キスワ

カアバ神殿しんでん

カアバ神殿しんでん扉とびら付近ふきん

キスワの一片いっぺんを手てにするイラク クルディスタンの人々ひとびと

キスワ（アラビア語ご：كِسْوَة, kiswah ないしは kiswa, キスワ）はアラビア語ごの「服ふく、衣類いるい」「（壁かべなどの）掛かけ布ぬの、覆おおい」を意味いみする名詞めいし。

単たんに「キスワ」という場合ばあい、現代げんだいではイスラーム用語ようごとして聖地せいちマッカ（メッカ）にあるカアバ神殿しんでんを覆おおう黒くろ布ぬの كِسْوَة الْكَعْبَةِ（kiswat al-kaʿba(h), キスワト・アル＝カアバ）のことを指さすのが一般いっぱん的てき。

役割やくわりと歴史れきし

キスワの役割やくわりは、ユダヤ人じんの契約けいやくの箱はこ（サムエル記き下か第だい6章しょう第だい17節せつ）の天幕てんまくと同様どうようの神聖しんせいな天幕てんまくの痕跡こんせきを表あらわすものとされる。

クライシュ族ぞくがムハンマドとムスリムを弾圧だんあつしていた時代じだい、当時とうじ、クライシュ族ぞくがカアバにキスワを飾かざっていたが、彼かれらはクライシュ族ぞくの行動こうどうに賛同さんどうすることがなかった。630年ねん、マッカがイスラーム勢力せいりょくの手てに落おちると、ムハンマドは、クライシュ族ぞくの手てによって飾かざられていたキスワを燃もやし、そのあとに、イエメン産さんの白しろい布ぬのをカアバに飾かざった。このことが、イスラームにおけるキスワの始はじまりである。

ムハンマド没ぼつ後ごも、キスワを飾かざる風習ふうしゅうは続つづけられた。ウマイヤ朝あさを創始そうししたムアーウィヤは、1年ねんに2回かい、キスワを新あらたなものにしたとされる。

現代げんだいにおいてはサウジアラビア政府せいふが大だい巡礼じゅんれい（ハッジ）の月つきであるヒジュラ暦れき（イスラーム暦れき）12月9日にちに新品しんぴんと交換こうかん。また大だい巡礼じゅんれい期間きかん中ちゅうは非常ひじょうに多おおくの人々ひとびとがカアバ神殿しんでんを取とり囲かこむため上方かみがたに巻まき上あげられる。

交換こうかんされた古ふるいキスワは分割ぶんかつされ、展示てんじされたりイスラーム諸国しょこくに贈おくられるなどしている。

色いろ・形状けいじょう

黒地くろじ部分ぶぶん

カアバ神殿しんでんの覆おおいは時代じだいによって色いろ・形状けいじょうが異ことなっており、現在げんざいのような黒地くろじに金かねの装飾そうしょくを入いれたデザインになったのはアッバース朝あさ期き第だい34カリフ（アン＝）ナースィルの時代じだいだったとされる。

• イスラーム以前いぜんの多神教たしんきょう期き（ジャーヒリーヤ時代じだい）：明あかるい茶ちゃ、ヤギ革かわ製せい（預言よげん者しゃイブラーヒームによりかけられたのが始はじまりだとい伝いつたえられている）
• 預言よげん者しゃムハンマドらによるメッカ（マッカ）征服せいふく後ご：赤あかと白しろの縞しま模様もよう、イエメン製せい布地ぬのじ
• 正統せいとうカリフ時代じだい（アブー・バクル期き）：白しろ、エジプト製せい
• 正統せいとうカリフ時代じだい（ウスマーン期き）：1枚まい布ぬのでは重おもすぎるため2枚まい重かさねに変更へんこう
• ウマイヤ朝あさ期き～ヒジュラ暦れき64年ねん（西暦せいれき683/684年ねん）：赤あか（反たんウマイヤ朝あさ側がわによる変更へんこう）
• アッバース朝あさ期き（ハールーン・アッ＝ラシード期き）：白しろ、エジプト製せいの薄うす布ぬの、カリフの名前なまえ入いり
• アッバース朝あさ期き～ヒジュラ暦れき200年ねん（西暦せいれき815/816年ねん）：黄きと白しろの2種しゅの布地ぬのじ
• アッバース朝あさ期き～ヒジュラ暦れき206年ねん（西暦せいれき821/822年ねん）：年とし3回かい交換こうかん、色いろは赤あか→白しろその1→白しろその2の形かたちで毎回まいかい入いれ替かえ
• ファーティマ朝あさ期き～ヒジュラ暦れき456年ねん（西暦せいれき1063/1064年ねん）：黄き
• アッバース朝あさ期き～ヒジュラ暦れき614年ねん（西暦せいれき1217/1218年ねん）：緑みどり
• アッバース朝あさ期き～ヒジュラ暦れき622年ねん（西暦せいれき1225年ねん）：アッバース朝あさのシンボルカラーであった黒くろ、金きむ装飾そうしょくつき

現在げんざいは外壁がいへきは黒くろ（絹きぬ製せい）で巻まき上あげた際さいに白色はくしょくが現あらわれる。金色きんいろの糸いとでつづられた聖典せいてんクルアーン（コーラン）の章句しょうくが最もっとも目立めだつが、黒地くろじ部分ぶぶんにも一いち面めんにアラビア文字もじによる文言もんごんがちりばめられている。

なお、カアバ神殿しんでん内側うちがわは壁かべの上うえ半分はんぶんに緑みどりの布地ぬのじがかけられており、銀色ぎんいろでクルアーンの章句しょうくや祈いのりなどの文言もんごんがあしらわれている。