喉 のど 鳴 な らし (のどならし)はネコ科 か およびジャコウネコ科 か の動物 どうぶつ の一部 いちぶ が行 おこな う発声 はっせい の一種 いっしゅ である。低 てい 周波 しゅうは の音 おと で、呼気 こき と吸気 きゅうき の双方 そうほう で発生 はっせい する。生後 せいご 2日 にち 目 め には聞 き かれるようになる。喉 のど 鳴 な らしのメカニズムはまだ明確 めいかく にはなっていない。支配 しはい 的 てき な理論 りろん は、神経 しんけい 振動 しんどう (英語 えいご 版 ばん ) により喉頭 こうとう の筋肉 きんにく の収縮 しゅうしゅく が引 ひ き起 お こされ声帯 せいたい を振動 しんどう させることにより音 おと が発生 はっせい するというものである。ネコ科 か の各 かく 動物 どうぶつ 、特 とく にヒョウ亜 あ 科 か の動物 どうぶつ たちが喉 のど を鳴 な らすことが出来 でき るのか否 ひ かも議論 ぎろん の的 まと となっている。
ネコ は嬉 うれ しい時 とき にも苦 くる しい時 とき にも喉 のど を鳴 な らすことがあり、このため喉 のど 鳴 な らしの意味合 いみあ いはあまり明確 めいかく ではない。飼 か いネコでは頻繁 ひんぱん であるが、自然 しぜん ではネコが喉 のど を鳴 な らすのは主 しゅ として母子 ぼし 関係 かんけい の中 なか に限 かぎ られる。一部 いちぶ の研究 けんきゅう 者 しゃ たちによれば喉 のど 鳴 な らしは人間 にんげん の微笑 ほほえ み に近 ちか いものであり、仲間 なかま に対 たい するものも人間 にんげん に対 たい するものも含 ふく めその社会 しゃかい 的 てき な役割 やくわり が最 もっと も重要 じゅうよう である。喉 のど 鳴 な らしには治療 ちりょう 的 てき な役割 やくわり があるとする理論 りろん もある――喉 のど 鳴 な らしにより送 おく り出 だ される低 てい 周波 しゅうは が骨 ほね 、筋肉 きんにく 、腱 けん を強化 きょうか し、さらには鎮痛 ちんつう 効果 こうか もあるのだという。
喉 のど 鳴 な らしを指 さ すフランス語 ふらんすご ronronnement 、ドイツ語 ご Schnurren 、英語 えいご Purr などの語 かたり はいずれも「ごろごろ」という音 おと の擬声語 ぎせいご である。
詳細 しょうさい
定義 ていぎ
喉 のど 鳴 な らしは呼気 こき と吸気 きゅうき の間 あいだ の数 すう 十 じゅう 〜百 ひゃく ミリ秒 びょう ほどの短 みじか い休止 きゅうし を除 のぞ く[ 1] 呼吸 こきゅう の全 ぜん 段階 だんかい を通 つう じて発生 はっせい し続 つづ ける振幅 しんぷく の小 ちい さい連続 れんぞく 音 おん である[ 2] 。吸気 きゅうき の時 とき の方 ほう が強 つよ く低 ひく くなると考 かんが えられているが[ 3] 、2010年 ねん に公刊 こうかん された研究 けんきゅう によると、ネコの喉 のど 鳴 な らしは呼気 こき ・吸気 きゅうき で振幅 しんぷく に変化 へんか はなく、チーター では逆 ぎゃく に呼気 こき の方 ほう が強 つよ かった[ 1] 。口 くち を閉 と じた状態 じょうたい で発生 はっせい し、最 もっと も多 おお くの場合 ばあい で2秒 びょう 以上 いじょう 持続 じぞく し、周波数 しゅうはすう は25-20Hz へるつ [ 2] 、基本 きほん 周波数 しゅうはすう は約 やく 20Hz へるつ である[ 1] 。ネコの喉 のど 鳴 な らしは3メートル四方 しほう [ 3] 、チーターのものは40メートル四方 しほう にまで聞 き こえる。音 おと は鼻 はな の高 たか さで最 もっと も強 つよ くなる[ 1] 。
