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自販機本 - Wikipedia

自販機じはんきほん(じはんきぼん)とは、1970年代ねんだい中頃なかごろから1980年代ねんだい中頃なかごろまで自動じどう販売はんばいられていた成人せいじん雑誌ざっしである。ビニほんアダルトビデオといったエロメディアが登場とうじょうするまで、日本にっぽんのエロ文化ぶんか中核ちゅうかくになった。

マジックミラーもちいたなかえないようにする仕掛しか
京都きょうと北白川きたしらかわ(2001ねん

概要がいよう 編集へんしゅう

1970年代ねんだい中心ちゅうしんに、自動じどう販売はんばい販売はんばいされたエロ雑誌ざっしがあり、これを自販機じはんきほん(じはんきぼん)としょうした。

自販機じはんきほん配本はいほん都合つごうじょう、おおむねB5ばんで64ぺーじ程度ていどのものであり[1]、ヌードグラビアと記事きじから構成こうせいされていた[2]

自販機じはんきほんは、書店しょてん流通りゅうつう経路けいろとはべつに、自販機じはんきよう特殊とくしゅ流通りゅうつう経路けいろっており、通常つうじょう書店しょてんでは一切いっさいあつかわれなかった[2]。また販売はんばいいん対面たいめんすることなくえたうえに、一般いっぱんにはないヌードモデルもおおく、いわゆるエロほんおお発売はつばいされるようになるまえから人気にんきあつめていた。

その起源きげんは、1968ねん9月に中島なかじまただしさとし創業そうぎょうしたスタンド販売はんばい取次とりつぎ東京とうきょう雑誌ざっし販売はんばいきゅう城北しろきたブックセンター)が、自動じどう販売はんばい部門ぶもん進出しんしゅつした1975ねんにまでさかのぼる[3]1976ねん6がつには自販機じはんきせんもん卸売おろしうり販売はんばい企業きぎょうとして株式会社かぶしきがいしゃ共同きょうどう設立せつりつされ[3]時期じきおなじくして『土曜どよう漫画まんが』でられる土曜どよう出版しゅっぱんしんしゃ(Do企画きかく)がひがしざつグループ傘下さんかはい[3]1977ねんには制作せいさく部門ぶもんとしてアリス出版しゅっぱんエルシー企画きかく設立せつりつされるなど比較的ひかくてき短期間たんきかん自販機じはんきほん流通りゅうつう機構きこう確立かくりつしていった[3]

最盛さいせい1980ねんにはつきに43刊行かんこう月産げっさん発行はっこう部数ぶすう推定すいてい165~450まんのぼった[2][4]販売はんばいもう日本にっぽん全国ぜんこく対象たいしょうで、2まんだい以上いじょう自販機じはんき設置せっちされていた[2]。これは当時とうじ書店しょてんすうとほぼおなじで、500おくえん規模きぼ市場いちばとなった[5]最盛さいせいには「現金げんきん回収かいしゅうしゃショックアブソーバーひゃくえんだまおもみでこわれた」という伝説でんせつかたがれるほどの人気にんきぶりを[6][7]多忙たぼうきわめた印刷所いんさつしょでは女性じょせい陰毛いんもうわすれるというミスを頻発ひんぱつし、エルシー企画きかく神崎かんざき夢現ゆめうつつヒッピー仲間なかまあつめていちばんで3まん以上いじょう自販機じはんきほんマジックインキ修正しゅうせいれたというエピソードもある[2]

販売はんばい期間きかんはわずか3にち程度ていど発売はつばいなどの宣伝せんでんもなかったが、発行はっこう部数ぶすうは1さつあたり平均へいきん3まん記録きろくした[2]。これは当時とうじ日本にっぽんにはエロメディアの絶対ぜったいりょう不足ふそくしており、一定いっていりょうのエロ要素ようそっていれば内容ないようわれず、大半たいはんつくればれていたためである[2]。そのため「表紙ひょうしにポルノさえせておけば、あとはなにをやってもいい」という自由じゆう方針ほうしん版元はんもとおおかった[2]。また放題ほうだい誌面しめんづくりが出来でき背景はいけいには、自販機じはんきほん出版しゅっぱんしゃ経営けいえいしゃ編集へんしゅうしゃおおくが1960年代ねんだい後半こうはん学生がくせい運動うんどう体験たいけんしたもと全共闘ぜんきょうとう世代せだいで、革命かくめいてき誌面しめんづくりに寛容かんようだったことが理由りゆうとしてげられている[8]

とくに高杉たかすぎだん山崎やまざき春美はるみらが中心ちゅうしんとなって編集へんしゅうした伝説でんせつてき自販機じはんきほんJam』『HEAVEN』(エルシー企画きかくアリス出版しゅっぱん群雄ぐんゆうしゃ出版しゅっぱん)では、「エロ」以上いじょうカウンターカルチャーとしての性質せいしつつよく、そのアナーキー誌面しめんづくりから、今日きょうではサブカル雑誌ざっし先駆さきがけのひとつとみなされている[8]。また同誌どうしでは創刊そうかんにあたり山口やまぐち百恵ももえたくゴミいさ決行けっこうし、誌面しめんでファンレターや使用しよう生理せいり用品ようひんを「芸能人げいのうじんゴミあさりシリーズ」とだいして大々的だいだいてき公開こうかいし、注目ちゅうもくあつめた[2]本誌ほんし表紙ひょうしとグラビアだけ「エロ」で中身なかみパンクアングラなどサブカルチャーけい記事きじ情報じょうほうがメインであり、ドラッグ特集とくしゅうをはじめ、インディーズパンクカルトムービー紹介しょうかいては皇室こうしつ臨済ぜんプロレス神秘しんぴ主義しゅぎまでげ、一般いっぱん商業しょうぎょうでは到底とうてい不可能ふかのうアヴァンギャルド誌面しめん実現じつげんするとともに、漫画まんがコーナーでは渡辺わたなべ和博かずひろなどのヘタウマ作家さっか起用きよう漫画まんがをやめていた蛭子えびす能収よしかずさいデビューさせたことでもられている[2]。このように、自販機じはんきほんはエロ文化ぶんかのみならず、当時とうじアンダーグラウンド若者わかもの文化ぶんか一端いったんになうことにつながった[8]

