ディリップ・クマール

ディリップ・クマール Dilip Kumar
本名ほんみょう	モハマド・ユースフ・カーン（Mohammad Yusuf Khan）
生年月日せいねんがっぴ	(1922-12-11) 1922年ねん12月11日にち
没ぼつ年月日ねんがっぴ	(2021-07-07) 2021年ねん7月がつ7日にち（98歳さい没ぼつ）
出生しゅっしょう地ち	イギリス領りょうインド帝国ていこく 北西ほくせい辺境へんきょう州しゅうペシャーワル（現げんパキスタン カイバル・パクトゥンクワ州しゅう）
死没しぼつ地ち	インド マハーラーシュトラ州しゅうムンバイ
職業しょくぎょう	俳優はいゆう
ジャンル	ヒンディー語ご映画えいが
活動かつどう期間きかん	1944年ねん-1998年ねん
配偶はいぐう者しゃ	サイラー・バーヌ（1966年ねん-2021年ねん、死別しべつ） アスラ・ラフマーン（1981年ねん-1983年ねん、離婚りこん）
著名ちょめいな家族かぞく	ナシール・カーン（弟おとうと） アイユーブ・カーン（甥おい） サイエシャー（又また姪めい）
主おもな作品さくひん
『新しん世代せだい』 『偉大いだいなるムガル帝国ていこく』
受賞じゅしょう フィルムフェア賞しょう 主演しゅえん男優だんゆう賞しょう 1954年ねん『Daag』 1956年ねん『Azaad』 1957年ねん『デーヴダース』 1958年ねん『新しん世代せだい』 1961年ねん『Kohinoor』 1965年ねん『Leader』 1968年ねん『Ram Aur Shyam』 1983年ねん『Shakti』 生涯しょうがい功労賞こうろうしょう 1994年ねん 特別とくべつ賞しょう 2005年ねん その他たの賞しょう パドマ・ブーシャン勲章くんしょう（1991年ねん） ダーダーサーヘブ・パールケー賞しょう（1995年ねん） パキスタン一等いっとう勲章くんしょう（1998年ねん） パドマ・ヴィブーシャン勲章くんしょう（2015年ねん）

ディリップ・クマール（Dilip Kumar、1922年ねん12月11日にち - 2021年ねん7月がつ7日にち）は、インドのヒンディー語ご映画えいがで活動かつどうした俳優はいゆう。メソッド俳優はいゆうのパイオニアとして知しられ、1940年代ねんだい後半こうはんから1960年代ねんだいにかけてのインド映画えいが界かいにおいて最もっとも人気にんきを博はくした俳優はいゆうで、「演技えんぎの帝王ていおう(Abhinay Samrat)」と称しょうされた。彼かれは50年ねん以上いじょうのキャリアの中なかで60本ほん近ちかい映画えいがに出演しゅつえんし、フィルムフェア賞しょう 主演しゅえん男優だんゆう賞しょうの最多さいた受賞じゅしょう者しゃであり、また最初さいしょの受賞じゅしょう者しゃでもある。出演しゅつえん作品さくひんの80%が興行こうぎょう的てきな成功せいこうを収おさめており、複数ふくすうの興行こうぎょう記録きろくも保持ほじしている。長年ながねんの映画えいが界かいへの貢献こうけんから、インド政府せいふからパドマ・ブーシャン勲章くんしょう、パドマ・ヴィブーシャン勲章くんしょう、ダーダーサーヘブ・パールケー賞しょうを授与じゅよされており、パキスタン政府せいふからもパキスタン一等いっとう勲章くんしょうを授与じゅよされている。

1944年ねんに『Jwar Bhata』で俳優はいゆうデビューし、1947年ねんに出演しゅつえんした『Jugnu』で初はじめて興行こうぎょう的てきな成功せいこうを収おさめた。その後ご、1940年代ねんだいから1960年代ねんだいにかけて『Andaz』『アーン』『Daag』『Insaniyat』『Azaad』『新しん世代せだい』『Madhumati』『Paigham』『Kohinoor』『偉大いだいなるムガル帝国ていこく』『Gunga Jumna』『Ram Aur Shyam』などのヒット作さくに出演しゅつえんした。しかし、1970年代ねんだいに出演しゅつえんした『Dastaan』『Sagina』『Bairaag』が興行こうぎょう的てきに失敗しっぱいするなどヒット作さくに恵めぐまれず、1976年ねんから1981年ねんまでの5年間ねんかんは映画えいが界かいから遠とおざかり、1981年ねんに『Kranti』で復帰ふっきした。その後ごは『Vidhaata』『Shakti』『Karma』『Saudagar』に出演しゅつえんして老人ろうじん役やくを演えんじたが、引退いんたい作さくとなった『Qila』は興行こうぎょう的てきな失敗しっぱい作さくで終おわっている。引退いんたい後ごは政治せいじ家かに転身てんしんし、2000年ねんから2006年ねんにかけて上院じょういん議員ぎいんを務つとめた。

生涯しょうがい

生おい立たち

ペシャーワルにあるディリップ・クマールの家いえ。2014年ねんにパキスタンの国家こっか遺産いさんに指定していされた。

1922年ねん12月11日にち、イギリス領りょうインド帝国ていこく北西ほくせい辺境へんきょう州しゅうペシャーワルのキッサ・クワニ・バザールで暮くらすアワン・ヒンドコワン・ムスリムの家庭かていに生うまれ、「モハマド・ユースフ・カーン(Mohammad Yusuf Khan)」と名付なづけられた。両親りょうしんは果物くだもの商しょうを営いとなむララ・グラム・サルワール・アリー・カーン（Lala Ghulam Sarwar Ali Khan、1890年ねん-1950年ねん）とアーイシャー・ベーグム（Ayesha Begum、1897年ねん-1948年ねん）で、モハマドは12人にん兄弟きょうだいの一人ひとりとして生うまれた。

