第だい一いち尚しょう氏し

第だい一いち尚しょう氏し（だいいちしょうし）は尚なお思おもえ紹王を始祖しそとし、7代だい63年間ねんかん（1406年ねん（永楽えいらく4年ねん）- 1469年ねん（成なり化か5年ねん））続つづいた琉球りゅうきゅう最初さいしょの統一とういつ王朝おうちょうをつくりあげた王家おうけおよびその姓せいの通称つうしょう。正式せいしきには尚しょう氏しだが、第だい二に尚しょう氏しと区別くべつするために、一般いっぱんには第だい一いち尚しょう氏しと呼よばれる。

尚なお氏し （第だい一いち尚しょう氏し）
（家紋かもん）
本姓ほんせい	尚なお氏し
家いえ祖そ	尚なお思おもえ紹王
種別しゅべつ	王室おうしつ
出身しゅっしん地ち	琉球りゅうきゅう王国おうこく
主おもな根拠地こんきょち	琉球りゅうきゅう王国おうこく
著名ちょめいな人物じんぶつ	尚なお巴ともえ志こころざし王おう 尚なお泰久やすひさ王おう 尚なお徳王とくおう
支流しりゅう、分家ぶんけ	雍氏（伝承でんしょう） 明あきら氏し（伝承でんしょう） 孫まご氏し 武たけ氏し（伝承でんしょう） 習氏（伝承でんしょう）
凡例はんれい / Category:日本にっぽんの氏族しぞく

概要がいよう

1406年ねん、佐敷さしきの按司であった尚なお巴ともえ志こころざしは中ちゅう山王さんのう武たけ寧やすしを攻せめ滅ほろぼし、父ちち・尚なお思おもえ紹を中山なかやま王位おういに即つける。これが第だい一いち尚しょう氏しの始はじまりである。第だい一いち尚しょう氏しは1416年ねん、尚なお思おもえ紹在位い中ちゅうに北山きたやま王国おうこくを、2代だい尚なお巴ともえ志こころざし即位そくい後ごの1429年ねんに南山みなみやま王国おうこくを滅ほろぼし、沖縄おきなわ本島ほんとうを初はじめて統一とういつして、滅亡めつぼうまでに先さき島とう諸島しょとうを除のぞく沖縄諸島おきなわしょとうや奄美あまみ群島ぐんとうを制圧せいあつした。5代だい尚なお金かね福ぶく王おうの時代じだいに首くび里さとと那覇なはを結むすぶ長ちょう虹にじ堤つつみを築造ちくぞう。6代だい尚なお泰久やすひさ王おうの時代じだいに護まもる佐さ丸まる・阿おもね麻あさ和利かずとしの乱らんが起おきた。7代だい尚なお徳王とくおうの時ときに金丸かねまる（後ごの尚なお円えん王おう）の即位そくいにより王朝おうちょうは滅亡めつぼうした。なお、『氏し集しゅう』や家いえ譜ふには記載きさいはないが、雍氏、明あきら氏し、孫まご氏し、武たけ氏し、習氏等とう、いくつかの門もん中ちゅうでは第だい一いち尚しょう氏し後裔こうえいとの伝承でんしょうがある。

南城なんじょう市し指定していの史跡しせきである佐敷さしき上うえグスク内うちには屋や蔵ぞう大だい主ぬし、鮫川さめかわ大だい主あるじを含ふくむ、第だい一いち尚しょう氏し歴代れきだい王おうが合祀ごうしされた「月代さかやき宮みや」が建立こんりゅうされている。

系図けいず

1.尚なお思おもえ紹王

2.尚なお巴ともえ志こころざし王おう

3.尚なお忠ちゅう王おう

5.尚なお金かね福ぶく王おう

6.尚なお泰久やすひさ王おう

4.尚なお思おもえ達たち王おう

7.尚なお徳王とくおう

尚なお姓せい賜たまもの姓せい問題もんだい

『中山なかやま世よ譜ふ』には、尚なお巴ともえ志こころざしが明あかりより「尚なお姓せい」を賜たまわったとあるが、『明あきら実録じつろく』にはそのような記載きさいはない。『球たま陽ひ』には、明あかりの宣せん徳とく帝みかどが冊さつ封ふう使し・柴山しばやまを遣つかわし、1430年ねん、尚なお姓せいを与あたえたとあるが、『明あきら実録じつろく』にはそれより15年ねん前まえの1415年ねんより、尚なお巴ともえ志こころざしと名乗なのっていた事実じじつが記載きさいされており矛盾むじゅんしている。

尖閣せんかく研究けんきゅう家か石井いしい望のぞむは、第だい一いち尚しょう氏しによる三さん山やま統一とういつは虚構きょこうであり、イスラム宦官かんがん時代じだいから琉球大りゅうきゅうだい交易こうえき時代じだいへの轉換てんかんが、後のちに三さん山やま統一とういつとして推測すいそくされ、第だい一いち尚しょう氏しといふ家系かけいは存在そんざいせず、豪族ごうぞくの下克上げこくじょうが續つづいたに過すぎないとする 。

第だい一いち尚しょう氏し、名和なわ氏し説せつ

第だい一いち尚しょう氏しは佐敷さしき按司の出だしであるが、その元もとを名和なわ氏しに求もとめる説せつが存在そんざいする。これは折口おりぐち信夫しのぶが唱となえたもので、肥後ひご国こく八はち代だいを拠点きょてんにしていた名和なわ氏しの一部いちぶが沖縄おきなわ佐敷さしきに渡わたり、第だい一いち尚しょう氏しになったのではないかとする説せつである。現在げんざいではあまり信しんじられていない。

