音楽おんがく民族みんぞく学がく

音楽おんがく民族みんぞく学がく(おんがくみんぞくがく、英語えいご：Ethnomusicology)とは、もともとは民族みんぞく音楽おんがく学がく、すなわち民族みんぞく学がく（Ethnology）と音楽おんがく学がく（Musicology）とがあわさったものである（Ethno-musicology）。

概略がいりゃく

Ethnomusicologyという単語たんごは、オランダの学者がくしゃヤープ・クンストによって作つくられた。少すくなくともその発祥はっしょうは、一般いっぱん的てきに言いわれる民族みんぞく音楽おんがくを研究けんきゅう対象たいしょうとする学問がくもんということではないが、実質じっしつ的てきには、西洋せいよう伝統でんとう音楽おんがく以外いがいの音楽おんがくを対象たいしょうとしている。研究けんきゅう対象たいしょうとしての「民族みんぞく音楽おんがく」というものが実際じっさいには、西洋せいよう芸術げいじゅつ音楽おんがくとその他たという図式ずしきの下したに成立せいりつしていることは明白めいはくである。したがって西洋せいようの音楽おんがく学者がくしゃにとっては地元じもとにない音楽おんがくの研究けんきゅうをすることになるので、録音ろくおん再生さいせい技術ぎじゅつの向上こうじょうや、交通こうつうや運輸うんゆの発達はったつにより、世界中せかいじゅうから音楽おんがくを集あつめやすくなったことによって研究けんきゅうが進すすめやすくなったとも指摘してきされる。

ところで、ガムラン音楽おんがくや雅楽ががくといったいわゆる「民族みんぞく音楽おんがく」が固有こゆうの文化ぶんかに属ぞくする音楽おんがくであるのであれば、西洋せいよう芸術げいじゅつ音楽おんがくも例外れいがいなく、固有こゆうの文化ぶんかに属ぞくした「民族みんぞく音楽おんがく」であることは絶対ぜったいに否定ひていし得えない。ゆえに非ひ西洋せいよう音楽おんがくの研究けんきゅうを民族みんぞく音楽おんがく学がくとするのは、「民族みんぞく音楽おんがく」なる音楽おんがくがあたかも実際じっさいに存在そんざいしているかのような錯覚さっかくを生うむ差別さべつ的てきな述語じゅつごであるために、近年きんねんは音楽おんがくの民族みんぞく学がく的てき研究けんきゅうという意味いみでの音楽おんがく民族みんぞく学がくという名称めいしょうを使つかうのが一般いっぱん的てきになりつつある。また音楽おんがく人類じんるい学がくといったい方いかたもされることがある。

かつては特とくに、各かく民族みんぞくの音楽おんがくを比較ひかくする分野ぶんやを比較ひかく音楽おんがく学がくといったが、この名称めいしょうは民族みんぞく音楽おんがくといわれる以前いぜんの19世紀せいき末まつの欧米おうべい列強れっきょうの植民しょくみん地ち音楽おんがくと西洋せいよう音楽おんがくとを「比較ひかく」するということを端緒たんしょとしていた。これは植民しょくみん地ちの音楽おんがくと西洋せいよう音楽おんがくとの比較ひかくによって、音楽おんがくの始原しげんを追求ついきゅうし、音楽おんがくがいかに原始げんし的てきな形態けいたいから西洋せいよう音楽おんがくのような進化しんかした形態けいたいになるのかということの解明かいめいをひとつの目的もくてきとしていた。このような歴史れきしを踏ふまえ、近年きんねんでは「民族みんぞく音楽おんがく学がく」という名称めいしょうともども使つかわれなくなりつつある。しかしながら、民族みんぞく音楽おんがく学がくという単語たんごで執筆しっぴつされた論文ろんぶんは現在げんざいもかなり見みつかり、一般いっぱん的てきには過去かこに受うけ入いれられた名称めいしょうであることは事実じじつである。

関連かんれん項目こうもく

• バルトーク・ベーラ
• コダーイ・ゾルターン
• ロヴァース・イレーン
• フランシス・ジェームズ・チャイルド博士はかせ
• 小泉こいずみ文夫ふみお(日本にっぽんを代表だいひょうする音楽おんがく学者がくしゃ)
• アラン・ローマックス
• 東洋とうよう音楽おんがく学会がっかい
• 国際こくさい伝統でんとう音楽おんがく学会がっかい

関連かんれん文献ぶんけん

• Merriam, Alan (1964). The Anthropology of Music. Evanston, Ill.: Northwestern Univ Press.
• Hood, Mantle (1971). The Ethnomusicologist. Mc-Graw Hill.
• Blacking, John (1973). How Musical Is Man?. Seattle: University of Washington Press. ISBN 0295952180.
• Myers, Helen, ed. (1992). Ethnomusicology: An Introduction. New Grove Handbooks in Music. London: Macmillan. ISBN 0333576314.
• Nettl, Bruno (2005). The Study of Ethnomusicology: Thirty-One Issues and Concepts (rev. ed.). Urbana and Chicago: University of Illinois Press.
• Stone, Ruth (2008). Theory for Ethnomusicology. Upper Saddle River, N.J.: Pearson Prentice Hall. ISBN 9780132408400.