モハマドは父ちちの果樹かじゅ園えんがあるデオラリのバーンズ・スクールで教育きょういくを受うけ、ペシャーワルでは近所きんじょに住すむ友人ゆうじんラージ・カプールと親交しんこうを重かさねながら成長せいちょうした。1940年ねんにプネーに移住いじゅうしてドライフルーツ店てんと食堂しょくどうを開業かいぎょうし、1947年ねんにインド・パキスタンが分離ぶんりした際さいにはボンベイに留とまり、インドで暮くらすことを選択せんたくした。

キャリア

1940年代ねんだい

『Andaz』出演しゅつえん時じのディリップ・クマール、ラージ・カプール、ナルギス

1944年ねんに『Jwar Bhata』で俳優はいゆうデビューし、この時ときから「ディリップ・クマール(Dilip Kumar)」の芸名げいめいを名乗なのるようになった。芸名げいめいについて、ディリップ・クマールは自伝じでん『Dilip Kumar: The Substance and the Shadow』の中なかで、「『Jwar Bhata』のプロデューサーの一人ひとりだったデーヴィカー・ラーニーから名付なづけられた」と記しるしている。また、1970年ねんには「当時とうじ、世間せけんの映画えいがに対たいするイメージが悪わるかったこともあり、父ちちが俳優はいゆうになることを反対はんたいしていたため、父ちちを恐おそれてこの芸名げいめいを名乗なのるようにした」とも語かたっている。同どう作さくは大おおきな注目ちゅうもくは集あつめず、さらに2本ほんの映画えいがに出演しゅつえんするが興行こうぎょう的てきに失敗しっぱいし、1947年ねんにヌール・ジェハーンと共演きょうえんした『Jugnu』でようやく興行こうぎょう的てきな成功せいこうを収おさめた。続つづいて1948年ねんに出演しゅつえんした『Shaheed』『Mela』も興行こうぎょう的てきな成功せいこうを収おさめ、両りょう作さくとも同年どうねんのヒンディー語ご映画えいが興行こうぎょう成績せいせきの上位じょうい作品さくひんとなった。

1949年ねんにメーブーブ・カーンの『Andaz』でラージ・カプール、ナルギスと共演きょうえんして興行こうぎょう的てきな成功せいこうを収おさめ、俳優はいゆうとしてブレイクした。同どう作さくはヒンディー語ご映画えいが歴代れきだい興行こうぎょう成績せいせきの最高さいこう記録きろくを更新こうしんしたが、翌月よくげつに公開こうかいされたラージ・カプール主演しゅえんの『Barsaat』に記録きろくを破やぶられている。翌よく1949年ねんに出演しゅつえんした『Shabnam』も興行こうぎょう的てきな成功せいこうを収おさめている。

1950年代ねんだい

インド首相しゅしょうジャワハルラール・ネルーを表敬ひょうけい訪問ほうもんするディリップ・クマール、デーヴ・アーナンド、ラージ・カプール

1950年代ねんだいはディリップ・クマールにとって最もっとも成功せいこうを収おさめた時期じきであり、『Jogan』『Babul』『Deedar』『Tarana』『Daag』『アーン』『Uran Khatola』『Insaniyat』『デーヴダース』『新しん世代せだい』『Yahudi』『Paigham』などのヒット作さくに恵めぐまれた。これらの作品さくひんではヴィジャヤンティマーラー、マドゥバーラー、ナルギス、ニンミ、ミーナー・クマーリー、カミニ・コウシャルと共演きょうえんして人気にんきを集あつめ、ラージ・カプールやデーヴ・アーナンドと共ともにヒンディー語ご映画えいがの黄金おうごん時代じだいを支ささえるスター俳優はいゆうとなった。3人にんが共演きょうえんする映画えいがはないが、『Andaz』でラージ・カプールと、『Insaniyat』でデーヴ・アーナンドとそれぞれ共演きょうえんしている。

ディリップ・クマールは出演しゅつえんしたいくつかの作品さくひんにおける役柄やくがらから「悲劇ひげき王おう(Tragedy King)」と称しょうされているが、悲劇ひげき的てきな役やくを多おおく演えんじたことで鬱うつ病びょうに悩なやまされるようになり、精神せいしん科か医いの提案ていあんで明あかるい役柄やくがらも演えんじるようになった。1952年ねんに出演しゅつえんした『アーン』はキャリアの中なかで初はじめて明あかるい役柄やくがらを演えんじた作品さくひんであり、同どう作さくはインド映画えいがで初はじめて国外こくがい上映じょうえいされ、ロンドンでプレミア上映じょうえいが行おこなわれた。『アーン』は当時とうじのインド国内こくない及および海外かいがい市場いちばで歴代れきだい最高さいこう額がくの興行こうぎょう収入しゅうにゅうを記録きろくしている。1955年ねんに出演しゅつえんした『Azaad』では泥棒どろぼう役やくを演えんじ、こちらも興行こうぎょう的てきな成功せいこうを収おさめた。1957年ねんにはリシケーシュ・ムカルジーのアンソロジー映画えいが『Musafir』に出演しゅつえんし、ラタ・マンゲシュカルと共ともにプレイバックシンガーを務つとめている。

