カリプソ (音楽おんがく)

カリプソのリズム

カリプソのリズム

カリプソ (calypso) は、20世紀せいきに始はじまったカリブ海かりぶかいの音楽おんがくのスタイルのひとつである。イギリス領りょう、フランス領りょうのカリブの島々しまじま、特とくにトリニダード・トバゴのカーニバルで発達はったつした音楽おんがくジャンルである。リズムは4分ぶんの2拍子ひょうし。カリブ圏内けんないにおいてはもっとも波及はきゅうした音楽おんがくの一ひとつであり、レゲエのルーツの一ひとつであるとも言いわれている。

歴史れきし

アフリカ人じん奴隷どれいたちがお互たがいに言葉ことばが通つうじず、音楽おんがくでコミュニケーションをしたのが始はじまりである。トリニダードの宗主そうしゅ国こくがフランス、スペイン、イギリスと代かわっても、これによってアフリカ人じん奴隷どれいは連帯れんたい感かんを強つよめた。特とくに1834年ねんの奴隷どれい制度せいどの廃止はいし後ごに、黒人こくじんはカーニバルへの参加さんかを認みとめられ、そこで行進こうしん用よう音楽おんがくとして演奏えんそうされた。カーニバルでのカリプソ競争きょうそうは白熱はくねつし、音楽おんがく的てきにはさらに成長せいちょうした。

テレビもラジオもない100年ねん以上いじょうも前まえから、カリプソは島しまにニュースを広ひろげる方法ほうほうとして発展はってんし、多おおくの島民とうみんがカリプソを最もっとも信頼しんらいできる情報じょうほう源げんであると考かんがえた。

カリプソの歌詞かしは、島しまの生活せいかつに関連かんれんするあらゆる話題わだいをニュースにしていたため、カリプソニアンたちは、政治せいじ腐敗ふはいに対たいしてもはっきりと歌うたい、言論げんろんの自由じゆうを押おし進すすめた。結局けっきょくイギリス当局とうきょくは検閲けんえつを実施じっししたが、それでもカリプソはなくならなかった。検閲けんえつが厳きびしくなるほど、比喩ひゆや暗喩あんゆを用もちいたり、批判ひはんの視点してんも鋭するどくなっていったためである。このようなカリプソの歌詞かしの攻撃こうげき的てきな批判ひはん性せいをピコン(picong)と言いう。

1914年ねん、最初さいしょのカリプソが録音ろくおんがされた時ときは、カリプソの黄金おうごん時代じだいと呼よばれている。1920年代ねんだいには、カーニバルでのカリプソ競争きょうそうはさらに白熱はくねつし、「カリプソ・テント」と呼よばれる仮設かせつステージが設もうけられ、ここで数すう多おおくのカリプソニアン達たちが歌うたを競きそい、新あたらしいリズムを次々つぎつぎと生うみ出だした。現在げんざいもトリニダード・カーニバルでのカリプソ・テントは残のこっている。

1930年代ねんだい後半こうはん、アッティラ・ザ・フン(Attila the Hun)、ロアリング・ライオン(Roaring Lion)、ロード・インベーダー(Lord Invader)らがカリプソ歌手かしゅとして世界中せかいじゅうに知しられるようになった。カリプソニアンの名前なまえがこのように派手はでなものが多おおいのは、カリプソ・テントにおいて、自分じぶんがどれだけすごいかを誇示こじしたり、相手あいてをこき下おろしたりする過激かげきな内容ないようの歌詞かしで歌うたわれたためだ。

詳細しょうさいは「カリプソ・ウォー」を参照さんしょう

戦後せんごのカリプソ

1940年代ねんだい後半こうはん、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん終了しゅうりょう後ご、多おおくのカリビアンが職しょくを求もとめて国外こくがいに出でた。イギリス領りょうであったトリニダード人じんはイギリスに向むかったのだが、ロード・キチナー(Lord Kitchener)もその一人ひとりだった。彼かれはイギリスのカリビアンのコミュニティで絶大ぜつだいな人気にんきを誇ほこり、1950年代ねんだいにはイギリスでもカリプソブームが起おこる。ロード・キチナーは、2000年ねんに亡なくなるまでヒット作さくを量産りょうさんした。

最もっともよく知しられているカリプソの曲きょくは、伝統でんとう的てきなジャマイカのメントソング「バナナ・ボート」である。この曲きょくは1956年ねんのジャマイカ系けいアメリカ人じんのハリー・ベラフォンテ(Harry Belafonte)の歌うたで知しられる。カリプソ風ふうにアレンジされ、100万まん枚まい以上いじょうのセールスを記録きろくする。

また、1956年ねんはグレナダ出身しゅっしんのマイティ・スパロウ(Mighty Sparrow)も「ジーンとダイナ」という曲きょくでデビューして、国際こくさい的てきなヒットとなる。彼かれは「ケネディ・アンド・クルシュセフ（フルシチョフ）」「マーティン・ルーサー・キング」「カストロ・イーティング・バナナ」「ザ・スレイヴ」などの政治せいじ的てきなカリプソも歌うたった。また、カーニバルの行進こうしんに使用しようされるような伴奏ばんそう曲きょくであったカリプソを、よりシンプルで力ちからのあるリズムにして、それにソウルフルな歌声うたごえを乗のせた。彼かれの登場とうじょうもあって、1962年ねんのトリニダード独立どくりつ以降いこうは、カーニバルも派手はでなものになり、演奏えんそうされるカリプソもダンサブルなものに変化へんかした。

カリプソのスタイルがよりダンサブルな傾向けいこうを増ましてきたのは、マイティ・スパロウの登場とうじょうが大おおきく寄与きよしている。しかし一方いっぽうで、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんで大量たいりょうに放置ほうちされたドラム缶どらむかんを用もちいたスティールパンが登場とうじょうし、より大だい規模きぼなスティール・バンドが活躍かつやくしはじめたのも時期じきを同おなじくしている。さらに1970年代ねんだいには、ドラムマシンやシンセサイザーが導入どうにゅうされた。これらの要因よういんによって、1980年代ねんだいのソカ（ソウルとカリプソを合あわせた言葉ことば）への道筋みちすじが作つくられた、と考かんがえられる。

詳細しょうさいは「ソカ」を参照さんしょう

関連かんれん項目こうもく

• ピコン
• カリプソ・ウォー
• レゲエ
• ソカ
• マンボ
• ルンバ
• チャチャチャ