衰退すいたい 編集へんしゅう

1980ねんころより、ビニールほんビニほん)とばれる性器せいき陰毛いんもう修正しゅうせいうす過激かげきなエロほん登場とうじょうしたこともあり、自販機じはんきほん縮小しゅくしょう衰退すいたいみち辿たどった[2]。また未成年みせいねんしゃ自由じゆう購入こうにゅうできる自販機じはんきのエロほんは、しばしばPTA警察けいさつかたきにされ、自動じどう販売はんばいでの出版しゅっぱんぶつ販売はんばいたいする規制きせい強化きょうか年々ねんねんすすんだ。

1980ねんには日本にっぽんPTA全国ぜんこく協議きょうぎかいが、有害ゆうがい図書としょ販売はんばい規制きせい立法りっぽう請願せいがん国会こっかい提出ていしゅつ[9]、43都道府県とどうふけん地方ちほう公共こうきょう団体だんたい青少年保護育成条例せいしょうねんほごいくせいじょうれいによる条例じょうれい制定せいていおこなった[10]。これが決定けっていとなり、1980年代ねんだい中頃なかごろ、ついに自販機じはんきほん絶滅ぜつめつまれた[2]

なお現在げんざいも、みせ外側そとがわ自販機じはんきき、営業えいぎょう時間じかんがいでも雑誌ざっしえるようにしている書店しょてんや、アダルトグッズ専用せんよう自販機じはんきにエロほん収納しゅうのうされている事例じれいもあるが、これは店頭てんとうりの雑誌ざっしたん自動じどう販売はんばい収容しゅうようしただけで、自販機じはんきようつくられたエロほんではなく、通常つうじょうこれらは「自販機じはんきほん」とはいわない[2]。2018ねん平成へいせい30ねん)では、やく500自動じどう販売はんばいがエロほんやアダルトDVDを販売はんばいするのみである[4]

特徴とくちょう 編集へんしゅう

日本にっぽんのエロ文化ぶんか黎明れいめい出版しゅっぱんぶつであり、成人せいじん雑誌ざっし比較ひかくするとつぎのような特徴とくちょうがある。

参考さんこう文献ぶんけん 編集へんしゅう

脚注きゃくちゅう 編集へんしゅう

  1. ^ 川本かわもとこう『ポルノ雑誌ざっし昭和しょうわちくま新書しんしょ 2011ねん 80-81ぺーじ
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o エディトリアル・デパートメントへんSpectator』vol.39「パンクマガジン『Jam』の神話しんわ幻冬舎げんとうしゃ 2017ねん
  3. ^ a b c d 東京とうきょう雑誌ざっし販売はんばい(かぶ)・ひがしざつグループ本部ほんぶ発行はっこう株式会社かぶしきがいしゃエルシー企画きかく制作せいさくひがしざつグループ総合そうごう会社かいしゃ案内あんない』(1978ねん9がつ
  4. ^ a b c d 自販機じはんきほん雑誌ざっし搬入はんにゅう じんのつかないよるもうスピードでやった”. 岡野おかのまこと. 小学館しょうがくかん週刊しゅうかんポスト』2018ねん3がつ9にちごう (2018ねん3がつ1にち). 2018ねん3がつ5にち閲覧えつらん
  5. ^ 日本にっぽんエロほんぜん」- ISBN 4778316746
  6. ^ たけぐま 1997, p. 126.
  7. ^ 黒沢くろさわ哲哉てつや全国ぜんこくばん あののエロほん自販機じはんき探訪たんぼう双葉社ふたばしゃ 2017ねん 19ぺーじ
  8. ^ a b c d e 特別とくべつ連載れんさい ダーティ・松本まつもと×永山ながやまかおる エロたましい!とが棲春の日々ひび(9)
  9. ^ 川本かわもとこう『ポルノ雑誌ざっし昭和しょうわ』ちくま新書しんしょ 2011ねん 120ぺーじ
  10. ^ 奥平おくだいら康弘やすひろ青少年せいしょうねん保護ほご条例じょうれい公安こうあん条例じょうれい学陽書房がくようしょぼう 1981ねん
  11. ^ 川本かわもとこう『ポルノ雑誌ざっし昭和しょうわ』ちくま新書しんしょ 2011ねん 125ぺーじ
  12. ^ 川本かわもとこう『ポルノ雑誌ざっし昭和しょうわ』ちくま新書しんしょ 2011ねん 112-119ぺーじ

関連かんれん雑誌ざっし 編集へんしゅう

関連かんれん会社かいしゃ 編集へんしゅう

関連かんれん人物じんぶつ 編集へんしゅう

外部がいぶリンク 編集へんしゅう