「数理すうり経済けいざい学がく」の版はん間あいだの差分さぶん

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2015年ねん10月がつ8日にち (木)もく 07:59時点じてんにおける版はん

数理すうり経済けいざい学がく（すうりけいざいがく、Mathematical Economics）は、経済けいざい現象げんしょうを数理すうりモデルを用もちいて数学すうがく的てきに解析かいせきし、説明せつめいする分野ぶんやをさす。

概要がいよう

19世紀せいきにおいて、オーギュスタン・クールノー、レオン・ワルラスやフランシス・エッジワースらにより数学すうがくの経済けいざい学がくへの応用おうようが試こころみられた。その後ご、1930年代ねんだいから1940年代ねんだいにおけるジョン・ヒックスやポール・サミュエルソンらの貢献こうけんにより、数理すうりモデルは経済けいざい学がくのあらゆる分野ぶんやで用もちいられることとなった。さらにジョン・フォン・ノイマンやジョン・ナッシュといった数学すうがく者しゃの参入さんにゅうにより、20世紀せいき中葉ちゅうようには飛躍ひやく的てきな発展はってんを遂とげた。現代げんだいの経済けいざい理論りろんでは数理すうり経済けいざい学がくや金融きんゆう工学こうがくなどの分野ぶんやからの研究けんきゅう成果せいかが多おおいため、数理すうり経済けいざい学がくと理論りろん経済けいざい学がくの区別くべつは曖昧あいまいになっている。このため現在げんざいでは「数理すうり経済けいざい学がく」という言葉ことばは、数学すうがくを使つかう経済けいざいモデルの構築こうちくや経済けいざいモデルの数学すうがく的てきな妥当だとう性せいの検証けんしょうなどの諸しょ研究けんきゅうを指さして用もちいられることが多おおい。

なお、経済けいざい数学すうがくは初級しょきゅうから中級ちゅうきゅうにかけての経済けいざい学がくで必要ひつような数学すうがくを指さす用語ようごで、数理すうり経済けいざい学がくとは意味いみが異ことなる。また応用おうよう数学すうがくの中なかでは経済けいざいに関連かんれんする諸しょ問題もんだいの研究けんきゅうが行おこなわれているが、その内容ないようは数理すうり経済けいざい学がくと重複じゅうふくしているといえる。

ワルラス以来いらいの一般いっぱん均衡きんこう理論りろんにおいては、ブラウワーによる不動点ふどうてん定理ていりや分離ぶんり定理ていりといった数学すうがく的てき事実じじつが、一般いっぱん均衡きんこう解かいの存在そんざいや均衡きんこうの安定あんてい性せいの証明しょうめいに用もちいられた。インフレーションの調整ちょうせい過程かていや資本しほん流りゅう列れつに対たいするターンパイク定理ていりの応用おうようは、数理すうり経済けいざい学がく的てき議論ぎろんが、ややもすれば理論りろん経済けいざい学がくと見み誤あやまる議論ぎろんに学問がくもん的てき発展はってんを与あたえうることを示唆しさしている。

一方いっぽうで新しん古典こてん派はマクロ経済けいざい学がくは、ケインジアンに対抗たいこうしつつ新あたらしい古典こてん派はの研究けんきゅうとして結実けつじつした。その過程かていにおいて、経済けいざい動どう学がくを扱あつかうモデリングを必要ひつようとすることが明あきらかになり、動どう学がく的てき最適さいてき化かの手法しゅほうがマクロ経済けいざい学がくにとって必要ひつよう不可欠ふかけつとなった。現在げんざいの経済けいざい動どう学がくにおける数理すうり経済けいざい学がくは、差分さぶん方程式ほうていしきを用もちいつつ離散りさん型がた力学りきがく系けいのモデルを援用えんようした動どう学がく的てき計画けいかく法ほうにおける多た期間きかん最適さいてき化かを議論ぎろんすることになる。例れいとしては最適さいてき成長せいちょうモデルや世代せだい重複じゅうふくモデルなどの議論ぎろんがあるが、世代せだい間あいだの個人こじん消費しょうひや異い時点じてん間あいだでどのように資源しげんを配分はいぶんして個人こじんが消費しょうひを決定けっていするかなどを想起そうきすると分わかりやすい。有名ゆうめいなリカードの等価とうか定理ていりや等価とうか定理ていりを拡張かくちょうしたロバート・バローの中立ちゅうりつ命題めいだいは、動どう学がく的てきなモデリングがもたらすインプリケーションの好例こうれいとなる。また、確かく率りつ過程かていを導入どうにゅうした合理ごうり的てき期待きたいや条件じょうけん付づけ行動こうどうなどの応用おうようは、ランダムウォーク解釈かいしゃくやマンデルフレミングモデルにおける財政ざいせい政策せいさくおよび金融きんゆう政策せいさくの有効ゆうこう性せい・無効むこう性せいなど、その応用おうようや拡張かくちょうは現実げんじつの経済けいざいにも影響えいきょうを及およぼしている。また、従来じゅうらいは避さけられる傾向けいこうにあった計量けいりょう経済けいざい学がくといった分野ぶんやとの並立へいりつも、その可能かのう性せいを広ひろげている。特とくに、新あたらしい古典こてん派はモデルにおける確かく率りつ過程かていの援用えんようや、カリブレーションと呼よばれるモデルから予想よそうされる予測よそく値ちと実際じっさいのデータとの比較ひかくによって、議論ぎろんが陶冶とうやされている。

