カッパドキア

	ギョレメ国立こくりつ公園こうえんおよびカッパドキアの岩石がんせき遺跡いせき群ぐん; （トルコ）
	画像がぞう募集ぼしゅう中ちゅう
英名えいめい	Göreme　National Park and Rock Site of Cappadocia
仏ふつ名めい	Parc national de Göreme et sites rupestres de Cappadoce
登録とうろく区分くぶん	複ふく合あい遺産いさん
登録とうろく基準きじゅん	(1)(3)(5) (7)
登録とうろく年ねん	1985年ねん
公式こうしきサイト	世界せかい遺産いさんセンター（英語えいご）
	使用しよう方法ほうほう・表示ひょうじ

カッパドキア（ラテン語らてんご: Cappadocia）はトルコの中央ちゅうおうアナトリアの歴史れきし的てき地域ちいき、あるいはアンカラの南東なんとうにあるアナトリア高原こうげんの火山かざんによってできた大地だいちをいう。

古代こだいの地理ちりにおいてCappadocia（「美うつくしい馬うまの地ち」を意味いみするペルシア語ご: Katpatuk‎に由来ゆらい、トルコ語ご: Kapadokya, ギリシア語ご: Καππαδοκία）は、小しょうアジア（現代げんだいのトルコ）の広大こうだいな内陸ないりく地域ちいきを指さした。ヘロドトスの時代じだいには、「カッパドキア人じん」がタウロス山脈さんみゃくから黒海こっかい)までの全域ぜんいきをなしていた。この意味いみでのカッパドキアは、南みなみではタウロス山脈さんみゃくと、東ひがしではユーフラテス川がわと、北きたはポントス地方ちほう（黒海こっかい沿岸えんがん部ぶ）と、西にしはおよそトゥズ湖こと境界きょうかいを接せっしていた。だが、その境界きょうかいを正確せいかくに定義ていぎすることは不可能ふかのうである。その国くにの多少たしょうとも詳細しょうさいな記録きろくを記しるしたただ一人ひとりの古代こだいの著述ちょじゅつ家かストラボンは、その大おおきさを非常ひじょうに誇張こちょうしたが、現在げんざいは長ながさ約やく250マイル、幅はば150マイル以下いかの範囲はんいだったと考かんがえられている。

由来ゆらい

カッパドキアという呼称こしょうの最初さいしょの記録きろくは、紀元前きげんぜん6世紀せいき後半こうはんに遡さかのぼる。そこでは、2人ふたりのアケメネス朝あさ初期しょきの王おうダレイオス1世せいとクセルクセス1世せいについて3言語げんごで書かかれた碑文ひぶんに、ペルシア帝国ていこくを構成こうせいする一いち地方ちほう（古代こだいペルシア語ごでdahyu-「州しゅう」）として現あらわれている。地方ちほうについてのこれらの一覧いちらんの中なかで、古代こだいペルシア語ごでの名称めいしょうはKatpatukaであるが、ペルシア固有こゆうの言葉ことばでないことは明あきらかである。エラム語ごとアッカド語ご版はんの碑文ひぶんも、類似るいじの名称めいしょうを含ふくんでいる。

ヘロドトスは、カッパドキア人じんという名称めいしょうはペルシア人じん（しかるに、彼かれらはギリシア人じんによって「シリア人じん」「白しろいシリア人じん」(Leucosyri)と呼よばれた）によって用もちいられたと伝つたえている。彼かれが言及げんきゅうしたカッパドキアの部族ぶぞくの一ひとつはw:en:Moschoiであり、彼かれらはフラウィウス・ヨセフスによると、旧約きゅうやく聖書せいしょの人物じんぶつヤペテの息子むすこメシェク（Meshech）に結むすび付つけられ、ここにある「マザカ」という都市としはメシェクが訛なまったものとされた（『ユダヤ古代こだい誌し』第だいI巻まきvi章しょうの解説かいせつより^[1]。『ミシュナー』のw:en:Ketubot　13:11も参照さんしょう。）

