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著作権侵害 - Wikipedia

著作ちょさくけん侵害しんがい(ちょさくけんしんがい、えい: Copyright infringement)とは、私的してき使用しようフェアユース)の範囲はんいえて他人たにん著作ちょさくぶつ許可きょかでコピーし、配信はいしん上映じょうえい改変かいへん切除せつじょなどをする行為こういである[1]著作ちょさくけん侵害しんがいは、人々ひとびと創造そうぞう意欲いよく減退げんたいさせる行為こうい[2]として、ほうにより規制きせいされている。

なお、文化庁ぶんかちょうではインターネットじょう海賊版かいぞくばんによる著作ちょさくけん侵害しんがい対策たいさく情報じょうほうポータルサイトうち相談そうだん窓口まどぐち開設かいせつし、おもにインターネットじょう海賊版かいぞくばんによる著作ちょさくけん侵害しんがいかんする相談そうだんけている。

日本にっぽん

編集へんしゅう

著作ちょさくけんほうは、以下いかじょうすうのみ記載きさいする。

著作ちょさくけん侵害しんがい成立せいりつ要件ようけん

編集へんしゅう

著作ちょさくけん侵害しんがい直接ちょくせつ侵害しんがい)の成立せいりつ要件ようけん以下いか詳述しょうじゅつする。

著作ちょさく物性ぶっせい

編集へんしゅう

著作ちょさくけん侵害しんがい成立せいりつするには、著作ちょさくぶつ第三者だいさんしゃによって利用りようされていることが必要ひつようである。ここで著作ちょさくぶつとは「思想しそうまた感情かんじょう創作そうさくてき表現ひょうげんしたものであって、文芸ぶんげい学術がくじゅつ美術びじゅつまた音楽おんがく範囲はんいぞくするもの」である(2じょう1こう1ごう)。

他人たにん考案こうあんしたゲーム規則きそくルール)やスポーツ競技きょうぎ競技きょうぎ規則きそく他人たにん特許とっきょ発明はつめいは「思想しそう」であって、思想しそう創作そうさくてき表現ひょうげんたる著作ちょさくぶつではないから、それらを無断むだん利用りようしても著作ちょさくけん侵害しんがい成立せいりつしない[よう出典しゅってん]。また、工業こうぎょうてき方法ほうほうにより量産りょうさんすることを目的もくてきとして創作そうさくされるいわゆる工業こうぎょうデザイン応用おうよう美術びじゅつ)は、一般いっぱんてきには意匠いしょうけん対象たいしょうであり(意匠いしょうほう2じょう1こう、3じょう1こうはしらしょ)、著作ちょさくけん対象たいしょうにはならないとほぐされている。しかし、当該とうがい応用おうよう美術びじゅつであっても、感情かんじょう創作そうさくてき表現ひょうげんみとめられ、美術びじゅつ工芸こうげいてき価値かちとしての美術びじゅつせいそなわっているものについては、その著作ちょさく物性ぶっせい否定ひていすべきではないとした判例はんれいがある(「博多はかた人形にんぎょうあかとんぼ事件じけん」、長崎ながさき地方裁判所ちほうさいばんしょ佐世保させぼ支部しぶ判決はんけつ昭和しょうわ48ねん2がつ7にち)。

匿名とくめいBBSでのみや電子でんしメール本文ほんぶんYouTubeでの動画どうが紹介しょうかい字幕じまく著作ちょさくぶつであると判断はんだんされ、賠償金ばいしょうきん支払しはらいがめいじられた事例じれい存在そんざいする[3][4]

著作ちょさくけん存在そんざい

編集へんしゅう

著作ちょさくけん侵害しんがい成立せいりつするには、利用りようされている著作ちょさくぶつ著作ちょさくけん有効ゆうこう存続そんぞくしている必要ひつようがある。著作ちょさくぶつ利用りようされていても、なんらかの事由じゆうによって著作ちょさくけん原始げんしてき発生はっせいしていない場合ばあい、あるいは著作ちょさくけん原始げんしてき発生はっせいしていてもすで消滅しょうめつしている場合ばあいは、著作ちょさくけん侵害しんがい成立せいりつしない。

国内こくないほうにおいて保護ほごされる著作ちょさくぶつであること
編集へんしゅう

著作ちょさくけんほうによる保護ほごける著作ちょさくぶつは、以下いかの3つである(6じょう)。これらに該当がいとうしない著作ちょさくぶつは、日本国にっぽんこく著作ちょさくけんほうによる保護ほごけることはないので、無断むだん利用りようしても著作ちょさくけん侵害しんがい成立せいりつしない。