名和なわ氏しは元来がんらい伯耆ほうきの出だしであるが、建たて武たけしの新政しんせいの際さい、恩賞おんしょうとして肥後ひご国こく八はち代だいの荘そうの地頭じとう職しょくを賜たまわる。南北なんぼく朝あさ期き、南朝なんちょう方かたに属ぞくしていた名和なわ氏しは北朝ほくちょう方かたに圧迫あっぱくされ、征せい西府にしふを頼たよりに九州きゅうしゅうへ下向げこうし八はち代だいに拠点きょてんを構かまえる。名和なわ氏しはこの地ちで日にち朝ちょう交易こうえきに携たずさわるなど、水軍すいぐんとしても活発かっぱつに活動かつどうしている。折おり口説くぜつによると、この名和なわ氏しの一部いちぶが沖縄おきなわ本島ほんとうに渡わたり東南とうなん海岸かいがんのヤマトバンタに拠点きょてんを構かまえ、八はち代だい近ちかくの肥後ひご佐敷さしきに因ちなんで佐敷さしきと名付なづけ、第だい一いち尚しょう氏しになったのではないかと推測すいそくしている。また、肥後ひごから沖縄おきなわ本島ほんとうに渡わたってきたのは尚なお思おもえ紹の父ちち、鮫川さめかわ大だい主おもではないか、尚なお思おもえ紹は苗代なわしろ大だい親おや（なわしろふうや）とも称しょうしたがこの苗なえは名和なわに通つうじ代だいは八はち代だいに通つうじる、尚なお思おもえ紹についても紹は絽ろを明あかり国こくが誤記ごきしたものであり、本来ほんらいは尚なお思おもえ絽ろ（なわしろ）と読よむべきものであった、としているが、現在げんざいも推測すいそくの域いきを出でていない。

さらに『おもろさうし』第だい十じゅう四よん-四よん十じゅう六ろくに、運天うんてんに「やまとやしろのいくさ（軍勢ぐんぜい）」が上陸じょうりくし勝利しょうりを収おさめたことが記しるされている。伊波いは普猷ふゆうは『琉球りゅうきゅう史料しりょう叢書そうしょ 三さん』の中なかで、この歌うたは源為朝みなもとのためともの上陸じょうりくや島津しまつ氏しの琉球りゅうきゅう侵攻しんこうを表あらわしたものではなく「室町むろまち中期ちゅうき以後いごに、落武者おちむしゃや倭やまと寇などの、今帰仁なきじん半島はんとうに上陸じょうりくした事ことを語かたる、一いち史料しりょう」と位置いちづけている。折口おりぐちはこの「やまとやしろの軍勢ぐんぜい」に着目ちゃくもくし、これは肥後ひご八はち代だいに縁えんのある尚なお巴ともえ志しの軍勢ぐんぜいのことで、尚なお巴ともえ志しの北山きたやま征伐せいばつを歌うたったものだと民俗みんぞく学がく的てきに推察すいさつされている。

一方いっぽうで折おり口説くぜつに対たいし、東ひがし恩納おんな寛ひろし惇あつし、嘉手納かでな宗徳むねのりらから反論はんろんがなされている。それによると、「『明あきら実録じつろく』には思おもえ紹の名なは中山なかやま王思おうし紹としか記載きさいされておらず、思おもえ紹の生前せいぜん尚なお思おもえ紹と唱となえた例れいが無ない。思おもえ紹に尚なお姓せいを冠かんしたのは『中山なかやま世よ鑑かん』からのことで、尚なお姓せいは明あかりから賜たまわったものではなく巴ともえ志こころざし以後いごに自みずから名乗なのったものであり、尚なお思おもえ紹をなわしろとする折おり口説くぜつは当あたらない」としている。また、自みずから名和なわ（なわ）を中国ちゅうごく風ふうの一いち字じの氏し、尚なお（なお）に改あらためたとする説せつもあり、民俗みんぞく学がく的てきな推測すいそくの余地よちを出でないため、考古学こうこがく的てきな確証かくしょうを得えていないことが問題もんだい視しされている。

石井いしい望のぞむの最新さいしん説せつでは、『皇すめらぎ明あかり實録じつろく』所載しょさいの蘇そ惹爬燕つばめ之の、師し惹、思おもえ紹、尚なお巴ともえ志こころざしは、全すべて山南さんなん領域りょういきの「すざ（べじ）」（兄あに、王おう）の福建ふっけん漢字かんじ音おんである。

参考さんこう文献ぶんけん

• 太田おおた亮あきら著ちょ、上田うえだ萬年かずとし、三上みかみ参さん次じ監修かんしゅう『姓氏せいし家系かけい大だい辞典じてん 第だい2巻かん』（角川書店かどかわしょてん、1934年ねん）
• 喜舎場ちしゃば一隆かずたか『琉球りゅうきゅう・尚しょう氏しのすべて』（新人物往来社しんじんぶつおうらいしゃ、2000年ねん） ISBN 4-404-02868-7

関連かんれん項目こうもく

• 琉球りゅうきゅう王国おうこく
• 琉球りゅうきゅう国王こくおうの一覧いちらん
• 尚なお氏し
• 天てん山陵さんりょう
• 雍氏目め取と真家まや
• 明あきら氏し亀谷かめたに家か
• 孫まご氏し平田ひらた家か
• 名和なわ氏し

外部がいぶリンク

• 沖縄おきなわ県立けんりつ総合そうごう教育きょういくセンター 沖縄おきなわの歴史れきし