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AdBlue - Wikipedia
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AdBlue

ドイツの化学かがく品ひん

AdBlue（アドブルー）は、ディーゼルエンジンによる大気たいき汚染おせんを低減ていげんさせるために使用しようされる尿素にょうそSCRシステムにおいて還元かんげん剤ざいとして用もちいられる高こう品位ひんい尿素にょうそ水みず。

アドブルー
AdBlue
ロゴ
種類しゅるい 化学かがく品ひん
所持しょじ会社かいしゃ ドイツ自動車じどうしゃ工業こうぎょう会かい (VDA)
主要しゅよう使用しよう国こく 世界せかい
登録とうろく商標しょうひょう ドイツの旗 ドイツ
2009年ねん
ウェブサイト www.vda.de/de
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組成そせいは尿素にょうそ32.5%、脱だつイオン化いおんか純じゅん水みず67.5%から成なる液体えきたいとなり、ディーゼル車しゃに取とり付つけられた触媒しょくばい内部ないぶの排気はいきガスに対たいし直接ちょくせつ噴霧ふんむすることで大気たいき汚染おせんの原因げんいんとされる窒素ちっそ酸化さんか物ぶつ（NOx）を窒素ちっそ（N）と水みず（H2O）に還元かんげんする。尿素にょうそ水すいは無色むしょく、無害むがいの液体えきたいであり、化粧けしょう品ひんや医薬品いやくひん、肥料ひりょうなどの分野ぶんやでも利用りようされており、無害むがいで安全あんぜんな製品せいひんであることから取とり扱あつかいに特別とくべつな資格しかくも必要ひつようとしない[1]。

国際こくさい標準ひょうじゅん化か機構きこう（ISO）22241にて、32%尿素にょうそ水溶液すいようえきの意味いみである AUS 32（Aqueous Urea Solution 32%）として規格きかく化かされており、日本にっぽん国内こくないやヨーロッパではAdBlueの名称めいしょうで普及ふきゅうしているが、これはドイツ自動車じどうしゃ工業こうぎょう会かい（VDA）による登録とうろく商標しょうひょう（ブランド）であり[2]、商標しょうひょう権けんを得えていない地域ちいきではディーゼル排気はいき液えき（Diesel Exhaust Fluid, DEF）の名称めいしょうや、規格きかく名めいであるAUS 32の名称めいしょうで販売はんばいが行おこなわれている。

作用さよう原理げんり

編集へんしゅう
 
カナダで販売はんばいされる1ガロン（3.785リットル）入いりのもの
「尿素にょうそSCRシステム」も参照さんしょう

AdBlueは尿素にょうそ（(NH2)2CO）を32.5%含ふくむ。排気はいきガス中なかにAdBlueを噴射ふんしゃすることで尿素にょうそが熱ねつ分解ぶんかいされイソシアン酸さんが得えられる。

(NH2)2CO → NH3 + HNCO

イソシアン酸さんが水分すいぶんにより加水かすい分解ぶんかいされ二酸化炭素にさんかたんそとアンモニアとなる。

HNCO + H2O → CO2 + NH3

即すなわち、下記かきの反応はんのうを呈ていする。

(NH2)2CO + H2O → 2 NH3 + CO2

アンモニアは酸素さんそと触媒しょくばいの存在そんざい下かで窒素ちっそ酸化さんか物ぶつを窒素ちっそと水蒸気すいじょうきに還元かんげんする。

4 NO + 4 NH3 +  O2 → 4 N2 + 6 H2O
6 NO2 + 8 NH3 → 7 N2 + 12 H2O

尿素にょうそによる窒素ちっそ酸化さんか物ぶつ削減さくげんの反応はんのうを記しるす。

2 (NH2)2CO + 4 NO + O2 → 4 N2 + 4 H2O + 2 CO2
4 (NH2)2CO + 6 NO2 → 5 N2 + 8 H2O + 4 CO2

寒冷かんれい条件下じょうけんかの運用うんよう

編集へんしゅう
 
ガソリンスタンドに設置せっちされたアドブルー専用せんよう計量けいりょう器き

AdBlueは摂氏せっし氷点下ひょうてんか11度どで凍結とうけつするため、寒冷かんれい時じの尿素にょうそSCR触媒しょくばいの作動さどうには、AdBlueが数すう分ふん以内いないの短時間たんじかんで解凍かいとうされることが望のぞましく、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく環境かんきょう保護ほご庁ちょう (EPA) は2010年ねんに、タンク内ないすべての尿素にょうそ水すいが70分ふん以内いないに解凍かいとうされることを求もとめている。

