マクロファージによる食 しょく 作用 さよう の経過 けいか a. 貪食 どんしょく された異物 いぶつ が食 しょく 胞(ファゴソーム) に取 と り込 こ まれるb. 食 しょく 胞はリソソーム と融合 ゆうごう しファゴリソソームを形成 けいせい 、異物 いぶつ は酵素 こうそ により破壊 はかい されるc. 残 ざん 渣は細胞 さいぼう 外 がい に排出 はいしゅつ される(あるいは消化 しょうか される) 1. 異物 いぶつ (病原 びょうげん 体 たい )、2. 食 しょく 胞 、3. リソソーム 、4. 残 ざん 渣、5. 細胞 さいぼう 質 しつ 、6. 細胞 さいぼう 膜 まく
マクロファージが細菌 さいきん 、ウイルス 、死 し んだ細胞 さいぼう 等 とう の異物 いぶつ を取 と り込 こ むことを食 しょく 作用 さよう と呼 よ ぶ。これがマクロファージの主要 しゅよう な機能 きのう である。この食 しょく 作用 さよう の主 おも な役割 やくわり は病原 びょうげん 体 たい への対処 たいしょ と、細胞 さいぼう 死 し の残骸 ざんがい の処理 しょり である。炎症 えんしょう の初期 しょき は好 こう 中 ちゅう 球 だま がになうが、後期 こうき になるとマクロファージが集 あつ まり死 し んだ細胞 さいぼう や細菌 さいきん を食 しょく 作用 さよう により処理 しょり する。
マクロファージが貪食 どんしょく した異物 いぶつ は小 しょう 胞(食 しょく 胞、Phagosome ) の形 かたち で取 と り込 こ まれる。細胞 さいぼう 内 ない で小 しょう 胞はリソソームと融合 ゆうごう し、リソソーム中 ちゅう に存在 そんざい する様々 さまざま な加水 かすい 分解 ぶんかい 酵素 こうそ の作用 さよう により分解 ぶんかい される。
マクロファージは抗原 こうげん を摂取 せっしゅ すると、各種 かくしゅ のサイトカイン を放出 ほうしゅつ し、特定 とくてい のT細胞 さいぼう を活性 かっせい 化 か させる。マクロファージは、食 しょく 作用 さよう によって取 と り込 こ み、分解 ぶんかい した異物 いぶつ をいくつかの断片 だんぺん にし、もともと細胞 さいぼう 内 ない に持 も っていたMHCクラスII分子 ぶんし (MHC-II) と結合 けつごう させ、細胞 さいぼう 表面 ひょうめん に表出 ひょうしゅつ させる。これをマクロファージによる抗原 こうげん 提示 ていじ と呼 よ ぶ。
マクロファージによる抗原 こうげん 提示 ていじ のシグナルは、T細胞 さいぼう のなかでもヘルパーT細胞 さいぼう と呼 よ ばれるリンパ球 だま に伝達 でんたつ される。ヘルパーT細胞 さいぼう の表面 ひょうめん には、CD 4というヘルパーT細胞 さいぼう 特有 とくゆう の表面 ひょうめん タンパク質 たんぱくしつ と、T細胞 さいぼう 受容 じゅよう 体 たい (TCR, T-cell receptor) と呼 よ ばれる受容 じゅよう 体 たい タンパク質 たんぱくしつ が存在 そんざい しており、それぞれがマクロファージのMHC-IIと、マクロファージによって提示 ていじ された抗原 こうげん と結合 けつごう することによって、ヘルパーT細胞 さいぼう が活性 かっせい 化 か される。T細胞 さいぼう 受容 じゅよう 体 たい の構造 こうぞう は、そのヘルパーT細胞 さいぼう ごとに異 こと なっており、マクロファージによって提示 ていじ された抗原 こうげん 断片 だんぺん とぴったり合 あ う受容 じゅよう 体 たい を持 も つヘルパーT細胞 さいぼう だけが活性 かっせい 化 か される。
活性 かっせい 化 か したヘルパーT細胞 さいぼう は、インターロイキン やリンフォカイン 等 ひとし のサイトカイン を生産 せいさん することでマクロファージを活性 かっせい 化 か するとともに、自分 じぶん が認識 にんしき するものと同 おな じ抗原 こうげん を認識 にんしき するB細胞 さいぼう を活性 かっせい 化 か させる。活性 かっせい 化 か したB細胞 さいぼう は形質 けいしつ 細胞 さいぼう に分化 ぶんか して増殖 ぞうしょく し、抗原 こうげん に対応 たいおう する抗体 こうたい を作成 さくせい し、放出 ほうしゅつ する。