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Super Audio CD

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SACDから転送てんそう
Super Audio CD
SACD
SACDディスクとプレーヤー
メディアの種類しゅるい ひかりディスク
記録きろく容量ようりょう 4.7GB
コーデック 2822.4kHzきろへるつ DSD2.0chステレオ
2822.4kHzきろへるつ DSD5.1chサラウンド(オプション)
策定さくてい ソニーフィリップス
おも用途ようと 音声おんせい
ディスクの直径ちょっけい 12cm
おおきさ 120×120×1.2mm
下位かい規格きかく コンパクトディスク
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スーパーオーディオCD(スーパーオーディオシーディー、Super Audio CD)は、1999ねん実用じつようされたオーディオようひかりディスク規格きかくである。略称りゃくしょうSACDSA-CD1999ねん3がつソニー初代しょだい法人ほうじんげんソニーグループ)とフィリップスにより規格きかくされ[1]再生さいせい機器ききとコンテンツは1999ねん5がつ21にちから市販しはんされた[2]

デジタルオーディオひかりディスク記録きろく媒体ばいたいとして、コンパクトディスクCD-DA)の次世代じせだいにあたり、CD-DAがパルス符号ふごう変調へんちょう(PCM)方式ほうしき採用さいようするのにたいして、SACDではDirect Stream Digital(DSD)方式ほうしき採用さいようするてん特徴とくちょうとする。音質おんしつめん著作ちょさくけん保護ほごてん強化きょうかされており、またCD互換ごかんそうそなえることもできる[3]

仕様しよう[編集へんしゅう]

規格きかくしょはその表紙ひょうしいろからScarlet Book(スカーレットブック)とばれ、Part 1のPhysical Specification、Part 2のAudio Specification、Part 3のCopy Protection Specificationから構成こうせいされる[4][1]

ディスクの構造こうぞう[編集へんしゅう]

SACDの2そう構造こうぞう

CDと同様どうよう直径ちょっけい120 mm、あつさ1.2 mmの円盤えんばんである[5]。スーパーオーディオCDには2そうぶん記録きろく領域りょういきがあり、このうち1そう通常つうじょうCD-DAとすることもできる(SACD/CDハイブリッド仕様しよう[5]。1そう(SL)でSACDプレーヤーのみで再生さいせいできるソフトや、2そう(DL)ともSACDそう構成こうせいされた長時間ちょうじかんSACDも製作せいさく可能かのうである[5]。SLディスクの容量ようりょうは4.7 GBで、DLディスクの容量ようりょうは8.5 GBであり[5]物理ぶつりてき構造こうぞうではCDよりはDVDちかい。

オーディオフォーマット[編集へんしゅう]

符号ふごう方式ほうしきにはCDで採用さいようされたリニアPCMではなく、Direct Stream Digital(DSD)が採用さいようされた[5]。DSDはΔでるたΣしぐま変調へんちょうほどこしたデジタル信号しんごうがそのまま記録きろくされ、PCMでのデシメーション英語えいごばん補間ほかんなどによるフィルタ処理しょりによってしょうじる量子りょうし誤差ごさ影響えいきょうけないため、音源おんげんにより忠実ちゅうじつなデジタル信号しんごう保持ほじできる[5]

サンプリングレートは2.8224 MHzでSACDに記録きろくされたデジタル信号しんごう原理げんりてきにはローパスフィルタをとおすだけでアナログ音声おんせい信号しんごう変換へんかんすることができる。

ステレオ(2 ch)とサラウンド最高さいこう5.1 chサラウンドまで)をサポートする。ステレオおよびマルチチャネルにはそれぞれ最大さいだい255のトラックをおさめることが可能かのうであり、かくトラックには最大さいだい255のインデックスを付与ふよすることが可能かのうである[6]

記録きろくされるDSDには圧縮あっしゅくかロスレス圧縮あっしゅくがあり、ロスレス圧縮あっしゅくにはDirect Stream Transfer(DST)が採用さいようされている[6]。ステレオ録音ろくおん場合ばあい片面かためん1そうでも4時間じかん以上いじょう収録しゅうろく可能かのうであり、長大ちょうだいなオペラなども1まいおさめられる。ただし、CDフォーマットとのハイブリッドばん場合ばあい、そちらの収録しゅうろく時間じかん(1まい70ふんあまり)にわせることになる。

