(Translated by https://www.hiragana.jp/)
和名類聚抄 - Wikipedia

和名わみょう類聚るいじゅうしょう

平安へいあん時代じだい中期ちゅうきつくられた辞書じしょ

和名わみょう類聚るいじゅうしょう』(わみょうるいじゅしょう)は、平安へいあん時代じだい中期ちゅうきつくられた辞書じしょである。うけたまわひらた年間ねんかん931ねん - 938ねん)、つとむ内親王ないしんのうもとめにおうじて源順みなもとのしたごう(みなもとのしたごう)が編纂へんさんした。略称りゃくしょう和名わみょうしょう(わみょうしょう)。

和名わみょう類聚るいじゅうしょう
著者ちょしゃ 源順みなもとのしたごう
発行はっこう 平安へいあん時代じだい中期ちゅうき
ジャンル 辞書じしょ
くに 日本の旗 日本にっぽん
言語げんご 日本語にほんご
ウィキポータル 書物しょもつ
ウィキポータル 歴史れきし
ウィキポータル 文学ぶんがく
ウィキポータル 言語げんごがく
[ ウィキデータ項目こうもく編集へんしゅう ]
テンプレートを表示ひょうじ

概要がいよう

編集へんしゅう

名詞めいしをまず漢語かんご類聚るいじゅうし、意味いみにより分類ぶんるいして項目こうもくて、万葉仮名まんようがな日本語にほんご対応たいおうする名詞めいしみ(和名わみょう倭名わみょう)をつけたうえで、漢籍かんせき字書じしょ韻書いんしょ博物はくぶつしょ)を出典しゅってんとして多数たすう引用いんようしながら説明せつめいくわえる体裁ていさい[1]今日きょう国語こくご辞典じてんのほか、漢和かんわ辞典じてん百科ひゃっか事典じてん要素ようそ多分たぶんふくんでいるのが特徴とくちょう[2]

かん分類ぶんるい辞典じてんしかみやび』の影響えいきょうけている。当時とうじから漢語かんご和訓わくんるために重宝ちょうほうされ、江戸えど時代じだい国学こくがく発生はっせい以降いこう平安へいあん時代じだい以前いぜん語彙ごいかたりおん資料しりょうとして、また社会しゃかい風俗ふうぞく制度せいどなどを史料しりょうとして日本にっぽん文学ぶんがく日本語にほんごがく日本にっぽん世界せかい重要じゅうようされている書物しょもつである[1]。『けん名苑めいえん』など佚書いっしょ引用いんようおおふくんでいる[3]

和名わみょう類聚るいじゅうしょうは「倭名わみょうるい聚鈔」「倭名わみょう類聚るいじゅうしょう」ともかれ、その表記ひょうき写本しゃほんによって一定いっていしていない。一般いっぱんてきに「和名わみょうしょう」「倭名わみょう」「倭名わみょうしょう」と略称りゃくしょうされる[1][2]

巻数かんすうじゅうかんまたはじゅうかんで、その内容ないようおおきく異同いどうがあるため「じゅうかんほん」「じゅうかんほん」として区別くべつされ、それぞれの系統けいとう写本しゃほん存在そんざいする。国語こくご学者がくしゃ亀田かめだ次郎じろうは「じゅうかんほん後人こうじん増補ぞうほしたもの」としている[4]

なおじゅうかんほん古代こだい律令制りつりょうせいにおける行政ぎょうせい区画くかくであるくにぐんさと名称めいしょう網羅もうらしており、このてんでも基本きほん史料しりょうとなっている。

れい大和やまとこく葛下かつしもぐん神戸こうべきょうやまちょくさと高額こうがくきょう美郷みさとたで田郷たごうしなさとしさと當麻とうま以末)さと

ただし、さとめいかんしては誤記ごきがないわけではなく、後世こうせい研究けんきゅうによって誤記ごき判明はんめいした事例じれいもある[ちゅう 1]

構成こうせい

編集へんしゅう

本書ほんしょ構成こうせい大分おおいたるいである「」としょう分類ぶんるいの「もん」よりっており、その構成こうせいじゅうかんほんじゅうかんほんによってそれぞれことなる。

