浅野あさの良三りょうぞう

浅野あさの 良三りょうぞう（あさの りょうぞう、1889年ねん（明治めいじ22年ねん）8月がつ28日にち - 1965年ねん（昭和しょうわ40年ねん）2月がつ9日にち）は日本にっぽんの実業じつぎょう家か。浅野あさの財閥ざいばつ創始そうし者しゃ浅野あさの総一郎そういちろうの次男じなん、父ちちの死後しごに兄あにの浅野あさの泰治やすじ郎ろうが財閥ざいばつ総帥そうすいの座ざについたが、浅野あさの良三りょうぞうが実質じっしつ的てきに財閥ざいばつを運営うんえいした。背せが高たかく容姿ようし端麗たんれい。英語えいごがペラペラで才気さいき煥発かんぱつ野心やしん満々まんまんで経営けいえい手腕しゅわんも優すぐれていた。

浅野あさの 良三りょうぞう
生誕せいたん	1889年ねん8月がつ28日にち 東京とうきょう都と
死没しぼつ	(1965-02-09) 1965年ねん2月がつ9日にち（75歳さい没ぼつ） 神奈川かながわ県けん川崎かわさき市し日本にっぽん鋼管こうかん病院びょういん
国籍こくせき	日本にっぽん
職業しょくぎょう	実業じつぎょう家か

経歴けいれき

教育きょういく

1889年ねん（明治めいじ22年ねん）に浅野あさの財閥ざいばつ創始そうし者しゃ浅野あさの総一郎そういちろうの次男じなんとして生うまれたが、「天下てんか無敵むてきの乱暴らんぼう者しゃ」で、何なん度ども父ちちから勘当かんどうだと怒おこられた。開成かいせい中学ちゅうがく（旧制きゅうせい）を卒業そつぎょうして一橋大学ひとつばしだいがくを受験じゅけんしたが、苦手にがてな英語えいごの問題もんだいが全まったく解わからなくて、自作じさくの都々逸どどいつを書かいて出だしたが不ふ合格ごうかくになった。そこでハーバード大学だいがくに留学りゅうがくしたが、大学だいがくではHasty Pudding Club, Phoenix, Stylus, the Kalumet Club, the OK Society, the Western Club その他たのクラブに入会にゅうかいしてとても社交しゃこう的てきに過すごした。大学だいがく図書館としょかんでたまたま出会であった小松こまつ隆たかしはそれ以後いご、浅野あさの良三りょうぞうの親友しんゆうかつ側近そっきんとなった。1912年ねん（明治めいじ45年ねん）にハーバード大学だいがくを卒業そつぎょうして、フランクリン・ルーズベルト（後ごの第だい32代だいアメリカ大統領だいとうりょう）と同窓どうそう（同おなじ大学だいがくの卒業生そつぎょうせい）になった。