ペルシア帝国ていこく後期こうきの皇帝こうていの支配しはいのもとで、彼かれらは2つのサトラペイア、すなわち行政ぎょうせい区くに分割ぶんかつされた。中央ちゅうおうと内陸ないりくの部分ぶぶんを含ふくむ一方いっぽうに対たいして、ギリシアの地理ちり学者がくしゃによってカッパドキアの名前なまえが使つかわれ続つづけ、そして他方たほうはポントスと呼よばれた。この分割ぶんかつはクセノフォンの時代じだい以前いぜんに既すでになされていた。ペルシア帝国ていこく滅亡めつぼう後ごも2つの州しゅうは分離ぶんりされ続つづけたので、両者りょうしゃの区別くべつは恒久こうきゅう化かされた。カッパドキアは内陸ないりくの州しゅう（時ときに大だいカッパドキアと呼よばれる）に限定げんていされ、これのみが本稿ほんこうの焦点しょうてんとなる。

カッパドキア王国おうこくはストラボンの時代じだいすなわち紀元前きげんぜん1世紀せいきにはまだ名目めいもく上じょうは独立どくりつ国こくとして存在そんざいしていた。キリキアはその国くに全体ぜんたいの首都しゅとであるカエサレア・マザカ（現在げんざいのカイセリ）が位置いちする地域ちいきに与あたえられた名前なまえである。ストラボンは、カッパドキアの中なかで2つの都市としのみが名なを挙あげるにあたいすると考かんがえた。それは　カエサレア（元もとはマザカとして知しられた）とテュアナ w:en:Tyanaで、タウルス山脈さんみゃくの麓ふもとから遠とおくない位置いちにあった。

歴史れきし

カッパドキアは、後期こうき青銅器せいどうき時代じだいにハッティ人じんとして知しられ、ハットゥシャに中心ちゅうしんを置おいたヒッタイト軍ぐんの本拠地ほんきょちとなった。

ヒッタイト帝国ていこくの滅亡めつぼうの後のち、紀元前きげんぜん6世紀せいきのクロイソスによる敗北はいぼく以後いごのシリア系けいカッパドキア人じんの衰退すいたいによって、カッパドキアは強固きょうこな城しろに住すみ、農民のうみんを奴隷どれい状態じょうたいにおいた、一種いっしゅの封建ほうけん貴族きぞくの軍政ぐんせいに委ゆだねられた。これは後のちに、彼かれらをして、外国がいこくの奴隷どれい制度せいどに適てきした者ものとした。

カッパドキアはアケメネス朝あさのダレイオス1世せいによって設置せっちされた区画くかくの中なかで第だい3サトラペイアに含ふくまれた。しかし、誰だれもその地方ちほう全体ぜんたいに対たいして明確めいかくに至上しじょうな存在そんざいではなく、ペルシア王おうに対たいしてほぼ完全かんぜんに従属じゅうぞくした地元じもとの支配しはい者しゃたちによる統治とうちが長ながく続つづいた。

紀元前きげんぜん4世紀せいき中頃なかごろにはサトラップのダタメスによって徹底的てっていてきに抑おさえられた。後のちに彼かれはペルシア王おうに反旗はんきを翻ひるがえしたものの、敗はい死しした。カッパドキアは、一人ひとりの統治とうち者しゃアリアラテス1世せいのもとで独立どくりつを回復かいふくした。彼かれはアレクサンドロス3世せいと同どう時代じだいの人ひとであり、アケメネス朝あさが滅ほろびた後のちも、カッパドキアの王位おういを維持いじした。

この地域ちいきにアレクサンドロスが訪おとずれることはなかった。彼かれは、小しょうアジアから出発しゅっぱつする前まえにアリアラテスによってなされた彼かれの統治とうち権けんへの従属じゅうぞく的てき承認しょうにんで満足まんぞくした。そして、土着どちゃく王朝おうちょうの継続けいぞくはアレクサンドロスの死後しごの短みじかい期間きかんのみ中断ちゅうだんされた。なぜならその時とき、帝国ていこくの全体ぜんたい的てきな分割ぶんかつの中なかで、王国おうこくはアリアラテスの許可きょかを得えることなくエウメネスのものとなったからだ。彼かれの権利けんりは、アリアラテスを磔刑たっけいにした摂政せっしょうのペルディッカスによって紀元前きげんぜん322年ねんに履行りこうされた。しかしエウメネスの死しをもたらした紛争ふんそうの中なかで、アリアラテスの息子むすこは遺産いさんを回復かいふくし、それを後継こうけい者しゃの血統けっとうに残のこした。