じゅうかんほん

編集へんしゅう

24128もんよりり、各部かくぶつぎじゅん配列はいれつされている。

  1. 天地てんち天文てんもん気象きしょう神霊しんれいみず土石どせき
  2. 人倫じんりん人間にんげん家族かぞく
  3. 形體けいたいからだ各部かくぶ
  4. 疾病しっぺい病気びょうき
  5. じゅつげい武芸ぶげい武具ぶぐ
  6. きょしょ住居じゅうきょ道路どうろ
  7. ふねしゃふねくるま
  8. めずらしたからきむぎん玉石ぎょくせき
  9. 布帛ふはくぬの
  10. 装束しょうぞく衣類いるい
  11. 飮食いんしょく食物しょくもつ
  12. うつわさらうつわさら
  13. 燈火ともしび燈火ともしび
  14. 調度ちょうどにち用品ようひん
  15. はねぞくとり
  16. ぐんしし一般いっぱん
  17. 牛馬ぎゅうばうしうま
  18. りゅうぎょりゅうぞく、および魚類ぎょるい[ちゅう 2]
  19. 龜貝かめがいかめるいうみ動物どうぶつ
  20. むし豸部=むしるい
  21. いねこくいね穀物こくもつ
  22. さい蔬部=野菜やさい
  23. はて蓏部[ちゅう 3]果物くだもの
  24. 草木くさき草木くさき

じゅうかんほん

編集へんしゅう

じゅうかんほんくらべ、分割ぶんかつ統合とうごう付加ふか名称めいしょう配列はいれつ異同いどうがあり、32249もんよりっている。

配列はいれつ以下いかとおり。太字ふとじしめしたものがじゅうかんほん独自どくじ、もしくは名称めいしょう変更へんこうされているである。

  1. てん天文てんもん気象きしょう
  2. 土石どせき
  3. みずみず
  4. としこよみ
  5. 鬼神きじん神霊しんれい
  6. 人倫じんりん人間にんげん
  7. 親戚しんせき家族かぞく
  8. 形體けいたい身体しんたい各部かくぶ
  9. じゅつげい武芸ぶげい武具ぶぐ
  10. 音樂おんがく音楽おんがく楽器がっき
  11. 軄官官庁かんちょう官職かんしょくめい
  12. くに郡部ぐんぶ国名こくめいぐんめいさとめい
  13. きょしょ住居じゅうきょ道路どうろ
  14. 舩部ふね
  15. くるまくるま
  16. 牛馬ぎゅうばうしうま
  17. たから貨部金銀きんぎん玉石ぎょくせき
  18. こうやくこう
  19. 燈火ともしび燈火ともしび
  20. 布帛ふはくぬの
  21. 装束しょうぞく衣類いるい
  22. 調度ちょうどにち用品ようひん
  23. うつわさらうつわさら
  24. 飮食いんしょく食物しょくもつ
  25. いねこくいね穀類こくるい
  26. はて蓏部[ちゅう 3]果物くだもの
  27. さい蔬部=野菜やさい
  28. はねぞく鳥類ちょうるい
  29. ぐんしし一般いっぱん
  30. 鱗介りんかい爬虫類はちゅうるい両生類りょうせいるい魚類ぎょるいうみ動物どうぶつ
  31. むし豸部=むし
  32. 草木くさき草木くさき

しょほん

編集へんしゅう

本書ほんしょには完本かんぽんれいほん端本はほん)もふくめて、すうおおくの写本しゃほん存在そんざいする。江戸えど時代じだいには版本はんぽんかたちでも刊行かんこうされているが、じゅうかんほん当時とうじ写本しゃほんかたち流布るふしたためほとんどあずさのぼらず、じゅうかんほん重点的じゅうてんてき刊行かんこうされた[1][2]

以下いか影印えいいん複製ふくせい直接ちょくせつ閲覧えつらんにより閲覧えつらん可能かのうなものを筆写ひっしゃ年代ねんだい刊行かんこう年代ねんだいじゅんげる。

じゅうかんほん

編集へんしゅう

現在げんざいじゅうかんほん本文ほんぶんとしてもっと流布るふしているのは、狩谷かりや棭斎こうちゅうの『箋注倭名わみょう類聚るいじゅうしょう』であるが、これはしたにもとお明治めいじ時代じだいかんなので、それまでは写本しゃほんによる流布るふおもであった。

