衆参しゅうさん同日どうじつ選挙せんきょ

衆参しゅうさん同日どうじつ選挙せんきょ（しゅうさんどうじつせんきょ）は、衆議院しゅうぎいん議員ぎいん総そう選挙せんきょと参議院さんぎいん議員ぎいん通常つうじょう選挙せんきょの投票とうひょう日びを同日どうじつにする選挙せんきょのこと。衆参しゅうさん同時どうじ選挙せんきょ^[1]、衆参しゅうさんダブル選挙せんきょ^[2]とも呼よばれる。

概説がいせつ

衆参しゅうさん同日どうじつ選挙せんきょは参議院さんぎいんの非ひ改選かいせん議員ぎいん以外いがいの国会こっかい議員ぎいん、すなわち衆議院しゅうぎいん議員ぎいんの全員ぜんいんと参議院さんぎいん議員ぎいんの半数はんすうが改選かいせんされるので、一いち度どに多おおくの民意みんいを反映はんえいさせやすい選挙せんきょである。また、衆議院しゅうぎいん議員ぎいんの参院さんいん選せん立候補りっこうほ、改選かいせん参議院さんぎいん議員ぎいんの衆院しゅういん選せん立候補りっこうほなど、衆参しゅうさんの鞍替くらがえがしやすい選挙せんきょになる。2016年ねん、山本やまもと太郎たろう参議院さんぎいん議員ぎいんは、同日どうじつ選せんになった場合ばあいには「（衆議院しゅうぎいんへの）鞍替くらがえもありえる」と述のべている^[3]。

投票とうひょう日びは同日どうじつであるが、公職こうしょく選挙せんきょ法ほうの規定きていにより、衆参しゅうさんで公示こうじ日びがずれるので、選挙せんきょ運動うんどう期間きかんは異ことなる。なお、公職こうしょく選挙せんきょ法ほう第だい87条じょうにより、1人ひとりの候補者こうほしゃが両方りょうほうの選挙せんきょに同時どうじに立候補りっこうほをすることは出来できない。

同日どうじつ選せんの次つぎの国政こくせい選挙せんきょは、参議院さんぎいんは3年ねん後ごであり、衆議院しゅうぎいんは総そう選挙せんきょから解散かいさんまでおおよそ3年ねん程度ていどの間あいだがおかれることが通例つうれいであるため、補欠ほけつ選挙せんきょを除のぞいて国政こくせい選挙せんきょが3年ねん程度ていどの間あいだ、行おこなわれない可能かのう性せいが高たかくなる。過去かこ2回かいの同日どうじつ選せんの場合ばあい、3年ねん後ごの参院さんいん選せんのおおむね半年はんとし後ごに衆院しゅういん選せんが行おこなわれている。

同日どうじつ選せんでは投票とうひょう率りつが上あがり、浮動ふどう票ひょうに依存いぞんする政党せいとうに有利ゆうりであり、組織そしき票ひょうに依存いぞんする政党せいとうに不利ふりであるという見方みかたが一般いっぱん的てきとなっている。戦後せんごの日本人にっぽんじんの思想しそう傾向けいこうは、棄権きけん者しゃを含ふくめ、与党よとうである保守ほしゅ政党せいとうを積極せっきょく的てきに支持しじしないまでも中道右派ちゅうどううはである人ひとが多数たすう派はであり、それに対抗たいこうする少数しょうすう派はの与党よとう批判ひはん層そうが必かならず選挙せんきょに行いくことで国会こっかいの議席ぎせきがおおむね与党よとう:野党やとう=2:1になる55年ねん体制たいせいが続つづいてきた。そのため政権せいけんを担当たんとうしている時ときの与党よとうが衆院しゅういん選せんで勝かち、支持しじ率りつが低ひくくない状況じょうきょうで同日どうじつ選せんを行おこなえば、普段ふだんは棄権きけんしている潜在せんざい的てき与党よとう支持しじ層そうも投票とうひょうに行いくことで与党よとうに有利ゆうりになるとされる。

