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ディザ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

ディザ(Dither)とは、量子りょうし誤差ごさはしすう)を、単純たんじゅんまるめるのではなく、全体ぜんたい量子りょうし誤差ごさ最小さいしょうするようかくりつ調整ちょうせいしててまたはげのどちらかをランダムにおこなうためによるゆらぎのことである。そのような一種いっしゅのノイズてきデータを追加ついかする作業さぎょうおよび技法ぎほうディザリング(Dithering)またはディザほうばれる。誤差ごさ周囲しゅういのデータに拡散かくさんする手法しゅほうをもふくめてうこともある。ディザリングは、デジタル音響おんきょうやデジタル動画どうがのデータを処理しょりするさい普通ふつうおこなわれ、CD制作せいさくでも最終さいしゅう段階だんかいでよくおこなわれている。

用語ようご "dither" の起源きげん

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[…] ディザの最初さいしょ使用しようれいだい大戦たいせん登場とうじょうした。航空こうくう爆撃ばくげきでは機械きかいしき計算けいさんもちいて航行こうこうばくだん軌道きどう計算けいさんおこなっていた。面白おもしろいことに、こうした計算けいさん (=すうひゃく歯車はぐるままったはこ) は、航空機こうくうきせてんだ状態じょうたいほう計算けいさん精度せいどたかく、地上ちじょうではおとっていた。技術ぎじゅつしゃたちは、航空機こうくうき振動しんどうによってうごきのわる部品ぶひん起因きいんする誤差ごさ減少げんしょうすることに気付きづいた。部品ぶひんがカクカクとではなく、スルスルとうごいたのだ。小型こがた振動しんどうモーターがこうした計算けいさんまれ、その振動しんどうはディザ (dither) とばれた。ditherは中期ちゅうき英語えいごの "didderen" に由来ゆらいするかたりで、「ブルブルふるえる」という意味いみである。今日きょうにおいて、機械きかいしきメーターをコツンとたたいて精度せいど向上こうじょうさせることは、つまりディザを適用てきようすることである。現代げんだい辞書じしょでは、dither は「非常ひじょう緊張きんちょうした、混乱こんらんした、または動揺どうようした状態じょうたい」と定義ていぎされている。微量びりょうではあるが、数値すうちシステムはディザによって「精度せいど向上こうじょう」という意味いみすこしアナログてきにすることができる。
Ken Pohlmann、Principles of Digital Audio、4th edition、page 46[1]

戦後せんごあいだもなく、アナログ計算けいさん水力すいりょく制御せいぎょ銃砲じゅうほうについての書籍しょせきで "dither" という用語ようご使つかわれている[2][3]量子りょうしにおけるディザリング技術ぎじゅつ導入どうにゅう提唱ていしょうしたのはMITの Lawrence G. Roberts で[4]、1961ねん修士しゅうし論文ろんぶん[5]と1962ねん論文ろんぶん[6]があるが、かれは "dither" という言葉ことばもちいていない。いまのような意味いみで "dither" が使つかわれた初出しょしゅつは1964ねんの Schuchman の論文ろんぶんである[7]

デジタル信号しんごう処理しょり波形はけい解析かいせきにおけるディザリング

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ディザリングは、デジタルデータの標本ひょうほん周波数しゅうはすう量子りょうしビットすう変換へんかんするさい処方しょほうデジタル信号しんごう処理しょり)として、デジタル音響おんきょうデジタル動画どうがデジタル写真しゃしん地震じしんがくレーダー天気てんき予報よほうなどの分野ぶんや使つかわれる。なかでも波形はけい解析かいせきにおけるこの信号しんごう処理しょり方式ほうしき意義いぎおおきい。

