ドクヤマドリ

ドクヤマドリ
分類ぶんるい
界さかい : 菌きん界かい Fungi 門もん : 担子菌きん門もん Basidiomycota 綱つな : 真正しんしょう担子菌きん綱つな Homobasidiomycetes 目め : イグチ目め Boletales 科か : イグチ科か Boletaceae 属ぞく : ウラグロニガイグチ属ぞく Sutorius 種たね : ドクヤマドリ S. venenatus
学名がくめい
Sutorius venenatus G. Wu & Zhu L. Yang (2016)
シノニム
Boletus venenatus Nagas. (1995) Neoboletus venenatus (Nagas.) G. Wu & Zhu L. Yang (2015)

ドクヤマドリ（毒どく山鳥やまどり、学名がくめい: Sutorius venenatus）はイグチ目めイグチ科かウラグロニガイグチ属ぞく（Sutorius）の中型ちゅうがたから大型おおがたの菌きん根性こんじょうのキノコである。

現在げんざいのところは東ひがしアジアでのみ確認かくにんされている。しっかりした肉質にくしつを持もつ非常ひじょうに重おもいキノコで、自重じちょうで倒たおれているものも散見さんけんされる。典型てんけい的てきなイグチ型がたのキノコで食用しょくよう菌きんのように思おもえるが、強力きょうりょくな消化しょうか器き系けいの毒どくを持もち、下痢げり、腹痛はらいたなどの激はげしい中毒ちゅうどく症状しょうじょうに見舞みまわれる。過去かこ、日本にっぽんにおいてはイグチ型がたのキノコに毒どくキノコは存在そんざいしないとも言いわれていたが、このキノコの報告ほうこくによって覆くつがえされた。

名称めいしょう

和名わみょう「ドクヤマドリ」の由来ゆらいは、野鳥やちょうのヤマドリ（山鳥やまどり）の羽はねの色いろに似にていて、有毒ゆうどくのキノコであるところから名付なづけられている。 かつての日本にっぽんでは毒どくのイグチは知しられていなかったが、長野ながの県けんではタヘイイグチとして昔むかしから知しられていた。この名なは太平たいへいという者ものがこのキノコを食たべて亡なくなったというところから来きている。

1995年ねんに長澤ながさわ栄さかえ史しにより命名めいめい・発表はっぴょうされ、ヤマドリタケ属ぞくとして Boletus venenatus の学名がくめいが与あたえられていたが、2015年ねんに中国科学院ちゅうごくかがくいん昆こん明あきら植物しょくぶつ研究所けんきゅうじょの研究けんきゅう者しゃ Wu Gang と楊祝良りょう（Yang Zhuliang）により Neoboletus 属ぞくに編入へんにゅうされ、翌よく2016年ねんには左記さきの2名めいによりさらに別べつ属ぞくであるウラグロニガイグチ属ぞく（Sutorius）に編入へんにゅうし直なおされた。この属ぞくは、2012年ねんにウラグロニガイグチ（Sutorius eximius）をタイプ種しゅとして新設しんせつされたものである。

特徴とくちょう

日本にっぽんおよび中国ちゅうごくに分布ぶんぷする。外そと生せい菌きん根ね菌きん（菌きん根ね生せい）。盛夏せいかから秋あきにかけて、主おもにエゾマツやシラビソ、コメツガ、トドマツ、トウヒなどの亜あ高山こうざん帯たい針葉樹しんようじゅ林りんの地上ちじょうに発生はっせいし、単たん生なままたは群生ぐんせいする。特とくに富士山ふじさんのシラビソ林はやしに多おおく発生はっせいする。

傘かさの傘かさ径みちは10 - 20センチメートル (cm) で、初はじめ半球はんきゅう形がたから後のちに平たいらなまんじゅう形かたちになる。表面ひょうめんはぬめりがない淡あわ黄き褐色かっしょくから薄うす茶褐色ちゃかっしょくのビロード状じょう、のちにわずかにフェルト状じょうになり、成熟せいじゅくすると湿しめ時ときに多少たしょう粘性ねんせいを持もつ。

柄えの長ながさは8 - 20 cmで白色はくしょくから淡あわ黄き褐色かっしょく、表面ひょうめんにふつう網目あみめ模様もようはなく、成長せいちょうすると赤褐色せきかっしょくのしみが上部じょうぶにできる。中ちゅう実みで、上下じょうげほぼ同おなじ太ふとさか、中央ちゅうおうがやや膨ふくらむ。根本こんぽんは黄色おうしょくの菌糸きんしで覆おおわれている。