また、与党よとうに有利ゆうりとも言いわれる。これは、衆院しゅういん選せんあるいは参院さんいん選せんを単独たんどくで行おこなった場合ばあいは野党やとう間あいだで候補者こうほしゃ調整ちょうせいなどの選挙せんきょ協力きょうりょくを行おこないやすいが、同日どうじつ選せんとなった場合ばあいはそれぞれの政党せいとうが議席ぎせきの獲得かくとくを目論もくろむため、選挙せんきょ協力きょうりょくを行おこないにくいという事情じじょうがあるからである。野党やとうに不利ふりであることは選挙せんきょ結果けっかにも現あらわれており、実施じっしされた2回かいとも野党やとう第だい一いち党とうだった社会党しゃかいとう、第だい二に党とうだった公明党こうめいとうは惨敗ざんぱいし、議席ぎせきを減へらしている。

特とくに参院さんいん選せんは衆院しゅういん選せんに比くらべて投票とうひょう率りつが低ひくい傾向けいこうがあるため、同日どうじつ選せんによる投票とうひょう率りつへの影響えいきょうが顕著けんちょである。また参院さんいん選せんよりも衆院しゅういん選せんが注目ちゅうもくされがちなことや、本来ほんらいなら参院さんいん選せんの候補者こうほしゃの応援おうえんに回まわる衆議院しゅうぎいん議員ぎいんが自分じぶんの選挙せんきょ活動かつどうに専念せんねんしがちなことから、与党よとうの参議院さんぎいん幹部かんぶからは反対はんたい論ろんが出でることが多おおい。

1994年ねんに衆議院しゅうぎいんの選挙せんきょ制度せいどが中ちゅう選挙せんきょ区く制せいから小しょう選挙せんきょ区く比例ひれい代表だいひょう並立へいりつ制せいに変更へんこうされた。中ちゅう選挙せんきょ区く制せいは「人ひとを選えらぶ選挙せんきょ」と呼よばれ、強固きょうこな後援こうえん会かい組織そしきを誇ほこる自民党じみんとうの候補者こうほしゃが派閥はばつ対抗たいこうで競きそい合あい、同日どうじつ選せんではそろって参院さんいん選せん候補こうほを後押あとおししたが、現行げんこうの小しょう選挙せんきょ区く制せいは「政党せいとうを選えらぶ選挙せんきょ」の意味合いみあいが強つよく、地盤じばんが不安定ふあんていな若手わかての衆議院しゅうぎいん議員ぎいんも少すくなくない。このため「同日どうじつ選せんになっても衆院しゅういん選せんの勢いきおいが参院さんいん選せんに波及はきゅうしにくい」との見方みかたもある。

また1994年ねんの制度せいど変更へんこうによって同日どうじつ選せんでは有権者ゆうけんしゃは4枚まいの投票とうひょう用紙ようしに投票とうひょう先さきを書かくことになる。2016年ねん、安倍晋三あべしんぞう首相しゅしょうは「同日どうじつ選せんをやったら投票とうひょう用紙ようしは四よん枚まい。有権者ゆうけんしゃはバランス感覚かんかくがあるから、全部ぜんぶに自民党じみんとうとは書かかない」と述のべて、同日どうじつ選せんを避さけた例れいがある^[4]。

選挙せんきょ期日きじつの法的ほうてき制約せいやく

衆議院しゅうぎいん議員ぎいんの任期にんき満了まんりょうによる総そう選挙せんきょは、任期にんき満了まんりょうの日ひの前ぜん30日にち以内いないに行おこなわれる（公職こうしょく選挙せんきょ法ほう31条じょう）。参議院さんぎいん議員ぎいんの通常つうじょう選挙せんきょは、任期にんき満了まんりょうの日ひの前ぜん30日にち以内いないに行おこなわれる（公職こうしょく選挙せんきょ法ほう32条じょう1項こう）。

