チェンジアップ

チェンジアップの握にぎりの例れい

チェンジアップ（changeup）は野球やきゅう、ソフトボールにおける球たま種しゅ（変化球へんかきゅう）の一ひとつである。ただしメジャーリーグなど海外かいがいにおいては、特定とくていの球たま種しゅというよりも「直球ちょっきゅうと同おなじ腕うでの振ふりから投とうじられる球速きゅうそくの遅おそいボール全般ぜんぱん」を指さすことも多おおい。

概要がいよう

チェンジアップは、ボールを鷲掴わしづかみにするなどして敢あえてボールに力ちからが伝つたわらないような握にぎりを工夫くふうすることによって、速球そっきゅうと同おなじ腕うでの振ふりから投なげられる遅おそいボールである。主おもに打者だしゃのタイミングをずらすために投なげられる。アメリカでは最初さいしょに覚おぼえるべき球たまともいわれる。

握にぎり方かたに統一とういつ性せいはなく、様々さまざまな握にぎりや投とう法ほうによって、変化へんか・回転かいてん・球速きゅうそくが変かわる。速球そっきゅうと同おなじくフォーシームとツーシームの握にぎりがあり、フォーシームは比較的ひかくてき曲まがりが小ちいさく制球せいきゅうしやすい。ツーシームはき手きて方向ほうこうに曲まがる軌道きどうを描えがくが制球せいきゅうが難むずかしいというのが一般いっぱん的てきだが、フォーシームでも曲まがりの大おおきいチェンジアップを投なげる投手とうしゅもいる。また、握にぎりによっては固有こゆうの名称めいしょうが付つけられているものもある（#種類しゅるいを参照さんしょう）。フォークボール等ひとしに比くらべ肘ひじや肩かたに負担ふたんが軽かるいとされるため、「投手とうしゅの肩かたは消耗しょうもう品ひん」という考かんがえが支配しはい的てきなアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでは非常ひじょうに多用たようされている。

起源きげんは1800年代ねんだい後半こうはんにプレーしたティム・キーフだと言いわれている。当時とうじは、ルールで下手へた投なげのみ認みとめられていたのが上手じょうず投なげが可能かのうとなる移行いこう期きで、速球そっきゅうやカーブと違ちがいタイミングを外はずす球たま種しゅという意味いみでスローボール（英えい: slow-ball）とも呼よばれた（イーファスピッチとは別べつの意味いみ）。

里さと崎さき智也ともやによるとアメリカ球界きゅうかいではそれこそ一家いっかに1つのレベルで握にぎりのバリエーションが存在そんざいしており、野球やきゅうをやる家庭かていでは父親ちちおやが子供こどもに一子相伝いっしそうでんするものだという。

変化へんか

速球そっきゅうより回転かいてんが少すくなく球速きゅうそくも遅おそいため、減速げんそくしつつ沈しずむ軌道きどうになる。回転かいてんの向むきがバックスピンから傾かたむいて横よこ回転かいてんが加くわわっていれば右みぎか左ひだりに曲まがりながら沈しずむ。変化へんかよりも打者だしゃに速球そっきゅうと誤認ごにんさせることが重視じゅうしされ、速球そっきゅうとの速度そくど差さが大おおきいと打者だしゃからはボールが失速しっそくしているように感かんじられる場合ばあいもある。

日米にちべいの違ちがい

アメリカでは球速きゅうそくに緩急かんきゅうをつけることをチェンジ・オブ・ペースと呼よんでいたが、直球ちょっきゅうと同おなじ腕うでの振ふりから投とうじられる球速きゅうそくの遅おそいボールのことを全般ぜんぱんにチェンジアップと言いうようになり、また、緩急かんきゅうをつけるのは当然とうぜんとなったのでチェンジ・オブ・ペースが球たま種しゅのように使つかわれることはない。高津たかつ臣しん吾われがシカゴ・ホワイトソックスに在籍ざいせきしていた時ときは、投なげる変化球へんかきゅう全すべてがMLBの標準ひょうじゅん球速きゅうそくより数すう段だん遅おそいため、アメリカの解説かいせつ者しゃは高津たかつのシンカーやカーブを全すべてチェンジアップと実況じっきょうしていた。斎藤さいとう隆たかしは週刊しゅうかんベースボール誌上しじょうで「メジャーでは自分じぶんなりに考かんがえた分類ぶんるい不可能ふかのうな変化球へんかきゅうも全すべて大雑把おおざっぱに『チェンジアップ』と呼よんでいるみたいです」と述のべている。