  1. 日本にっぽん国民こくみん著作ちょさくしゃとする著作ちょさくぶつ(1ごう
  2. 最初さいしょ日本にっぽん国内こくない発行はっこうされた著作ちょさくぶつ最初さいしょ外国がいこくにおいて発行はっこうされてから30にち以内いない日本にっぽん発行はっこうされたものをふくむ)(2ごう
  3. 条約じょうやくにより保護ほご義務ぎむ著作ちょさくぶつ(3ごう
原始げんしてき著作ちょさくけん目的もくてきとなる著作ちょさくぶつであること
編集へんしゅう

著作ちょさくけんほう規定きていでは、憲法けんぽうその法令ほうれいくに地方ちほう公共こうきょう団体だんたいはっする告示こくじ裁判所さいばんしょ判決はんけつぶんなどは、著作ちょさくけん目的もくてきとならない(13じょう各号かくごう)。したがって、これらの著作ちょさくぶつ著作ちょさくしゃ無断むだん利用りようしても、著作ちょさくけん侵害しんがい成立せいりつしない。

著作ちょさくけん消滅しょうめつしていないこと
編集へんしゅう

著作ちょさくけん存続そんぞく期間きかん満了まんりょう51じょう58じょう)、著作ちょさくけんしゃ死後しごにおける相続そうぞくじん存在そんざいとうまたは解散かいさん著作ちょさくけん法人ほうじん清算せいさんによる国庫こっこ帰属きぞく62じょうとう事由じゆうによって著作ちょさくけん消滅しょうめつする。いったん消滅しょうめつした著作ちょさくけんは、対抗たいこう要件ようけんたさないかぎ復活ふっかつしない。

著作ちょさくけん消滅しょうめつ著作ちょさくぶつ第三者だいさんしゃ無断むだん利用りようしても、著作ちょさくけん侵害しんがい成立せいりつしない。

たとえば、著作ちょさくしゃ死後しご70ねん無名むめいまたは変名へんめい著作ちょさくぶつ団体だんたい名義めいぎ著作ちょさくぶつ映画えいが著作ちょさくぶつ場合ばあいは、著作ちょさくぶつ公表こうひょう70ねん)が経過けいかした場合ばあい[ちゅう 1]著作ちょさくけん消滅しょうめつするため(著作ちょさくけんほう51じょう2こう)、当該とうがい著作ちょさくぶつ無断むだん利用りようしても著作ちょさくけん侵害しんがい成立せいりつしない。著作ちょさくけん侵害しんがい訴訟そしょうにおける著作ちょさくけん存続そんぞく判断はんだんは、差止さしどめ請求せいきゅう訴訟そしょうにおいては事実じじつしん口頭こうとう弁論べんろん終結しゅうけつ損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅうにおいては著作ちょさくぶつ利用りようされたときであるとする。

なお、日本にっぽんほうでは著作ちょさくけん放棄ほうきかんして明文めいぶん規定きていがないため、権利けんりしゃ放棄ほうき[ちゅう 2]により著作ちょさくけん将来しょうらいわた消滅しょうめつするのか、それとも期限きげんかつ無条件むじょうけん全面ぜんめん利用りようてき許諾きょだくまるのかは所論しょろんがある。また、権利けんりしゃ放棄ほうきにより、登録とうろくがなされていない著作ちょさくけんかん第三者だいさんしゃとのあいだ対抗たいこう要件ようけんうえ問題もんだいしょう[ちゅう 3]

著作ちょさくけんおよ範囲はんい利用りようされていること

編集へんしゅう
著作ちょさくけん効力こうりょく
編集へんしゅう

著作ちょさくけん侵害しんがい成立せいりつするには、21じょう28じょう規定きていする著作ちょさくけん効力こうりょく範囲はんいない著作ちょさくぶつ利用りようされていることが必要ひつようである。著作ちょさくけんほうは、著作ちょさくぶつ利用りよう行為こういのうち、以下いか態様たいようによって著作ちょさくぶつ利用りようする権利けんり著作ちょさくしゃ専有せんゆうさせている。したがって、以下いか行為こういが、著作ちょさくけん効力こうりょくおよ範囲はんいでの著作ちょさくぶつ利用りよう該当がいとうする。

