爾しか雅みやび

儒家じゅか経典きょうてん
五経ごきょう	伝つて
九きゅう経けい
易えき書しょ詩し礼れい（儀礼ぎれい/周しゅう礼あや）春秋しゅんじゅう	礼れい記き春秋しゅんじゅう左ひだり氏し伝でん春秋しゅんじゅう公こう羊ひつじ伝でん春秋しゅんじゅう穀こく梁りょう伝つたえ
七なな経けい	十じゅう二に経けい
論語ろんご孝こう経けい	爾しか雅みやび
	十じゅう三さん経けい
	孟子もうし

爾しか雅みやび（じが、拼音: Ěryǎ）は、中国ちゅうごく最古さいこの類語るいご辞典じてん・語釈ごしゃく辞典じてん・訓詁くんこ学がく書しょ。

儒教じゅきょうでは周しゅう公こう制作せいさく説せつがあるが、春秋しゅんじゅう戦国せんごく時代じだい以降いこうに行おこなわれた古典こてんの語義ごぎ解釈かいしゃくを漢かん初はつの学者がくしゃが整理せいり補充ほじゅうしたものと考かんがえられている。『漢書かんしょ』芸文げいぶん志こころざしには3巻かん20篇へんと記載きさいされているが、現行げんこう本ほんは19篇へんである。

漢かん唐とうの古こ文学ぶんがくや清朝せいちょう考証こうしょう学がくにおいて特とくに重視じゅうしされ、十じゅう三さん経けいの一ひとつにも挙あげられている。唐とう代だいには石経いしきょう（開成かいせい石経いしきょう）にも刻きざまれた。

構成こうせい

巻頭かんとう3篇へんは同義語どうぎごを分類ぶんるいしたもの。これらは例たとえば「初はつ・哉・首しゅ・基もと・肇はじめ・祖そ・元もと・胎・俶・落・権輿けんよは始はじめという意味いみである」（釈しゃく詁）という形式けいしきをとる。「釈しゃく詁」篇へんは古人こじんが用もちいた同義語どうぎごを分類ぶんるいし、「釈しゃく言げん」篇へんは日常にちじょう語ごを、「釈しゃく訓さとし」篇へんはオノマトペを主おもとする連綿れんめん語ご（2音節おんせつ語ご）などの同義語どうぎごを分類ぶんるいしている。

以後いごの「釈しゃく親ちかし」「釈しゃく宮みや」「釈しゃく器き」「釈しゃく楽らく」「釈しゃく天たかし」「釈しゃく地ち」「釈しゃく丘たかし」「釈山しゃくやま」「釈しゃく水みず」「釈しゃく草くさ」「釈しゃく木き」「釈しゃく蟲むし」「釈しゃく魚ぎょ」「釈しゃく鳥とり」「釈しゃく獣じゅう」「釈しゃく畜」は、事物じぶつの名前なまえや語義ごぎを解説かいせつしている。

「釈しゃく畜」では牛うしや馬うまの毛色けいろに基もとづく品種ひんしゅ分類ぶんるいが述のべられており、当時とうじの畜産ちくさん技術ぎじゅつが窺うかがえる^[1]。同様どうようの分類ぶんるいは敦あつし煌懸泉いずみ漢かん簡『伝馬てんま名籍めいせき』や居きょ延のべ漢かん簡にも見みられる^[2]。

後世こうせいの受容じゅよう

『爾しか雅みやび』の注釈ちゅうしゃくとして、西にし晋すすむの郭かく璞の注ちゅうと北きた宋そうの邢昺疏からなる『爾しか雅みやび注疏ちゅうそ』（『十じゅう三さん経けい注疏ちゅうそ』所収しょしゅう）、清きよしの邵晋涵『爾しか雅まさ正義まさよし』、郝懿行ぎょう『爾しか雅義まさよし疏』などがある。