浅野あさの財閥ざいばつで働はたらく

卒業そつぎょう後ご、東洋とうよう汽船きせんのサンフランシスコ支店してんで下級かきゅう社員しゃいんとして働はたらいた。若わかい頃ころの放蕩ほうとうは実じつに痛快つうかいの極きわみで、父親ちちおや（浅野あさの総一郎そういちろう）も呆あきれ果はてた程ほどだったが、総一郎そういちろうは一計いっけいを案あんじて、毎朝まいあさ五ご時じに財閥ざいばつの会議かいぎを開ひらき、良三りょうぞうが欠席けっせきすると雷かみなりを落おとした。良三りょうぞうは早起はやおきするために仕方しかたなく早寝はやねするようになり、深酒ふかざけや紅べに夢ゆめから遠とおざかって社務しゃむに専念せんねんするようになった。すると、昔むかしの放蕩ほうとうを知しる人ひとは隔世かくせいの感かんを抱だいたという。1918年ねん（大正たいしょう7年ねん）に浅野あさの良三りょうぞうは米国べいこくのグレース商会しょうかいと共同きょうどうで浅野あさの物産ぶっさんを資本しほん金きん百ひゃく万まん円えんで設立せつりつしたが、七なな百ひゃく万まん円えんの損失そんしつを出だして、浅野あさの総一郎そういちろうに大目玉おおめだまを食くらった。その時ときに橋本はしもと梅太郎うめたろうが浅野あさの物産ぶっさんを引ひき受うけて経営けいえいを改善かいぜんした。同年どうねんの末すえ頃ごろに日本鋼管にほんこうかんが浅野あさの製鉄せいてつ所しょに納入のうにゅうしたインゴットケース（鋼はがね塊かたまり）の品質ひんしつが悪わるくて、数すう回かいの使用しようで亀裂きれつができて使用しようできなくなったので、日本にっぽん鋼管こうかん社長しゃちょう白石しらいし元治郎もとじろうと浅野あさの製鉄せいてつ所しょ社長しゃちょう浅野あさの総一郎そういちろうが、代金だいきん四よん百ひゃく万まん円えんを払はらえ払ばらわぬで大だい喧嘩けんかになった。浅野あさの製鉄せいてつ所しょの副ふく社長しゃちょうだった浅野あさの良三りょうぞうがその交渉こうしょうに当あたったのだが義兄ぎけい白石しらいし元治郎もとじろうと父ちち浅野あさの総一郎そういちろうの板挟いたばさみになって苦くるしんだ。最後さいごに渋沢しぶさわ栄一えいいちと中村なかむら是ただし公おおやけが仲裁ちゅうさいしてなんとか治おさまった。

浅野あさの総一郎そういちろうは、1925年ねん（大正たいしょう14年ねん）に、東洋とうよう汽船きせんの北米ほくべい・南米なんべい定期ていき航路こうろの営業えいぎょう権けんと、定期ていき航路こうろの船舶せんぱく八はち隻せきおよび政府せいふ委託いたく船せん一いち隻せきを日本郵船にっぽんゆうせんに売却ばいきゃくして代金だいきんとして日本にっぽん郵船ゆうせん株かぶ12万まん5千せん株かぶを受うけ取とったが、東洋とうよう汽船きせんはその後ごも長年ながねん経営けいえい難なんに喘あえいでいた。