  • 著作ちょさくぶつ複製ふくせいする行為こうい(21じょう
  • 著作ちょさくぶつおおやけ上演じょうえん演奏えんそうする行為こうい22じょう
  • 著作ちょさくぶつおおやけ上映じょうえいする行為こうい23じょう
  • 著作ちょさくぶつ公衆こうしゅう送信そうしん自動じどう公衆こうしゅう送信そうしん場合ばあいは、送信そうしん可能かのうふくむ)する行為こうい(23じょう1こう
  • 公衆こうしゅう送信そうしんされるその著作ちょさくぶつを、受信じゅしん装置そうちもちいておおやけ伝達でんたつする行為こうい(23じょう2こう
  • 言語げんご著作ちょさくぶつおおやけ口述こうじゅつする行為こうい24じょう
  • 美術びじゅつ著作ちょさくぶつまたは発行はっこう写真しゃしん著作ちょさくぶつを、これらのげん作品さくひんによりおおやけ展示てんじする行為こうい25じょう
  • 映画えいが著作ちょさくぶつを、その複製ふくせいぶつにより頒布はんぷする行為こうい26じょう1こう
  • 映画えいが著作ちょさくぶつにおいて複製ふくせいされている著作ちょさくぶつを、当該とうがい映画えいが著作ちょさくぶつ複製ふくせいぶつにより頒布はんぷする行為こうい(26じょう2こう
  • 著作ちょさくぶつ映画えいが著作ちょさくぶつのぞく)をそのげん作品さくひんまたは複製ふくせいぶつ譲渡じょうとにより公衆こうしゅう提供ていきょうする行為こうい26じょうの2
  • 著作ちょさくぶつ映画えいが著作ちょさくぶつのぞく)をその複製ふくせいぶつ貸与たいよにより公衆こうしゅう提供ていきょうする行為こうい26じょうの3
  • 著作ちょさくぶつ翻訳ほんやく編曲へんきょく翻案ほんあんひとしにより、2てき著作ちょさくぶつ作成さくせいする行為こうい28じょう

日常にちじょうとしての「利用りよう」には、著作ちょさくぶつんだり視聴しちょうしたり、プログラムを実行じっこうさせること(「使用しよう」)もふくまれるが、うえ列挙れっきょした著作ちょさくけんについては「使用しよう」は規定きていされていないため、うえ列挙れっきょした著作ちょさくけんたいする侵害しんがい基本きほんてきには成立せいりつしない。ただし、一部いちぶ権利けんり侵害しんがい類型るいけいでは「使用しよう」を要件ようけん一部いちぶとする場合ばあいもある(ほう113こう2こうなど)。

著作ちょさくけん効力こうりょく制限せいげん
編集へんしゅう

著作ちょさくぶつ利用りよう促進そくしんとうへの配慮はいりょから、著作ちょさくけん効力こうりょく制限せいげんされる。すなわち、私的してき複製ふくせい30じょう1こう)、引用いんよう32じょう1こう)、営利えいり報酬ほうしゅう対価たいか演奏えんそう38じょう1こう)などの態様たいようにより著作ちょさくぶつ利用りようする行為こうい著作ちょさくけんおよばない。

依拠いきょせい類似るいじせい
編集へんしゅう

著作ちょさくぶつ利用りようしているとされるには、げん利用りようされている著作ちょさくぶつ利用りよう著作ちょさくぶつ)が、対象たいしょうとなる既存きそん著作ちょさくぶつ既存きそん著作ちょさくぶつ)に依拠いきょして作出さくしゅつされたものであって(依拠いきょせい)、利用りよう著作ちょさくぶつ既存きそん著作ちょさくぶつにおける表現ひょうげん類似るいじしていること(類似るいじせい)が必要ひつようであるとする。いずれかの要件ようけん場合ばあいは、既存きそん著作ちょさくぶつ利用りようしていることにはならず、著作ちょさくけん侵害しんがい成立せいりつしない。