傘かさの裏側うらがわはスポンジ状じょうの管かん孔あなで、柄えにほぼ離はなれ生せいし、微小びしょうで初はじめ淡あわ黄色きいろ、胞子ほうしが成熟せいじゅくすると黄き褐色かっしょくになる。孔あな口こうは管かん孔あなと同色どうしょくであるが、傷きずつけるとゆっくりと青あお変へんし、黄き褐色かっしょくから褐色かっしょくのしみとなる。

肉にくは厚あつくしっかりしており、淡あわ黄色きいろで、傘かさと柄えの上部じょうぶでは傷きずつけるとゆっくりと青あお変へんするが管かん孔あなほどではない。独特どくとくの臭気しゅうきがある。

毒性どくせい

毒どく成分せいぶんには、タンパク質たんぱくしつのボレベニン類るい、イソレクチン類るいが含ふくまれ、マウスに対たいする致死ちし性せいが確認かくにんされている。

中毒ちゅうどく症状しょうじょうは、少量しょうりょう食たべただけでも4 - 5時じ間あいだほどで下痢げり、腹痛はらいた、嘔吐おうとなどの胃腸いちょう系けいの中毒ちゅうどくを起おこし、腎臓じんぞうに障害しょうがいを起おこすこともあると言いわれる。このキノコを茹ゆでこぼせば食たべられるといわれるが、素人しろうとは手てを出ださない方ほうがよいともいわれている。

イグチ科かのキノコに毒どくキノコはないといわれてきたが、イグチの仲間なかまのキノコを食たべて中毒ちゅうどくを起おこした事例じれいが報告ほうこくされるようになった。2004年ねん9月がつに長野ながの県けんで採取さいしゅしたキノコを網焼あみやきにして食たべたところ、1時じ間あいだほどで嘔吐おうと、腹痛はらいた、下痢げりの症状しょうじょうが現あらわれて入院にゅういんした患者かんじゃがでて、保健所ほけんじょの調しらべでドクヤマドリを食たべたことが原因げんいんだったことが判明はんめいしている。

類似るいじの食用しょくようキノコ

雰囲気ふんいきがよく似にているアカヤマドリ。

• ヤマドリタケ（Boletus edulis） - ドクヤマドリによく似にた食用しょくようキノコ。傘かさにぬめりがあり、柄えの上部じょうぶに明瞭めいりょうな網目あみめがあるが、ドクヤマドリには編目あみめがない。
• ヤマドリタケモドキ（Boletus reticulatus）
• ススケヤマドリタケ
• ムラサキヤマドリタケ（Boletus violaceofuscus） - 梅雨つゆ期きと初秋しょしゅうに生はえるキノコで、傘かさは紫色むらさきいろで淡色たんしょくの斑まだら模様もようがあり、柄えに白しろい網目あみめ模様もようがある。
• アカヤマドリ（Rugiboletus extremiorientalis） - 雰囲気ふんいきが似にているが傘かさが赤あかい。
• アカジコウ（Boletus speciosus） - アカヤマドリと同様どうよう。網目あみめが柄え全体ぜんたいに見みられ、傘かさの表面ひょうめんは微細びさい毛げに被おおわれる。

類似るいじの毒どくキノコ

• ウツロイイグチ（Xanthoconium affine） - 傘かさはフェルト状じょうの褐色かっしょくで、柄えは褐色かっしょくに白色はくしょくの縦たて筋すじ状じょうの模様もようがある。牛うしが食たべて死しんだ事例じれいがある。

参考さんこう文献ぶんけん

• 大作たいさく晃一こういち『きのこの呼よび名な事典じてん』世界文化社せかいぶんかしゃ、2015年ねん9月がつ10日とおか。ISBN 978-4-418-15413-5。 
• 瀬せら畑はた雄三ゆうぞう監修かんしゅう 家かの光ひかり協会きょうかい編へん『名人めいじんが教おしえる きのこの採とり方かた・食たべ方かた』家いえの光協会ひかりきょうかい、2006年ねん9月がつ1日にち。ISBN 4-259-56162-6。 
• 長沢ながさわ栄さかえ史し監修かんしゅう Gakken編へん『日本にっぽんの毒どくきのこ』Gakken〈増補ぞうほ改訂かいていフィールドベスト図鑑ずかん 13〉、2009年ねん9月がつ28日にち。ISBN 978-4-05-404263-6。 
• 吹春俊光としみつ『おいしいきのこ 毒どくきのこ』大作たいさく晃一こういち（写真しゃしん）、主婦しゅふの友社ともしゃ、2010年ねん9月がつ30日にち。ISBN 978-4-07-273560-2。 

外部がいぶリンク

• 自然しぜん毒どくのリスクプロファイル：ドクヤマドリ - 厚生こうせい労働省ろうどうしょう
• ドクヤマドリ - 遅おそスギル