現代げんだいの数理すうり経済けいざい学がくにおいて、ゲーム理論りろんの占しめる位置いちは非常ひじょうに大おおきい。その影響えいきょうの大おおきさにより、ゲーム理論りろんが経済けいざい学がくの方法ほうほう論ろんを革新かくしんしたと評価ひょうかされることもある^[1]。ゲーム理論りろんはフォン・ノイマンとオスカー・モルゲンシュテルンが最初さいしょに発表はっぴょうしたが^[2]、ゲーム理論りろんを用もちいた分析ぶんせきはコアなどの協力きょうりょくゲーム理論りろんの応用おうようを除のぞいて長ながらく低調ていちょうだった。しかし1980年代ねんだいになると経済けいざい学がくにおける非ひ協力きょうりょくゲーム理論りろんの有用ゆうよう性せいが広ひろく認みとめられるようになり、本格ほんかく的てきなゲーム理論りろんを利用りようした研究けんきゅうがスタートした。現在げんざいでは経済けいざい学がくにおける均衡きんこう概念がいねんとしてナッシュ均衡きんこうとその精緻せいち化かが広ひろく受うけ入いれられている。

経済けいざい動どう学がく

数理すうり経済けいざい学者がくしゃ

出典しゅってん・参考さんこう文献ぶんけん

レオン・ワルラス　『純粋じゅんすい経済けいざい学がく要よう論ろん』　久ひさし武たけ雅夫まさお訳わけ、岩波書店いわなみしょてん、1983年ねん。
フォン・ノイマン / オスカー・モルゲンシュテルン　Theory of Games and Economic Behavior, Princeton University Press, 1944.
岩井いわい克人かつと・伊藤いとう元重もとしげ編へん　『現代げんだいの経済けいざい理論りろん』　東京とうきょう大学だいがく出版しゅっぱん会かい、1994年ねん。
二階堂にかいどう副ふく包つつみ　『経済けいざいのための線型せんけい数学すうがく』　培風館ばいふうかん、1961。

脚注きゃくちゅう

^ 例たとえば神取かんどり道みち宏ひろし 1994「ゲーム理論りろんによる経済けいざい学がくの静しずかな革命かくめい」岩井いわい克人かつと・伊藤いとう元重もとしげ編へん『現代げんだいの経済けいざい理論りろん』東京大学とうきょうだいがく出版しゅっぱん会かい
^ ゲーム理論りろん的てきな数理すうりモデルはクールノーの『富とみの理論りろんの数学すうがく的てき原理げんりに関かんする研究けんきゅう』（1838年ねん）にまで遡さかのぼることができるが、通常つうじょうの経済けいざい学がく史しにおいてはノイマン・モルゲンシュテルンらの『ゲームの理論りろんと経済けいざい行動こうどう』（1944年ねん）が「最初さいしょ」とされる（例たとえば、江頭えがしら進すすむ『はじめての人ひとのための経済けいざい学がく史し』（新しん世よ社しゃ、2015年ねん）を参照さんしょう）。