発声 はっせい のメカニズムは呼気 こき 音 おん でもあり吸気 きゅうき 音 おん でもある[ 1] 。吸気 きゅうき 音 おん の発声 はっせい はイヌ やキツネ など他 た の多 おお くの動物 どうぶつ も行 おこな うことがチャールズ・ダーウィン 以来 いらい 知 し られている。人間 にんげん においても、吸気 きゅうき 音 おん はゲルマン語 ご 派 は などで用 もち いられている[ 4] 。チーターとネコの喉 のど 鳴 な らしを比較 ひかく した2010年 ねん 発表 はっぴょう の調査 ちょうさ によれば、チーターにおいては呼気 こき 音 おん の段階 だんかい の方 ほう が長 なが く、より多 おお くのサイクルを含 ふく むが、ネコにおいては呼気 こき 音 おん と吸気 きゅうき 音 おん の段階 だんかい の間 あいだ に差 さ は存在 そんざい しないか、存在 そんざい しても僅 わず かであった。2つの段階 だんかい を通 つう じ、チーターはネコより多 おお くのサイクルを発生 はっせい させるが、基本 きほん 周波数 しゅうはすう は同 おな じであった[ 1] 。
喉 のど 鳴 な らしは生後 せいご 2日 にち 目 め には授乳 じゅにゅう の際 さい に聞 き かれるようになり、これにより母子 ぼし はコミュニケーションを行 おこな う。この現象 げんしょう は母 はは 猫 ねこ によるグルーミング の際 さい にも見 み られる[ 5] 。喉 のど 鳴 な らしは子猫 こねこ が涙 なみだ と共 とも に発 はっ する最初 さいしょ の鳴 な き声 ごえ であり、母 はは 猫 ねこ も子猫 こねこ に喉 のど 鳴 な らしで答 こた える[ 6] [ 注 ちゅう 1] 。自然 しぜん においては、喉 のど 鳴 な らしは母 はは と子 こ の関係 かんけい において最 もっと も頻繁 ひんぱん に見 み られるが[ 7] 、イエネコでは人間 にんげん や物体 ぶったい との接触 せっしょく によっても喉 のど 鳴 な らしが起 お きる。ネコは睡眠 すいみん 中 ちゅう には決 けっ して喉 のど を鳴 な らさないが、その代 か わりニャーと鳴 な くことがある[ 8] 。
メカニズム
ネコ科 か の動物 どうぶつ に喉 のど 鳴 な らし専用 せんよう の器官 きかん があるわけではない。最 もっと も流布 るふ している仮説 かせつ は、喉頭 こうとう の筋肉 きんにく の極 きわ めて急速 きゅうそく な収縮 しゅうしゅく が声門 せいもん を収縮 しゅうしゅく ・膨張 ぼうちょう させ、音 おと の発生 はっせい 源 げん となる声帯 せいたい の急激 きゅうげき な分離 ぶんり が引 ひ き起 お こされるというものである[ 2] 。この仮説 かせつ は喉頭 こうとう の筋肉 きんにく の筋 すじ 電 でん 計 けい による計測 けいそく に基 もと づいている。毎秒 まいびょう 20-30回 かい のピークからなる規則 きそく 的 てき ・反復 はんぷく 的 てき な型 かた が観測 かんそく され、これが喉頭 こうとう の規則 きそく 的 てき な緊張 きんちょう をもたらす[ 9] 。喉頭 こうとう の変化 へんか は30-40ミリ秒 びょう の周期 しゅうき を作 つく り出 だ す神経 しんけい 振動 しんどう (英語 えいご 版 ばん ) によりもたらされる[ 2] この神経 しんけい 振動 しんどう を止 と めることはできず、このことは中枢 ちゅうすう 神経 しんけい 系 けい の内部 ないぶ そのものに高周波 こうしゅうは の振動 しんどう 機構 きこう があることを示唆 しさ している[ 9] 。この振動 しんどう を引 ひ き起 お こす脳 のう の部位 ぶい は視床 ししょう 下部 かぶ の近 ちか くである[ 8] 。
1972年 ねん の研究 けんきゅう によれば、吸息中 ちゅう の横隔膜 おうかくまく の緊張 きんちょう には均等 きんとう な切 き れ目 め があり、喉頭 こうとう と横隔膜 おうかくまく との間 あいだ の筋 すじ 電 でん 図 ず のピークは同期 どうき していなかった。この交互 こうご な活性 かっせい 化 か は気管 きかん の圧力 あつりょく の負 まけ の変動 へんどう を抑 おさ えることを可能 かのう にし、喉頭 こうとう が抵抗 ていこう を最小 さいしょう とする期間 きかん 中 ちゅう の吸息における空気 くうき の流 なが れを促進 そくしん する[ 9] 。1987年 ねん の新 あたら しい研究 けんきゅう は筋 すじ 電 でん 図 ず により、呼 よび 息 いき にかかわる筋肉 きんにく もまた喉 のど 鳴 な らしに関与 かんよ している可能 かのう 性 せい があることを示 しめ した[ 10] 。2000年 ねん のデニス・C・ターナーとパトリック・ベイトソンの研究 けんきゅう では横隔膜 おうかくまく やその他 た の筋肉 きんにく は呼吸 こきゅう をするために必要 ひつよう ではあるが喉 のど 鳴 な らしそのものに必要 ひつよう なわけではないとしている[ 11] 。喉頭 こうとう の筋肉 きんにく の収縮 しゅうしゅく という仮説 かせつ を否定 ひてい しうる要素 ようそ の1つとして、喉頭 こうとう 切開 せっかい 術 じゅつ (英語 えいご 版 ばん ) を受 う けたネコたちが横隔膜 おうかくまく を用 もち いて喉 のど を鳴 な らすことができるという事実 じじつ がある[ 12] 。