『爾しか雅みやび』の不足ふそくを補おぎなう書物しょもつとして、著者ちょしゃ不明ふめいの『小しょう爾なんじ雅みやび』や魏たかしの張ちょう揖『広こう雅みやび』がある。北きた宋そうの陸りく佃つくだ『埤雅』や南みなみ宋そうの羅ら願ねがい『爾しか雅まさ翼つばさ』はいずれも動植物どうしょくぶつ名めいを『爾しか雅みやび』の篇へん立だてにならって分類ぶんるい・解説かいせつしている。明あきらの朱しゅ謀はかりごと㙔『駢雅』は連綿れんめん語ごを専せん門もんに集あつめた書物しょもつである。明あきら末清すえきよ初はつの方ほう以智『通つう雅みやび』は名物めいぶつ学がくに秀ひいでる^[3]。

日本にっぽん

日本にっぽんでは律令制りつりょうせいの大だい学寮がくりょうにおいて、『文選ぶんせん』・正史せいしと並ならんで紀伝きでん道どう（文章ぶんしょう道どう）の教科書きょうかしょとして重おもんじられた。『爾しか雅みやび』を規範きはんとして平安へいあん中期ちゅうき、源順みなもとのしたごうが『和名わみょう類聚るいじゅう抄しょう』を編あんでいる。また江戸えど時代じだい、貝原かいばら好古よしふる（貝原かいばら益軒えきけんの養子ようし）が『和爾わに雅みやび』（1694年ねん）を、新井あらい白石はくせきが『東あずま雅みやび』（1719年ねん、「東方とうほうの爾なんじ雅みやび」の意い）を作つくっている。

脚注きゃくちゅう

^ 加地かじ伸行のぶゆき『加地かじ伸行のぶゆき著作ちょさく集しゅう1 中国ちゅうごく論ろん理学りがく史し研究けんきゅう経学けいがくの基礎きそ的てき探求たんきゅう』研けん文ぶん出版しゅっぱん、2012年ねん（原著げんちょ1983年ねん）、407-409頁ぺーじ。ISBN 978-4876364022。
^ 菅野かんの恵美えみ著ちょ「中国ちゅうごく古代こだいの馬うまの管理かんりと漢かん代だい墓はか葬そう装飾そうしょく」、鶴間つるま和幸かずゆき・村松むらまつ弘一こういち編へん『馬うまが語かたる古代こだい東ひがしアジア世界せかい史し』汲古書院しょいん、2018年ねん。ISBN 9784762966071。 96f頁ぺーじ。
^ 青木あおき正児まさる『中華ちゅうか名物めいぶつ考こう』平凡社へいぼんしゃ〈東洋文庫とうようぶんこ〉、1988年ねん（原著げんちょ1959年ねん春秋しゅんじゅう社しゃ）。ISBN 4582804799。 32頁ぺーじ。

外部がいぶリンク

[1] 加地かじ伸行のぶゆき『加地かじ伸行のぶゆき著作ちょさく集しゅう1 中国ちゅうごく論ろん理学りがく史し研究けんきゅう経学けいがくの基礎きそ的てき探求たんきゅう』研けん文ぶん出版しゅっぱん、2012年ねん（原著げんちょ1983年ねん）、407-409頁ぺーじ。ISBN 978-4876364022。

[2] 菅野かんの恵美えみ著ちょ「中国ちゅうごく古代こだいの馬うまの管理かんりと漢かん代だい墓はか葬そう装飾そうしょく」、鶴間つるま和幸かずゆき・村松むらまつ弘一こういち編へん『馬うまが語かたる古代こだい東ひがしアジア世界せかい史し』汲古書院しょいん、2018年ねん。ISBN 9784762966071。 96f頁ぺーじ。

[3] 青木あおき正児まさる『中華ちゅうか名物めいぶつ考こう』平凡社へいぼんしゃ〈東洋文庫とうようぶんこ〉、1988年ねん（原著げんちょ1959年ねん春秋しゅんじゅう社しゃ）。ISBN 4582804799。 32頁ぺーじ。

[1]

[2]

[3]