ボリューム構造こうぞう[編集へんしゅう]

ファイルシステムISO 9660およびUDF採用さいようされている[6]。TOCにはディスクのタイトル、アーティストめい、ジャンル、ディスク作成さくせいなどが最大さいだい8言語げんご記録きろくされる[6]。そのつぎはステレオエリアもしくはマルチチャネルエリアであり、それぞれのエリアには、エリアTOCとトラックエリアの領域りょういきがある。エリアTOCにはそう演奏えんそう時間じかん、トラックすう演奏えんそう開始かいし時間じかんなどが記録きろくされ、トラックエリアにはDSDが記録きろくされる[6]

著作ちょさくけん保護ほご[編集へんしゅう]

スーパーオーディオCDは、コンテンツを再生さいせいさせるまでに、電子でんしかしウォーターマーク)、SACD Mark、Pit Signal Processing(PSP)というデータ保護ほご機構きこうコピーガード)が採用さいようされている[6]電子でんしかしでは正規せいきひんかを判別はんべつし、SACD Markではライセンスをけていないドライブからの認識にんしきができないようにし、PSPによってアクセス制御せいぎょおこな[6]くわえて、TOC以外いがい領域りょういきにはスクランブルがほどこされており、これはPSPなどから生成せいせいされるかぎによってのみ復号ふくごうできる[6]。このようにデジタルデータを複写ふくしゃできても、それだけでは再生さいせいできないようにしている。

当初とうしょ著作ちょさくけん保護ほごのため、S/PDIFなどからのデジタル出力しゅつりょく許可きょかされていなかったが、これではD/Aコンバーター分離ぶんりがたプレーヤーすら製作せいさくできないことから、2005ねんにはデノンアキュフェーズといったオーディオ機器ききメーカーが、各社かくしゃ独自どくじ方式ほうしきでデジタル出入でいりりょく可能かのう機器きき発売はつばい伝送でんそうにはi.LINKもちいた機種きしゅおお登場とうじょうした。HDMI 1.2a以降いこうでは、DSDデータの転送てんそう可能かのうとなっている。

自主じしゅ制作せいさくする場合ばあい[編集へんしゅう]

スーパーオーディオCDは著作ちょさくけん保護ほご関係かんけいから基本きほんてきにPCじょう使用しようすることは不可能ふかのうであり、市販しはんのソフトのコピーなどはできないようになっている。

しかしながら、CD-DADVDビデオBDMVなどと同様どうように、自分じぶんたちで作詞さくし作曲さっきょく演奏えんそうなどをがけてSACDとは規格きかくことなるものの、おな信号しんごう形式けいしきのDSDで記録きろくしたディスクを制作せいさくすることは可能かのうである。

ティアックから「タスカム」ブランドで、そうしたユーザーけにDSD録音ろくおん対応たいおうDVDレコーダー「DV-RA1000HD」が発売はつばいされている[7]最大さいだい特長とくちょうは、一般いっぱんてきなDVDレコーダーとはことなり、最大さいだい24bit/192kHzきろへるつリニアPCM形式けいしきでの録音ろくおんくわえ、スーパーオーディオCDなどで利用りようされるDSD形式けいしきでの録音ろくおん可能かのうなこと。このレコーダー単体たんたいでは、スーパーオーディオCDやDVDオーディオ形式けいしきのディスクは作成さくせいできないが、録音ろくおんモードとしてBWF(リニアPCM)、DSIDIFF(DSD)、CD-DAの3種類しゅるい搭載とうさいされている。このため、このレコーダーで作成さくせいしたDVDデータディスクをマスターとしてプレス業者ぎょうしゃ委託いたくすれば、オリジナルのスーパーオーディオCDソフトやDVDオーディオソフトを制作せいさくすることが可能かのうである。なお、一般いっぱんてき音楽おんがくCD(CD-DA形式けいしき)であれば、このレコーダー単体たんたい作成さくせい可能かのうである。

