Ωおめが

ギリシア文字もじ
使つかわれなくなった文字もじ
ギリシアの数字すうじ

Ωおめが, ωおめが（オメガ、古代こだいギリシア語ご: ὦ オー、ギリシア語ご: ωμέγα オメガ, 英えい: omega）は、ギリシア文字もじの第だい24番目ばんめ（最後さいご）の文字もじ。ギリシア数字すうじの数すう価かは800。

キリル文字もじのѠ（現在げんざいは使つかわれていない）はこの文字もじを起源きげんとする。また、「⍜」（Οおみくろんの下したに横よこ棒ぼう）という書体しょたいもよく使つかわれる。

起源きげん

この文字もじはフェニキア文字もじには由来ゆらいせず、長ながく広ひろい円えん唇くちびる後ご舌した半はん広こう母音ぼいん/ɔː/を表あらわすために考案こうあんされた。古ふるい時代じだいにはこの音おとは短たん母音ぼいんとおなじくοおみくろん（オミクロン）によって表あらわされていたが^[1]、東ひがしイオニア地方ちほうでは短みじかい「εいぷしろん」と長ながい「ηいーた」を区別くべつしたのにならって、後のちに長ちょう母音ぼいんのための専用せんようの文字もじを作つくった。文字もじの字形じけいは「Οおみくろん」の変形へんけいにより、地方ちほうによっては「」のように書かかれた^[2]。イオニア式しきアルファベットは紀元前きげんぜん5世紀せいき以降いこうにギリシア世界せかい全体ぜんたいの標準ひょうじゅんとして使つかわれるようになった。

古代こだいでの文字もじ名称めいしょうは単たんにὦ（オー）と言いったが、西暦せいれき2-3世紀せいきに母音ぼいんの長短ちょうたんの区別くべつが失うしなわれると、短みじかい「Οおみくろん」と長ながい「Ωおめが」を区別くべつするため、前者ぜんしゃを「小ちいさなオ」(ὂ μικρόν) すなわち「オミクロン」、後者こうしゃを「大おおきなオ」(ὦ μέγα) すなわち「オメガ」と呼よんで区別くべつした^[3]。

文法ぶんぽう書しょによってはこの文字もじの発音はつおんを「オーメガ」とするものもあるが、歴史れきし的てき経緯けいいを考かんがえれば適切てきせつとはいえない^[4]。

象徴しょうちょうとしての用法ようほう

「アルファ・オメガ」も参照さんしょう

最後さいごの文字もじであることから最終さいしゅう・究極きゅうきょくの意味いみで用もちいられる。

アルファからオメガまで（最初さいしょから最後さいごまで）
「私わたしはアルファでありオメガである」は、新約しんやく聖書せいしょのヨハネの黙示録もくしろく第だい22章しょう13節せつの言葉ことば。これはヨハネに世界せかい終末しゅうまつの光景こうけいを幻まぼろし視しさせた存在そんざいの表明ひょうめいである。一般いっぱん的てきな解釈かいしゃくはギリシャアルファベットの最初さいしょと最後さいごから、私わたしは（森羅万象しんらばんしょう総すべての）始はじまりと終おわりであるとい換いかえれる。これは暗あんに私わたしは総すべてを始はじめ、終おえることの出来できる神かみであるとの表明ひょうめいと捉とらえられている。

