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ネウマ

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グレゴリオ聖歌せいかのネウマ

ネウマ(ネウマふ、えい: neumatic notation)とは、楽曲がっきょく楽譜がくふを「ネウマ」とばれる記号きごうもちいてあらわほうのことである。

初期しょき歴史れきし

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キリスト教きりすときょう聖歌せいかチャント)は、教会きょうかい初期しょきからうたわれてきたとられるが、なに世紀せいきものあいだ口伝くでんによってつたえられてきたのみであった。9世紀せいきころあらわれ、おとだか明示めいじしないネウマ、おとだかネウマ(ダイアステマほう)といった初期しょきほう発展はってんし、11世紀せいきになるとせんネウマがられ、4ほんせんもちいられるようになった。このころせん譜表ふひょうには、CおととFおとけられるようになり、それがおん記号きごうおん記号きごうとなる(おん記号きごうもGおと記号きごうである)。ネウマ(古希こき: νにゅーεいぷしろんμみゅーαあるふぁ)とは古代こだいギリシアで「合図あいず身振みぶり」という意味いみであり、合唱がっしょう指揮しきするさい合図あいずである。

ネウマによるふくむもので、2016ねん7がつ現在げんざいられているもので最古さいこのものは、アラム起源きげん聖書せいしょじゅん旋律せんりつてき朗読ろうどく抑揚よくよう記録きろくするためにもちいられた。これはクルアーン(コーラン)の朗読ろうどく表記ひょうきほうに、機能きのうてきにはている。この初期しょきほうは、ギリシャで「じゅん旋律せんりつてき朗読ろうどく」を意味いみするἐκφώνησις(ekphonesis)から、エクフォネティックほう(ekphonetic notation)とばれた。

9世紀せいきごろ、ネウマは聖歌せいか旋律せんりつてき朗読ろうどくのための速記そっきてき記憶きおく補助ほじょとして出現しゅつげんした。一般いっぱんてきには、ネウマによるほうひがしマ帝国まていこく開発かいはつされたとかんがえられている。これは、当時とうじ帝国ていこく現在げんざいみなみトルコシリアレバノンイスラエル)の主要しゅよう都市とし文書ぶんしょされたすうおおくの作曲さっきょく文化ぶんかてき活動かつどうから、妥当だとうだとおもわれる。今日きょうでも東方とうほう教会きょうかい伝統でんとうとして、ギリシャ正教せいきょう音楽おんがく改良かいりょうネウマほうでは有効ゆうこうであり、西にしヨーロッパではあたらしい技術ぎじゅつであるポリフォニー発展はってんともないネウマによるほう使用しようされなくなっていった事実じじつ手伝てつだい、現存げんそんするビザンティン聖歌せいか写本しゃほん印刷いんさつ資料しりょうは、グレゴリオ聖歌せいかのものよりはるかにおおい。

スラヴしきネウマほう(ズナメニー・チャントZnamenny Chantほう)は、ビザンティン聖歌せいかやグレゴリオ聖歌せいかほうより、解読かいどく転写てんしゃがさらに困難こんなんである。

ネウマによるほう

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ネウマによるほうは、時代じだい地方ちほうによって様々さまざまなバリエーションがあるが、ここではせんネウマについて記述きじゅつする。

音部おとべ記号きごう

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せんネウマでは4ほんせん使つかわれ、近代きんだいほうおなじように線上せんじょうまたはせんせんあいだ音符おんぷかれる。先頭せんとうにはCおと(ハおん、ド)またはFおと(ヘおん、ファ)の音部おとべ記号きごうかれる。これがのちおん記号きごうおん記号きごうとなる。

Cおと記号きごう
Fおと記号きごう

1おとネウマ

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プンクトゥム (「てん」)
ヴィルガ (「ロッド」)
ビプンクトゥム(「2つのてん」)

ヴィルガとプンクトゥムはおなじようにうたわれる。ビプンクトゥムは、ばいながさのおとあらわすのか、おなおんを2かいはっきりとけるのかについて、研究けんきゅうしゃあいだ一致いっちしない。後者こうしゃ解釈かいしゃくこのましい場合ばあい、ビプンクトゥムは「リパーカッシヴ(反射はんしゃした)・ネウマ」とばれるかもしれない。

2おとネウマ

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クリヴィス(「スロープ」) 2おと下降かこう
ポダトゥス またはペス (「あし」) 2おと上昇じょうしょう

ポダトゥスのように、2つのおと上下じょうげならんでいる場合ばあいつねしたおとさきうたわれる。

3おとネウマ

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スカンディクス 3おと上昇じょうしょう
クリマクス 3おと下降かこう
トルクルス した-うえ-した
ポレクトゥス うえ-した-うえ