彼かれはこの時期じきに、キャラクターが発はっした台詞せりふに無数むすうの表現ひょうげんや意味いみを持もたせる特徴とくちょう的てきな演技えんぎ手法しゅほうを確立かくりつした。また、『Daag』で初はじめてフィルムフェア賞しょう 主演しゅえん男優だんゆう賞しょうを受賞じゅしょうし、キャリアを通とおして合計ごうけい8回かい主演しゅえん男優だんゆう賞しょうを受賞じゅしょうしている。さらに1950年代ねんだいに出演しゅつえんした21本ほんのうち9本ほんが、1950年代ねんだいのヒンディー語ご映画えいが興行こうぎょう成績せいせきトップ30入いりを果はたしており、同時どうじにディリップ・クマールは映画えいが1本ほん当あたりの出演しゅつえん料りょうが15万まんルピー（2024年ねん換算かんさんで6億おくルピー）を超こえた最初さいしょのインド人じん俳優はいゆうとなった。

1960年代ねんだい

『Kohinoor』出演しゅつえん時じのディリップ・クマール

1960年ねんに出演しゅつえんしたK・アーシフの『偉大いだいなるムガル帝国ていこく』でサリーム王子おうじ役やくを演えんじ、同どう作さくは『炎ほのお』に抜ぬかれるまでの15年間ねんかん、インド映画えいが史上しじょう最高さいこう額がくの興行こうぎょう収入しゅうにゅうを記録きろくする映画えいがの地位ちいを維持いじした。『偉大いだいなるムガル帝国ていこく』は製作せいさくに10年ねん以上いじょうの歳月さいげつをかけ、2曲きょくの歌曲かきょくシーンとクライマックスシーンはカラー映像えいぞうで撮影さつえいされた。公開こうかいから44年ねん後ごの2004年ねんには全編ぜんぺんカラー映像えいぞう処理しょりされた状態じょうたいで再さい上映じょうえいされ、再ふたたび興行こうぎょう的てきな成功せいこうを収おさめている。同年どうねんには『Kohinoor』にも出演しゅつえんし、こちらも興行こうぎょう的てきな成功せいこうを収おさめた。

1961年ねんに『Gunga Jumna』で脚本きゃくほん・製作せいさく・主演しゅえんを務つとめ、弟おとうとナシール・カーンと共演きょうえんした。同どう作さくの製作せいさくにはディリップ・クマールの映画えいが会社かいしゃシティズン・フィルムズが参加さんかしており、興行こうぎょう的てきな成功せいこうを収おさめたものの、これ以降いこうの作品さくひんで彼かれが製作せいさくを務つとめることはなかった。また、ニティン・ボースが監督かんとくを務つとめたものの、実際じっさいにはディリップ・クマールが事実じじつ上じょうの監督かんとくとして撮影さつえい全般ぜんぱんに関かかわっており、共演きょうえん者しゃヴィジャヤンティマーラーが着きるサリーの色いろにいたるまで彼かれが指示しじを出だしていたという。同どう作さくは高たかい評価ひょうかを受うけ、国家こっか映画えいが賞しょう 第だい2位いヒンディー語ご長編ちょうへん映画えいが賞しょう、ボストン国際こくさい映画えいが祭まつり ポール・リビア賞しょう、チェコスロバキア芸術げいじゅつアカデミー特別とくべつ名誉めいよ賞しょう、カルロヴィ・ヴァリ国際こくさい映画えいが祭さい特別とくべつ賞しょうを受賞じゅしょうしている。

1962年ねんにはデヴィッド・リーンから『アラビアのロレンス』のシャリーフ・アリ役やくの出演しゅつえん依頼いらいを受うけたが、出演しゅつえんを辞退じたいしている。ディリップ・クマールが出演しゅつえんを辞退じたいしたため、アリ役やくはエジプト人じん俳優はいゆうのオマル・シャリーフが起用きようされたが、彼かれはこれについて「オマル・シャリーフは、私わたしが演えんじるよりもずっと上手じょうずく役えきを演えんじていたと思おもう」と自伝じでんの中なかで語かたっている。また、これとは別べつにデヴィッド・リーンが企画きかくしていた『Taj Mahal』でエリザベス・テイラーの相手あいて役やくとして候補こうほに挙あがっていたが、こちらは企画きかくが白紙はくしとなったため共演きょうえんは実現じつげんしなかった。

3年間ねんかんの休止きゅうし期間きかんを経へて1964年ねんに脚本きゃくほん・主演しゅえんを務つとめた『Leader』は興行こうぎょう的てきには振ふるわず、1966年ねんに出演しゅつえんした『Dil Diya Dard Liya』はキャリアの中なかで10年ねん振ふりとなる大だい失敗しっぱいに終おわっている。同どう作さくは『嵐あらしが丘おか』を原作げんさくとしており、ディリップ・クマールが監督かんとくを務つとめたと言いわれているが、最終さいしゅう的てきにはアブドゥル・ラシッド・カルダールが監督かんとくとしてクレジットされている。1967年ねんには『Ram Aur Shyam』で生いき別わかれた双子ふたごの役やくを演えんじて興行こうぎょう的てきな成功せいこうを収おさめ、1968年ねんにマノージュ・クマールと共演きょうえんした『Aadmi』は平均へいきん的てきな興行こうぎょう成績せいせきに終おわっている。同年どうねんには『Sunghursh』にも出演しゅつえんしたが、こちらも興行こうぎょう的てきには失敗しっぱいに終おわっている。

