遊撃手ゆうげきしゅ

遊ゆう撃げきの守備しゅびに就つくデレク・ジーター

野球やきゅうのポジション図ず

遊撃手ゆうげきしゅ（ゆうげきしゅ、英えい: shortstop）とは、野球やきゅうにおいて二塁にるいと三塁さんるいの中なか間あいだを守まもる内野ないや手しゅ。守備しゅび番号ばんごうは6。英えい略字りゃくじはSS（Shortstopから）。日本にっぽんではショートとも呼よばれることがある。主おもに二塁手にるいしゅ（セカンド）と三塁手さんるいしゅ（サード）の間あいだに位置いちする。

概要がいよう

センターラインを形成けいせいする守備しゅびのひとつ。二塁手にるいしゅと並ならんで高たかい守備しゅび技術ぎじゅつが要求ようきゅうされ、連係れんけいプレーにおける中核ちゅうかくを担になう。ボールに触さわる機会きかいが多おおいため、「守備しゅびの華はな」と称しょうされる。

二に遊ゆう間あいだおよび三遊間さんゆうかん後方こうほうのフライ処理しょりをはじめ、投手とうしゅや三塁手さんるいしゅのバックアップを行おこなうなど守備しゅび範囲はんいは広ひろい。内野ないやゴロの送球そうきゅうに要ようする時間じかんが短みじかく、加くわえて深ふかい位置いちからの送球そうきゅうも多おおいため、優すぐれた反射はんしゃ神経しんけいや強肩きょうけんなどが必須ひっす。さらに牽制けんせい球だまや盗塁とうるい阻止そしのベースカバー、外野がいやからの中継ちゅうけいプレーなども担にない、最もっとも身体しんたい能力のうりょくが要求ようきゅうされるポジションである。

少すこしばかり打撃だげき不足ふそくや体格たいかくに劣おとっている選手せんしゅでも、俊足しゅんそく・強肩きょうけん・堅守けんしゅなどを兼かね備そなえ守備しゅび力りょくに長たけていれば正せい遊撃手ゆうげきしゅに定着ていちゃくすることが多おおい。その上うえで高たかい打撃だげき能力のうりょくや恵めぐまれた体格たいかくを持もち合あわせていれば「大型おおがた遊撃手ゆうげきしゅ」などと称しょうされ重宝ちょうほうされる。特とくにプロ野球やきゅうでは、プロ入いり後ご要求ようきゅうされる力量りきりょうがないと判断はんだんされたり、故障こしょうや加か齢よわいによって能力のうりょくが衰おとろえてきたりした場合ばあいは直ただちに他たポジションへコンバートされることが多おおく、一般いっぱん的てきに守備しゅび能力のうりょくが衰おとろえるとされる30歳さい代だい半なかばを超こえても遊撃手ゆうげきしゅのレギュラーを守まもり続つづけた選手せんしゅは少すくない。ただし、今いままで遊撃手ゆうげきしゅを務つとめてきた資質ししつから、コンバート先さきのポジションで名手めいしゅとして活躍かつやくする場合ばあいもある。

日本にっぽんのプロ野球やきゅうでは、ボールに対たいする抵抗ていこうの少すくない人工芝じんこうしばを内野ないやに使用しようした球場きゅうじょうが多おおいため、内野ないやゴロがより速はやく守備しゅび位置いちまで到達とうたつするので、捕と球たまできなかった場合ばあいでも体からだの正面しょうめんで止とめてボールを前まえに落おとす打球だきゅう処理しょり方法ほうほうが基本きほんとされる。一方いっぽう、内野ないやに天然てんねん芝しばを多おおく使つかうアメリカの野球やきゅうでは、打球だきゅうの速度そくどが落おちるので前まえに落おとして打球だきゅうを処理しょりしていたのでは一塁いちるいへの送球そうきゅうが間まに合あわなくなるため、捕と球たまの確実かくじつ性せいよりも素早すばやくアウトを取とる能力のうりょくを求もとめられる。そのため、体からだのひねりを利用りようして素早すばやく送球そうきゅう動作どうさに移うつることの出来できる「逆ぎゃくシングル捕と球たま」を積極せっきょく的てきに行おこなうように指導しどうされることが多おおく、中なかには真正面ましょうめんの打球だきゅうであっても逆ぎゃくシングルで捕と球たまする選手せんしゅもいる。斎藤さいとう隆たかしは「もっとも大おおきな差さが現あらわれるのは、打撃だげき力りょく、走はし力ちから、守備しゅび力りょくのうちどれですか？」という問といに「守備しゅびじゃないですか。特とくに内野ないや守備しゅびです」「もちろん、打撃だげきもそうですが、内野ないやの守備しゅび力りょくは、芝生しばふの上うえで野球やきゅうをやることが当あたり前まえだった彼かれらと、土どと人工芝じんこうしばしか知しらない日本人にっぽんじん選手せんしゅでは、考かんがえ方かたや捕とり方かたに根本こんぽん的てきな違ちがいがあります。だから、上手うまい下手へたということではなく、違ちがうんですよ。それが土台どだいの違ちがいという意味いみなんです。」と解説かいせつしている。