通常つうじょうは、エンジンから尿素にょうそ水すいタンクへ冷却れいきゃく水すい管かんを配はいして排はい熱ねつで解凍かいとうするが、冷却れいきゃく水温すいおんが上昇じょうしょうする時間じかんが必要ひつようで、尿素にょうそ水すいをすべて解凍かいとうするまで1時じ間近まぢかく要ようすることもある。短時間たんじかんで解凍かいとうするために電熱でんねつヒーターを尿素にょうそ水すいタンクに備そなえることもあるが、過熱かねつ超過ちょうかによる尿素にょうその分解ぶんかいを防ふせぐためにPTCヒーターなどで摂氏せっし50 - 60度どを超こえないよう制御せいぎょする。

貯蔵ちょぞうと取とり扱あつかい

編集へんしゅう
 
日野自動車ひのじどうしゃの北米ほくべい仕様しよう車しゃ「日野ひの・600」に取とり付つけられた尿素にょうそ水すいタンク。青あおいキャップが取付とりつけられDEFの表示ひょうじがされている

尿素にょうそSCRシステムは尿素にょうそ水すいの純度じゅんどに敏感びんかんで、溶媒ようばいは純じゅん水すいである。尿素にょうそ水すいは無色むしょく透明とうめいかつ人体じんたいに対たいして無害むがいで通常つうじょうは安全あんぜんに取とり扱あつかえるが、金属きんぞくに腐食ふしょく性せいを有ゆうするために貯蔵ちょぞうと輸送ゆそうは注意ちゅういが求もとめられる。

車両しゃりょうでは車くるま上じょうタンクに貯蔵ちょぞうされ、計量けいりょうされて排気はいき内ないに噴射ふんしゃされる。噴射ふんしゃ量りょうはエンジンコントロールユニット (ECU) がエンジンの運転うんてん状じょう況きょうに基もとづいて制御せいぎょする。通常つうじょうの噴射ふんしゃ量りょうは燃料ねんりょう消費しょうひ量りょうのおよそ2 - 6％程度ていどである。噴射ふんしゃ量りょうを低ひくく抑おさえることで補充ほじゅう間隔かんかくを伸のばしたり、タンクの容量ようりょうを削減さくげんすることでトラックなどの貨物かもつ車しゃは車両しゃりょう総そう重量じゅうりょうの関係かんけい上じょう、最大さいだい積載せきさい量りょうへの影響えいきょうを低減ていげんさせることが可能かのうとなる。

主おもに尿素にょうそSCRシステムを搭載とうさいした車種しゃしゅを扱あつかうディーラーや大型おおがた車しゃ対応たいおうのガソリンスタンドなどが販売はんばいするほか、車両しゃりょうを運用うんようする事業じぎょう者しゃの拠点きょてんが取とり寄よせる場合ばあいもある。大型おおがた車しゃ対応たいおうガソリンスタンドや拠点きょてん内ないスタンドに計量けいりょう器きを設置せっちする場合ばあい、多おおくで燃料ねんりょうの計量けいりょう器きと隣接りんせつした位置いちに設置せっちされ、車両しゃりょうを移動いどうすることなく燃料ねんりょうとAdBlueの両方りょうほうが補充ほじゅう可能かのうである。事業じぎょう者しゃの拠点きょてん内ないの整備せいび工場こうじょう内ないで、中間ちゅうかんバルクコンテナやバッグインボックス（英語えいご版ばん）に常備じょうびすることもあり、枯渇こかつ対策たいさくの応おう急用きゅうように車載しゃさいできる小型こがたパウチもあるが、直射ちょくしゃ日光にっこうが当あたらない、通気つうきがよく涼すずしく乾かわいた場所ばしょの保管ほかんが望のぞましい。