依拠いきょせい
ワン・レイニーナイト・イン・トーキョー事件じけん」の最高裁判所さいこうさいばんしょ判決はんけつ昭和しょうわ53ねん9月7にち)は、「既存きそん著作ちょさくぶつ同一どういつせいのある作品さくひん作成さくせいされても、それが既存きそん著作ちょさくぶつ依拠いきょして再製さいせいされたものでないときは、その複製ふくせいをしたことにはあたらず、著作ちょさくけん侵害しんがい問題もんだいしょうずる余地よちはないところ、既存きそん著作ちょさくぶつせっする機会きかいがなく、したがえつて、その存在そんざい内容ないようらなかつたものは、これをらなかつたことにつき過失かしつがあるととにかかわらず、既存きそん著作ちょさくぶつ依拠いきょした作品さくひん再製さいせいするによしないものであるから、既存きそん著作ちょさくぶつ同一どういつせいのある作品さくひん作成さくせいしても、これにより著作ちょさくけん侵害しんがいせめにんじなければならないものではない」と判示はんじし、げん利用りようしている著作ちょさくぶつ既存きそん著作ちょさくぶつ同一どういつまたは類似るいじしている場合ばあいであっても、利用りよう著作ちょさくぶつ既存きそん著作ちょさくぶつとは独立どくりつして創作そうさくされたものである場合ばあいには、著作ちょさくけん侵害しんがい成立せいりつしないことをしめした。
このような著作ちょさくけん性質せいしつから、著作ちょさくけん相対そうたいてき独占どくせんけんであるといわれる。同様どうよう性質せいしつゆうする独占どくせんけん回路かいろ配置はいち利用りようけんがある(半導体はんどうたい集積しゅうせき回路かいろ回路かいろ配置はいちかんする法律ほうりつ12じょう1こう)。一方いっぽう特許とっきょけん実用じつよう新案しんあんけん意匠いしょうけん絶対ぜったいてき独占どくせんけんである。すなわち、みずか独立どくりつして創作そうさくした発明はつめい考案こうあん意匠いしょう実施じっししていても、それらが他人たにん特許とっきょけん実用じつよう新案しんあんけん意匠いしょうけん対象たいしょうとなっている場合ばあいには、権利けんり侵害しんがい成立せいりつする。
著作ちょさくけん侵害しんがい訴訟そしょうにおいては、原告げんこく著作ちょさくけんしゃ)が類似るいじせい依拠いきょせい立証りっしょう責任せきにんうものとほぐされている。類似るいじせいは、原告げんこく既存きそん著作ちょさくぶつ被告ひこく利用りよう著作ちょさくぶつ対比たいひによる客観きゃっかんてき判断はんだん可能かのうであるため、その立証りっしょう比較的ひかくてき容易よういである。一方いっぽうで、依拠いきょせい被告ひこく主観しゅかんてき心理しんり状態じょうたい問題もんだいであるから、たとえば以下いかのような間接かんせつ事実じじつから依拠いきょせいを推認することになる。
  1. 被告ひこくによる原告げんこく著作ちょさくぶつへのアクセス可能かのうせい
  2. 被告ひこく利用りよう著作ちょさくぶつ原告げんこく著作ちょさくぶつにおける表現ひょうげん酷似こくじせい
  3. 原告げんこく著作ちょさくぶつ著名ちょめいせい周知しゅうちせい
これらの間接かんせつ事実じじつ原告げんこく立証りっしょうしたときは、ぎゃく依拠いきょせい存在そんざいしなかったことを、被告ひこく独立どくりつ創作そうさく抗弁こうべんとして立証りっしょうしないかぎり、依拠いきょせいみとめられるものとする。
類似るいじせい
パロディ・モンタージュ写真しゃしん事件じけん」(だいいち)の最高さいこう裁判所さいばんしょ判決はんけつ昭和しょうわ55ねん3月28にち)は、「自己じこ著作ちょさくぶつ創作そうさくするにあたり、他人たにん著作ちょさくぶつ素材そざいとして利用りようすることは勿論もちろんゆるされないことではないが、みぎ他人たにん許諾きょだくくして利用りようをすることがゆるされるのは、他人たにん著作ちょさくぶつにおける表現ひょうげん形式けいしきじょう本質ほんしつてき特徴とくちょうをそれ自体じたいとして直接ちょくせつ感得かんとくさせないような態様たいようにおいてこれを利用りようする場合ばあいかぎられる」と判示はんじした。ほん事件じけん著作ちょさくしゃ人格じんかくけんひとつである同一どういつせい保持ほじけん侵害しんがい事案じあんであるが、著作ちょさくけん財産ざいさんけん侵害しんがい場合ばあいにも適用てきようされるべきものとほぐされる。

利用りようしゃ著作ちょさくぶつ利用りようについて正当せいとう権原けんげんゆうしていないこと

編集へんしゅう

以下いかのような場合ばあいは、著作ちょさくぶつ利用りようについて、正当せいとう権原けんげんゆうしているといえる。

著作ちょさくぶつ利用りよう許諾きょだく
編集へんしゅう

著作ちょさくけんしゃから著作ちょさくぶつ利用りよう許諾きょだく63じょう1こう)をけた場合ばあい、その利用りよう許諾きょだく範囲はんいない著作ちょさくぶつ利用りようするかぎり、著作ちょさくけん侵害しんがい成立せいりつしない。たとえば、音楽おんがくのネット配信はいしんについて音楽おんがく著作ちょさくけんしゃ(および音楽おんがく著作ちょさくけんしゃから著作ちょさくけん管理かんり業務ぎょうむ委託いたくされた一般いっぱん社団しゃだん法人ほうじん日本音楽著作権協会にほんおんがくちょさくけんきょうかい(JASRAC)とうや、音楽おんがく著作ちょさくけんしゃから音楽おんがく著作ちょさくぶつ販売はんばい委託いたくされている著作ちょさく隣接りんせつけんしゃであるレコード会社かいしゃなど)から許諾きょだくけた場合ばあいにおいて、許諾きょだくけた音楽おんがくを、許諾きょだくけた方法ほうほうにしたがってネット配信はいしんする行為こういは、著作ちょさくけん侵害しんがいとならない。