ソニーのノートPC「VAIO」に搭載とうさいされているSonicStage Mastering Studioなどのソフトウェアをもちいることで、DSD形式けいしき音楽おんがくDVDメディアにんだ擬似ぎじてきなSACDを作成さくせいすることができるので、しょうロットのディスク制作せいさくにはいている。ただし、VAIOのほかにこの方法ほうほうつくったDSDディスクを再生さいせい可能かのう機器ききは、一部いちぶのスーパーオーディオCDプレーヤーとPlayStation 3(スーパーオーディオCD再生さいせい対応たいおうモデルをふくむ)のみである。

普及ふきゅう[編集へんしゅう]

再生さいせいとしてはまずソニーから1999ねん5がつ21にちに『SCD-1』が発売はつばいされた[8][9]

2003ねん11月には、ソニーからSACDを標準ひょうじゅん対応たいおうとしたミニコンポ「Listen」を発売はつばいし、じつうれ価格かかくが4まんえんきょうからと普及ふきゅう価格かかくであったものの、わずか1ねんはん程度ていど終焉しゅうえんしている。

2006ねん発売はつばいされたPlayStation 3日本にっぽん国内こくないでSACDが再生さいせいできるのは初期しょきがたである60GB/CECHA00と20GB/CECHB00のみである。ファームウェア・バージョン2.00でひかりデジタル音声おんせい端子たんしからの出力しゅつりょく可能かのうになった。5.1chサラウンドを収録しゅうろくしたソフトについてはDTS5.1chサラウンド(48kHzきろへるつ/24bit)に変換へんかんして出力しゅつりょくされたが、直後ちょくごたバージョン2.01において、デジタルこう出力しゅつりょくではリニアPCM2.0chステレオ(44.1kHzきろへるつ/16bit)のみ出力しゅつりょく可能かのう、DTS5.1chサラウンドでは出力しゅつりょくされなくなった。ただし、HDMI端子たんし接続せつぞくではリニアPCMに変換へんかんすることで、2.0chステレオ(176.4kHzきろへるつ/24bit)と5.1chサラウンド(176.4kHzきろへるつ/24bit)のハイサンプリング&ハイビットで出力しゅつりょく可能かのうである。なお、DSDのビットストリーム出力しゅつりょくには対応たいおうしていない。

その複数ふくすう映像えいぞう音声おんせい規格きかく再生さいせいできるユニバーサルプレーヤー登場とうじょうし、その価格かかくおおきく下落げらくしたため、じつうれ2まんえん以下いかのクラスからスーパーオーディオCDの再生さいせい購入こうにゅうできる状況じょうきょうになってきている。

しかし、レーベルが積極せっきょくてき発売はつばいしないこと、コンパクトディスク(CD)と比較ひかくして選択せんたくできる機種きしゅかぎられることや、過剰かじょうなコピーガードのためにパソコンでのみどころか再生さいせいすらできないこと、CD以上いじょう特性とくせい十分じゅうぶん発揮はっきするために一定いってい水準すいじゅん以上いじょうのオーディオ機器きき必要ひつようなこと、おおくの消費しょうひしゃあいだでCD以上いじょう音質おんしつもとめるものがすくないとされる[10]ことから、スーパーオーディオCDは、CD規格きかくのPCM録音ろくおん満足まんぞくできないハイエンドユーザーを対象たいしょうとした録音ろくおんフォーマットとみなされることがおおく、CDを代替だいたいするほどには普及ふきゅうしていない。

発売はつばいされているソフトはロックポップスから歌謡かようきょくまで様々さまざまなジャンルあるが、クラシック音楽おんがくジャズなどが発売はつばいされるソフトのだい部分ぶぶんめる。2008ねん6がつ現在げんざいやく5300タイトルが発売はつばいされている[10]

2010ねん6がつユニバーサル ミュージック ジャパンSHM-CDおなじく液晶えきしょうパネルようポリカーボネート素材そざいもちいた「SA-CD ~SHM仕様しよう~」の発売はつばい開始かいしした。

競合きょうごう規格きかく[編集へんしゅう]

DVD規格きかくひとつであるDVD-Audioは、ハイエンドユーザーを対象たいしょうとしているてんでは、スーパーオーディオCDと競合きょうごうする規格きかくである。DVDオーディオはリニアPCM形式けいしき圧縮あっしゅくまたは可逆かぎゃく圧縮あっしゅく)を採用さいよう。DVDビデオとの互換ごかんせいかして映像えいぞうとの融合ゆうごうてい価格かかく機種きしゅへの展開てんかいなどがられるが、ソフトすうではスーパーオーディオCDのほうおおい。