1970年代ねんだい

1970年ねんに出演しゅつえんした『Gopi』では妻つまサイラー・バーヌと初はじめて共演きょうえんし、興行こうぎょう的てきな成功せいこうを収おさめた。同年どうねん4月がつには『Sagina Mahato』でも彼女かのじょと共演きょうえんし、同どう作さくはディリップ・クマールが出演しゅつえんした唯一ゆいいつのベンガル語ご映画えいがとなった。1972年ねんに出演しゅつえんした『Dastaan』では再ふたたび双子ふたごの役やくを演えんじたが、同どう作さくは興行こうぎょう的てきな失敗しっぱい作さくとなり、彼かれのキャリアは次第しだいに下降かこう気味ぎみとなっていった。1974年ねんは『Sagina Mahato』をリメイクした『Sagina』も興行こうぎょう的てきに失敗しっぱいし、1976年ねんに出演しゅつえんした『Bairaag』では父親ちちおやと双子ふたごの息子むすこ役やくの三さん役やくを演えんじている。三役さんやくを演えんじたディリップ・クマールの演技えんぎは高たかい評価ひょうかを得えたものの、興行こうぎょう的てきには失敗しっぱい作さくとなった。1970年代ねんだいに入はいるとラージェーシュ・カンナー、アミターブ・バッチャン、サンジーヴ・クマールなどの若手わかて俳優はいゆうが台頭たいとうしたことで出演しゅつえん依頼いらいが激減げきげんし、ディリップ・クマールは1976年ねんから1981年ねんまでの5年間ねんかん、映画えいがに出演しゅつえんする機会きかいを得えられなかった。

1980年代ねんだい

1981年ねんに『Kranti』で5年ねん振ふりに映画えいがに出演しゅつえんし、興行こうぎょう的てきな成功せいこうを収おさめた。同どう作さくではマノージュ・クマール、シャシ・クマール、ヘマ・マリニ、シャトルガン・シンハーと共演きょうえんし、ディリップ・クマールはイギリスの植民しょくみん地ち支配しはいに抵抗ていこうする独立どくりつ運動うんどう家か役やくを演えんじている。『Kranti』出演しゅつえん以降いこう、彼かれは『Vidhaata』『Shakti』『Duniya』などに出演しゅつえんし、「怒おこれる老人ろうじん」の役柄やくがらを演えんじた。スバーシュ・ガイの『Vidhaata』ではサンジャイ・ダット、サンジーヴ・クマール、シャンミー・カプールと共演きょうえんし、1982年ねん公開こうかいのヒンディー語ご映画えいが年間ねんかん興行こうぎょう成績せいせき第だい1位いにランクインした。ラメーシュ・シッピーの『Shakti』ではアミターブ・バッチャンと共演きょうえんし、興行こうぎょう成績せいせきは平均へいきん的てきだったものの、ディリップ・クマールの演技えんぎは絶賛ぜっさんされ、フィルムフェア賞しょう主演しゅえん男優だんゆう賞しょうを受賞じゅしょうしている。1984年ねんはヤシュ・チョープラーの『Mashaal』ではアニル・カプールと共演きょうえんし、興行こうぎょう的てきには失敗しっぱいしたものの、演技えんぎは高たかい評価ひょうかを受うけた。このほか、『Duniya』ではリシ・カプール、『Dharm Adhikari』ではジーテンドラと共演きょうえんしている。1986年ねんに出演しゅつえんした『Karma』ではヌータンと共演きょうえんしている。彼女かのじょとは1950年代ねんだいに製作せいさくされた『Shikwa』で共演きょうえんしていたが、同どう作さくがお蔵ぞう入いりとなっているため、『Karma』が劇場げきじょう公開こうかいされた作品さくひんとしての初はつ共演きょうえん作さくとなった。1989年ねんには『Kanoon Apna Apna』で再ふたたびヌータン、サンジャイ・ダットと共演きょうえんしている。

1990年代ねんだい

1990年ねんは『Izzatdaar』でゴーヴィンダーと共演きょうえんし、1991年ねんには『Saudagar』でラージ・クマールと共演きょうえんした。ラージ・クマールとの共演きょうえんは、1959年ねんの『Paigham』以来いらい2作さく目めであり、『Saudagar』はディリップ・クマールにとって興行こうぎょう的てきな成功せいこうを収おさめた最後さいごの出演しゅつえん作さくとなった。1994年ねんには長年ながねんの映画えいが界かいへの貢献こうけんが認みとめられ、フィルムフェア賞しょう 生涯しょうがい功労賞こうろうしょうを受賞じゅしょうした。

1991年ねんに『Izzatdaar』のプロデューサーを務つとめたスダカール・ボカデが新作しんさく映画えいが『Kalinga』の製作せいさくを発表はっぴょうし、ディリップ・クマールが監督かんとくに起用きようされた。同どう作さくではディリップ・クマールが主演しゅえんも兼かね、主要しゅようキャストとしてラージ・バッバル、ラージ・キラン、アミトージュ・マーン、ミーナクシ・セシャドリが起用きようされた。製作せいさくは数すう年間ねんかん延期えんきされた後のち、1996年ねんに企画きかくが中止ちゅうしされたが、この時点じてんで映画えいが全体ぜんたいの70%の撮影さつえいが完了かんりょうしていた。1998年ねんに出演しゅつえんした『Qila』では殺害さつがいされた悪徳あくとく地主じぬしと、事件じけんの謎なぞを暴あばこうとする兄あにの二に役やくを演えんじた。同どう作さくは興行こうぎょう的てきな失敗しっぱい作さくとなり、これがディリップ・クマールにとって最後さいごの出演しゅつえん作さくとなった。