そこで1933年ねん（昭和しょうわ8年ねん）に、浅野あさの良三りょうぞうはまず東洋証券とうようしょうけんを設立せつりつして代金だいきんの日本郵船にっぽんゆうせん株かぶを同社どうしゃに売却ばいきゃくして安田やすだ銀行ぎんこう借入金かりいれきんを肩代かたがわりさせ、次つぎに東洋とうよう海運かいうんを設立せつりつすると東洋とうよう汽船きせんの船舶せんぱく全部ぜんぶを同社どうしゃに定期ていき貸かし舟ふねにして配当はいとうを復活ふっかつさせた。こうして責任せきにんを果はたすと、浅野あさの良三りょうぞうと白石しらいし元治郎もとじろうは同社どうしゃを辞任じにんして無関係むかんけいになった。浅野あさの良三りょうぞうは、不ふ況きょうに対応たいおうして1934年ねん（昭和しょうわ9年ねん）上期かみきに浅野あさの造船ぞうせん所しょの資本しほん金きんを5000万まん円えんから1250万まん円えんに大幅おおはばに減資げんししたが、鉄鋼てっこう需要じゅようが回復かいふくすると1936年ねん（昭和しょうわ11年ねん）11月に、既すでに造船ぞうせんより製鉄せいてつが主体しゅたいになっていたので、浅野あさの造船ぞうせん所しょを鶴見つるみ製鉄せいてつ造船ぞうせんに改称かいしょうし、「浅野あさの」をなくして財閥ざいばつ批判ひはんをかわし、株式かぶしきを公開こうかいし一般いっぱん大衆たいしゅう資本しほんを動員どういんして、資本しほん金きんを二に倍ばいの2500万まん円えんに増資ぞうしして全額ぜんがく払込はらいこみし、1937年ねん（昭和しょうわ12年ねん）10月がつには、さらに二に倍ばいの5000万まん円えんに増資ぞうしした。また、既存きそんの200トンと350トンの溶鉱炉ようこうろに加くわえて、新あらたに450トンの溶鉱炉ようこうろを建設けんせつし、製せい板ばん工場こうじょうを拡張かくちょうして、鋼板こうはん製造せいぞう能力のうりょくでは日本にっぽん製鐵せいてつを凌しのぐ会社かいしゃにしただけでなく、溶鉱炉ようこうろから鉄てつを造つくりそれを用もちいて船ふねや機械きかいを造つくる一貫いっかん生産せいさん能力のうりょくがある日本にっぽん唯一ゆいいつの会社かいしゃに育そだてた。それで経営けいえい手腕しゅわんや努力どりょくで浅野あさの財閥ざいばつの代表だいひょうと言いわれた<。戦時せんじ体制たいせい強化きょうかのため同おなじ地域ちいきの製鉄せいてつ会社かいしゃが合併がっぺいするように政府せいふが要請ようせいしたので、義理ぎりの兄あにと弟おとうとである白石しらいし元治郎もとじろうと浅野あさの良三りょうぞうは、1940年ねん（昭和しょうわ15年ねん）10月がつに日本鋼管にほんこうかんと鶴見つるみ製鉄せいてつ造船ぞうせんを合併がっぺいして、日本にっぽん鋼管こうかんを浅野あさの財閥ざいばつ最大さいだいの鉄鋼てっこう会社かいしゃにすると、白石しらいし元治郎もとじろうが社長しゃちょうに浅野あさの良三りょうぞうは副ふく社長しゃちょうに就任しゅうにんした。1942年ねん（昭和しょうわ17年ねん）6月がつ25日にちに、白石しらいし元治郎もとじろうが会長かいちょうに浅野あさの良三りょうぞうが社長しゃちょうに就任しゅうにんした。