一時いちじベータマックスVHS規格きかく対立たいりつのような規格きかくあらそ指摘してきされてきたが、そのオーディオ専業せんぎょうメーカーを中心ちゅうしんにスーパーオーディオCD・DVDオーディオのりょう規格きかく再生さいせい可能かのうユニバーサルプレーヤー普及ふきゅうし、規格きかく提唱ていしょうメーカー(ソニーはスーパーオーディオCD専用せんよう松下電器産業まつしたでんきさんぎょうテクニクスブランド。げんパナソニック)と日本にほんビクターはDVDオーディオ専用せんようパイオニア(ホームAV機器きき事業じぎょうオンキヨーホームエンターテイメントオンキヨーテクノロジー/ティアック)とオンキヨーきゅう法人ほうじんのオンキヨーホームエンターテイメント→オンキヨーテクノロジー/ティアック)からもそれぞれスーパーオーディオCD専用せんようプレーヤーが発売はつばいされた[ちゅう 1]以外いがいはほぼその方向ほうこうかった。しかしそのDVDオーディオは普及ふきゅうせず、SACD/CDが再生さいせい可能かのう機種きしゅ目立めだつようになってきた。

2010年代ねんだいはいると、DVDオーディオで採用さいようされたCD-DAスペックをえたリニアPCMやFLAC、スーパーオーディオCDで採用さいようされたDSDが、ともインターネット経由けいゆ本格ほんかくてき音楽おんがく配信はいしんされるようになり、ハイレゾリューションオーディオ媒体ばいたいとしての特別とくべつ優位ゆういせいはなくなっている。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ もっとも、パイオニアは当初とうしょDVDオーディオ陣営じんえいであったが、2001ねん以降いこう発売はつばいされた新規しんき機種きしゅからスーパーオーディオCD対応たいおうのDVDオーディオプレーヤーを発売はつばいしている経緯けいいがある(2008年度ねんど発売はつばいされた製品せいひんまで)。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b 鈴木すずき & 前田まえだ 2001, p. 808, 3.1 基本きほんコンセプトと規格きかくしょ.
  2. ^ 三浦みうら孝仁たかひと『ハイレゾ、発展はってんの10ねん』: ハイレゾオーディオ発展はってんなが」『JASジャーナル』だい62かんだい4ごう日本にっぽんオーディオ協会きょうかい、2022ねん 
  3. ^ 鈴木すずき & 前田まえだ 2001, p. 806, まえがき.
  4. ^ Specification Books (SACD) Orders”. フィリップス. 2020ねん8がつ8にち閲覧えつらん
  5. ^ a b c d e f 鈴木すずき & 前田まえだ 2001, p. 808, 3.2 DSD信号しんごうとディスク・バリエーション.
  6. ^ a b c d e f g h 鈴木すずき & 前田まえだ 2001, p. 809, 3.3 コンテンツ.
  7. ^ DV-RA1000HD
  8. ^ News and Information "SCD-1"』(プレスリリース)ソニー、1999ねん4がつ6にちhttps://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/199904/99-002/2024ねん2がつ11にち閲覧えつらん 
  9. ^ Super Audio CD Player”. ソニー. 2024ねん2がつ11にち閲覧えつらん
  10. ^ a b 御池おいけ 2008, p. 29.

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 御池おいけあゆじゅ『ブルーレイディスク徹底てってい研究けんきゅう仕組しくみ」から「周辺しゅうへん技術ぎじゅつ」のながれまで完全かんぜん解説かいせつ!』工学こうがくしゃ〈I/O BOOKS〉、2008ねん7がつ25にちISBN 978-4777513796 
  • 鈴木すずき弘明ひろあき前田まえだそうやすし音声おんせいようひかりディスク」『映像えいぞう情報じょうほうメディア学会がっかいだい55かんだい6ごう映像えいぞう情報じょうほうメディア学会がっかい、2001ねんdoi:10.3169/itej.55.806ISSN 1342-6907NAID 110003685818 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]