他 た の仮説 かせつ では、気管支 きかんし ・気管 きかん 鼻腔 びこう により増幅 ぞうふく された大 だい 静脈 じょうみゃく の振動 しんどう [ 13] や、さらには仮 かり 声帯 せいたい もしくは軟口蓋 なんこうがい の振動 しんどう なども言及 げんきゅう されている[ 8] 。
喉 のど を鳴 な らす肉食 にくしょく 動物 どうぶつ
「吼 ほ える」ネコ科 か 動物 どうぶつ は喉 のど を鳴 な らすことができない可能 かのう 性 せい がある
ジャコウネコ科 か の動物 どうぶつ はネコ科 か の動物 どうぶつ に近 ちか い形 かたち で喉 のど を鳴 な らすことができる
ネコ科 か 動物 どうぶつ の喉 のど 鳴 な らしは常 つね に議論 ぎろん の的 まと となってきた――ライオン やヒョウ のような最 もっと も良 よ く知 し られているものも含 ふく む多 おお くの種 たね について喉 のど を鳴 な らせるのか否 ひ かは謎 なぞ のままとなっている。情報 じょうほう が全 まった くないかあっても不充分 ふじゅうぶん な種 たね が多 おお いのである[ 3] 。ライオン、トラ 、ヒョウ、ジャガー 、ユキヒョウ などのヒョウ亜 あ 科 か の動物 どうぶつ たちは骨 ほね 化 か が部分 ぶぶん 的 てき であるかもしくは骨 ほね 化 か していない舌 した 骨 こつ の靭帯 じんたい を有 ゆう しており、これにより吼 ほ える(フランス語 ふらんすご 版 ばん ) ことが可能 かのう となっている反面 はんめん 喉 のど を鳴 な らすことはできなくなっているという[ 14] 。しかしながら、こうした区別 くべつ には1990年代 ねんだい になると疑問 ぎもん が呈 てい されるようになる――ヒョウ亜 あ 科 か の発声 はっせい 構造 こうぞう では喉 のど を鳴 な らすのは困難 こんなん ではあるが、可能 かのう なのかもしれないのである[ 15] 。ポール・ハイニーは、大型 おおがた のネコ科 か 動物 どうぶつ たちは呼気 こき でしか喉 のど を鳴 な らせない(呼気 こき では喉 のど を鳴 な らせる)と主張 しゅちょう している[ 16] 。
骨 ほね 化 か が部分 ぶぶん 的 てき であるか骨 ほね 化 か していない舌 した 骨 こつ のお陰 かげ で吼 ほ えることができる、というのはリチャード・オーウェン と、続 つづ いてレジナルド・インズ・ポコック が1916年 ねん に立 た てた歴史 れきし 的 てき な仮説 かせつ であり、これによりネコ科 か のさまざまな種 たね を分類 ぶんるい することが可能 かのう となった――吼 ほ える(よって喉 のど を鳴 な らさない)ネコ科 か 動物 どうぶつ であるヒョウ亜 あ 科 か と、吼 ほ えない(喉 のど を鳴 な らす)ネコ科 か 動物 どうぶつ であるネコ亜 あ 科 か である[ 1] 。グスタフ・ペータース (フランス語 ふらんすご 版 ばん ) によると、喉 のど 鳴 な らしはネコ科 か の共通 きょうつう 祖先 そせん の持 も っていた特徴 とくちょう であり、同様 どうよう の発声 はっせい は収斂 しゅうれん 進化 しんか として他 ほか の哺乳類 ほにゅうるい (例 たと えばアライグマ [ 17] やウサギ [ 18] など)にも見 み られる[ 19] 。
ケープジェネット (英語 えいご 版 ばん ) [訳語 やくご 疑問 ぎもん 点 てん ] [ 4] [ 注 ちゅう 2] やヨーロッパジェネット [ 1] など、一部 いちぶ のジャコウネコ科 か 動物 どうぶつ も喉 のど を鳴 な らす[ 14] 。
ネコ科 か の喉 のど 鳴 な らし[ 3]
喉 のど を鳴 な らす
どちらとも言 い えない