種類しゅるい

チェンジアップは主おもに握にぎりの違ちがいによって分類ぶんるいされる。

サークルチェンジ

チェンジアップ（サークルチェンジ）の握にぎりの例れい

サークルチェンジ（英えい: Circle Change）とは、現状げんじょう最もっともポピュラーなチェンジアップの球たま種しゅ。

人差ひとさし指ゆびと親指おやゆびで輪わ（サークル）を作つくり、中指なかゆびから小指こゆびでボールを保持ほじする握にぎりで投なげる球たま種しゅ。握にぎりがOKサインに似にている点てんから、「OKボール」とも呼よばれる。この握にぎりにより、速球そっきゅうと同おなじように腕うでを振ふっても球速きゅうそくとボールの回転かいてんが抑おさえられ、概がいして速球そっきゅうより球速きゅうそくが15～25km/hほど遅おそい上うえ、沈しずむような軌道きどうを描えがく。

人差ひとさし指ゆびと親指おやゆびで作つくる輪わの形かたちは、人差ひとさし指ゆびと親指おやゆびの先端せんたんをつけて大おおきな輪わを作つくる形かたちや、人差ひとさし指ゆびを親指おやゆびの根元ねもとにつけて小ちいさな輪わを作つくる形かたちなど投手とうしゅによって違ちがい、個人こじん差さはあるが握にぎりの構造こうぞう上じょうシュート回転かいてんがかかりやすく、シンカーのようにき手きての方向ほうこうへ微妙びみょうに曲まがりながら落おちる場合ばあいが多おおく、シンカー・スクリューボールに近ちかい変化へんかをすることからシンカーチェンジ（英えい: sinker change）やチェンジアップシンカー（英えい: change up sinker）とも呼よばれることもある。NPBでは金子かねこ千尋ちひろや山岡やまおか泰やすし輔、岸きし孝之たかゆき、MLBではグレッグ・マダックスやペドロ・マルティネス、コール・ハメルズが代表だいひょう的てきな使つかい手て。

スプリットチェンジ

スプリットチェンジ（英えい: Split change、Split Finger Changeup）は、フォークボールのように人差ひとさし指ゆびと中指なかゆびの間あいだにボールを挟はさんで投なげるチェンジアップで、打者だしゃの手元てもとで鋭するどく沈しずむ。ギャレット・オルソンによると、スプリットチェンジの利点りてんは通常つうじょうフォークボールなら折おりたたむはずの薬指くすりゆびをボールに添そえることで様々さまざまな変化へんかをさせることができるという。ティム・リンスカムが代表だいひょう的てきな使つかい手てで、近年きんねん使つかい手てが増ふえ、ロイ・ハラデイやエドワード・ムヒカ、前田まえだ健太けんた、カルロス・カラスコ、アーロン・シバーレなどが使用しようしている。

バルカンチェンジ

チェンジアップ（バルカンチェンジ）の握にぎりの例れい

バルカンチェンジ（英えい: Vulcan change、Vulcan changeup）は、中指なかゆびと薬指くすりゆびでボールを挟はさんで縦たてに速はやく落おちるチェンジアップでスプリットフィンガード・ファストボールに近ちかい変化へんかをする。タイミングを外はずすよりも空振からぶりを取とる事ことを目的もくてきとするが、球速きゅうそくを重視じゅうしすると体からだへの負担ふたんが大おおきい。サークルチェンジの握にぎりから中指なかゆびと薬指くすりゆびでボールを挟はさみ込こんで投なげ、ボールの縫ぬい目めに指ゆびをかけるかどうかでシュート回転かいてんなどの横よこ変化へんかをつけることが可能かのう。