抗体 こうたい は抗原 こうげん に特異 とくい 的 てき に結合 けつごう し抗体 こうたい -抗原 こうげん 複 ふく 合体 がったい を作 つく る。マクロファージはこの抗体 こうたい -抗原 こうげん 複 ふく 合体 がったい に引 ひ きつけられ、そしてこの複 ふく 合体 がったい を貪食 どんしょく する。抗体 こうたい の結合 けつごう した細菌 さいきん やウイルスはマクロファージにとって非常 ひじょう に能率 のうりつ よく食 しょく すことができるものとなる。この際 さい T細胞 さいぼう はリンフォカインを放出 ほうしゅつ するなどしてマクロファージを活性 かっせい 化 か したり、B細胞 さいぼう の増殖 ぞうしょく 、分化 ぶんか を助 たす ける。
マクロファージはT細胞 さいぼう の生産 せいさん するサイトカインを受 う け取 と ることにより活性 かっせい 化 か する。サイトカイン とは抗原 こうげん と接触 せっしょく したT細胞 さいぼう 及 およ び一部 いちぶ の他 ほか の白血球 はっけっきゅう が生産 せいさん する物質 ぶっしつ のことで、主 おも な標的 ひょうてき はマクロファージである。サイトカインは様々 さまざま なタンパク質 たんぱくしつ より成 な り、大食 たいしょく 細胞 さいぼう 起動 きどう 要素 ようそ (maf)、大食 たいしょく 細胞 さいぼう 遊 ゆう 走 はし 阻止 そし 因子 いんし (mmif)、免疫 めんえき 複 ふく 合 ごう 物 ぶつ 、c3b、様々 さまざま なペプチド 、多 た 糖 とう 類 るい 、免疫 めんえき 補助 ほじょ 等 とう が存在 そんざい する。
ある種 しゅ のサイトカインは単 たん 球 たま の成熟 せいじゅく を促進 そくしん し、マクロファージを増殖 ぞうしょく させ食 しょく 作用 さよう を活性 かっせい 化 か する、またあるものはマクロファージを集 あつ め抗原 こうげん を攻撃 こうげき させる。これらの働 はたら きにより炎症 えんしょう 反応 はんのう が強 つよ くなる。
マクロファージの活性 かっせい 化 か の分類 ぶんるい は、現在 げんざい 少 すく なくとも2種類 しゅるい 存在 そんざい することが知 し られている。LPSとIFN-gによる古典 こてん 的 てき 活性 かっせい 化 か (M1) とIL-4やIL-13による選択 せんたく 的 てき 活性 かっせい 化 か (M2) である。M1マクロファージは主 おも に炎症 えんしょう を促進 そくしん させるが、M2マクロファージは主 おも に炎症 えんしょう を抑制 よくせい ・収束 しゅうそく させる[4] 。一般 いっぱん 的 てき に、まずM1が先 さき に誘導 ゆうどう され異物 いぶつ や病原 びょうげん 体 たい などを炎症 えんしょう もろとも攻撃 こうげき し、M2が後片付 あとかたづ けおよびブレーキをするような仕組 しく みである。このためM2は抑制 よくせい 性 せい インターロイキンIL-10 やTGF-β べーた といった制御 せいぎょ 性 せい サイトカインを産出 さんしゅつ する。
マクロファージが放出 ほうしゅつ するサイトカインは血管 けっかん の細胞 さいぼう に対 たい して作用 さよう し細胞 さいぼう 間 あいだ の間隔 かんかく を広 ひろ げることで血液 けつえき 中 ちゅう から免疫 めんえき 細胞 さいぼう が出 で てくるのを促進 そくしん させる効果 こうか がある
肥満 ひまん 人 じん では、脂肪 しぼう 細胞 さいぼう からM1マクロファージの活性 かっせい 化 か 因子 いんし が誘導 ゆうどう されやすいことが知 し られている[4] 。
しかし、より最近 さいきん の分類 ぶんるい では古典 こてん 的 てき 活性 かっせい 化 か マクロファージ、創傷 そうしょう 治癒 ちゆ マクロファージ、制御 せいぎょ 性 せい マクロファージの3 みっ つあるいはその中間 ちゅうかん 的 てき な活性 かっせい 化 か 状態 じょうたい が存在 そんざい すると考 かんが えられており、マクロファージの活性 かっせい 化 か の多様 たよう 性 せい が議論 ぎろん されている(Nat rev immunol 2008 Vol.8 958-969)。