恐 おそ らく喉 のど を鳴 な らす
利用 りよう 可能 かのう なデータなし
ライオンの舌 した 骨 こつ 。上 うえ から舌 した (langue)、舌 した 骨 こつ (os hyoïde )、甲状腺 こうじょうせん の軟骨 なんこつ (cartilage de la thyroïde)、甲状腺 こうじょうせん (thyroïde)
意味 いみ
コミュニケーション
最初 さいしょ に喉 のど を鳴 な らすのは授乳 じゅにゅう 時 とき である
喉 のど 鳴 な らしは接触 せっしょく と結 むす び付 つ くことが最 もっと も多 おお く、仲 なか の良 よ い仲間 なかま や、人間 にんげん 、さらには物体 ぶったい との触 ふ れ合 あ いとも共 とも に発 はっ せられる。物体 ぶったい の例 れい としては、ネコが前 ぜん 脚 あし でクッションを「もみもみ」する時 とき などがある[ 2] 。喉 のど 鳴 な らしは動物 どうぶつ が喜 よろこ びを感 かん じている時 とき に現 あらわ れるほか、苦痛 くつう を感 かん じている時 とき にも現 あらわ れる。獣 しし 医師 いし はネコ達 たち がストレスを受 う けたり、傷付 きずつけ いたり、さらには死 し につつあったりする時 とき に絶 た え間 ま なく喉 のど を鳴 な らし続 つづ けるのを観察 かんさつ している[ 13] 。
ネコは依存 いぞん を表 あらわ す時 とき に喉 のど を鳴 な らすことが一番 いちばん 多 おお い[ 5] 。子猫 こねこ は母 はは 猫 ねこ とその乳 ちち に依存 いぞん し、また世話 せわ や愛撫 あいぶ を求 もと める時 とき には人間 にんげん に依存 いぞん する。喉 のど 鳴 な らしはネコたちの社会 しゃかい 関係 かんけい で重要 じゅうよう な役割 やくわり を担 にな っており、ネコは喉 のど 鳴 な らしによって状態 じょうたい を周囲 しゅうい にいる人間 にんげん やネコに伝 つた える。喉 のど を鳴 な らす子猫 こねこ は母 はは 猫 ねこ に自分 じぶん が元気 げんき だと伝 つた え、成 なり 猫 ねこ は愛撫 あいぶ されての満足 まんぞく を表 あらわ す。また社会 しゃかい 的 てき な絆 きずな を強 つよ め、紛争 ふんそう を防 ふせ ぐこともある(支配 しはい 的 てき なネコと遭遇 そうぐう したネコは喉 のど を鳴 な らす)。デニス・C・ターナーとパトリック・ベイトソンによれば、喉 のど 鳴 な らしの社会 しゃかい 的 てき 役割 やくわり は人間 にんげん でいう微笑 ほほえ み に相当 そうとう するものであり[ 11] 、デズモンド・モリス は共通 きょうつう するメッセージが「悪意 あくい のなさ」であると説明 せつめい している[ 20] 。1985年 ねん にジョエル・ドゥハッス (フランス語 ふらんすご 版 ばん ) は、ネコが自分 じぶん 自身 じしん のため、例 たと えば落 お ち着 つ きを取 と り戻 もど すために喉 のど を鳴 な らす場合 ばあい があるという仮説 かせつ を唱 とな えた。病気 びょうき のネコが喉 のど を鳴 な らすことがある理由 りゆう をこの仮説 かせつ は説明 せつめい する[ 21] 。グスタフ・ペータースもまた喉 のど 鳴 な らしが自己 じこ コミュニケーション(フランス語 ふらんすご 版 ばん ) の一 いち 例 れい となり得 え るとしている[ 22] 。
イエネコは、赤 あか ちゃんの鳴 な き声 ごえ と対比 たいひ されるような非常 ひじょう に鋭 するど い声 こえ が通常 つうじょう の喉 のど 鳴 な らしと混淆 こんこう した、「追加 ついか の」喉 のど 鳴 な らしを発達 はったつ させた[ 注 ちゅう 5] 。通常 つうじょう の喉 のど 鳴 な らしと混 ま ぜてこの「懇願 こんがん の」喉 のど 鳴 な らしを50人 にん の被験者 ひけんしゃ に聞 き かせたところ、全 すべ ての被験者 ひけんしゃ がこの喉 のど 鳴 な らしに切迫 せっぱく のニュアンスを感 かん じ取 と った。これは人間 にんげん とのコミュニケーションに適応 てきおう したものであろうと研究 けんきゅう 者 しゃ は結論 けつろん 付 つ けている[ 23] [ 24] [ 25] [ 26] 。
治療 ちりょう の手段 しゅだん ?