アリアラテス4世せいの治下ちかに、カッパドキアは共和きょうわ政せいローマとの関係かんけいを持もつにいたった。最初さいしょはセレウコス朝あさのアンティオコス3世せいの主張しゅちょうを支持しじし敵対てきたい者しゃとして、それからマケドニア（アンティゴノス朝あさ）王おうペルセウスに対抗たいこうする同盟どうめい者しゃとしてである。

王おうたちはこれ以後いご、それまで折々おりおりに従属じゅうぞくしてきたセレウコス朝ちょうシリアに対抗たいこうして、共和きょうわ政せいローマと同盟どうめいした。アリアラテス5世せいはローマのプロコンスル（前ぜん執政しっせい官かん）プブリウス・リキニウス・クラッスス・ディウェス・ムキアヌス (en)とともにアッタロス朝あさ（ペルガモン王国おうこく）の王位おうい主張しゅちょう者しゃアリストニコス（エウメネス3世せいに対たいして軍ぐんを進すすめたが、彼かれらの軍ぐんは殲滅せんめつされた(紀元前きげんぜん130年ねん)。彼かれの死後しごの混乱こんらんは最後さいごには、勃興ぼっこうするポントス王国おうこくの介入かいにゅうと王朝おうちょうの崩壊ほうかいに終おわる陰謀いんぼうと戦争せんそうを招まねいた。

カッパドキア人じんは、ポントス王おうミトリダテス6世せいに対たいしてローマの支援しえんを受うけつつ、地元じもとの後継こうけい領主りょうしゅにアリオバルザネス1世せいを選任せんにんした（紀元前きげんぜん93年ねん）が、第だい三さん次じミトリダテス戦争せんそうでミトリダテス6世せいが敗はい死しし、ティグラネス2世せい（アルメニア王おう）がローマへ屈服くっぷくするまで、彼かれの支配しはいは確立かくりつされなかった。

ローマの内戦ないせん中ちゅうには、カッパドキアはグナエウス・ポンペイウスに組くみし、次つぎにはガイウス・ユリウス・カエサルにつき、またマルクス・アントニウスに従したがい、そして彼かれに対抗たいこうした。アリオバルザネス王朝おうちょうは終おわりを迎むかえ、その代かわりにアルケラオスという人物じんぶつが、始はじめはアントニウスの、次つぎに初代しょだいローマ皇帝こうていアウグストゥスの支援しえんによって統治とうちした。この従属じゅうぞく的てき独立どくりつは紀元きげん17年ねんまで維持いじされたが、ティベリウス帝みかどの時代じだい、アルケラオス王おうの不名誉ふめいよな死しとともに、カッパドキアはついにローマの属ぞく州しゅうとなった。

カッパドキア属ぞく州しゅうは州都しゅうとをカエサレア（現げん：カイセリ）に置おき、1世紀せいきの後半こうはんにはポントゥスやアルメニア・インフェリオルの領域りょういきの一部いちぶも併あわせられた。ロろーマ帝国まていこくにとって最さい北東ほくとうの属ぞく州しゅうであり、2個こ軍団ぐんだんといくつかのアウクシリアが常駐じょうちゅうした。

284年ねんに皇帝こうていとなったディオクレティアヌスは東方とうほう属ぞく州しゅうの再編さいへんを行おこない、カッパドキア属ぞく州しゅうは元々もともとの属ぞく州しゅう面積めんせきに戻もどされた。330年ねん、カッパドキア属ぞく州しゅうの東ひがし半分はんぶんがアルメニアに新あらたに設置せっちされた属ぞく州しゅうへ合併がっぺいさせるため分離ぶんりされた。371年ねん、ウァレンス帝みかどはさらにカッパドキア属ぞく州しゅうの南西なんせい部ぶをカッパドキア・セクンダ（Cappadocia Secunda）として分離ぶんりさせ、残のこった北東ほくとう部ぶはカッパドキア・プリマ（Cappadocia Prima）と名付なづけられた。