2000年代ねんだい

第だい35回かいインド国際こくさい映画えいが祭さい開幕かいまく式しきに出席しゅっせきするディリップ・クマール

2001年ねんにアジャイ・デーヴガン、プリヤンカー・チョープラー主演しゅえんの『Asar – The Impact』に出演しゅつえんすることが発表はっぴょうされたが、ディリップ・クマールの健康けんこう状態じょうたいが悪化あっかしたこともあり製作せいさくは中止ちゅうしされた。また、スバーシュ・ガイの『Mother Land』ではアミターブ・バッチャン、シャー・ルク・カーンと共演きょうえんすることが決きまっていたが、こちらもシャー・ルク・カーンが降板こうばんしたことで製作せいさくが中止ちゅうしされている。2004年ねんと2008年ねんにはフルカラー化かされた『偉大いだいなるムガル帝国ていこく』と『新しん世代せだい』がそれぞれ再さい上映じょうえいされ、2013年ねんにはディリップ・クマールの初はつ監督かんとく作品さくひんとなる『Aag Ka Dariya』が公開こうかい予定よていだったが、こちらは未み公開こうかいのままお蔵ぞう入いり状態じょうたいとなっている。

2000年ねんから2006年ねんにかけて上院じょういん議員ぎいん（インド国民こくみん会議かいぎ所属しょぞく、マハーラーシュトラ州しゅう選出せんしゅつ）を務つとめ、在任ざいにん中ちゅうは国会こっかい議員ぎいん地域ちいき開発かいはつスキームを活用かつようしてバンドラにあるカステッラ・デ・アグアダのバンドスタンド・プロムナードと庭園ていえんの整備せいびに尽力じんりょくした。

死去しきょ

2021年ねん7月がつ7日にち午前ごぜん7時じ30分ふん、病気びょうき療養りょうようで入院にゅういん中ちゅうだったムンバイのP・D・ヒンドゥージャ国立こくりつ病院びょういん・医学いがく研究所けんきゅうじょで死去しきょした。高齢こうれいだったディリップ・クマールは前立腺ぜんりつせん癌がんなど複数ふくすうの病気びょうきを抱かかえており、死因しいんは胸水きょうすいと発表はっぴょうされた。彼かれの死去しきょに際さいして、マハーラーシュトラ州しゅう政府せいふはディリップ・クマールの州しゅう葬そうを執とり行おこなうことを決定けっていし、同日どうじつ午後ごご5時じにジュフーのムスリム墓地ぼちに埋葬まいそうされた。

ディリップ・クマールの死去しきょに際さいし、インド首相しゅしょうナレンドラ・モディは「クマールは映画えいが界かいの伝説でんせつとして私わたしたちの記憶きおくに残のこり続つづけるでしょう」、インド大統領だいとうりょうラーム・ナート・コーヴィンドは「彼かれはインド亜あ大陸たいりくの全域ぜんいきで愛あいされる存在そんざいでした」とそれぞれ哀悼あいとうの意いを表あらわした。また、パキスタン首相しゅしょうイムラン・カーンも哀悼あいとうの意いを表あらわし、ディリップ・クマールがシャウカト・カヌム記念きねん癌がん病院びょういん・研究所けんきゅうじょ創設そうせつのための資金しきん集あつめに尽力じんりょくしたことを称となえ、このほかに元もとアフガニスタン大統領だいとうりょうハーミド・カルザイ、バングラデシュ首相しゅしょうシェイク・ハシナもディリップ・クマールと彼かれの家族かぞくに対たいして哀悼あいとうの意いを表あらわしている。

私生活しせいかつ

女性じょせい関係かんけい

『偉大いだいなるムガル帝国ていこく』出演しゅつえん時じのディリップ・クマールとマドゥバーラー

ディリップ・クマールは、1951年ねん公開こうかいの『Tarana』の撮影さつえい時じに共演きょうえん者しゃのマドゥバーラーと交際こうさい関係かんけいに発展はってんした。二人ふたりの関係かんけいは7年間ねんかん続つづいたが、『新しん世代せだい』の出演しゅつえんを巡めぐる裁判さいばんで、彼かれがB・R・チョープラーの味方みかたをしてマドゥバーラー父ちち娘むすめに不利ふりな証言しょうげんをしたことをきっかけに破局はきょくしたといわれており、1960年ねん公開こうかいの『偉大いだいなるムガル帝国ていこく』を最後さいごに二人ふたりが共演きょうえんすることはなかった。彼かれは自伝じでんの中なかでマドゥバーラーとの関係かんけいについて「当時とうじの新聞しんぶんや雑誌ざっしの報道ほうどう通どおり、私わたしはマドゥバーラーと愛あいし合あっていたのでしょうか?この問といかけに対たいして、当事とうじ者しゃである私わたしの回答かいとうとして、魅力みりょく的てきな共演きょうえん者しゃとして、また、その当時とうじの年齢ねんれいと時代じだいを生いきる女性じょせいに求もとめていた特徴とくちょうのいくつかを持もち合あわせていた個人こじんとして、彼女かのじょに惹ひかれていたことを認みとめざるを得えません……先さきほども言いったとおり、彼女かのじょはとても活発かっぱつで明あかるい女性じょせいで、私わたしを内気うちきで引ひっ込こみ思案じあんな場所ばしょから難なんなく引ひっ張ぱり出だしてくれたのです」と語かたっている。また、世間せけんの認識にんしきと異ことなり、マドゥバーラーの父ちちアタウッラー・カーンは二に人にんの結婚けっこんには反対はんたいしておらず、結婚けっこんをビジネスに利用りようしようとしたことで折おり合あいが悪わるくなったと振ふり返かえっている。