ポレクトゥスの最初さいしょの2おと対角線たいかくせんのようにつながってかれているのは、筆記ひっきしゃ省略しょうりゃくしていたためとられる。

合成ごうせいネウマ

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いくつかのネウマはひとつの音節おんせつのためにいちれつ並置へいちすることができるが、以下いか用例ようれいには特定とくてい名前なまえがある。 これらはごく一部いちぶれいだけである。

プラエプンクトゥス 先頭せんとう付加ふかされているおとプラエプンクトゥス。このれいポダトゥス・プレッススといい、おなおんかえしをふくむ。
スブプンクティス ネウマのうしろに1おとまたは複数ふくすうおと付加ふかされているものをう。このれいスカンディクス・スブプンクティス

その基本きほんてき記号きごう

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フラット 五線譜ごせんふフラットおな意味いみである。ロおん(Si)にたいしてのみあらわれ、フラットの効果こうかけるおと直前ちょくぜんにではなく、ネウマの一群いちぐんまえかれる。
クストス 五線ごせん最後さいごかれ、つぎくだり最初さいしょおとなにであるかをしめす。
モラ 現在げんざいほうにおけるづけてんのようにされる。モラがされた音符おんぷ典型てんけいてきにはばいながさにばされる。

解釈かいしゃく記号きごう

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これらのマーキングは、ほとんどすべての初期しょき写本しゃほん存在そんざいしているが、おおきな論争ろんそう対象たいしょうとなっている。

垂直すいちょくエピセマ
(垂直すいちょくストローク)
5つ以上いじょうおとがネウマの一群いちぐんにあるとき、補助ほじょてきなアクセントをしめすとられる。
水平すいへいエピセマ
(水平すいへいストローク)
1おとまたは複数ふくすうおといちぐん(このれい)のうえかれる。ソレムの解釈かいしゃくでは基本きほんてき無視むしされるが、学者がくしゃおとばすか強調きょうちょうすることをしめすものとみなしている。
ネウマの液化えきか
(ちいさい記号きごう)
ほとんどすべてのタイプのネウマにこりうる。通常つうじょう特定とくてい文字もじわせ(じゅう子音しいん子音しいんのペア、重母音じゅうぼいん)でこりやすい。
クイリスマ
(くねったおと)
つねおとネウマの一部いちぶであり、通常つうじょうクリマクスにあらわれる。これはおおきな論争ろんそう対象たいしょうである。ソレム解釈かいしゃくでは、まえおと若干じゃっかんばされる、としている。

クイリスマのほか解釈かいしゃくとしては以下いかのものがある。

参考さんこう文献ぶんけん

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  • Graduale triplex (1979). Tournai: Desclée & Socii. ISBN 2-85274-094-X, a special edition of the Graduale Romanum with chant notation in three forms, one above the other, for easy comparison: Laon, St. Gall, and square note
  • Liber usualis (1953). Tournai: Desclée & Socii.
  • Paléographie musicale.[よう文献ぶんけん特定とくてい詳細しょうさい情報じょうほう] ISBN 2-85274-219-5. Facsimiles of early adiastamatic chant manuscripts.
  • Apel, Willi (1990). Gregorian Chant. Bloomington, IN: Indiana University Press. ISBN 0-253-20601-4.
  • Constantin, Floros. "Universale Neumenkunde" (Universal Theory of Neumes); three-volume[よう文献ぶんけん特定とくてい詳細しょうさい情報じょうほう] covering all major styles and schools of neumatic musical notation in three major divisions: Byzantine, Gregorian and Slavic.
  • Hiley, David (1990). "Chant". In Performance Practice: Music before 1600, Howard Mayer Brown and Stanley Sadie, eds., pp. 37–54. New York: W.W. Norton & Co. ISBN 0-393-02807-0.
  • Hiley, David (1995). Western Plainchant: A Handbook. Cambridge and New York: Clarendon Press and Cambridge University Press. ISBN 0-19-816572-2.
  • Mahrt, William P. (2000). "Chant". In A Performer's Guide to Medieval Music, Ross Duffin, ed., pp. 1–22. Bloomington, IN: Indiana University Press. ISBN 0-253-33752-6.
  • McKinnon, James, ed. (1990). Antiquity and the Middle Ages. Prentice Hall. ISBN 0-13-036153-4.
  • Wagner, Peter. (1911) Einführung in die Gregorianischen Melodien. Ein Handbuch der Choralwissenschaft. Leipzig: Breitkopf & Härtel.

Wilson, David (1990). Music of the Middle Ages. Schirmer Books. ISBN 0-02-872951-X.

外部がいぶリンク

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