変化へんか連続れんぞくてきりょう量子りょうしには量子りょうし誤差ごさがともなう。その誤差ごさ本来ほんらい信号しんごう連関れんかんするかたちで均一きんいつてき再起さいきするものであるとき、そこには、数値すうちてき確定かくていせいをそなえた人工じんこうてき周期しゅうき現出げんしゅつすることになる。ところがそのような人工じんこうせい誤差ごさ周期しゅうきせい確定かくていせい)をはらんだデータというのは、ときとしてのぞましいものではない。信号しんごう周期しゅうきせい確定かくていせいにたいして受信じゅしんがわ敏感びんかんである場合ばあいとくにそうである。このとき、データ信号しんごう周期しゅうきせい確定かくていせいは、ランダムせいふくませたディザリングによって排除はいじょすることができる。

信号しんごう処理しょりのレシピとしては、たん乱数らんすうくわえたのでは量子りょうしビットすうらしたのとおなじというだけであり、24ビットでオーバーサンプリングならぬ「オーバー量子りょうし」し、誤差ごさをきちんと処理しょりして16ビットにするのがい。

誤差ごさ拡散かくさんふく場合ばあい(たとえば、くろ背景はいけいなかの1ドットのしろてんが、ぼやっとしたあかるいグレーのかたまりになるだろう)、場合ばあいによってはエッジ強調きょうちょうなど処理しょりともわせることもある。

デジタルオーディオ

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音響おんきょうにおいては、デジタルフィルタでよくられる周期しゅうきてきリミットサイクル解消かいしょう役立やくだつ。ランダムノイズは一般いっぱんにリミットサイクルがつくりだす倍音ばいおんよりも聴取ちょうしゅがたい。音質おんしつめんから説明せつめいすると、「デジタルくさい」と表現ひょうげんされる硬質こうしつおと傾向けいこう緩和かんわすることが出来できる。具体ぐたいてきには、サぎょうこえみみさらなくなるよう変化へんかきる。

Audio Engineering Society (AES) の学会がっかい掲載けいさいされた Lipshitz と Vanderkooy の論文ろんぶんで、様々さまざまかくりつ密度みつど関数かんすう (PDF) をディザ信号しんごう(ノイズ)として使つかったときの差異さい指摘してきし、音響おんきょうにおけるディザ信号しんごう最適さいてきレベルについてろんじている[8][9]ガウス雑音ざつおん使つかってゆがみを解消かいしょうするには、方形ほうけいPDF三角形さんかっけいPDFよりもたかいレベルを必要ひつようとする。三角形さんかっけいPDFによる雑音ざつおんゆがみを解消かいしょうするのにひくいレベルでむ。

アナログシステムでは信号しんごうは「連続れんぞく」だが、PCMデジタルシステムでは信号しんごう振幅しんぷく固定こてい制限せいげんされる。これを量子りょうしぶ。振幅しんぷく離散りさんてきであり … ディザを使つかわすに量子りょうしした信号しんごうでは量子りょうしによってしょうじるゆがみがのこる。 … それをふせぐには信号しんごうに「ディザ」をほどこ必要ひつようがある。ディザリングは倍音ばいおんなどのこのましくないゆがみを数学すうがくてき除去じょきょするもので、わりに一定いっていのノイズを付与ふよする。[10]

たとえばSACDなどにおさめられる量子りょうしビットすうビット深度しんど)24ビットのデータがあるのにたいしてCDのデータは16ビットである。16ビットはCDの規格きかく数字すうじであり、制作せいさく工程こうていでは24ビットで処理しょりされていたとしてもCDに収録しゅうろくするためのマスターの段階だんかいでは16ビットにしなければならない。プレイヤーが再生さいせいするデータも16ビットである。この規格きかくわくないこう品位ひんいはか手法しゅほうのひとつとして、量子りょうしビットすうおおい(たとえば24ビットの)データを16ビットに変換へんかんするさいに、ディザリングをおこなう、という手法しゅほうがある。