浅野あさの財閥ざいばつの再建さいけん

第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせんの好景気こうけいき大戦たいせんブームの後のち、1920年ねん（大正たいしょう9年ねん）に反動はんどう恐慌きょうこう、1923年ねん（大正たいしょう12年ねん）に震災しんさい恐慌きょうこう、1927年ねん（昭和しょうわ2年ねん）に金融きんゆう恐慌きょうこう、1930年ねん（昭和しょうわ5年ねん）に昭和しょうわ恐慌きょうこうが次々つぎつぎに発生はっせいして日本にっぽん経済けいざいは急速きゅうそくに悪化あっかしていったが、それに伴ともなって浅野あさの財閥ざいばつ傘下さんか企業きぎょうの経営けいえい状態じょうたいもどんどん悪化あっかしていった。1930年ねん（昭和しょうわ5年ねん）11月9日にちに没ぼっした浅野あさの総一郎そういちろうは莫大ばくだいな借金しゃっきんを残のこした。浅野あさの財閥ざいばつ本社ほんしゃは払込はらいこみ資本しほん金きんの1.8倍ばいの借金しゃっきんを抱かかえていた。そこで浅野あさの良三りょうぞう、浅野あさの泰治やすじ郎ろう、浅野あさの八郎はちろう、浅野あさの義夫よしお、白石しらいし元治郎もとじろう、鈴木すずき紋次郎もんじろう、金子かねこ喜代太きよた、穂積ほづみ重しげる威たけし、馬杉ますぎ秀しげる、清水しみず幸一郎こういちろう(圭一けいいち郎ろう)ら一族いちぞくが一致いっち団結だんけつし、安田やすだ財閥ざいばつの支援しえんを受うけながら、満州まんしゅう事変じへん以後いごの景気けいき回復かいふくに助たすけられて、なんとか浅野あさの財閥ざいばつを再建さいけんした。具体ぐたい的てきには、南みなみ武たけし鉄道てつどうに五日市いつかいち鉄道てつどうを合併がっぺいさせ、浅野あさのセメントに日本にっぽんセメントと土佐とさセメントを吸収きゅうしゅう合併がっぺいさせて、磐城いわき炭鉱たんこうには第だい二に磐城いわき炭鉱たんこうを吸収きゅうしゅう合併がっぺいさせて、国策こくさくに従したがって発電はつでん設備せつびを日本にっぽん発はつ送電そうでんに売却ばいきゃくした後のちで関東かんとう水力すいりょく電気でんきと浅野あさのカーリットと関せき水みず興業こうぎょうを一ひとつにまとめて関東かんとう電気興業でんきこうぎょうにした。神奈川かながわコークスを東京瓦斯とうきょうがすに売却ばいきゃくし利益りえきを得えた。また、発電はつでん所しょが完成かんせいすると庄川しょうがわ水力すいりょく電気でんきの持株もちかぶを日本にっぽん電力でんりょくに売却ばいきゃくして利益りえきを得えた。さらに大だい日本にっぽん鉱業こうぎょうの持株もちかぶを住友すみとも合資ごうし会社かいしゃに売却ばいきゃくして整理せいりし、富士ふじ製鋼せいこうを日本にっぽん製鐵せいてつ結成けっせいに参加さんかさせて処分しょぶんし、大島おおしま製鋼せいこう所しょを日にち曹製鋼こうに売却ばいきゃくし、武蔵野むさしの鉄道てつどうを整理せいりした。経営けいえい難なんが続つづく東洋とうよう汽船きせんに関かんしては、1933年ねんに東洋証券とうようしょうけんを設立せつりつして安田やすだ銀行ぎんこうの借入金かりいれきんを肩代かたがわりさせ、さらに東洋とうよう海運かいうんを設立せつりつして東洋とうよう汽船きせん持じ船せん全部ぜんぶを定期ていき貸かし船せんにして、復配ふくはいに成功せいこうした。朝鮮ちょうせん鉄山てつざんを十じゅう分ぶんの一いちに減資げんしして繰越くりこし損失そんしつを埋うめ、さらに、鉄てつ鉱区こうくを浅野あさの造船ぞうせん所しょに売却ばいきゃくした。石油せきゆ精製せいせい業ぎょうの内外ないがい石油せきゆは採算さいさんが合あわないので開業かいぎょう前まえに事業じぎょうを中止ちゅうしした。小倉こくら製鋼せいこうの4万まん株かぶを売却ばいきゃくし、さらに関東かんとう水力すいりょく電気でんきの4万まん株かぶも売却ばいきゃくして、その利益りえきを安田やすだ財閥ざいばつの安田やすだ銀行ぎんこうと日本にっぽん昼夜ちゅうや銀行ぎんこうからの借金しゃっきん返済へんさいに当あてた。浅野あさの造船ぞうせん所しょは減資げんしして繰越くりこし損金そんきんを一掃いっそうした。また財閥ざいばつ本社ほんしゃである浅野あさの同族どうぞく会社かいしゃを精算せいさんし解散かいさんして、臨時りんじの代替だいたい会社かいしゃとして浅野あさの興業こうぎょう株式会社かぶしきがいしゃを設立せつりつする事ことに、安田やすだ財閥ざいばつの賛成さんせいを得える。さらに、浅野あさの興業こうぎょうが室蘭むろらん埋うめ築きずけを買収ばいしゅうして少すこし規模きぼを拡大かくだいする事ことを決定けっていした。