出版しゅっぱんけん設定せってい
編集へんしゅう

著作ちょさくけんしゃ複製ふくせいけんしゃ)から出版しゅっぱんけん79じょう1こう)の設定せっていけている場合ばあいも、設定せってい行為こういによりさだめられた範囲はんいない著作ちょさくぶつ複製ふくせいするかぎり、著作ちょさくけん侵害しんがい成立せいりつしない。

みなし侵害しんがい

編集へんしゅう

以上いじょう列挙れっきょした要件ようけんたさない場合ばあいは、原則げんそくとして著作ちょさくけん侵害しんがい直接ちょくせつ侵害しんがい)は成立せいりつしない。しかし、これらの要件ようけんたさない場合ばあいであっても、直接ちょくせつ侵害しんがい予備よびてき行為こうい著作ちょさくけん侵害しんがい擬制ぎせいされることがある(みなし侵害しんがい)。

著作ちょさくけんほう113じょう

編集へんしゅう

日本国にっぽんこく著作ちょさくけんほうでは、以下いかの5類型るいけい著作ちょさくけん侵害しんがいとみなしている(113じょう)。

  1. 国内こくないにおいて頒布はんぷすることを目的もくてきをもって、輸入ゆにゅうときにおいて国内こくない作成さくせいしたとしたならば著作ちょさくけん侵害しんがいとなるべき行為こういによって作成さくせいされたもの輸入ゆにゅうする行為こういどうじょう1こう1ごう
  2. 著作ちょさくけん侵害しんがいする行為こういによって作成さくせいされたもの前記ぜんき1の輸入ゆにゅうぶつふくむ)をじょうって頒布はんぷし、または頒布はんぷ目的もくてきをもって所持しょじする行為こういどうじょう1こう2ごう
  3. プログラムの著作ちょさくぶつ著作ちょさくけん侵害しんがいする行為こういによって作成さくせいされた複製ふくせいぶつを、業務ぎょうむじょう電子でんし計算けいさん使用しよう[ちゅう 4]する行為こうい複製ふくせいぶつ使用しよう権原けんげん取得しゅとくしたときじょうっていた場合ばあいかぎる)(どうじょう2こう
  4. 権利けんり管理かんり情報じょうほうかんする以下いか行為こういどうじょう3こう
    1. 虚偽きょぎ権利けんり管理かんり情報じょうほう故意こい付加ふかする行為こうい(1ごう
    2. 権利けんり管理かんり情報じょうほう故意こい除去じょきょし、または改変かいへんする行為こうい(2ごう
    3. 前記ぜんき行為こういおこなわれた著作ちょさくぶつを、じょうって頒布はんぷし、もしくは頒布はんぷ目的もくてき輸入ゆにゅうし、またはじょうって公衆こうしゅう送信そうしん送信そうしん可能かのうする行為こうい(3ごう
  5. 国内こくない頒布はんぷ目的もくてき商業しょうぎょうようレコード(以下いか国内こくないばん)を発行はっこうしている著作ちょさくけんしゃが、それと同一どういつ国外こくがい頒布はんぷ目的もくてき商業しょうぎょうようレコード(以下いか外国がいこくばん)を国外こくがいにおいて発行はっこうしている場合ばあいにおいて、じょうって、外国がいこくばん国内こくない頒布はんぷ目的もくてき輸入ゆにゅうする行為こうい、または当該とうがい外国がいこくばん国内こくない頒布はんぷし、もしくは国内こくない頒布はんぷ目的もくてき所持しょじする行為こうい(ただし、著作ちょさくけんしゃることが見込みこまれる利益りえき不当ふとうがいされる場合ばあいかぎられる。また、国内こくないばん発行はっこうから政令せいれいさだめる期間きかん経過けいかした場合ばあいのぞく)(どうじょう5こう)(レコード輸入ゆにゅうけん参照さんしょう