ある量子りょうしビットすうのデータをことなるビットすう変換へんかんする方法ほうほうはいくつかある。目的もくてきのビットすう標本ひょうほん単位たんいおさまらずしてはみもとデータの部分ぶぶんのぞて(truncation)、また、はみることになる部分ぶぶんちかなおしてでも保持ほじするまるめ(round)などがある。しかしこれらの処方しょほうは、前節ぜんせつべられている誤差ごさ周期しゅうき周波数しゅうはすう成分せいぶんおよびそれによるノイズ発生はっせいをもたらしかねない。たとえばつぎのような波形はけいデータをあらわがあるとする。

1   2   3   4   5   6   7   8

たとえば、この波形はけいゆうする数値すうちを 20% 縮小しゅくしょうする(波形はけい構成こうせいすべてに 0.8 をかける)と、つぎのようなられる。

0.8 1.6 2.4 3.2 4.0 4.8 5.6 6.4

量子りょうしビットすうが、整数せいすうけたのぶんしかなかったら、これを整数せいすうあらためなくてはならない。 「て」を適用てきようした場合ばあいにはつぎのようになる。

0   1   2   3   4   4   5   6

てのわりに「まるめ」(四捨五入ししゃごにゅう)を適用てきようした場合ばあいにはつぎのとおりである。

1   2   2   3   4   5   6   6

いずれの処方しょほうでも、もとデータの数値すうちたいしていくらかの誤差ごさがある。そしてその誤差ごさはまた回帰かいきてきである。正弦せいげんのような反復はんぷくてき波形はけいについてこの現象げんしょうかんがえるとわかりやすい。そのような波形はけい標本ひょうほんし、量子りょうしする場合ばあいもととなるデータにふくまれる 2.4 や 6.4 というにたとえば「て」を適用てきようして 2 などにするためにしょうじる 0.4 の差分さぶんは、もとデータの波形はけい周波数しゅうはすう標本ひょうほん周波数しゅうはすうせき周波数しゅうはすうで、周期しゅうきてき再起さいきすることになる(このれい場合ばあいもとデータが 5 である 4.0 の量子りょうしには差分さぶん発生はっせいしない)。おとしょうじさせるのが物質ぶっしつ周波しゅうはてき運動うんどうである以上いじょうデジタイズさいこるこの周期しゅうきてき誤差ごさ周波数しゅうはすう成分せいぶんひとつとしておとける。そしてこれをみみゆがとしてることになる。

量子りょうし誤差ごさのこのような問題もんだい根本こんぽんから回避かいひすることは不可能ふかのうである。2 けた数値すうち (4.8) が「て」や「まるめ」などによって 1 けた数値すうち(4 または 5)に変換へんかんされる過程かてい誤差ごさかならしょうじる。ただし、数値すうち量子りょうしする仕方しかたなんらかの工夫くふうくわえて誤差ごさ周期しゅうきてき発生はっせいすなわち差分さぶん周波数しゅうはすう・ノイズふせぐことは可能かのうである。すなわち、量子りょうしにおける誤差ごさ本来ほんらい信号しんごう波形はけい周期しゅうきとは連関れんかんしないようにするのである。

一策いっさくとして、たとえば2けた 4.8 を処理しょりするにあたって、あるときは 5 に、またあるときには 4 に、というように「切捨きりすて」と「まるめ」をランダムに適用てきようすることがかんがえられる。「なが」でればこれは 4 と 5 とのあいだあらわれる平均へいきんてき数値すうちとして周波数しゅうはすう成分せいぶんすることになる。しかしそれでも周期しゅうきてき誤差ごさすなわちノイズのもと十分じゅうぶんにはのぞかれない。4 や 5 という本来ほんらいの 4.8 にたいしてつねに 0.2 や -0.8 といった誤差ごさかえむわけである。