左ひだり投なげの選手せんしゅの場合ばあい、ボールを捕と球たましてから一塁いちるい手しゅへ送球そうきゅうするまでに体からだの向むきを変かえる必要ひつようがあり、右みぎ投なげに比くらべわずかではあるが処理しょりに時間じかんを要ようし、一塁いちるい手しゅを除のぞく他ほかの内野ないやのポジションと同様どうよう、遊撃手ゆうげきしゅも通常つうじょうは右みぎ投なげの選手せんしゅが務つとめる。

メジャーリーグにおいてはカル・リプケン・ジュニアの登場とうじょう以降いこう、遊撃手ゆうげきしゅも打撃だげき力りょくが必要ひつよう不可欠ふかけつなポジションであるとのイメージが強つよくなった。特とくに、デレク・ジーター、アレックス・ロドリゲス、ノマー・ガルシアパーラの3人にんは1990年代ねんだいに「3大だい遊撃手ゆうげきしゅ」と呼よばれ、リプケン以降いこうの、打撃だげきも守備しゅびも兼かね備そなえた新あらたな遊撃手ゆうげきしゅ像ぞうを体現たいげんする存在そんざいとなった。2000年代ねんだいに入はいるとロドリゲス、ガルシアパーラに代かわって、マイケル・ヤング、ミゲル・テハーダを加くわえた3選手せんしゅが「新しん・3大だい遊撃手ゆうげきしゅ」と呼よばれていた。ただし近年きんねんにおいても、ポジション別べつのOPSなどでは、遊撃手ゆうげきしゅは概がいして外野がいや手しゅや一塁いちるい手しゅ、三塁手さんるいしゅよりも低ひくくなっており、まずは打撃だげきよりも遊ゆう撃げきを守まもれる守備しゅび力りょくが要求ようきゅうされていることに変かわりはないようである。選手せんしゅの総合そうごう評価ひょうか指標しひょうとして知しられるWARでは、捕手ほしゅに次ついでポジション補正ほせい値ちが高たかい。

神奈川かながわ県けんの強豪きょうごう高校こうこうの監督かんとくがアメリカにコーチ留学りゅうがくした際さい、横浜よこはま高校こうこう時代じだいの松坂まつさか大輔だいすけの映像えいぞうを持もって渡米とべいすると「なんでショートにしないんだ?」と疑問ぎもんの声こえがアメリカ国内こくないの指導しどう者しゃ達たちから上あがった。これは投手とうしゅというポジションがアメリカの野球やきゅうにおいて「背せがひょろっと高たかくて、ちょっと不器用ぶきようそうで、他たに守まもるポジションがないような選手せんしゅ」の守まもるポジションとされているためでもあるが、それだけ遊撃手ゆうげきしゅの地位ちいがアメリカで高たかいことを物語ものがたるエピソードでもある。

歴史れきし

アメリカの野球やきゅう黎明れいめい期き、投手とうしゅの両隣りょうどなりに2人ふたりの守備しゅび者しゃがおり、打者だしゃのすぐ近ちかくで守まもることからshortstopの名称めいしょうで呼よばれていた。時代じだいが進すすみ、2人ふたりいたショート・ストップは1人ひとりとなり、当時とうじは二塁にるいの塁るい上じょう付近ふきんに構かまえていた二塁手にるいしゅと投手とうしゅの間あいだを守まもるようになる。日本にっぽんに野球やきゅうが普及ふきゅうしたのはこの頃ころである。さらに時代じだいが進すすみ、二塁にるいを守まもっていた二塁手にるいしゅが一塁いちるい寄よりに位置いちするようになったことで、遊撃手ゆうげきしゅも二塁にるいと三塁さんるいの間あいだに移動いどうし、現在げんざいの守備しゅび形態けいたいとなった。

日本にっぽんにおいては明治めいじ時代じだいの野球やきゅうが伝つたわってまだ間あいだもない頃ころに、正岡子規まさおかしきによって「short＝短みじかく」「stop＝遮さえぎる」の直訳ちょくやくである「短たん遮さえぎ」（たんしょ）、もしくは「短たん遮さえぎ者しゃ」との訳語やくごがあてられた。その後ご、明治めいじ時代じだいの教師きょうし・中馬ちゅうま庚かのえが「ショート・ストップは戦列せんれつで時期じきを見みて待機たいきし、動うごき回まわってあちこちを固かためる『遊ゆう軍ぐん』のようだ」と説とき、「遊撃手ゆうげきしゅ」という名称めいしょうが広ひろまった。

参考さんこう文献ぶんけん

• Al Campanis 著しる、内村うちむら祐之ひろゆき 訳わけ『ドジャースの戦法せんぽう』ベべースボすぼール・マガジン社るまがじんしゃ、1957年ねん。ASIN B000JAY4RG。