ただし、衆参しゅうさん同日どうじつ選挙せんきょを行おこなうにあたって、衆議院しゅうぎいん議員ぎいんの任期にんき満了まんりょうと参議院さんぎいん議員ぎいんの任期にんき満了まんりょうの日ひが異ことなるケースが多おおい。この場合ばあい、衆議院しゅうぎいんを解散かいさんして選挙せんきょ期日きじつを合あわせることになる。また、衆議院しゅうぎいんが解散かいさんされたときは、参議院さんぎいんは、同時どうじに閉会へいかいとなる（日本国にっぽんこく憲法けんぽう第だい54条じょう第だい2項こう）。

衆議院しゅうぎいんが解散かいさんされたときは、解散かいさんの日ひから40日にち以内いないに衆議院しゅうぎいん議員ぎいん総そう選挙せんきょを行おこなわなければならない（日本国にっぽんこく憲法けんぽう54条じょう第だい1項こう、公職こうしょく選挙せんきょ法ほう第だい31条じょう3項こう）。また、参議院さんぎいんの通常つうじょう選挙せんきょを行おこなう期間きかんが、参議院さんぎいん開会かいかい中ちゅうまたは参議院さんぎいん閉会へいかいの日ひから23日にち以内いないにかかる場合ばあい、参議院さんぎいん閉会へいかいの日ひから24日にち以後いご30日にち以内いないに行おこなう（公職こうしょく選挙せんきょ法ほう32条じょう2項こう）。

以上いじょうの法令ほうれいに照てらし日程にってい上じょうの制約せいやくが生しょうじる。

なお、衆参しゅうさん同日どうじつ選挙せんきょを目的もくてきとした7条じょう解散かいさんについて「両院りょういん議員ぎいんにふさわしい人物じんぶつを選えらぶ機会きかいを奪うばい、憲法けんぽう違反いはん」として第だい36回かい衆議院しゅうぎいん議員ぎいん総そう選挙せんきょの無効むこうを求もとめた訴訟そしょうが起おこされたが、1987年ねん3月がつ25日にちに名古屋なごや高裁こうさいが訴うったえを棄却ききゃくし、同年どうねん11月がつ24日にちに最高裁さいこうさいが上告じょうこくを棄却ききゃくし、衆参しゅうさん同日どうじつ選挙せんきょを目的もくてきとした7条じょう解散かいさんによる衆院しゅういん選せんを無効むこうとしない判決はんけつが確定かくていしている^[5]^[6]^[7]。

問題もんだい点てん

同時どうじに投票とうひょうを行おこなうため、衆参しゅうさんが似にたような構成こうせいになってしまうこと、選挙せんきょのない国会こっかい議員ぎいんが参議院さんぎいんの半数はんすうの非ひ改選かいせん議員ぎいんのみになり、衆議院しゅうぎいん解散かいさんから投票とうひょう日びまでの期間きかん（衆議院しゅうぎいん議員ぎいんが存在そんざいしない）と参院さんいん選せんの期間きかん（改選かいせん予定よていの参議院さんぎいん議員ぎいんが選挙せんきょ運動うんどう中ちゅう）が重かさなって政治せいじ空白くうはくができてしまい、緊急きんきゅう事態じたいの際さいに国会こっかい決議けつぎが行おこなえない可能かのう性せいがあることを理由りゆうに、違憲いけん論ろんが存在そんざいする。

これに対たいする反論はんろんとして、衆議院しゅうぎいんと参議院さんぎいんで異ことなる選挙せんきょ制度せいどを導入どうにゅうすることによって衆参しゅうさんがそれぞれ異ことなる構成こうせいになることが期待きたいされること、緊急きんきゅう事態じたいの際さいには政治せいじ空白くうはくを避さけるために、定足数ていそくすうの面めんからは参議院さんぎいんの非ひ改選かいせん議員ぎいんだけでも緊急きんきゅう集会しゅうかいを開ひらくことができること等とうの理由りゆうから、合憲ごうけん論ろんもある（ただし、緊急きんきゅう集会しゅうかいは衆議院しゅうぎいん解散かいさんの場合ばあいに限定げんていされているため、衆院しゅういん選せんが任期にんき満了まんりょうによるものである場合ばあい、緊急きんきゅう集会しゅうかいを開ひらくことはできない）。