4.8 を処理しょりするべつさくとしては、「かいよんかいは 5 にまるめ、のこいちかいを 4 にてる」というものがある。「なが」でればこれは前述ぜんじゅつ処方しょほう結果けっか(4 と 5 のあいだ平均へいきん)よりも本来ほんらいの 4.8 にごくちかしい数値すうち周波数しゅうはすうをもたらす。しかしこれでも問題もんだい周期しゅうきてき誤差ごさ・ノイズのもと解決かいけつくしたことにはならない。5 にまるめたよん回分かいぶん本来ほんらい、そして 4 にてたいち回分かいぶん本来ほんらい、これらは依然いぜんとして誤差ごさであり、またそれはとうさくかい周期しゅうきという原理げんりしたがってかえすことになるわけである。

問題もんだいは、一定いってい処理しょり周期しゅうきてきかえされてしまうことにある。ならば処理しょりをランダムすればいい、という解決かいけつあん最終さいしゅうてきにはてくる。80% の比率ひりつで 5、20%の比率ひりつで 4、という構成こうせい全体ぜんたいとして保持ほじしながら、もとの 4.8 という数値すうちが 4 あるいは 5 に変換へんかんされるところのパターンをランダムすれば、誤差ごさ周期しゅうき周波数しゅうはすう成分せいぶんさまたげられ、ノイズの発生はっせいおさえられるわけである。

また、最終さいしゅうてき量子りょうしにおける誤差ごさ( 4.8 が 5 になったのであれば -0.2 )をおぼえておき、つぎ以降いこうかくりつ調整ちょうせいする、という誤差ごさ拡散かくさんさせる手法しゅほうもある。この手法しゅほうには、全体ぜんたいてき再現さいげんせいげるかわりに局所きょくしょてき再現さいげんせいがる、というトレードオフがある。

0 から 0.9 までの乱数らんすう(0.6、0.4、0.5、0.3、0.7 など)をまじえて目的もくてき 4.8 を処理しょりすれば、20%ちゅうは 4 (0 と 0.1 の場合ばあい)、80%ちゅうは 5、と量子りょうしされながらも、どちらにてられまるめられるかは乱数らんすうによって作為さくいされる。そして、前節ぜんせつべられているように、周期しゅうきてきなノイズは周期しゅうきてきなノイズよりもヒトのみみにたいしてやさしく、我々われわれはこれを自然しぜんゆがとして感受かんじゅすることになる。

ディザリングをほどこすべき場合ばあい

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ビットレートをらす処理しょりをするときは、ディザリングをほどこすべきである。べいApogee Electronics(英語えいごばん記事きじ開発かいはつし、同社どうしゃDAコンバーター搭載とうさいされていたUV22というディザ技術ぎじゅつ音楽おんがく業界ぎょうかいないでは有名ゆうめいであり、 デジタル・オーディオ・ワークステーションけに単体たんたいのプラグインされ、デファクトスタンダードてき存在そんざいとなっている。

様々さまざまなディザ

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RPDF は "Rectangular Probability Density Function"(方形ほうけいかくりつ密度みつど関数かんすう)のりゃくで、サイコロおな役目やくめたす。任意にんいかず同等どうとう作為さくいかくりつででる。

TPDF は "Triangular Probability Density Function" (三角形さんかっけいかくりつ密度みつど関数かんすう)のりゃくで、2のサイコロとおな役目やくめたす。かず合計ごうけい出現しゅつげんかくりつはそれぞれことなり、以下いかのようになる:

1/1 = 2
1/2 2/1 = 3
1/3 2/2 3/1 = 4
1/4 2/3 3/2 4/1 = 5
1/5 2/4 3/3 4/2 5/1 = 6
1/6 2/5 3/4 4/3 5/2 6/1 = 7
2/6 3/5 4/4 5/3 6/2 = 8
3/6 4/5 5/4 6/3 = 9
4/6 5/5 6/4 = 10
5/6 6/5 = 11
6/6 = 12

この場合ばあい、7 がの 2 から 12 よりもかくりつたかく、このようなかくりつ分布ぶんぷしょうして「三角形さんかっけい」とんでいる。

ガウシアンPDF無限むげんのサイコロと等価とうかである。かくりつ分布ぶんぷ釣鐘つりがねがたえがき、これをガウス分布ぶんぷぶ。ガウシアンPDFによるディザは自然しぜん大気たいき雑音ざつおんテープヒスなどのノイズにもっとちかい。