記号きごうとしての用法ようほう

大文字おおもじの「Ωおめが」は:
- 素粒子そりゅうし物理ぶつり学がくでハイペロンの一ひとつ（ $sss$ からなる）を表あらわす。
- 電気でんき抵抗ていこうの単位たんい「オーム」を表あらわす。
- 数学すうがくでは
  - 計算けいさん複雑ふくざつ性せい理論りろんや解析かいせき学がくで使つかわれるオーダー記号きごうの1つ（ランダウの記号きごう参照さんしょう）
  - オメガ定数ていすうおよびランベルトのW関数かんすう
  - 計算けいさん理論りろんではオメガ数すう（停止ていし確率かくりつとも）
  - n の重複じゅうふくも含ふくめた素因数そいんすうの総数そうすうを与あたえる関数かんすうを Ωおめが(n)と表記ひょうきする。
  - 最小さいしょうの非ひ可算かさん順序じゅんじょ数すう
- 天文学てんもんがくで昇のぼり交点こうてん黄き経けいを表あらわす。
- 宇宙うちゅう論ろんで宇宙うちゅうの密度みつどパラメーターを表あらわす（宇宙うちゅう論ろんパラメータを参照さんしょう）。
- Ωおめが巻まき。ヘリカルスキャン VTRのテープ走行そうこうレイアウトの方式ほうしきの一いち。↔αあるふぁ巻まき
小文字こもじの「ωおめが」は：
- 物理ぶつり学がくで角速度かくそくどを表あらわす。
- 数学すうがくでは
  - ζぜーたに次つぐ第だい 2 の複素数ふくそすう、あるいは未知数みちすうを表あらわすのに用もちいられることがある。
  - 1 の虚きょ立方根りっぽうこん（虚数きょすうである立方根りっぽうこん）の何いずれか一方いっぽうを指さすことがある。
  - n の相そう異ことなる素因数そいんすうの個数こすうを与あたえる関数かんすうを ωおめが(n) と表記ひょうきする。
  - 自然しぜん数すう全体ぜんたいの集合しゅうごうの濃度のうど。
- 天文学てんもんがくで、近日きんじつ点てん引数ひきすうを表あらわす。
- 素粒子そりゅうし物理ぶつり学がくで、オメガ中間子ちゅうかんしを表あらわす。
国際こくさい音声おんせい記号きごうで円えん唇くちびる後ご舌しため広ひろめの狭せま母音ぼいんを表あらわす「ʊ」は、大文字おおもじ「Ωおめが」の逆さかさに由来ゆらいする。

符号ふごう位置いち

大文字おおもじ	Unicode	JIS X 0213	文字もじ参照さんしょう	小文字こもんじ	Unicode	JIS X 0213	文字もじ参照さんしょう	備考びこう
Ωおめが	`U+03A9`	`1-6-24`	`Ω` `Ω` `Ω`	ωおめが	`U+03C9`	`1-6-56`	`ω` `ω` `ω`
Ώ	`U+038F`	`-`	`Ώ` `Ώ`	ώ	`U+03CE`	`-`	`ώ` `ώ`

オームの単位たんい記号きごう（Ω）はこの文字もじに由来ゆらいするが、Unicodeでは別べつの文字もじとして定義ていぎされている。Unicodeのオーム記号きごうは、既存きそんの文字もじコードとの互換ごかん性せいのために用意よういされている互換ごかん文字もじであり、Unicode標準ひょうじゅんではこの文字もじの代かわりに「オメガ大文字おおもじ」を使つかうことを推奨すいしょうしている。

記号きごう	Unicode	JIS X 0213	文字もじ参照さんしょう	名称めいしょう
Ω	`U+2126`	`-`	`Ω` `Ω`	オーム OHM SIGN
℧	`U+2127`	`-`	`℧` `℧`	INVERTED OHM SIGN

脚注きゃくちゅう

^ Allen (1987) p.79
^ Allen (1987) p.90
^ Allen (1987) pp.172-173
^ 田中たなか利光としみつ『新しんギリシャ語ご入門にゅうもん』大修館書店たいしゅうかんしょてん、1994年ねん9月がつ、p.5。ISBN 4-469-21191-5

参考さんこう文献ぶんけん

W. Sidney Allen (1987) [1968]. Vox Graeca (3rd ed.). Cambridge University Press. ISBN 0521335558

ギリシア文字もじ

Αあるふぁαあるふぁ	アルファ	Νにゅーνにゅー	ニュー
Βべーたβべーた	ベータ	Ξくしーξくしー	クサイ
Γがんまγがんま	ガンマ	Οおみくろんοおみくろん	オミクロン
Δでるたδでるた	デルタ	Πぱいπぱい	パイ
Εいぷしろんεいぷしろん	エプシロン	Ρろーρろー	ロー
Ζぜーたζぜーた	ゼータ	Σσς	シグマ
Ηいーたηいーた	イータ	Τたうτたう	タウ
Θしーたθしーた	シータ	Υうぷしろんυうぷしろん	ウプシロン
Ιいおたιいおた	イオタ	Φふぁいφふぁい	ファイ
Κかっぱκかっぱ	カッパ	Χかいχかい	カイ
Λらむだλらむだ	ラムダ	Ψぷさいψぷさい	プサイ
Μみゅーμみゅー	ミュー	Ωおめがωおめが	オメガ
使つかわれなくなった文字もじ
()	ディガンマ		サン
	ヘータ		ショー
ギリシアの数字すうじ
	スティグマ	()	サンピ
()	コッパ