ルーズベルト大統領だいとうりょうと外交がいこう交渉こうしょう・開戦かいせん前まえ

ハーバード大学だいがくではハル・ルーズベルト(Hall Roosevelt)と同期どうきだったが、この人物じんぶつはフランクリン・ルーズベルトの妻つまエレノア・ルーズベルトの弟おとうとだったので、1911年ねん（明治めいじ44年ねん）に浅野あさの良三りょうぞうはハルと共ともにカンポベロ島とうにある別荘べっそうに招まねかれたことがあった。1931年ねん（昭和しょうわ6年ねん）9月がつに満州まんしゅう事変じへんが勃発ぼっぱつすると日米にちべい関係かんけいはどんどん悪化あっかしていったが、そのような時期じきに日本にっぽん政府せいふは非公式ひこうしきな外交がいこうルートで日米にちべい関係かんけいの悪化あっかを食くい止とめようとしていた。1932年ねん（昭和しょうわ7年ねん）11月に浅野あさの良三りょうぞうは、フランクリン・ルーズベルトに大統領だいとうりょう就任しゅうにん祝いわいの手紙てがみを送おくって、心しんのこもった返礼へんれいの手紙てがみを受うけ取とった。1933年ねん（昭和しょうわ8年ねん）の夏なつにルーズベルト大統領だいとうりょう（ハーバード卒そつ）は、浅野あさの良三りょうぞうの提案ていあんに従したがって、良三りょうぞうの同僚どうりょう小松こまつ隆たかし（ハーバード卒そつ）と話はなし合あった、そして、浅野あさの良三りょうぞうがワシントンDCを訪問ほうもんする際さいに、ホワイトハウスに来くるように招まねいた。1934年ねん（昭和しょうわ9年ねん）1月がつに浅野あさの良三りょうぞうがルーズベルトに手紙てがみを出だして松方まつかた乙彦おとひこ（ハーバード卒そつ）と会見かいけんするように求もとめたので、2月がつ18日にちと20日はつかにルーズベルトは松方まつかた乙彦おとひこと約やく一いち時じ間あいだにわたって話はなし合あった。その時ときに松方まつかたはタイプした長ながい覚書おぼえがきを持参じさんし、この内容ないようは個人こじん的てきな見解けんかいだが日本にっぽん政府せいふの多おおくの人ひとの意見いけんを反映はんえいしたものだと語かたった。その覚書おぼえがきの内容ないようは、5・15事件じけんや満州まんしゅう事変じへんは若わかい将校しょうこうが起おこした悲かなしむべき事件じけんだが、今いまや安定あんていした内閣ないかくが成立せいりつして日本にっぽんは正常せいじょうに戻もどりつつあり、軍部ぐんぶは政府せいふから権力けんりょくを奪うばい取とるつもりはないし、日本にっぽんは満州まんしゅうを併合へいごうするつもりもない、そして、米国べいこくは中国ちゅうごくびいきだが、日本にっぽんと中国ちゅうごくを公平こうへいに扱あつかえば緊張きんちょう状態じょうたいは解消かいしょうされるだろうし、米国べいこく艦隊かんたいが太平洋たいへいようから退去たいきょすれば日本人にっぽんじんはとても喜よろこぶだろうというものだった。ルーズベルトはこの覚書おぼえがきを国務こくむ長官ちょうかんコーデル・ハルと国務省こくむしょうのスタンリー・クール・ホーンベックに渡わたして意見いけんを求もとめた。ホーンベックは、非公式ひこうしきルート外交がいこうの悪あしき先例せんれいになるので松方まつかたに二度にどと合あわないように進言しんげんし、ルーズベルトはそれに従したがった。国務省こくむしょうは浅野あさの良三りょうぞうとの会談かいだんにも反対はんたいしたが、ルーズベルトはそれには従したがわなかったので、ジュネーブでの国際こくさい労働ろうどう会議かいぎの帰途きと、1934年ねん（昭和しょうわ9年ねん）5月がつに浅野あさの良三りょうぞうはホワイトハウスを訪問ほうもんして約やく一いち時じ間あいだルーズベルトと会談かいだんした。その内容ないようは不明ふめいだが、浅野あさの良三りょうぞうは後のちに「我わが国民こくみんと我わが国くにに対たいする親切しんせつなご意見いけん」に感謝かんしゃする手紙てがみをルーズベルトに送おくった。1935年ねん（昭和しょうわ10年ねん）には、浅野あさの良三りょうぞうは手紙てがみで、岡田おかだ忠彦ただひこと竹下たけした提督ていとくに会あうようルーズベルトに求もとめたが実現じつげんしなかった。