1950年代ねんだいにはゴシップ誌しからヴィジャヤンティマーラーとの交際こうさいが報ほうじられるようになった。彼女かのじょはディリップ・クマールのキャリアの中なかで最もっとも多おおく共演きょうえんした女優じょゆうであり、彼女かのじょとの共演きょうえん作品さくひんは度々どど批評ひひょう家かから絶賛ぜっさんされた。1961年ねん公開こうかいの『Gunga Jumna』では、ディリップ・クマールは彼女かのじょがシーンごとに着きるサリーの種類しゅるいや色合いろあいをすべて指示しじしていたという。

家族かぞく・人物じんぶつ

ディリップ・クマール、サイラー・バーヌ夫妻ふさい

1966年ねんに22歳さい年下とししたのサイラー・バーヌと結婚けっこんした。1981年ねんにはハイデラバード社交しゃこう界かいの名士めいしアスラ・ラフマーンを第だい2夫人ふじんに迎むかえるが、1983年ねん1月がつに離婚りこんしている。サイラー・バーヌとはバンドラで暮くらしていたが、夫婦ふうふの間あいだには子供こどもはいなかった。ディリップ・クマールは自伝じでんの中なかで、1972年ねんに彼女かのじょが妊娠にんしんしたものの合併症がっぺいしょうを発症はっしょうし、流産りゅうざんしたことを明あかしている。二人ふたりはこれを「神かみの意志いし」であると信しんじ、その後ごは子供こどもを作つくろうとはしなかったという。

弟おとうとのナシール・カーンは俳優はいゆうとして兄あにディリップと共ともに映画えいが界かいで活動かつどうしていた。彼かれのほかにアスラム・カーン（1932年ねん-2020年ねん）、イフサーン・カーン（1930年ねん-2020年ねん）という二人ふたりの弟おとうとがいたが、2020年ねんに新型しんがたコロナウイルス感染かんせん症しょうに感染かんせんして死去しきょしている。

ディリップ・クマールは母語ぼごのヒンドコ語ごのほかにウルドゥー語ご、ヒンディー語ご、パシュトー語ご、パンジャーブ語ご、マラーティー語ご、英語えいご、ベンガル語ご、グジャラート語ご、ペルシア語ご、ボージュプリー語ご、アワディー語ごに堪能かんのうだった。また、音楽おんがくの愛好あいこう家かとしても知しられ、演技えんぎのためにシタールの演奏えんそう技術ぎじゅつを学まなんでいた。このほかにクリケットも好このみ、チャリティー目的もくてきの親善しんぜん試合しあいではチームリーダーを務つとめてラージ・カプール率ひきいるチームと対戦たいせんしている。ラージ・カプールとはペシャーワルで暮くらしていたころからの友人ゆうじんで、ボンベイに移住いじゅうした後のちもカプール家かとは親密しんみつな関係かんけいだった。

評価ひょうか

演技えんぎ

ディリップ・クマールのポートレート

『新しん世代せだい』出演しゅつえん時じのディリップ・クマール、ヴィジャヤンティマーラー

『Yahudi』出演しゅつえん時じのディリップ・クマール、ミーナー・クマーリー

ディリップ・クマールはインド映画えいが史上しじょう、そして映画えいが史上しじょうにおいて最もっとも偉大いだいで影響えいきょう力りょくのある俳優はいゆうの一人ひとりに挙あげられている。彼かれはメソッド演技えんぎ法ほうのパイオニアであり、マーロン・ブランドなどのハリウッド俳優はいゆうに先駆さきがけて演技えんぎ法ほうを会得えとくしていた。彼かれの演技えんぎスタイルは同どう世代せだいや次世代じせだいの多おおくのインド俳優はいゆうに影響えいきょうを与あたえており、影響えいきょうを受うけた俳優はいゆうとしてバルラージ・サーヘニー、マノージュ・クマール、ダルメンドラ、アミターブ・バッチャン、シャー・ルク・カーン、カマル・ハーサン、マンムーティ、アーミル・カーン、ナシールッディーン・シャー、ナワーズッディーン・シッディーキーなどがいる。彼かれは演技えんぎ学校がっこうの通学つうがく経験けいけんなしに独自どくじのメソッド演技えんぎ法ほうを作つくり出だし、仕事しごとを共ともにした経験けいけんのないサタジット・レイからも「究極きゅうきょくのメソッド俳優はいゆう(the ultimate method actor)」と才能さいのうを絶賛ぜっさんされている。