マクロファージは食 しょく 作用 さよう 以外 いがい にも色々 いろいろ な機能 きのう があり、マクロファージの一種 いっしゅ である破 やぶ 骨 ほね 細胞 さいぼう は、酸 さん や加水 かすい 分解 ぶんかい 酵素 こうそ を分泌 ぶんぴつ し骨 ほね を分解 ぶんかい する。脳 のう に存在 そんざい する小 しょう 膠 にかわ 細胞 さいぼう にも様々 さまざま な働 はたら きがある。
皮膚 ひふ に存在 そんざい する組織 そしき 球 だま (表皮 ひょうひ 内 ない 大食 たいしょく 細胞 さいぼう )や肝臓 かんぞう のクッパー(クッペル)星 ほし 細胞 さいぼう 、肺 はい 胞 に存在 そんざい する塵埃 じんあい 細胞 さいぼう (肺 はい 胞大食 たいしょく 細胞 さいぼう )もマクロファージの一種 いっしゅ である。
マクロファージは、動物 どうぶつ が病原 びょうげん 体 たい による感染 かんせん から身 み を守 まも る感染 かんせん 防御 ぼうぎょ の機構 きこう において、その初期 しょき 段階 だんかい での殺菌 さっきん を行 おこな うとともに、抗原 こうげん 提示 ていじ によって抗体 こうたい の産 さん 生 せい を行 おこな うための最初 さいしょ のシグナルとして働 はたら くなど、重要 じゅうよう な恒常 こうじょう 性 せい 維持 いじ 機構 きこう の一角 いっかく を担 にな っている。
その一方 いっぽう で、過剰 かじょう な活性 かっせい 化 か などのマクロファージ機能 きのう の異常 いじょう は、免疫 めんえき システムの多 おお くの病気 びょうき に関 かか わっている。例 たと えば、炎症 えんしょう 壊死 えし を起 お こした組織 そしき を覆 おお い、肉芽 にくが 腫 しゅ を形成 けいせい する。また、アテローム性 せい 動脈 どうみゃく 硬化 こうか が進行 しんこう する上 じょう でも重要 じゅうよう である。マクロファージの役割 やくわり の1つとして、血管 けっかん 壁 かべ にたまった変性 へんせい コレステロール の処理 しょり があるが、変性 へんせい コレステロールが処理 しょり しきれないほど多 おお く存在 そんざい する場合 ばあい 、血管 けっかん 壁 かべ の下 した に潜 もぐ りこんだまま泡沫 うたかた 化 か しその場 ば に沈着 ちんちゃく する。これがアテローム性 せい 動脈 どうみゃく 硬化 こうか の原因 げんいん である。
また一部 いちぶ の病原 びょうげん 細菌 さいきん やウイルス には、マクロファージによる貪食 どんしょく 作用 さよう を回避 かいひ する機能 きのう を獲得 かくとく しているものがある。細菌 さいきん では、リステリア 、赤痢 せきり 菌 きん 、チフス菌 きん 、レジオネラ 、結核 けっかく 菌 きん などがその代表 だいひょう である。またウイルスでは、エイズ の病原 びょうげん 体 たい であるヒト免疫 めんえき 不全 ふぜん ウイルス (HIV) が、CD4分子 ぶんし を発現 はつげん している免疫 めんえき 細胞 さいぼう であるヘルパーT細胞 さいぼう とマクロファージに感染 かんせん する。マクロファージには強 つよ い殺菌 さっきん 作用 さよう があるものの、殺菌 さっきん を免 まぬか れた特定 とくてい の病原 びょうげん 体 たい は、他 た の免疫 めんえき 細胞 さいぼう からの攻撃 こうげき も抗体 こうたい による作用 さよう も及 およ ばないそのマクロファージ細胞 さいぼう 内 ない に感染 かんせん することにより、宿主 しゅくしゅ 体内 たいない において遊 ゆう 走 はし ・拡散 かくさん を続 つづ け、その病原 びょうげん 性 せい の発揮 はっき に関与 かんよ する。例 たと えば、チフス菌 きん は腸管 ちょうかん に侵入 しんにゅう した後 のち 、腸 ちょう 間 あいだ 膜 まく リンパ節 ぶし のマクロファージに感染 かんせん 後 ご 、血 ち 流 りゅう に入 はい り込 こ んで、全身 ぜんしん 性 せい の感染 かんせん 症 しょう (菌 きん 血 ち 症 しょう )を引 ひ き起 お こす。また結核 けっかく 菌 きん やHIVは、同様 どうよう に潜伏 せんぷく 感染 かんせん し、長時間 ちょうじかん が経過 けいか してから重 じゅう 篤 あつし な病状 びょうじょう が現 あらわ れる。
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