ネコは骨折 こっせつ の治癒 ちゆ が速 はや く、手術 しゅじゅつ 後 ご の併発 へいはつ 症 しょう が少 すく なく、イヌ に比 ひ して骨 ほね ・筋肉 きんにく ・靭帯 じんたい の有 ゆう 病 びょう 割合 わりあい が低 ひく いと獣 しし 医師 いし たちは考 かんが えている[ 12] 。周波数 しゅうはすう が25-30ヘルツの喉 のど 鳴 な らしには骨 ほね ・腱 けん ・靭帯 じんたい に関 かん する治癒 ちゆ とさらには鎮痛 ちんつう の効果 こうか があるという仮説 かせつ が出 だ されている。ネコ科 か の動物 どうぶつ の多 おお くが、鋭 するど い痛 いた みや腱 けん ・筋肉 きんにく ・関節 かんせつ の問題 もんだい を鎮 しず める効果 こうか のある周波数 しゅうはすう の振動 しんどう を発 はっ するのである[ 21] 。この仮説 かせつ によるなら、ネコにとって喉 のど 鳴 な らしは体 からだ の維持 いじ を行 おこな い健康 けんこう を保 たも つ手段 しゅだん ということになる[ 16] 。
この理論 りろん は2つの観察 かんさつ に基 もと づいている――喉 のど 鳴 な らしは特定 とくてい の感情 かんじょう や状態 じょうたい とは結 むす び付 つ いていない(ネコは満足 まんぞく な時 とき にも死 し にそうな時 とき にも喉 のど を鳴 な らす)ことと、ネコ科 か の数 すう 多 おお くの動物 どうぶつ で喉 のど 鳴 な らしが残 のこ っているからには自然 しぜん 選択 せんたく 説 せつ の観点 かんてん から何 なん らかの利点 りてん があるはずであることである。さらに、多 おお くの研究 けんきゅう 者 しゃ たちが[ 12] 20-140ヘルツの低 てい 周波 しゅうは の音 おと には骨 ほね ・筋肉 きんにく ・腱 けん に有益 ゆうえき な効果 こうか があり、苦痛 くつう を鎮 しず められることを示 しめ している。こうした音 おと は感情 かんじょう を引 ひ き起 お こすので、精神 せいしん 的 てき な効果 こうか もある[ 12] 。
喉 のど 鳴 な らしと人間 にんげん
諸 しょ 言語 げんご での呼称 こしょう
人間 にんげん はイエネコの喉 のど 鳴 な らしを概 がい して満足 まんぞく と結 むす び付 つ けて捉 とら える
フランス語 ふらんすご « ronron » ([ʀɔ̃ʀɔ̃] 、「ロンロン」)は日本語 にほんご でいう「ゴロゴロ」というネコの出 だ す音 おと を真似 まね た擬声語 ぎせいご であり、初出 しょしゅつ はジャン=ジャック・ルソー の1731年 ねん の小説 しょうせつ 『新 しん エロイーズ 』の一 いち 節 せつ であった[ 27] 。この名詞 めいし から「喉 のど を鳴 な らす」という意味 いみ の動詞 どうし «ronronner»(「ロンロネ」)が派生 はせい し[ 28] 、さらに喉 のど 鳴 な らし一般 いっぱん を指 さ すronronの同義語 どうぎご «ronronnement»(「ロンロヌマン」)が派生 はせい した[ 29] 。アナロジーにより、ronronやronronnementという語 かたり はエンジンなどの鈍 にぶ い連続 れんぞく 音 おん も指 さ す[ 27] 。
英語 えいご では喉 のど を鳴 な らすことは名詞 めいし ・動詞 どうし ともにpurr という。初出 しょしゅつ は16世紀 せいき で、これも擬声語 ぎせいご である[ 30] 。日本語 にほんご では、「喉 のど を鳴 な らす」や「喉 のど 鳴 な らし」などの語句 ごく は日本 にっぽん 国語 こくご 大 だい 辞典 じてん でも見出 みだ し語 ご となっていないが、「ごろ」「ごろごろ」及 およ び「ぐるぐる」が「猫 ねこ などが喉 のど を鳴 な らす声 こえ 」として掲載 けいさい されており、1890-92年 ねん の『小 しょう 公子 こうし 』の邦訳 ほうやく に用例 ようれい がある[ 31] 。