なお、じゅうかんほん写本しゃほんなかでも「下総しもうさほん」とそれにつらなる系統けいとうほんは、ほんことなる記述きじゅつつなど異質いしつほんである。このためじゅうかんほん写本しゃほんには、しばしば下総しもうさほんけいほん参照さんしょうし、しゅでその校異こういれているものもすくなくない。しかし狩谷かりやはこの下総しもうさほん本文ほんぶんを「後世こうせい改竄かいざんによるもの」となし、「しょほんなかもっと劣悪れつあく」としてみとめていない。

写本しゃほん

編集へんしゅう
書写しょしゃ時期じき 状態じょうたい 蔵書ぞうしょ 備考びこう
真福寺しんふくじほん 鎌倉かまくら時代ときよ まきいちまきのみ 宝生ほうしょういん大須おおす観音かんのん真福寺しんふくじ
伊勢いせじゅうかんほん 室町むろまち時代ときよ初期しょき まきさんはちのみ 神宮じんぐう文庫ぶんこ
京本きょうもと 江戸えど時代じだい前期ぜんき まきよんろくのみ 東京大学とうきょうだいがく国語こくご研究けんきゅうしつ
高松宮たかまつのみやほん 江戸えど時代じだい前期ぜんき 完本かんぽん 国立こくりつ歴史れきし民俗みんぞく博物館はくぶつかん
松井まついほん 江戸えど時代じだい前期ぜんき 完本かんぽん 静嘉堂文庫せいかどうぶんこ
きょう一本いっぽん 江戸えど時代じだい後期こうき まきななじゅうのみ 東京大学とうきょうだいがく国語こくご研究けんきゅうしつ
狩谷かりや棭斎自筆じひつていほん 江戸えど時代じだい後期こうき 完本かんぽん 国立こくりつ公文書こうぶんしょかんきゅう内閣ないかく文庫ぶんこ 校訂こうていふく
天文てんもんほん 江戸えど時代じだい後期こうき 完本かんぽん 東京大学とうきょうだいがく国語こくご研究けんきゅうしつ 下総しもうさほんけい写本しゃほん
前田まえだほん 明治めいじ時代じだい 完本かんぽん 前田まえだたかしけいかく

版本はんぽん

編集へんしゅう
刊行かんこう 校訂こうてい 底本ていほん
とおる版本はんぽん とおる元年がんねん1801ねん 稲葉いなばとおるくに 真福寺しんふくじほん
楊守けい刊本かんぽん 明治めいじ29ねん1906ねん 楊守けい 下総しもうさほんけい写本しゃほん

こうちゅうほん

編集へんしゅう
成立せいりつ 刊行かんこう 校訂こうてい 底本ていほん 備考びこう
箋注倭名わみょう類聚るいじゅうしょう 文政ぶんせい10ねん1827ねん 明治めいじ16ねん1883ねん 狩谷かりや棭斎 京本きょうもと しょほん校訂こうてい

じゅうかんほん

編集へんしゅう

現在げんざいじゅうかんほん本文ほんぶんとしてもっと流布るふしているのは、那波なばどうえんこうちゅうの「元和がんわ活字かつじほん」であるが、これは昭和しょうわ7ねん1932ねん)に影印えいいん復刻ふっこくされるまでほとんど出回でまわらなかった稀覯きこうしょで、わりに「慶安けいあん版本はんぽん」「寛文ひろふみ版本はんぽん」がひろもちいられ、明治めいじ時代じだい初期しょきまでなんすりかさねた。

また、写本しゃほんのうち「高山たかやま寺本てらもと」は、「くに郡部ぐんぶ」ののち古代こだい律令制りつりょうせいえき(うまや)をしるしており、じゅうかんほんにはられない独自どくじ本文ほんぶんつほか、本文ほんぶん異同いどうおおく、とくに「くに郡部ぐんぶ」をさいに「元和がんわ活字かつじほん」とともに参照さんしょうされる。