著作ちょさくけん侵害しんがい行為こういたいする制裁せいさい措置そち

編集へんしゅう

著作ちょさくけん侵害しんがいをしたものたいしては、損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅう差止さしどめ請求せいきゅうのような民事みんじてき請求せいきゅうみとめられている。また、故意こい著作ちょさくけん侵害しんがいをしたものたいしては、懲役ちょうえき罰金ばっきん刑事けいじばつされることがある。

民事みんじ訴訟そしょう

編集へんしゅう
差止さしどめ請求せいきゅう
著作ちょさくけんしゃは、著作ちょさくけん侵害しんがいするものまたは侵害しんがいするおそれがあるものたいし、侵害しんがい停止ていしまたは予防よぼう請求せいきゅうすることができる(112じょう1こう)。また、差止さしどめ請求せいきゅうをするにさいし、侵害しんがい行為こうい組成そせいぶつ侵害しんがい行為こうい供用きょうようぶつ廃棄はいき請求せいきゅうすることもできる。侵害しんがい行為こうい組成そせいぶつれいとしては、違法いほう複製ふくせいされたCD、DVDメディアとう侵害しんがい行為こうい供用きょうようぶつれいとしては、違法いほう複製ふくせいもちいられたパソコン違法いほう演奏えんそう使用しようされた楽器がっきなどがげられる。
差止さしどめ請求せいきゅうには、被告ひこく故意こいまたは過失かしつ要件ようけんとされず、不可抗力ふかこうりょくによる侵害しんがいであっても請求せいきゅう可能かのうである。これには侵害しんがい行為こうい組成そせいぶつ侵害しんがい行為こうい供用きょうようぶつ廃棄はいきふくまれる。
また、「著作ちょさくけん侵害しんがいする」や「侵害しんがいするおそれがある」の判断はんだん基準きじゅんは、事実じじつしん口頭こうとう弁論べんろん終結しゅうけつであるとする。したがって、事実じじつしん口頭こうとう弁論べんろん終結しゅうけつまでに著作ちょさくけん消滅しょうめつし、あるいは被告ひこく著作ちょさくけん侵害しんがい行為こうい停止ていしし、かつ再度さいど著作ちょさくけん侵害しんがいのおそれがなくなれば、差止さしどめ請求せいきゅう棄却ききゃくされる。
損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅう
著作ちょさくけんしゃは、故意こいまたは過失かしつにより著作ちょさくけん侵害しんがいし、著作ちょさくけんしゃ損害そんがい発生はっせいさせたものたいし、発生はっせいした損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅうをすることができる(民法みんぽう709じょう)。ただし、著作ちょさくけんしゃまたはその法定ほうてい代理人だいりにんが、損害そんがいおよび著作ちょさくけん侵害しんがいしゃったときから3年間ねんかん損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅうけん行使こうししないときは、請求せいきゅうけん時効じこうによって消滅しょうめつする。また、著作ちょさくけん侵害しんがいときから20ねんじょ斥期あいだ)が経過けいかしたときも、同様どうよう消滅しょうめつする(民法みんぽう724じょう)。
著作ちょさくけん侵害しんがい原因げんいんとして発生はっせいする損害そんがいには、侵害しんがい調査ちょうさ費用ひよう弁護士べんごしへの報酬ほうしゅうといった、著作ちょさくけん侵害しんがいがなければ支払しはら必要ひつようがなかった費用ひよう積極せっきょくてき損害そんがい)と、侵害しんがいひん海賊版かいぞくばん)の流通りゅうつうによる正規せいきひん売上うりあげ減退げんたいのような、著作ちょさくけん侵害しんがいがなければられるはずであった利益りえき消極しょうきょくてき損害そんがい)がある。前者ぜんしゃ損害そんがいがく立証りっしょう比較的ひかくてき容易よういであるが、著作ちょさくけん対象たいしょうである著作ちょさくぶつ無体物むたいぶつであるゆえ、後者こうしゃ損害そんがいがく立証りっしょう困難こんなんである。そこで、著作ちょさくけんほう損害そんがい推定すいてい規定きていなどをき、原告げんこく著作ちょさくけんしゃ)による損害そんがいがく立証りっしょう負担ふたん軽減けいげんしている(114じょう1こう~3こう)。さらにTPP11協定きょうていほう改正かいせいこうは、対象たいしょう著作ちょさくけんとう管理かんり事業じぎょうしゃにより管理かんりされている場合ばあいにおいてはその使用しようりょう規程きていにより算出さんしゅつしたがく複数ふくすうある場合ばあい最高さいこうがく)を損害そんがいがくとして賠償ばいしょう請求せいきゅうすることができる。
なお、これらの損害そんがいがく算定さんていについては補充ほじゅうてき規定きていであり、ほう114じょう4こうおよび民法みんぽう709じょうもとづいてそれらをえたがく損害そんがいがく請求せいきゅうさまたげない。
不当ふとう利得りとく返還へんかん請求せいきゅう
その著作ちょさくけんしゃは、著作ちょさくけん侵害しんがいすることによって利益りえきているものたいし、当該とうがい不当ふとう利得りとく返還へんかん請求せいきゅうすることができる(民法みんぽう703じょう