覚 おぼ えず
咽 のど 喉仏 のどぼとけ がごろごろ
鳴 な る。
主人 しゅじん はいよいよ
柔 にこや かに
頭 あたま を
撫 な でてくれる。
人 ひと を
笑 わら って
可愛 かわい がられるのはありがたいが、いささか
無気味 ぶきみ なところもある。
— 夏目 なつめ 漱石 そうせき 、『吾輩 わがはい は猫 ねこ である 』(1905-06)[ 32]
喉 のど 鳴 な らし療法 りょうほう
喉 のど 鳴 な らしにはリラックス効果 こうか があるので人間 にんげん にとっても非常 ひじょう に有益 ゆうえき になりうる[ 21] 。喉 のど を鳴 な らすネコがいることで傷 きず の治癒 ちゆ (英語 えいご 版 ばん ) が早 はや くもなるという[ 33] 。ネコの喉 のど 鳴 な らしは『失 うしな われた時 とき を求 もと めて 』におけるマドレーヌのように快 こころよ い思 おも い出 で を蘇 よみがえ らせ、ストレス を解消 かいしょう する効果 こうか があるという[ 33] 。一部 いちぶ の病院 びょういん では特 とく に高齢 こうれい 者 しゃ に対 たい してネコによる安 やす らぎの効果 こうか を試行 しこう しており、また日本 にっぽん では誰 だれ でもネコのそばで時間 じかん を過 す ごし安 やす らぐことが出来 でき る猫 ねこ カフェ が営業 えいぎょう されている[ 34] 。(音楽 おんがく つき、もしくはなしで)喉 のど 鳴 な らしを録音 ろくおん したものまで販売 はんばい されている[ 33] 。Purr-like vibration device (喉 のど 鳴 な らし風 ふう バイブレーター)という、低 てい 周波 しゅうは の(ありうる)治癒 ちゆ 効果 こうか を利用 りよう した発明 はつめい もある。体 からだ に固定 こてい し、喉 のど 鳴 な らしの周波数 しゅうはすう の振動 しんどう を送 おく り込 こ む小 ちい さな装置 そうち である[ 35] 。
認知 にんち 行動 こうどう 療法 りょうほう では、ネコの喉 のど 鳴 な らしを真似 まね て呼気 こき を中心 ちゅうしん とした呼吸 こきゅう を学 まな び直 なお すことを狙 ねら ったソフロロジー の訓練 くんれん が行 おこな われている。短 みじか く、フランス語 ふらんすご のR の音 おと に似 に た喉 のど 音 おん を伴 ともな う呼気 こき を行 おこな うのである[ 36] 。
その他 た
フランスの童謡 どうよう 『小 ちい さな羊 ひつじ 飼 か いの娘 むすめ 』(Il était une bergère )にはチーズ を守 まも るために子猫 こねこ を殺 ころ してしまう羊 ひつじ 飼 か いの娘 むすめ が登場 とうじょう する。この歌 うた のリフレイン はネコの喉 のど 鳴 な らしを模倣 もほう している――
Et ron, et ron, petit patapon(ごろ、ごろ、ちいさなパタポン)
[ 37]
サー・パー(Sir Purr ; 「ごろごろ卿 きょう 」)はアメリカンフットボール のチームカロライナ・パンサーズ のマスコット である[ 38] 。
脚注 きゃくちゅう
注釈 ちゅうしゃく
出典 しゅってん
^ a b c d e f g h Robert Eklund, Gustav Peters et Elizabeth D. Duthie (2-4 6 2010). “An acoustic analysis of purring in the cheetah (Acinonyx jubatus) and in the domestic cat (Felis catus)” (英語 えいご ) (pdf). Proceedings of Fonetik : 17–22. http://www.ida.liu.se/~g-robek/pdf/Eklund_Peters_Duthie_2010=Purring_Cheetah_DomesticCat.pdf .