写本しゃほん

編集へんしゅう
書写しょしゃ時期じき 状態じょうたい 蔵書ぞうしょ
高山たかやま寺本てらもと 平安へいあん時代じだい末期まっき まきろくじゅうのみ 天理大学てんりだいがく附属ふぞく天理てんり図書館としょかん
伊勢いせじゅうかんほん 室町むろまち時代じだい初期しょき まきいちおよびまききゅうじゅうのみ 神宮じんぐう文庫ぶんこ
だい東急とうきゅうほん 室町むろまち時代じだい中期ちゅうき 完本かんぽん だい東急とうきゅう記念きねん文庫ぶんこ

版本はんぽん

編集へんしゅう
刊行かんこう 校訂こうてい
元和がんわ活字かつじほん 元和がんわ3ねん1617ねん 那波なばどうえん
慶安けいあん版本はんぽん 慶安けいあん元年がんねん1648ねん
寛文ひろふみ版本はんぽん 寛文ひろふみ11ねん1671ねん

注解ちゅうかい刊行かんこうほん影印本えいいんぼん

編集へんしゅう
  • 和名わみょう類聚るいじゅうしょう : 高山たかやま寺本てらもと . 三寶さんぼう類字るいじしゅう : 高山たかやま寺本てらもと天理てんり圖書館としょかん善本ぜんぽん叢書そうしょ和書わしょこれだい2かん)、1971ねん
  • しょほん集成しゅうせい倭名わみょう類聚るいじゅうしょう本文ほんぶんへん索引さくいんへん外篇がいへん臨川りんせん書店しょてん、1971ねん-1981ねん
  • 和名わみょう類聚るいじゅうしょう : 20かんほん辞書じしょくさむらかん雄松おまつどう書店しょてん、1973ねん
  • 和名わみょう類聚るいじゅうしょう名古屋なごや博物館はくぶつかん資料しりょう叢書そうしょ2、名古屋なごや博物館はくぶつかん、1992ねん
  • 高松たかまつ宮本みやもとはやし羅山らざんしょいれほん和名わみょう類聚るいじゅうしょうごえてんづけ和訓わくん索引さくいん』アクセント資料しりょう索引さくいん16、アクセント資料しりょう研究けんきゅうかい、2000ねん
  • 写本しゃほん和名わみょう類聚るいじゅうしょう集成しゅうせいつとむまこと出版しゅっぱん、2008ねん
    • だい1しょほん解題かいだい関係かんけい資料集しりょうしゅうおよ語彙ごいそうしゅう
    • だい2じゅうかんほんけい写本しゃほん影印えいいん対照たいしょう
    • だい3じゅうかんほんけいしょほん影印えいいん対照たいしょう
  • 和名わみょう類聚るいじゅうしょう : 高山たかやま寺本てらもとしん天理てんり図書館としょかん善本ぜんぽん叢書そうしょだい7かん八木やぎ書店しょてん、2017ねん

脚注きゃくちゅう

編集へんしゅう

注釈ちゅうしゃく

編集へんしゅう
  1. ^ れいとして、武蔵むさしこく児玉こだまぐん黄田きださとじつくさ田郷たごう誤字ごじだったなど。くわしくは、大田おおたまんりょ#くさ田郷たごうさい発見はっけん参照さんしょう
  2. ^ ワニイルカなどをふくむ。
  3. ^ a b はて蓏部」の「蓏」はくさかんむりに「ふり」2つ

出典しゅってん

編集へんしゅう
  1. ^ a b c d 日本にっぽん辞書じしょ辞典じてん (1996), pp. 287–288.
  2. ^ a b c おきもり卓也たくや (2023), pp. 22–23(原著げんちょおきもり卓也たくや 2008
  3. ^ はやしただしおおとり (2002), だいろくしょう だいせつ和名わみょうしょうしょ引『けん名苑めいえん』について.
  4. ^ 亀田かめだ次郎じろう (1935), p. 259.

参考さんこう文献ぶんけん

編集へんしゅう
図書としょ
  • はやしただしおおとり和名わみょう類聚るいじゅうしょう文献ぶんけんがくてき研究けんきゅうつとむまこと出版しゅっぱん、2002ねん4がつISBN 978-4-585-03088-1 
論文ろんぶん
辞書じしょるい

関連かんれん文献ぶんけん

編集へんしゅう

関連かんれん項目こうもく

編集へんしゅう

外部がいぶリンク

編集へんしゅう