1935年ねん（昭和しょうわ10年ねん）、フォード自動車じどうしゃが工場こうじょう建設けんせつのために、浅野あさの財閥ざいばつの鶴見つるみ埋立うめたて地ち11万まん坪つぼを買収ばいしゅうしようとした。陸軍りくぐんはこれを察知さっちすると、浅野あさの良三りょうぞうを呼よび出だして売買ばいばい中止ちゅうしを勧告かんこくし、商工しょうこう省しょうも土地とち売買ばいばいに反対はんたいした。その時ときたまたま陸軍りくぐん大臣だいじんが満州まんしゅうに赴おもむいたので、帰国きこくまでは契約けいやくしないように、陸軍りくぐん大臣だいじんと商工しょうこう大臣だいじんが正式せいしきな通達つうたつを出だした。ところが、陸軍りくぐん大臣だいじんが帰国きこくすると、浅野あさの良三りょうぞうは陸軍りくぐんや商工しょうこう省しょうの勧告かんこくに逆さからって無断むだんで土地とちを売却ばいきゃくした。1939年ねん（昭和しょうわ14年ねん）には、自給自足じきゅうじそくによる国防こくぼう強化きょうかのためには、南洋なんようから輸入ゆにゅうした鉄鉱てっこう石せき（富鉱ふこう）を日本にっぽん本土ほんどで製鉄せいてつするよりも、満州まんしゅう産さんの鉄鉱てっこう石せきを満州まんしゅうで製鉄せいてつすべきだという意見いけんが一部いちぶで唱となえられていた。鶴見つるみ製鉄せいてつ造船ぞうせん社長しゃちょうとして浅野あさの良三りょうぞうはそれに反対はんたいし、満州まんしゅう産さんの鉄鉱てっこう石せき（貧鉱ひんこう）の利用りようは技術ぎじゅつ的てき困難こんなんが多おおい、陸路りくろが多おおい満州まんしゅうからの輸送ゆそうは船舶せんぱくによる南洋なんようからの輸送ゆそうよりも割高わりだかになる、とにかく鉄鋼てっこう生産せいさん量りょうを増ふやすのが重要じゅうようだと述のべた。

太平洋戦争たいへいようせんそう

1941年ねん（昭和しょうわ16年ねん）には鉄鋼てっこう統制とうせい会かいの評議ひょうぎ員いんに就任しゅうにんした。日本にっぽん鋼管こうかん浅野あさのドックの労働ろうどう者しゃは「うちはアメリカと縁えんが深ふかいから空襲くうしゅうされない」と公言こうげんしていたが、1942年ねん4月がつにドーリットル空襲くうしゅうで日本にっぽん鋼管こうかんの鶴見つるみ製鉄せいてつ所しょ（あるいは川崎製鉄かわさきせいてつ所しょ）が爆撃ばくげきされて、3人にんが死亡しぼうし数すう人にんが負傷ふしょうし、1945年ねん2月がつにも空襲くうしゅうされ、1945年ねん4月がつ18日にちの空襲くうしゅうでは工場こうじょうは大だい損害そんがいを受うけて2名めいが死亡しぼうした。同年どうねん6月がつ以降いこうは扇町おうぎまちのコークス工場こうじょうや化工かこう工場こうじょうが空襲くうしゅうされ後者こうしゃは壊滅かいめつ的てき被害ひがいを受うけて、圧延あつえん工場こうじょうも大だい部分ぶぶんが破壊はかいされ、離はなれた地区ちくにある鶴見つるみ造船ぞうせん所しょも空襲くうしゅうで破壊はかいされた。それだけでなく海外かいがいはもちろん北海道ほっかいどうや九州きゅうしゅうからの石炭せきたん・鉄鉱てっこう石せきも補給ほきゅうが途絶とだえて生産せいさん活動かつどうが不可能ふかのうになった。