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 一方いっぽうで新しん古典こてん派は[[マクロ経済けいざい学がく]]は、[[ケインジアン]]に対抗たいこうしつつ[[新あたらしい古典こてん派は]]の研究けんきゅうとして結実けつじつした。その過程かていにおいて、[[経済けいざい動どう学がく]]を扱あつかうモデリングを必要ひつようとすることが明あきらかになり、動どう学がく的てき最適さいてき化かの手法しゅほうがマクロ経済けいざい学がくにとって必要ひつよう不可欠ふかけつとなった。現在げんざいの経済けいざい動どう学がくにおける数理すうり経済けいざい学がくは、[[差分さぶん方程式ほうていしき]]を用もちいつつ離散りさん型がた[[力学りきがく系けい]]のモデルを援用えんようした動どう学がく的てき計画けいかく法ほうにおける多た期間きかん最適さいてき化かを議論ぎろんすることになる。例れいとしては[[最適さいてき成長せいちょうモデル]]や[[世代せだい重複じゅうふくモデル]]などの議論ぎろんがあるが、世代せだい間あいだの個人こじん消費しょうひや異い時点じてん間あいだでどのように資源しげんを配分はいぶんして個人こじんが消費しょうひを決定けっていするかなどを想起そうきすると分わかりやすい。有名ゆうめいな[[デイヴィッド・リカード|リカード]]の[[リカードの等価とうか定理ていり|等価とうか定理ていり]]や等価とうか定理ていりを拡張かくちょうした[[ロバート・バロー]]の中立ちゅうりつ命題めいだいは、動どう学がく的てきなモデリングがもたらすインプリケーションの好例こうれいとなる。また、[[確かく率りつ過程かてい]]を導入どうにゅうした合理ごうり的てき期待きたいや条件じょうけん付づけ行動こうどうなどの応用おうようは、[[ランダムウォーク]]解釈かいしゃくや[[マンデルフレミングモデル]]における[[財政ざいせい政策せいさく]]および[[金融きんゆう政策せいさく]]の有効ゆうこう性せい・無効むこう性せいなど、その応用おうようや拡張かくちょうは現実げんじつの経済けいざいにも影響えいきょうを及およぼしている。また、従来じゅうらいは避さけられる傾向けいこうにあった[[計量けいりょう経済けいざい学がく]]といった分野ぶんやとの並立へいりつも、その可能かのう性せいを広ひろげている。特とくに、新あたらしい古典こてん派はモデルにおける確かく率りつ過程かていの援用えんようや、カリブレーションと呼よばれるモデルから予想よそうされる予測よそく値ちと実際じっさいのデータとの比較ひかくによって、議論ぎろんが陶冶とうやされている。
-現代げんだいの数理すうり経済けいざい学がくにおいて、[[ゲーム理論りろん]]の占しめる位置いちは非常ひじょうに大おおきい。その影響えいきょうの大おおきさにより、ゲーム理論りろんが経済けいざい学がくの方法ほうほう論ろんを革新かくしんしたと評価ひょうかされることもある<ref>例たとえば神取かんどり道みち宏ひろし 1994「ゲーム理論りろんによる経済けいざい学がくの静しずかな革命かくめい」岩井いわい克人かつと・伊藤いとう元重もとしげ編へん『現代げんだいの経済けいざい理論りろん』東京大学とうきょうだいがく出版しゅっぱん会かい</ref>。ゲーム理論りろんはフォン・ノイマンと[[オスカー・モルゲンシュテルン]]により初はつめて本格ほんかく的てきに経済けいざい学がくに流入りゅうにゅうしたが、ゲーム理論りろんを用もちいた分析ぶんせきは[[コア (ゲーム理論りろん)|コア]]などの協力きょうりょくゲーム理論りろんの応用おうようを除のぞいて長ながらく低調ていちょうだった。しかし1980年代ねんだいになると経済けいざい学がくにおける非ひ協力きょうりょくゲーム理論りろんの有用ゆうよう性せいが広ひろく認みとめられるようになり、本格ほんかく的てきなゲーム理論りろんを利用りようした研究けんきゅうがスタートした。現在げんざいでは経済けいざい学がくにおける[[均衡きんこう]]概念がいねんとして[[ナッシュ均衡きんこう]]とその精緻せいち化かが広ひろく受うけ入いれられている。
+現代げんだいの数理すうり経済けいざい学がくにおいて、[[ゲーム理論りろん]]の占しめる位置いちは非常ひじょうに大おおきい。その影響えいきょうの大おおきさにより、ゲーム理論りろんが経済けいざい学がくの方法ほうほう論ろんを革新かくしんしたと評価ひょうかされることもある<ref>例たとえば神取かんどり道みち宏ひろし 1994「ゲーム理論りろんによる経済けいざい学がくの静しずかな革命かくめい」岩井いわい克人かつと・伊藤いとう元重もとしげ編へん『現代げんだいの経済けいざい理論りろん』東京大学とうきょうだいがく出版しゅっぱん会かい</ref>。ゲーム理論りろんはフォン・ノイマンと[[オスカー・モルゲンシュテルン]]が最さい初はつに発表はっぴょうしたが<ref>ゲーム理論りろん的てきな数理すうりモデルは[[アントワーヌ・オーギュスタン・クールノー|クールノー]]の『富とみの理論りろんの数学すうがく的てき原理げんりに関かんする研究けんきゅう』（[[1838年ねん]]）にまで遡さかのぼることができるが、通常つうじょうの経済けいざい学がく史ふみにおいてはノイマン・モルゲンシュテルンらの『ゲームの理論りろんと経済けいざい行動こうどう』（[[1944年ねん]]）が「最初さいしょ」とされる（例たとえば、江頭えがしら進すすむ『はじめての人ひとのための経済けいざい学がく史し』（新しん世よ社しゃ、2015年ねん）を参照さんしょう）。</ref>、ゲーム理論りろんを用もちいた分析ぶんせきは[[コア (ゲーム理論りろん)|コア]]などの協力きょうりょくゲーム理論りろんの応用おうようを除のぞいて長ながらく低調ていちょうだった。しかし1980年代ねんだいになると経済けいざい学がくにおける非ひ協力きょうりょくゲーム理論りろんの有用ゆうよう性せいが広ひろく認みとめられるようになり、本格ほんかく的てきなゲーム理論りろんを利用りようした研究けんきゅうがスタートした。現在げんざいでは経済けいざい学がくにおける[[均衡きんこう]]概念がいねんとして[[ナッシュ均衡きんこう]]とその精緻せいち化かが広ひろく受うけ入いれられている。
 ==経済けいざい動どう学がく==