また、大衆たいしゅうからは「演技えんぎの帝王ていおう(Abhinay Samrat)」と称しょうされ、メディアからは初期しょきの出演しゅつえん作品さくひんで演えんじたドラマティックな役柄やくがらから「悲劇ひげき王おう(Tragedy King)」とも称しょうされており、後世こうせいには「最初さいしょのカーン(The First Khan)」とも称しょうされている。このほか、「インド映画えいが界かいのコ・イ・ヌール(The Kohinoor of Indian cinema)」とも称しょうされている。ディリップ・クマールは1950年代ねんだいから1960年代ねんだいにかけてインド映画えいが最大さいだいのスター俳優はいゆうであり、国民こくみん的てきアイコンとしても知しられ、当時とうじのインド映画えいが界かいで最もっとも出演しゅつえん料りょうが高額こうがくな俳優はいゆうだった。また、彼かれが活動かつどうした時代じだいは「ヒンディー語ご映画えいがの黄金おうごん時代じだい」と呼よばれる時期じきと重かさなっており、彼かれは同どう時代じだいの映画えいが界かいにおいて重要じゅうような役割やくわりを果はたしたと評ひょうされている。映画えいが史家しかのマイティリ・ラーオは、「彼かれはヒンディー語ご映画えいが史しのど真まん中なかで、まるで山やまのように君臨くんりんし、前ぜん時代じだいの人々ひとびとの存在そんざいを霞かすませ、同どう時代じだいの人々ひとびとを小ちいさな存在そんざいにしている」とディリップ・クマールの功績こうせきを称となえている。後世こうせいの人々ひとびとからは「インド映画えいが初はつのスーパースター(The First Superstar of Indian cinema)」と称しょうされている。彼かれはインド映画えいが史上しじょう最もっとも尊敬そんけいを集あつめる俳優はいゆうの一人ひとりであり、インド亜あ大陸たいりくや世界中せかいじゅうの南みなみアジア系けいディアスポラから高たかい人気にんきを集あつめている。2013年ねんにインド映画えいが100周年しゅうねんを記念きねんして『フィルムフェア』が実施じっししたアンケートで、ディリップ・クマールは「インド映画えいが史上しじょう最大さいだいのスーパースター」に選出せんしゅつされている。

2020年ねん時点じてんで、ディリップ・クマールは出演しゅつえん作品さくひんの80%が興行こうぎょう的てきな成功せいこうを収おさめており、ヒンディー語ご映画えいがで最もっとも成功せいこうした俳優はいゆうに位置付いちづけられている。彼かれは1947年ねんから1965年ねんにかけてBox Office Indiaのトップ俳優はいゆうリストに19回かいランクインしており、このうち1948年ねんから1963年ねんにかけての16回かいが第だい1位いとしてのランクインだった。彼かれの主演しゅえん作さくの大半たいはんは重苦おもくるしいテーマを扱あつかった非ひ商業しょうぎょう的てき性質せいしつの映画えいがだったにもかかわらず興行こうぎょう的てきな成功せいこうを収おさめているが、これは観客かんきゃくの多おおくがディリップ・クマールの演技えんぎを見みるためだけに劇場げきじょうに来きていたためであり、ほかの俳優はいゆうには見みられない傾向けいこうだった。この傾向けいこうは1940年代ねんだい後半こうはんから1950年代ねんだい前半ぜんはんにかけて顕著けんちょであり、この時期じきから彼かれは役柄やくがらから「悲劇ひげき王おう」と呼よばれるようになった。黄金おうごん時代じだい最後さいごの主演しゅえん作さくとなった『Bairaag』について、『ザ・ヒンドゥー』は「25年ねん以上いじょうもの間あいだ、ディリップ・クマールは興行こうぎょう王おうとして君臨くんりんした。彼かれの名前なまえは成功せいこうの証あかしだったが、それは公開こうかい当時とうじだけではなく、再さい上映じょうえいの時ときでさえ、同どう時代じだいの監督かんとくたちの新作しんさく映画えいがよりも高たかい興行こうぎょう収入しゅうにゅうを記録きろくした」と批評ひひょうしている。また、リシケーシュ・ムカルジーは彼かれについて「当時とうじの俳優はいゆうの中なかで最高さいこうの存在そんざいだった。彼かれの映画えいがのすべてに観客かんきゃくを夢中むちゅうにさせる要素ようそがあり、まさに彼かれはワンマン・インダストリーの存在そんざいだった」と評ひょうしている。

キャリアの後半こうはんでは成熟せいじゅくした老人ろうじん役やくを演えんじ、こちらでも興行こうぎょう的てきな成功せいこうを収おさめており、Box Office Indiaは「これは彼かれの輝かがやかしいキャリアの中なかで、ほかの俳優はいゆうたちとは一線いっせんを画かくす部分ぶぶんであり、性格せいかく俳優はいゆうとしてこれほどの成功せいこうを収おさめた俳優はいゆうはいないだろう」と評ひょうしている。また、イルファーン・カーンは「現在げんざいにいたるまで、これほどまでに人々ひとびとの心しんに影響えいきょうを与あたえた俳優はいゆうはいないでしょう。彼かれの作つくり出だした俳優はいゆうとスターという組くみ合あわせは、彼かれの登場とうじょう以前いぜんにはないものでした。まさに、彼かれに始はじまり、彼かれに終おわったのです。彼かれのキャリア、仕事しごとのスタイル、ライフスタイル、出演しゅつえん作さくの選択せんたくなど、間違まちがった見本みほんは存在そんざいしない。彼かれは真しんの伝説でんせつでした。最近さいきんは伝説でんせつという言葉ことばが漫然まんぜんと使つかわれていますが、私わたしは彼かれこそが伝説でんせつと呼よぶに相応ふさわしい唯一ゆいいつの存在そんざいだと強つよく信しんじています」と語かたっている。

表彰ひょうしょう

第だい54回かい国家こっか映画えいが賞しょう授賞じゅしょう式しきでインド大統領だいとうりょうプラティバ・パティルから特別とくべつ生涯しょうがい功労賞こうろうしょうを授与じゅよされるディリップ・クマール