戦後せんご

終戦しゅうせん時じの東ひがし久邇くに宮内くない閣かくでは、大蔵おおくら大臣だいじんのアドバイザーを務つとめた。終戦しゅうせん直後ちょくごにはGHQの将校しょうこうを宴会えんかいで接待せったいして理解りかいを求もとめ、同情どうじょうを得えることに成功せいこうした。また、米国べいこくの雑誌ざっし『ライフ』の取材しゅざいを受うけて、財閥ざいばつは軍部ぐんぶや戦争せんそうに反対はんたいしたと主張しゅちょうして、米国べいこくで報道ほうどうされた。その際さいに、ドーリットル空襲くうしゅうの後のちに浅野あさのが日本にっぽん鋼管こうかんの被害ひがいを視察しさつしている写真しゃしんや、自宅じたくの和室わしつでくつろいでいる写真しゃしんや、近衛このえ文麿ふみまろと浅野あさのが会談かいだんしている写真しゃしんなども掲載けいさいされた。終戦しゅうせんによって軍需ぐんじゅが消滅しょうめつして鉄てつの需要じゅようが殆ほとんどなくなったため、日本にっぽん鋼管こうかんの経営けいえい陣じんは大だい部分ぶぶんの労働ろうどう者しゃの解雇かいこを決きめた。そして段階だんかい的てきに実行じっこうしている最中さいちゅうに、労働ろうどう者しゃは生産せいさん管理かんりという方法ほうほうでストライキを行おこなった。さらに1946年ねん（昭和しょうわ21年ねん）1月がつ26日にちあるいは30日にちに、日本にっぽん鋼管こうかん鶴づる鉄てつ労働ろうどう組合くみあいの1600名めいが神田かんだ橋きょうの本社ほんしゃにデモ行進こうしんして、社長しゃちょうの浅野あさの良三りょうぞうや重役じゅうやくたちと集団しゅうだん交渉こうしょうを行おこなった。その際さいに浅野あさの良三りょうぞうは暴力ぼうりょくを振ふるわれ、負傷ふしょうして病院びょういんに入院にゅういんしたと報ほうじられた。それにもかかわらずGHQのセオドア・コーエン（テオドール・コーエン）は労働ろうどう組合くみあいとストライキを支持しじした。1946年ねん（昭和しょうわ21年ねん）4月がつ末まつに浅野あさの良三りょうぞうは日本鋼管にほんこうかんの社長しゃちょうを辞任じにんし、小松こまつ隆たかしは日本鋼管にほんこうかんの副ふく社長しゃちょうを辞任じにんした。二に代目だいめ総帥そうすいの浅野あさの泰治やすじ郎ろうの代かわりに、浅野あさの良三りょうぞうが持株もちかぶ会社かいしゃ整理せいり委員いいん会かいの聴取ちょうしゅに応おうじて、日本にっぽん鋼管こうかんの筆頭ひっとう株主かぶぬしは浅野あさのとは無関係むかんけいな保険ほけん会社かいしゃであるとか、浅野あさの本社ほんしゃ（財閥ざいばつ本社ほんしゃ）は傘下さんかの会社かいしゃを指揮しきしないし、傘下さんかの企業きぎょうはそれぞれバラバラに活動かつどうし縦たてや横よこの繋つながりも無ないので米国べいこくが考かんがえる「財閥ざいばつ」には該当がいとうしないと述のべた。

戦後せんごの財閥ざいばつ解体かいたい、公職こうしょく追放ついほうを経へて、追放ついほう中ちゅうの1948年ねん（昭和しょうわ23年ねん）10月がつ、兵器へいき処理しょり問題もんだいに関かんし、衆議院しゅうぎいん不当ふとう財産ざいさん取引とりひき調査ちょうさ特別とくべつ委員いいん会かいに証人しょうにん喚問かんもんされた。1950年ねん（昭和しょうわ25年ねん）に追放ついほう解除かいじょ。復帰ふっき後ごは、1951年ねん（昭和しょうわ26年ねん）12月から1965年ねん（昭和しょうわ40年ねん）まで浅野あさの学園がくえん理事りじ長ちょうを務つとめ、それとほぼ同時どうじに、1952年ねん（昭和しょうわ27年ねん）から1964年ねん（昭和しょうわ39年ねん）にかけて萱場かやば工業こうぎょう（カヤバ）の社長しゃちょうを務つとめ、その後ご数すうヶ月かげつ間あいだ会長かいちょうを務つとめた。1965年ねん（昭和しょうわ40年ねん）に会長かいちょう職しょくについたまま日本鋼管にほんこうかん病院びょういん（旧きゅう浅野あさの財閥ざいばつ）で死去しきょした。