カッパドキアはいくつかの地下ちか都市としを有ゆうしており、主しゅとして初期しょきキリスト教徒きりすときょうとによって、隠かくれ場所ばしょとして使用しようされた。4世紀せいきのカッパドキアの神父しんぷたちは、初期しょきキリスト教きりすときょう哲学てつがくの多おおくに対たいして不可欠ふかけつな存在そんざいであった。

ロろーマ帝国まていこくが分裂ぶんれつするとカッパドキアは東ひがしロろーマ帝国まていこくに属ぞくした。535年ねんにユスティニアヌス1世せいはプリマとセクンダの2つの属ぞく州しゅうを再ふたたび統一とういつのカッパドキア属ぞく州しゅうとして統合とうごうした。その後ご、イサウリア人ひとによる襲撃しゅうげきを受うけ、7世紀せいき前半ぜんはんまでにカッパドキア属ぞく州しゅうはサーサーン朝あさの支配しはい下かへ入はいったが、サーサーン朝あさがイスラム勢力せいりょくによって滅ほろぼされると、カッパドキアは東ひがしロろーマ帝国まていこくの領土りょうどに再ふたたび組くみ入いれられて、アナトリコン（Anatolikon）とアルメニアコン（Armeniakon）の2つのテマ制せいに再編さいへんされた。

1071年ねんのマラズギルトの戦たたかいで東ひがしロろーマ帝国まていこくを破やぶったセルジューク朝あさがカッパドキアを支配しはい。セルジューク朝あさの崩壊ほうかい後ご、一時期いちじきはKaramanoğluが支配しはいしたが、15世紀せいきまでにオスマン朝ちょうがカッパドキアを領有りょうゆうし、現在げんざいはトルコ共和きょうわ国こくの領土りょうど内ないにある。

世界せかい遺産いさん

ギョレメ国立こくりつ公園こうえんおよびカッパドキアの岩石がんせき遺跡いせき群ぐん

"妖精ようせいの煙突えんとつ"と呼よばれる岩いわの形成けいせい物ぶつの間あいだに位置いちするギョレメ は、トルコの歴史れきし地区ちくカッパドキアの町まちである。それはアナトリア中央ちゅうおう部ぶのネヴシェヒル県けん (Nevşehir)にある。ギョレメ国立こくりつ公園こうえん(トルコ語ごでGöreme Milli Parklar)は、1985年ねんにユネスコの世界せかい遺産いさんリストに加くわえられた。

この地域ちいきへの初期しょきの移住いじゅうはキリスト教きりすときょうが伝播でんぱした頃ころの古代こだいローマ後期こうきにさかのぼる。史跡しせきの中なかにはギョレメのオルタハネ、ドゥムス・カディル、ユフス・コックとベジルハネの教会きょうかい、岩いわから彫ほられた家々いえいえと縦たて抗こうがある。地下ちか45メートルまでには、広範囲こうはんいの地下ちか都市としが近年きんねん発見はっけんされている。

登録とうろく基準きじゅん

この世界せかい遺産いさんは世界せかい遺産いさん登録とうろく基準きじゅんのうち、以下いかの条件じょうけんを満みたし、登録とうろくされた（以下いかの基準きじゅんは世界せかい遺産いさんセンター公表こうひょうの登録とうろく基準きじゅんからの翻訳ほんやく、引用いんようである）。

(1) 人類じんるいの創造そうぞう的てき才能さいのうを表現ひょうげんする傑作けっさく。
(3) 現存げんそんするまたは消滅しょうめつした文化ぶんか的てき伝統でんとうまたは文明ぶんめいの、唯一ゆいいつのまたは少すくなくとも稀まれな証拠しょうこ。
(5) ある文化ぶんか（または複数ふくすうの文化ぶんか）を代表だいひょうする伝統でんとう的てき集落しゅうらく、あるいは陸上りくじょうないし海上かいじょう利用りようの際立きわだった例れい。もしくは特とくに不ふ可逆かぎゃく的てきな変化へんかの中なかで存続そんぞくが危あやぶまれている人ひとと環境かんきょうの関かかわりあいの際立きわだった例れい。
(7) ひときわすぐれた自然しぜん美び及および美的びてきな重要じゅうよう性せいをもつ最高さいこうの自然しぜん現象げんしょうまたは地域ちいきを含ふくむもの。