ムンバイの自宅じたくでインド内務ないむ大臣だいじんラージナート・シンからパドマ・ヴィブーシャン勲章くんしょうを授与じゅよされるディリップ・クマール

ディリップ・クマールはラージ・カプール、デーヴ・アーナンドと共ともに1950年代ねんだいから1960年代ねんだいにかけて独自どくじの演技えんぎスタイルで活躍かつやくし、「ゴールデン・トリオ(the golden trio)」と称しょうされた Kumar was the biggest Indian star of this era,。彼かれは同どう時代じだいの俳優はいゆうの中なかで最大さいだいのスター俳優はいゆうであり、二枚目にまいめ俳優はいゆうとして大衆たいしゅうの憧あこがれの存在そんざいだった。また、彼かれはこの時代じだいに最もっとも高たかい収入しゅうにゅうを得えた俳優はいゆうでもあった。1947年ねんから2010年代ねんだい後半こうはんまで、ディリップ・クマールは各かく年としの最高さいこう興行こうぎょう収入しゅうにゅうを記録きろくした映画えいがの最多さいた出演しゅつえん記録きろく（9本ほん）を持もつ俳優はいゆうであり、この記録きろくは2010年ねんにサルマーン・カーン（10本ほん）に抜ぬかれるまで保持ほじしていた。しかし、2019年ねんのBox Office Indiaの発表はっぴょうによると、1991年ねんの最高さいこう興行こうぎょう収入しゅうにゅうを記録きろくした映画えいがはサルマーン・カーン主演しゅえんの『サージャン/愛いとしい人ひと』ではなくディリップ・クマール主演しゅえんの『Saudagar』であり、彼かれは再ふたたび最多さいた記録きろく保持ほじ者しゃに返かえり咲ざいた。彼かれは1947年ねんから1961年ねんにかけて1本ほん以上いじょうのヒット作さくを送おくり出だした唯一ゆいいつの俳優はいゆうであり、1952年ねんから1965年ねんにかけて1本ほんも失敗しっぱい作さくを出ださなかった。また、歴代れきだい興行こうぎょう成績せいせきトップ10作品さくひんのうち、出演しゅつえん作品さくひんが4本ほん（『新しん世代せだい』『偉大いだいなるムガル帝国ていこく』『Gunga Jumna』『Kranti』）ランクインしており、出演しゅつえん作さくが複数ふくすうランクインしている唯一ゆいいつの俳優はいゆうでもある。

キャリアの中なかでフィルムフェア賞しょう主演しゅえん男優だんゆう賞しょうを8回かい受賞じゅしょう（19回かいノミネート）という最多さいた記録きろくを有ゆうしており、1993年ねんにはフィルムフェア賞しょう生涯しょうがい功労賞こうろうしょうを受賞じゅしょうしている。また、第だい50回かいフィルムフェア賞しょうではフィルムフェア賞しょう創設そうせつ50周年しゅうねんを記念きねんしてラタ・マンゲシュカル、ナウシャドと共ともにフィルムフェア賞しょう 特別とくべつ賞しょうを受賞じゅしょうしている。1980年ねんには名誉めいよ職しょくのムンバイ保安ほあん官かんに任命にんめいされ、インド政府せいふからは長年ながねんの映画えいが界かいへの貢献こうけんを認みとめられパドマ・ブーシャン勲章くんしょう（1991年ねん）、ダーダーサーヘブ・パールケー賞しょう（1995年ねん）、パドマ・ヴィブーシャン勲章くんしょう（2015年ねん）を授与じゅよされた。このほか、1997年ねんにアーンドラ・プラデーシュ州しゅう政府せいふからNTRナショナル・アワード、2009年ねんにCNN-IBNから生涯しょうがい功労賞こうろうしょう、2015年ねんにマディヤ・プラデーシュ州しゅう政府せいふからキショール・クマール賞しょうを授与じゅよされている。2011年ねんにはRediff.comのアンケートで「史上しじょう最もっとも偉大いだいなインド俳優はいゆう」に選出せんしゅつされ、「最もっとも多おおくの賞しょうを受賞じゅしょうしたインド人じん俳優はいゆう」としてギネス世界せかい記録きろくにも登録とうろくされており、97歳さいの誕生たんじょう日びに際さいして「インド映画えいがへの比類ひるいなき貢献こうけんと社会しゃかい活動かつどう」を表彰ひょうしょうされた。

1998年ねんにはパキスタン政府せいふからパキスタン一等いっとう勲章くんしょうを授与じゅよされた。これに対たいしてマハーラーシュトラ州しゅうを拠点きょてんにするシヴ・セーナーは受賞じゅしょうに抗議こうぎする声明せいめいを発表はっぴょうしてディリップ・クマールの愛国心あいこくしんに疑問ぎもんを呈ていしたが、1999年ねんにインド首相しゅしょうアタル・ビハーリー・ヴァージペーイーと協議きょうぎした結果けっか、「映画えいがスターのディリップ・クマールの愛国心あいこくしんと国家こっかに対たいする献身けんしんに疑うたがいの余地よちはない」として勲章くんしょうの保持ほじが認みとめられた。この騒動そうどうについて、ディリップ・クマールは自伝じでんの中なかで「勲章くんしょうを返かえせばインド・パキスタンの二に国こく間あいだ関係かんけいが悪化あっかし、さらに険悪けんあくな雰囲気ふんいきを生うみ出だすだけだったでしょう」と語かたっている。彼かれが生前せいぜんバーラト・ラトナ賞しょうを受賞じゅしょうできなかったのは、この騒動そうどうが原因げんいんだといわれている。

外部がいぶリンク

• Dilip Kumar - IMDb（英語えいご）