役職やくしょく

鶴見つるみ製鉄せいてつ造船ぞうせん（日本鋼管にほんこうかんと合併がっぺい、JFE、ジャパンマリンユナイテッド）・東洋とうよう汽船きせん・東洋とうようフィルム（大正たいしょう活かつ映うつ）・日本にっぽん鋼管こうかん(現げんJFEホールディングス)・南みなみ武たけし鉄道てつどう(JR南武線なんぶせん)・浅野あさの雨龍うりゅう炭鉱たんこうの社長しゃちょう、東京商工会議所とうきょうしょうこうかいぎしょ常つね議員ぎいん、浅野あさの中学校ちゅうがっこう・高等こうとう学校がっこう理事りじ長ちょうを歴任れきにんした。

文化ぶんか活動かつどう

日米にちべい協会きょうかい終身しゅうしん会員かいいんで、東京とうきょうハーバードクラブのプレジデントを務つとめた。

趣味しゅみはゴルフで、日本にっぽんゴルフ協会きょうかいの実行じっこう委員いいんとして、関東かんとうゴルフ連盟れんめい設立せつりつに関かかわった。また横浜よこはま市しの程ほどヶ谷たにカントリー倶楽部くらぶ設立せつりつに関かかわった。

アメリカンフットボール関東かんとう連盟れんめい会長かいちょうも務つとめ、関西学院大学かんせいがくいんだいがくアメリカンフットボール部ぶ設立せつりつに際さいして、「大枚たいまい2千せん円えん」を寄付きふした。2005年ねん（平成へいせい17年ねん）5月がつに故こ浅野あさの良三りょうぞうと遺族いぞくに感謝かんしゃ状じょうと記念きねん品ひんが贈呈ぞうていされた。

栄典えいてん

1965年ねん（昭和しょうわ40年ねん） 2月がつ2日にち - 勲くん二に等とう瑞宝章ずいほうしょう

家族かぞく

• 良よ一いち 1917年ねん（大正たいしょう6年ねん）3月がつ生うまれ 東大とうだい機械きかい科か卒そつ 三菱重工みつびしじゅうこう横浜よこはま船渠せんきょと日本にっぽん鋼管こうかん浅野あさの船渠せんきょに勤務きんむ父ちちの没後ぼつごに浅野あさの学園がくえん理事りじ長ちょうに就任しゅうにんした。
• 開ひらき作さく 1926年ねん（大正たいしょう15年ねん）4月がつ生うまれ 東北大学とうほくだいがく卒そつ 萱場かやば工業こうぎょう取締役とりしまりやく萱場かやば工業こうぎょう専務せんむ日本にっぽん鉱こう機き会長かいちょう。ハーバード大学だいがくでMBAを取得しゅとくした最初さいしょの日本人にっぽんじん。
• 歌子うたこ 荒木あらき貞夫さだおの長男ちょうなん、荒木あらき貞さだ発はつに嫁かす。

参考さんこう文献ぶんけん

• 齋藤さいとう憲けん『稼かせぐに追おいつく貧乏びんぼうなし : 浅野あさの総一郎そういちろうと浅野あさの財閥ざいばつ』東洋経済新報社とうようけいざいしんぽうしゃ、1998年ねん。ISBN 4492061061。 NCID BA38856030。 
• 東亜建設工業とうあけんせつこうぎょう株式会社かぶしきがいしゃ『東京とうきょう湾わん埋立うめたて物語ものがたり』東亜建設工業とうあけんせつこうぎょう、1989年ねん。doi:10.11501/13093931。全国ぜんこく書誌しょし番号ばんごう:92043546。https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/13093931。 
• 日本にっぽん鋼管こうかん株式会社かぶしきがいしゃ『日本にっぽん鋼管こうかん株式會社かぶしきがいしゃ四よん十じゅう年ねん史し』日本鋼管にほんこうかん、1952年ねん。doi:10.11501/2464787。全国ぜんこく書誌しょし番号ばんごう:53010654。https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2464787。