全国ぜんこく区く制せいや異ことなる選挙せんきょ区く制せいなど、多数たすうの制度せいどの選挙せんきょが同時どうじに行おこなわれるため、有権者ゆうけんしゃから見みると複雑ふくざつでわかりにくいという指摘してきがある。過去かこの同日どうじつ選せんでは衆議院しゅうぎいん選挙せんきょ区く（中ちゅう選挙せんきょ区く）、参議院さんぎいん選挙せんきょ区く（中ちゅう選挙せんきょ区くまたは小しょう選挙せんきょ区く（参議院さんぎいん一人ひとり区く））、参議院さんぎいん全国ぜんこく区くまたは比例ひれい代表だいひょう区くと3つの制度せいどの選挙せんきょ、さらに最高裁さいこうさい裁判官さいばんかん国民こくみん審査しんさが同時どうじに行おこなわれた。参院さんいん選せん全国ぜんこく区くが存在そんざいした1980年ねんの衆参しゅうさん同日どうじつ選挙せんきょでは他たの国政こくせい選挙せんきょと比較ひかくして無効むこう票ひょうが増ふえたと報道ほうどうされた^[8]。

1994年ねんの衆院しゅういん選せん制度せいど変更へんこう（小しょう選挙せんきょ区く比例ひれい代表だいひょう並立へいりつ制せい導入どうにゅう）以降いこうに同日どうじつ選せんが行おこなわれた場合ばあい、衆議院しゅうぎいん選挙せんきょ区く（小しょう選挙せんきょ区く）、衆議院しゅうぎいん比例ひれい代表だいひょう区く、参議院さんぎいん選挙せんきょ区く（中ちゅう選挙せんきょ区くまたは小しょう選挙せんきょ区く（参議院さんぎいん一人ひとり区く））、参議院さんぎいん比例ひれい代表だいひょう区くと4つの制度せいどの選挙せんきょ（最高裁さいこうさい裁判官さいばんかん国民こくみん審査しんさも加くわえると5つ）が同時どうじに行おこなわれることになる。また2000年ねんに参議院さんぎいん比例ひれい代表だいひょう選挙せんきょが非ひ拘束こうそく名簿めいぼ式しきに変更へんこうされたことにより、同日どうじつ選せんとなった場合ばあい、衆参しゅうさんの比例ひれい代表だいひょう区くでは「政党せいとうにしか投票とうひょうできない衆院しゅういん選せん」と「候補者こうほしゃにも政党せいとうにも投票とうひょうが可能かのうな参院さんいん選せん」が同時どうじに行おこなわれることとなり、一層いっそう複雑ふくざつになると指摘してきする意見いけんがある。

2019年ねん 7月がつの第だい25回かい参院さんいん選せんから比例ひれい区くでは政党せいとうの判断はんだんで拘束こうそく名簿めいぼ式しきの「特定とくてい枠わく」を設定せっていすることが可能かのうとなり（特定とくてい枠わくに掲載けいさいされた候補者こうほしゃは候補者こうほしゃ名めいを冠かんした選挙せんきょ運動うんどうを行おこなうことができず、特定とくてい枠わくの候補者こうほしゃ票ひょうは政党せいとう票ひょうとしてカウントされる）、これによって2019年ねん7月がつ以降いこうに同日どうじつ選せんとなった場合ばあい、衆参しゅうさんの比例ひれい代表だいひょう区くでは単純たんじゅん拘束こうそく名簿めいぼ式しき（衆議院しゅうぎいん）と厳正げんせい拘束こうそく名簿めいぼ式しき・非ひ拘束こうそく名簿めいぼ式しき（参議院さんぎいん）の3つが混在こんざいすることになる。