刑事けいじばつ

編集へんしゅう

著作ちょさくけん故意こい侵害しんがいしたものは、10ねん以下いか懲役ちょうえきまたは1000まんえん以下いか罰金ばっきんしょせられる(懲役ちょうえき罰金ばっきん併科へいかされることもある)(119じょう)。

また、法人ほうじん代表だいひょうしゃ従業じゅうぎょういんとう著作ちょさくけん侵害しんがい行為こういをしたときは、行為こういしゃのほか、当該とうがい法人ほうじんも3おくえん以下いか罰金ばっきんしょせられる(りょうばっ規定きてい)(124じょう)。

刑事けいじばつ懲役ちょうえきけい罰金ばっきんけい)がされるのは、著作ちょさくけん故意こい侵害しんがいした場合ばあいのみである。過失かしつにより著作ちょさくけん侵害しんがいした場合ばあいは、刑事けいじばつされない(刑法けいほう38じょう1こう)。

いわゆる「違法いほうダウンロードの刑事けいじばつ」として、「私的してき使用しよう目的もくてきをもって、有償ゆうしょう著作ちょさくぶつとう著作ちょさくけんまた著作ちょさく隣接りんせつけん侵害しんがいする自動じどう公衆こうしゅう送信そうしん受信じゅしんしておこなうデジタル方式ほうしき録音ろくおんまた録画ろくがを、みずからその事実じじつりながらって著作ちょさくけんまた著作ちょさく隣接りんせつけん侵害しんがいしたものたいし、2ねん以下いか懲役ちょうえきしくは 200まんえん以下いか罰金ばっきんしょし、またはこれを併科へいかする」[5]さだめられている。違法いほうダウンロードの刑事けいじばつにおける「有償ゆうしょう著作ちょさくぶつとう」とは、「録音ろくおんされ、または録画ろくがされた著作ちょさくぶつ実演じつえん、レコードまたは放送ほうそうもしくは有線ゆうせん放送ほうそうかかおともしくは影像えいぞうであって、有償ゆうしょう公衆こうしゅう提供ていきょうされ、または提示ていじされているもの(その提供ていきょうまたは提示ていじ著作ちょさくけんまたは著作ちょさく隣接りんせつけん侵害しんがいしないものにかぎる。)」である。

これらをふく著作ちょさくけん侵害しんがいざいだい部分ぶぶん(著作ちょさくけんほうだい119じょうだい120じょうだいさんごうおよだいよんごうだい121じょうならびに前条ぜんじょうだいいちこうつみとされるもの)は親告罪しんこくざいである(123じょう1こう)。これらについては、著作ちょさくけんしゃによる告訴こくそがなければ、検察官けんさつかん公訴こうそ提起ていきすることができない[ちゅう 5]が、TPP11協定きょうていほう改正かいせいにより、一定いってい要件ようけん著作ちょさくけんとう侵害しんがいとうざいにつき親告罪しんこくざいとなった(「日本にっぽん著作ちょさくけんほうにおける親告罪しんこくざい」を参照さんしょう)。

技術ぎじゅつてき保護ほご手段しゅだん回避かいひおこなうことをその機能きのうとする装置そうち提供ていきょう、およびそれを利用りようした複製ふくせいごうとしてった場合ばあいについては、さんねん以下いか懲役ちょうえきしくはさんひゃくまんえん以下いか罰金ばっきんしょせられる(懲役ちょうえき罰金ばっきん併科へいかされることもある)(著作ちょさくけんほうだい120じょうの2だいいちごうおよだいごう)。別途べっと不正ふせい競争きょうそう防止ぼうしほうによる罰則ばっそくもある。

著作ちょさくけんほうには国外こくがいはん規定きていがないが、刑法けいほう施行しこうほう明治めいじ41ねん3がつ28にち法律ほうりつだい29ごうだい27じょうだい1ごうにより著作ちょさくけんほうかかげるつみについては刑法けいほうだい3じょうれいしたがう、すなわ日本にっぽん国民こくみん国外こくがいはん適用てきようになり、日本にっぽん国内こくないでの行為こういほか日本にっぽん国民こくみん日本にっぽん国外こくがい著作ちょさくけん侵害しんがいつみ)となる行為こういおこなった場合ばあい処罰しょばつされる。

