつ - 浅野あさの造船ぞうせん所しょは浅野あさの製鉄せいてつ所しょを合併がっぺい。
  • 1921年ねん（大正たいしょう10年ねん）11月 - 航空こうくう母艦ぼかん「鳳おおとり翔しょう」進水しんすい。
  • 1923年ねん（大正たいしょう12年ねん） - 山内やまうち埠頭ふとうに浅野あさのドック開設かいせつ。
  • 1936年ねん（昭和しょうわ11年ねん）11月 - (株かぶ) 浅野あさの造船ぞうせん所しょを鶴見つるみ製鉄せいてつ造船ぞうせん (株かぶ) と改称かいしょう。
  • 1940年ねん（昭和しょうわ15年ねん）10月がつ - 日本にっぽん鋼管こうかんは鶴見つるみ製鉄せいてつ造船ぞうせんを合併がっぺい、日本鋼管にほんこうかん鶴見つるみ造船ぞうせん所しょとなる。
    合併がっぺい後ごについては「JFEエンジニアリング#日本鋼管にほんこうかん」を参照さんしょう
  • 1995年ねん（平成へいせい7年ねん） - 浅野あさのドック閉鎖へいさ。跡地あとちはコットンハーバー地区ちくとして再さい開発かいはつされる[注ちゅう 1]。

製品せいひん

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合併がっぺい後ごについては「JFEエンジニアリング#日本にっぽん鋼管こうかん 造船ぞうせん部門ぶもん」を参照さんしょう

脚注きゃくちゅう

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[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]
注釈ちゅうしゃく
  1. ^ a b 浅野あさのドック跡あと[14]の南西なんせい側がわに現在げんざいもドライドックが残のこされているが、これは浅野あさのドックとは異ことなり国土こくど交通省こうつうしょう関東かんとう地方ちほう整備せいび局きょくが所有しょゆうする「京浜けいひん港こうドック」（1926年ねん完成かんせい/2017年ねんに土木どぼく学会がっかい選奨せんしょう土木どぼく遺産いさんに認定にんてい[15][16]）である[17][18]。
出典しゅってん
  1. ^ 浅野あさの造船ぞうせん所しょ『我わが社しゃの生立おいたつ』昭和しょうわ10年ねん、27頁ぺーじ。
  2. ^ 浅野あさの造船ぞうせん所しょ『我わが社しゃの生立おいたつ』昭和しょうわ10年ねん、30〜31頁ぺーじ。
  3. ^ TREASURES FROM AM FILM ARCHIVE 07（TheNinaOのYouTube動画どうが）
  4. ^ 浅野あさの造船ぞうせん所しょ『我わが社しゃの生立おいたつ』昭和しょうわ10年ねん、33頁ぺーじ。
  5. ^ 浅野あさの造船ぞうせん所しょ『我わが社しゃの生立おいたつ』昭和しょうわ10年ねん、36頁ぺーじ。
  6. ^ 浅野あさの造船ぞうせん所しょ『我わが社しゃの生立おいたつ』昭和しょうわ10年ねん、37〜38頁ぺーじ。
  7. ^ 浅野あさの造船ぞうせん所しょ『我わが社しゃの生立おいたつ』昭和しょうわ10年ねん、38頁ぺーじ。
  8. ^ 浅野あさの造船ぞうせん所しょ『我わが社しゃの生立おいたつ』昭和しょうわ10年ねん、70頁ぺーじ。
  9. ^ 浅野あさの造船ぞうせん所しょ『我わが社しゃの生立おいたつ』昭和しょうわ10年ねん、50〜52頁ぺーじ。
  10. ^ 西野にしの入にゅう愛あい一いち『浅野あさの・渋沢しぶさわ・大川おおかわ・古河ふるかわコンツェルン読本とくほん』春秋しゅんじゅう社しゃ、1937年ねん、78頁ぺーじ。
  11. ^ 浅野あさの造船ぞうせん所しょ『我わが社しゃの生立おいたつ』昭和しょうわ10年ねん、81〜82頁ぺーじ。
  12. ^ 岩いわ重じゅう（2011年ねん）、45頁ぺーじ。
  13. ^ Ship repair at Yokohama in 1961 横浜よこはま（MichaelRoggeのYouTube動画どうが）
  14. ^ a b c 横浜よこはまでみつけた南極なんきょく（南極なんきょく観測かんそく船せん「宗谷そうや」誕生たんじょうの地ち）（南極なんきょくOB会かい：南極なんきょくつながりレポート）
  15. ^ 近代きんだい横浜よこはま港こうの整備せいびに大おおきな役割やくわりを果はたしている京浜けいひん港こうドックが【土木どぼく学会がっかい選奨せんしょう土木どぼく遺産いさん】に認定にんていされました！ (PDF) （国土こくど交通省こうつうしょう関東かんとう地方ちほう整備せいび局きょく 平成へいせい29年ねん〈2017年ねん〉9月がつ26日にち）
  16. ^ 悠悠ゆうゆう・土木どぼく / 土木どぼく遺産いさん / 京浜けいひん港こうドック（公益社こうえきしゃ団だん法人ほうじん 土木どぼく学会がっかい関東かんとう支部しぶ）
  17. ^ 横浜よこはま「京浜けいひん港こうドック」海うみの実験じっけん場じょうに　土木どぼく遺産いさん、未来みらい技術ぎじゅつ育はぐくむ（日刊にっかん工業こうぎょう新聞しんぶん〈電子でんし版ばん〉 2018年ねん3月がつ1日にち）
  18. ^ 土木どぼく遺産いさん　横浜よこはま・京浜けいひん港こうドック 埋うずもれた歴史れきし　朝鮮ちょうせん人じん労働ろうどう者しゃ 悲劇ひげきの跡あと　関東大震災かんとうだいしんさい後ご「虐殺ぎゃくさつ」標的ひょうてきに（東京とうきょう新聞しんぶん 2023年ねん10月がつ18日にち）
  19. ^ “クモハ２０号ごう解体かいたいのお知しらせ” (2007年ねん3月がつ7日にち). 2015年ねん8月がつ22日にち閲覧えつらん。

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 日本にっぽん鋼管こうかん株式会社かぶしきがいしゃ七なな十じゅう年ねん史し編纂へんさん委員いいん会かい『日本鋼管にほんこうかん株式会社かぶしきがいしゃ七なな十じゅう年ねん史し』日本鋼管にほんこうかん、1982年ねん。 
  • 岩いわ重じゅう多四郎たしろう『戦時せんじ輸送ゆそう船せんビジュアルガイド2―日ひの丸まる船隊せんたいギャラリー』大だい日本にっぽん絵画かいが、2011年ねん。 
  • 浅野あさの造船ぞうせん所しょ『我わが社しゃの生立おいたつ』昭和しょうわ10年ねん (1935年ねん) 12月出版しゅっぱん（渋沢しぶさわ社しゃ史しデータベース/国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかんデジタルコレクション）

関連かんれん項目こうもく

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