いろつきディザ(Colored Dither)はホワイトノイズとはことなるため、フィルターきディザともばれる。オーディオ機器きき帯域たいいき特性とくせいわせるためにエネルギーをげるように、たか周波数しゅうはすうほどおおきなエネルギーをったノイズを使用しようする。

ノイズシェーピング英語えいごばんもディザと同様どうよう手法しゅほうであるが、ランダムよりもオーディオストリームにおいて誤差ごさ拡散かくさんのリアルタイム処理しょり重点じゅうてんいたフィードバックがた処理しょりである。

デジタル画像がぞうとイメージ処理しょり

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ディザリングのれいあかあおだけを使つかっているが、それぞれの矩形くけいちいさくなると全体ぜんたいとしてむらさきえてくる。
IrfanViewにて256しょくのグラフィックスにディザリングを使用しようしたれい

ディザリングは、コンピュータグラフィックス使つかわれる場合ばあいには、制限せいげんされたいろかずでそれ以上いじょう色調しきちょう表現ひょうげんする技法ぎほうとして使つかわれる。ディザリングをほどこしたデジタル画像がぞうでは、パレットにないいろ表現ひょうげんするために、存在そんざいするいろピクセルをばらつかせて配置はいちする。ヒトのはそのようないろ拡散かくさん配置はいちいろ混合こんごうとして知覚ちかくする。いろすうすくないディザリングをほどこした画像がぞうは、粒状りゅうじょう微細びさい模様もようなどで見分みわけがくことがおおい。

ディザリングは印刷いんさつにおける中間色ちゅうかんしょく調ちょう表現ひょうげん技法ぎほうによくている。

その性質せいしつじょう、ディザリングは画像がぞうなんらかのパターンを導入どうにゅうし、ヒトのからはそのパターンが判別はんべつできない程度ていど距離きょりから画像がぞうるだろうというかんがかたもとづいている。しかし実際じっさいにはそうでないこともおおく、パターンはえることがおおい。そのような場合ばあいブルーノイズのディザパターンがもっと目立めだたない[11]。ブルーノイズのディザリングパターンを生成せいせいするため当初とうしょ誤差ごさ拡散かくさんほう使つかわれたが、人工じんこうてきおちいることなくブルーノイズのディザリングを実現じつげんする配列はいれつディザリングなどの技法ぎほう考案こうあんされている。

画像がぞういろすうらすことは、多大ただい副作用ふくさようをもたらす。もと画像がぞう写真しゃしんだった場合ばあいいろすうすくなくともすうせん場合ばあいによってはすうひゃくまんしょくにもなる。これを固定こていいろすうから構成こうせいされるパレットで表現ひょうげんできるようにすると、ある程度ていどいろかんする情報じょうほううしなわれる。

いろすうらした画像がぞうは、いくつかの要因よういんにより劣化れっかする。そのだいいち要因よういん使用しようしているカラーパレットにある。たとえば、もと画像がぞう1)を216しょくWebセーフカラーげんしょくする場合ばあいかんがえる。もと画像がぞうかくピクセルのいろ単純たんじゅんもっとちかいろにした場合ばあい、ディザリングはおこなわれない(2)。一般いっぱんに、このようなげんしょくほどこすと細部さいぶうしなわれて同色どうしょく平坦へいたんつらなる領域りょういきができ、もと画像がぞうとはかなり印象いんしょうわる。かげになる部分ぶぶん曲面きょくめんいろおびができ、奇妙きみょうえる。ディザリングをほどこすことにより、そのような人工じんこうてき見栄みばえを改善かいぜんすることができ、もと画像がぞうちか結果けっかることができる(3)。