航空機こうくうき誤あやま給油きゅうゆによる事故じこ

編集へんしゅう

空港くうこうで使用しようされる地上ちじょうサービス車両しゃりょうにDEFが必要ひつようとなる場合ばあいがあるが、その保管ほかんと表示ひょうじには細心さいしんの注意ちゅういが必要ひつようである。航空こうくう燃料ねんりょうの凍結とうけつ防止ぼうし添加てんか剤ざいである燃料ねんりょうシステム結氷けっぴょう防止ぼうし剤ざい（英語えいご版ばん） (SFII) は、DEFと酷似こくじしているため、アメリカでは誤あやまって航空機こうくうきにDEFを給油きゅうゆしたことで燃料ねんりょうパイプが詰つまり、飛行ひこう中ちゅうのエンジン故障こしょう（停止ていし）の原因げんいんとなっている。エンジン故障こしょう原因げんいんの内うち、これまでに少すくなくとも3件けんがDEF誤あやま給油きゅうゆによるものであったことが事故じこ調査ちょうさから明あきらかとなっている[3][4][5]。

尿素にょうそ水不足みずぶそく問題もんだい

編集へんしゅう

米べい中ちゅう貿易ぼうえき戦争せんそうで中国ちゅうごくに対たいする経済けいざい制裁せいさいにオーストラリアが追従ついしょうしたことで中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくでは報復ほうふく措置そちとしてオーストラリアからの石炭せきたん輸入ゆにゅうを停止ていしした。中国ちゅうごくでは石炭せきたんの半数はんすうを輸入ゆにゅうに頼たよっており、国内こくないでの採掘さいくつも自然しぜん災害さいがいによる事故じこなどの影響えいきょうから中国ちゅうごく国内こくないで石炭せきたん不足ふそくが深刻しんこく化かしたことにより、尿素にょうその主しゅ原料げんりょうとなるアンモニアの生産せいさん量りょうが激減げきげんしたことで2021年ねんから開始かいしされた輸出ゆしゅつ規制きせい（厳格げんかく化か）により[6]、そのほぼ全量ぜんりょうを中国ちゅうごくに依存いぞんしていた大韓民国だいかんみんこくでは混乱こんらんに陥おちいり[7]、この問題もんだいに対応たいおうするため大韓民国だいかんみんこく国防こくぼう部ぶでも、軽かる戦闘せんとう車両しゃりょうなどで使用しようするため備蓄びちくしていた尿素にょうそ水すいの半数はんすうを民間みんかんに対たいし提供ていきょうした[8][9]。なお韓国かんこくでは採算さいさん性せいの問題もんだいから2011年ねんに自国じこくでの生産せいさんを打うち切きっている[10]。

オーストラリアでも同様どうようの理由りゆうから尿素にょうそ水不足みずぶそくに陥おちいっており、輸出ゆしゅつ規制きせいが開始かいしされた時点じてんで7週間しゅうかん分ぶんの備蓄びちく量りょうしか無ないことでオーストラリア政府せいふは懸念けねんを表明ひょうめいし[11]、2021年ねん12月14日にちに新しん工場こうじょうの建設けんせつを発表はっぴょうした[12]。

この影響えいきょうを受うけ日本にっぽんでも一時いちじ的てきな不足ふそくに陥おちいっている。原料げんりょうとなるアンモニアの自給じきゅう率りつは8割わりと高たかいが[13]、尿素にょうその大半たいはんは輸入ゆにゅうに頼たよっており、自給じきゅう率りつは5割わり程度ていどである[14][15]。規制きせい開始かいし時じに国内こくない大手おおての一いち社しゃである三井化学みついかがくが定期ていき検査けんさに入はいっていた影響えいきょうなどから不足ふそくに陥おちいったため[16]、経済けいざい産業さんぎょう省しょうが製造せいぞう業者ぎょうしゃに対たいし最大限さいだいげんの増産ぞうさんを要請ようせいし、2022年ねん1月がつ、平時へいじにおける尿素にょうそ水すいの全ぜん供給きょうきゅう量りょうを満みたしたとして、この危機ききは回避かいひされた[17]。