「バルカン」の名称めいしょうはアメリカのSFテレビドラマ『スタートレック』シリーズに登場とうじょうするバルカン人じんが行おこなう、人指ひとさし指ゆびと中指なかゆび、薬指くすりゆびと小指こゆびをそれぞれくっつけ、中指なかゆびと薬指くすりゆびの間あいだと親指おやゆびを開ひらいて相手あいてに掌てのひらを見みせるバルカン式しき挨拶あいさつに似にた握にぎりであることが由来ゆらいである。エリック・ガニエが代表だいひょう的てきな使つかい手てで、ジャレッド・バートンやギレルモ・モタらも投なげている。日本にっぽん球界きゅうかいでは大だい隣となり憲司けんじや大竹おおたけ寛ひろし、セス・グライシンガーが投なげている。また、潮崎しおざき哲也てつやはバルカンチェンジの握にぎりでシンカーを投なげていた。

パームボール・チェンジ

トレバー・ホフマンのチェンジアップの握にぎり

パームボール・チェンジ（英えい: Palm ball change）は、親指おやゆびと人差ひとさし指ゆび、小指こゆびで深ふかく握にぎるスリーフィンガーと呼よばれるパームボールのような握にぎりで投なげるチェンジアップ。トレバー・ホフマンが代表だいひょう的てきな使つかい手てで、ドニー・エリオットから教おそわった。ホフマンによると、本来ほんらいのパームボールと違ちがって速球そっきゅうに近ちかいバックスピンがかかるという。ホフマンのチェンジアップは彼かれの140km/h前後ぜんごの速球そっきゅうより16km/h前後ぜんご遅おそい124km/hほどの球速きゅうそくで、投手とうしゅと打者だしゃの中なか間あいだ地点ちてんから急きゅうに数すうインチ沈しずむ変化へんかをした。キース・フォークやフェルナンド・ロドニーらが投なげている。特とくにロドニーは、薬指くすりゆびを使つかって変化へんかを調節ちょうせつして投なげることもある。

高速こうそくチェンジアップ

速球そっきゅうと球速きゅうそく差さが少すくない速はやいチェンジアップは高速こうそくチェンジアップと呼よばれ、ダルビッシュ有ゆうが2010年ねんから投なげ始はじめ日本にっぽんで注目ちゅうもくを集あつめた。NPBではゴンザレス・ヘルメン、MLBではフェリックス・ヘルナンデスやスティーブン・ストラスバーグ、ザック・グレインキーのチェンジアップの球速きゅうそくが速はやく、球速きゅうそく90mph（145km/h）以上いじょうを記録きろくすることもある。

エアベンダー

エアベンダー (英えい: Airbender)は、デビン・ウィリアムズが投なげるチェンジアップ（スクリューボール）の愛称あいしょう。ウィリアムズのフォーシームのスピンレートは2300rpm程度ていどあるのに対たいし、このエアベンダーのスピンレートは約やく2700rpmと、フォーシームと比くらべて400rpm程度ていど高速こうそく回転かいてんしている。平均へいきんHorizontal Breakが約やく-20インチと非常ひじょうに大おおきく、左ひだり投なげ投手とうしゅが投とうじるスイーパーのような軌道きどうを描えがく。

その他た

カーブに似にた握にぎり方かたから投なげるチェンジアップをリトルリーグチェンジアップ、指先ゆびさきでなく指ゆびの腹はらの部分ぶぶんでボールを持もつようにして投なげ縦たてに落おちるチェンジアップをストレートチェンジと呼よぶことがある。

ヨハン・サンタナのチェンジアップは速球そっきゅうとの球速きゅうそく差さが大おおきく、打者だしゃにはタイミングが合あわせ難がたい事ことをパラシュートが開ひらいてブレーキがかかる様ように例たとえてパラシュートチェンジ（英えい: Parachute change）と呼よばれる。

関連かんれん項目こうもく

• マグヌス効果こうか

外部がいぶリンク

• How to throw a vulcan change-up（バルカンチェンジの投なげ方かた・英語えいご）（Baseball Pitching Instruction, Pitching Grips, Pitching Velocity Videos Tipsより）
• Vulcan changeup@Everything2.com（英語えいご）（Welcome to Everything@Everything2.comより）