日本にっぽんはじめての著作ちょさくけん侵害しんがい訴訟そしょうは、浪曲ろうきょく桃中軒とうちゅうけん雲右衛門くもえもんのレコードをめぐるものである[6]

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく

編集へんしゅう

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくではアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく通商つうしょう代表だいひょう(USTR)が知的ちてき財産ざいさんけん保護ほご世界せかいてき状況じょうきょうについて毎年まいとし評価ひょうか報告ほうこくしょ公表こうひょうしている[7]。この報告ほうこくしょは「スペシャル301じょう報告ほうこくしょ」とばれるもので301の番号ばんごうは1974ねん通商つうしょうほう301じょうし、通商つうしょう代表だいひょう知的ちてき財産ざいさんけん保護ほご十分じゅうぶんっていないくに特定とくていするという条項じょうこうである[7]

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく通商つうしょう代表だいひょう知的ちてき財産ざいさんけん保護ほご執行しっこう不十分ふじゅうぶんとみられるくに監視かんしリストを報告ほうこくしょ記載きさいし、それにしたがって米国べいこく政府せいふ貿易ぼうえき制裁せいさいなどの報復ほうふくてき措置そちをとることが可能かのうとなる[7]

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 一定いってい要件ようけん70ねんとなる。ただしタイミングによっては適用てきようされず50ねんとなる場合ばあいがある。放送ほうそうおよ有線ゆうせん放送ほうそう著作ちょさく隣接りんせつけんについても50ねんのまま(ただし放送ほうそう有線ゆうせん放送ほうそう構成こうせいする著作ちょさくぶつとうについては別途べっと検討けんとうよう)である。(「TPP11協定きょうていほう改正かいせい参照さんしょう
  2. ^ 著作ちょさくけん無体むたい財産ざいさんけん一種いっしゅである知的ちてき所有しょゆうけん一種いっしゅであり、財産ざいさん法体ほうたいけいてきには放棄ほうき可能かのうかんがえられる。
  3. ^ もっとも、該当がいとう著作ちょさくぶつかんし、正当せいとう著作ちょさくけんしゃ著作ちょさくけん放棄ほうきしたこと証明しょうめいできれば、対抗たいこうする第三者だいさんしゃはそれを反証はんしょうしなければならない。
  4. ^ 利用りよう」ではなく「使用しよう」である。よって、一般いっぱんてきにはプログラムの実行じっこうである。
  5. ^ これは、つみ親告罪しんこくざいであるために、公訴こうそするにあたり告訴こくそおこなわれていること必要ひつようであること意味いみするのであって、違法いほう事態じたい発見はっけんしゃによる捜査そうさ機関きかんへの情報じょうほう提供ていきょう受付うけつけや、またそこからの捜査そうさ機関きかんによる著作ちょさくけんしゃへの連絡れんらく(これをけた著作ちょさくけんしゃ告訴こくそおこなえば公訴こうそ提起ていき可能かのうになる)およ事態じたい捜査そうさについてもおこなえないということではない。

出典しゅってん

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  1. ^ 日本にっぽん国語こくごだい辞典じてん, 精選せいせんばん. “著作ちょさくけん侵害しんがいとは”. コトバンク. 2021ねん9がつ16にち閲覧えつらん
  2. ^ 知恵ちえぞう,デジタル大辞泉だいじせん,ブランド用語ようごしゅう. “知的ちてき財産ざいさんとは”. コトバンク. 2021ねん9がつ16にち閲覧えつらん
  3. ^ ホテルジャンキーズ事件じけん高裁こうさい判決はんけつ確定かくてい
  4. ^ YouTubeの字幕じまく無断むだん転載てんさい著作ちょさくけん侵害しんがい」 大阪おおさか地裁ちさい判決はんけつ 毎日新聞まいにちしんぶん 2021ねん11月21にち
  5. ^ ほうだい119じょうだい3こう
  6. ^ 東京とうきょうさんだい貧民窟ひんみんくつ出身しゅっしんでありながら皇族こうぞくあいされた伝説でんせつ浪曲ろうきょく ひゃく回忌かいきふたた脚光きゃっこう矢来やらいまちぐるり(新潮社しんちょうしゃ)、2014.8.7
  7. ^ a b c ローラ・デナルディス『インターネットガバナンス 世界せかいめるえざるたたかい』2015ねん河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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