固定こていされたカラーパレットを使用しようするさい問題もんだいとして、必要ひつよういろがそのパレットにないことがおおてんげられる。同時どうじに、もと画像がぞうではまった使つかわないいろがパレットにふくまれている。たとえば、みどり系統けいとういろまった使つかわない画像がぞうでは、パレットないみどり系統けいとういろはほとんど使つかわれない。そのような場合ばあい画像がぞう最適さいてきされたカラーパレットを使用しようすると画像がぞう改善かいぜんされる。最適さいてきされたパレットのいろは、もと画像がぞうおお使つかわれているいろからえらばれる。最適さいてきされたパレットを使つかってげんしょくすると、その結果けっかもと画像がぞうによりちかくなる(4)。

パレットないいろすう画質がしつ影響えいきょうする。たとえばパレットが16しょくとなった場合ばあい画像がぞう細部さいぶはさらにうしなわれる(5)。そのような場合ばあいでもディザリングをほどこすことによって画像がぞう見栄みばえは改善かいぜんされる(6)。

応用おうよう

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初期しょきビデオカード携帯けいたい電話でんわてい価格かかくデジタルカメラ使つかわれている最近さいきん[いつ?]液晶えきしょうディスプレイでは、表示ひょうじ可能かのういろすうすくない。ディザリングの主要しゅよう応用おうようの1つとして、制限せいげんのあるハードウェアでより多彩たさいいろすう画像がぞうをなるべく正確せいかく表示ひょうじするということがげられる。たとえば、256しょくしか同時どうじ表示ひょうじできないハードウェアですうひゃくまんしょく写真しゃしん画像がぞう表示ひょうじするといった場合ばあいにディザリングが使つかわれるだろう。ディザリングをおこなわない場合ばあいもと画像がぞう使つかわれているいろ発色はっしょく可能かのうな256しょくのうちもっとちかいろ代替だいたいされ、非常ひじょうわるくなる。

一部いちぶ液晶えきしょうディスプレイは、かくピクセルのいろ高速こうそくえることで同様どうよう効果こうか達成たっせいしている。これをフレームレートコントロール英語えいごばん (FRC) ともぶ。それによりたとえば、18ビットカラーのいろ深度しんどしかないディスプレイで24ビットのトゥルーカラーを表示ひょうじできる。

ハードウェアのいろ深度しんど制限せいげんのある場合ばあいのディザリングはWebブラウザなどのソフトウェアで一般いっぱんおこなわれている。Webブラウザは画像がぞう外部がいぶからってくるので、表示ひょうじできないほどいろすうおお画像がぞうがあった場合ばあいにディザリングが必要ひつようとなる。ディザリングされないようにしたい画像がぞうなど)を256しょくしか表示ひょうじできない機器ききでもディザリングされないようにするために、Webセーフカラーばれるカラーパレットが登場とうじょうした。

15ビット(32,768しょく)や16ビット(65,536しょく)など、ディスプレイがフルカラーの写真しゃしん表示ひょうじするのに十分じゅうぶんいろすう使用しよう可能かのうであっても、スムーズにいろ変化へんかするおおきな領域りょういきがあるといろおび目立めだつことがある。この場合ばあい、ディザリングによって「擬似ぎじフルカラー」を実現じつげんすることで見栄みばえがおおきく改善かいぜんされる。24ビットRGBのハードウェアであっても、ディザリングでよりたかいろ深度しんどをシミュレートすることでガンマ補正ほせい色相しきそう喪失そうしつ最小限さいしょうげんおさえることができる。Adobe Photoshop などの高機能こうきのう画像がぞう処理しょりソフトウェアでは、ディザリングで改善かいぜんすることがよくおこなわれている。