^ a b c d e Dennis C. Turner et Patrick Bateson (2000). The domestic cat The biology of its behaviour . Cambridge: Presse universitaire de Cambridge. pp. 244. ISBN 0-521-63648-5
^ a b c d Mel Sunquist et Fiona Sunquist (2002). Wild Cats of the World . Chicago: Presse universitaire de Chicago. pp. 452. ISBN 0-226-77999-8 , « Appendix 4 Vocal communication in Felids »
^ a b Robert Eklund (2009年 ねん 9月 がつ 5日 にち ). “Robert Eklund’s Ingressive Phonation & Speech Page ” (英語 えいご ). IDA. 2011年 ねん 3月 がつ 7日 にち 閲覧 えつらん 。
^ a b Christiane Sacase (1994-2). “Comprendre et connaître le chat”. Les Chats . Guide vert. Solar. pp. 256. ISBN 2-263-00073-9
^ Dennis C. Turner et Patrick Bateson, op.cit., « The mother-kitten relationship », p.27-29
^ Mel et Fiona Sunquist, op.cit., « The essence of cats », p.10
^ a b c Joël Dehasse (2008) (フランス語 ふらんすご ). Tout sur la psychologie du chat . Odile Jacob. pp. 608. ISBN 2738119220 . http://books.google.fr/books?id=DeooEmmIxcQC
^ a b c J.E. Remmers et H. Gautier (1972-07-13). “Neural and mechanical mechanisms of feline purring” (英語 えいご ). Respiration Physiology 16 (3): 351-361.
^ P.A. Kirkwood, T.A. Sears, D. Stagg et R.H. Westgaard (3 mars 1987). “Intercostal muscles and purring in the cat: the influence of afferent inputs” (英語 えいご ). Brain Research 405 (1): 187-191.
^ a b Dennis C. Turner et Patrick Bateson, op.cit., p.231
^ a b c d “The Felid Purr: A bio-mechanical healing mechanism ” (英語 えいご ). 2011年 ねん 3月 がつ 7日 にち 閲覧 えつらん 。
^ a b Docteur Jean-Pierre Mauriès. “Le ronronnement ”. Site de Vétopsy. 2011年 ねん 3月 がつ 7日 にち 閲覧 えつらん 。
^ a b Gerald E. Weissengruber, Gerhard Forstenpointner, Sandra Petzhold, Claudia Zacha et Sibylle Kneissl (2008). “Anatomical Peculiarities of the Vocal Tract in Felids ” (英語 えいご ). Anatomical Imaging . pp. 15-21. ISBN 978-4-431-76932-3 . http://www.springerlink.com/content/q0280461h778n86r/ 2011年 ねん 3月 がつ 7日 にち 閲覧 えつらん 。
^ GE Weissengruber, G Forstenpointner, G Peters, A Kübber-Heiss et WT Fitch (9 2002). “Hyoid apparatus and pharynx in the lion (Panthera leo ), jaguar (Panthera onca ), tiger (Panthera tigris ), cheetah (Acinonyx jubatus ) and domestic cat (Felis silvestris f. catus )” (英語 えいご ). J Anat. 3 (201): 195–209. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/pmc1570911/ 2011年 ねん 3月 がつ 7日 にち 閲覧 えつらん 。 .
^ a b “Ronronnement du chat : comment font les chats pour ronronner ? ” (フランス語 ふらんすご ) (2008年 ねん 12月25日 にち ). 2011年 ねん 3月 がつ 7日 にち 閲覧 えつらん 。
^ Otto J. Sieber (1984). “Vocal communications in Raccoons (Procyon lotor )” . Behaviour . http://www.jstor.org/pss/4534359 .
^ J. Mayer (2007). “Use of behavior analysis to recognize pain in small mammals” (pdf). LAB ANIMAL (New York). http://www.labanimal.com/laban/journal/v36/n6/pdf/laban0607-43.pdf .
^ Gustav Peters (2002). “Purring and similar vocalizations in mammals” (英語 えいご ). Mammal Review (32): 245-271. http://www.carnivoreconservation.org/portal/p_detail.php?recordid=13130 .