脚注きゃくちゅう

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[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]
  1. ^ “AdBlue®は、尿素にょうそSCRシステム専用せんようの高こう品位ひんい尿素にょうそ水すいです。”. 日本にっぽん液えき炭すみ. 2022年ねん8月がつ25日にち時点じてんのオリジナルよりアーカイブ。2022年ねん8月がつ25日にち閲覧えつらん。
  2. ^ “商標しょうひょう登録とうろく4823467”. 2019年ねん5月がつ12日にち閲覧えつらん。
  3. ^ Epstein, Curt (August 24, 2018). “Close Call for Falcon with DEF-contaminated Fuel”. AIN Online. 2021年ねん7月がつ8日にち閲覧えつらん。
  4. ^ Thurber, Matt (May 27, 2019). “DEF Contamination Downs Two Citations”. AIN Online. 2021年ねん7月がつ8日にち閲覧えつらん。
  5. ^ “NBAA Encourages More DEF Training to Avoid Fuel Contamination”. National Business Aviation Association (Aug 17, 2020). 2021年ねん7月がつ8日にち閲覧えつらん。
  6. ^ “韓国かんこく“尿素にょうそ水不足みずぶそく”で公共こうきょう交通こうつう機関きかんストップ！？中国ちゅうごくが輸出ゆしゅつ規制きせいで大だい混乱こんらん”. THE OWNER (2021年ねん12月11日にち). 2022年ねん8月がつ25日にち閲覧えつらん。
  7. ^ “韓国かんこくで尿素にょうそ水すいが品薄しなうすに、物流ぶつりゅうが混乱こんらんする恐おそれ”. 日本にっぽん貿易ぼうえき振興しんこう機構きこう (2021年ねん11月9日にち). 2022年ねん11月8日にち閲覧えつらん。
  8. ^ “韓国かんこくで尿素にょうそ水すいが不足ふそく、物流ぶつりゅうや工業こうぎょうセクター混乱こんらん　中国ちゅうごくが輸出ゆしゅつ制限せいげん”. ロイター (2021年ねん11月9日にち). 2022年ねん8月がつ23日にち閲覧えつらん。
  9. ^ “韓国かんこく国防こくぼう長官ちょうかん「軍ぐん保有ほゆうの尿素にょうそ水すい445トンのうち210トンは民間みんかん支援しえん可能かのう」”. 中央日報ちゅうおうにっぽう (2021年ねん11月9日にち). 2022年ねん8月がつ23日にち閲覧えつらん。
  10. ^ “尿素にょうそ水不足みずぶそく、韓国かんこくは大騒おおさわぎで日本にっぽんが静しずかな理由りゆう”. 韓国かんこく経済けいざい新聞しんぶん (2021年ねん11月5日にち). 2022年ねん8月がつ24日にち閲覧えつらん。
  11. ^ Belot, Henry (13 December 2021). “Australia to get more of crucial trucking chemical after China cracks down on world market” (英語えいご). ABC News (Australian Broadcasting Corporation). https://www.abc.net.au/news/2021-12-13/australia-approaches-nations-for-adblue-supplies/100695094 13 December 2021閲覧えつらん。 
  12. ^ Macdonald-Smith, Angela; Evans, Simon (14 December 2021). “AdBlue crisis fires up $2.6b South Australian urea venture”. The Australian Financial Review. https://www.afr.com/companies/energy/adblue-crisis-fires-up-2-6b-sa-urea-venture-20211214-p59hg9 15 December 2021閲覧えつらん。 
  13. ^ “アンモニアが“燃料ねんりょう”になる？！（前編ぜんぺん）～身近みぢかだけど実じつは知しらないアンモニアの利用りよう先さき”. 経済けいざい産業さんぎょう省しょう (2021年ねん1月がつ5日にち). 2022年ねん11月8日にち閲覧えつらん。
  14. ^ “「尿素にょうそ水すい」原料げんりょうの国内こくない増産ぞうさん要請ようせい　経けい産さん省しょう、中国ちゅうごく輸出ゆしゅつ規制きせいで”. 日本経済新聞にほんけいざいしんぶん (2021年ねん12月26日にち). 2022年ねん11月8日にち閲覧えつらん。
  15. ^ “【農林水産省のうりんすいさんしょう】ウクライナ情勢じょうせいで高騰こうとう　肥料ひりょう価格かかくの抑制よくせいへ７割わり補助ほじょ”. 財界ざいかい (2022年ねん8月がつ16日にち). 2022年ねん11月8日にち閲覧えつらん。
  16. ^ “韓国かんこくは対岸たいがんの火事かじではない　日本にっぽんでも尿素にょうそ水不足みずぶそくで「物流ぶつりゅうが止とまる」の声こえ”. Yahoo News (2021年ねん12月7日にち). 2022年ねん11月8日にち閲覧えつらん。
  17. ^ “ディーゼル車しゃ向むけ尿素にょうそ水不足みずぶそく問題もんだい、1月がつ中ちゅうに正常せいじょう化かへ　経けい産さん省しょう”. Response. (2021年ねん12月27日にち). 2022年ねん8月がつ23日にち閲覧えつらん。

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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