ディザリングが使つかわれる場面ばめんとして、画像がぞうファイル形式けいしき制限せいげんがある場合ばあいもある。とく使つかわれるGIF形式けいしきは、おおくの画像がぞうエディタなどで256しょくかそれ以下いかいろすう制限せいげんされている。PNGなどのほか形式けいしき画像がぞうでも、ファイルサイズをちいさくするためにいろすう制限せいげんする場合ばあいがある。これらの画像がぞうでは、その画像がぞう使つかっているぜんいろふく固定こていカラーパレットがファイル形式けいしきふくまれている。そのような場合ばあいグラフィックソフトウェアいろすう制限せいげんするさいにディザリングをほどこすことになる。

ディザリングは印刷いんさつにおけるあみてん技法ぎほうている。インクジェットプリンター孤立こりつしたドットを印刷いんさつ可能かのうであり、そのために印刷いんさつ分野ぶんやでもディザリングがよく使つかわれるようになってきている。そのため、ディザとあみてん同義語どうぎごとして使つかわれることもあり、とくデジタル印刷いんさつ分野ぶんやでその傾向けいこうつよい。

典型てんけいてきなデスクトップがたのインクジェットプリンターのいろすうは15しょく(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのわせ)で、ブラックのインクをぜるといろかくされてしまうことがおおいため、実際じっさいいろすうはもっとすくない。様々さまざまいろ再現さいげんするにはディザリングが必須ひっすである。くらみつ印刷いんさつされた部分ぶぶんではインクのドット同士どうしがくっつくため、ディザリングがえないことがおおい。しかし、あかるい部分ぶぶんではくわしくるとディザリングがほどこされていることがえる。

アルゴリズム

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ディザリングをおこなうよう設計せっけいされたアルゴリズムはいくつか存在そんざいする。1975ねんというはや時期じき開発かいはつされ、現在げんざいでも人気にんきがあるのがフロイド-スタインバーグ・ディザリングアルゴリズムである。このアルゴリズムは、誤差ごさ拡散かくさん英語えいごばん処理しょりとおして人工じんこうてき改善かいぜんする。単純たんじゅんなディザリングアルゴリズムよりももとちか画像がぞう生成せいせいすることができる[12]

ディザリングほうには以下いかのようなものがある:

  • 平均へいきん (Average) ディザリング[13]: もっと単純たんじゅんなディザリングほう固定こていのしきい設定せっていし、もっとちかいろ使用しようする。ただしもと画像がぞう詳細しょうさいうしなわれやすい[12]
  • 作為さくい (Random) ディザリング: かくピクセルに乱数らんすうてき要素ようそ導入どうにゅうし、電波でんぱよわいときのテレビ画像がぞうのような画像がぞう生成せいせいする。人工じんこうてきパターンはできないが、ノイズがつよ画像がぞう詳細しょうさいうしなわれやすい。版画はんがメゾチント技法ぎほうている[12]
  • パターン (Patterning) ディザリング: 固定こていのパターンを使用しよう入力にゅうりょくしたがって固定こていのパターンを出力しゅつりょく配置はいちしていく。最大さいだい難点なんてん入力にゅうりょくの1ピクセルを複数ふくすうピクセルのパターンであらわすため、出力しゅつりょく画像がぞうのピクセルすうおおきくなるてんである[12]
  • 配列はいれつ (Ordered) ディザリング: "dither matrix" というピクセルごと交互こうごいろならぶパターンを使用しようする。画像がぞうかくピクセルについて、パターンの対応たいおうする位置いちをしきいとして使用しようする。隣接りんせつするピクセルは相互そうご影響えいきょうあたえないので、アニメーションなどにもてきしている。パターンをえれば、大幅おおはばわる。実装じっそう容易よういだが任意にんいのパレットで機能きのうするように変更へんこうするのは容易よういではない。
    • ハーフトーンディザリング: 印刷いんさつ技術ぎじゅつ中間色ちゅうかんしょく調ちょう表現ひょうげん類似るいじした技法ぎほうオフセット印刷いんさつレーザープリンターでよく使つかわれる。これらはインクやトナーがドットの形状けいじょうたもたず、隣接りんせつするドットが相互そうごにくっついて網状もうじょうになる性質せいしつがあり、ハーフトーン技法ぎほうてきしている。
    • バイヤー (Bayer) マトリクス[12]: 非常ひじょう特徴とくちょうてきあみけパターンを生成せいせいする。
    • ブルーノイズけに調整ちょうせいされたマトリクス(void-and-clusterほうなど[14])は誤差ごさ拡散かくさんほうちか生成せいせいする。
もと画像がぞう 平均へいきん(2 作為さくい ハーフトーン(解説かいせつよう表現ひょうげん
配列はいれつ(バイヤー) 配列はいれつ (Void-and-cluster)
  • 誤差ごさ拡散かくさん英語えいごばんディザリング: 量子りょうし誤差ごさ周辺しゅうへんのピクセルに拡散かくさんさせるフィードバック処理しょりおこなう。
    • フロイド-スタインバーグ・ディザリング: 隣接りんせつするピクセルにのみ誤差ごさ拡散かくさんさせる。もっともよく使つかわれている。
    • Jarvis, Judice, and Ninke dithering: 隣接りんせつするピクセルだけでなく、さらにそれらに隣接りんせつするピクセルにも誤差ごさ拡散かくさんさせる。フロイド-スタインバーグほうよりも性能せいのうわるい(関与かんよするピクセルすうおおいため)。
    • Stucki dithering: Jarvis を改良かいりょうして若干じゃっかん高速こうそくしたもの。はシャープになる。
    • Burkes dithering: Stucki を単純たんじゅんして高速こうそくしたもの。Stucki ほどシャープではない。
フロイド-スタインバーグ Jarvis, Judice & Ninke Stucki Burkes
  • 誤差ごさ拡散かくさんディザリング(つづき)
    • Sierra dithering: Jarvis を改良かいりょうして高速こうそくしたもの。Jarvis とほぼおなになる。
    • Two-row Sierra: Sierra を高速こうそくしたもの。
    • Sierra Lite: さらに単純たんじゅん高速こうそくしたもの。
    • Atkinson dithering: ビル・アトキンソン考案こうあん。Jarvis や Sierra とているが、高速こうそくである。誤差ごさ全体ぜんたいではなく4ぶんの3だけを拡散かくさんさせる。画像がぞう詳細しょうさいをよく保持ほじするが、非常ひじょうあかるい部分ぶぶん非常ひじょうくら部分ぶぶん詳細しょうさいうしなわれやすい。
Sierra Two-row Sierra Sierra Lite Atkinson

ひかりファイバーシステム

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誘導ゆうどうブリルアン散乱さんらん (SBS) はひかりファイバーシステムにおける伝送でんそうパワーを制限せいげんする非線形ひせんけい光学こうがく現象げんしょうである。伝送でんそうパワーをその制限せいげん以上いじょうにする技法ぎほうとして、中心ちゅうしん搬送はんそう周波数しゅうはすうにディザリングをくわえるという技法ぎほうがあり、通常つうじょうレーザーのバイアス入力にゅうりょく変調へんちょうくわえる。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ Ken C. Pohlmann (2005). Principles of Digital Audio. McGraw-Hill Professional. ISBN 0-07-144156-5. https://books.google.co.jp/books?id=VZw6z9a03ikC&pg=PA49&dq=didderen+dither+intitle:Principles+intitle:of+intitle:Digital+intitle:Audio&redir_esc=y&hl=ja 
  2. ^ William C. Farmer (1945). Ordnance Field Guide: Restricted. Military service publishing company. https://books.google.co.jp/books?id=15ffO4UVw8QC&q=dither&redir_esc=y&hl=ja 
  3. ^ Granino Arthur Korn and Theresa M. Korn (1952). Electronic Analog Computers: (d–c Analog Computers). McGraw-Hill. https://books.google.co.jp/books?id=dwsuAAAAIAAJ&q=dither&redir_esc=y&hl=ja 
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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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