^ モリス 2009 , pp. 49–51
^ a b c Joël Dehasse] (2005-5). “Vivre avec un chat”. Tout sur la psychologie du chat . Odile Jacob. pp. 602. ISBN 2-7381-1603-5
^ “Dr. Gustav Peters - Current Projects ” (英語 えいご ・ドイツ語 ご ). Zoologisches Forschungsmuseum Alexander Koenig . 2011年 ねん 3月 がつ 7日 にち 閲覧 えつらん 。
^ Jennifer Viegas (2009年 ねん 7月 がつ 13日 にち ). “Cats Use Special Purr to Manipulate Humans ”. DiscoveryNews. 2011年 ねん 3月 がつ 7日 にち 閲覧 えつらん 。
^ Victoria Gill (2009年 ねん 7月 がつ 13日 にち ). “Cats ‘exploit’ humans by purring ”. BBC News . 2011年 ねん 3月 がつ 7日 にち 閲覧 えつらん 。
^ Université du Sussex . “Domestic cats: Inter-specific communication ”. accessdate引数 ひきすう が正 まさ しくありません。 [リンク切 き れ ]
^ “ネコののど鳴 な らす音 おと 、気 き づいて欲 ほ しいときは高周波 こうしゅうは 英 えい 研究 けんきゅう ”. AFPBB News (2009年 ねん 7月 がつ 14日 にち ). 2011年 ねん 4月 がつ 16日 にち 閲覧 えつらん 。
^ a b Définitions lexicographiques et étymologiques de « ronron » du Trésor de la langue française informatisé , sur le site du Centre national de ressources textuelles et lexicales
^ Définitions lexicographiques et étymologiques de « ronronner » du Trésor de la langue française informatisé , sur le site du Centre national de ressources textuelles et lexicales
^ Définitions lexicographiques et étymologiques de « ronronnement » du Trésor de la langue française informatisé , sur le site du Centre national de ressources textuelles et lexicales
^ “purr ” (英語 えいご ). Online Etymology Dictionary . 2011年 ねん 3月 がつ 7日 にち 閲覧 えつらん 。
^
日本 にっぽん 国語 こくご 大 だい 辞典 じてん 第 だい 二 に 版 はん 編集 へんしゅう 委員 いいん 会 かい ・小学館 しょうがくかん 国語 こくご 辞典 じてん 編集 へんしゅう 部 ぶ , ed. (2000-2002), 日本 にっぽん 国語 こくご 大 だい 辞典 じてん 第 だい 2版 はん , 5 , 東京 とうきょう : 小学館 しょうがくかん , p. 1146
^
夏目 なつめ , 漱石 そうせき (1905-1906), 吾輩 わがはい は猫 ねこ である, http://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/789_14547.html
^ a b c Jean-Yves Gauchet. “Et si le ronron avait des vertus thérapeutiques ? ” (フランス語 ふらんすご ). 2011年 ねん 3月 がつ 7日 にち 閲覧 えつらん 。
^ Emmanuelle Klein. “La ronron thérapie : les chats thérapeutes ? ” (フランス語 ふらんすご ). 2011年 ねん 3月 がつ 7日 にち 閲覧 えつらん 。
^ Michael Simos et Roberta Daar (2005年 ねん 10月 がつ 31日 にち ). “Purr-like vibration device ” (英語 えいご ). 2011年 ねん 3月 がつ 7日 にち 閲覧 えつらん 。
^ Jean Cottraux (2007). Thérapies cognitives et émotions : la troisième vague . Médecine et psychothérapie. Progrès en TCC. Elsevier Masson. pp. 205. ISBN 2294078799
^ Marguerite Du Parquet (1860). Jeux et exercices des jeunes filles . Hachette & Cie. pp. 316
^ “Sir Purr ” (英語 えいご ). Carolina Panthers . 2011年 ねん 3月 がつ 7日 にち 閲覧 えつらん 。
参考 さんこう 文献 ぶんけん
Dennis C. Turner et Patrick Bateson (2000). The domestic cat The biology of its behaviour (2e ed.). Cambridge: Presse universitaire de Cambridge. pp. 244. ISBN 0-521-63648-5
Bernard Denis (1969). Contribution à l’étude du ronronnement chez le chat domestique (Felis catus L.) et chez le chat sauvage (Felis silvestris S.).--Aspects morpho-fonctionnels acoustiques et éthologiques. . École nationale vétérinaire d’Alfort]
モリス, デズモンド (2009-10-02), キャット・ウォッチング2 , 東京 とうきょう : 平凡社 へいぼんしゃ , ISBN 978-4-582-54245-5
羽田 はた 節子 せつこ 訳 やく 。原書 げんしょ は1987年刊 ねんかん 。
外部 がいぶ リンク
Template:Link FA
Template:Link FA